説明

レンズ駆動装置

【課題】本発明は、簡単な構成をもって、可動部が進退する際の無通電保持を可能にしたレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1において、固定枠4には、可動部3の移動領域の両端に、磁性体からなる磁気吸引プレート15,16が配置されているので、固定枠4内で可動部3が一方の側又は他方の側に移動し、固定枠4の端に可動部3が達すると、可動部3に設けられたマグネット7が、固定枠4に設けられた磁気吸引プレート15,16に磁気吸引され続ける。その結果、コイルが無通電状態になっても、可動部3をその位置に保持させ続けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル機器、携帯電話、カメラのレンズ鏡筒に搭載されてオートフォーカスレンズモジュールとして利用されるレンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実用新案登録第3124292号公報がある。この公報に記載されたレンズ駆動装置には、四隅に支持部が立設された底蓋と、支持部の内側に配置される上蓋とで固定枠が構成され、この固定枠の四隅には、マグネットが固定されている。固定枠内には、可動部が配置され、この可動部の一部をなすレンズホルダには、レンズ及びコイルが固定されている。更に、固定枠内には、可動部を一方向に付勢する螺旋バネが収容され、この螺旋バネの内側には可動部が配置されている。このようなレンズ駆動装置にあっては、可動部のコイルに通電されると、可動部は、螺旋バネの付勢力に抗して一方の端に向けて移動し、無通電状態で可動部は、螺旋バネの付勢力によって、固定枠の他方の端で保持され続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3124292号公報
【特許文献2】特開2007−139810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のレンズ駆動装置は、螺旋バネが利用され、コイルへの無通電状態にあっては、固定枠の他方の端で保持させ続けることができるが、固定枠の一方の端で可動部を保持させるためには、常にコイルに通電させておく必要があり、これによって、可動部の保持時に電力を消費するといった問題点がある。
【0005】
本発明は、簡単な構成をもって、可動部が進退する際の無通電保持を可能にしたレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レンズと、レンズを保持する可動部と、可動部を直線的に移動可能に保持する固定枠と、を備え、
可動部は、その移動方向に沿って延在する磁石が配されていて、固定枠は、磁石と対面するようコイルが配されると共に、可動部の移動領域の両端に磁石が配されていることを特徴とする。
【0007】
このレンズ駆動装置において、固定枠には、可動部の移動領域における両端に、磁性体が配置されているので、固定枠内で可動部が一方の側又は他方の側に移動し、固定枠の端に可動部が達すると、可動部に設けられたマグネットが、固定枠に設けられた磁性体に磁気吸引され続ける。その結果、コイルが無通電状態になっても、可動部をその位置に保持させ続けることができる。さらに、このレンズ駆動装置は、可動部にマグネットが搭載されているので、ムービングマグネット型であり、コイルへの配線が固定枠側でなされ、配線の断線を防止することができ、構造の簡素化が容易になる。しかも、従来のように、螺旋バネを収容するスペースを固定枠内に設ける必要がないので、このスペース分だけ固定枠を小さくすることが可能になる。このことは、レンズ駆動装置の小型化に極めて有利である。
【0008】
また、固定枠には、可動部の移動領域における両端に開口部が設けられると共に、固定枠の開口部を囲むように磁性体としての磁気吸引プレートが固定されていると好適である。
このように、磁性体がプレート状をなしているので、設置スペースを必要最小限に抑えることができ、レンズ駆動装置の小型化を有利にする。しかも、磁気吸引プレートが固定枠の開口部を囲むように配置されているので、磁気吸引プレートの大型化を可能にし、これによって、可動部のマグネットに対する磁気吸引力を高めることができる。このことは、可動部の位置保持性能の向上化を図ることができる。
【0009】
また、固定枠の両側の開口部を連絡する可動部通路には、可動部の移動方向に延在する案内部材が平行に配置され、案内部材に沿って可動部が摺動すると好適である。
このように、案内部材を採用することで、可動部をスムーズに移動させることができ、しかも、落下衝撃時において、可動部が固定枠内で暴れることを回避できる。これによって、可動部のスピーディな移動や、可動部及び固定枠の破損を防止することができる。
【0010】
また、可動部通路は、矩形でコーナ部を面取したような断面形状をなし、可動部通路の面取部分は、可動部通路の中心軸線に対して対称に位置し、この面取部分に案内部材が配置され、可動部は、可動部通路に略合致した外形を有すると好適である。
このように、可動部通路は、矩形でコーナ部を面取したような断面形状を有し、可動部は、可動部通路に略合致した外形を有しているので、可動部通路内で可動部がレンズの光軸を中心として回り難くなり、光軸ズレを回避させることができる。しかも、可動部通路の面取部分に案内部材が配置されているので、案内部材の設置スペースの適切化が図られ、このことは、レンズ駆動装置の小型化に極めて有利である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成をもって、可動部が進退する際の無通電保持を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレンズ駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたレンズ駆動装置の正面図である。
【図3】図1に示されたレンズ駆動装置の側面図である。
【図4】図1に示されたレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図5】レンズ駆動装置の内部構造を示す半断面図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】可動部が移動した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るレンズ駆動装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図4に示すように、レンズ駆動装置1は、レンズ2が固定された可動部3が、固定枠4内で直線的に移動する小型のオートフォーカスレンズモジュールとして利用される。レンズ2は、円筒状のレンズ鏡筒6内に設けられ、このレンズ鏡筒6の外周には、雄ネジ部6aが形成されている。
【0015】
レンズ鏡筒6が固定される樹脂製の可動部3は、筒状をなして、矩形をC面取りしたようなコーナ部Rを有し、外周面には、矩形の平板状をなす4枚のマグネット7のそれぞれを収容するための凹部3bが形成されている。さらに、可動部3の中央には、光軸L方向に延在するレンズ装着孔3cが設けられ、このレンズ装着孔3cの壁面には、レンズ鏡筒6の外周に形成された雄ネジ部6aに螺合する雌ネジ部3aが形成されている。
【0016】
各マグネット7には、光軸Lに対して直交する方向にS極とN極とが着磁され、光軸L方向すなわち可動部3の移動方向に沿って延在している。そして、可動部3の凹部3b内に装着されたマグネット7は、接着剤により固定されている。
【0017】
可動部3の外側に配置されるフレーム形状の樹脂製固定枠4は、フレーム形状をなして、互いに平行をなす矩形リング状の外枠10,11と、外枠10,11のコーナに配置されると共に、光軸L方向に延在して外枠10と外枠11とを連結する4本の支柱部12と、により構成されている。この固定枠4には、各支柱部12を掛け渡すようにコイル13が巻かれている。このコイル13は、マグネット7に対面するように固定枠4に巻回固定され、コイル13の各端部は、外枠11に固定された2本のターミナル14にそれぞれ結線されている。
【0018】
そして、ターミナル14から給電されると、マグネット7とコイル13との協働により発生する電磁力によって、可動部3を光軸L方向に移動させることができる。また、コイル13に流れる電流の向きを反転させることによって、可動部3を光軸L方向に直線的に進退させることができる。なお、支柱部12間には、空隙部4aが形成されているので、コイル13を露出させることができ、マグネット7とコイル13とを近づけるような対面を可能にしている。
【0019】
さらに、固定枠4の外枠10,11には、光軸L方向(可動部3の移動方向)における両端に開口部10a,11aが設けられ、固定枠4には、開口部10aと開口部11aとを連絡して光軸L方向に延在する可動部通路Sが設けられている。この可動部通路Sは、矩形でコーナ部を面取したような断面形状を有し、可動部3の外形に略合致した形状になっている。この面取部分Cは、断面略三角形状の支柱部12の内壁面である。
【0020】
固定枠4には、光軸L方向における可動部3の移動領域の両端に、磁性体(例えば鉄)としての磁気吸引プレート15,16が配置されている。各磁気吸引プレート15,16は、外枠10,11にそれぞれ固定され、各磁気吸引プレート15,16は、開口部10a,11aを囲むように配置されている。
【0021】
図5及び図6に示すように、各磁気吸引プレート15,16は、外枠10,11の開口部10a,11aより小さな開口部15a,16aを有し、これによって、開口部10a,11aから磁気吸引プレート15,16を覗かせることができる。各磁気吸引プレート15,16の内周縁部Pは、開口部10a,11aの周縁を塞ぐように、開口部10a,11a側に向けて突出させられている。従って、光軸L方向において、内周縁部Pとマグネット7とが対向し、マグネット7と磁気吸引プレート15,16の磁力結合を確実にすることができる。更には、可動部3の進退時に、各磁気吸引プレート15,16の内周縁部Pに可動部3を突き当てることができるので、各磁気吸引プレート15,16を、可動部3のストッパとして機能させることができる。これにより、オートフォーカス時に可動部3を前端と後端で確実に停止させることができる(図6及び図7参照)。
【0022】
このように、磁性体15,16がプレート状をなしているので、設置スペースを必要最小限に抑えることができ、レンズ駆動装置1の小型化を有利にする。しかも、磁気吸引プレート15,16が固定枠4の開口部10a,11aを囲むように配置されているので、磁気吸引プレート15,16の大型化を可能にし、これによって、可動部3のマグネット7に対する磁気吸引力を高めることができる。このことは、可動部3の位置保持性能の向上化を図ることができる。
【0023】
図4及び図5に示すように、可動部通路Sには、光軸L方向に延在する円柱状の案内部材の一例であるガイドピン17,18が平行に配置され、ガイドピン17,18に沿って可動部3が摺動する。矩形でコーナ部を面取したような断面形状をなす可動部通路Sの面取部分Cは、可動部通路Sの中心軸線(光軸L)に対して対称に位置する。そして、対向する面取部分C1と面取部分C2とにガイドピン17,18が配置されている。面取部分C1,C2には、断面半円で光軸L方向に延在するガイドピン収容凹部12aが形成され、ガイドピン17,18の両端は、磁気吸引プレート15,16で挟まれるようにして保持されている。
【0024】
更に、可動部3には、矩形をC面取したようなコーナ部Rが設けられ、光軸L方向に延在する各コーナ部Rは、光軸Lに対して対称に位置し、可動部通路Sの面取部分Cとそれぞれ対面している。コーナ部Rのうちで面取部分C1,C2と対面するコーナ部R1,R2には、光軸L方向に延在するV溝20,21が形成されている。ガイドピン17,18がV溝20,21の壁面に線接触することで、可動部3の軸線L方向の摺動を確実に行わせることができる。
【0025】
このように、ガイドピン17,18を採用すると、可動部3を光軸方向にスムーズ且つスピーディに移動させることができる。しかも、落下衝撃時において、可動部3が固定枠4内で暴れることを回避でき、可動部3及び固定枠4の破損を防止することができる。
【0026】
本実施形態では、案内手段としてガイドピンを用い、可動部3を光軸L方向に案内しているが、ボールとすることで摺動性を向上させてもよい。また、ガイドピンをモールド成形することで部品点数の削減を図ってもよい。
【0027】
また、可動部通路Sは、矩形でコーナ部を面取したような断面形状を有し、可動部3は、可動部通路Sに略合致した外形を有しているので、可動部通路S内で可動部3が光軸Lを中心として回り難くなり、光軸ズレを回避させることができる。しかも、可動部通路Sの面取部分C1,C2にガイドピン17,18が配置されているので、ガイドピン17,18の設置スペースの適切化が図られ、このことは、レンズ駆動装置1の小型化に極めて有利である。
【0028】
このようなレンズ駆動装置1において、固定枠4には、可動部3の移動方向(光軸L方向)における両端に、磁気吸引プレート15,16が配置されているので、固定枠4内で可動部3が一方の側(図6参照)又は他方の側(図7参照)に移動し、固定枠4の端に可動部3が達すると、可動部3に設けられたマグネット7が、固定枠4に設けられた磁気吸引プレート15,16に磁気吸引され続ける。その結果、コイルが無通電状態になっても、可動部3をその位置に保持させ続けることができる。
【0029】
図6に示すように、ターミナル14から給電されると、マグネット7とコイル13との協働により発生する電磁力によって、可動部3を前方に移動させ、マグネット7が磁気吸引プレート15に吸着される。その結果として、コイル13が無通電状態になっても、可動部3を前端位置に保持させ続けることができる。また、図7に示すように、ターミナル14から逆位相の電流が給電されると、マグネット7とコイル13との協働により発生する電磁力によって、可動部3を後方に移動させ、マグネット7が磁気吸引プレート16に吸着される。その結果として、コイル13が無通電状態になっても、可動部3をその後端位置に保持させ続けることができる。
【0030】
さらに、このレンズ駆動装置1には、可動部3にマグネット7が搭載されているので、ムービングマグネット型であり、コイル13への配線が固定枠4側でなされ、配線の断線を防止することができ、構造の簡素化が容易になる。しかも、従来のように、螺旋バネを収容するスペースを固定枠4内に設ける必要がないので、このスペース分だけ固定枠4を小さくすることが可能になる。このことは、レンズ駆動装置1の小型化に極めて有利である。
【0031】
さらに、図1〜図4に示すように、レンズ駆動装置1は、カバー30によって保護されており、このカバー30は、開口部31aを有する前壁31と、4面からなる側壁32によって、固定枠4を覆っている。そして、側壁32の後端には、左右一対の爪部33が設けられ、各爪部33を内側に折り曲げることで、固定枠4の抜け防止を図っている。
【符号の説明】
【0032】
1…レンズ駆動装置、2…レンズ、3…可動部、4…固定枠、7…マグネット、10a,11a…固定枠の開口部、13…コイル、15,16…磁気吸引プレート(磁性体)、17,18…案内部材(ガイドピン)、S…可動部通路、C1,C2…面取部分、L…光軸(可動部通路の中心軸線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズを保持する可動部と、
前記可動部を直線的に移動可能に保持する固定枠と、を備え、
前記可動部は、その移動方向に沿って延在する磁石が配されていて、前記固定枠は、前記磁石と対面するようコイルが配されると共に、前記可動部の移動領域の両端に磁石が配されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記固定枠には、前記可動部の移動領域における両端に開口部が設けられると共に、前記固定枠の前記開口部を囲むように前記磁性体としての磁気吸引プレートが固定されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記固定枠の両側の前記開口部を連絡する可動部通路には、前記可動部の移動方向に延在する案内部材が平行に配置され、前記案内部材に沿って前記可動部が摺動することを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記可動部通路は、矩形でコーナ部を面取したような断面形状をなし、前記可動部通路の面取部分は、前記可動部通路の中心軸線に対して対称に位置し、この面取部分に前記案内部材が配置され、前記可動部は、前記可動部通路に略合致した外形を有することを特徴とする請求項3記載のレンズ駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−113236(P2012−113236A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264100(P2010−264100)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】