説明

レーザアニール方法及びレーザアニール装置

【課題】固体レーザを用いたレーザアニールにおいて、半導体膜のレーザ照射部分の位置変動に応じて矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を容易に補正する。
【解決手段】入射光を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズ29と、短軸用コンデンサレンズ29からの出射光を半導体膜3の表面に投影する投影レンズ30とを用いて、レーザ光1を半導体膜3の表面において矩形状ビームの短軸方向に集光し、半導体膜3のレーザ照射部分における半導体膜3の垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて短軸用コンデンサレンズ29を光軸方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状ビームに整形したパルスレーザ光を半導体膜に照射して半導体膜を改質するレーザアニール方法及びレーザアニール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザアニールは、低融点ガラス(通常、無アルカリガラス)からなる基板上に形成されたアモルファスシリコン膜(以下、a−Si膜という)にレーザビームを照射し、溶融、固化させて再結晶化させることにより多結晶シリコンを形成する処理である(例えば、下記特許文献1を参照)。結晶化したシリコン膜はa−Si膜に比べ電気的特性に優れているため、携帯電話やデジタルスチルカメラなどの高精細な表示が要求される液晶ディスプレイを駆動するトランジスタに採用されている。
【0003】
レーザアニールでは、レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を、光学系を用いて断面が細長い矩形状ビームに加工し、この矩形状ビームを基板上の半導体膜(例えばa−Si膜)に対してビームの短軸方向に相対的に走査することにより行なう。一般的には、基板を移動させることにより、矩形状ビームの走査が行なわれる。また、この走査は、レーザ照射領域が部分的に重複するように実施される。
【0004】
下記特許文献2及び3には、レーザ光源としてエキシマレーザを用いたレーザアニール装置(以下、エキシマレーザアニール装置という)の光学系の全体図が開示されている。この光学系は、矩形状ビームを長軸方向及び短軸方向にそれぞれ複数に分割するシリンドリカルレンズアレイと、このシリンドリカルレンズアレイで分割されたビームを重ね合わせるためのコンデンサレンズから構成される。また、短軸方向は、ビームのエネルギープロファイルを一旦均一化した後、さらに投影レンズにより縮小投影される。
【0005】
上述したエキシマレーザアニール装置におけるビーム形状は長軸が365mm、短軸が0.4mm程度である。エキシマレーザの場合、レーザのビーム品質が悪いため、短軸幅が大きく、その結果、焦点深度が深い。このため、基板搬送装置の機械的誤差や基板表面の加工誤差に起因したレーザ被照射面の位置変動によるアニール性能への影響はほとんど無かった。ここで、上記の位置変動とは、半導体膜に対して垂直方向の位置変動をいう。
【0006】
一方、エキシマレーザアニールは、アニール特性としてレーザ照射エネルギーに対するキャリア移動度の変化が大きいという問題がある。この問題を解決するものとして、Nd:YAGレーザの第2高調波により得られるパルスグリーンレーザ光を光源とするレーザアニール装置(以下、固体グリーンレーザアニール装置という)が注目されている(例えば、下記特許文献4及び5を参照)。このパルスグリーンレーザを用いると、一定の照射エネルギーに対しエキシマレーザに比べ広いプロセスマージンが得られる。
【0007】
しかしながら、実用化されているエキシマレーザの出力(最大1J/パルス)に対して、固体グリーンレーザの出力は著しく低い(0.1J未満/パルス)ため、短軸方向のビームサイズを100μm以下まで絞る必要がある。その結果、短軸方向の焦点深度が浅くなり、半導体膜の位置変動に起因したアニール性能への影響が無視できない状況となっている。
【0008】
下記特許文献4〜6には、穴開けなどのレーザ加工用に適用されているオートフォーカス機構が示されている。このオートフォーカス機構は、加工面の変動をモニターし、レーザ光を加工面で集光する対物レンズを光軸方向に移動させることにより、加工面と集光点を常に一定に保持するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特許第3204307号公報
【特許文献2】特開2000−338447号公報
【特許文献3】特許第3191702号公報
【特許文献4】特開平11−58053号公報
【特許文献5】特開平11−23952号公報
【特許文献6】特許第2835924号公報
【非特許文献1】“Performance of Polycrystallization with High Power Solid Green Laser”,
【非特許文献2】「低温ポリシリコン用グリーンレーザアニール光学系の開発」,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記非特許文献2には、固体グリーンレーザアニール装置の光学系の全体図が示されている。この光学系は、長軸方向については、レーザ光を長方形状の石英ガラスからなる導波路で複数に分割し、分割されたレーザ光を転写レンズによりガラス基板上の半導体膜に重ね合わせ、短軸方向については、エキスパンダレンズによりφ80の平行光とし、その平行光を対物レンズである集光レンズでガラス基板上に集光する。
非特許文献2に示された固体グリーンレーザアニール装置において、加工面が面に対して垂直方向に変動した場合、短軸方向の焦点位置から基板がずれるため、加工面のシリコン膜に入射するレーザ光のエネルギー密度が変動する。非特許文献2の光学系の場合、上述した特許文献4〜6のオートフォーカス機構のように、対物レンズである集光レンズの位置を補正することで、上記のエネルギー密度の変動を回避することができる。
【0011】
しかしながら、穴あけなどのレーザ加工装置に用いられる集光レンズは比較的小さいのに対して、レーザアニール装置に用いられる対物レンズ(集光レンズ又は投影レンズ)の大きさは一般に大きく、例えば短軸方向100mm以上×長軸方向150mm程度の寸法を有する。そのため、これらのレンズ群を保持するためのホルダーも大きく、かつ重量も非常に重い。したがって、レーザアニール装置の対物レンズをリアルタイムで光軸方向に数ミクロンの精度で移動させ振動させることは非常に困難である。また、基板側を面に対して垂直方向に移動させ振動させることも考えられるが、レーザアニール用の基板サイズは一般に大きいため(例えば、700mm×900mm以上)、基板を保持するステージを高精度で振動させることも困難である。なお、長軸方向に関しては、短軸方向に比べて焦点深度が非常に大きいため、焦点位置の変動による影響はほとんど無い。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、固体レーザを用いたレーザアニールにおいて、半導体膜のレーザ照射部分の位置変動に応じて矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を容易に補正することができるレーザアニール方法及びレーザアニール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のレーザアニール方法及びレーザアニール装置は、以下の手段を採用する。
(1)すなわち、本発明のレーザアニール方法は、固体レーザ光源からパルス発振されたレーザ光を整形して半導体膜の表面において矩形状ビームに集光し、矩形状ビームを前記半導体膜に対して短軸方向に相対的に走査し、レーザ照射により前記半導体膜を改質するレーザアニール方法において、入射光を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズと、該短軸用コンデンサレンズからの出射光を前記半導体膜の表面に投影する投影レンズとを用いて、前記レーザ光を前記半導体膜の表面において矩形状ビームの短軸方向に集光し、前記半導体膜のレーザ照射部分における該半導体膜の垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて前記短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させることを特徴とする。
【0014】
短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させると、その移動量に応じて一次結像面の位置も光軸方向に移動する。また、投影レンズによる投影点(焦点位置)は、一次結像面の位置の移動量に応じて移動する。
したがって、半導体膜のレーザ照射部分における半導体膜の垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させることにより、基板搬送装置の機械的誤差等による半導体膜の位置変動が生じても、矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を半導体膜の表面に合わせることができる。
また、焦点位置の補正に際して移動させる短軸用コンデンサレンズは、投影レンズよりも光軸方向の上流側に配置され且つサイズが小さく軽量であり、後述するように、半導体膜のミクロンオーダーの位置変動量に対する短軸用コンデンサレンズの位置補正量はミリオーダーとなる。したがって、小サイズ且つ軽量の短軸用コンデンサレンズの位置をミリオーダーの精度で補正すればよいため、焦点位置の補正を容易に行うことができる。
【0015】
(2)また、上記のレーザアニール方法において、前記短軸用コンデンサレンズの光軸方向上流側の位置に、入射光を前記矩形状ビームの短軸方向に複数に分割する短軸用シリンドリカルレンズアレイを、光軸方向に間隔をおいて配置しておき、前記位置変動の検出値に基づいて前記複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの間隔を調整することを特徴とする。
【0016】
短軸用コンデンサレンズを通過したレーザ光の一次結像面の像の大きさを決定する要素には、その上流側に配置された複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの合成焦点距離が含まれる。また、複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの合成焦点距離を決定する要素には、各レンズアレイの光軸方向の間隔が含まれる。したがって、複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの間隔を変化させることにより、短軸用コンデンサレンズを通過したレーザ光の一次結像面の像の大きさを調整することができ、結果として、短軸方向の焦点位置におけるビームサイズを調整することができる。よって、半導体膜の位置が変動しても、短軸方向の焦点位置におけるビームサイズを調整することにより、短軸方向について同一サイズのビームを半導体膜の表面に照射することができる。
【0017】
(3)本発明のレーザアニール装置は、レーザ光をパルス発振する固体レーザ光源と、該固体レーザ光源からのレーザ光を整形して半導体膜の表面において矩形状ビームに集光するビーム整形光学系と、前記矩形状ビームを前記半導体膜に対して短軸方向に相対的に走査する走査手段とを備え、レーザ照射により前記半導体膜を改質するレーザアニール装置において、前記ビーム整形光学系は、入射するレーザ光を前記半導体膜の表面において矩形状ビームの長軸方向と短軸方向のそれぞれに作用して集光する長軸方向ホモジナイザ及び短軸方向ホモジナイザを有し、該短軸方向ホモジナイザは、入射光を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズと、該短軸用コンデンサレンズからの出射光を前記半導体膜の表面に投影する投影レンズとからなり、さらに、前記半導体膜のレーザ照射部分における該半導体膜の垂直方向の位置変動を検出する位置変動検出器と、前記短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させるレンズ移動機構とを備える、ことを特徴とする。
【0018】
(4)また、上記のレーザアニール装置において、前記短軸用ホモジナイザは、前記短軸用コンデンサレンズの光軸方向上流側の位置に、入射光を前記矩形状ビームの短軸方向に複数に分割する短軸用シリンドリカルレンズアレイを複数有し、該複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイは光軸方向に間隔をおいて配置されており、さらに、前記複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの間隔を調整する間隔調整機構を備えることを特徴とする。
【0019】
このように構成された本発明のレーザアニールにより、上記のレーザアニール方法を実施することができる。したがって、本発明のレーザアニール装置によれば、短軸方向の焦点位置の補正を容易に行うことができる。また、半導体膜の位置が変動しても、短軸方向の焦点位置におけるビームサイズを調整することにより、短軸方向について同一サイズのビームを半導体膜の表面に照射することができる。
【0020】
(5)また、上記のレーザアニール装置において、さらに、前記位置変動検出器からの検出値に基づいて前記レンズ移動機構を制御する移動機構制御部を備えることを特徴とする。
【0021】
このような移動機構制御部を備えるので、フィードバック制御によりレンズ移動機構の駆動を制御することにより、短軸方向の焦点位置の補正を自動制御により実現することができる。
【0022】
(6)また、上記のレーザアニール装置において、さらに、前記位置変動検出器からの検出値に基づいて前記間隔調整機構を制御する調整機構制御部を備えることを特徴とする。
【0023】
このような調整機構制御部を有するので、フィードバック制御により間隔調整機構の駆動を制御することにより、短軸方向の焦点位置における像の大きさの調整を自動制御により実現することができる。
(7)また、上記のレーザアニール装置において、前記固体レーザ光源のビーム品質はM値で20以上であることを特徴とする。
【0024】
ビーム品質が良すぎると、干渉縞が生じやすい。ビーム品質がM値で20以上のレーザを用いることにより、干渉縞を低減することができる。
【0025】
(8)また、上記のレーザアニール装置において、前記ビーム整形光学系は、前記レーザ光の干渉作用を低減する干渉低減光学系を有することを特徴とする。
【0026】
このような干渉低減光学系により、矩形状ビームの干渉作用を低減することができるので、ビーム照射面における干渉縞を低減することができる。
【0027】
(9)また、上記のレーザアニール装置において、前記固体レーザ光源から出射されるレーザ光は、ガウシアン形状のエネルギープロファイルをもつことを特徴とする。
【0028】
(10)また、上記のレーザアニール装置において、前記矩形状ビームは、短軸方向にガウシアン形状のエネルギープロファイルをもつことを特徴とする。
【0029】
(11)また、上記のレーザアニール装置において、前記位置変動検出器は非接触式変位センサであることを特徴とする。
【0030】
このような非接触式変位センサを用いることにより、半導体膜の位置変動をリアルタイムで高精度に検出することができる。そのような非接触式変位センサとしては、レーザ式変位センサや渦電流式変位センサなどが好適である。
【0031】
(12)また、上記のレーザアニール装置において、前記固体レーザ光源を複数備えるとともに、さらに前記複数の固体レーザ光源からのレーザ光を時間的及び/又は空間的に合成する手段を備えることを特徴とする。
【0032】
このように複数のレーザ光を合成することで、時間的に(パルス周期を互いにずらして)合成した場合には合成レーザ光のパルス周波数を数倍にすることができ、空間的に(パルス周期を一致させて)合成した場合には合成レーザ光のエネルギー密度を数倍にすることができる。したがって、ビームの走査速度を上げることができ、結果として、アニール処理速度を向上させるこができる。なお、3つ以上のレーザ光を合成する場合は、時間的合成と空間的合成を組み合わせてもよい。
【0033】
(13)また、上記のレーザアニール装置において、さらに、前記半導体膜が形成された基板を内部に収容し基板の収容空間を真空若しくは不活性ガス雰囲気にするチャンバー又は前記半導体膜上のレーザ照射部分及びその周囲の限定的な範囲にのみ不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備えることを特徴とする。
【0034】
レーザアニールにおいて基板上の半導体膜にレーザ光を照射する際、レーザ照射部分に大気が触れると、基板表面に凹凸が形成される、基板表面に酸化膜が形成されるあるいは結晶化プロセスにおいて作製される結晶粒が小さくなる、といった問題が発生する。
本発明のレーザアニール装置は、上記構成のチャンバー又は不活性ガス供給手段を備えることにより、レーザ照射部分に大気が触れることを阻止することができる。したがって、上記の諸問題を回避することができる。
【0035】
(14)また、上記のレーザアニール装置において、前記半導体膜が形成された基板を載置するための基板ステージを備え、該基板ステージが基板の融点を超えない温度で加熱される。
【0036】
基板ステージを、基板の融点を超えない温度に加熱することにより、基板が溶融することなく安定してレーザアニールを行うことができる。例えば、基板が無アルカリガラスの場合、融点は約600℃であるので、基板ステージは600℃を超えない温度に加熱される。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、固体レーザを用いたレーザアニールにおいて、半導体膜のレーザ照射部分の位置変動に応じて矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を容易に補正することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0039】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態にかかるレーザアニール装置10の概略構成を示す。図1(A)において紙面に平行かつ光軸に垂直な方向が、矩形状ビームの長軸方向であり、図1(B)において紙面に平行かつ光軸に垂直な方向が、矩形状ビームの短軸方向である。
図1(A)では、短軸方向のみに作用する光学系は想像線(破線)で示されている。図1(B)では、長軸方向のみに作用する光学系は想像線で示されている。
【0040】
このレーザアニール装置10は、レーザ光1をパルス発振する固体レーザ光源12と、固体レーザ光源12からのレーザ光1を整形して半導体膜3の表面において矩形状ビームに集光するビーム整形光学系13と、矩形状ビームを半導体膜3に対して短軸方向に相対的に走査する走査手段とを備え、レーザ照射により半導体膜3を改質する。
【0041】
本実施形態において、基板2はガラス基板(例えば無アルカリガラス)であり、プラズマCVD法、スパッタ法などの成膜法により上記ガラス基板上にSiO膜が例えば200nm成膜され、その上に半導体膜3としてa−Si膜が例えば50nm成膜される。
基板2は、基板ステージ5により保持され矩形状ビームの短軸方向に搬送される。基板ステージ5の移動により基板2上のa−Si膜に対して矩形状ビームを短軸方向に相対的に走査することができる。すなわち、本実施形態において基板ステージ5は、レーザ走査手段4を構成している。
【0042】
基板ステージ5は、図示しない加熱手段により所定温度に加熱される。このとき、基板2の融点を超えない温度で加熱される。こうすることで、基板2が溶融することなく安定してレーザアニールを行うことができる。例えば、基板2が無アルカリガラスの場合、融点は約600℃であるので、基板ステージ5は600℃を超えない温度に加熱される。
【0043】
固体レーザ光源12は、例えば、2〜4kHzのパルス周波数でレーザ光1を出力する。このレーザ光1は、ガウシアン形状のエネルギープロファイルをもつ。固体レーザ光源12の種類は特に限定されないが、Nd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:YVOレーザ、Nd:ガラスレーザ、Yb:YAGレーザ、Yb:YLFレーザ、Yb:YVOレーザ、Yb:ガラスレーザのいずれかを用いるのが良い。これらの固体レーザは信頼性が高く、安定したレーザエネルギーの利用を高い効率で実現することができる。また、シリコン膜に対しては、330nm〜800nmの可視光領域において吸収係数が高いため、固体レーザ光源12としては、上記のYAGレーザ、YLFレーザ、YVOレーザ、ガラスレーザの第2又は第3高調波のレーザ光1を出射するものが好適である。
【0044】
ビーム品質が良すぎると干渉縞が生じやすい。したがって、固体レーザ光源12のビーム品質は、M値で20以上であることが好ましい。このような品質のレーザを用いることにより、干渉縞を低減することができる。
このような固体レーザ光源12から出射されたレーザ光1は、ビーム整形光学系13に入射する。
【0045】
ビーム整形光学系13は、固体レーザ光源12からのレーザ光1を長軸方向及び短軸方向に拡大するビームエキスパンダ14、入射するレーザ光1を半導体膜3の表面において矩形状ビームの長軸方向に作用して集光する長軸方向ホモジナイザ19、及び入射するレーザ光1を半導体膜3の表面において矩形状ビームの短軸方向に作用して集光する短軸方向ホモジナイザ25を備えている。
【0046】
一構成例として示したビームエキスパンダ14は、凸球面レンズ15と、短軸方向に作用する短軸用シリンドリカルレンズ16と、長軸方向に作用する長軸用シリンドリカルレンズ17とからなる。この構成のビームエキスパンダ14では、長軸方向と短軸方向の拡大率を別々に設定することができる。なお、ビームエキスパンダ14は他の構成であってもよく、例えば、凹球面レンズと凸球面レンズとを組み合わせたものであってもよい。
【0047】
図1(A)に示すように、長軸方向ホモジナイザ19は、入射するレーザ光1を長軸方向に複数に分割する複数の長軸用シリンドリカルレンズアレイ20a,20bと、長軸方向に複数に分割されたレーザ光1を半導体膜3の表面で長軸方向に重ね合わせる長軸用コンデンサレンズ22とからなる。本実施形態では、2つの長軸方向シリンドリカルレンズアレイ20a,20bが光軸方向に間隔をおいて配置されている。
【0048】
このように構成された長軸方向ホモジナイザ19では、ビームエキスパンダ14により拡大されたレーザ光1は、長軸用シリンドリカルレンズアレイ20a,20bにより長軸方向に複数に分割される。長軸用シリンドリカルレンズアレイ20a,20bを通過し分割されたレーザ光1は、長軸用コンデンサレンズ22により基板2上の半導体膜3の表面において長軸方向に細長い矩形状ビームとして結像される。なお、長軸用コンデンサレンズ22と基板2との間の光路には反射ミラー23が配置されており、長軸用コンデンサレンズ22からの出射光が基板2の方向へ反射されるようになっている。
基板2に照射される矩形状ビームの長軸方向の長さは、例えば数10mmとすることができる。この長軸方向ホモジナイザ19により整形された矩形状ビームは、長軸方向のエネルギープロファイルが均一化され、ガウシアン形状からフラットトップ形状に変形する。
【0049】
短軸方向ホモジナイザ25は、入射するレーザ光1を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズ29と、短軸用コンデンサレンズ29からの出射光を半導体膜3の表面に投影する投影レンズ30とを有する。本実施形態において短軸方向ホモジナイザ25は、さらに、短軸用コンデンサレンズ29の光軸方向上流側の位置に、入射光を短軸方向に複数に分割する短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bを有しており、2つの短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bは光軸方向に間隔をおいて配置されている。
【0050】
このように構成された短軸方向ホモジナイザ25では、ビームエキスパンダ14により拡大されたレーザ光1は、短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bにより短軸方向に複数に分割される。短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bを通過し分割されたレーザ光1は、短軸用コンデンサレンズ29により短軸方向に集光され一次結像面Sで結像した後、投影レンズ30により入射し、投影レンズ30により一次結像面Sでの像が基板2上の半導体膜3の表面に短軸方向に縮小投影される。なお、短軸用コンデンサレンズ29からのレーザ光1は反射ミラー23により基板2の方向へ反射されるようになっている。
基板2に照射される矩形状ビームの短軸方向の長さは、例えば数10μmとすることができる。この短軸方向ホモジナイザ25により整形された矩形状ビームは、短軸方向のエネルギープロファイルが均一化され、ガウシアン形状からフラットトップ形状に変形する。
【0051】
図1(B)に示すように、レーザアニール装置10は、さらに、位置変動検出器31、レンズ移動機構32及び制御装置34を備える。
位置変動検出機構は、半導体膜3のレーザ照射部分における半導体膜3の垂直方向の位置変動を検出する。したがって、この位置変動検出器31により、基板搬送装置の機械的誤差や基板表面の加工誤差に起因する半導体膜3の表面の位置変動を検出することができる。
【0052】
位置変動検出器31の数は、1つでも複数でも良い。位置変動検出器31が1つの場合、半導体膜3のレーザ照射部分における矩形状ビームの長軸方向の中央位置について位置変動を検出し、この検出値を代表的な位置変動量とすることができる。位置変動検出器31が複数の場合、半導体膜3のレーザ照射部分における矩形状ビームの長軸方向の複数点について位置変動を検出し、これらの平均値を位置変動量とすることができる。
【0053】
位置変動検出器31は、非接触式変位センサであることが好ましい。このような非接触式変位センサを用いることにより、半導体膜3の位置変動をリアルタイムで高精度に検出することができる。そのような非接触式変位センサの一例として、本実施形態ではレーザ式変位センサを示しているが、その他、渦電流式変位センサ、超音波式変位センサ等であってもよい。
【0054】
レンズ移動機構32は、短軸用コンデンサレンズ29を光軸方向に移動させる機能を有する。制御装置34は、位置変動検出器31からの検出値に基づいてレンズ移動機構32を制御する移動機構制御部35を有する。
短軸用コンデンサレンズ29を光軸方向に移動させると、その移動量に応じて一次結像面Sの位置も光軸方向に移動する。また、投影レンズ30による投影点(焦点位置)は、一次結像面Sの位置の移動量に応じて移動する。
【0055】
したがって、位置変動検出器31により半導体膜3のレーザ照射部分における半導体膜3の垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて移動機構制御部35により短軸用コンデンサレンズ29を光軸方向に移動させることにより、基板搬送装置の機械的誤差等による半導体膜3の位置変動が生じても、矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を半導体膜3の表面に合わせることができる。このように、フィードバック制御によりレンズ移動機構32の駆動を制御することにより、短軸方向の焦点位置の補正を自動制御により実現することができる。
【0056】
図2に、レーザ照射部分(加工面)の変動量と短軸用コンデンサレンズ29の移動量との関係を示す。図2において、(A)は短軸用コンデンサレンズ29と投影レンズ30の焦点距離がそれぞれ650mm、300mmの場合であり、(B)は短軸用コンデンサレンズ29と投影レンズ30の焦点距離がそれぞれ750mm、300mmの場合である。
【0057】
図2(A)の場合、レーザ照射部分が±0.5mm変動した場合、短軸用コンデンサレンズ29を±30mm移動させることで、矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を半導体膜3の表面に合わせることができる。
図2(B)の場合、レーザ照射部分が±0.5mm変動した場合、短軸用コンデンサレンズ29を±40mm移動させることで、矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を半導体膜3の表面に合わせることができる。
このように、半導体膜3のミクロンオーダーの位置変動量に対する短軸用コンデンサレンズ29の位置補正量はミリオーダーとなる。
【0058】
焦点位置の補正に際して移動させる短軸用コンデンサレンズ29は、投影レンズ30よりも光軸方向の上流側に配置され且つサイズが小さく軽量である。
したがって、本実施形態によれば、小サイズ且つ軽量の短軸用コンデンサレンズ29の位置をミリオーダーの精度で補正すればよいため、焦点位置の補正を容易に行うことができる。
【0059】
[第2実施形態]
図3に、本発明の第2実施形態にかかるレーザアニール装置10の概略構成を示す。
本実施形態のレーザアニール装置10は、複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの間隔を調整する間隔調整機構37を備えている。本実施形態では、光軸方向上流側の短軸用シリンドリカルレンズアレイ26aを光軸方向に移動させることにより、2つの短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの間隔を調整するようになっている。ただし、光軸方向下流側の短軸用シリンドリカルレンズ26b又は2つの短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの両方を光軸方向に移動させることにより、両者の間隔を調整するようにしてもよい。制御装置34は、位置変動検出器31からの検出値に基づいて間隔調整機構37を制御する調整機構制御部36を有する。その他の部分は、第1実施形態と同様である。
【0060】
図4に、複数のシリンドリカルレンズアレイの間隔を一定とした場合の、レーザ照射部分(加工面)の変動量とレーザ照射部分における像の大きさの変動率との関係を示す。図4において、(A)は短軸用コンデンサレンズ29と投影レンズ30の焦点距離がそれぞれ650mm、300mmの場合であり、(B)短軸用コンデンサレンズ29と投影レンズ30の焦点距離がそれぞれ750mm、300mmの場合である。
図4(A)及び(B)のいずれの場合も、レーザ照射部分が±0.5mm変動した場合、像の変動率は1.5%以下である。
【0061】
短軸用コンデンサレンズ29を通過したレーザ光1の一次結像面の像の大きさDを決定する要素には、その上流側に配置された複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの合成焦点距離fが含まれる。具体的には、一次結像面の像の大きさDは、下記(1)式で示される。ただし、wは短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bを構成する各シリンドリカルレンズアレイの短軸方向の幅であり、fは短軸用コンデンサレンズ29の焦点距離である。
D=w・(f/f)・・・(1)
【0062】
また、複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの合成焦点距離fを決定する要素には、各レンズアレイの光軸方向の間隔dが含まれる。具体的には、合成焦点距離fは、下記(2)式で示される。ただし、f´は各短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの焦点距離である。
=(f´×f´)/(2f´−d)・・・(2)
【0063】
したがって、複数の短軸用シリンドリカルレンズの間隔を変化させることにより、短軸用コンデンサレンズ29を通過したレーザ光1の一次結像面の像の大きさを調整することができ、結果として、短軸方向の焦点位置におけるビームサイズを調整することができる。
【0064】
よって、本実施形態によれば、位置変動検出器31により半導体膜3のレーザ照射部分について半導体膜3に対して垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて調整機構制御部36により間隔調整機構37制御部を制御して、短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bを光軸方向に移動させて各シリンドリカルレンズアレイの間隔を調整し、短軸方向の焦点位置におけるビームサイズを調整することにより、半導体膜3上のレーザ照射部分の位置が変動しても、短軸方向について同一サイズのビームを半導体膜3に照射することができる。このように、フィードバック制御により間隔調整機構37の駆動を制御することにより、短軸方向の焦点位置における像の大きさの調整を自動制御により実現することができる。
【0065】
[第3実施形態]
図5に、本発明の第3実施形態にかかるレーザアニール装置10の概略構成を示す。
本実施形態では、第1実施形態における短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bが設置されていない。その他の部分は、第1実施形態と同様である。
したがって本実施形態では短軸方向のエネルギープロファイルはガウシアン形状のままであるが、第1実施形態と同様に、位置変動検出器31からの検出値に基づいて短軸用コンデンサレンズ29を光軸方向に移動させることにより、矩形状ビームの短軸方向の焦点位置を半導体膜3の表面に合わせることができる。
【0066】
[その他の実施形態1]
上記の各実施形態において、ビーム整形光学系は、レーザ光の干渉作用を低減する干渉低減光学系を有することが好ましい。このような干渉低減光学系の構成例を図6に示す。図6に示す干渉低減光学系は、(A)のレーザ光の長軸方向の干渉作用を低減する長軸用干渉低減光学系18と、(B)の短軸方向の干渉作用を低減する短軸用干渉低減光学系24とからなる。
【0067】
図6(A)に示すように長軸用干渉低減光学系18は、長軸用シリンドリカルレンズアレイ20a,20bの光軸方向上流側に配置される。長軸用干渉低減光学系18は、複数の透明ガラス板18aからなる。各透明ガラス板の幅は長軸用シリンドリカルレンズアレイ20a,20bを構成する各シリンドリカルレンズの幅と同一であり、各透明ガラス板18aはレーザ光1のコヒーレント長よりも長い所定の長さだけ光軸方向の長さが異なるものが長軸方向に配列されている。この長軸方向干渉低減光学系18により、各透明ガラス板18aを通過したレーザ光1の光路はガラスの長さ分だけ長くなるため、それぞれのレーザ光1はコヒーレント長より長い距離の光路差が生じ、コヒーレント性の影響がなくなり、互いに干渉しなくなる。
【0068】
図6(B)に示すように短軸用干渉低減光学系24は、短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bの光軸方向上流側に配置される。複数の透明ガラス板24aからなる。各透明ガラス板24aの幅は短軸用シリンドリカルレンズアレイ26a,26bを構成する各シリンドリカルレンズの幅と同一であり、各透明ガラス板24aはレーザ光1のコヒーレント長よりも長い所定の長さだけ光軸方向の長さが異なるものが短軸方向に配列されている。この短軸用干渉低減光学系24により、各透明ガラス板24aを通過したレーザ光1の光路はガラスの長さ分だけ長くなるため、それぞれのレーザ光1はコヒーレント長より長い距離の光路差が生じ、コヒーレント性の影響がなくなり、互いに干渉しなくなる。
【0069】
なお、干渉低減光学系は、通過する光をランダム偏光に変換する機能を有する偏光解消素子により構成されるものであってもよく、あるいはその他の公知の構成を採用してもよい。たとえば、特開2002−321081号公報に記載された構成や、特開2004−341299号公報の図4に記載された構成を採用してもよい。
【0070】
[その他の実施形態2]
上記の各実施形態において、上記の固体レーザ光源12を複数備えるとともに、さらに複数の固体レーザ光源12からのレーザ光を時間的及び/又は空間的に合成する手段を備えることが好ましい。このような合成手段は、例えば、反射ミラーと偏光ビームスプリッタの組み合わせによって構成することができる。
このように複数のレーザ光を合成することで、時間的に(パルス周期を互いにずらして)合成した場合には合成レーザ光のパルス周波数を数倍にすることができ、空間的に(パルス周期を一致させて)合成した場合には合成レーザ光のエネルギー密度を数倍にすることができる。したがって、ビームの走査速度を上げることができ、結果として、アニール処理速度を向上させるこができる。なお、3つ以上のレーザ光を合成する場合は、時間的合成と空間的合成を組み合わせてもよい。
【0071】
[その他の実施形態3]
上記の各実施形態において、さらに、半導体膜が形成された基板を内部に収容し基板の収容空間を真空若しくは不活性ガス雰囲気にするチャンバー又は基板のレーザ照射部分及びその周囲の限定的な範囲にのみ不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備えることが好ましい。上記のチャンバー及び不活性ガス供給手段の構成例を図7に示す。
図7(A)に示すチャンバー40は、基板2を保持する基板ステージ5を内部に有しており、内部を真空又は不活性ガス雰囲気にできるように構成されている。基板ステージ5は、矩形状ビームに整形されたレーザ光1を短軸方向に走査するために、短軸方向に移動可能に構成されている。レーザ光1はチャンバー40に設けられた透過窓41を通過して基板2に照射される。
【0072】
また、図7(B)に示す不活性ガス供給手段43は、基板2に平行に近接対向する下面44を有しこの下面44と基板2との間に不活性ガス47の流路を形成するとともにレーザ光1を透過させる透過窓45を有する平行対向体46と、ビーム長軸方向に流量が均一化された不活性ガス47をレーザ光1の照射部分からビーム短軸方向に所定間隔を置いた位置において基板2の表面に向けて噴射するガス噴射手段48と、を備える。
【0073】
レーザアニールにおいて基板2上の半導体膜にレーザ光1を照射する際、レーザ照射部分に大気が触れると、基板表面に凹凸が形成される、基板表面に酸化膜が形成されるあるいは結晶化プロセスにおいて作製される結晶粒が小さくなる、といった問題が発生する。
上記構成のチャンバー40又は不活性ガス供給手段43を備えることにより、レーザ照射部分に大気が触れることを阻止することができ、上記の諸問題を回避することができる。
なお、不活性ガス供給手段43は、図7(B)に示した構成に限定されず、基板2のレーザ照射部分及びその周囲の限定的な範囲にのみ不活性ガスを供給する機能を有する範囲で他の構成であってもよい。例えば、特許第3502981号公報の図2や図4に示された構成であってもよい。
【0074】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるレーザアニール装置の概略構成図である。
【図2】レーザ照射部分(加工面)の変動量と短軸用コンデンサレンズの移動量との関係を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるレーザアニール装置の概略構成図である。
【図4】レーザ照射部分(加工面)の変動量とレーザ照射部分における像の大きさの変動率との関係を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるレーザアニール装置の概略構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態にかかるレーザアニール装置の長軸用干渉低減光学系と短軸用干渉低減光学系の構成を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態にかかるレーザアニール装置のチャンバー及び不活性ガス供給手段の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 レーザ光
2 基板
3 半導体膜
4 走査手段
5 基板ステージ
10 レーザアニール装置
12 固体レーザ光源
13 ビーム整形光学系
14 ビームエキスパンダ
15 凸球面レンズ
16 短軸用シリンドリカルレンズ
17 長軸用シリンドリカルレンズ
18 長軸用干渉低減光学系
19 長軸用ホモジナイザ
20a,20b 長軸用シリンドリカルレンズアレイ
22 長軸用コンデンサレンズ
24 短軸用干渉低減光学系
25 短軸用ホモジナイザ
26a,26b 短軸用シリンドリカルレンズアレイ
29 短軸用コンデンサレンズ
30 投影レンズ
31 位置変動検出器
32 レンズ移動機構
34 制御装置
35 移動機構制御部
36 調整機構制御部
37 間隔調整機構
40 チャンバー
43 不活性ガス噴射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体レーザ光源からパルス発振されたレーザ光を整形して半導体膜の表面において矩形状ビームに集光し、矩形状ビームを前記半導体膜に対して短軸方向に相対的に走査し、レーザ照射により前記半導体膜を改質するレーザアニール方法において、
入射光を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズと、該短軸用コンデンサレンズからの出射光を前記半導体膜の表面に投影する投影レンズとを用いて、前記レーザ光を前記半導体膜の表面において矩形状ビームの短軸方向に集光し、
前記半導体膜のレーザ照射部分における該半導体膜の垂直方向の位置変動を検出し、この検出値に基づいて前記短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させることを特徴とするレーザアニール方法。
【請求項2】
前記短軸用コンデンサレンズの光軸方向上流側の位置に、入射光を前記矩形状ビームの短軸方向に複数に分割する短軸用シリンドリカルレンズアレイを、光軸方向に間隔をおいて配置しておき、
前記位置変動の検出値に基づいて前記複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの間隔を調整することを特徴とする請求項1記載のレーザアニール方法。
【請求項3】
レーザ光をパルス発振する固体レーザ光源と、該固体レーザ光源からのレーザ光を整形して半導体膜の表面において矩形状ビームに集光するビーム整形光学系と、前記矩形状ビームを前記半導体膜に対して短軸方向に相対的に走査する走査手段とを備え、レーザ照射により前記半導体膜を改質するレーザアニール装置において、
前記ビーム整形光学系は、入射するレーザ光を前記半導体膜の表面において矩形状ビームの長軸方向と短軸方向のそれぞれに作用して集光する長軸方向ホモジナイザ及び短軸方向ホモジナイザを有し、
該短軸方向ホモジナイザは、入射光を短軸方向に集光する短軸用コンデンサレンズと、該短軸用コンデンサレンズからの出射光を前記半導体膜の表面に投影する投影レンズとからなり、
さらに、前記半導体膜のレーザ照射部分における該半導体膜の垂直方向の位置変動を検出する位置変動検出器と、前記短軸用コンデンサレンズを光軸方向に移動させるレンズ移動機構とを備える、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項4】
前記短軸用ホモジナイザは、前記短軸用コンデンサレンズの光軸方向上流側の位置に、入射光を前記矩形状ビームの短軸方向に複数に分割する短軸用シリンドリカルレンズアレイを複数有し、該複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイは光軸方向に間隔をおいて配置されており、
さらに、前記複数の短軸用シリンドリカルレンズアレイの間隔を調整する間隔調整機構を備えることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
さらに、前記位置変動検出器からの検出値に基づいて前記レンズ移動機構を制御する移動機構制御部を備えることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
さらに、前記位置変動検出器からの検出値に基づいて前記間隔調整機構を制御する調整機構制御部を備えることを特徴とする請求項4又は5記載のレーザアニール装置。
【請求項7】
前記固体レーザ光源のビーム品質はM値で20以上であることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項8】
前記ビーム整形光学系は、前記レーザ光の干渉作用を低減する干渉低減光学系を有することを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項9】
前記固体レーザ光源から出射されるレーザ光は、ガウシアン形状のエネルギープロファイルをもつことを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項10】
前記矩形状ビームは、短軸方向にガウシアン形状のエネルギープロファイルをもつことを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項11】
前記位置変動検出器は非接触式変位センサであることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項12】
前記固体レーザ光源を複数備えるとともに、さらに前記複数の固体レーザ光源からのレーザ光を時間的及び/又は空間的に合成する手段を備えることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項13】
さらに、前記半導体膜が形成された基板を内部に収容し基板の収容空間を真空若しくは不活性ガス雰囲気にするチャンバー又は前記半導体膜上のレーザ照射部分及びその周囲の限定的な範囲にのみ不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備えることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。
【請求項14】
前記半導体膜が形成された基板を載置するための基板ステージを備え、該基板ステージが基板の融点を超えない温度で加熱されることを特徴とする請求項3記載のレーザアニール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−159836(P2008−159836A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347055(P2006−347055)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】