説明

レンズ鏡筒

【目的】レンズ鏡筒内により大きな空間を確保すると共に、レンズ保持枠の作成を容易にし、かつコストを低減することのできるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【構成】レンズを保持するとともに、回動部材2に設けられたカム溝2a,2bに嵌合する嵌合部を有し、上記回動部材2の回動に応じて光軸方向に進退する保持枠4,5を有したレンズ鏡筒において、上記保持枠4,5を円周方向に複数に分割し、この各分割片をレンズに固着するとともに、該各分割片に上記嵌合部を一体成型して構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レンズ鏡筒、詳しくは、回動部材の回動に応じて光軸方向に進退する保持枠を有したレンズ鏡筒に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラの撮影レンズを保持し、さらに光軸方向に変位して各種調整を行うレンズ保持枠を具備するレンズ鏡筒として、図3に示すようなレンズ鏡筒が知られている。
【0003】図に示すように該レンズ鏡筒は、レンズ保持枠104で該撮影レンズを保持し、このレンズ保持枠104を3本の直線溝を有する固定枠101の内周面に光軸方向に摺動可能となるよう配設し、さらに、該固定枠101の外周に、上記直線溝を横切るように配置された3本の曲線状のカム溝を有するカム環102を円周方向に回動自在となるように配設している。そして、3本のカムフォロア105を、1本づつそれぞれ上記カム環102の上記カム溝より挿通し、上記固定枠101の直線溝を貫通して、上記レンズ保持枠104の外周面に当接固着して構成されている。
【0004】これにより、カム環102を円周方向に回動することでレンズ保持枠104が光軸方向に移動し、撮影レンズの位置調整が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のレンズ鏡筒におけるレンズ保持枠は、上記図3に示すレンズ保持枠104の如く、撮影レンズを保持するために該撮影レンズの外周を全て覆うリング状あるいは筒状の形状を有するのが一般的であった。
【0006】しかしながら、レンズ保持枠104のように撮影レンズの全周を覆う形状を有していると、レンズ鏡筒内部において該レンズ保持枠104自体にかなりのスペースを費やされており、撮影レンズ等を駆動するモータ等をレンズ鏡筒内に配設しようとする際に支障をきたすだけではなく、近年、一層の小型化が進むカメラにおいては、その小型化の妨げにもなっていた。
【0007】また、近年、レンズ保持枠としてプラスチック成形品が多用されるようになり、レンズ保持枠の内周面にアンダーカットが生じる場合には、このレンズ保持枠を成形する型が非常に複雑のものとなり、型の設計・作成費用等のコストを増大させていた。
【0008】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、レンズ鏡筒内により大きな空間を確保すると共に、レンズ保持枠の作成を容易にし、かつコストを低減することのできるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】上記の目的を達成するために本発明によるレンズ鏡筒は、レンズを保持するとともに、回動部材に設けられたカム溝に嵌合する嵌合部を有し、上記回動部材の回動に応じて光軸方向に進退する保持枠を有したレンズ鏡筒において、上記保持枠を円周方向に複数に分割し、この各分割片をレンズに固着するとともに、該各分割片に上記嵌合部を一体成型する。
【0010】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0011】図1は、本発明の1実施例を示すレンズ鏡筒の側断面図である。
【0012】この実施例のレンズ鏡筒は、4群レンズ構成を有しており、第1レンズ群L1は、光軸方向に移動することでフォーカス調整を行う合焦用レンズ群、第2,第3レンズ群L2,L3は、ともに光軸方向に移動することでズーム機能を行うズームレンズ群である。なお、第4レンズ群L4は、その光軸をカメラ本体に対して固定されるようになっている。
【0013】図に示すように、固定枠1の外周には、光軸廻りには回動可能で光軸方向には不動であるカム環2が該固定枠1の外周面に摺動可能に配設されている。このカム環2の内周面には2本の曲線状のカム溝2a,2bが刻設されており、また、上記固定枠1の枠部には、上記カム溝2a,2bとは異なる曲線状であって、該カム溝2a,2bとそれぞれ交差する2本のカム溝1a,1bが貫設されている。そして、上記カム溝2aとカム溝1aとで、また、上記カム溝2bとカム溝1bとで、それぞれ上記第2レンズ群L2を保持する第2レンズ群保持枠4の周方向の先端部,上記第3レンズ群L3を保持する第3レンズ群保持枠5の周方向の先端部を嵌合させるように各レンズ群保持枠が配設されている。これにより、カム環2を光軸廻りに回動させることで、上記各レンズ群保持枠L2,L3を光軸方向に摺動させ所定の焦点距離を得ることができる。
【0014】また、上記固定枠1内部のカメラ本体(図示せず)側の、第4レンズ群保持枠6にはズームモータ10が固着されている。このズームモータ10の回動量は常に不図示の検出機構により検出され該回動量が制御されるようになっていて、該モータ10の出力ピニオンギヤー10aは減速ギヤー列(図示せず)を介してズームギヤー8に噛合するようになっている。さらに、該ズームギヤー8は、上記カム環2の基端側内周面の周方向に刻設された内歯ギヤー2cに噛合するように配設されているため、上記ズームモータ10の回動を制御することでカム環2の回動量の制御が可能となり、上述したように所定の焦点距離を得ることができる。
【0015】固定枠1の先端部の内周には、上記第1レンズ群L1を保持する第1レンズ群保持枠3が、光軸方向に直線状に貫設された直線溝1eとピン3aとにより光軸方向に摺動可能となるように配設されている。
【0016】また、該固定枠1内部の中央付近にはフォーカスモータ9がねじ9bにより固定された支持部に固着されている。このフォーカスモータ9の回動量は、上記ズームモータ10と同様に常時、不図示の検出機構により検出され該回動量が制御されるようになっていて、該モータ9の出力ピニオンギヤー9aは減速ギヤー列(図示せず)を介してフォーカスギヤー7に噛合するようになっている。このフォーカスギヤー7は、その支軸7aの基端部が、上記固定枠1の中央付近に突設したフランジ1fに貫設された挿通孔にて回動自在に軸支されている。そして、該支軸7aの先端部はねじ部となっていて上記第1レンズ群保持枠3と螺合しており、該フォーカスギヤー7の回動により該第1レンズ群保持枠3が光軸方向に摺動するようになっている。これにより、上記フォーカスモータ9の回動を制御することで該第1レンズ群保持枠3の制御が可能となり、所定のフォーカス調整を行うことができる。
【0017】上記第2レンズ群保持枠4および第3レンズ群保持枠5は、図2に示すように、それぞれ3分割されていて(図2においては、第2レンズ群保持枠4のみを示す)、その周方向の先端部は、上記カム溝1a,1b,2a,2bに上述したように嵌合している。また、上記各レンズ群保持枠4,5の周方向の基端は、それぞれのレンズ群L2,L3の外周面に接着剤等で固定されている。
【0018】次に、レンズ鏡筒内への上記各レンズ群保持枠4,5の組み付け方法を説明する。
【0019】まず、固定枠1の光学基準面1c,1dに治具11および治具12の基端部の基準位置11c,11dを当接させる。この治具11および12は、ともに上記基準位置11c,11dを上記光学基準面1c,1dに当接するようにしてレンズ鏡筒内に挿入することで、その先端部の、該基準面1c,1dに対する光軸上の寸法を規定できるようになっている。そして、該治具11,12をガイドとして、それぞれ上記第3レンズ群保持枠5,第2レンズ群保持枠4を、固定枠1の円周方向より組み付ける。そして、各レンズ群保持枠4,5の周方向の基端を上述したように各レンズ群L3,L2の周面に接着剤等で固着した後、上記治具11,12をレンズ鏡筒内より抜脱する。
【0020】このとき、上記レンズ群保持枠4,5の周方向の先端部は固定枠1のカム溝1a,1bよりやや突出した状態となっている。この後、固定枠1の外周より前記カム環2を装着し、該先端部を前記カム溝2a,2bに嵌合させる。なお、この嵌合方法については、本出願人による特願平3−129921号において詳細に述べられているが、複数のカム溝を、それぞれの一端にて、カム環の前端もしくは後端まで延びる共通のカム溝に連結することで実現できる。すなわち、本実施例においては、カム環2の基端側に上記各カム溝の一端に共通のカム溝(図示せず)を設けることで、上記各レンズ群保持枠4,5の先端部をそれぞれカム溝2a,2bに巧みに嵌合することが可能となる。
【0021】上述したように、3分割された各レンズ群保持枠を固定枠およびカム環にそれぞれ設けられた3本づつのカム溝に嵌合することで、一般に使用される3本吊り構造を形成することができ、該各レンズ群枠を光軸上に偏心しない位置に配置することが可能である。
【0022】また、この実施例によれば、(1)保持枠を3分割することで、従来より問題となっていたアンダーカット部を1方向より型で抜くことが可能となる。
【0023】(2)また、1方向より型で抜けるので、従来は部品の1個取りが一般的であったが、本実施例によると多数個取りが可能となり、部品コストの低減を図ることができる。
【0024】(3)レンズ保持枠を固定枠の円周方向より組み付けることが可能となるため、複雑なレンズ鏡筒においても設計的なスペースに余裕ができ、かつ、レンズ鏡筒自体の小型化も可能となる。
【0025】(4)撮影レンズ外周に対して一体となるべき箇所が分割されて空間部となったことで、この空間部にモータ等を配置することができ、レンズ鏡筒の小型化につながる。
【0026】(5)レンズ保持枠とカムフォロアーを一体に成形することができるので、精度を向上させることが可能となった。
【0027】(6)治具を使用することで、撮影レンズを正確な位置に固着することができるので、レンズ保持枠およびレンズ基準位置の必要となるレンズ鏡筒内の部品の精度を上げる必要がなくなるために、容易な設計およびコストの低減が実現できる。
【0028】という、効果が期待できる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、保持枠を円周方向に複数に分割し、この各分割片をレンズに固着するとともに、該各分割片に上記嵌合部を一体成型したので、レンズ鏡筒内により大きな空間を確保すると共に、レンズ保持枠の作成を容易にし、かつコストを低減を可能とするレンズ鏡筒を提供するができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示すレンズ鏡筒の側断面図。
【図2】上記実施例における第2レンズ群保持枠とその周辺部を示した光軸方向より見た側断面図。
【図3】従来のレンズ鏡筒を示す分解斜視図。
【符号の説明】
1…固定枠
2…カム環
3…第1レンズ群保持枠
4…第2レンズ群保持枠
5…第3レンズ群保持枠
6…第4レンズ群保持枠
7…フォーカスギヤー
8…ズームギヤー
9…フォーカスモータ
10…ズームモータ
11,12…治具
1a,1b,2a,2b…カム溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】レンズを保持するとともに、回動部材に設けられたカム溝に嵌合する嵌合部を有し、上記回動部材の回動に応じて光軸方向に進退する保持枠を有したレンズ鏡筒において、上記保持枠を円周方向に複数に分割し、この各分割片をレンズに固着するとともに、該各分割片に上記嵌合部を一体成型するようにしたことを特徴とするレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−257049
【公開日】平成5年(1993)10月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−55449
【出願日】平成4年(1992)3月13日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)