レンチキュラーシート及びレンチキュラーシートの製造方法
【課題】 インク吸収層の複数の画素配置領域の間に抑制部を設けて隣接する画素間でのインクの浸透を抑制するとともに、抑制部の表面に残存するインクによって周囲が汚れることを防止できる、レンチキュラーシートを提供すること。
【解決手段】 レンチキュラーシート100は、複数の凸レンズ部31を有するレンチキュラーレンズ30と、レンチキュラーレンズ30の複数の凸レンズ部31と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域35を複数有する、第1インク吸収層32と、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面において複数の画素配置領域35の間に設けられ、インクの浸透を抑制する抑制部33と、抑制部33を覆うように設けられた第2インク吸収層34とを有する。
【解決手段】 レンチキュラーシート100は、複数の凸レンズ部31を有するレンチキュラーレンズ30と、レンチキュラーレンズ30の複数の凸レンズ部31と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域35を複数有する、第1インク吸収層32と、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面において複数の画素配置領域35の間に設けられ、インクの浸透を抑制する抑制部33と、抑制部33を覆うように設けられた第2インク吸収層34とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の立体視を可能とするレンチキュラーシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像の立体視を可能とする被記録媒体として、レンチキュラーシートが知られている。一般的なレンチキュラーシートは、平面的に配置された半円柱状の複数の凸レンズを有するレンチキュラーレンズと、このレンチキュラーレンズの複数の凸レンズと反対側の平坦面に設けられ、複数の画素が形成される画像記録層とを有する。画像記録層には、左眼用の画素と右眼用の画素とが隣接して形成されている。そして、レンチキュラーレンズの凸レンズ側から見たときに、凸レンズによって左眼に左眼用画素を視認させるとともに右眼に右眼用画素を視認させることで、左眼と右眼でそれぞれ見える画像のずれ(両眼視差)により画像の立体視が可能となる。
【0003】
上記レンチキュラーシートにおいて、画像記録層への画像記録方式としては様々なものがあるが、その中の1つとしてインクジェット記録装置による記録方式が知られており、この場合は、レンチキュラーシートの画像記録層はインク吸収性の高い材料で形成される(インク吸収層)。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置によって、インク吸収層からなる画像記録層に画像を記録する場合に、液滴の着弾位置が本来の位置からずれたときに、所望の画素が配置される領域だけでなく、それに隣接する画素が配置される領域にまでインクが浸透してしまうことがある。特に、レンチキュラーシートにおいて、左眼用画素と右眼用画素との間で上記の問題が生じると、立体視画像を実現するための両眼視差を生じさせることができなくなる虞がある。
【0005】
これについて、特許文献1のレンチキュラーシートにおいては、隣接する画素間でのインクの滲みを抑制するために、インク吸収層の、半円柱状の凸レンズ部の長手方向と直交する方向(幅方向)に、画素毎に所定のピッチで、インクを透過させないシートリブや撥水性領域が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−15766号公報(図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1においては、画素間のインクの滲みを抑制するシートリブや撥水性領域がレンチキュラーシートの表面に露出している。そして、画像記録時に、インクジェット記録装置からインク吸収層に噴射されたインクの液滴の一部が、上記シートリブや撥水性領域に付着したときに、インクが吸収されず残存しやすい。そのため、画像記録後において、露出状態のシートリブや撥水性領域の表面に残存するインクによって、周囲(ユーザーの手や記録装置の内部など)が汚れる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、インク吸収層の複数の画素配置領域の間に抑制部を設けて隣接する画素間でのインクの浸透を抑制するとともに、抑制部の表面に残存するインクによって周囲が汚れることを防止できる、レンチキュラーシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明のレンチキュラーシートは、平面的に配置された複数の凸レンズ部を有するレンチキュラーレンズと、前記レンチキュラーレンズの前記複数の凸レンズ部と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域を複数有する、第1インク吸収層と、前記第1インク吸収層に設けられ、前記複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部と、前記抑制部を覆うように設けられた第2インク吸収層とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、第1インク吸収層に、複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部が設けられていることから、1つの画素配置領域に浸透するインクが、隣の画素配置領域まで浸透することが防止される。また、抑制部がインク吸収層から露出していると、この抑制部の表面において残存したインクが、周囲(ユーザーの手や記録装置など)を汚す虞があるが、本発明では、抑制部を覆うように第2インク吸収層が設けられていることから、上記のような問題は生じない。
【0011】
前記第1の発明において、抑制部は、前記第1インク吸収層の前記レンチキュラーレンズと反対側の面において、前記複数の画素配置領域の間に設けられていてもよい(第2の発明)。あるいは、前記第1の発明において、前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に配置されて、隣接する画素配置領域を分断するように設けられていてもよい(第3の発明)。
【0012】
第4の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記抑制部は、前記第1インク吸収層と直交する断面において、前記レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状を有することを特徴とするものである。
【0013】
抑制部の断面形状が、レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭い、先細りのテーパ状となっていると、抑制部に挟まれた1つの画素配置領域の断面形状は逆に末広がり形状となり、レンチキュラーレンズと反対側の、第2インク吸収層からインクが浸透する部分の面積が小さくなる。従って、第2インク吸収層への液滴の着弾位置が多少ずれても、第1インク吸収層へ浸透する位置は変わらないため、第1インク吸収層における隣接する画素配置領域へのインクの浸透は抑制される。また、抑制部によって挟まれた1つの画素配置領域において、インクが第1インク吸収層の厚み方向に浸透するにつれて、面方向にも広がっていくことから、隣接する画素配置領域との間のインクの浸透を防止しつつも、画素配置領域に形成される画素を一定以上に大きくすることができる。
【0014】
第5の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記抑制部は、有色の材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
抑制部が有色の材料で形成されていると、インクジェット記録装置側の光学式センサにより抑制部を検出することが可能となる。これにより、第1インク吸収層の、画素配置領域の位置やピッチを把握できることから、第2インク吸収層の画素配置領域に対応した位置にインクを精度よく着弾させることができる。
【0016】
第6の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部は半円柱形状を有し、複数の前記凸レンズ部が幅方向に並べて配置されており、前記抑制部は、前記複数の画素配置領域にそれぞれ対応した複数の穴を有し、前記複数の画素配置領域のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分を取り囲むように形成され、前記抑制部の前記複数の穴は、前記半円柱形状の凸レンズ部の軸方向に長い、長穴形状をそれぞれ有することを特徴とするものである。
【0017】
このように、画素配置領域の露出した一部分(即ち、第2インク吸収層からインクが浸透してくる部分)が抑制部で囲まれることで、隣接する画素配置領域へのインクの浸透が確実に防止される。尚、半円柱状の凸レンズ部の、側面の光屈折効果によって左右両眼による左眼用画素と右眼用画素の個別視認を実現するため、凸レンズ部の幅方向には左眼用画素と右眼用画素とが隣接して配置される。それ故、特に、凸レンズ部の幅方向には抑制部の穴を小さくし、2つの穴の間の距離(抑制部の幅)を大きくすることが好ましい。一方、凸レンズ部の軸方向には左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ一列に並ぶことから、凸レンズ部の軸方向に隣接する画素配置領域間においては多少インクの滲みが生じても画質にはそれほど影響しない。そこで、この凸レンズ部の軸方向については、抑制部の穴の長さを長くすることで穴面積(画素配置領域の露出面積)を大きくし、画素配置領域におけるインクの浸透速度を速めることができる。
【0018】
第7の発明のレンチキュラーシートの製造方法は、前記第1の発明のレンチキュラーシートを製造する方法であって、前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部と反対側の面に第1インク吸収層を積層する第1積層工程と、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に、前記抑制部を形成する抑制層形成工程と、前記抑制部が形成された前記第1インク吸収層の、前記レンチキュラーレンズと反対側の面に、第2インク吸収層を積層する第2積層工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
このように、第1インク吸収層の複数の画素配置領域間に抑制部を形成した後に、抑制部を覆うように第2インク吸収層を設けることで、インクを吸収しにくい抑制部の表面が露出しなくなるため、レンチキュラーシート表面にインクが残存することがない。
【0020】
第8の発明のレンチキュラーシートの製造方法は、前記第7の発明において、前記抑制層形成工程において、前記抑制部を形成する液状材料を、液滴噴射装置を用いて前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に着弾させて、前記抑制部を形成することを特徴とするものである。
【0021】
このように、液滴噴射装置によって抑制部を形成することで、画素配置領域間に抑制部を精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1インク吸収層に、複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部が設けられていることから、ある画素配置領域に浸透するインクが、隣接する画素配置領域まで浸透することが防止される。また、抑制部を覆うように第2インク吸収層に覆われていることから、抑制部の表面に残存するインクが周囲を汚すことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】レンチキュラーシートの斜視図である。
【図3】レンチキュラーシートによる立体的な視覚効果を説明する図である。
【図4】レンチキュラーシートの断面図である。
【図5】レンチキュラーシートの、抑制部が形成された第1インク吸収層の平面図である。
【図6】レンチキュラーシートの製造工程を示す図である。
【図7】変更形態1のレンチキュラーシートの断面図である。
【図8】変更形態2のレンチキュラーシートの断面図である。
【図9】変更形態3のレンチキュラーシートの断面図である。
【図10】変更形態4のレンチキュラーシートの断面図である。
【図11】変更形態5のレンチキュラーシートの断面図である。
【図12】変更形態6のレンチキュラーシートの、抑制部が形成された第1インク吸収層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明のレンチキュラーシートに立体視画像を記録するインクジェットプリンタ1の概略構成と、レンチキュラーシートに対する画像の形成方法について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、レンチキュラーシート100が載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4と、レンチキュラーシート100を走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットプリンタ1の全体制御を司る制御装置8等を備えている。
【0025】
プラテン2の上面には、被記録媒体であるレンチキュラーシート100(図2参照)が、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31と反対側の面が上になるように載置される。プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10,11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ3には、2つのプーリ12,13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行に伴って走査方向に移動する。
【0026】
尚、プリンタ1のプリンタ本体1aには、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ24が設けられている。一方、キャリッジ3には、発光素子と受光素子とを有する透過型光センサからなるヘッド位置検出センサ25が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ3の移動中にヘッド位置検出センサ25が検出したリニアエンコーダ24の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ3の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっている。
【0027】
さらに、キャリッジ2の側壁には、後述するレンチキュラーシート100の、複数の画素が形成される領域(画素配置領域35)についての情報(位置やピッチ)を検出するための画素位置検出センサ26も設けられている。より詳細には、画素位置検出センサ26は、レンチキュラーシート100に向けて光を照射する発光素子と反射光を受光する受光素子とを有し、レンチキュラーシート100の幅方向に複数の画素配置領域毎に等ピッチで配置された複数の有色部分(抑制部33:図4参照)を検出する。
【0028】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面(図1の紙面向こう側の面)が、複数のノズル16が開口する液滴噴射面となっている。また、図1に示すように、プリンタ1のプリンタ本体1aにはホルダ9が固定的に設けられ、このホルダ9には4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)がそれぞれ貯留された4つのインクカートリッジ17が装着される。また、図示は省略するが、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とホルダ9とが4本のチューブ(図示省略)で接続され、4つのインクカートリッジ17内のインクが、4本のチューブを介してインクジェットヘッド4にそれぞれ供給されるようになっている。
【0029】
インクジェットヘッド4は、複数のノズル16内のインクにそれぞれ圧力を付与して、複数のノズル16のそれぞれから個別にインクの液滴を噴射させるアクチュエータ(図示省略)を備えている。このアクチュエータの構成は特定のものに限定されず、圧電素子の圧電歪を利用した圧電アクチュエータなど、公知のものを使用できる。そして、インクジェットヘッド4は、前記アクチュエータを用いて、複数のノズル16のそれぞれから、対応する色のインクをプラテン2に載置されたレンチキュラーシート100に対して噴射する。
【0030】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有し、これら2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置されたレンチキュラーシート100を搬送方向(図1の前方)に搬送する。
【0031】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置されたレンチキュラーシート100に対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18,19によってレンチキュラーシート100を搬送方向(図1の前方)に搬送することにより、レンチキュラーシート100の、レンチキュラーレンズ30の反対側の面に対しインクの液滴を着弾させて画像を印刷する。
【0032】
次に、レンチキュラーシート100について説明する。図2はレンチキュラーシート100の斜視図である。図2に示すように、レンチキュラーシート100は、略半円柱状の形状を有し、その幅方向に並べて平面的に配置された複数の凸レンズ部31を有するレンチキュラーレンズ30と、このレンチキュラーレンズ30の複数の凸レンズ部31と反対側の平坦面30aに配置された第1インク吸収層32を有する。
【0033】
第1インク吸収層32は、インク吸収性に優れた透明又は白色の層である。この第1インク吸収層32は、吸水性ポリマー等の膨潤性材料や、あるいは、多孔質シリカ等の多孔質材料を含むインク吸収性に優れた樹脂層であってもよいが、一般的な画像の記録に用いられる紙のシート(記録用紙)であってもよい。
【0034】
この第1インク吸収層32は、上述したインクジェットプリンタ1によって複数の画素がそれぞれ形成される複数の画素配置領域35を有する。図3は、レンチキュラーシート100による立体的な視覚効果を説明する図である。図3に示すように、第1インク吸収層32の、1つの凸レンズ部31と対向する領域には、両眼視差の作用を生じさせるようにわずかに異なった、左眼用画素と右眼用画素が、略半円柱状の凸レンズ部31の幅方向(以下、レンズの幅方向という)に並べて配置される。尚、後で説明する図5に示されているが、図3の紙面に直交する、凸レンズ部31の軸方向(以下、レンズの軸方向という)には、左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ1列に並べて配置される。
【0035】
図3(a)は左眼の視野の範囲を示し、(b)は右眼の視野の範囲を示す。第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35にそれぞれ画素(ハッチング部分)が形成されたレンチキュラーシート100を、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31側から人間が見たときに、凸レンズ部31の光屈折効果によって左眼の視野は図3(a)のようになり、左眼によって左眼用画素が視認され、右眼用画素は視認されない。一方、右眼の視野は図3(b)のようになり、右眼によって右眼用画素が視認されるが、左眼用画素は視認されない。そして、左眼と右眼によって、若干異なった画素である左眼用画素と右眼用画素をそれぞれ視認することによって、立体的な視覚効果が発生する。
【0036】
図4は、レンチキュラーシート100の断面図である。上述したように、第1インク吸収層32には、左眼用画素と右眼用画素がレンズの幅方向に隣接して形成されるが、左右2つの画素間でインクの浸透が生じると、画質が著しく低下して立体的な視覚効果が発生しなくなる虞がある。そこで、図4に示すように、第1インク吸収層32の、レンチキュラーレンズ30と反対側の面(図中上面)の、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に、隣り合う画素配置領域35の境界部分へのインクの浸透を抑制する抑制部33が形成されている。尚、本実施形態では、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面からインクの透過性の低い液状材料が第1インク吸収層32内に浸透することによって抑制部33が形成されている。図4において、抑制部33は第1インク吸収層32における画素配置領域35の左眼用画素と右眼用画素の境目をまたぐようにして配置されている。これによって、少なくとも第1インク吸収層32の左眼用画素と右眼用画素の境界部分にインク液滴が着弾することを防止することができる。また、抑制部33の第1インク吸収層32と直交する断面形状は、レンチキュラーレンズ30側ほど幅が狭くなる先細り状のテーパ形状となっている。テーパ形状をなす抑制部33は第1インク吸収層32の厚み方向中央部までの厚みを有している。さらに、第1インク吸収層32の抑制部33が形成された面には第2インク吸収層34が設けられており、抑制部33は第2インク吸収層34によって覆われている。
【0037】
このように、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に抑制部33が形成されることで、図4に示すように、1つの画素配置領域35に浸透するインクが、隣の画素配置領域35まで浸透することが防止される。尚、この抑制部33は、第1インク吸収層32よりもインクの透過性が低いものであれば特に材質は限定されないが、例えば、インクの透過性が非常に低い樹脂材料で形成することができる。さらに、撥インク性に優れるPTFE等のフッ素系樹脂で抑制部33を形成すれば、抑制部33上にインクが残留しにくくなり、速やかに画素配置領域35へインクを浸透させることができる。
【0038】
さらに、後でも説明するが、抑制部33が有色材料で形成されていると、インクジェットプリンタ1の画素位置検出センサ26(図1参照)によって、画素配置領域35の間に形成された抑制部33を、複数の画素配置領域35の位置やピッチを検出するための被検出部として使用することができる。尚、ここでいう「有色」とは、透明又は白色でないことを示し、透明又は白色の第1インク吸収層32に設けられたときに区別して検出できる色のことを言う。抑制部33として使用できる樹脂材料としては、UVインクが挙げられる。具体的には、エポキシアクリレートなどの光重合性樹脂と、ベンゾフェイン系などの光重合開始剤と、染料または顔料を有するUVインクが挙げられる。また、熱可塑性ポリマーなどの低融点樹脂と、顔料または染料を供えたホットメルトインクが挙げられる。 なお、抑制部33をなす樹脂材料は、撥インク性を有するものであっても良いし、層の中に少量のインクを吸収可能であってもよい。第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30側における画素配置領域35の境界領域にインクが吸収されないように構成されていればよい。
【0039】
また、図4に示すように、抑制部33の断面形状は、レンチキュラーレンズ30側(図中下側)ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状となっている。そのため、抑制部33に挟まれた1つの画素配置領域35の断面形状は逆に末広がり形状となり、レンチキュラーレンズ30と反対側の、第2インク吸収層34からインクが浸透してくる部分(図中上部)の面積が小さくなる。言い換えると、抑制部33は、隣り合う抑制部33との間で、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30側(図中下側)とその反対側(図中上側)とでインクを通過させるための開口部を形成する。そして、抑制部33がテーパ状の断面形状をなすことによって、インクが第1インク吸収層32に浸入するためのレンチキュラーレンズ30と反対側(上側)の開口部は、レンチキュラーレンズ30側(下側)の開口部よりも狭くなっている。従って、図4における左眼用画素への液滴Dの着弾のように、第2インク吸収層34への液滴Dの着弾位置がずれて、第2インク吸収層34におけるインクの浸透領域34aが、画素配置領域35の中心位置から多少ずれたとしても、第1インク吸収層32へ浸透する位置は変わらず、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が防止される。
【0040】
また、抑制部33の断面形状が先細りのテーパ形状であると、抑制部33によって挟まれた1つの画素配置領域35において、インクが第1インク吸収層32の厚み方向に浸透するにつれて、抑制部33のテーパ面によって案内されつつ面方向にも広がっていくことから、隣接する画素配置領域35との間のインクの浸透を防止しつつも、画素配置領域35に形成される画素を一定以上に大きくすることができる。
【0041】
図5は、抑制部33が形成された第1インク吸収層32の平面図である。尚、図5において、縦横に直交する破線が複数の画素配置領域35の仮想的な境界線を示し、これらの破線で囲まれた領域が1つの画素配置領域35となっている。そして、図5に示すように、抑制部33は、複数の画素配置領域35にそれぞれ対応した複数の穴33aを有し、複数の画素配置領域35のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分35aを取り囲むように形成されている。このように、個々の画素配置領域35の露出部分35a(即ち、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32へインクが浸透する部分)が抑制部33で囲まれることで、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が確実に防止される。
【0042】
また、図5のように、抑制部33の複数の穴33aは、レンズの軸方向に長い、長穴形状を有することが好ましい。その理由は以下の通りである。レンズの幅方向には左眼用画素と右眼用画素とが隣接して配置されるため、レンズの幅方向については抑制部33の穴33aを小さくし、2つの穴33aの間の距離(抑制部33の幅)を大きくすることが好ましい。一方、レンズの軸方向には左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ一列に並ぶことから、レンズの軸方向に隣接する画素配置領域35間においては多少インクの滲みが生じても画質にはそれほど影響しない。そこで、このレンズの軸方向については、抑制部33の穴33aの長さを長くすることで、穴33aの面積、即ち、画素配置領域35の露出部分35aの面積を大きくし、1つの画素配置領域35におけるインクの浸透速度を速めることができる。
【0043】
ところで、この抑制部33は、インクが浸透しにくいものであるが故に、抑制部33の表面にはインクが残存しやすく、抑制部33が露出していると、残存するインクが周囲(ユーザーの手や記録装置など)を汚す虞がある。そこで、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面には、前記抑制部33を覆うように第2インク吸収層34が設けられている。この第2インク吸収層34は、第1インク吸収層32と同じく、インク吸収性に優れた透明又は白色の層である。尚、第2インク吸収層34は、抑制部33の表面にインクが残留するのを防止することを目的としていることから、それほど大きな厚みは必要ではなく、第1インク吸収層32よりも厚みを小さくてよい。第1インク吸収層32よりも第2インク吸収層34を薄くすることで、第2インク吸収層34に吸収されて第1インク吸収層32まで到達せずにとどまるインクの量(画素形成に寄与しないインク量)を減らすことができるので、1つのインクカートリッジでより多くの印刷が可能となる。また、第1インク吸収層32を白色、第2インク吸収層34を透明にすることで、第1インク吸収層32を白色の用紙としつつ、その裏面の抑制部33の視認性を向上させることができる。
【0044】
次に、インクジェットプリンタ1によって、レンチキュラーシート100に対して画像を記録する(画素を形成する)ときの作用について説明する。
【0045】
まず、図1において、レンチキュラーシート100は、プラテン2上に、レンチキュラーレンズ30を下にして、且つ、レンズの幅方向がキャリッジ3の走査方向と平行となるように設置されるとともに、搬送機構5によってレンズの軸方向に搬送される。そして、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ3を走査方向に移動させながら、インクジェットヘッド4からレンチキュラーシート100に向けてインクの液滴を噴射させる。このとき、キャリッジ2に設けられた画素位置検出センサ26によって、画素配置領域35の間に位置する有色の抑制部33を検出することで、複数の画素配置領域35の走査方向位置やピッチを把握することができる。そして、この画素位置検出センサ26の検出結果と、ヘッド位置検出センサ25により検出されたキャリッジ3(インクジェットヘッド4)の走査方向位置に基づいて、インクジェットヘッド4の噴射タイミングを制御することで、レンチキュラーシート100(第2インク吸収層34)の複数の画素配置領域35に対応する位置に、インクの液滴を精度良く着弾させることが可能となる。
【0046】
インクジェットヘッド4からレンチキュラーシート100に向けて噴射されたインクの液滴は、第2インク吸収層34の表面に着弾し、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32の画素配置領域35に浸透して画素が形成される。ここで、複数の画素配置領域35の間にはインクの浸透を抑制する抑制部33が設けられているため、第2インク吸収層34への液滴の着弾位置が多少ずれても、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が抑制部33によって抑制される。
【0047】
尚、第2インク吸収層34への液滴の着弾位置がずれると、図4に示すように、第2インク吸収層34におけるインクの浸透領域34aが、第1インク吸収層32の画素配置領域35に対してずれることになるが、第2インク吸収層34は、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30に接する面(凸レンズ部31側から人間の眼によって認識される画素の形成面)から厚み方向にかなり離れているため、そのインク浸透領域のずれは、画質(凸レンズ部31側から見たときの立体視画像)にはほとんど影響を及ぼさない。
【0048】
また、インクを透過しにくい材料で形成された抑制部33が第2インク吸収層34で覆われており、抑制部33はレンチキュラーシート100の表面には露出しない。さらに、第2インク吸収層34は抑制部33よりもインクの吸収に格段に優れるため、その内部にインクが速やかに浸透して表面にインクが残存するということはない。従って、画像記録後にレンチキュラーシート100の表面にインクが残ることはなく、周囲を汚すという問題は生じない。
【0049】
次に、レンチキュラーシート100の製造方法について説明する。図6は、レンチキュラーシート100の製造工程を示す図である。図6(a)に示すように、まず、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31とは反対側の平坦面30aに第1インク吸収層32を積層する(第1積層工程)。例えば、液状又はゲル状のインク吸収性の樹脂材料をレンチキュラーレンズ30の平坦面30aの全面に塗布することによって第1インク吸収層32を形成することができる。あるいは、紙のシートをレンチキュラーレンズ30の平坦面30aに接着剤で接合してもよい。第1インク吸収層32の厚みは、例えば40μmである。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面の、複数の画素配置領域35の間に、抑制部33を形成する(抑制層形成工程)。ここでは、インク浸透性の低い樹脂等の液状材料を、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面から、第1インク吸収層32へ浸透させることによって抑制部33を形成する。具体的には、液滴噴射装置を用い、抑制部33を形成する液状材料を、液滴噴射装置のノズルから噴射させて、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に着弾させて浸透させる。抑制部33の厚みは、例えば2〜5μm程度である。この場合には、液滴噴射装置のノズルから容易に噴射することができるように、抑制部33を形成する材料は、例えば、UVインクやホットメルトインクなど、表面張力や粘度が比較的低い液体であることが好ましい。この液滴噴射装置を用いた方式(いわゆるインクジェット方式)では、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に精度よく着弾させることができる。また、着弾した液滴が第1インク吸収層32内に浸透すると、着弾した位置から厚み方向に遠ざかるほど浸透量が少なく、抑制部33の幅が小さくなることから、図4に示すように、抑制部33の断面形状を先細りのテーパ形状にすることも容易である。
【0051】
その後、図6(c)に示すように、抑制部33が形成された第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面に、第2インク吸収層34を積層し、第2インク吸収層34によって抑制部33を覆う(第2積層工程)。ここでは、前記第1積層工程と同様に、インク吸収性に優れた樹脂材料をレンチキュラーレンズ30の平坦面30aの全面に塗布する、あるいは、紙のシートをレンチキュラーレンズ30の平坦面30aに接合する等の方法で、第2インク吸収層34を形成することができる。
【0052】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0053】
(変更形態1)
抑制部33として、第1インク吸収層32に浸透するホットメルトインクのような液状材料を使用する場合、図7のように、この液状材料を第1インク吸収層32だけでなく第2インク吸収層34にも浸透させて、抑制部33によって第1インク吸収層32と第2インク吸収層34とを接着することも可能である。これは、特に、第1インク吸収層32と第2インク吸収層34を、それぞれ、紙などのシート材によって形成する場合に有効である。
【0054】
図7のレンチキュラーシート100は、例えば、次のようにして製造することができる。レンチキュラーレンズ30に、シート状の第1インク吸収層32を接着剤で貼り付けた後、この第1インク吸収層32の、複数の画素配置領域35の間に、所定の溶融温度以上に加熱された液状のホットメルトインクを滴下し、抑制部33を形成する。ここで、液状の状態ではホットメルトインクは第1インク吸収層32に浸透していくが、その浸透の途中でホットメルトインクを冷却することによって凝固させ、浸透を一旦停止させる。尚、滴下時にはホットメルトインクは高温であっても、それよりも温度の低い第1インク吸収層32に滴下されることによって自然に冷却されていくことから、特段の冷却工程を経なくても、前記の浸透途中での冷却凝固を行うことは可能である。
【0055】
次に、ホットメルトインクが凝固した第1インク吸収層32の表面に、シート状の第2インク吸収層34を載せてから、全体をホットメルトインクの溶融温度以上に加熱する。これにより、ホットメルトインクが再び溶融し、第1インク吸収層32に浸透しなかった部分が第2インク吸収層34に浸透することによって、第1インク吸収層32と第2インク吸収層34とがホットメルトインクによって接着される。
【0056】
(変更形態2)
前記実施形態では、抑制部33を形成する液状材料が、レンチキュラーレンズ30と反対側の面から第1インク吸収層32の内部にまで浸透していたが、図8に示すように、第1インク吸収層32の、レンチキュラーレンズ30と反対側の面に載るように抑制部33が形成されてもよい。この形態の抑制部33は、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面に、インク浸透性の低い材料をマスクを用いてパターニングすることによって形成できる。あるいは、第1インク吸収層32の全面に抑制部33を塗布した後に、レーザー加工によって一部を除去して、第1インク吸収層32を露出させるようにしてもよい。
【0057】
(変更形態3)
図8のような第1インク吸収層32に抑制部33を浸透させない形態であっても、抑制部33の断面形状としては、レンチキュラーレンズ30側ほど幅が狭くなった形状が好ましい。例えば、図9に示すように、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30とは反対側の面に第1の抑制部40が形成され、この第1の抑制部40を覆うようにインク吸収層37が設けられた上に、さらに、第1の抑制部40よりも幅の大きい第2の抑制部41が設けられてもよい。この場合、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32の画素配置領域35までインクが浸透する途中に、2つのインク吸収層32,34の間に位置するインク吸収層37において、インクが、第2の抑制部41とこれよりも幅の小さな第1の抑制部40によって案内されながら、厚み方向に浸透しつつ面方向にも広がるように浸透する。
【0058】
(変更形態4)
図10に示すように、第1の抑制部40に接するように、第2の抑制部41が設けられてもよい。この場合も、図8の形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0059】
(変更形態5)
図11に示すように、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に、隣接する画素配置領域35を完全に分断するように、抑制部33が設けられてもよい。尚、この形態において、抑制部33は、前記実施形態と同様に、インク透過性の低い樹脂材料等で形成されてもよいが、レンチキュラーレンズ30自体がインクを透過しない材料で形成されていることから、抑制部33がレンチキュラーレンズ30と同じ材料によって一体形成されてもよい。即ち、抑制部33がレンチキュラーレンズ30の平坦面30aから凸レンズ部31と反対側に突出することで、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35を互いに分断するように構成されてもよい。
【0060】
(変更形態6)
前記実施形態の図5では、抑制部33に、複数の画素配置領域35にそれぞれ対応した穴33aが形成されて、1つの画素配置領域35の露出部分が抑制部33によって取り囲まれている。しかし、先に述べたように、レンズの軸方向においては、左眼用画素と右眼用画素が一列に並ぶことなり、軸方向に隣接する画素配置領域35間でのインクの浸透はさほど大きな問題とはならない。そこで、図12に示すように、抑制部33に、レンズの軸方向に並ぶ画素配置領域35の列に対応した帯状の穴33aが形成され、レンズの軸方向に隣接する画素配置領域35が抑制部33で隔てられず、繋がっていてもよい。
【0061】
(変更形態7)
レンチキュラーレンズとしては、前記実施形態の略半円柱状の複数の凸レンズ部31を有するものの他、半球状の複数の凸レンズ部が平面的に配置されたものも知られており、このようなレンズを有するレンチキュラーシートに対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0062】
30 レンチキュラーレンズ
31 凸レンズ部
32 第1インク吸収層
33 抑制部
33a 穴
34 第2インク吸収層
35 画素配置領域
100 レンチキュラーシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の立体視を可能とするレンチキュラーシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像の立体視を可能とする被記録媒体として、レンチキュラーシートが知られている。一般的なレンチキュラーシートは、平面的に配置された半円柱状の複数の凸レンズを有するレンチキュラーレンズと、このレンチキュラーレンズの複数の凸レンズと反対側の平坦面に設けられ、複数の画素が形成される画像記録層とを有する。画像記録層には、左眼用の画素と右眼用の画素とが隣接して形成されている。そして、レンチキュラーレンズの凸レンズ側から見たときに、凸レンズによって左眼に左眼用画素を視認させるとともに右眼に右眼用画素を視認させることで、左眼と右眼でそれぞれ見える画像のずれ(両眼視差)により画像の立体視が可能となる。
【0003】
上記レンチキュラーシートにおいて、画像記録層への画像記録方式としては様々なものがあるが、その中の1つとしてインクジェット記録装置による記録方式が知られており、この場合は、レンチキュラーシートの画像記録層はインク吸収性の高い材料で形成される(インク吸収層)。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置によって、インク吸収層からなる画像記録層に画像を記録する場合に、液滴の着弾位置が本来の位置からずれたときに、所望の画素が配置される領域だけでなく、それに隣接する画素が配置される領域にまでインクが浸透してしまうことがある。特に、レンチキュラーシートにおいて、左眼用画素と右眼用画素との間で上記の問題が生じると、立体視画像を実現するための両眼視差を生じさせることができなくなる虞がある。
【0005】
これについて、特許文献1のレンチキュラーシートにおいては、隣接する画素間でのインクの滲みを抑制するために、インク吸収層の、半円柱状の凸レンズ部の長手方向と直交する方向(幅方向)に、画素毎に所定のピッチで、インクを透過させないシートリブや撥水性領域が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−15766号公報(図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1においては、画素間のインクの滲みを抑制するシートリブや撥水性領域がレンチキュラーシートの表面に露出している。そして、画像記録時に、インクジェット記録装置からインク吸収層に噴射されたインクの液滴の一部が、上記シートリブや撥水性領域に付着したときに、インクが吸収されず残存しやすい。そのため、画像記録後において、露出状態のシートリブや撥水性領域の表面に残存するインクによって、周囲(ユーザーの手や記録装置の内部など)が汚れる虞がある。
【0008】
本発明の目的は、インク吸収層の複数の画素配置領域の間に抑制部を設けて隣接する画素間でのインクの浸透を抑制するとともに、抑制部の表面に残存するインクによって周囲が汚れることを防止できる、レンチキュラーシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明のレンチキュラーシートは、平面的に配置された複数の凸レンズ部を有するレンチキュラーレンズと、前記レンチキュラーレンズの前記複数の凸レンズ部と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域を複数有する、第1インク吸収層と、前記第1インク吸収層に設けられ、前記複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部と、前記抑制部を覆うように設けられた第2インク吸収層とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、第1インク吸収層に、複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部が設けられていることから、1つの画素配置領域に浸透するインクが、隣の画素配置領域まで浸透することが防止される。また、抑制部がインク吸収層から露出していると、この抑制部の表面において残存したインクが、周囲(ユーザーの手や記録装置など)を汚す虞があるが、本発明では、抑制部を覆うように第2インク吸収層が設けられていることから、上記のような問題は生じない。
【0011】
前記第1の発明において、抑制部は、前記第1インク吸収層の前記レンチキュラーレンズと反対側の面において、前記複数の画素配置領域の間に設けられていてもよい(第2の発明)。あるいは、前記第1の発明において、前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に配置されて、隣接する画素配置領域を分断するように設けられていてもよい(第3の発明)。
【0012】
第4の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記抑制部は、前記第1インク吸収層と直交する断面において、前記レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状を有することを特徴とするものである。
【0013】
抑制部の断面形状が、レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭い、先細りのテーパ状となっていると、抑制部に挟まれた1つの画素配置領域の断面形状は逆に末広がり形状となり、レンチキュラーレンズと反対側の、第2インク吸収層からインクが浸透する部分の面積が小さくなる。従って、第2インク吸収層への液滴の着弾位置が多少ずれても、第1インク吸収層へ浸透する位置は変わらないため、第1インク吸収層における隣接する画素配置領域へのインクの浸透は抑制される。また、抑制部によって挟まれた1つの画素配置領域において、インクが第1インク吸収層の厚み方向に浸透するにつれて、面方向にも広がっていくことから、隣接する画素配置領域との間のインクの浸透を防止しつつも、画素配置領域に形成される画素を一定以上に大きくすることができる。
【0014】
第5の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記抑制部は、有色の材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
抑制部が有色の材料で形成されていると、インクジェット記録装置側の光学式センサにより抑制部を検出することが可能となる。これにより、第1インク吸収層の、画素配置領域の位置やピッチを把握できることから、第2インク吸収層の画素配置領域に対応した位置にインクを精度よく着弾させることができる。
【0016】
第6の発明のレンチキュラーシートは、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部は半円柱形状を有し、複数の前記凸レンズ部が幅方向に並べて配置されており、前記抑制部は、前記複数の画素配置領域にそれぞれ対応した複数の穴を有し、前記複数の画素配置領域のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分を取り囲むように形成され、前記抑制部の前記複数の穴は、前記半円柱形状の凸レンズ部の軸方向に長い、長穴形状をそれぞれ有することを特徴とするものである。
【0017】
このように、画素配置領域の露出した一部分(即ち、第2インク吸収層からインクが浸透してくる部分)が抑制部で囲まれることで、隣接する画素配置領域へのインクの浸透が確実に防止される。尚、半円柱状の凸レンズ部の、側面の光屈折効果によって左右両眼による左眼用画素と右眼用画素の個別視認を実現するため、凸レンズ部の幅方向には左眼用画素と右眼用画素とが隣接して配置される。それ故、特に、凸レンズ部の幅方向には抑制部の穴を小さくし、2つの穴の間の距離(抑制部の幅)を大きくすることが好ましい。一方、凸レンズ部の軸方向には左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ一列に並ぶことから、凸レンズ部の軸方向に隣接する画素配置領域間においては多少インクの滲みが生じても画質にはそれほど影響しない。そこで、この凸レンズ部の軸方向については、抑制部の穴の長さを長くすることで穴面積(画素配置領域の露出面積)を大きくし、画素配置領域におけるインクの浸透速度を速めることができる。
【0018】
第7の発明のレンチキュラーシートの製造方法は、前記第1の発明のレンチキュラーシートを製造する方法であって、前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部と反対側の面に第1インク吸収層を積層する第1積層工程と、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に、前記抑制部を形成する抑制層形成工程と、前記抑制部が形成された前記第1インク吸収層の、前記レンチキュラーレンズと反対側の面に、第2インク吸収層を積層する第2積層工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
このように、第1インク吸収層の複数の画素配置領域間に抑制部を形成した後に、抑制部を覆うように第2インク吸収層を設けることで、インクを吸収しにくい抑制部の表面が露出しなくなるため、レンチキュラーシート表面にインクが残存することがない。
【0020】
第8の発明のレンチキュラーシートの製造方法は、前記第7の発明において、前記抑制層形成工程において、前記抑制部を形成する液状材料を、液滴噴射装置を用いて前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に着弾させて、前記抑制部を形成することを特徴とするものである。
【0021】
このように、液滴噴射装置によって抑制部を形成することで、画素配置領域間に抑制部を精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1インク吸収層に、複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部が設けられていることから、ある画素配置領域に浸透するインクが、隣接する画素配置領域まで浸透することが防止される。また、抑制部を覆うように第2インク吸収層に覆われていることから、抑制部の表面に残存するインクが周囲を汚すことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】レンチキュラーシートの斜視図である。
【図3】レンチキュラーシートによる立体的な視覚効果を説明する図である。
【図4】レンチキュラーシートの断面図である。
【図5】レンチキュラーシートの、抑制部が形成された第1インク吸収層の平面図である。
【図6】レンチキュラーシートの製造工程を示す図である。
【図7】変更形態1のレンチキュラーシートの断面図である。
【図8】変更形態2のレンチキュラーシートの断面図である。
【図9】変更形態3のレンチキュラーシートの断面図である。
【図10】変更形態4のレンチキュラーシートの断面図である。
【図11】変更形態5のレンチキュラーシートの断面図である。
【図12】変更形態6のレンチキュラーシートの、抑制部が形成された第1インク吸収層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明のレンチキュラーシートに立体視画像を記録するインクジェットプリンタ1の概略構成と、レンチキュラーシートに対する画像の形成方法について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、レンチキュラーシート100が載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4と、レンチキュラーシート100を走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットプリンタ1の全体制御を司る制御装置8等を備えている。
【0025】
プラテン2の上面には、被記録媒体であるレンチキュラーシート100(図2参照)が、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31と反対側の面が上になるように載置される。プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10,11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ3には、2つのプーリ12,13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行に伴って走査方向に移動する。
【0026】
尚、プリンタ1のプリンタ本体1aには、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ24が設けられている。一方、キャリッジ3には、発光素子と受光素子とを有する透過型光センサからなるヘッド位置検出センサ25が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ3の移動中にヘッド位置検出センサ25が検出したリニアエンコーダ24の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ3の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっている。
【0027】
さらに、キャリッジ2の側壁には、後述するレンチキュラーシート100の、複数の画素が形成される領域(画素配置領域35)についての情報(位置やピッチ)を検出するための画素位置検出センサ26も設けられている。より詳細には、画素位置検出センサ26は、レンチキュラーシート100に向けて光を照射する発光素子と反射光を受光する受光素子とを有し、レンチキュラーシート100の幅方向に複数の画素配置領域毎に等ピッチで配置された複数の有色部分(抑制部33:図4参照)を検出する。
【0028】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面(図1の紙面向こう側の面)が、複数のノズル16が開口する液滴噴射面となっている。また、図1に示すように、プリンタ1のプリンタ本体1aにはホルダ9が固定的に設けられ、このホルダ9には4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)がそれぞれ貯留された4つのインクカートリッジ17が装着される。また、図示は省略するが、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とホルダ9とが4本のチューブ(図示省略)で接続され、4つのインクカートリッジ17内のインクが、4本のチューブを介してインクジェットヘッド4にそれぞれ供給されるようになっている。
【0029】
インクジェットヘッド4は、複数のノズル16内のインクにそれぞれ圧力を付与して、複数のノズル16のそれぞれから個別にインクの液滴を噴射させるアクチュエータ(図示省略)を備えている。このアクチュエータの構成は特定のものに限定されず、圧電素子の圧電歪を利用した圧電アクチュエータなど、公知のものを使用できる。そして、インクジェットヘッド4は、前記アクチュエータを用いて、複数のノズル16のそれぞれから、対応する色のインクをプラテン2に載置されたレンチキュラーシート100に対して噴射する。
【0030】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有し、これら2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置されたレンチキュラーシート100を搬送方向(図1の前方)に搬送する。
【0031】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置されたレンチキュラーシート100に対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18,19によってレンチキュラーシート100を搬送方向(図1の前方)に搬送することにより、レンチキュラーシート100の、レンチキュラーレンズ30の反対側の面に対しインクの液滴を着弾させて画像を印刷する。
【0032】
次に、レンチキュラーシート100について説明する。図2はレンチキュラーシート100の斜視図である。図2に示すように、レンチキュラーシート100は、略半円柱状の形状を有し、その幅方向に並べて平面的に配置された複数の凸レンズ部31を有するレンチキュラーレンズ30と、このレンチキュラーレンズ30の複数の凸レンズ部31と反対側の平坦面30aに配置された第1インク吸収層32を有する。
【0033】
第1インク吸収層32は、インク吸収性に優れた透明又は白色の層である。この第1インク吸収層32は、吸水性ポリマー等の膨潤性材料や、あるいは、多孔質シリカ等の多孔質材料を含むインク吸収性に優れた樹脂層であってもよいが、一般的な画像の記録に用いられる紙のシート(記録用紙)であってもよい。
【0034】
この第1インク吸収層32は、上述したインクジェットプリンタ1によって複数の画素がそれぞれ形成される複数の画素配置領域35を有する。図3は、レンチキュラーシート100による立体的な視覚効果を説明する図である。図3に示すように、第1インク吸収層32の、1つの凸レンズ部31と対向する領域には、両眼視差の作用を生じさせるようにわずかに異なった、左眼用画素と右眼用画素が、略半円柱状の凸レンズ部31の幅方向(以下、レンズの幅方向という)に並べて配置される。尚、後で説明する図5に示されているが、図3の紙面に直交する、凸レンズ部31の軸方向(以下、レンズの軸方向という)には、左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ1列に並べて配置される。
【0035】
図3(a)は左眼の視野の範囲を示し、(b)は右眼の視野の範囲を示す。第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35にそれぞれ画素(ハッチング部分)が形成されたレンチキュラーシート100を、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31側から人間が見たときに、凸レンズ部31の光屈折効果によって左眼の視野は図3(a)のようになり、左眼によって左眼用画素が視認され、右眼用画素は視認されない。一方、右眼の視野は図3(b)のようになり、右眼によって右眼用画素が視認されるが、左眼用画素は視認されない。そして、左眼と右眼によって、若干異なった画素である左眼用画素と右眼用画素をそれぞれ視認することによって、立体的な視覚効果が発生する。
【0036】
図4は、レンチキュラーシート100の断面図である。上述したように、第1インク吸収層32には、左眼用画素と右眼用画素がレンズの幅方向に隣接して形成されるが、左右2つの画素間でインクの浸透が生じると、画質が著しく低下して立体的な視覚効果が発生しなくなる虞がある。そこで、図4に示すように、第1インク吸収層32の、レンチキュラーレンズ30と反対側の面(図中上面)の、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に、隣り合う画素配置領域35の境界部分へのインクの浸透を抑制する抑制部33が形成されている。尚、本実施形態では、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面からインクの透過性の低い液状材料が第1インク吸収層32内に浸透することによって抑制部33が形成されている。図4において、抑制部33は第1インク吸収層32における画素配置領域35の左眼用画素と右眼用画素の境目をまたぐようにして配置されている。これによって、少なくとも第1インク吸収層32の左眼用画素と右眼用画素の境界部分にインク液滴が着弾することを防止することができる。また、抑制部33の第1インク吸収層32と直交する断面形状は、レンチキュラーレンズ30側ほど幅が狭くなる先細り状のテーパ形状となっている。テーパ形状をなす抑制部33は第1インク吸収層32の厚み方向中央部までの厚みを有している。さらに、第1インク吸収層32の抑制部33が形成された面には第2インク吸収層34が設けられており、抑制部33は第2インク吸収層34によって覆われている。
【0037】
このように、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に抑制部33が形成されることで、図4に示すように、1つの画素配置領域35に浸透するインクが、隣の画素配置領域35まで浸透することが防止される。尚、この抑制部33は、第1インク吸収層32よりもインクの透過性が低いものであれば特に材質は限定されないが、例えば、インクの透過性が非常に低い樹脂材料で形成することができる。さらに、撥インク性に優れるPTFE等のフッ素系樹脂で抑制部33を形成すれば、抑制部33上にインクが残留しにくくなり、速やかに画素配置領域35へインクを浸透させることができる。
【0038】
さらに、後でも説明するが、抑制部33が有色材料で形成されていると、インクジェットプリンタ1の画素位置検出センサ26(図1参照)によって、画素配置領域35の間に形成された抑制部33を、複数の画素配置領域35の位置やピッチを検出するための被検出部として使用することができる。尚、ここでいう「有色」とは、透明又は白色でないことを示し、透明又は白色の第1インク吸収層32に設けられたときに区別して検出できる色のことを言う。抑制部33として使用できる樹脂材料としては、UVインクが挙げられる。具体的には、エポキシアクリレートなどの光重合性樹脂と、ベンゾフェイン系などの光重合開始剤と、染料または顔料を有するUVインクが挙げられる。また、熱可塑性ポリマーなどの低融点樹脂と、顔料または染料を供えたホットメルトインクが挙げられる。 なお、抑制部33をなす樹脂材料は、撥インク性を有するものであっても良いし、層の中に少量のインクを吸収可能であってもよい。第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30側における画素配置領域35の境界領域にインクが吸収されないように構成されていればよい。
【0039】
また、図4に示すように、抑制部33の断面形状は、レンチキュラーレンズ30側(図中下側)ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状となっている。そのため、抑制部33に挟まれた1つの画素配置領域35の断面形状は逆に末広がり形状となり、レンチキュラーレンズ30と反対側の、第2インク吸収層34からインクが浸透してくる部分(図中上部)の面積が小さくなる。言い換えると、抑制部33は、隣り合う抑制部33との間で、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30側(図中下側)とその反対側(図中上側)とでインクを通過させるための開口部を形成する。そして、抑制部33がテーパ状の断面形状をなすことによって、インクが第1インク吸収層32に浸入するためのレンチキュラーレンズ30と反対側(上側)の開口部は、レンチキュラーレンズ30側(下側)の開口部よりも狭くなっている。従って、図4における左眼用画素への液滴Dの着弾のように、第2インク吸収層34への液滴Dの着弾位置がずれて、第2インク吸収層34におけるインクの浸透領域34aが、画素配置領域35の中心位置から多少ずれたとしても、第1インク吸収層32へ浸透する位置は変わらず、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が防止される。
【0040】
また、抑制部33の断面形状が先細りのテーパ形状であると、抑制部33によって挟まれた1つの画素配置領域35において、インクが第1インク吸収層32の厚み方向に浸透するにつれて、抑制部33のテーパ面によって案内されつつ面方向にも広がっていくことから、隣接する画素配置領域35との間のインクの浸透を防止しつつも、画素配置領域35に形成される画素を一定以上に大きくすることができる。
【0041】
図5は、抑制部33が形成された第1インク吸収層32の平面図である。尚、図5において、縦横に直交する破線が複数の画素配置領域35の仮想的な境界線を示し、これらの破線で囲まれた領域が1つの画素配置領域35となっている。そして、図5に示すように、抑制部33は、複数の画素配置領域35にそれぞれ対応した複数の穴33aを有し、複数の画素配置領域35のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分35aを取り囲むように形成されている。このように、個々の画素配置領域35の露出部分35a(即ち、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32へインクが浸透する部分)が抑制部33で囲まれることで、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が確実に防止される。
【0042】
また、図5のように、抑制部33の複数の穴33aは、レンズの軸方向に長い、長穴形状を有することが好ましい。その理由は以下の通りである。レンズの幅方向には左眼用画素と右眼用画素とが隣接して配置されるため、レンズの幅方向については抑制部33の穴33aを小さくし、2つの穴33aの間の距離(抑制部33の幅)を大きくすることが好ましい。一方、レンズの軸方向には左眼用画素と右眼用画素がそれぞれ一列に並ぶことから、レンズの軸方向に隣接する画素配置領域35間においては多少インクの滲みが生じても画質にはそれほど影響しない。そこで、このレンズの軸方向については、抑制部33の穴33aの長さを長くすることで、穴33aの面積、即ち、画素配置領域35の露出部分35aの面積を大きくし、1つの画素配置領域35におけるインクの浸透速度を速めることができる。
【0043】
ところで、この抑制部33は、インクが浸透しにくいものであるが故に、抑制部33の表面にはインクが残存しやすく、抑制部33が露出していると、残存するインクが周囲(ユーザーの手や記録装置など)を汚す虞がある。そこで、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面には、前記抑制部33を覆うように第2インク吸収層34が設けられている。この第2インク吸収層34は、第1インク吸収層32と同じく、インク吸収性に優れた透明又は白色の層である。尚、第2インク吸収層34は、抑制部33の表面にインクが残留するのを防止することを目的としていることから、それほど大きな厚みは必要ではなく、第1インク吸収層32よりも厚みを小さくてよい。第1インク吸収層32よりも第2インク吸収層34を薄くすることで、第2インク吸収層34に吸収されて第1インク吸収層32まで到達せずにとどまるインクの量(画素形成に寄与しないインク量)を減らすことができるので、1つのインクカートリッジでより多くの印刷が可能となる。また、第1インク吸収層32を白色、第2インク吸収層34を透明にすることで、第1インク吸収層32を白色の用紙としつつ、その裏面の抑制部33の視認性を向上させることができる。
【0044】
次に、インクジェットプリンタ1によって、レンチキュラーシート100に対して画像を記録する(画素を形成する)ときの作用について説明する。
【0045】
まず、図1において、レンチキュラーシート100は、プラテン2上に、レンチキュラーレンズ30を下にして、且つ、レンズの幅方向がキャリッジ3の走査方向と平行となるように設置されるとともに、搬送機構5によってレンズの軸方向に搬送される。そして、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ3を走査方向に移動させながら、インクジェットヘッド4からレンチキュラーシート100に向けてインクの液滴を噴射させる。このとき、キャリッジ2に設けられた画素位置検出センサ26によって、画素配置領域35の間に位置する有色の抑制部33を検出することで、複数の画素配置領域35の走査方向位置やピッチを把握することができる。そして、この画素位置検出センサ26の検出結果と、ヘッド位置検出センサ25により検出されたキャリッジ3(インクジェットヘッド4)の走査方向位置に基づいて、インクジェットヘッド4の噴射タイミングを制御することで、レンチキュラーシート100(第2インク吸収層34)の複数の画素配置領域35に対応する位置に、インクの液滴を精度良く着弾させることが可能となる。
【0046】
インクジェットヘッド4からレンチキュラーシート100に向けて噴射されたインクの液滴は、第2インク吸収層34の表面に着弾し、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32の画素配置領域35に浸透して画素が形成される。ここで、複数の画素配置領域35の間にはインクの浸透を抑制する抑制部33が設けられているため、第2インク吸収層34への液滴の着弾位置が多少ずれても、隣接する画素配置領域35へのインクの浸透が抑制部33によって抑制される。
【0047】
尚、第2インク吸収層34への液滴の着弾位置がずれると、図4に示すように、第2インク吸収層34におけるインクの浸透領域34aが、第1インク吸収層32の画素配置領域35に対してずれることになるが、第2インク吸収層34は、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30に接する面(凸レンズ部31側から人間の眼によって認識される画素の形成面)から厚み方向にかなり離れているため、そのインク浸透領域のずれは、画質(凸レンズ部31側から見たときの立体視画像)にはほとんど影響を及ぼさない。
【0048】
また、インクを透過しにくい材料で形成された抑制部33が第2インク吸収層34で覆われており、抑制部33はレンチキュラーシート100の表面には露出しない。さらに、第2インク吸収層34は抑制部33よりもインクの吸収に格段に優れるため、その内部にインクが速やかに浸透して表面にインクが残存するということはない。従って、画像記録後にレンチキュラーシート100の表面にインクが残ることはなく、周囲を汚すという問題は生じない。
【0049】
次に、レンチキュラーシート100の製造方法について説明する。図6は、レンチキュラーシート100の製造工程を示す図である。図6(a)に示すように、まず、レンチキュラーレンズ30の凸レンズ部31とは反対側の平坦面30aに第1インク吸収層32を積層する(第1積層工程)。例えば、液状又はゲル状のインク吸収性の樹脂材料をレンチキュラーレンズ30の平坦面30aの全面に塗布することによって第1インク吸収層32を形成することができる。あるいは、紙のシートをレンチキュラーレンズ30の平坦面30aに接着剤で接合してもよい。第1インク吸収層32の厚みは、例えば40μmである。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面の、複数の画素配置領域35の間に、抑制部33を形成する(抑制層形成工程)。ここでは、インク浸透性の低い樹脂等の液状材料を、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面から、第1インク吸収層32へ浸透させることによって抑制部33を形成する。具体的には、液滴噴射装置を用い、抑制部33を形成する液状材料を、液滴噴射装置のノズルから噴射させて、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に着弾させて浸透させる。抑制部33の厚みは、例えば2〜5μm程度である。この場合には、液滴噴射装置のノズルから容易に噴射することができるように、抑制部33を形成する材料は、例えば、UVインクやホットメルトインクなど、表面張力や粘度が比較的低い液体であることが好ましい。この液滴噴射装置を用いた方式(いわゆるインクジェット方式)では、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に精度よく着弾させることができる。また、着弾した液滴が第1インク吸収層32内に浸透すると、着弾した位置から厚み方向に遠ざかるほど浸透量が少なく、抑制部33の幅が小さくなることから、図4に示すように、抑制部33の断面形状を先細りのテーパ形状にすることも容易である。
【0051】
その後、図6(c)に示すように、抑制部33が形成された第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面に、第2インク吸収層34を積層し、第2インク吸収層34によって抑制部33を覆う(第2積層工程)。ここでは、前記第1積層工程と同様に、インク吸収性に優れた樹脂材料をレンチキュラーレンズ30の平坦面30aの全面に塗布する、あるいは、紙のシートをレンチキュラーレンズ30の平坦面30aに接合する等の方法で、第2インク吸収層34を形成することができる。
【0052】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0053】
(変更形態1)
抑制部33として、第1インク吸収層32に浸透するホットメルトインクのような液状材料を使用する場合、図7のように、この液状材料を第1インク吸収層32だけでなく第2インク吸収層34にも浸透させて、抑制部33によって第1インク吸収層32と第2インク吸収層34とを接着することも可能である。これは、特に、第1インク吸収層32と第2インク吸収層34を、それぞれ、紙などのシート材によって形成する場合に有効である。
【0054】
図7のレンチキュラーシート100は、例えば、次のようにして製造することができる。レンチキュラーレンズ30に、シート状の第1インク吸収層32を接着剤で貼り付けた後、この第1インク吸収層32の、複数の画素配置領域35の間に、所定の溶融温度以上に加熱された液状のホットメルトインクを滴下し、抑制部33を形成する。ここで、液状の状態ではホットメルトインクは第1インク吸収層32に浸透していくが、その浸透の途中でホットメルトインクを冷却することによって凝固させ、浸透を一旦停止させる。尚、滴下時にはホットメルトインクは高温であっても、それよりも温度の低い第1インク吸収層32に滴下されることによって自然に冷却されていくことから、特段の冷却工程を経なくても、前記の浸透途中での冷却凝固を行うことは可能である。
【0055】
次に、ホットメルトインクが凝固した第1インク吸収層32の表面に、シート状の第2インク吸収層34を載せてから、全体をホットメルトインクの溶融温度以上に加熱する。これにより、ホットメルトインクが再び溶融し、第1インク吸収層32に浸透しなかった部分が第2インク吸収層34に浸透することによって、第1インク吸収層32と第2インク吸収層34とがホットメルトインクによって接着される。
【0056】
(変更形態2)
前記実施形態では、抑制部33を形成する液状材料が、レンチキュラーレンズ30と反対側の面から第1インク吸収層32の内部にまで浸透していたが、図8に示すように、第1インク吸収層32の、レンチキュラーレンズ30と反対側の面に載るように抑制部33が形成されてもよい。この形態の抑制部33は、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30と反対側の面に、インク浸透性の低い材料をマスクを用いてパターニングすることによって形成できる。あるいは、第1インク吸収層32の全面に抑制部33を塗布した後に、レーザー加工によって一部を除去して、第1インク吸収層32を露出させるようにしてもよい。
【0057】
(変更形態3)
図8のような第1インク吸収層32に抑制部33を浸透させない形態であっても、抑制部33の断面形状としては、レンチキュラーレンズ30側ほど幅が狭くなった形状が好ましい。例えば、図9に示すように、第1インク吸収層32のレンチキュラーレンズ30とは反対側の面に第1の抑制部40が形成され、この第1の抑制部40を覆うようにインク吸収層37が設けられた上に、さらに、第1の抑制部40よりも幅の大きい第2の抑制部41が設けられてもよい。この場合、第2インク吸収層34から第1インク吸収層32の画素配置領域35までインクが浸透する途中に、2つのインク吸収層32,34の間に位置するインク吸収層37において、インクが、第2の抑制部41とこれよりも幅の小さな第1の抑制部40によって案内されながら、厚み方向に浸透しつつ面方向にも広がるように浸透する。
【0058】
(変更形態4)
図10に示すように、第1の抑制部40に接するように、第2の抑制部41が設けられてもよい。この場合も、図8の形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0059】
(変更形態5)
図11に示すように、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35の間に、隣接する画素配置領域35を完全に分断するように、抑制部33が設けられてもよい。尚、この形態において、抑制部33は、前記実施形態と同様に、インク透過性の低い樹脂材料等で形成されてもよいが、レンチキュラーレンズ30自体がインクを透過しない材料で形成されていることから、抑制部33がレンチキュラーレンズ30と同じ材料によって一体形成されてもよい。即ち、抑制部33がレンチキュラーレンズ30の平坦面30aから凸レンズ部31と反対側に突出することで、第1インク吸収層32の複数の画素配置領域35を互いに分断するように構成されてもよい。
【0060】
(変更形態6)
前記実施形態の図5では、抑制部33に、複数の画素配置領域35にそれぞれ対応した穴33aが形成されて、1つの画素配置領域35の露出部分が抑制部33によって取り囲まれている。しかし、先に述べたように、レンズの軸方向においては、左眼用画素と右眼用画素が一列に並ぶことなり、軸方向に隣接する画素配置領域35間でのインクの浸透はさほど大きな問題とはならない。そこで、図12に示すように、抑制部33に、レンズの軸方向に並ぶ画素配置領域35の列に対応した帯状の穴33aが形成され、レンズの軸方向に隣接する画素配置領域35が抑制部33で隔てられず、繋がっていてもよい。
【0061】
(変更形態7)
レンチキュラーレンズとしては、前記実施形態の略半円柱状の複数の凸レンズ部31を有するものの他、半球状の複数の凸レンズ部が平面的に配置されたものも知られており、このようなレンズを有するレンチキュラーシートに対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0062】
30 レンチキュラーレンズ
31 凸レンズ部
32 第1インク吸収層
33 抑制部
33a 穴
34 第2インク吸収層
35 画素配置領域
100 レンチキュラーシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的に配置された複数の凸レンズ部を有するレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズの前記複数の凸レンズ部と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域を複数有する、第1インク吸収層と、
前記第1インク吸収層に設けられ、前記複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部と、
前記抑制部を覆うように設けられた第2インク吸収層と、
を有することを特徴とするレンチキュラーシート。
【請求項2】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記レンチキュラーレンズと反対側の面において、前記複数の画素配置領域の間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンチキュラーシート。
【請求項3】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に配置されて、隣接する画素配置領域を分断するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンチキュラーシート。
【請求項4】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層と直交する断面において、前記レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項5】
前記抑制部は、有色の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項6】
前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部は半円柱形状を有し、複数の前記凸レンズ部が幅方向に並べて配置されており、
前記抑制部は、前記複数の画素配置領域にそれぞれ対応した複数の穴を有し、前記複数の画素配置領域のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分を取り囲むように形成され、
前記抑制部の前記複数の穴は、前記半円柱形状の凸レンズ部の軸方向に長い、長穴形状をそれぞれ有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項7】
請求項1のレンチキュラーシートの製造方法であって、
前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部と反対側の面に第1インク吸収層を積層する第1積層工程と、
前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に、前記抑制部を形成する抑制層形成工程と、
前記抑制部が形成された前記第1インク吸収層の、前記レンチキュラーレンズと反対側の面に、第2インク吸収層を積層する第2積層工程と
を備えたことを特徴とするレンチキュラーシートの製造方法。
【請求項8】
前記抑制層形成工程において、前記抑制部を形成する液状材料を、液滴噴射装置を用いて前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に着弾させて、前記抑制部を形成することを特徴とする請求項6に記載のレンチキュラーシートの製造方法。
【請求項1】
平面的に配置された複数の凸レンズ部を有するレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズの前記複数の凸レンズ部と反対側の面に設けられ、インクが浸透することによって画素が形成される画素配置領域を複数有する、第1インク吸収層と、
前記第1インク吸収層に設けられ、前記複数の画素配置領域の間へのインクの浸透を抑制する抑制部と、
前記抑制部を覆うように設けられた第2インク吸収層と、
を有することを特徴とするレンチキュラーシート。
【請求項2】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記レンチキュラーレンズと反対側の面において、前記複数の画素配置領域の間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンチキュラーシート。
【請求項3】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に配置されて、隣接する画素配置領域を分断するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンチキュラーシート。
【請求項4】
前記抑制部は、前記第1インク吸収層と直交する断面において、前記レンチキュラーレンズ側ほど幅が狭くなる、先細りのテーパ形状を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項5】
前記抑制部は、有色の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項6】
前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部は半円柱形状を有し、複数の前記凸レンズ部が幅方向に並べて配置されており、
前記抑制部は、前記複数の画素配置領域にそれぞれ対応した複数の穴を有し、前記複数の画素配置領域のそれぞれを部分的に露出させるとともに露出部分を取り囲むように形成され、
前記抑制部の前記複数の穴は、前記半円柱形状の凸レンズ部の軸方向に長い、長穴形状をそれぞれ有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレンチキュラーシート。
【請求項7】
請求項1のレンチキュラーシートの製造方法であって、
前記レンチキュラーレンズの前記凸レンズ部と反対側の面に第1インク吸収層を積層する第1積層工程と、
前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に、前記抑制部を形成する抑制層形成工程と、
前記抑制部が形成された前記第1インク吸収層の、前記レンチキュラーレンズと反対側の面に、第2インク吸収層を積層する第2積層工程と
を備えたことを特徴とするレンチキュラーシートの製造方法。
【請求項8】
前記抑制層形成工程において、前記抑制部を形成する液状材料を、液滴噴射装置を用いて前記第1インク吸収層の前記複数の画素配置領域の間に着弾させて、前記抑制部を形成することを特徴とする請求項6に記載のレンチキュラーシートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−194414(P2012−194414A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58889(P2011−58889)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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