説明

レンチウイルスベクターとその使用

本発明は、遺伝子治療、癌治療、抗体およびワクチンなどの組換えタンパク質の製造、および他の治療目的のためのレンチウイルスベクターに関する。例えば、高効率形質導入ベクターを調製するために用いることができる、反対方向にヘルパー配列および/または最小に機能的なLTR配列を含む、新規のレンチウイルスベクターを開示する。サイレンシングRNAおよびアンチセンスポリヌクレオチドを発現するベクターも設計した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照により本明細書にその全文が組み入れられる米国仮出願第60/653,386号(2005年2月16日出願);第60/660,310号(2005年3月10日出願);第60/682,059号(2005年5月18日出願);および第60/723,768号(2005年10月5日出願)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、レンチウイルスベクター、形質導入ベクター、レンチウイルス系、ならびにそれらを機能性ゲノム、薬物発見、標的バリデーション、タンパク質生産(例えば、治療タンパク質、ワクチン、モノクローナル抗体)、遺伝子治療、および治療のために使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
いずれかの本明細書に開示される方法は、本発明により提供される新規ベクターを用いて、または当技術分野で公知のレンチウイルスベクターおよび系、例えば可動化ベクター(mobilizing vector)(例えば米国特許第5,885,806号または第6,114,141号)または非可動化もしくは自己不活性化ベクター(例えば米国特許第5,994,136号または6,428,953)を用いて達成することができる。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、レンチウイルスベクター、形質導入ベクター、レンチウイルス系、ならびにそれらを機能性ゲノム、薬物発見、標的バリデーション、タンパク質生産(例えば、治療タンパク質、ワクチン、モノクローナル抗体)、遺伝子治療、および治療のために使用する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
レンチウイルス形質導入ベクター
本発明は、発現可能な目的のポリヌクレオチド配列を宿主細胞中に導入するために利用できるレンチウイルス形質導入ベクター、およびそれらを製造するための構築物に関する。レンチウイルス形質導入ベクターは、発現可能なポリヌクレオチド配列を含有するエンベロープで覆われたビリオン粒子であり、このビリオン粒子は標的宿主細胞に貫入し、それにより発現可能な配列を細胞中に運ぶことができる。
【0006】
エンベロープで覆われた粒子は、好ましくは、遺伝子操作されたまたは非レンチウイルスを含む他のウイルス種由来の天然のウイルスエンベロープタンパク質により作られた、上記粒子の宿主範囲および天然のレンチウイルスの感染性を変える偽型である。以下にさらに詳しく記載するように、この形質導入ベクターは広範囲の応用に利用することができ、かかる応用には、例えば、タンパク質生産用(ワクチン生産を含む)、遺伝子治療用、治療ポリペプチドを送達するため、siRNA、リボザイム、アンチセンス、および他の機能性ポリヌクレオチドを送達するためなどが含まれる。かかる形質導入ベクターは単一または二重の遺伝子を運ぶこと、および阻害性配列(例えば、RNAiまたはアンチセンス)を含んでもよい。ある特定の実施形態ではまた、形質導入ベクターはまた、転写活性の低い、しかし非存在ではない改変された3'LTRを含む核酸も運ぶ。
【0007】
レンチウイルスヘルパー構築物
本発明は、レンチウイルスヘルパー構築物(例えば、プラスミドまたは単離された核酸)を提供する。かかる構築物は、適合しうる宿主細胞において機能性レンチウイルス形質導入ベクターを生産してそのベクター中に発現可能な異種配列をパッケージするのに役立つエレメントを含有する。これらのエレメントには、構造タンパク質(例えば、gag前駆体)、プロテアーゼなどのプロセシングタンパク質(例えば、pol前駆体)、エンベロープタンパク質、および宿主細胞内でタンパク質を製造しかつ機能性ウイルス粒子を組立てるために必要な発現および調節シグナルが含まれる。以下に記載の実施形態は同じプラスミド上にエンベロープおよびgag-pol前駆体を含有するが、所望であれば、それらは別のプラスミド上に位置してもよく、gag、polおよびエンベロープタンパク質のそれぞれに対して別のプラスミドであってもよい。
【0008】
本発明のレンチウイルスヘルパープラスミドは、1以上の次のエレメントをいずれの好適な順序または位置に、例えば、a)レンチウイルスgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列(例えば、レンチウイルスgag-pol前駆体)と機能的に連結された機能性の天然のプロモーターを含むレンチウイルス5'LTR;およびb)エンベロープをコードする配列と機能的に連結された異種プロモーターを含んでもよい。レンチウイルス5'LTRは、場合により、天然の配列から上流に位置する異種エンハンサー配列を含有する。
【0009】
いずれかの好適なレンチウイルスの5'LTRを本発明に従い利用することができる、それにはいずれかのレンチウイルス種、亜種、株またはクレードから得たLTRが含まれる。これには、霊長類および非霊長類レンチウイルスが含まれる。種などの具体的な例としては、限定されるものでないが、例えば、HIV-1(亜種、クレードまたは株、例えばA、B、C、D、E、F、およびG、R5およびR5X4ウイルスなどを含む)、HIV-2(亜種、クレードまたは株、例えば、R5およびR5X4ウイルスなどを含む)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、サル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス、ジェンブラナ(Jembrana)病ウイルス、ヒツジレンチウイルス、ビスナウイルス、およびウマ感染性貧血ウイルスが挙げられる。かかるウイルスのゲノム配列、例えば、HIV-1(NC_001802)、HIV-2(NC_001722)、SIV(NC_001549)、SIV-2(NC_004455)、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(NC_001463)、サル-ヒト免疫不全ウイルス(NC_001870)、FIV(NC_001482)、ジェンブラナ病ウイルス(NC_001654)、ヒツジ(NC_001511)、ビスナウイルス(NC_001452)、ウマ感染性貧血ウイルス(NC_001450)、およびBIV(NC_001413)は、広く利用できる。
【0010】
レンチウイルスの5'LTRには、エンハンサー、プロモーター、転写開始(キャップ形成)、転写ターミネーター、およびポリアデニル化を含む遺伝子発現に利用されるシグナルが含まれる。これらは典型的にはU3、R、およびU5領域を有すると記載されている。LTRのU3領域はエンハンサー、プロモーターおよび転写調節シグナルを含有し、それにはRBEIII、NF-kB、Sp1、AP-1および/またはGABPモチーフが含まれる。TATAボックスは、5'LTRを得た種および株に応じて、R配列の始点からほぼ25塩基対の位置にある。完全に無傷の5'LTRを利用してもよいし、または改変されたコピーを利用してもよい。改変は、好ましくは、R領域に関わり、その場合、TAR配列は置換されている(下記参照)、および/またはU5領域の全てもしくは一部を欠失している。改変された5'LTRは、好ましくは、プロモーターおよびエンハンサー活性、例えば、好ましくは天然のU3、置換されたTARをもつR、および天然のU5を含む。
【0011】
5'LTRは、レンチウイルスgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列と機能的に連結されていてもよい。用語「機能的に連結された」は、LTRが列挙したコード配列の転写を駆動できる位置にあることを意味する。gagおよびpolコード配列は天然のレンチウイルスにおいてGag-Pol前駆体として組織化される。gag配列はp55とも呼ばれる55-kD Gag前駆体タンパク質をコードする。p55は成熟の過程で、ウイルスがコードするプロテアーゼ4(pol遺伝子の産物)により、MA(マトリックス[p17])、CA(カプシド[p24])、NC(ヌクレオカプシド[p9])、およびp6と呼ばれる4つの小タンパク質に切断される。pol前駆体タンパク質は、ウイルスがコードするプロテアーゼによりGagから切り離され、そしてさらに消化されてプロテアーゼ(p1O)、RT(p50)、RナーゼH(p15)、およびインテグラーゼ(p31)活性を分離する。
【0012】
1以上のスプライスドナー(SD)部位がヘルパープラスミドに存在しうる。スプライスドナー部位は典型的には5'LTRの3'末端とパッケージング配列の間に存在する。下流スプライスアクセプター(SA)も、例えば、pol配列の3'末端に存在しうる。SD部位は、複数コピーがベクター内のいずれの有効な位置に存在してもよい。SDは天然のレンチウイルスの配列を有してもよいし、またはその変異したコピーであってもよい。
【0013】
天然のGag-Pol配列をヘルパーベクターで利用してもよいし、または改変を加えてもよい。これらの改変(以下に詳しく記載した)はキメラGag-Polを含み、その場合、GagとPol配列を異なるウイルス(例えば、異なる種、亜種、株、クレードなど)から得る、ならびに/または上記配列を改変して転写および/もしくは翻訳を改善する、および/もしくは組換えを低減する。本発明の他の実施形態においては、gagとpol前駆体をコードする配列を分離し、そしてそれぞれの配列がそれ自身の発現シグナルを有する異なるベクター構築物上に置いてもよい。
【0014】
HIV-1のRNAゲノムは、ウイルス組み立て中にGagポリタンパク質のヌクレオカプシド(NC)ドメインにより認識されるほぼ120ヌクレオチドPsi-パッケージングシグナルを含有する。パッケージングシグナルの重要な部分は主スプライスドナー(SD)部位とgag開始コドンの間、HIVプロウイルスであれば、5'LTRのU5領域の遠位付近にある。ヘルパープラスミドのパッケージングシグナルは機能性を欠き、機能的に活性なgag-pol前駆体のウイルス形質導入ベクター中へのパッケージングを避ける。例えば、gagを含有するが、パッケージングシグナルを欠くベクターを記載する米国特許第5,981,276号(Sodroskiら)を参照されたい。
【0015】
さらなるプロモーターおよびエンハンサー配列を5'LTRの上流に配置して、gag-pol前駆体の転写を増加し、改善し、増強してもよい。有用なプロモーターの例には、哺乳動物のプロモーター(例えば、構成的、誘導的、組織特異的な)、CMV、RSV、他のレンチウイルスの種由来のLTR、および前にまたは後に記載した他のプロモーターが含まれる。
【0016】
加えて、プラスミドはさらに、プロモーター配列が駆動する転写を終結するために役立つpolyAシグナルなどの転写終結シグナルを含んでもよい。いずれかの好適なpolyA配列、例えば、βグロブリン(哺乳動物、ヒト、ウサギ他)、チミジンキナーゼ、成長ホルモン、SV40、その他多数からのpolyA配列を利用することができる。
【0017】
ヘルパー構築物はさらに、エンベロープコード配列と機能的に連結された異種プロモーターを含むエンベロープモジュールを含んでもよい。エンベロープポリペプチドはウイルス表面上に提示されて、ウイルス粒子による宿主細胞の認識および感染に関わる。宿主範囲および特異性は、エンベロープポリペプチドを改変または置換することにより、例えば、異なる(異種の)ウイルスの種により発現されたまたはそうでなければ改変されたエンベロープを用いて変えることができる。これは偽型(pseudotyping)と呼ばれる。例えば、Yeeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 9564-9568, 1994を参照されたい。水疱性口内炎ウイルス(VSV)タンパク質G(VSV G)が広く利用される、その理由は、その広範な種および組織向性ならびにその物理的安定性と高い感染性をベクター粒子に与える能力による。例えば、Yeeら、Methods Cell Biol., (1994) 43:99-112を参照されたい。
【0018】
利用しうるエンベロープポリペプチドは、限定されるものでないが、例えば、HIV gp120(天然のおよび改変された型を含む)、Moloneyマウス白血球病ウイルス(MoMuLVまたはMMLV)、Harveyマウス肉腫ウイルス(HaMuSVまたはHSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTVまたはMMTV)、テナガザル類人猿白血病ウイルス(GaLVまたはGALV)、Rous肉腫ウイルス(RSV)、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス(VSV-G)、Moloka、狂犬病、フィロウイルス(例えば、NP_066246およびQ05320を含む、GP1/GP2エンベロープなどのEbolaおよびMarburg)、両種指向性、アルファウイルス、などが含まれる。他の例には、例えば、トガウイルス科、ラブドウイルス科、レトロウイルス科、ポックスウイルス科、パラミキソウイルス科、および他のエンベロープで覆われたウイルス科由来のエンベロープタンパク質が含まれる。他のエンベロープの例は、全世界のwebに置かれた次のデータベース:ncbi.nlm.nih.gov/genomes/VIRUSES/viruses.htmlに掲げられたウイルス由来である。
【0019】
さらに、ウイルスのエンベロープタンパク質を改変または遺伝子操作して、形質導入ベクターがその通常範囲外の宿主細胞を標的化しかつ感染するかまたは形質導入を細胞または組織型にさらに特異的に限定することを可能にするポリペプチド配列を含有させることができる。例えば、エンベロープタンパク質を、レセプターリガンド、抗体(抗体の抗原結合部分または1本鎖抗体などの組換え抗体型分子を用いる)およびポリペプチド部分またはそれらの改変物(例えば、グリコシル化部位が標的化する配列中に存在する)などの標的化する配列とフレーム内で接合して、形質導入ベクターコート上に提示されるときにウイルス粒子粒子の目的の標的細胞への定方向送達を促進することができる。さらに、エンベロープタンパク質はさらに細胞機能をモジュレートする配列を含んでもよい。形質導入ベクターにより細胞機能をモジュレートすると、細胞の混合集団中のある特定細胞に対する形質導入効率を増加または低下させうる。例えば、血液または骨髄中に見出される他の細胞型よりむしろ幹細胞と特異的に結合するリガンドまたは結合パートナーを含有するエンベロープ配列を用いて、幹細胞をさらに特異的に形質導入することができる。かかるリガンドは当技術分野で公知である。非限定的な例は幹細胞因子(SCF)およびFlt-3リガンドである。他の例としては、例えば、抗体(例えば、細胞型に特異的である1本鎖抗体)、および肺、肝臓、膵臓、心臓、内皮、平滑筋、乳房、前立腺、上皮、血管の癌などの組織に特異的である本質的にいずれかの抗原(レセプターを含む)が挙げられる。
【0020】
機能的に連結されているいずれかの異種プロモーターを利用して、ウイルスのエンベロープコード配列の発現を駆動することができる。例としては、例えば、CMV、E1Fα、E1Fα-HTLV-1ハイブリッドプロモーター、フェリチンプロモーター、誘導プロモーター、構成的プロモーター、および本明細書に記載の他のプロモーターなどが挙げられる。
【0021】
本発明のある好ましい実施形態においては、gagとpol配列をエンベロープ配列とは反対の転写方向に配置する。反対の転写方向とは、転写の方向が反対または逆転していることを意味する。これは、対応するプロモーターを反対方向に(すなわち、お互いに向かい合って)配置するかまたは二方向プロモーター(例えば、Trinkleinら、Genome Research 14:62- 66、2004)を用いることにより達成することができる。この配置は安全性を目的として、例えば組換えおよび/または機能性組換えHIVゲノムの生産のリスクを低減するために利用することができる。かかるベクターを用いて安全性を増加することができるのは、転写リードスルーが機能性gag-polとエンベロープ配列の両方を含有するRNAをもたらしうる可能性がないからである。転写妨害は転写を終結する強いポリアデニル化配列を利用することにより防止できる。強い転写終結配列の例は当技術分野で公知であり、それらには、例えば、ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル(LanoixおよびAcheson, EMBO J. 1988 Aug;7(8): 2515-22)が挙げられる。またPlantら, Molecular and Cellular Biology, April 2005, 3276-3285, Vol. 25、No. 8も参照されたい。さらに、他のエレメント、例えばcis作用性リボザイム、またはいずれかの推定リードスルー配列を標的化したRNAi配列、をgag-polとエンベロープコード配列の間に挿入して転写終結を促進することができる。同様に、不安定性配列、終結配列、および一時停止部位をコード配列間に配置することもできる。
【0022】
ヘルパープラスミドはさらに、5'LTRおよび/またはその中に存在するgagおよびpol配列と異なるレンチウイルスの種、グループ、亜種、サブグループ、株またはクレードから得られる、すなわちプラスミド構築物中に存在する他のレンチウイルスエレメントにとって異種であるTARエレメントを含んでもよい。このTARは好ましくは、5'LTR中のその通常の位置、例えば、LTRのU3とU5エレメントの間に存在し、例えば、その場合、天然のRが異種レンチウイルス種のR'により置き換えらる。異種TARエレメントを誘導することができる様々なレンチウイルス種の例は先に掲げた。
【0023】
TARエレメントは、ウイルスDNAの5'LTR(例えば、R)および対応するRNAの5'端末に位置するtrans-活性化応答領域または応答エレメントである。レンチウイルスのRNA中に存在すると、転写トランス活性化因子、Tatがこれと結合して、転写をHIV LTRから何倍も活性化する。Tatは、TARエレメントが形成する短いステムループ構造と結合するRNA結合タンパク質である。
【0024】
異種TARエレメントを利用すると、日常的手法でその天然のTARを他種のTAR配列と置き換えることによりその5'LTRを改変することができる。TAR領域の例は公知である。例えば、De Arelianoら, AIDS Res. Human Retro., 21:949-954, 2005を参照されたい。かかる改変されたレンチウイルスの5'LTRは、LTRが完全に機能性である無傷のU3およびU5領域を含みうる。TAR領域または全Rを置換してもよい。
【0025】
以上に示した通り、TatポリペプチドはTAR配列と結合する。Tatのコード配列はヘルパープラスミド中に存在してもよいし、またはパッケージング系の他のエレメント中に存在してもよい。例えば、Tatポリペプチドは、ウイルス形質導入ベクターを生産するために利用する細胞株のゲノム中に組み込まれてもよいしまたは細胞株中に導入される他のプラスミドまたはベクター構築物上に存在してもよい。TARと結合しかつRNAの転写を活性化することができる限り、いずれのTatポリペプチドを利用してもよい。かかるTatには、コグネイトTARエレメントと同種または異種から得られる天然のTat配列、ならびに遺伝子操作で作られたおよび改変されたTat配列が含まれる。
【0026】
ヘルパープラスミドはさらに、5'LTRまたはgagとpol配列と異なるレンチウイルス種から得られるRREエレメントを含むRREエレメントを含有する。RREエレメントは、13kD配列に特異的なRNA結合タンパク質であるrevポリペプチドとの結合部位である。RRE配列を含有する構築物はrevポリペプチドに依存して効率的に発現する。revは、HIVの第2イントロン内でpolとgagコード配列の遠位に位置するrev応答エレメント("RRE")の240塩基領域の複雑なRNA第2構造と結合する。revのRREとの結合は、スプライスされてないおよびスプライスの不完全なウイルスRNAの核から細胞質への搬出を容易にし、それによりHIVタンパク質の発現を調節する。RREエレメントは構築物上のいずれの好適な位置、好ましくはGag-Pol前駆体に続いて、ほぼ天然の位置にあってもよい。Tatポリペプチドと同じように、RREと結合する能力を保持する限り、いずれの好適なrevポリペプチドを利用してもよい。revのコード配列はヘルパープラスミド、トランスファープラスミド中に、別のプラスミド上に存在してもよいしまたは形質導入ベクター製造に利用する宿主細胞株中に組み込んでもよい。同様に、tatのコード配列はヘルパープラスミド、トランスファープラスミド中に、別のプラスミド上に存在してもよいしまたは形質導入ベクター製造に利用する宿主細胞株中に組み込んでもよい。
【0027】
本発明の構築物中に存在するいずれの配列を、それらの天然の型からから改変し、例えば、転写を改善し、翻訳を改善し、二次RNA構造を低減もしくは改変し、および/または組換えを減少させてもよい。改変には、例えば、ヌクレオチド付加、欠失、置換、および置換えが含まれる。例えば、gag、pol、rev、およびtatのコード配列を、天然コドンを非天然コドンにより置換えることによって改変し、例えば、天然コドンを宿主細胞においてもっと効率的に翻訳されるコドンにより置き換えることによって、宿主細胞における翻訳を改善することができる。例えば、配列が特定の宿主細胞型に発現されるとその配列改変がその効果を有することを示すために、その宿主細胞を適合しうる細胞(compatible cell)と呼んでもよい。さらに、配列を改変してパッケージング配列などの調節エレメントを除去することができる。配列を改変して組換え部位を排除することもできる。組換えのためのホットスポットの例は、例えば、Zhuangら, J. Virol, 76:11273-11282, 2002に開示されている。
【0028】
さらなる実施形態には、レンチウイルスベクターを生産するヘルパー系および次いでいずれかの所与のベクター構築物のプロデューサー細胞株に発展させうるパッケージング細胞株の開発が含まれる。かかる一実施形態は、レンチウイルスベクター生産を増加する細胞タンパク質の使用である。Sam68はKHドメインを含有するタンパク質のファミリーに属する。いくつかのKHタンパク質は翻訳レギュレーターである一方、他のKHは代わりのスプライシングに介在すると思われる。Sam68はin vitroおよびin vivoでHIV-1のRev応答エレメント(RRE)と結合し、そしてRREが介在する遺伝子発現およびウイルス複製において機能的にHIV-1 Revと置き換わるおよび/または相乗的に作用することができる(Modemら, Nucleic Acids Research, 2005, Vol. 33, 873-879)。さらにSam68はまた、他の複雑なレトロウイルスのRev様タンパク質の活性を増強することも示された。最近、Sam68は未スプライスHIV-1 RNAの3プライム末端プロセシングを増強し、細胞質へ搬出することが実証されている。Sam68以外のKHタンパク質(すなわちSLM-1、SLM-2、QKI-5、QKI-6およびQKI-7)もRev/RREが介在する遺伝子発現を増強する。しかし、試験したKHタンパク質の中で、Sam68だけがヒト細胞において構成的輸送エレメント(CTE)が介在するgag遺伝子発現を活性化することができる。Sam68はRevの存在のもとで過剰発現すると、Revと相乗的に作用して実質的にRREを含有するRNAの核からの搬出を増加する。Revの非存在のもとでのSam68の過剰発現もRREを含有するmRNAの核搬出を促進する。それ故に、プロデューサー細胞からのHIVに基づくレンチウイルスベクター生産を増加するために、Sam68をヘルパー構築物から発現させて細胞質中へのレンチウイルスベクターRNA搬出を促進しかつレンチウイルスベクター粒子の生産を増加させてもよい。Sam68はrev依存性またはrev非依存性であるヘルパー構築から発現させることができる。本発明はSam68に限定されるものでなく、HIV RNAに関連する他のタンパク質、例えばSF2/ASF、hRIP、hRNP Al、p54nrb/PSFおよびRRE BP49を標的化してもよい。逆に、HIV感染に対する遺伝子治療の一形態として、Sam68またはこれらの他のタンパク質を標的化するRNAiをレンチウイルスベクター中に挿入して野生型HIV RNAの搬出を阻害することもできる。HIV治療についてのさらなる詳細は以下を参照されたい。
【0029】
レンチウイルストランスファーベクター
本発明はまた、レンチウイルストランスファーベクターも提供する。トランスファーベクターは、形質導入レンチウイルスベクター中にパッケージされるポリヌクレオチド配列を含有する構築物である。5'LTRおよび3'LTRを含むトランスファーベクターは、宿主ゲノム中に組込み可能な形質導入ベクターの生産に用いることができる。かかる組込みは、例えば、ヘルパープラスミド上のpol配列に存在するインテグラーゼ分子を変異させることにより起こらないようにしてもよい。しかし組込みベクターは長期遺伝子送達にとっては好ましい。
【0030】
本発明のレンチウイルストランスファープラスミドベクターは、1以上の次の成分:a)レンチウイルス5'LTRポリヌクレオチド配列;b)上記5'LTRの遠位にあるパッケージング配列(psi);およびc)TATAボックス配列を含むが、上記TATAボックス配列に対して5'の3'U3配列を欠く改変されたレンチウイルス3'LTRを含みうる。少なくとも1つの発現可能な異種ポリヌクレオチド配列を、トランスファーベクター中に、例えば、パッケージング配列と3'LTRのU5領域の間に挿入することができる。
【0031】
いずれかの好適なレンチウイルス5'LTR配列をトランスファーベクターに配置することができる。かかる配列は無傷でかつ全く天然であってもよく、またはかかる配列を上記のように、例えば、TAR配列を異種TAR配列(R)により置き換えることにより、またはその中のヌクレオチドを非天然ヌクレオチドと置き換えることにより改変して組換え事象を最小化してもよい。先に記載した5'LTRは既存のU3、R、およびU5領域を有するが、それらの機能特性を保持するような方法で、5'LTRを改変してもよい。
【0032】
上記5'LTRの遠位にあるパッケージング配列(psi)も、トランスファーベクター内に存在してもよい。GagのNCドメインにより認識されるこの配列(約110ヌクレオチド)をin cisで利用して目的の異種配列の形質導入ベクター中への封入を促進することができる。例えば、Leverら, J. Virol. (1989), 63: 4085-4087;Amarasingheら, J MoI. Bio. (2001), 314(5):961-970を参照されたい。psiパッケージング配列は相対的に隣接配列に対して自律性である。トランスファーベクター中のその位置は日常的手法で確認することができる。例えば、ManおよびBaltimore, J Virol., 54(2): 401-407, 1985(この方法はレポーター遺伝子を用いてパッケージング配列の位置を最適化する)を参照されたい。
【0033】
トランスファーベクターはまた、レンチウイルスの3'LTRを含んでもよい。3'LTRは、それぞれPPTおよびPBS配列にフランキングするU3、RおよびU5領域を有する。3'LTRは無傷および天然であってもよいが、好ましくは改変される。好ましくは、改変は、最小量の機能活性、例えば転写(プロモーター−エンハンサー)機能活性を保持するLTRを生産するものを含む。かかる転写活性は日常的手法で、例えば、レポーター遺伝子を用いて確認することができる。(天然の3'LTRと比較して)削減しかつ最小の機能活性をもつLTRを生産する改変の例には、例えば、TATAボックスの5'(上流)にあるU3領域の欠失が含まれる。かかる欠失は、例えば、1以上の次の転写調節部位、例えばRBEIII、NF-kB、および/またはSp1、ならびにPPT部位の欠失または改変を含んでもよい。最小の転写活性をもつ3'LTRの一例には、TATAボックス配列を含むが、上記TATAボックス配列の5'にある3'U3配列を欠くかまたは5'配列が改変(欠失、置換、付加)されてそれらの機能的活性がない改変されたレンチウイルス3'LTRが含まれる。例えば、NF-kBおよびSp1部位を、それらが不活性であるおよび/または調節性タンパク質と結合できない点まで、突然変異させることができる。5'上流領域の欠失は、TATAボックスのTヌクレオチドから約5、10、15、20、25、30、40、50などのヌクレオチドの欠失を含む。残留する(天然のLTRと比較して)転写活性の量は、例えば、約0.1〜1%、0.1〜2%、0.1〜5%、0.1〜10%、0.1〜20%、0.1〜25%、0.5〜5%、0.5〜10%、0.5〜20%、0.5〜25%;約0.1%;約0.5%;約1%;約2%;約5%;約7%、約10%などであってもよい。
【0034】
U3領域の5'末端は組み込みのために必要である(末端ジヌクレオチド+att配列)。従って、末端ジヌクレオチドとそのatt配列は欠失しうるU3配列の5'境界を表しうる。さらに、トランスファーベクターは中央ポリプリン配列の上流または下流のいずれかに配置しうるRRE配列を含んでもよい。RREまたは中央ポリプリン配列は、天然または非天然(異種)のレンチウイルスベクター配列由来であってもよい。
【0035】
発現可能なコード配列、例えば、発現可能なshRNA、リボザイム、アンチセンス、マイクロRNAおよびアプタマー配列を含む異種配列の挿入により、3'LTRの5'領域(例えば、U3)を機能的に破壊してもよい。これらの配列をpol IIおよびpol III(例えば、ヒトU6、マウスU6、およびヒトH1、7SK)プロモーターから発現させてもよくそしてベクターゲノムにおいて3'LTR内にまたは3'LTRの上流に、および5'LTRの下流に配置してもよい。プロモーターについては、例えば、Werner, T. (1999). 「真核生物プロモーターの予測および認識のためのモデル(Models for prediction and recognition of eukaryotic promoters)」. Mammalian Genome 10, 168-175を参照されたい。
【0036】
しかし、改変された3'LTRは、遺伝子操作したU3領域、例えばPPT、RおよびU5の外側に配列を保持してもよい。5'LTRについては、R領域のTARエレメントを異なるレンチウイルス種または亜種由来の異種TAR配列を用いて置き換えてもよい。
【0037】
ウイルス転写は5'LTRのU3領域の3'末端で始まるので、これらの配列はウイルスmRNAの一部分でない、そして3'LTRからのそれらのコピーは組み込まれたプロウイルスの両方のLTR'を作製するためのテンプレートとして作用する。もしU3領域の3'LTRコピーがベクター構築物中で改変されても、プロデューサー細胞ではベクターRNAはなお無傷の5'LTRから生産される、しかし標的細胞では再生され得ない。かかるベクターの形質導入は、子孫ウイルス中の両方のLTR'の不活性化をもたらす。従って、レトロウイルスは自己不活性化(SIN)であり、かかるベクターはSINトランスファーベクターとして公知である。例えば、Mittaら., Nucl. Acid Res., 30(21):e113, 2002;Zuffereyら, J. Virol, 72:9873-9880, 1998;米国特許第6,428,953号 (Naldiniら)を参照されたい。
【0038】
発現可能な異種ポリヌクレオチド配列をトランスファーベクター中に、例えばパッケージング配列と3'LTRの間に導入することができる。発現可能な配列は、ウイルス形質導入ベクター中に封入されそして本質的にその有効な積荷(payload)である配列である。目的のいずれの異種配列をトランスファーベクター中に挿入してもよく、上記配列には、限定されることなく、治療タンパク質、酵素、および抗体などをコードする配列;siRNA;アンチセンス;マイクロRNA、アプタマー;リボザイム、いずれかの遺伝子抑制性またはサイレンシング配列;ならびにレンチウイルス形質導入ベクターを介して宿主細胞に送達されるいずれかの配列が含まれる。
【0039】
用語「発現可能な」は、当該ポリヌクレオチド配列が細胞内で転写および翻訳されうることを示す。発現性を与える配列としては、例えば、エンハンサー、プロモーター、ポリメラーゼ結合部位、リボソーム結合部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、ポリアデニル化シグナル、転写開始および終結配列などが挙げられる。
【0040】
以上に記載したいずれかのプロモーターを利用して、それと機能的に連結された異種配列の発現を駆動してもよい。本発明のベクターが細胞傷害性または細胞分裂停止ポリペプチド(すなわち、宿主細胞に有害な産物を発現する遺伝子)をコードするとき、好ましくは、誘導プロモーター系がそのコード配列と機能的に連結されていて、遺伝子発現が必要でないときにはその発現を調節して宿主毒性を最小限にすることができる。例えば、テトラサイクリンで調節可能な遺伝子発現系(Gossenand Bujard、Proc. Natl. Acad. Sd.、89:5547-5551、1992)を用いて、導入した細胞からテトラサイクリンが取除かれたときに遺伝子の誘導性の発現を提供することができる。
【0041】
遺伝子発現を誘導制御するために用いることができる他の系は、プロモーターを含有する応答エレメントを利用する系である。かかる系においては、プロモーターを含有するエレメントが結合されると、プロモーターは不活性になる。例えば、高濃度の誘導因子が高い転写活性に関係する場合、誘導因子リガンドはプロモーターを定量的にオンに切替える。例えば、RheoSwitch(登録商標)遺伝子調節系は3つの主構成要素:標的遺伝子のプロモーター領域と結合する独占RheoCept(登録商標)タンパク質レセプター、調節すべき標的遺伝子、および独占小有機分子リガンド誘導因子を有する。プロモーターは、レセプターが結合するユニークな応答エレメントを含有し、そして誘導因子がレセプターと結合しかつ転写を活性化するときにのみ、標的遺伝子発現がオンに切り替わる。例えば、Kumarら、J. Biol. Chem.、Vol. 279、Issue 26、27211-27218、June 25、2004、「高度にフレキシブルなエクジソンレセプターのリガンド結合部位ポケット:単一アミノ酸変化が2グループの非ステロイド系エクジソンアゴニストの間の区別を可能にする(Highly Flexible Ligand Binding Pocket of Ecdysone Receptor: A single amino acid change leads to discrimination between two groups of nonsteroidal ecdysone agonists)」を参照されたい。誘導性の系はまた、ベクターにより形質導入された細胞を殺滅できる遺伝子を組み込むことにより、ベクターの安全性を増加するために用いることもできる。この応用では、誘導プロモーターが第2遺伝子を発現し、第2遺伝子が第2誘導プロモーターの発現を調節し、次いで第2誘導プロモーターが活性化すると形質導入された細胞を殺滅する「自殺」または安全遺伝子を発現することができる。二重調節性「スイッチ」の利点は、最初に誘導されるまで、自殺または安全遺伝子が発現されない、従って、もし免疫原性であっても、少なくとも1つのプロドラッグが加えられて誘導遺伝子の1つの発現を刺激するまで発現されないことである。二重調節性スイッチの他の利点は、プロドラッグの非存在の
もとでのバックグラウンド発現が単一スイッチを採用するときよりはるかに低いことである。自殺または安全性遺伝子の発現で実際に細胞を死滅させるためには、少なくとも第2プロドラッグが必要でありうる。非限定の一例では、第1誘導プロモーターから転写調節タンパク質が発現し、この調節タンパク質が次いで第2誘導系と結合してこれを増強し、この第2誘導系が順に目的のいずれかの遺伝子(好ましくは自殺または安全遺伝子である)を発現する。この非限定の一例は、プロドラッグの付加によりそれ自身が活性化される自殺または安全遺伝子を発現する単一誘導プロモーターの使用に限定することを意味しない。以上の例はまた、安全または自殺遺伝子の使用に限定することを意味せず、いずれの目的の遺伝子または配列をかかる二重誘導発現系から発現させてもよい。
【0042】
トランスファーベクターのフレキシビリティを増加しかつあるモジュールのベクター系を作製するために、さらにマルチクローニングサイト(MCS)をベクター中に組み込んで目的の異種配列の挿入を容易にすることができる。このMCSは、いずれかのプロモーター、単一遺伝子、2つの遺伝子、場合により、アンチセンスなどの遺伝子抑制配列、リボザイム、shRNA、RNAi、マイクロRNA、アプタマー、トランスドミナント変異体タンパク質等々の導入を容易にする。好ましい実施形態は、そのヌクレオチド配列が細胞の内因性遺伝子について縮重されたコドンであるように改変された目的の遺伝子の発現であり、そしてさらに同じベクターが、天然の目的の遺伝子を抑制またはサイレンシングすることができる遺伝子抑制配列またはサイレンシング配列を発現する。この手法は、これらのドメイン中で改変された目的のタンパク質を発現し、かつ、同時に、目的の天然の非改変遺伝子の発現を抑制またはサイレンシングする遺伝子抑制性またはサイレンシング配列を発現することにより、様々なタンパク質ドメインの機能を理解するのに大きな効用を有する。本出願はまた、疾患を治療するための遺伝子治療手法にも用いることができる。例えば、β-ヘモグロビンを標的化するRNAiを発現するレンチウイルスベクターは鎌型赤血球貧血の患者における鎌形ヘモグロビンを抑制またはサイレンシングすることができる。上記レンチウイルスベクターはまた、RNAiが標的化する部位においてコドンが縮重されている正常ヘモグロビン分子を発現することもできる。この方法で、鎌形グロビンを発現する赤血球を抑制することができる一方、天然のヘモグロビンを発現して遺伝異常を是正することができる。レンチウイルスベクターを幹細胞集団中に送達し、上記集団がヘモグロビンを発現する赤血球系細胞を生じ、そして最後は赤血球になりうる。本手法は、癌、遺伝病および感染性疾患を含む、様々な疾患を治療するために利用することができる。
【0043】
トランスファーベクターはさらに、例えば、次の順に配置された他の追加のエレメントを(既に記載したエレメントと共に)含んでもよい:5'LTR、PBS、パッケージング配列、スプライスドナー(SD)、複製起点、場合により中央ポリプリン路(PPT)、RRE、MCS、スプライスアクセプター(SA)、および改変された最小限に機能性の3'LTR。発現可能な異種ポリヌクレオチド配列は、スプライスドナー部位と3'LTRのU5領域の間に挿入することができる。トランスファーベクターはまた、ヘルパーベクターについて先に記載した1以上のSD(天然のまたは改変された)部位を含有してもよい。
【0044】
複製起点を用いて、構築物(宿主細胞内に存在する場合)のコピー数を増加することができる。この目的には、例えば、HEK293-T細胞などのSV40ラージT抗原を生産する細胞中のSV40 oriが通常使用される。
【0045】
トランスファーベクター中に提供することができ、かつMCSの3'に存在する他のエレメントとしては、例えば、合成イントロンまたは安定性mRNAに利用される他の配列、単一mRNAからの2つのオープンリーディングフレームの翻訳を容易にする内部リボソーム侵入部位(IRES)、選択マーカー、および転写終結シグナル(例えば、ポリアデニル化部位)が挙げられる。
【0046】
他のエレメントを用いて2つのオープンリーディングフレームの発現を容易にすることができる。1つの例は、予め定めた部位のポリペプチドの切断を容易にする2A/2Bペプチド配列である(Szymczakら, Nature Biotechnology 22: 589-594、2004)。この方法では、自己切断2A配列によって分離される2つのポリペプチド配列をレンチウイルスベクターから単一オープンリーディングフレームより生産することができる。他の例は内部リボソーム開始配列またはIRESエレメントを使用するものであり、限定されるものでないが、ピコルナウイルスまたは口蹄疫ウイルスからのこれらが非限定の2例である。Donnellyら, J. Gen. Virol., 82:1013-1025, 2001も参照されたい。
【0047】
本発明はまた、トランスファーベクター構築物であって、例えば、a)天然のレンチウイルスのgagとpol(またはそれらの断片)をコードするポリヌクレオチド配列と機能的に連結された機能性の天然のプロモーター、および上記天然のプロモーターが駆動する転写を終結するために有効である異種polyAシグナルを含み、その場合、翻訳終結シグナルはgag-pol配列のスタートの下流に存在するレンチウイルス5'LTR、ならびにb)gag-pol配列の下流に位置する異種ポリヌクレオチド配列と機能的に連結された異種プロモーターを含む上記トランスファーベクター構築物も提供する。
【0048】
本発明はまた、発現構築物であって、a)天然のレンチウイルスのgagとpol(およびそれらの断片)をコードするポリヌクレオチド配列と機能的に連結された機能性の天然のプロモーターを含むレンチウイルス5'LTR、および上記天然のプロモーターが駆動する転写を終結するために有効である異種polyAシグナル(その場合、翻訳終結シグナルはgag-pol配列のスタートの下流に存在する)、b)gag-pol配列の下流に位置するスプライスアクセプター部位、およびc)5'LTRプロモーターと機能的に連結されたgag-pol配列の下流に位置する異種ポリヌクレオチド配列を含む上記発現構築物も提供する。
【0049】
本発明のトランスファーベクターは、トランスファーベクターについて以上記載した、および/または典型的にはレンチウイルストランスファーベクターを含むエレメントのいずれを含んでもよい。gag-pol配列は以上に記載の転写ターミネーターの挿入によって実質的に完了してもよい、しかしまた、その部分的断片、例えば、パッケージング配列を含有する断片を利用することもできる。終結シグナルはgag-polコード配列中のいずれに配置してもよいが、gagコード配列の不完全コピーだけを発現してpolコード配列を発現しない位置に配置することが好ましい。異種ポリヌクレオチド配列は、開始コドンの下流でかつ5'LTRプロモーターと機能的に連結された位置に配置してもよい。かかる位置は日常的手法で確認することができる、例えば、レポーター遺伝子を用いて機能しうる連結を容易にする位置を確認することができる。異種配列を完全なgag-polコード配列中に、転写ターミネーターの下流に挿入してもよい。あるいは、gag-pol配列は部分配列であって、異種配列をその部分配列および3'転写ターミネーターの後であってもよい。
【0050】
マイクロRNA、shRNA、および他の異種配列のベクターを発現するための最適なフォーマットは、5'LTR下流のgag-pol配列を改変することによる無傷の、しかし非機能性のgag-pol配列を含有するベクターである。この改変はgag-polポリペプチドのATG開始部位の下流にある停止コドンを生じる、しかしパッケージング用のcis作用性エレメントを妨害しない。RNAi、マイクロRNA配列はgag-pol配列の下流に挿入する。追加のcisエレメントを含むことによってベクターを安定化して、機能性エフェクター配列の力価および生産の増加に導きうる。他の実施形態においては、かかるベクターは多部位を標的化するRNAi、マイクロRNAまたはshRNA(アンチセンス他)を発現して、単一エフェクターRNAiが効果的に標的細胞の発現を抑制する確率を増加する。
【0051】
pol配列の翻訳または転写を不活性化するために、ポリヌクレオチドをgagとpolコード配列の間に、例えば、異種配列異種発現カセット(例えば、プロモーター、コード配列、およびポリA)、siRNA、アンチセンス、翻訳(例えば、終結コドン)および/または転写終結配列を挿入してもよい。タンパク質合成または翻訳の終結はリボソームにおいて停止コドンに対する応答として起こる。停止コドンの例としては、例えば、UAG、UAA、およびUGAが挙げられる。また、CassanおよびRousset、「哺乳動物細胞におけるUAGリードスルー:上流および下流停止コドン文脈の効果は色々なシグナルを表す(UAG readthrough in mammalian cells: Effect of upstream and downstream stop codon contexts reveal different signals)」 BMC Molecular Biology 2001、2:3も参照されたい。
【0052】
レンチウイルスのパッケージング系
本発明はまた、レンチウイルス形質導入ベクターを生産するためのレンチウイルスのパッケージング系も提供する。パッケージング系は、完全なエンベロープをもちかつ機能性のレンチウイルス形質導入ベクターを製造するために有用な複数の構築物を意味する。これらには、例えば、以上に詳しく記載したレンチウイルスヘルパー構築物およびトランスファー構築物(例えば、プラスミドの形の)が含まれる(すなわち、2つのプラスミド、3つのプラスミドまたは複数のプラスミド系)。ヘルパー構築物は、好ましくはgag-pol前駆体とエンベロープタンパク質の両方を含有する、しかしそれぞれが異なる構築物上に存在してもよい。かかる場合、両方のヘルパー構築物が上記系に含まれうる。
【0053】
加えて、上記系はさらに、in transで作用して形質導入ベクターの生産を亢進するポリペプチドを発現する構築物を含んでもよい。これらには、好ましくは、それぞれRREおよびTAR配列と相互作用する発現可能なrevおよびtatポリペプチドを含むプラスミドが含まれる。前と同じように、これらは、例えば、それぞれがそれ自体の転写終結シグナルを有する、または、コード配列がIRES配列により分離されて同じメッセンジャーRNAを用いて翻訳を達成する同じプラスミド上に存在してもよい。例えば、本発明の系は、ヘルパープラスミド、トランスファープラスミド、およびrevおよび/またはtatポリペプチドを発現するプラスミドを含む3つのプラスミドまたは構築物を含みうる。
【0054】
レンチウイルスに通常存在する他のポリペプチド、例えばアクセサリータンパク質nef、vif、vpr、およびvpuは、好ましくは、形質導入系に存在する構築物上で発現されない。場合により、SIV由来のvpxタンパク質がベクタープラスミド、ヘルパーまたはヘルパープラスミドの1つから発現されうる、または、単独でまたは他の配列との組み合せでプラスミドから発現されうる。vpxタンパク質はHIVまたは他のレンチウイルス系ベクターの形質導入効率の増加を亢進することができる。
【0055】
本発明の構築物はまた、複製起点(例えば、大腸菌において高コピー複製および維持に利するpUC)、選択マーカー、および他の配列、例えば細菌内でヘルパーおよびトランスファー構築物を生産するための配列を含んでもよい。さらにマーカーを利用してベクターの存在を試験し、そして感染および組込みを確認することができる。マーカー遺伝子の存在はまた、インサートを発現する宿主細胞だけの選択と増殖を確かなものにする。典型的な選択遺伝子は、抗生物質および他の有毒物質、例えば、ヒスチジノール、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、メトトレキセートなどに対する耐性を与えるタンパク質および細胞表面マーカーをコードする。
【0056】
本発明のヘルパーおよびトランスファーベクターは、例えば、米国特許第5,994,136号、第6,165,782号、および第6,428,953号(Naldini);米国特許第6,013,516号(Verma);米国特許第5,665,577号および第5,981,276号(Sodroski);米国特許第5,817,491号(Yee);米国特許第6,555,107号;米国特許第6,627,442号;米国特許第6,051,427号(Finerら);米国特許第6,924,123号(Kingsmanら);米国特許第5,591,264号(Barberら)に記載または請求されているベクターおよびそれらの1以上のエレメントを除外してもよい。
【0057】
ベクター構築
さらにレンチウイルスベクターの安全性を増加する機構を、ヘルパー配列をレンチウイルスベクター構築物中に含むことにより提供する。正方向反復配列(direct repeats)を含有するレトロウイルスは不安定でありかつ不安定性のレベルは正方向反復配列の長さに正比例することは公知である。200塩基を超える正方向反復配列はヒトレトロウイルス、例えばヒトレンチウイルスから非常に効率的に切除される。望ましくないヘルパー構築物由来のヘルパー配列を、ベクターとヘルパー配列間の組換え可能な部位の上流に与えることにより、レンチウイルスベクターの安全性を改善することができる。例えば、VSV-G配列をレンチウイルスベクター中に組み込むことは望ましくないであろう。好ましい実施形態は、VSV-Gの3'または遠位の領域の500〜1000塩基(好ましくはポリA部位を含まない)を、潜在的組換え部位の上流(例えば、レンチウイルスベクターパッケージング部位の直ぐ遠位に)に位置するベクター中に配置することである。もしヘルパーからのVSV-G配列とベクターの間の組換えが起これば、次いで正方向反復配列を形成して不安定性をもたらし、続いて逆転写中にベクターを欠失するに違いない。
【0058】
他の実施形態は、RNA配列により誘導的方法によって安定化される標的タンパク質mRNAを含有する誘導生産系である。例えば3'RhoB非翻訳領域(UTR)は、血清に応答して毒性タンパク質または他の目的のタンパク質を発現する標的RNAを安定化することができる。他の例はエオタキシン3'非翻訳領域を、通常は低い半減期を有するがTNF-αおよびIL-4の細胞への付加によって安定化される目的の標的遺伝子と連結することである。あるいは、CYP2E1およびCYP2B1mRNAの5'コード領域の16量体配列に含有される配列はインスリンの存在のもとで標的RNAを不安定化する。インスリンを除去すると標的RNAは安定化されて当該タンパク質を発現することができる(Trongら Biochem J. 2004 Dec 23)。好ましい本発明は、かかる不安定化配列を用いて毒性タンパク質様VSV-Gを誘導的方法で生産できるパッケージング細胞株を作ることである。不安定化配列をVSV-Gまたは他のタンパク質と連結しかつ安定化因子を加えるか除去することにより、VSV-Gまたは他のタンパク質の誘導的発現を達成することができる。好ましい実施形態は毒性タンパク質を発現するヘルパー構築物であって、毒性タンパク質をコードするmRNAを不安定化するRNA配列を含有するが、なおいくつかの安定化因子に応答して安定化される上記ヘルパー構築物である。さらなる実施形態は、RNA不安定配列と連結された目的のタンパク質遺伝子をコードするが、mRNAを安定化するいくつかの因子を加えると安定して発現されうるレンチウイルスベクターである。
【0059】
他の実施形態は、誘導プロモーター系のもとでVSV-Gタンパク質を標的化するRNAiを発現するレンチウイルスベクターパッケージング細胞株である。細胞株の選択の間、抗VSV-G RNAiは活性であり、次いで「シャットオフ」へ誘導されてレンチウイルスベクター生産の開始をする。かかる誘導プロモーターは当技術分野で公知であり、この応用は記載されている(Gossen, M.,およびBujard, H., 「テトラサイクリン応答性プロモーターによる哺乳動物細胞内の遺伝子発現の厳格な制御(Tight Control of Gene Expression in Mammalian Cells by Tetracycline-responsive Promoters)」 Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:5547-5551)。他は、誘導性の系を用いてパッケージング細胞中のVSV-Gの発現を誘導する(Yangら、米国特許第5,750,396号;Verma、米国特許第6,218,181号)。しかし、VSV-Gのような毒性タンパク質の発現を制御する代わりの方法は、毒性タンパク質を標的化する遺伝子発現のインヒビターをテトラサイクリン応答プロモーターなどの誘導プロモーターの制御下に配置することによる、しかしこの特定の誘導性の系は限定されるものでなく、他の誘導性の系を用いてもよい。遺伝子発現のインヒビターは、アンチセンス、RNAi(先に記載した、いくつかの変異体が存在する)、リボザイムまたはそれ自体は毒性でないトランスドミナント変異体タンパク質であってもよい。好ましい実施形態は、細胞株維持の間はVSV-G発現を阻害するddRNAiを誘導的に発現し、次いでベクター生産の間はこれを「スイッチオフ」する。同じ方法を用いて、細胞増殖の特定期の間、様々なタンパク質の発現を誘導することができ、ベクター生産以外にも応用することができる。例えば、RNAiの発現を、細胞周期インヒビター、または細胞サイクリングもしくは細胞分裂を促進する遺伝子を標的化する第2のRNAiの発現とタイミングを合わせてもよい。標的化しうる他の配列は、他の潜在的標的遺伝子のなかでも、細胞死、分裂、代謝、タンパク質合成および代謝、細胞サイクリング、核酸合成および代謝および細胞鑑別に関わる遺伝子である。こ
れは、毒性のあるまたは欲しないタンパク質を標的化するRNAiを、内部リボソーム侵入配列配列(IRES)または当技術分野で公知の類似配列を用いる遺伝子と機能的に連結することにより達成しうる。RNAiはまた、単純に2つのRNAi配列をバッファー配列を用いて分離することにより、第2の配列と連結しうる。バッファー配列は当技術分野で公知でありそしてそれらはRNAi配列の機能を妨害しないいずれかの配列である。
【0060】
以上の方法は、RNAiまたはRNA不安定性配列を用いてレンチウイルスベクターの毒性または欲しない組換えを防止するレンチウイルスベクターを生産するためのより安全なヘルパーベクター系の生産に利用することができる。RNAiは、ヘルパー構築物中のオープンリーディングフレーム間の潜在的リードスルーの単一または多領域を標的化してもよい。RNA不安定配列(mRNA不安定化およびタンパク質不安定化エレメントとしても知られる)は、例えば、PEST配列、P1、P2、cUbおよびUb、9量体UUAUUUAUU(配列番号1)の1、2または4コピー(それぞれN1、N2およびN4)、c-fosおよびc-myc3'-UTR由来のAUリッチエレメント(ARE)である。好ましい実施形態は、リードスルーを有するのが望ましくない遺伝子間の領域中に挿入しうる、少なくとも1つのRNA不安定化エレメントおよび少なくとも1つのタンパク質不安定化エレメントからなる二重不安定化された構築物である。例えば、VSV-GエンベロープおよびGagまたはPolタンパク質を同じmRNA上に有することは望ましくないであろう、それ故に、ヘルパー構築物上のVSV-GとGagまたはPolオープンリーディングフレームの間(または組換えの推定領域)の単一または多領域を標的化するRNAiが本発明の好ましい実施形態でありうる。好ましい実施形態は、リードスルーが起こるGagおよび/またはPolとVSV-Gエンベロープタンパク質を含有するRNA配列をもたらす可能性のあるヘルパー構築物上の領域を標的化するshRNAiまたはddRNAiの使用である。RNAまたはタンパク質不安定性または分解配列を用いてリードスルー転写物またはリードスルータンパク質配列を防止することができ、それはリードスルーRNAおよび/またはタンパク質配列の存在が望ましくないコード配列の間に、かかる不安定性エレメントまたは分解配列を挿入することによる。分解配列は全てのオープンリーディングフレーム中に配置することができ、利用しうる実際のリーディングフレームは必ずしもリードスルーまたは組換え事象に対して先験的にわかっていないので、従って、少なくとも3回繰り返してもよい。また、gag-polおよびvsv-gがトリプレットコドン配列の異なるフェーズにあることを保証することにより、リードスルーポリタンパク質を生産するエンベロープおよびgag-polオープンリーディングフレームを防止する方法も提供される。好ましくはvsv-gはgag-polの下流にありそしてgag-polコドントリプレット配列に対してフェーズを1だけずらす。
【0061】
他の実施形態においては、もしベクターにより組換われば、有害であると考えられる配列を標的化する誘導性RNAiまたはアンチセンス配列を挿入することにより、レンチウイルスベクターの安全性を増加することができる。例えば、抗vsv-g配列(すなわち、抗-エンベロープポリヌクレオチド配列、例えばRNAiまたはアンチセンス)を主スプライスアクセプター部位の上流に挿入して、ベクター生産中の後期にだけならびにゲノムベクターRNA中でだけ発現するようにしてもよい。このようにすると、ベクター力価に有意な影響を与えることはなかろう。しかし、もし組換え事象を確かなものにする必要があれば、RNAiまたはアンチセンス配列をVSV配列と結合させて組換えを破壊しうる。従って、ヘルパー(またはトランスファーベクター)はさらに、上記エンベロープコード配列の翻訳を抑制するのに有効であるアンチセンスポリヌクレオチドを含んでもよい。アンチセンスの設計は当技術分野で周知であり、そしてベクター中に完全なアンチセンス配列、またはエンベロープセンスRNAとハイブリダイズしてその翻訳を抑制するその部分配列を含んでもよい。
【0062】
他の実施形態では、レンチウイルスベクターまたはヘルパー発現構築物中に次のペプチド配列、KETWETWWTE(配列番号2)が存在する。このペプチド配列は逆転写酵素二量体化の強力なインヒビターである。上記ペプチドを2つのフォーマット:より安全なパッケージング系のレンチウイルスベクターの生産用またはHIV/AIDS遺伝子治療用に用いることができる。より安全なパッケージング系を生産するためには、上記ペプチドをgag-polとエンベロープ(例えばVSV-G)コード配列の間に挿入して、2つのオープンリーディングフレーム間のリードスルー時にだけ発現させる。上記ペプチドを次いで生産させてベクターの生存を、逆転写酵素二量体化の阻害およびウイルス粒子中へのパッケージングにより阻害する。第2フォーマットにおいては、上記ペプチドを、HIV系レンチウイルスベクターから発現させてHIV/AIDSを治療する。上記ペプチドを発現する細胞を含有するベクターはwt-HIVによる感染時に二量体化逆転写酵素なしに欠陥粒子を生産する。これにより感染性ウイルスが生産されることなく、身体に存在するエピトープによる免疫応答の刺激が可能になる。第3フォーマットにおいては、上記ペプチドをレンチウイルスベクターから第2遺伝子として発現させて、ベクターが最初の形質導入後にさらに動態化しないようにすることができる。該ペプチド配列または複数の該ペプチド配列は標的細胞においてだけ発現され、生産中に発現されない(生産中には上記ペプチドはベクターのプロモーター配列から解離しうるので)であろう、しかし上記ペプチドは標的細胞においてプロモーターと発現すべきペプチド配列を再編成する介入正方向反復配列の結果として生産されうる。同じ方法を用いて逆転写酵素二量体化を抑制するペプチドの代わりに毒性タンパク質を発現させることができる。時間的にベクターを次の通り組織化する:レンチウイルス由来の5'LTR、パッケージング配列、内部プロモーター、その5'境界のスプライスドナー部位および強いスプライスアクセプター部位を含有する500塩基以上の配列(好ましくは、しかし限定するのでなく)、介入配列、スプライスドナー部位をもたず、しかし単一または複数の点変異した上記強いアクセプター部位より弱いスプライスアクセプター部位をもつ同じ500以上の塩基配列、コドン開始配列、ペプチドコード配列(または毒性タンパク質)、コドン停止配列、ポリA、およびレンチウイルス由来の3'LTR。
【0063】
最近、LMO2遺伝子が白血病の発症と結び付けられている、しかしこの遺伝子はT細胞発生中に必須でないと思われる(McCormack MP, Forster A, Drynan L, Pannell R, Rabbitts TH, MoI Cell Biol. 2003 Dec;23(24):9003-13)。好ましい実施形態は、疾患のヒト遺伝子治療を行う間、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターの安全性を高めるアンチセンス、リボザイム、RNAiまたはインヒビターLMO2遺伝子を発現するレンチウイルスベクターであり、その場合、CD34または血液学的細胞型をレンチウイルスまたはレトロウイルスベクターを用いて形質導入し、レンチウイルスまたはレトロウイルスベクターを上記細胞の染色体中に組み込む。
【0064】
LM02に加えて、他の遺伝子もHIVベクターを用いて形質導入するとアップレギュレートまたはダウンレギュレートされることが示されている(Zhaoら, Gene Therapy 12:311-319、2005)。例えば、EEF1αはヒト臍静脈内皮細胞において10倍アップレギュレートされる一方、クラステリンは3倍アップレギュレートされる。これらの遺伝子の過剰発現による有害な影響を防止するため、過剰発現した遺伝子に対するRNAiを発現するレンチウイルスベクターを構築することができる、あるいは、発現の低下した遺伝子をコードしかつ発現させることができる。この方法でレンチウイルスベクターの安全性を高めることができる。
【0065】
さらに、1点欠失、2塩基欠失、3塩基欠失または3を超える塩基欠失などを用いて全コドン開始部位を欠失しかつレンチウイルスタンパク質のコドン開始配列を含むレンチウイルスベクターについて説明する。この方法で作ったベクターは最大カプシド形成に必要なcis作用配列を保持するが、野生型レンチウイルスを生産する能力はない。さらに機能未知コドン開始部位も欠失する。ある好ましい実施形態においては、コドン開始部位周囲に十分な配列を欠失して上記遺伝子またはRNAiを挿入するためのスペースを作り、ベクターの治療効果または所望の非治療効果(例えば細胞株のタンパク質生産の増加)の効力を増加させる。
【0066】
本発明の利点は、細胞タンパク質が免疫原性でないので、従って、それらの過剰発現は、該ベクターを含有するがまだ野生型レンチウイルスに感染していない細胞に対する免疫応答に導かないことであろう。
【0067】
さらに、複数の遺伝子またはRNAiを発現するベクターであって、(1)細胞の活性化および細胞からの欠陥ベクター粒子生産の増加;(2)免疫応答の刺激;(3)欠陥粒子の生産の増加;および/または(4)感染性レンチウイルス粒子の生産の減少;をもたらす上記ベクターを提供する。かかる遺伝子またはRNAiは上記の通りである。
【0068】
形質導入ベクター製造
本発明はまた、形質導入ベクターとそれらを生産する方法も提供する。以上記載した特定の実施形態を一過的に宿主細胞で用いて形質導入ベクターを生産することができる。ベクターを生産するために利用しうる宿主細胞の例には、いずれかの哺乳動物またはヒト細胞株または一次細胞が含まれる。非限定の例としては、例えば、293、HT1080、Jurkat、およびSupT1細胞が挙げられる。他の例は、CHO、293、HeIa、VERO、L929、BHK、NIH3T3、MRC-5、BAE-1、HEP-G2、NSO、U937、Namalwa、HL60、WEHI231、YAC1、U266Bl、SH-SY5Y、CHO、例えば、CHO-K1(CCL-61)、293(例えば、CRL-1573)である。
【0069】
本発明はレンチウイルス形質導入ベクターを作る方法であって、例えば、a)宿主細胞をレンチウイルスヘルパープラスミドおよびトランスファープラスミドを用いてトランスフェクトしてプロデューサー細胞株を作るステップ;およびb)上記形質転換したプロデューサー細胞を、レンチウイルス形質導入ベクターを作るのに有効な条件下で培養するステップを含んでなる上記方法を提供する。ベクター製造工程では、エレクトロポレーション、カルシウムリン酸塩トランスフェクション、PEIポリマーが介在するトランスフェクション、フェクツリン(fecturin)または脂質に基づくトランスフェクション方法を含むいずれかの好適なトランスフェクション方法を利用することができる。形質導入ベクターは、好ましくは、回収しかつ場合により濃縮しまたは精製することができる細胞培地中に分泌させる。
【0070】
形質導入ベクターを製造するために利用する細胞株は、以下に記載のいずれかの方法で、例えば、遺伝子の発現を低下させてベクター生産を制限するノックアウト遺伝子に対するRNAiもしくはアンチセンスの導入により、またはベクター生産を増強する配列の導入により改変してベクタータンパク質生産を増強することができる。また、細胞またはウイルスのエンハンサーをコードする配列を(例えば、さらなるプラスミドベクターを用いて)ヘルペスウイルス、肝炎Bウイルスなどの細胞株中に遺伝子操作し、そして上記エンハンサーがHIV LTRに作用してウイルス産物または細胞トランス活性化因子タンパク質を増強してもよい。細胞のトランス活性タンパク質としては、例えば、NF-kB、UV光応答因子、およびT細胞活性化因子が挙げられる。
【0071】
細胞株を日常的手法で構築物DNAにより、例えば、エレクトロポレーション、カルシウムリン酸塩、リポソームなどを用いて形質転換して、DNAを細胞中に導入することができる。細胞を同時形質転換してもよい(すなわち、ヘルパーおよびトランスファーベクターの両方を用いて)、または細胞を、それぞれのステップが異なるベクターの導入に関わる別のステップで形質転換してもよい。
【0072】
細胞を、形質導入ベクターを生産するのに有効な条件のもとで培養する。かかる条件は、例えば、タンパク質生産を達成するのに必要な特定の環境を必要とする。かかる環境としては、例えば、適当なバッファー、酸化剤、還元剤、pH、補因子、温度、イオン濃度、細胞を使用する場合の細胞の好適な熟成および/または段階(特に細胞サイクルの部分、または特定の遺伝子が発現される特定の段階においてなど)、培養条件(細胞培地、基質、酸素、二酸化炭素、グルコースおよび他の糖基質、血清、増殖因子などを含む)が挙げられる。
【0073】
形質導入の効力
上記のエンベロープ改変に加えて、形質導入増加のための細胞の刺激は、細胞表面上のリガンドの発現に限定されるものでない。形質導入の効力はさらに、細胞に少なくとも2つの型のベクターを形質導入することによりin vitroまたはin vivoでさらに増加することができる。第1のベクターは「促進ベクター」と呼ばれて、このベクターは標的細胞を刺激するタンパク質またはリガンドを生産して、治療用または他の目的の配列を発現する形質導入ベクターを組み込むのを受け入れ易くする。促進ベクターは、高効率ベクターが介在する形質導入用の標的細胞を刺激するために用いられるタンパク質、リガンドまたは因子に加えて、さらに安全または自殺遺伝子を含む。この方法で、促進ベクターは形質導入ベクターによる高効率形質導入に必要なタンパク質、表面リガンド、または因子を発現することができる、次いで、形質導入ベクターは細胞の標的集団の高効率形質導入に介在し終えると、細胞の標的混合物から欠失される。この方法は幹細胞を形質導入するために用いることができる、その場合、少なくとも1つの促進ベクターはSCF、TPOおよびFlt-3リガンドの組合わせを発現することができ、その際、それぞれの促進ベクターは安全または自殺遺伝子を含有してプロドラッグが細胞の集団に加えられるとその集団から細胞を排除しうる。安全または自殺遺伝子は当技術分野で公知でありかつ本出願において後にさらに詳しく記載している。場合により、促進ベクターは、単独でまたは安全または自殺遺伝子と組合わせて用いることができる誘導プロモーターからのタンパク質、因子またはリガンドを発現してもよい。誘導性の系を安全または自殺遺伝子と共に重ねることを利用して、タンパク質/因子/リガンド/RNAi/アンチセンスなどの生産、ならびに安全または自殺遺伝子の発現の感受性および特異性を増加することができる(誘導性の系を組織特異的にすることができる)。促進ベクターからのタンパク質/因子/リガンド/RNAiの発現は、場合により、組織特異的プロモーターから発現させて、促進ベクターにおける配列の発現を特定の細胞型に限定することができる。好ましい実施形態においては、促進ベクターを最小の刺激で細胞の集団に加えて、非標的細胞が優先的に形質導入されて標的細胞刺激因子を発現し、そしてなお、安全または自殺遺伝子を用いてマークされて、後日に欠失できるようにする。ある期間の後に(促進ベクターの添加後、少なくとも1時間、そして数週間まで、好ましくは翌日)、形質導入ベクターを細胞に加えて高効率介在性形質導入を行う。
【0074】
細胞株
本発明はまた、増殖特性を増強し、培地中に存在する高価な因子への依存性を減じ、高収率のタンパク質を生産し、そして高力価のベクター粒子を生産する細胞株の開発も提供する。例えば、最近、HEK293細胞が細胞レセプターの特異的増加した発現を有し、そして特定のリガンドを該細胞の培地に加えることにより、該細胞は増殖ポテンシャルの増加を示すことが報じられている(Allisonら、Bioprocess International 3:1、38-45、2005)。好ましい一実施形態は、HEK293細胞と関係のあるリガンドタンパク質の最適化された組合わせを発現する複数のレンチウイルスベクターであって、その後、上記細胞を次いでハイスループット方法により選別して、レンチウイルスベクターの複数コピーを含有するHEK293細胞の1つのクローンを単離する。これらの細胞は、異なるがまたHIVベクターに含有されるリガンド遺伝子の複数コピーも発現するHIVベクターの組合わせを含有する。リガンド遺伝子はそれらの発現をさらに増加するためにコドンが最適化されたかまたは突然変異が加えられたものであってもよい。好ましい組合わせは、次に複数の用途を有しうる最後の単離されたクローン細胞に発現されたリガンドタンパク質の複数コピーを有するものである。これはタンパク質または抗体(モノクローナル、ヒト化、1本鎖を含む)を生産するために利用しうる。これはまた、レンチウイルスベクターなどのベクターを生産するために利用しうる、しかしレンチウイルスベクターに限定されない。他のベクター、例えばアデノおよびアデノ随伴ベクター、マウスレトロウイルスベクター、SV40ベクターおよび他のベクターなども同じように容易にこの今や最適化された細胞株から生産することができる。HEK293細胞で発現/活性の増加を示すレセプターとそれらのリガンドのリストとしては、例えば、AXLレセプター(gas6);EGFレセプター(EGF)、ケモカインレセプター(フラクタリン(fractalline));PDGFレセプター、β(PDGF);IL-15R-α;IL-2R-α;ケモカインレセプター2(MCP1);IL-2R、γ;IL-lR-1;CSF-1レセプター;オンコスタチンレセプター;IL-4R;ビタミンD3レセプター;ニューロピリン(neuropilin)1(VEGF);マクロファージ刺激性レセプター1(MSP);NGF-R;PDGFR-αレセプター;IL-11-R、例えば、α;IL-10-R、例えば、β;FGF-R-4(aFGF);BMPレセプター、例えば、II型(BMP-2);TGF-R、例えば、βレセプターII(TGF-β);FGF-R-1(bFGF);ケモカインレセプター4(SFD1a);インターフェロンγレセプター1および2が挙げられる。BioProcess International、January 2005. Table 1、「HEK-293により発現される増殖因子/サイトカインレセプター(Growth factor/cytokine receptors expressed by HEK-293)」を参照されたい。かかる細胞はより高いタンパク質およびベクター生産能力を有しうる、そして細胞自体が因子を生産して培地中に分泌するので、培地に存在するリガンド因子の存在への依存性がより低いであろう。
【0075】
他の細胞型、例えばCHO細胞については、他のレセプター-リガンド組合わせが重要でありうる。例えば、インスリン増殖因子レセプターI、インスリン増殖因子およびインスリンは、細胞中で抗-アポトーシス活性を有すると考えられる。複数のレンチウイルスベクターを構築して、インスリン増殖因子レセプター(IまたはII)、インスリン増殖因子(IまたはII)、インスリンおよび生産するための標的タンパク質を全て、生産細胞、例えばCHO細胞の形質導入用ベクター中に含有させ、そして適当なクローンを選択する、好ましくは、ハイスループット方法を用いて標的タンパク質の非常に高い生産を示すクローンを選択することができる。最適なクローンは、全ての遺伝子操作で作られた遺伝子、または遺伝子発現のインヒビターを高度に発現する細胞でなく、むしろ遺伝子のそれぞれの最適な発現レベルを発現する(いくつかについては低い発現レベルでありうる)細胞である。レンチウイルスベクター系および複数のレンチウイルスベクターを用いてかかる細胞を遺伝子操作することの価値は、レンチウイルスベクター混合物を用いて形質導入した細胞の集団においてそれぞれのベクターコピー数の無作為なまたは確率的分布が存在し、そしてそれ故に、混合物中のそれぞれのベクターの量を変えることにより、それぞれの個々の第2遺伝子または抑制配列のコピー数を最適化できることである。ベクターと第2遺伝子または遺伝子抑制配列の好ましい組合わせは、それぞれのレンチウイルスベクターが生産のための目的のタンパク質、そして、場合により、さらに、タンパク質収率、またはベクター収率を、生産する細胞の可変性またはいくつかの態様に影響を与えることにより、直接または間接にさらに増進する、少なくとも1つのRNAiまたは遺伝子を発現することである。しかし、第2配列の効果を増加するために、第2遺伝子または遺伝子発現のインヒビターだけを発現する少なくとも1つのレンチウイルスベクターを有することも有利でありうる。
【0076】
レンチウイルスベクター中に遺伝子操作してインスリン増殖因子レセプター経路、細胞増殖および可変性にポジティブな効果を与えうる他の遺伝子(またはこれらの遺伝子のインヒビター)は、Akt遺伝子ファミリーメンバー(Akt1、Akt2、Akt3)、pl3K、Ras、Raf、MEK、MAPKp42、MAPKp44、14-3-3タンパク質、Bad、およびGrb/SOSである。関連する経路を刺激するために、これらの経路の適当なレセプターと結合するリガンドを、レンチウイルスベクターから発現させて適当なシグナルを細胞に与え、タンパク質、ベクター(レンチウイルスベクターに限定されない)または細胞からのワクチン生産にポジティブな影響を与えてもよい。いくつかの事例においては、レンチウイルスベクターが特定の経路を刺激するレセプターとリガンドの両方を発現することが好ましいであろう。キメラレセプターを特定の経路の特異的刺激を産生するように構築してもよい。これはまた、細胞において生産される必要のあるリガンドの数を低減しうる、というのは、1つのリガンドは、同じリガンド結合ドメイン(しかし異なる細胞内シグナル伝達ドメイン)を有するキメラレセプターを介して複数の経路を刺激しうるからである。逆に、異なる結合ドメインと同じシグナル伝達ドメインを含有するキメラレセプターを用いて、刺激される経路の型を仕立てることもできる。キメラレセプターは当技術分野で公知であり、そして本発明はタンパク質、ワクチンまたはベクター生産のためだけに使用するのでなく、遺伝子治療のために使用することもできる。レンチウイルスベクターからのそれらの過剰発現(またはRNAi、アンチセンス、リボザイムなどによる抑制)後にCHOまたは293細胞(限定されない例)の様な細胞においてタンパク質、ワクチンまたはベクター生産にポジティブな影響を与えうる他の遺伝子は、骨形成タンパク質-2、PACEsol、ホスホリパーゼD PI3K(ホスホイノシチド3-キナーゼ)、p70S6K(p70 S6 キナーゼ)およびERK(細胞外シグナルに調節されるキナーゼ)、CDKN1、CCNB1、CDC20、CDK20、CDK4、CDKN3、CCNC、BMP1、MADH4、GA4、RCA、ATPS、HAT4、GAPDH、SP3、TCEBIL、TFAP2B、SMARCA4、EIF
4E、RAB2、D1S155E、SSI-1、WTl、MYC、TSGlOl、SHC3、PHB、TCF12、NFIX、E2F4、TAF3C、STAT6、BCL2、NERF-2、POU2F1、NFKB1、EIF4E、BMI1、MYBL2、PIM1、KRAS2、RPAlA、JUNB、ABLl、TIM、SAS、AKT1、CSF3R、BCR、MXI1、TNFAIP6、AIP1、ILK、PTK2、CSK、CSNK2B、GK、PRKCA、MADH2、LIMK1、PIK3CA、PRKCd、PPP6C、細胞PrP、および増殖、代謝、細胞サイクリングおよび発生に関わる他のタンパク質型である。好ましい一実施形態は、レンチウイルスベクターパッケージングまたはプロデューサー細胞における、細胞プリオンタンパク質(PrP)5BSEまたは細胞株を汚染しうる他の有害な薬剤を標的化するRNAiの発現である。さらなる好ましい実施形態は、非限定的な例として、抗-PrPRNAiの様な細胞PrP5に対するインヒビターを発現するヘルパー構築物またはパッキング細胞株である。逆に、記載したタンパク質を、遺伝病、HIV/AIDSまたは癌の様な疾患の遺伝子治療に用いるために、過剰発現させるかまたはRNAiなどにより抑制してもよい。治療用の好ましいレンチウイルスベクター組成物は、身体内のタンパク質の生産にポジティブに影響を与えるあるモノクローナル抗体またはあるタンパク質(または複数のタンパク質)および少なくとも第2遺伝子(またはRNAiなどの遺伝子のインヒビター)を発現する。第2遺伝子または該遺伝子のインヒビターは、in vivoタンパク質生産のための細胞内のタンパク質に限定されるのでなく、免疫応答、身体の代謝、ホルモンまたはサイトカイン生産に影響を与えるタンパク質であってもよい。第2遺伝子(少なくとも1つの第2遺伝子)または遺伝子のインヒビター(ある遺伝子の少なくとも1つの第2インヒビター)は、身体内に存在する誘導プロモーター系またはいくつかの因子、例えば、病気中に生産されるタンパク質、ウイルスまたは因子に応答して生産されてもよい。この方法で、第1タンパク質またはまたは抗体(例えば、モノクローナル、ヒト化、1本鎖)の生産は第2遺伝子の生産により調節されうる。ヒトタンパク質の正しいグリコシル化に関わるタンパク質も、レンチウ
イルスベクターから、生産用の所望のタンパク質に対して直列に発現させることができる。ある特定の種のグリコシル化は望ましくない効果を、モノクローナル抗体などのタンパク質に引き起こしうる、そしてそれ故に、これらの特定のグリコシル化パターンを生産するこれらの酵素に対するインヒビターの発現は、組換えタンパク質産物の安全性と効力を増加しうる。例えば、マウスおよび他の哺乳動物由来の細胞株のグリコシル化はヒトグリコシル化と非常に類似している。しかし、いくつかの顕著な相違は産物品質ならびに生物活性に影響を与えうる。ほとんどのマウス由来の細胞株(例えばNSO細胞)はさらなるグリコシル化酵素を含有する。その酵素はα1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼと呼ばれる;その酵素はα立体配置のUDPGaIからのGal残基の内部および/または曝されたGal残基への移動に介在する。ヒトはα-Galエピトープに対する抗体を有する。確証はないが文献では、rIgG上のα-Galエピトープの存在はヒトに対して免疫原性であることを示唆し、規制当局は治療糖タンパク質を含有するα-Gal残基に関心を表明しうる。それ故に、ヒト用に用いるタンパク質のより最適なグリコシル化を促進するために、マウスα1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを標的化するRNAi(または類似のインヒビター)をレンチウイルスベクター中に挿入して、マウスα1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質を欠くまたは低レベルの細胞株を作製し、α-Gal残基が治療用糖タンパク質上に存在しないようにすることができる。他の例は、CHO細胞などのげっ歯類細胞内に存在するCMP-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼである。この酵素はヒトにおいて活性型で発現されず、確証は組換え治療用糖タンパク質中にNeu5Gcが存在すると免疫応答を惹起しうることを示す。それ故に、レンチウイルスベクターを遺伝子操作して両方の目的のタンパク質遺伝子を含有させてもよく、そして、酵素を標的化するRNAiまたはアンチセンスRNA配列も含有することにより、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株中のCMP-Neu5Acヒドロキシラーゼ活性、および得られるグリココンジュゲートのNeu5Gc含量を低下することができる。2つの例は限定することを意味するものでない、グリコシル化または他の細胞プロセスに関わる他の酵素も(欲しない酵素/因子を抑制することによりまたは所望の酵素を過剰発現することにより)標的化して増進するかまたは生産される所望のタンパク質または因子の特徴を最適化することができる。
【0077】
RNAiはまた、ベクター、タンパク質、因子またはワクチンを製造するために用いる細胞株内で複製物を有するのが望ましくない、潜在的に欲しないまたは偶発的なウイルスまたはいずれかのウイルスまたは細菌に対して作ることもできる。例えば、マイコプラズムリボソームまたはメッセンジャーRNAを、RNAi技法により標的化してマイコプラズム複製および汚染を防止することができる。細胞内の偶発性ウイルスまたは細菌の複製を抑制するこの方法を発展させて他のウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポリオーマ系ベクター、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターなど)またはワクチン(例えばインフルエンザ、天然痘、風疹、エボラ、ワクシニアなど)の生産に利用することができる。かかる方法の標的でありうるウイルスの完全なセットはncbi.nlm.mh.gov/genomes/VIRUSES/viruses.htmlに見出される。ベクター生産系中のcDNAおよびRNAiの発現を利用してさらにHIVベクター生産を増加することができる。例えば、細胞増殖を刺激する遺伝子は細胞の生合成を増加しかつそれ故に細胞株からのHIVベクターのより高い生産をもたらし、そしてそれ故により高い力価のベクターをもたらす。過剰発現可能な遺伝子は、炭水化物代謝、エネルギー代謝、生体異物の生物分解に関わるタンパク質、核酸およびアミノ酸代謝、mRNAの転写またはタンパク質の翻訳を増加する遺伝子、または、例えばBcL-2などの細胞分裂および増殖を活性化する遺伝子である。さらに、RNAi技法を用いて細胞増殖を減速するかまたはブロックする遺伝子、またはHIVベクター粒子の生産を阻害する遺伝子を抑制することによりベクター生産を増加することができる。例えば、細胞分裂、細胞増殖、細胞代謝、核酸およびアミノ酸代謝、mRNAの転写またはタンパク質の翻訳を抑制することにより機能し、それ故にHIVベクター粒子の生産を増加するタンパク質を標的化するRNAiが挙げられる。かかる遺伝子およびそれらの公知の経路の完全なリストはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/に見出すことができる。細胞株からレンチウイルスベクターの生産を増加するいくつかの方法を使うことができる。第一に、ヒトまたは他の生物由来のcDNAのライブラリーをパッケージング構築物とともに共トランスフェクトするかまたはHIVベクター中に挿入して、HIVベクター粒子を生産するために必要な遺伝子を含有するパッケージング細胞中に形質導入する。この方法の各ステップは、マルチウエルフォーマットで実施し自動化して当該系の能力をさらに増加することができる。
【0078】
他の実施形態は、例えば、プロテアーゼ遺伝子を標的化するRNAiならびに発現すべき目的の遺伝子をレンチウイルスベクターに封入するか、または、混合物として細胞に加えられた異なるレンチウイルスベクターで、目的の遺伝子を含有するベクターと好ましくはプロテアーゼ遺伝子または望ましくない他の遺伝子に対するRNAiを発現するベクターの両方を用いて細胞を形質導入する。標的化するプロテアーゼは、所望のタンパク質または所望の目的の因子の生産または精製に悪影響を与えうる、いずれの単一のまたは組合わせのプロテアーゼであってもよい。タンパク質ファミリーおよび限定されるものでない具体的な例を次に記載する:システインプロテアーゼ、例えばカスパーゼ、カテプシン;亜鉛プロテアーゼ (メタロプロテアーゼ)、例えばカルボキシペプチダーゼ、様々なマトリックスメタロプロテアーゼ;セリンプロテアーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、およびエラスターゼ。ユビキチン経路も細胞株のタンパク質生産期の間は有用な標的でありうる。RNAiをユビキチン、ユビキチン活性化酵素(El)、ユビキチン結合酵素(E2)および/またはユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)を標的化するレンチウイルスベクター中に挿入してもよい。好ましくは、ユビキチン経路を標的化するRNAiは、ユビキチンの抑制が明示した期間だけ起こるように、誘導プロモーターから発現させる。ユビキチンを標的化するRNAiの誘導は、本発明を限定するものでなく、レンチウイルスベクターがプロテアーゼ、好ましくは細胞死に関わるプロテアーゼを標的化するRNAiを構成的に発現することが所望される。かかるプロテアーゼとしては、限定されるものでないが、アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼ(ASCP)、Omi/HtrA2などのセリンプロテアーゼ、カスパーゼ、ICE/CED-3プロテアーゼなどのチオールプロテアーゼのICEファミリー、グランザイムBが挙げられる。あるいは、ベクターはIAPタンパク質などのアポトーシスを抑制する遺伝子を発現してもよい。細胞の 表現型をモジュレートするためのかかる方法は、細胞内のタンパク質 生産に限定されるものでなく、ワクチン および 治療目的のトランスジェニック動物の作製にも利用することができる。これらの応用のための好ましい実施形態は、組織特異的プロモーターから第2遺伝子または遺伝子抑制配列を発現することである。
【0079】
レンチウイルスベクター中に存在するいずれかの二次遺伝子に対するさらなる好ましい実施形態は、所望のタンパク質を含有する精製用のタンパク質混合物から二次タンパク質の迅速な除去を可能にするアミノ酸配列を用いてタンパク質をタグ付けすることである。この方法で、標的タンパク質の急速な精製を可能にする単一の共通のアミノ酸配列タグを用いることにより、タンパク質、二次タンパク質の組合わせを急速に除去することができる。標的タンパク質は異なるタグを有してもまたはタグを全く有しなくてもよい(天然のタンパク質を生産しかつ精製することが目的であれば後者が好ましい)。逆に、目的のタンパク質だけをタグ付けしてもよい。また、かかるベクターはヒト遺伝子治療用およびトランスジェニックマウスの作製用にin vivoで用いてもよく、in vitro系の使用に限定されるものでない。
【0080】
ポリペプチドを製造する方法
本発明はまた、本明細書に開示の形質導入ベクターなどのレンチウイルス形質導入ベクターを利用してポリペプチドを製造する方法およびかかる方法の産物も提供する。上記方法は、1以上の次のステップ、例えば、宿主細胞をレンチウイルス形質導入ベクターにより形質導入して形質導入された宿主細胞を形成し、その場合、上記ベクターが目的の異種ポリペプチドをコードする発現可能な異種ポリヌクレオチドを含むステップ;目的の上記ポリペプチドを生産するのに有効な条件下で上記形質導入された宿主細胞を培養するステップ;上記宿主から、例えば、ポリペプチドが培地に分泌されるときには培地から、ポリペプチドを単離するステップを含んでなる。ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチド配列は、転写、翻訳、および/または培地中へ分泌(例えば、分泌配列)するために必要なさらなる配列を含んでもよい。いずれの細胞株でも本発明によって形質導入することができ、それには、本明細書に記載のいずれかの細胞株、とりわけ、例えば、CHO(CHODG44など)およびHEK293(HEK293Fなど)が含まれる。
【0081】
形質導入ベクターは、本明細書に記載の方法によることを含む日常的手法で調製することができる。例えば、プロデューサー細胞株を(適当なエンベロープおよびgag/pol前駆体を含有する)ヘルパープラスミドならびに異種コード配列を含有するトランスファーベクターを用いて、機能的な形質導入ベクターを生産するのに有効な条件下で形質転換することができる。エンベロープタンパク質は、ポリペプチドを製造する標的宿主細胞を形質導入するその能力について選択することができる。インフルエンザワクチンを製造するためには、次の細胞株および対応するエンベロープタンパク質が好ましい、例えば、293またはCHO;VSV-G、ampho、Mokola、およびパラミキソウイルス科(例えば、全世界で利用しうるウエブ、ncbi.nlm.nih.gov/ICTVdb/Ictv/fs param.htmを参照)。
【0082】
宿主細胞の例としては、例えば、哺乳動物細胞;ヒト細胞、例えばA2058黒色腫、C3A肝臓、G-402腎臓、C8166T-細胞、Caco-2結腸、およびK562骨髄;CHO;293F、293FTなどが挙げられ、先におよび後に記載されたならびにATCCウエブサイト(www.atcc.org)および他の細胞供給源に存在する細胞株を含む。
【0083】
いずれの好適なまたは所望の異種配列を発現させてもよく、それには、例えば、ワクチン、インターフェロン(α、β、γ、ε)、エリスロポエチン、VIII因子、凝固因子、それらの抗体および断片(例えば、1本鎖、Fab、および ヒト化を含む)、インスリン、ケモカイン、サイトカイン、増殖因子、血管新生調節性因子、アポトーシス調節性因子、などが含まれる。1本鎖抗体(例えば、1本鎖可変断片または「scFv」)を日常的手法で作ることができる。
【0084】
本発明のある特定の実施形態においては、レンチウイルス形質導入ベクターを利用して、ワクチンとして使用される抗原調製物を調製することができる。いずれかの好適な抗原を本発明によって調製することができて、それにはプリオン、ウイルス、放線菌、原生動物 (例えば、Plasmodium falciparum (マラリア))、トリパノソーム、細菌 (例えば、連鎖球菌、ナイセリア菌など)などから得られる抗原が含まれる。
【0085】
宿主細胞を、1以上の異種ポリヌクレオチド配列を含有する単一のレンチウイルスベクターを用いて、またはそれぞれのベクターが同じまたは異なる異種ポリヌクレオチド配列を含む複数のレンチウイルスベクターを用いて、形質導入することができる。例えば、多サブユニット抗原(細胞内および細胞-表面マルチ-サブユニット成分を含む)を、個々のサブユニットを別々のベクター上で発現させ、しかし、アセンブリーは宿主細胞内で起こるように、上記宿主細胞を全ベクターを用いて感染させることにより調製することができる。
【0086】
ワクチンはしばしば複数の、例えば、異なるタンパク質由来の、および/または同じタンパク質の異なるエピトープ領域由来の抗原成分を含有する。例えば、ウイルスの疾患に対するワクチンは、宿主に投与されると、ウイルスチャレンジに対して免疫原性または保護応答を惹起するウイルスから得られる1以上のポリペプチド配列を含みうる。
【0087】
述べたように、本発明はまた、例えば、2以上のポリペプチドからなる抗原調製物を生産する場合、ポリペプチド多量体を調製するのに利用できる。例えば、ウイルスカプシドを、2以上のポリペプチドサブユニットから作りあげることができる。宿主細胞を、色々なウイルスのエンベロープ配列を運ぶベクターを用いて形質導入することにより、そのタンパク質は、細胞に発現されると、2以上のタンパク質サブユニット(例えば、それらの天然のコンフィギュレーション)を含有する3次元構造に自己アセンブルすることができる。その構造は抗原性活性、酵素活性、細胞結合活性、などを含む機能的活性を有しうる。さらに、好適な細胞株に発現されると、それらを細胞培養培地中に分泌して、精製を容易にすることができる。例えば、インフルエンザNおよびHカプシドタンパク質、および場合によりMタンパク質(以下参照)を、レンチウイルス形質導入ベクターを用いて生産細胞株中に導入すると、空のカプシドまたはウイルス様粒子(VLP)を細胞において形成し次いで培養培地に分泌することができる。かかるVLPは、日常的手法で単離しかつ精製し、次いでインフルエンザ ワクチンとして投与することができる。VLPは、例えば、ウイルスRNAの実質的な量を含有しない(例えば、空である)自己アセンブルされたカプシドである。VLPは好ましくは、天然の感染性ウイルス粒子のチャレンジに対して少なくともある程度の保護を与えるか、または少なくともそれに対する抗体を惹起するのに有効である免疫応答を惹起することができる。
【0088】
現在、多くの利用しうるウイルスワクチンがあって、それには、麻疹、おたふく風邪、肝炎(AおよびB)、風疹、インフルエンザ、ポリオ、天然痘、水痘、アデノウイルス、日本脳炎、狂犬病、エボラなどの疾患に対するワクチンが含まれる。本発明は上記疾患のいずれかに対するワクチンを調製するのに利用することができる。
【0089】
レンチウイルス形質導入系は特に重要である、何故ならこの系は、有効なインフルエンザワクチンを開発および生産する時間を短縮して、公共健康機関がインフルエンザ疾患のパターンの変化に対してより迅速に応答することを可能にするからである。現在、インフルエンザウイルス、とりわけA型および B型株は全世界の重症の病気および死亡の主な原因である。米国において、インフルエンザは全死因のなかで第7位に格付けされ、多数の入院(200,000)、労働損失日数(70 x 106)、および活動日数の制限(346 x 106)をもたらし、著しい経済的影響を引き起こしている。例えば、dhhs.gov/nvpo/influenza_vaccines.htmlを参照されたい。A型インフルエンザウイルスはその表面抗原がしばしば変化するが、B型インフルエンザウイルスの変化はそれより少ない。1つの株による感染後の免疫はその後の抗原性変異体に対して完全に保護することはできない。従って、インフルエンザに対する新しいワクチンをそれぞれの年に設計して最も次の流行を起こしそうな循環中の株とマッチさせなければならない。世界保健機構(The World Health Organization)は、インフルエンザワクチン組成について毎年推奨を行う「地球上のインフルエンザ監視ネットワーク(Global Influenza Surveillance Network)」を設立している。本発明のレンチウイルス形質導入系は現在使用される標準鶏卵技法と比較して有効ワクチンを生産するために必要な時間を有意に削減する、例えば、標準鶏卵技法は8ヶ月を要しうるのと比較して、例えば、本明細書に記載の方法を用いると5週間以下である。
【0090】
本発明によってワクチンを生産することができるウイルスの例としては、例えば、オルトミキソウイルス属、インフルエンザウイルスA型(そのHAおよびNAタンパク質の様々な株、例えば(非限定の例)HlNl、H1N2、H2N2、H3N2、H7N7、およびH3N8の全てを含む);インフルエンザB型、インフルエンザC型、トゴトウイルス(thogoto virus)(Dhori、Batkenウイルス、SiAR126ウイルスを含む)、およびイサウイルス(isavirus)(例えば、感染性サケ貧血ウイルス)が挙げられる。これらは、全ての種型から単離または伝達されたインフルエンザを含むものであって、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳動物、ヒト、非ヒト霊長類、サル、ブタ、ウシ、および他の家畜、鳥類、シチメンチョウ、ニワトリ、ウズラ、およびカモなどの家禽、野鳥(水性および陸生鳥類を含む)、爬虫類などからの単離物を含む。これらはまた、例えば、突然変異、抗原性ドリフト、抗原性シフト、組換えなどを介して変化した現存の株、とりわけ病原性および/または種間伝播性(例えば、ヒトからヒトへ)の増加した株も含む。
【0091】
特に重要なのは、全動物性であるおよび/または(広い宿主領域を有する故に、または感染宿主の組換えの故におよび/または天然もしくは指令した突然変異の故に)種を横断するインフルエンザウイルスである。例えば、H5N1(ウイルス、赤血球凝集素5型およびノイラミニダーゼ1型上に存在する表面抗原のサブタイプに関連して)は鳥類インフルエンザAのサブタイプであって、アジアにおいて家禽鳥類におけるインフルエンザの激増を引き起こした。2005年11月に、120 x 106の鳥類が感染により死亡するかまたはさらなる感染拡大を防止するために犠牲となった。このウイルスはまた、高い死亡率を伴うヒト宿主(「鳥類インフルエンザ」)にも伝播した。
【0092】
インフルエンザ抗原調製物(ワクチンなど)は、天然にインフルエンザウイルス粒子で存在する1以上のポリペプチドを含んでもよい。しかし、上記調製物は好ましくは、天然の病原性ウイルスを生じうる全てのポリペプチド遺伝子を含まない。これらには、例えば、赤血球凝集素(HA遺伝子がコードする)、ノイラミニダーゼ(NA遺伝子がコードする)、核タンパク質(NA遺伝子がコードする)、マトリックス(Ml)タンパク質(M遺伝子がコードする)、M2(M遺伝子がコードする)、非構造タンパク質(NS遺伝子がコードする)、およびポリメラーゼが含まれる。天然ウイルス粒子は、内在性タンパク質HおよびN(「カプシド層」)が点在する脂質二重層で覆われている。マトリックスタンパク質(M1)はウイルス膜の下にタンパク質層(「マトリックス層」)を形成してウイルスアセンブリー、安定性および完全性に関わる。例えば、Harrisら, Virol. 289:34-44, 2001を参照されたい。M2タンパク質は膜タンパク質イオンチャネルである。本発明のVLPはH、N、および場合によりM1およびM2タンパク質を含んでもよい。上記タンパク質の配列は公知でありそして/またはGenBankで同定することができる。例えば、MlおよびM2配列についてはWidjajaら, J Virol, 78:8771-8779, 2004を参照されたい。
【0093】
これらをトランスファーベクター中に、個々にまたは同じプラスミド上に、クローニングして、形質導入ベクターを生産するのに利用してもよい。本発明の一実施形態においては、それぞれがユニークなインフルエンザ遺伝子配列を含有する(例えば、H、N、およびM1をコードして3つの異なる形質導入ベクターをもたらす)複数の形質導入ベクターを調製してもよい。かかるベクターを同じ宿主細胞(例えば、CHOまたは293)内で共発現させると、自己アセンブルVLPが生産されて培地中に分泌されるので、遠心分離により収穫し、次いでワクチンとして投与することができる。
【0094】
インフルエンザA H5。H5の少なくとも9サブタイプが同定されている。HPAI H5N1ウイルスなどのH5感染はアジアおよび欧州で流行していて、ヒトの間で記録されており、重症の病気または死を引き起こしうる。
【0095】
インフルエンザA H7。H7の少なくとも9サブタイプが同定されている。ヒトにおけるH7感染は稀であるが、感染した鳥類との直接接触した人たちの間では発生しうる。症候群としては、結膜炎および/または上気道症候群が挙げられる。H7ウイルスには、例えば、H7N2、H7N7、およびH7N3が含まれ、ヒトにおいて中〜重度のおよび致死的な病気を引き起こしている。Hサブタイプは、細胞に結合して進入し、次いでウイルスの増殖を起こすウイルスの能力を支配するので、疫学的に最も重要である。Nサブタイプは細胞から新しく形成されるウイルスの放出を支配する。
【0096】
インフルエンザA H9。H9の少なくとも9サブタイプが同定されている。インフルエンザA H9は、ヒトに感染すると稀にしか報じられてない。しかし、H9株に感染するとインフルエンザ様症候群を表す子供の報告は存在する。
【0097】
本発明は全鳥類インフルエンザサブタイプ(例えば、HおよびNサブタイプ)に対するワクチンを提供し、それには現存のサブタイプ、その誘導体、およびその組換え体、例えば、ヒトからヒトへ伝播する能力を有するサブタイプおよび組換え体が含まれる。様々な単離体、とりわけH5サブタイプが特徴付けられている。例えば、Stem-Ramirez、J. Virol、2004、78、4892-4901; Guanら、Proc. Natl. Acad. ScL、2004、101、8156-8161を参照されたい。
【0098】
かかるタンパク質が培地中に分泌されると、本発明の形質導入ベクターは高レベルの異種タンパク質生産、例えば、非加工培地1ml当たり約0.1〜0.3mg/mlから約5〜10mg/ml以上の組換え異種タンパク質をもたらしうる。
【0099】
本出願はまた、抗体を生産する方法も提供する。例えば、モノクローナル抗体(例えば、ヒト、マウス、および他の哺乳動物型)を、ハイブリドーマまたは動物モデルの必要なしに生産する方法を提供する。1つの非限定の例においては、発癌性タンパク質を発現するレンチウイルスベクターを、予め抗原を用いて刺激したマウス由来の末梢血B細胞に形質導入する。これらのベクターは効率的にマウス細胞を形質導入して、それらを抗体を生産する細胞にする。第2の非限定の例においては、1つは重抗体鎖そして第2のベクターは軽抗体鎖を発現する2つのレンチウイルスベクターを用いて遺伝子操作を行う。遺伝子の定常域はヒト(またはもし所望であれば他の種)免疫グロブリン遺伝子(IgG、IgMまたはIgの他の型)から誘導される。遺伝子の可変域は改変されるかまたは変性して多様性を作り出す。変性配列は、当技術分野で公知のいずれかの好適な技法により得ることができ、これをレンチウイルスベクター中にクローニングして重または軽免疫グロブリン分子を発現するレンチウイルスベクターのライブラリーを作製する。抗体は、重鎖と軽鎖の両方を含有する機能性抗体を生産する両方のベクターを用いて細胞を形質導入することにより生産できる。形質導入しかつ発現する細胞を、抗原との結合について選択かつスクリーニングし、次いでポジティブクローンを単離し、複数回のアフィニティ成熟にかけることができる。
【0100】
この方法の利点は抗体がノンバイアスの方法で生産されることである。伝統的なハイブリドーマおよびキセノマウス技法などの他の方法は、B細胞が内因性、例えば、マウス組織に対して反応性があるので、クローン選択および特定の抗体クローンの欠失を受けたB細胞に依存する。これらの欠失したクローンのいくつかは、ヒト抗原と交差反応するので、抗体として貴重である。記載した方法の利点は、分子抗体クローンの欠失がなく、それらが全てノンバイアスの方法で分析されかつなお全てヒト化(ヒト化が所望される場合)抗体分子であることにある。レンチウイルスベクターの他の利点は、遺伝子を細胞中に高い多重度で形質導入して1つの細胞内に様々な抗体型を生産できることにある。これは、非常に多様な抗原結合部位を含有するライブラリーを作製するために生産する必要のある細胞数を削減する。第2の利点は重および軽遺伝子を異なるレンチウイルスベクターに配置して、1より高い多重度の感染をもつ細胞を形質導入することによりさらなる多様性を作製できることである。例えば、もし10のMOIを用いてそれぞれ重鎖と軽鎖を発現するレンチウイルスベクターにより細胞の形質導入を行えば、それぞれの細胞に生産される抗体の組合わせ数は100になる。それ故に、単一ウエル中に約10,000細胞が存在する96ウエルプレートにおいて、この方法で作製できる可能な変異体数は96ウエルプレートの単一ウエル中で1,000,000である。それ故に、スケールによって、この方法を用いて大きい数の抗体変異体を作製できる。この方法は、1細胞当たりそれぞれの構築物について10のMOIを用いることに限定せず、さらに高いMOIも、必要に応じて用いることができる。例えば、もし100のMOIを用いれば、それぞれの細胞は10,000変異体抗体を生産でき、そして96ウエルプレートのそれぞれのウエルは10,000,000,000変異体を生産できる。それ故にそれぞれの96ウエルプレートは1 x 1012変異体抗体分子を生産して標的抗原に対するスクリーニングに用いることができ、そのスクリーニング方法は当技術分野で多数の方法が公知である(例えばELISA)。ある特定のウエルが、所望の抗体反応を生産することが同定されると、次いでその細胞を限定希釈によりクローニングして正しい抗体を発現する細胞クローンを見出すことができる。このクローンが同定されると、次いでPCRを用いて重および軽抗体鎖を発現するベクターをクローニングして取出すことができる。次いでベクターDNAをヘルパー構築物を用いてトランスフェクトしてベクターを生産することができる。あるいは、この細胞のクローンをヘルパー構築物を用いて(PEI、カルシウムリン酸塩、リポトランスフェクション、または当技術分野で公知の他のトランスフェクション方法により)直接トランスフェクトして、変異体レンチウイルスベクターを生産することができる。次いで、生産されるベクターを滴定し、次いで低いMOIで細胞に、しかしさらに多数の細胞に形質導入して、目的の抗体を生産するクローンを単離することができる。細胞のクローンが単離されると、次いで、より高い多重度の感染をもつ細胞を形質導入することによって、抗体をより高い力価に生産することができ、上記方法は全抗体分子に限定されるものでなく、また1本鎖抗体、抗体断片、ファージディスプレイおよび当技術分野で公知である全ての他の抗体様分子にも応用することができる。抗体を発現するだけでなく、ベクターは他の遺伝子も発現してモノクローナル抗体の生産を増加するまたはその収率を増加することができる。かかる遺伝子はrasおよびmycなどの発癌遺伝子であってもよく、しかし他の遺伝子、例えば、Bcl-2などの抗アポトーシス遺伝子を用いてもよい。さらに、かかるベクターを用いて、抗原に曝された動物の血液中のB細胞からモノクローナル抗体を作製することができる。抗原に曝したマウス由来のB細胞を、発癌遺伝子または遺伝子サイレンシングRNAと組合わせ用いることにより骨髄腫細胞中に形質転換することができる。かかる遺伝子としては、例えば、増殖因子、例えば、アンフィレギュリン(Amphiregulin)、Bリンパ球刺激因子、インターロイキン16(IL16)、サイモポエチン、TRAIL、Apo-2、プレB細胞コロニーエンハンサー因子、内皮の鑑別関係因子1(EDFl)、内皮の単球活性化ポリペプチドII、マクロファージ遊走阻止性因子MIF、ナチュラルキラー細胞増強因子(NKEFA)、骨形成タンパク質8(骨原性タンパク質2)、骨形成タンパク質6、結合組織増殖因子(CTGF)、CGI-149タンパク質(神経内分泌鑑別因子)、サイトカインA3(マクロファージ炎症性タンパク質1-α)、グリア芽細胞腫細胞鑑別-関係タンパク質(GBDRl)、肝細胞腫-由来の増殖因子、ニューロメディンU-25前駆体、いずれかの腫瘍遺伝子、発癌遺伝子、前発癌遺伝子または細胞調節遺伝子(condor.bcm.tmc.edu/oncogeneに見出しうる)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)、T-細胞特異的RANTES前駆体、胸腺樹状細胞誘導因子1;レセプター、例えば、アクチビンAレセプター、II型(ACVR2)、β-シグナル配列レセプター(SSR2)、CD14単球LPSレセプター、CD36(コラーゲン1型/トロンボスポジンレセプター)様2、CD44R(Hermes抗原gp90ホーミングレセプター)、Gタンパク質結合レセプター9、ケモカインCxCレセプター4、コロニー刺激因子2レセプターβ(CSF2RB)、FLT-3レセプターチロシンキナーゼ、一過性レセプターと類似の潜在C前駆体、キラー細胞レクチン-様レセプターサブファミリーB、低密度リポタンパク質レセプター遺伝子、低アフィニティFc-γレセプターHC、MCP-1レセプター、単球化学誘引物質タンパク質1レセプター(CCR2)、核レセプターサブファミリー4、グループA、メンバー1、オーファンGタンパク質結合レセプターGPRC5D、ペルオキシソーム増殖性活性化レセプターγ、フェロモン関係レセプター(ラット)、バソプレッシン活性化カルシウム移動性推定レセプター、レチノイン酸xレセプター、Toll様レセプター6、膜貫通アクチベーターおよびCAML相互作用因子(TACI)、B細胞成熟ペプチド(BCMA)、CSF-1レセプター、インターフェロン(α、βおよびγ)レセプター1(IFNARl)が挙げられる。抗体生産を増加するためにモジュレートできる経路としては、例えば、ユビキチン/プロテオソーム;テロメラーゼ;FGFR3;およびMcl-1が挙げられる。抗体生産を増加するために標的化できる他の遺伝子を次の表に掲げる。
【表1】

【0101】


【表2】

【0102】

【0103】

レンチウイルス形質導入ベクターを製造する方法
本発明はまた、フロースルー超遠心分離と高速遠心分離、およびタンジェンシャルフロー濾過を用いて、レンチウイルスベクターを濃縮かつ精製する方法も提供する。フロースルー超遠心分離は過去にRNA腫瘍ウイルスの精製用に用いられている(Toplinら, Applied Microbiology 15:582-589, 1967; Burgerら, Journal of the National Cancer Institute 45: 499-503, 1970)。本発明はレンチウイルスベクターを精製するためのフロースルー超遠心分離の使用を提供する。本方法は1以上の次のステップを含んでなる。例えば、レンチウイルスベクターを、細胞ファクトリーまたはバイオリアクター系を用いて細胞から生産することができる。一過性トランスフェクション系(上記参照)を用いてもよいしまたはパッケージングまたはプロデューサー細胞株を同様に用いてもよい。材料を超遠心分離機に供給する前に、所望であれば、前清澄ステップを用いてもよい。フロースルー超遠心分離は、連続流またはバッチ沈降を用いて実施してもよい。沈降に用いる材料は、例えば:塩化セシウム、酒石酸カリウムおよび臭化カリウムであって、これらは低粘度で高密度にするが、これらは全て腐食性がある。CsClは広い密度勾配(1.0〜1.9g/cm3)を作ることができるので、高い純度のプロセス開発にしばしば利用される。臭化カリウムは高密度で使用できるが、高温、すなわち25℃においてだけであって、この温度はいくつかのタンパク質の安定性に適合しないことがある。スクロースは安価で、無毒でかつほとんどのタンパク質、サブ細胞画分および全細胞の分離に好適な勾配を形成しうるので、広く使われる。典型的には最高密度が約1.3g/cm3である。スクロースの浸透ポテンシャルが細胞に有毒である場合、複雑な勾配材料、例えばナイコデンツ(Nycodenz)を用いてもよい。勾配は1以上のステップの勾配を用いることができる。好ましい実施形態はステップスクロース勾配を用いることである。材料の体積は好ましくは、1ラン当たり0.5リットル〜200リットル以上である。流速は好ましくは毎時間5〜25リットルである。好ましい操作速度は25,000〜40,500rpmであって122,00O x gまでの力を生じる。
【0104】
ローターは所望の体積画分で静的に抜き取ってもよい。好ましい実施形態は100ml画分で遠心分離した画分を抜き取ることである。精製しかつ濃縮されたレンチウイルスベクターを含有する単離された画分は次いでゲル濾過またはサイズ排除クロマトグラフィを用いて、所望のバッファーに交換することができる。バッファー交換またはさらなる精製のための代わりのまたは追加の方法として、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィも用いることができる。さらに、タンジェンシャルフロー濾過も、バッファー交換および、もし必要であれば、最終製剤に使用することができる。タンジェンシャルフロー濾過(TFF)も、超または高速遠心分離の代わりのステップとして利用することができ、その場合、2ステップのTFF手順を実施しうる。第1ステップはベクター上清の体積を削減しうる一方、第2ステップはバッファー交換、最終製剤および材料のいくらかのさらなる濃縮に利用しうる。TFF膜は100〜500キロダルトンの間の膜サイズを有すべきであり、第1のTFFステップが好ましい500キロダルトンの膜サイズを有する場合、第2のTFFは300〜500の好ましい膜サイズを有しうる。最終バッファーは、ベクターを長期間貯蔵できるようにする材料を含有すべきである。
【0105】
本発明はまた、レンチウイルスベクターを濃縮しかつ精製する方法も提供する。その方法は、付着細胞を含有する細胞ファクトリー、またはベクターとヘルパー構築物によりトランスフェクトまたは形質導入した懸濁液細胞を含有するバイオリアクターを利用して、レンチウイルスベクターを生産する。バイオリアクターの非限定の例には、Waveバイオリアクター系およびXcellerexバイオリアクターが含まれる。両方の系は使い捨ての系である。しかし、使い捨てでない系も利用することができる。構築物は本明細書に記載のものであっても、また他のレンチウイルス形質導入ベクターであってもよい。あるいは、細胞株を遺伝子操作して、形質導入またはトランスフェクションをする必要なしにレンチウイルスベクターを作ってもよい。トランスフェクションの後に、レンチウイルスベクターを収穫して粒子を取り出し、次いで連続フロー高速または超遠心分離を用いて遠心分離する。好ましい実施形態は、高速遠心分離機と共にJCF-Aゾーンおよび連続フローローターのような高速連続フローデバイスを用いることである。また好ましいのは、培地スケールのレンチウイルスベクター生産用ContifugeStratus遠心分離機の使用である。また好ましいにはいずれかの連続フロー遠心分離機であり、その場合、遠心分離速度は5,000xg RCFより大きくかつ26,00Ox g RCFより小さい。好ましくは、連続フロー遠心力は約10,500x g〜23,500 x g RCF、遠心分離時間は20時間と4時間の間であり、そして遠心分離時間が長いほど、回転を遅くして遠心力を小さくする。レンチウイルスベクターを、より高密度の材料のクッション上で遠心分離して(非限定の例はスクロースであるが他の試薬を用いてクッションを作ってもよく、そしてこれらは当技術分野で公知である)、レンチウイルスベクターが、濾過性のない凝集物(ベクターのストレート遠心分離によってウイルスベクターペレットを得る場合に問題となる)を形成しないようにしてもよい。クッション上での連続フロー遠心分離はベクターが大きい凝集物を形成するのを回避するだけでなく、レンチウイルスベクターを作る大きい体積のトランスフェクトした材料からベクターを高レベルに濃縮することを可能にする。さらに、第2の密度のより低いスクロース層を利用してレンチウイルスベクター調製物のバンドを作ることができる。連続フロー遠心分離機の流量は好ましくは、毎秒1〜100mlであるが、さらに高いおよびさらに低い流量を用いてもよい。流量を調節して遠心分離機のコアに入るベクターに十分な時間を与え、有意なベクターの量が高流量によって失われることのないようにする。より高い流量が所望であれば、連続フロー遠心分離機から流出する材料を再循環して遠心分離機を2回通過させてもよい。ウイルスを連続フロー遠心分離を用いて濃縮した後に、そのベクターをさらにタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を用いて濃縮してもよいし、またはTFF系を用いてバッファー交換を行ってもよい。非限定のTFF系の例は、GE-Healthcare製のXamplerカートリッジ系である。好ましいカートリッジは500,000MW以下のMWカットオフのものである。好ましくは300,000MWのMWカットオフのカートリッジを用いる。100,000MWカットオフのカートリッジを用いることもできる。体積が大きいほど、大きいカートリッジを用いてもよく、当業者がベクター調製の最終充填物の前に、この最終バッファー交換および/または濃縮ステップ用の正しいTFF系を見出すことが容易でありうる。最終充填物調製はベクターを安定化する因子(糖が一般に用いられ、当技術分野で公知である)を含有しうる。
【0106】
ワクチンとHIV療法
腫瘍細胞が腫瘍特異的抗原を細胞表面上に発現することは公知である。これらの抗原が免疫原性に乏しいのは主にこれらが発癌遺伝子または宿主に通常存在する他の細胞の遺伝子の遺伝子産物を発現し、それ故に明らかに非自己として認識されないからであると考えられる。多数の発明者らが様々な腫瘍特異的抗原からのエピトープに対する免疫応答を標的化しようと試みたが、誰も十分な腫瘍免疫をin vivoで惹起するのに成功していない。過去30年にわたって誇張なしに数千の患者が腫瘍細胞抗原をワクチン調製物として投与されているが、これらの試みの結果は腫瘍細胞免疫化が有効なワクチンの設計または構築の合理的基準を与えることができなかったことを実証してきた。患者が腫瘍特異的抗体または細胞傷害性T-細胞を発現する場合ですら、この免疫応答は関係疾患の抑制と相関がない。宿主を保護する免疫系のこの失敗は、免疫原性の乏しい腫瘍抗原の発現または様々な腫瘍細胞による特異的抗原の異種発現によるのであろう。腫瘍増殖を抑制するために有効な免疫応答を惹起する目的の腫瘍抗原の適当な提示は、有効な癌ワクチンの開発における中心的課題として残っている。また、非レンチウイルスベクターがこの発現を最適化しない傾向にある場合、抗原発現の量と期間も重要である。免疫原性が乏しいことがわかっている腫瘍抗原、「自己抗原」を、被験者の腫瘍細胞の増殖を抑制するのに十分強力な免疫原性を惹起する方式で、被験者の免疫系に提示する方法に対する必要性が残っている。本発明は、in vivo免疫応答を産生して腫瘍細胞の抑制をもたらすケモカインと腫瘍抗原を含む融合タンパク質を提供することにより、従来の当技術分野における制限と欠点を克服する。本発明はまた、HIV感染を治療または予防するワクチンとして有効であるケモカインとHIV抗原を含む融合タンパク質を提供することにより、HIVワクチン開発の分野における従来の欠点も克服する。また、より安全なレンチウイルスベクターを構築する方法、レンチウイルスベクターを精製する方法およびタンパク質-タンパク質相互作用を検出するためにレンチウイルスベクターを使用する新規の方法も提供する。
【0107】
本発明はまた、被験者のHIV感染を治療または予防する方法であって、被験者に、次のタンパク質由来の次のペプチドのいずれかの組合わせ:タンパク質:ケモカイン、自殺遺伝子、HIVタンパク質、サイトカイン、細胞表面タンパク質、腫瘍抗原、または細胞からのHIV生産に影響を与えるいずれかの細胞の遺伝子(細胞の遺伝子を過剰発現するかまたは発現RNAiなどによりその発現を抑制することによって)を投与するステップを含んでなり、それらが全てレンチウイルスベクターから与えられかつ発現される、上記方法も提供する。
【0108】
他の好ましい実施形態は治療に利用するレンチウイルスベクターであって、ヒトケモカインおよびウイルス性または細菌性抗原(例えばHIV、ジフテリア毒素抗原)、ケモカイン(例えばIP-1O、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MIP1、RANTES、SDF-1、MIGおよび/またはMDC)または前アポトーシスタンパク質、自殺遺伝子タンパク質または炎症性応答を促進するタンパク質のいずれか個々のまたはの組合わせを含む天然のまたは融合ポリペプチドを発現する上記レンチウイルスベクターである。
【0109】
さらに、本発明は被験者に免疫応答を産生する方法であって、被験者に本発明の個々のもしくは融合ポリペプチドのいずれかを投与するステップを含んでなり、上記ポリペプチドはケモカインおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、またはケモカイン、前アポトーシス遺伝子、自殺遺伝子および腫瘍抗原を、タンパク質としてまたはレンチウイルスベクターから発現される個々のもしくは融合ポリペプチドをコードする核酸として含む上記方法を提供する。また、被験者の癌を治療する方法であって、本発明の個々のもしくは融合ポリペプチドのいずれかを発現し、ケモカインおよび腫瘍抗原をタンパク質または融合ポリペプチドをコードする核酸として含むレンチウイルスベクターを被験者に投与するステップを含んでなる上記方法も提供する。
【0110】
さらに提供されるのは、被験者のHIV感染を治療または予防する方法であって、被験者に、次のタンパク質由来の次のペプチドのいずれかの組合わせ:タンパク質:ケモカイン、自殺遺伝子、HIVタンパク質、サイトカイン、細胞表面タンパク質、腫瘍抗原、または細胞からのHIV生産に影響を与えるいずれかの細胞の遺伝子(細胞の遺伝子を過剰発現するかまたは発現RNAiなどによりその発現を抑制することによって)を投与するステップを含んでなり、それらが全てレンチウイルスベクターから与えられかつ発現される、上記方法である。
【0111】
本発明はまた、細胞がHIV感染した個体で見出される感染性または欠陥HIV粒子に感染していると、HIV粒子を生産することができるHIVベクターも提供する。ベクターは、次の細胞宿主因子の天然のまたは変異体バージョンを抑制または過剰発現する配列を含有して、野生型HIV粒子より病原性の低い、または好ましくは非病原性であるウイルス粒子をもたらす。これらには、例えば、APOBECファミリーメンバー(APOBEC1、2、3A、3B、3C、3D、3E、3F、CEM15/Apobec-3G)、AID、ACF、Tsg1Ol、Vps4、Vps28、Vps37、Vps32、ESCRT-1、ESCRT-2、ESCRT-3、TRBP-1、Sam68、KHドメインを含有するタンパク質、ウイルスの粒子の二量体化および成熟に関わる細胞のタンパク質、Hck、細胞間細胞接着分子(ICAM)、例えばICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、ICAM-4およびICAM-5;白血球機能に関連する抗原-1(LFA-1)およびマクロファージ抗原1(Mac-1)、Trim5-α、Trim1、ヒトCRM1、細胞のプリオンタンパク質(PrP)、E2F-4、シクロフィリンA、メンバーまたはJAK/STAT経路、TIP30、ヒトRev相互作用タンパク質(hRIP)、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)-結合タンパク質、CD4、CD36、PRP4、HSP27、HSP70、p38 MAPK、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼスーパーファミリーのいずれかのメンバー、Tip110、TGFbeta-1、MCP-1、インターフェロン調節因子s(IRF)、IRF-1、IRF-2、IRF-3、IRF-4、IRF-5、IRF-6、IRF-7;RA5、SDF-1α、CCR5、CXCR4、TNFレセプタースーパーファミリー(TNFRSF)、CD40リガンド(CD154またはTNFSF5とも呼ばれるCD40L)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-11、IL-13、IL-14、IL-15、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、TNF-α、エリスロポエチン、トロンボポエチン、幹細胞因子、flk2/flt3リガンドおよび異種リボ核タンパク質A2が含まれる。レンチウイルスベクターは本予備特許出願の他の箇所でも考察した遺伝子または遺伝子配列のインヒビターのいずれかの組合わせを含む。レンチウイルスベクターに発現される遺伝子の好ましい組合わせはIFN-αおよびIFN-βである。さらなる好ましい組合わせはIRESエレメントにより分離されたIFN-αとIFN-βまたは同じmRNAから両方の遺伝子の翻訳を可能にするフレームシフトを発現する、変異レンチウイルスベクターである。
【0112】
細胞を排除する方法
本発明はまた、レンチウイルスベクターを利用して細胞を排除する(例えば、一掃する)方法(例えば、in vivo またはin vitro)も提供する。かかるレンチウイルスベクターは、標的細胞で発現すると細胞死に導く細胞傷害性、細胞分裂停止、または自殺遺伝子を含んでもよい。
【0113】
例えば、本発明は、正常細胞よりむしろ腫瘍細胞、特にレンチウイルスベクターを含むいずれかのベクターを用いて形質導入するのが非常に困難である造血性幹細胞中に選択的に感染しかつ組み込まれるレンチウイルスベクターを提供する。実際、造血性の幹細胞の85%効率を超える効率的な形質導入は、特定の幹細胞因子の存在のもとで多重形質導入によってのみ達成しうる(Davisら, Blood 2004)。T細胞の90%を超える形質導入はT細胞の特定因子による刺激後でのみ達成しうる(Humeauら, 2004)。それ故に、本発明は、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子を正常細胞よりむしろ腫瘍細胞中に選択的に送達して腫瘍細胞の造血性細胞(および他細胞)移植片をパージして再発性疾患の可能性を低下させる。上記遺伝子は「自殺遺伝子」、遺伝子細胞のアポトーシスを誘導する遺伝子または免疫応答を刺激する遺伝子であってもよい。あるいは、上記遺伝子またはコード配列はその産物が分裂細胞に対する条件的死滅機構を提供するものから選択することもできる。この方式で、特定のタンパク質の発現に続いて次の新生物細胞を死滅させるのに有効な治療を行う。次の治療は化学的および物理的治療を含んでなる。化学的治療は、遺伝子産物と反応して宿主 細胞を死滅させる酵素または他の化合物の使用を含んでなる。物理的治療は、細胞の照射、UV光などでの処理を含んでなる。本発明の方法は、汚染細胞(限定されるものでないが、細胞もしくは腫瘍、または悪性、早期悪性、前発癌性、発癌性または調製物を汚染しているまたは有害な事象を与える潜在力を有するいずれかの異常な細胞型を含む)をパージするまたは汚染細胞に対する免疫応答を刺激することができる目的の遺伝子を発現するレンチウイルスベクターを特定して使用する方法であって、(1)上記ベクターを汚染細胞をパージする細胞調製物に、99%を超える汚染細胞がレンチウイルスベクターにより形質導入され、その場合、移植片中の正常細胞は汚染細胞の頻度より低い頻度でレンチウイルスベクターにより形質導入される期間中、加えるステップ;および(2)細胞調製物を必要とする患者に上記細胞調製物を投与するステップを含んでなる上記方法である。あるいは細胞を洗浄して過剰のベクターを除去してもよいが、これは必要でない。ベクターはさらに、腫瘍細胞において一層特異的に発現されるプロモーターのもとの、または正常細胞よりむしろ発癌性細胞においてGOI mRNAの安定性を促進するcis作用配列と共に、または発癌性細胞よりむしろ正常細胞においてGOI mRNAの不安定性を促進するcis作用配列と共にレンチウイルスベクター中に含有される「目的のパージング遺伝子」(GOI)を発現してもよい。誘導プロモーター系などの他のプロモーター系も直列に用いてもよい。この一例はテトラサイクリン誘導プロモーター系である。
【0114】
上記発明に用いることができるいくつかの遺伝子型がある。例えば、単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子は分裂細胞のかかる条件死滅を与える。HSV-1-TKを用いることの選択的利点は酵素が哺乳動物のTKよりある特定のヌクレオシド類似体、例えばアシクロビル、ガンシクロビルおよびFIAUと高いアフィニティを有するという事実から誘導される(McLarenら, In:「ヘルペスウイルスおよびウイルス化学療法(Herpes Virus and Virus Chomotherapy)」, R. Kono編、pp. 57-61、Amsterdam、Elsevier (1985))。これらの薬物をヌクレオチド様前駆体に変換し、複製中の細胞に組み込み、そしてゲノムの完全性を破壊して最終的に細胞死に導く。いくつかの研究はTKの条件毒性を、トランスジェニックマウスの発生研究において(Borrelliら, Nature 339:538-541 (1983); Heymanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2698-2702 (1989))、培養細胞において非相同性組換え事象に対する選択マーカーとして(Capecchi、M. R.、Trends in Genetics 5 (3):70-76 (1989))、野生型ヘルペスウイルスを保持する細胞を死滅させるのに(CoreyおよびSpear, N. Engl. J. Med. 314:686-691 (1986);CoreyおよびSpear, N. Engl. J. Med. 314:749-756 (1986))、およびTK活性を欠くヘルペスウイルス変異体を選択するのに(Coenら、Science 234:53-59 (1986))首尾よく利用している。他の「自殺遺伝子」(例えば、http://www.zgene.net/technology.html)も利用しうるのであって、TKは限定する使用例を意味しない。アポトーシス遺伝子も組合わせてまたは単独で用いることができる。例としては:TNFリガンドファミリー:LTA(TNF-b)、LTB(LT-b)、TNF(TNF-a)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TNFSF1O(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(Apo3L)、TNFSF13(APRIL)、TNFSF14(HVEM-L);TNFレセプターファミリー:LTBR、TNFRSFlA(TNFRl)、TNFRSF1B(TNFR2)、TNFRSF4(OX40)、TNFRSF5(CD40)、TNFRSF6(Fas)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1BB)、TNFRSF10A(DR4)、TNFRSF10B(DR5)、TNFRSF10C(DcRl)、TNFRSF10D(DcR2)、TNFRSF12(DR3)、TNFRSF14(HVEM.);Bcl-2ファミリー:BAD、BAKl、BAX、BCL2、BCL2A1(bfl-1)、BCL2L1(bcl-x)、BCL2L11(bim-likeタンパク質)、BCL2L2(bcl-w)、BIK、BLK、BNIP3(nip3)、BOK(Mtd)、HRK、MCL-l;カスパーゼファミリー:CASPl、CASP2、CASP3、CASP4、CASP5、CASP6、CASP7、CASP8、CASP9、CASPlO、CASP13、CASP14.IAPファミリー:BIRCl(NIAP)、BIRC2(IAP2)、BIRC3(IAPl)、BIRC4(XIAP)、BIRC5(Survivin)、BIRC6(Bruce);TRAFファミリー:TANK(1-TRAF)5TRAFl、TRAF2、TRAF3(CRAFl)、TRAF4、TRAF5、TRAF6、TRIP;CARDファミリー:APAFl、ASC5BCLlO(HuElO)、NODl(CARD4)、NOL3(Nop30)、RIPK2(CARDILAC);デスドメインファミリー:CRADD5DAPK2、FADD,MYD88、RIPKl;デスエフェクタードメインファミリー:CASP8AP2(FLASH)、CFLAR(CASPER)、FADD、LOC51283(BAR);CIDEドメインファミリー:CIDEA、CIDEB、DFFA5DFFB.p53;およびATM経路:ATM5CHEKl(chkl)、CHEK2(chk2、Rad53)、GADD45A、MDM2、P63、RPA3、TP53(p53)が挙げられる。
【0115】
免疫原性またはサイトカイン遺伝子も単独でまたは自殺またはアポトーシス遺伝子と組合わせて用いることができる。かかる遺伝子の例はアダプタータンパク質:FADD、IRAK1、IRAK2、MYD88、NCK2、TNFAIP3、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6;細胞表面レセプター:ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、CD28、CD3E、CD3G、CD3Z、CD69、CD80、CD86、CNR1、CTLA4、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、FCGR3A、GPR44、HAVCR2、OPRD1、P2RX7、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10;ケモカインおよびレセプター:BLR1、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCR4、GPR2、SCYE1、SDF2、XCL1、XCL2、XCR1;サイトカインおよびレセプター:AMH、AMHR2、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、C19orf10(IL27w)、CER1、CSF1、CSF2、CSF3、DKFZp451J0118、FGF2、GFI1、IFNA1,IFNB1、IFNG、IGF1、IL1A、IL1B、IL1R1、IL1R2、IL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL4、IL4R、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL6ST、IL7、IL8、IL8RA、IL8RB、IL9、IL9R、IL10、IL10RA、IL10RB、IL11、IL11RA、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA1、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17R、IL18、IL18R1、IL19、IL20、KITLG、LEP、LTA、LTB、LTB4R、LTB4R2、LTBR、MIF、NPPB、PDGFB、TBX21、TDGFl、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、THlL、TNF、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF11A、TNFRSF21、TNFSF4、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF11、VEGF、ZFPM2、RNFI10(ZNF144);シグナル形質導入タンパク質:CABINl、CALMl、CALM2、CALM3、CAMK2B、CAMK4、CDC25A、CDKN1A、CDKN2B、CHUK、CSNK2A1、CSNK2B、ENG、EVI1、GSK3A、GSK3B、IKBKB、IKBKE、IKBKG、IL18BP、ITK、JAKl、JAK2、JAK3、KPNA5、KPNB3、LAG3、LAT、MADHl、MADH2、MADH3、MADH4、MADH5,MADH6、MADH7、MADH9、MAP2K4、MAP2K7、MAP3K1、MAP3K2、MAP3K7、MAP3K7IP1、MAP3K14、MAPK3、MAPK8、MAPK9、MAPK10、MAPK14、MHC2TA、NAP4、NBL1、NMA、NUP214、PAK1、PLAU、PPP3CB、PPP3CC、PPP3R1、PTPRC、RIPK1、SERPINE1、SLA、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS7、TBK1、TIMP1、TRPV6、TSC22、TYK2、VAV1、VAV2、VAV3、XPO5;応答性遺伝子遺伝子および他の関係遺伝子:AGT、BAD、BCL2、BCL3、BF、C3、CHRD、CKTSF1B1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、FST、HRAS、ICAM1、ICAM2、ICAM3、ICAM4、ICAM5、IGFBP3、IGSF6、ITGB5、ITGB7、IVL、MGC27165、MYF5、NCAM1、NOS2A、ORM1、PIN1、RFX1、RFX2、RFX3、RFX4、RFX5、RFXANK、RFXAP、RFXDC1、SAA1、SELE、SELL、SELPLG、SFN、TGIF、VCAM1;転写因子:ATF2、CEBPB
、CREB1、CREBBP、EGR1、EGR2、EGR3、ELK1、ELK3、EP300、FKBP1B、FLJ14639(NIP45)、FOS、FOSL1、FOSL2、FOXP3、GATA3、GATA4、GRLF1、ICOS、IRF1、JUN、JUNB、JUND、MAF、MAX、MEF2A、MEF2B、MEF2D、MYC、NFAT5、NFATC1、NFATC2、NFATC3、NFATC4、NFKB1、NFKB2、NFKBIA、NFKBIB、NFKBIE、NFKBIL1、NFKBIL2、NFRKB、RAF1、REL、RELA、RELB、RUNX1、RUNX2、SP1、SP3、SRF、STAT1、STAT4、STAT6、TFCP2、YY1である。
【0116】
自殺遺伝子治療はプロドラッグ活性化遺伝子治療とも呼ばれ、プロドラッグにより誘導されるアポトーシスに対する標的細胞の感受性を増加するために用いられる。レンチウイルスベクターを用いる自殺遺伝子の導入は腫瘍細胞に、局在するプロドラッグ活性化の能力を与え、毒性薬物代謝物の生産を標的化組織に制限する。自殺遺伝子治療系としては、例えば、HSV-tkと抗ウイルスプロドラッグであるガンシクロビルとの組合わせ、および細菌のシトシンデアミナーゼ遺伝子とプロドラッグである5-フルオロシトシンとの組合わせが挙げられる。シトクロム P-450 酵素を用いてもよく、これはシクロホスファミドおよびその異性体イホスファミドなどの様々な抗癌プロドラッグと組合わせることができる。
【0117】
過去において、同種間移植の副作用であり高い死亡率を伴う移植片対宿主(「GVH」)病を治療するためのベクターを用いる企てがあった。これらは、ドナーリンパ球の高い形質導入効率が達成できなかったかまたは移植片対宿主病の原因である細胞を効果的に標的化できなかった故に、失敗している。本発明は両方の欠点を解決するためにレンチウイルス形質導入ベクターの使用を提供する。本発明は、同種間移植中の移植片対宿主病を治療するための新しい計画を提供する。現在、同種間移植は、ドナー由来のリンパ球が宿主を外来と認識して正常宿主組織の破壊を始める移植片対宿主病によって高い死亡率をもたらす。ドナー由来のリンパ球は腫瘍細胞を効果的に破壊できるが一方、GVHD副作用は様々な型の癌を治療する手段としての同種間のかつ無関係なドナー移植を妨げている。本発明の方法は、移植片対宿主病を治療または予防するためにレンチウイルスベクターを使う。この方法はドナーリンパ球集団を形質導入するために用いる自殺遺伝子を発現するレンチウイルスベクターを用いる。
【0118】
他の計画には、誘導プロモーターから発現される生存因子に対するアポトーシス遺伝子またはRNAiの発現が含まれる。記載したペイロードは非限定の例であって、いずれかの遺伝子または遺伝子サイレンシング配列を用いて、将来のある時点で単に細胞を死滅させるよりもむしろ、同種間T細胞の機能をモジュレートすることができる。この方法は、自殺遺伝子または誘導性の細胞死遺伝子またはRNAiを発現するレンチウイルスベクターによる形質導入前にまたは中に、ドナーリンパ球を抗-CD3および抗-CD28抗体(または分裂促進因子、サイトカイン、その他の因子などの他の刺激薬)を用いて刺激する。刺激は、レンチウイルスベクターによるリンパ球集団の高いかつ完全な形質導入を可能にしうる。それ故に、形質導入された細胞を患者に輸液して、次に、もし同種移植片がGVHDを起こせば次いでGVHDに介在するリンパ球の細胞死滅を誘導するプロドラッグを用いてGVHDを治療してもよい。プロドラッグのレベルはまたGVHDを用量に依存する方式で低下させ、移植片対腫瘍効果を維持することができる。
【0119】
GVHDのメディエーターはアロ反応性T細胞であるので、リンパ球または末梢血細胞集団を治療する好ましい方法はこれらの細胞をベクターを用いて特異的に標的化することである。レンチウイルスベクターはより活性化された細胞をより効果的に形質導入することは公知であるので、アロ反応性T細胞はアロ反応性でないT細胞より選択的に活性されれば、レンチウイルスベクターを用いてより効率的に活性化されうる。アロ反応性T細胞の特異的活性化は、ドナーリンパ球(または白血球、またはCD4T細胞)をレシピエント細胞(白血球、赤血球または他のレシピエント細胞;細胞を照射または処理して細胞を死滅させるかまたは細胞増殖を防止してもよい)またはレシピエント細胞の抽出物と混合することにより実施し、そして同時にベクターを上記集団に、アロ反応性細胞を選択的に形質導入しかつ細胞の混合により刺激されない非アロ反応性細胞に形質導入しない適当なMOI(感染の多重度)で加える。好ましい方法は、レシピエントの赤血球をドナーリンパ球と混合することであり、その理由はこれらの細胞が非主要MHC抗原を含むMHC抗原を発現し(Zimringら、Blood. 2006 Jan l;107(l):187-9)かつこれらは、ベクターを用いて安定して形質導入されない脱核されている細胞でないからである。当業者はこのMOIを容易に決定することができ、その場合、ベクターを発現するレポーターを用いて形質導入された細胞を確認することができる。赤血球をドナー リンパ球と混合しかつレンチウイルスベクターを用いて形質導入した後 、リンパ球を洗浄し、好ましくは患者に注入する前に赤血球から単離する。リンパ球からの赤血球の分離は、ビーズ分離またはフィコール勾配遠心分離を含むいくつかの技法により行うことができ、当技術分野では公知である。刺激に単離赤血球を用いることの他の細胞型を超える利点は、(1)容易に入手しうること、(2)刺激後容易に除去されること、(3)増殖しないので、ドナーリンパ球の持続した刺激に寄与しないことおよび(4)ベクターにより形質導入されないことである。形質導入されたアロ反応性細胞は、患者への注入前にin vitroで、または注入後に破壊することができる。細胞はまた、患者特異的でかつ患者の特に非主要または主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子由来である細胞抽出物またはポリペプチドを用いて刺激してもよい。特異的MHC遺伝子を発現する抽出物またはペプチド/タンパク質の調製は当技術分野で公知である。好ましくは、抽出物は非腫瘍組織由来であって、アロ特異的細胞が疾患関連抗原に特異的である細胞よりもっと特異的に形質導入されるようにする。抽出物またはペプチド/タンパク質をドナー細胞上にパルスとして与えてアロ反応性 細胞を刺激し、レンチウイルスベクターによる効率的な形質導入ができるようにする。ベクターによる形質導入後、細胞を洗浄して次いで凍結または患者への注入に備えてもよい。患者に注入する前の短時間にIL-2中で細胞を培養することが好ましいであろう。
【0120】
T細胞を形質導入する代わりの方法は、混合リンパ球集団中の可溶CD3、IL-2(または2つの可溶因子の組合わせ、または1つの可溶因子と1つの固定された因子またはリガンドの組合わせ)を使う。レンチウイルスベクターをリンパ球の集団に(特に精製したCD4T細胞の集団にでなく)可溶CD3およびIL-2の存在のもとで加える。あるいは、可溶CD3およびIL- 2を、本出願の他にも記載されている促進性ベクターから発現させることができる。CD3およびIL-2に加えて、混合リンパ球環境が作用して細胞を刺激し、レンチウイルスベクターを細胞に加えたときにこのベクターによる高効率の形質導入を可能にする。レンチウイルスベクターによりT細胞を形質導入する方法は、限定されるものでないが、遺伝性、感染性および発癌性疾患の治療を含む多様な応用に広く利用することができる。
【0121】
さらに、自殺または安全遺伝子を細胞中に組み込む方法が広く応用されている。1つの非限定の応用は、レンチウイルスベクターの組合わせが介在する、自殺遺伝子と組合わせて病変細胞を標的化する天然またはキメラT細胞レセプターの発現である。かかる遺伝的に改変された細胞(自己であってもまたは固定した細胞由来であってもよい)は癌細胞または病原体に感染した細胞などの病変細胞に帰ることができ、次いで患者をプロドラッグを用いて治療して両方のT細胞を排除しかつバイスタンダー効果により癌、感染細胞または病変細胞を死滅させることができる。かかる手法は単独でまたは本出願に記載の他の手法のいずれかとの組合わせで用いることができる。
【0122】
方法の1つの非限定の例は、レンチウイルスベクターを形質導入した細胞を死滅させるまたは破壊できる遺伝子を含有するレンチウイルスベクターの使用である。好ましくは、その遺伝子は誘導的な方法で発現されるおよび/またはプロドラッグの存在のもとでのみ活性化される遺伝子である。入手しうる多数の誘導プロモーターが存在し、非限定の例はテトラサイクリン誘導プロモーターまたは組織特異的プロモーターである。入手しうる多数の自殺遺伝子が存在し、それにはヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子およびショウジョウバエDm-dNKキナーゼ遺伝子が含まれ、これらの遺伝子は形質導入された細胞をプロドラッグに感作して、当該薬物がin vitroまたはin vivoで導入された後に細胞殺滅または死を誘導する。プロモーター誘導性遺伝子サイレンシング配列を用いて細胞死誘導を誘導することもできる。
【0123】
本発明はまた、自殺遺伝子のプロモーター特異的発現により血液病を治療する方法も提供する。入手しうる多数の自殺遺伝子が存在し、それにはヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子およびショウジョウバエDm-dNKキナーゼ遺伝子が含まれ、これらの遺伝子は形質導入された細胞をプロドラッグに感作して、当該薬物がin vitro またはin vivoで導入された後に細胞殺滅または死を誘導する。新しい機能性ゲノムの方法は、病変細胞中に転写活性または転写後mRNA生存率の増加した遺伝子を同定した。病変細胞のこれらのユニークな属性を利用して、これらの疾患を治療するためのレンチウイルスベクター計画を開発することができる。上記方法は組織特異的方式で自殺遺伝子を発現するレンチウイルスベクターを利用する。非限定の一例はCD19B細胞特異的プロモーターの制御下でショウジョウバエDm-dNKキナーゼ遺伝子を発現できるレンチウイルスベクターであって、B細胞に関係する白血病およびリンパ腫を治療するために用いる。このレンチウイルスベクターを骨髄移植により幹細胞中に送達する。再発性白血病の発症時に、当該患者に上記プロドラッグを与え、CD19を発現する全細胞(全てB細胞)を死滅させうる。進行性癌で機能性Bリンパ球の消失が許容される患者において、患者に免疫グロブリンを静脈内に補充してもよい。再発性B細胞に関係する腫瘍細胞を死滅させることにより、患者の生命が救われる。この計画はさらに、腫瘍にのみ見出されて正常なB細胞に見出されないプロモーターまたは転写後エレメントを用いることによって、腫瘍細胞型に一層特異的に行うことができる。
【0124】
標的細胞の排除はまた、自殺、細胞傷害性および細胞分裂停止の遺伝子と機能的に連結された組織特異的プロモーターを含む細胞中に、遺伝子カセットを形質導入するレンチウイルスベクターを用いて行ってもよい。例えば、内皮細胞プロモーターから特異的に発現された自殺遺伝子を用いて、造血幹細胞を形質導入してもよい。いくつかの幹細胞が内皮細胞に分化する場合、これらの細胞を自殺遺伝子を活性化するプロドラッグにより特異的に死滅させてもよい。最近、癌を治療するための骨髄 移植中に、癌細胞からの血管内皮は骨髄細胞から誘導されることが発見された。従って、トロイの木馬の様にマーキングすることにより、増殖しかつ転移物を形成するために必要な内皮腫瘍を死滅させることができる。同様に、幹細胞を治療に(例えば、心臓、膵臓、肝臓、神経、血管などの組織を再生するために)利用する場合、望ましくない細胞型で発現されるとその細胞の死をもたらす遺伝子カセットを用いて幹細胞を形質導入することにより、望ましくない分化転換事象を制御することができる
レンチウイルスベクターの用途
レンチウイルスベクター、特にHIVベクターはかかる系の様々な表現型をもつ細胞のライブラリーを作製する潜在能力を実現して、特に様々な薬物および生物学の特異性と安全性を試験することができる。
【0125】
その場合に使用する方法と組成物であって、HIVベクター、パッケージングプラスミドまたはパッケージング細胞株を用いて、ハイスループット装置で未知機能のサンプル核酸の機能を直接、迅速かつ明確に測定する上記方法と組成物を提供する。上記方法は、機能性HIVタンパク質として発現されるHIV遺伝子を欠くHIVベクタープラスミド中にcDNA、DNA、EST、遺伝子、合成オリゴヌクレオチド、shRNAi、ddRNAiまたは核酸のライブラリーのセットを挿入することによってプラスミド型のベクターを構築するステップ、上記HIVベクタープラスミドをヘルパープラスミドと共にHIVベクターの複製およびパッケージングに必要な補足成分を有する細胞株もしくはパッケージング細胞株に共トランスフェクトするステップを含んでなる。その結果、組換えHIVベクターのセットまたはライブラリーを、好ましくはミニチュア化したハイスループット装置(限定されるものでないが、96および384ウエルフォーマット、アレイ、スライド上へのプリンティングベクターなどの類似の方法を含む)で作ることができる。サンプル核酸がコードする産物の機能を同定しかつ割り当てるために、宿主または宿主細胞をハイスループット装置で、サンプル核酸の産物を発現しそれにより宿主の表現型を変える組換えHIVベクターを用いて形質導入する。
【0126】
好ましい実施形態は、細胞またはパッケージング細胞株中にトランスフェクトまたは形質導入されたcDNAまたはRNAiライブラリーを含有するHIVベクターであって、パッケージされたベクター粒子が近隣細胞に感染または形質導入してベクター増幅を可能にする上記HIVベクターである。パッケージング 細胞またはパッケージング細胞株中に最初にトランスフェクトされたまたは形質導入されたそれぞれのベクターが同一であれば、より効率的に生産されるこれらのベクターは、同じように効率的に生産されないベクターよりもっと早く増幅しうる。次いでそれぞれのサンプルのベクター力価を多数の方法によりアッセイすることができる。かかる一方法は当技術分野で周知のアッセイ、ELISAアッセイであり、その場合、アッセイするタンパク質は細胞の培地中のHIVからのp24抗原である。どのクローンがHIVベクターをより効率的に生産しているかを確認するために用いる他のアッセイは、ベクターにコードされた緑色蛍光タンパク質などの蛍光測定法を用いることによる。蛍光タンパク質を用いる好ましい一実施形態は、cDNAおよび同じプロモーターの蛍光タンパク質を同じmRNA内に発現し、それらが第2遺伝子産物の翻訳を開始する翻訳開始配列により分離されていることである。かかる翻訳開始配列は当技術分野で公知である。例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)配列が通常利用される。一般に、IRESから下流の遺伝子からの発現は上流の遺伝子からの発現ほど効率的でない。もし下流の遺伝子の発現レベルが許容しうるより低ければ、転写後調節エレメント(PRE)を下流の遺伝子の遠位に挿入してその発現を増加させてもよい。その方法を改変して、HIVの誤りがちな逆転写酵素分子によって改変された向性およびHIVの組換え能力をもつベクターエンベロープタンパク質を作製してもよい。増幅の各ラウンドの間、HIVベクターはそのゲノムに誤りを作製し、それ故に含有するエンベロープ配列を改変し、そしてそれ故に結合アフィニティおよび恐らくはウイルスベクターの向性を変えうる。ヘルパー成分を含有するパッケージング細胞株(例えば、ある特定型の癌細胞)を標的細胞に用いることにより、上記細胞株に対する向性の増加したベクターは、向性の低下したまたは複製欠陥のあるベクターとは対照的に、複製の各ラウンド中に優先的に選択されうる。選択後に、改変されたエンベロープを、エンベロープ配列の5'および3'に位置するベクター特異的プライマーを用いてPCRにより単離することができる。エンベロープ配列は天然のエンベロープ配列を用いて出発する必要はないが、当技術分野で公知のいくつかの技法により作製できるエンベロープタンパク質変異体のライブラリーから構成されてもよい。選択手順は細胞培養に限定されない。
【0127】
トランスジェニック動物をパッケージング成分を用いて作製し、動物中のHIVの全動物選択を行ってもよい。パッケージング成分は種特異的であるように設計する必要はない;例えば、サルにおける複製用にSIVパッケージング遺伝子(例えばgag、pol、調節性またはアクセサリー遺伝子)がHIVパッケージング遺伝子に好ましいにも関わらず、HIVゲノムをトランスファーベクターとして用いる(例えば5'HIV-LTR、パッケージング配列を含有するHIV gagの非コード部分の一部分まで、場合によりrreエレメントおよびそのスプライスアクセプター配列、エンベロープ遺伝子、および3'HIV-LTR)。次いでベクターを動物中に投与して、組織特異的プロモーターのもとで、エンベロープ遺伝子を特定の器官または組織に発現させてもよい。この方法で、ベクターのパッケージングと動態化のためのある特定のパッケージング遺伝子を含有するトランスジェニック動物を用いて、高度に特異的な標的化ベクターを作製することができる。
【0128】
他の実施形態は、遺伝子の機能をレンチウイルスベクターを用いて確認する手順の自動化である。遺伝子の機能を確認するために、一セットのcDNAまたはRNAをHIVベクター中に挿入して、それぞれ特定の目的の遺伝子を標的化する1つのcDNA、1つのRNAi、または1つのcDNAと1つのRNAi、2つのcDNA、2つのcDNAと1つのRNAi、1つのcDNAと2つのRNAi、または少なくとも2つのRNAiを発現するHIVベクターのライブラリーを作製する。上記方法のそれぞれのステップは、系の能力をさらに増加するためにマルチウエルフォーマットでかつ自動化して実施することができる。このハイスループット系はヒトおよび他の生物由来の多数のサンプル核酸のin vitroおよびin vivo両方での発現分析を容易にしかつ本分野で利用しうる他の技法を超える有意な改善である。本発明は1以上のサンプル核酸を含有する組換えHIVベクターライブラリーのハイスループット作製、次いでサンプル核酸の発現産物に対する機能を割り当てる手段として宿主の表現型を変える宿主中のアデノウイルスベクターライブラリーのハイスループットスクリーニングを利用する。HIVベクターのライブラリーは、核酸構築物および相補的パッケージング細胞を用いてハイスループット装置で作製する。サンプル核酸ライブラリーは明確な定義されたもしくは未定義の配列のセットであってもよくまたは未定義のもしくは定義された配列のプールであってもよい。第1の核酸構築物は相対的に小さくかつアダプタープラスミドおよび発現カセットをサンプル核酸を用いて操作するのが容易である。第2の核酸構築物は、それぞれ他の配列および/または第1の構築物中の配列と部分的に重複する1以上の核酸分子を含有しかつ少なくとも組換えHIVの複製およびパッケージングに必要であってアダプタープラスミドまたはパッケージング構築物または細胞により提供されない全てのHIVベクター配列を含有する。第1と第2の核酸構築物のパッケージング細胞中への共トランスフェクションは、第1と第2の核酸構築物中および1以上の核酸分子から成る場合、第2の核酸構築物の間の重複配列間の相同的組換えに導く。HIVベクターライブラリーを、サンプル核酸がコードした産物の十分な発現を可能にするまで成長した宿主中にハイスループット装置で導入し、生物学的活性を検出して分析する。宿主はin vitroの培養細胞であってもまたは動物もしくは植物モデルであってもよい。サンプル 核酸がコードする産物の十分な発現は宿主の表現型を改変する。生物学的 活性用の様々なin vitroおよびまたはin vivoアッセイのいずれかを用いて、改変された表現型を同定しかつ分析し、それによって機能をサンプル 核酸の産物に割り当てる。
【0129】
本発明には現在利用しうる技法を越えるいくつかの利点がある。全プロセスは、とりわけ96ウエルまたは他のマルチウエルフォーマットで行う場合、自動化に適している。多数の異なるin vitroアッセイを用いるハイスループットスクリーニングは、比較的短時間に機能情報を効率的に得る手段を提供する。宿主においてin vitroまたはin situで所望の表現型を表すまたは誘導する組換えHIVベクターライブラリーのメンバーを同定して、そのライブラリーを、動物モデルにおいてin vitroで試験できる管理可能な数の組換えアデノウイルスベクターまたはクローンに崩壊させる。本発明の他の明確な利点は、本方法が複製コンピテントレンチウイルス(RCL)-アデノウイルス非含有のライブラリーを作ることである。ライブラリーを介するRCL汚染は、とりわけ、もしライブラリーが多重スクリーニングプログラムで使用するために連続的に増幅されれば、主な障害となりうる。
【0130】
他の実施形態は、意図する組換えタンパク質またはモノクローナル抗体遺伝子と共にグルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子を発現するレンチウイルスベクターである。GSは非常に重要な代謝物であって組換えタンパク質またはモノクローナル抗体の高発現を示す細胞の強い選択をもたらすことは公知である。HIVベクターは同じベクター中に組換えタンパク質遺伝子とGS遺伝子を含有しうる。あるいは、組換えタンパク質、GSまたは組換えタンパク質の収率を増進する他の遺伝子を含有する複数のベクターも本発明の好ましい実施形態である。限定されるものでないがピューロマイシン、表面マーカー遺伝子発現および他の方法を含む、他の選択方法を利用してもよい。
【0131】
本発明はまた、上記ハイスループット方法を用いてタンパク質、ワクチン、またはモノクローナル抗体の生産収率を増加する遺伝子を単離する方法も記載する。cDNAまたはRNAiを発現するレンチウイルスまたはHIVベクターのライブラリーを、別のレンチウイルスまたはHIVベクターまたはcDNAまたはRNAi(shRNAiおよびddRNAi、または遺伝子発現の他のインヒビター、例えばリボザイム、アンチセンス、アプタマー、トランスドミナント変異体タンパク質などを含む)のライブラリーを含有するベクター上に発現された組換えタンパク質またはモノクローナル抗体を用いて構築する。そのベクターを生産してタンパク質を製造するのに用いる細胞に加え、そして組換えタンパク質を発現する個々の細胞を上記ハイスループットフォーマットを用いてクローニングする。タンパク質生産の量を公知の方法により測定して高レベルのタンパク質を発現するクローンを同定することができる。ライブラリーからの特定のcDNAまたはRNAiを、上記のベクター特異的プライマーを用いて増幅してその配列を特徴付けることができる。次いでこのcDNAまたはRNAiを用いて、それをそれぞれのHIVベクター構築物に含ませることによりまたは同定したcDNAまたはRNAiを今や構成的に発現する細胞株を構築することにより他のタンパク質またはモノクローナル抗体の生産を増加することができる。
【0132】
本発明の他の態様は、プロテアーゼ遺伝子を標的化するRNAiを、意図する組換えタンパク質、モノクローナル抗体遺伝子またはワクチンと共に発現するレンチウイルスベクターである。精製過程でプロテアーゼが意図する組換えタンパク質、モノクローナル抗体の収率を有意に低下させることは公知である。HIVベクターは組換えタンパク質遺伝子および1以上のプロテアーゼ遺伝子に対するRNAiを同じベクター内に含有しうる。あるいは、精製過程で組換えタンパク質、抗-プロテアーゼRNAiまたは組換えタンパク質の収率を増進する他の遺伝子を含有する複数のベクターも本発明の好ましい実施形態である。
【0133】
本発明はまた、それらの精製過程で収率に影響を与えるタンパク質を抑制することにより下流精製過程でタンパク質またはモノクローナル抗体生産の収率を増加する遺伝子を単離する方法を提供する。この方法は上記ハイスループット方法に非常に適合している。cDNAまたはRNAiを発現するレンチウイルスまたはHIVベクターの少なくとも単一のライブラリーを、cDNAまたはRNAiのライブラリーを含有する別のレンチウイルスまたはHIVベクターまたはベクター上に発現された組換えタンパク質またはモノクローナル抗体を用いて構築する。ベクターを生産してタンパク質を製造する細胞に加え、そして組換えタンパク質を発現する個々の細胞を上記ハイスループットフォーマットを用いてクローニングする。次いで組換えタンパク質またはモノクローナル抗体を精製して収率を当技術分野で公知の方法により測定する。高収率のタンパク質またはモノクローナル抗体を含有する特定の細胞クローンを同定する。ライブラリーから特定のcDNAまたはRNAiを、上記のベクター特異的プライマーを用いて増幅しかつ特徴付けることができる。次いでこのcDNAまたはRNAiを用いて、それをそれぞれのHIVベクター構築物に含ませることによりまたは同定したcDNAまたはRNAiを今や構成的に発現する細胞株を構築することにより、他のタンパク質またはモノクローナル抗体の生産を増加することができる。
【0134】
一実施形態はまた、潜在的ウイルス、プリオンまたはモノクローナル抗体、タンパク質またはワクチンを生産する細胞株の細菌汚染物を抑制するcDNAまたはRNAiを発現するレンチウイルスベクターである。非限定の一例は、タンパク質発現レンチウイルスベクター中に発現され、ウシ海綿状脳症媒介物、またはクロイツフェルト‐ヤーコプ病(CJD)媒介物、生物物質製造中の調製物の汚染物を標的化するRNAiである。抗BSEまたは抗CJDRNAiの発現は、BSEまたはCJD媒介物による調製物の汚染に対するリスクを最小化し、それ故にかかる遺伝子操作で作られた生物学調製物の安全性を増加しうる。HIVベクターは汚染に関わる1以上の媒介物に対する組換えタンパク質遺伝子およびRNAiを含有しうる。あるいは、組換えタンパク質、抗媒介物RNAiまたは媒介物の複製を抑制する他の遺伝子を含有する複数のベクターも本発明の好ましい実施形態である。また、本発明を改変して、組換え産物の生産および品質に有害または不利と考えられる遺伝子の生産を最小化する遺伝子またはRNAiを含ませることもできる。
【0135】
レンチウイルスベクターを用いて1つもしくは複数の遺伝子の過剰発現または抑制が異なる細胞株のライブラリーを作製することもできる。特定の表現型をもつ所望の細胞を得る目的で遺伝子を発現する複数のベクターを細胞に加える。一例として先に記載したIRESエレメントなどのエレメントを用いて遺伝子を蛍光マーカー遺伝子の上流にクローニングして、マーカーと目的の遺伝子を同じmRNAから翻訳してもよい。細胞を、好ましくは上記のハイスループット方法によりクローニングして、正しい遺伝子の組合わせをもつ細胞を過剰発現させかつ他の遺伝子をRNAiが介在する抑制によりダウンレギュレーションする。好ましい遺伝子の1つは、もし出発材料が一次細胞であれば、細胞を固定する遺伝子、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)の発現など、または特許(米国特許第6686159号または第6358739号)に記載の他の方法でありうる。しかし、現存する細胞株を含むいずれの細胞を出発材料として利用してもよい。
【0136】
他の例示の実施形態は、発現された目的の遺伝子および/または遺伝子発現のインヒビターを含んでなる複数のレンチウイルスベクターによる細胞の遺伝的改変であり、次いで細胞クローンを、所望の遺伝形質および/または表現型をもつ細胞のクローンを単離するハイスループット方法を用いて単離する。
【0137】
本発明はまた、目的の遺伝子またはその発現産物またはその経路の下流の遺伝子またはタンパク質に選択的に影響を与える試験化合物を同定する方法であって、複数のレンチウイルスベクターを細胞と共に培養して、上記細胞を遺伝的に改変し、目的の遺伝子を過剰発現する遺伝子および;少なくとも第2の遺伝子、または少なくとも目的の第2の遺伝子のインヒビター配列を過剰発現する遺伝子の両方を含有させるステップを含んでなり、その場合、複数の細胞を次いでハイスループット方法により単離して所望の遺伝形質および/または表現型をもつ細胞のクローンを単離する上記方法も提供する。
【0138】
本発明はまた、哺乳動物細胞中のタンパク質または遺伝子発現のレベルを改変する媒介物を同定する方法であって、複数のレンチウイルスベクターを細胞と共に培養して、上記細胞を遺伝的に改変し、目的の遺伝子を過剰発現する遺伝子および;少なくとも第2の遺伝子、または少なくとも目的の第2の遺伝子のインヒビター配列を過剰発現する遺伝子の両方を含有させるステップを含んでなり、その場合、次いで複数の細胞をクローニングして所望の遺伝形質または表現型をもつ細胞のクローンを単離し;次いで上記細胞を候補媒介物の存在のもとでインキュベートして上記候補媒介物の細胞に与える効果を確認する上記方法も提供する。
【0139】
本発明の他の態様は免疫応答を刺激するcDNAまたはRNAiを発現するレンチウイルスベクターである。好ましい実施形態はGM-CSF、CD40Lおよび/またはいずれかのサイトカインを発現するまたは免疫応答を刺激するHIVベクターである。上記ベクターは、治療またはワクチン接種の所望の意図に応じて、動態化するベクターまたは動態化しないベクターであってもよい。サイトカイン遺伝子に加えて、自殺遺伝子をベクター中に挿入し、プロドラッグ投与後にベクターを含有する細胞のアポトーシスを誘導してもよい。
【0140】
他の実施形態は、哺乳動物細胞内の新規のタンパク質-タンパク質相互作用をツーハイブリッド技法を用いて発見するためのレンチウイルスベクターの利用である。一例はPromega Corporation(www.promega.com)により提供されている。ツーハイブリッド系はin vivoでのタンパク質:タンパク質 相互作用を検出するための非常に強力な方法である。ツーハイブリッド系の基礎はいくつかの転写因子に見出されるモジュールドメインである。CheckMate(登録商標)哺乳動物のツーハイブリッド系においては、pBINDベクターはマルチクローニングサイトの上流に酵母GAL4DNA結合ドメインを含有し、そしてpACTベクターはマルチクローニングサイトの上流に単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメインを含有する。さらに、pBINDベクターは、使用者がトランスフェクション効率を正規化できるようにするRenilla reniformisルシフェラーゼを発現する。2つの潜在的に相互作用性の目的のタンパク質をコードする2つの遺伝子をpBINDとpACTベクター中にクローニングして、それぞれGAL4のDNA結合ドメインおよびVP16の活性化ドメインをもつ融合タンパク質を作製する。pG5lucベクターは最小TATAボックスの上流に5つのGAL4結合部位を含有し、上記TATAボックスは順にホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)の上流に存在する。pGAL4とpVP16の融合構築物はpG51ucベクターと共に哺乳動物の細胞中にトランスフェクトされる。トランスフェクション後2〜3日に、細胞を溶解し、そしてRenillaルシフェラーゼとホタルルシフェラーゼの量を二重-ルシフェラーゼ(登録商標)レポーターアッセイ系を用いて数値化する。2つの試験タンパク質の間のGAL4とVP16の融合構築物としての相互作用は、ネガティブ対照を超えるホタルルシフェラーゼ発現の増加をもたらす。かかるツーハイブリッド系を、レンチウイルスベクターに容易に適合させて、哺乳動物細胞内のタンパク質-タンパク質相互作用の直接スクリーニングを行うことができる。
【0141】
上記トピック表題は、ある特定の情報が本出願のどこにあるかを知るための手引きであって、かかるトピックを見出しうる本出願中の唯一の情報源を意図するものではない。以上に引用した全ての出願、特許および刊行物の完全な開示は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。米国仮出願第60/653,386号(2005年2月16日出願);第60/660,310号(2005年3月10日出願);第60/682,059号(2005年5月18日出願)および;第60/723,768号(2005年10月5日出願)は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】vsv-gとgag-polを反対方向に含有する2つのプラスミド系に対するヘルパー ベクターの模式図である。
【図2】緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するトランスファーベクターの模式図である。
【図3】3つのプラスミド系で使用されるTatとRevに対する発現の模式図であり、この場合、エンベロープとgag-pol配列は他のプラスミド上にある。
【図4】本発明のモジュールトランスファーベクターの一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチウイルスヘルパープラスミドであって、
a)レンチウイルスgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列と機能的に連結された機能性の天然のプロモーターを含むレンチウイルス5'LTR、および上記天然のプロモーターにより駆動される転写を終結するのに有効である異種polyAシグナル;ならびに
b)エンベロープをコードする配列と機能的に連結された異種プロモーター、および上記異種プロモーターにより駆動される転写を終結するのに有効である異種polyAシグナル;
を含んでなる、上記天然のプロモーターと上記異種プロモーターが反対の転写方向で存在し、そして機能性のパッケージング配列を欠く上記プラスミド。
【請求項2】
5'LTRと異なるレンチウイルス種から得たTARエレメントを含みかつ5'LTRと異なるレンチウイルス種から得たRREエレメントを含む、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項3】
5'LTRが天然である、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項4】
プラスミドがさらにTatポリペプチドまたはRevポリペプチドをコードする発現可能なポリヌクレオチド配列を含み、該ポリヌクレオチド配列はプロモーターと機能的に連結されている、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項5】
5'LTRがHIV-1またはHIV-2である、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項6】
レンチウイルスのgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列がHIV-1 gagおよびpolまたはHIV-2 gagおよびpolである、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項7】
適合しうる宿主に発現されたときにgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列がコード配列の翻訳を改善する少なくとも1つの非天然コドンを含む、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項8】
終結コドンまたはp7 KETWETWWTEコード配列であるポリヌクレオチド配列がpolとエンベロープコード配列の間に存在する、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項9】
エンベロープをコードする配列がVSV-Gエンベロープまたはフィロウイルスエンベロープ用である、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項10】
エンベロープをコードする配列の翻訳を阻害するのに有効であるアンチセンスポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド。
【請求項11】
レンチウイルストランスファーベクターであって、
a)レンチウイルス5'LTR;
b)前記5'LTRの遠位のレンチウイルスパッケージング配列;
c)TATAボックス配列を含むが、該TATAボックス配列の5'に3'U3配列を欠き、3'LTRは低い転写活性を有する、改変されたレンチウイルス3'LTR;
を含んでなる上記ベクター。
【請求項12】
さらにd)異種ポリヌクレオチド配列と機能的に連結された異種プロモーターを含んでなる、請求項11に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項13】
欠いている3'U3配列はTATAボックス配列の5'から20ヌクレオチド以内にある、請求項11に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項14】
3'LTRがさらに第2の異種ポリヌクレオチド配列と機能的に連結された第2の異種プロモーターを含み、その場合、該プロモーターおよび異種ポリヌクレオチド配列が3'LTRの転写活性を低減するのに有効である位置の3'LTR中に挿入される、請求項11に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項15】
さらに、第2の目的の遺伝子をコードする異種配列と機能的に連結された第2の異種プロモーターを含む、請求項11に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項16】
第1と第2の異種コード配列が内部リボソーム侵入部位により分離されている、請求項15に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項17】
異種コード配列のそれぞれがさらに、プロモーターにより駆動される転写を終結するのに有効である異種polyAシグナルを含む、請求項15に記載のレンチウイルストランスファーベクター。
【請求項18】
レンチウイルス形質導入ベクターを生産するためのレンチウイルスパッケージング系であって、
a)請求項1に記載のレンチウイルスヘルパープラスミド、
b)請求項11に記載のレンチウイルストランスファーベクター、ならびに
c)異種プロモーターと機能的に連結されたrevポリペプチドをコードする配列を含むプラスミド、および異種プロモーターと機能的に連結されたtatポリペプチドをコードする配列を含むプラスミド
を含む上記レンチウイルスパッケージング系。
【請求項19】
請求項1のヘルパーベクターを含む単離された細胞。
【請求項20】
請求項11に記載のトランスファーベクターを含む単離された細胞。
【請求項21】
請求項18に記載のレンチウイルスパッケージング系を含む単離された細胞。
【請求項22】
レンチウイルス形質導入ベクターを生産する方法であって、請求項18に記載のパッケージング系を含むプラスミドを宿主細胞において形質導入ベクターを生産するのに有効な条件のもとで共発現させるステップを含んでなる上記方法。
【請求項23】
宿主細胞において目的のポリペプチドを生産する方法であって、宿主細胞をレンチウイルス形質導入ベクターを用いて形質導入して形質導入された宿主細胞を形成するステップを含んでなり、前記ベクターが分泌される目的の異種ポリペプチドをコードする発現可能な異種ポリヌクレオチドを含む上記方法。
【請求項24】
宿主細胞がCHOまたは293細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
さらに、形質導入された宿主細胞を目的のポリペプチドを生産するのに有効な条件のもとで培養するステップを含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
宿主細胞を複数のレンチウイルス形質導入ベクターを用いて形質導入し、それぞれのベクターが異なるポリペプチドをコードする異なる異種ポリヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
異種ポリヌクレオチドのそれぞれは少なくとも1つのウイルスカプシドのカプシドポリペプチドをコードし、前記カプシドポリペプチドが宿主細胞において発現されると、自己アセンブルして前記ウイルスのカプシドを作る、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのポリヌクレオチドが赤血球凝集素またはインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼポリペプチドをコードする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
宿主細胞を、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、およびマトリックス(M1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて形質導入する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
それぞれのポリヌクレオチドが異なるウイルスの形質導入ベクター中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項29の産物。
【請求項32】
宿主細胞におけるポリペプチドの製造を改善するポリペプチドまたは遺伝子を同定する方法であって、
お互いに配列が異なる発現可能な異種ポリヌクレオチドを含む少なくとも2つの異なるレンチウイルス形質導入を用いてそれぞれ形質導入した、複数の形質導入された宿主細胞を製造するステップ、および
上記宿主細胞を異種配列に関連する機能活性についてスクリーニングするステップ
を含んでなる上記方法。
【請求項33】
異種配列がRNAi配列、ポリペプチドをコードする配列、または目的の遺伝子に対するアンチセンスである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
レンチウイルス形質導入ベクターにおいて、改善が3'LTR中に挿入された異種ポリヌクレオチドを含んでなり、かかる挿入が最小の転写活性をもつ3'LTRをもたらす。
【請求項35】
ドナーリンパ球の宿主中への移植に関連するGVHD病を治療する方法であって、
細胞分裂停止または細胞傷害エレメントをコードする発現可能なもしくは選択的に発現可能なポリヌクレオチド配列を含むレンチウイルス形質導入ベクターを用いてドナーリンパ球を形質導入するステップ、
場合により、上記細胞をレシピエントポリペプチドまたは細胞の存在のもとで形質導入するステップ、および
形質導入したリンパ球を上記宿主中に注入するステップ
を含んでなる上記方法。
【請求項36】
選択的に発現可能な遺伝子が外因的に導入された化学品の存在のもとで活性化される誘導プロモーターまたはプロモーターと機能的に連結された、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
選択的に発現可能な遺伝子がRNAiまたは前アポトーシスポリペプチドをコードする、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
細胞傷害性エレメントがヘルペスチミジンキナーゼまたは多基質キナーゼ遺伝子をコードする配列である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
さらに、有効量のガンシクロビル、AZT、flurada(登録商標)またはアシクロビルを投与するステップを含んでなり、その場合、前記の量が形質導入された宿主細胞の細胞死をもたらすのに有効な量である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
さらに、ドナー細胞を有効量の宿主自己抗原と同時にまたは前記ドナー細胞を形質導入する前に接触させるステップを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
発現ベクターであって、
a)天然のレンチウイルスgagおよびpolをコードするポリヌクレオチド配列と機能的に連結された機能的な天然のプロモーターを含むレンチウイルス5'LTR、および
上記天然のプロモーターにより駆動された転写を終結するのに有効であって、翻訳終結シグナルがgag-pol配列の開始の下流に存在する異種polyAシグナル、
b)gag-pol配列の下流に位置するスプライスアクセプター部位、および
c)5'LTRプロモーターと機能的に連結されたgag-pol配列の下流に位置する異種ポリヌクレオチド配列
を含んでなる上記発現ベクター。
【請求項42】
T細胞レセプターおよび細胞傷害性エレメントを含むレンチウイルス形質導入ベクター。
【請求項43】
VSV-Gを標的化する誘導性の遺伝子阻害性またはサイレンシング配列を発現する、レンチウイルスベクターパッケージングまたはプロデューサー細胞株。
【請求項44】
末梢血液リンパ球の集団をレンチウイルスベクターを用いて形質導入する方法であって、レンチウイルスベクターを用いて形質導入する前にリンパ球集団をサブ集団に精製しない上記方法。
【請求項45】
癌をレンチウイルスベクターを用いて治療する方法であって、幹細胞を内皮特異的プロモーターと機能的に連結された細胞傷害性エレメントを発現するレンチウイルスベクターを用いて処置し、その幹細胞を癌患者中に注入する上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−538174(P2008−538174A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556283(P2007−556283)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/005431
【国際公開番号】WO2006/089001
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507274917)レンティジェン コーポレーション (2)
【出願人】(507274928)
【出願人】(507274939)
【Fターム(参考)】