説明

レーザアニール装置、レーザアニール方法、及び、ステージ

【課題】 半導体基板面内における不純物の活性化率の均一度を高める。
【解決手段】 レーザビームを出射するレーザ光源と、半導体基板を保持する領域が少なくとも第1の方向とほぼ平行な方向に関して画定され、該領域に保持した半導体基板を第1の方向と平行な方向に移動させる駆動機構を備え、nを3以上の整数とし、半導体基板を保持する領域を、第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、該n個の小領域の温度を調整可能なステージと、レーザ光源を出射したレーザビームを、ステージに保持された半導体基板上に伝搬する伝搬光学系と、n個の小領域のうち、半導体基板の中心が配置される小領域を第1の温度とし、第1の方向と平行な方向に沿って見た場合に、端にある小領域を、第1の温度より低い第2の温度とした状態で、レーザ光源からレーザビームを出射させ、出射されたレーザビームを、半導体基板上において第1の方向と平行な方向に走査させる制御装置とを有するレーザアニール装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを照射して、たとえば半導体基板に添加された不純物を活性化させるレーザアニール装置、レーザアニール方法、及び該レーザアニール装置に使用可能なステージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーデバイスの製造において、半導体基板裏面に添加された不純物の活性化に、レーザビームを用いる方法が注目されている。
【0003】
たとえば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor; IGBT)の製造においては、まず、シリコン基板の表側の表面に、エミッタ、ゲート等の構造を有するデバイスパターンを形成し、保護シートを貼り付けた後、裏面を削って基板を薄くし、裏面に不純物を注入する。シリコン基板の裏面には、フィールドストップ層となるn型不純物、たとえばリン(P)やヒ素(As)、更にコレクタ層となるp型不純物、たとえばホウ素(B)が注入される。その後、シリコン基板の裏面にレーザビームを照射することにより、注入した不純物を活性化する。
【0004】
IGBTの製造において求められるシリコン基板は薄く、たとえば100μm未満の厚さが要求される場合も生じるようになった。表側表面のデバイス特性が熱影響により劣化することを避けながら裏面に注入された不純物を活性化させるため、レーザアニールにおいては、表側表面を比較的低温に維持し、裏面をシリコンの融点前後に加熱する必要がある。このため、パルスレーザビームを用いて活性化アニールを行う際には、波長及びパルス幅の短いレーザビームが使用され、連続波のレーザビームを用いて活性化アニールを行う場合には、レーザビームの高速スキャンが採用される。
【0005】
最近、基板裏面の、より深い位置に添加された不純物の活性化が要望されはじめ、シリコンに対する浸入長が長い長波長レーザの採用や、パルス幅の長いレーザの採用が検討されている。
【0006】
半導体ウエハ等の被処理体の周辺部の温度分布を個別的に制御することが可能な載置台の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載の載置台は、半導体ウエハを加熱する加熱手段として抵抗加熱ヒータ群を備える。抵抗加熱ヒータ群は、同心円状に複数のゾーンに分割配置されている。抵抗加熱ヒータ群を用いて載置台、及び載置台上に載置された半導体ウエハを加熱する。特許文献1記載の載置台によれば、半導体ウエハの面内温度の均一性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−225941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体基板(シリコンウエハ)のレーザアニールの結果を示す指標として、所定深さにおける不純物の活性化率と、ウエハ面内における不純物活性化率の均一度とを挙げることができる。
【0009】
ウエハ面内における不純物活性化率の均一度を高めるために、照射面におけるレーザビームの強度分布を均一化し、トップハット分布とする方法が実施されている。しかしながらレーザビームのプロファイルをトップハット分布とし、ウエハ面内の投入エネルギを位置によらず一定としてレーザ照射を行った場合でも、ウエハ中央部とウエハ周辺部とではデバイス特性に差があり、たとえば中央部は周辺部に比べてデバイス特性が劣るということがわかった。また、中央部と周辺部とではデバイス特性に、シート抵抗値に換算して1%弱の差があるということもわかった。
【0010】
本発明の目的は、半導体基板面内における不純物の活性化率の均一度を高めることのできるレーザアニール装置、レーザアニール方法、及び該レーザアニール装置に使用可能なステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によると、レーザビームを出射するレーザ光源と、半導体基板を保持する領域が少なくとも第1の方向とほぼ平行な方向に関して画定され、該領域に保持した半導体基板を前記第1の方向と平行な方向に移動させる駆動機構を備え、nを3以上の整数とし、前記半導体基板を保持する領域を、前記第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、該n個の小領域の温度を調整可能なステージと、前記レーザ光源を出射したレーザビームを、前記ステージに保持された半導体基板上に伝搬する伝搬光学系と、前記n個の小領域のうち、前記半導体基板の中心が配置される小領域を第1の温度とし、前記第1の方向と平行な方向に沿って見た場合に、端にある小領域を、前記第1の温度より低い第2の温度とした状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、出射されたレーザビームを、前記半導体基板上において前記第1の方向と平行な方向に走査させる制御装置とを有するレーザアニール装置が提供される。
【0012】
また、本発明の他の観点によると、(a)nを3以上の整数とし、半導体基板を第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、前記半導体基板の中心を含む小領域を第1の温度とし、前記半導体基板の端部の小領域を、前記第1の温度より低い第2の温度とした状態で、レーザビームを前記半導体基板上において前記第1の方向と平行な方向に走査する工程と、(b)レーザビームの入射位置を、前記第1の方向と交差する第2の方向にずらず工程と、(c)前記工程(b)の後に前記工程(a)を繰り返す工程とを有するレーザアニール方法が提供される。
【0013】
更に、本発明の他の観点によると、加工対象物を保持する領域が少なくとも第1の方向とほぼ平行な方向に関して画定され、該領域に保持した加工対象物を前記第1の方向と平行な方向に移動させる駆動機構と、nを3以上の整数とし、前記加工対象物を保持する領域を、前記第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、該n個の小領域の温度を調整する温度調整機構とを有するステージが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体基板面内における不純物の活性化率の均一度を高めることのできるレーザアニール装置、レーザアニール方法、及び該レーザアニール装置に使用可能なステージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは、シリコンウエハ上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図であり、図1Bは、レーザビーム照射後のシリコンウエハ面内のシート抵抗値分布を示す概略図であり、図1Cは、シート抵抗値とウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度との関係を示すグラフである。
【図2】図2A及び図2Bは、第1の実施例によるステージ55を示す概略図である。
【図3】図3は、第1の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。
【図4】図4A〜図4Eは、エリア41〜43の境界線とシリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の位置関係について示す概略的な平面図である。
【図5】図5A〜図5Cは、エリア44〜48の境界線とシリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の位置関係について示す概略的な平面図である。
【図6】図6A〜図6Cは、第2の実施例によるステージ95を示す概略図である。
【図7】図7は、第2の実施例によるステージの変形例の特徴部分を示す概略図である。
【図8】図8は、第2の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。
【図9】図9は、シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
レーザビームのプロファイルをトップハット分布とし、ウエハ面内の投入エネルギを位置によらず一定としてレーザ照射を行った場合でも、ウエハ中央部とウエハ周辺部とではデバイス特性に差があり、たとえば中央部は周辺部に比べてデバイス特性が劣るという点、及び、中央部と周辺部とではデバイス特性に、シート抵抗値に換算して1%弱の差があるという点に関し、本願発明者は、二つの調査を行った。
【0017】
まず、通常のレーザアニールにおけるレーザ強度より強い強度でレーザビームを照射し、デバイスダメージの発生分布を調べた(第1の調査)。一定の強度のレーザビームを半導体ウエハ上にスキャンしたところ、ウエハ周辺部のデバイスは中央部のデバイスに比べ、熱ダメージを受けた。このことからレーザアニール時、シリコンウエハの表側の表面において、周辺部は中央部より温度が高くなっていることがわかった。
【0018】
次に、本願発明者は、レーザアニール後のシート抵抗値のウエハ面内分布、及び、シート抵抗値とウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度との関係を調べた(第2の調査)。
【0019】
図1Aは、シリコンウエハ上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図である。ホウ素(B)を45keVのエネルギ、1.0E+15/cmのドーズ量でイオン注入した、たとえば直径6インチの円形のシリコンウエハをアニール対象として準備し、入射領域がX軸方向に2.5mm、Y軸方向に0.3mmの矩形状となるように整形され、その入射領域においてパワー密度を均一化したレーザパルスを、本図に示す態様でスキャンしながら、シリコンウエハ上に照射した。シリコンウエハの右端(X軸正方向端部)からレーザ照射を開始し、スキャン方向をY軸方向、ステップ方向をX軸負方向として、シリコンウエハにレーザビームを照射した。すなわちレーザビームをスキャン方向に走査し、走査した方向(たとえばY軸正方向)のウエハ端部までレーザビームを照射したら、ステップ方向にビームの入射位置をずらした後、再びレーザビームをスキャン方向(たとえばY軸負方向)に沿って、他方のウエハ端部まで走査し、走査し終えたらステップ方向にビームの入射位置をずらす。これを繰り返して、シリコンウエハ全面にレーザビームを入射させる。なお、X軸方向、Y軸方向へのレーザビームの重複率は、たとえばともに80%である。
【0020】
図1Bは、レーザビーム照射後のシリコンウエハ面内のシート抵抗値分布を示す概略図である。シート抵抗値の変化率の絶対値は、Y軸方向(スキャン方向に平行な方向)に大きくX軸方向(ステップ方向に平行な方向)に小さい。また、シリコンウエハの中心を基準として、Y軸方向に離れるにつれ、シート抵抗値は低くなる。このため、シリコンウエハの中心を基準としたとき、Y軸正方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸正方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も低いシート抵抗値を示し、Y軸負方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸負方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も低いシート抵抗値を示す。
【0021】
図1Cは、シート抵抗値とウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、ウエハ上に照射されるレーザビームのパワー密度を単位「kW/cm」で表し、グラフの縦軸は、シート抵抗値を単位「kΩ/□」で表す。本グラフに示す結果を得るための実験においては、ホウ素(B)を40keVのエネルギ、1.0E+13/cmのドーズ量でイオン注入したシリコンウエハをアニール対象とした。
【0022】
本図に示す結果から、レーザビームのパワー密度が大きいほどシート抵抗値は低くなることがわかる。すなわちシリコンウエハの温度とシート抵抗値との間には相関関係があり、シリコンウエハの温度が高いほどシート抵抗値は低くなる。
【0023】
図1B及び図1Cに示す結果から、ウエハ温度の変化率の絶対値は、Y軸方向に大きくX軸方向に小さい、また、シリコンウエハの中心を基準として、Y軸方向に離れるにつれ、ウエハ温度は高くなる、このため、シリコンウエハの中心を基準としたとき、Y軸正方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸正方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も高い温度を示し、Y軸負方向側においては、シリコンウエハの中心からY軸負方向にのびる半径方向の端部を含むウエハ上の周辺領域が最も高い温度を示す、ということがわかる。これは、デバイスの受けた熱ダメージから得られた、ウエハの周辺部は中央部より温度が高いという第1の調査結果と比較した場合、全体として符合する、より詳細な調査結果である。また、この調査結果によれば、ウエハ中央部とウエハ周辺部とではデバイス特性に差があり、たとえば中央部は周辺部に比べてデバイス特性が劣るという事実を説明可能である。
【0024】
なお、シリコンウエハの温度が高いほどシート抵抗値は低くなるという関係から、デバイス特性の分布の一時評価が、シート抵抗値の分布で可能であることもわかる。
【0025】
本願発明者は、レーザビームのプロファイルをトップハット分布とし、ウエハ面内の投入エネルギを位置によらず一定としてレーザ照射を行った場合でも、たとえば1ショットのレーザパルスの入射領域がシリコンウエハに対して小さいことが一因となって、ウエハ面内に不均一な温度分布及び不純物活性化率の分布が生じ、その分布に対応したデバイス特性の不揃いが発生する、と考えた。
【0026】
図2A及び図2Bは、第1の実施例によるステージ55を示す概略図である。図2Aに示すように、第1の実施例によるステージ55は、ベース10上に、X軸方向に沿って移動可能に保持されたXステージ11、Xステージ11上に、Y軸方向に沿って移動可能に保持されたYステージ12、及び、Yステージ12上に保持されたチャックプレート13を含む。
【0027】
Xステージ11には、たとえばモータ、ボールスクリュー、及びベアリングを含む駆動機構14cが設けられている。また、ベース10とXステージ11との間には、ガイド14a、14bが設置されている。Xステージ11は、駆動機構14cにより、ガイド14a、14bに沿ってX軸方向に移動可能である。
【0028】
同様に、Yステージ12には、たとえばモータ、ボールスクリュー、及びベアリングを含む駆動機構15cが設けられている。また、Xステージ11とYステージ12との間には、ガイド15a、15bが設置されている。Yステージ12は、駆動機構15cにより、ガイド15a、15bに沿ってY軸方向に移動可能である。
【0029】
チャックプレート13は、加工対象物、たとえば半導体基板(シリコンウエハ)を吸着して保持することができる。
【0030】
図2Bに、チャックプレート13の平面図を示す。チャックプレート13上には、円形のシリコンウエハを載置する位置(ウエハ載置位置20)が画定されている。ウエハ載置位置20は、たとえば円形である。なお、ウエハを載置するチャックプレート上の位置は、少なくともY方向に関して画定されていればよい。ここで厳密にY方向でなくても、多少のずれはあってもよく、ほぼY方向に関して画定されていればよい。
【0031】
チャックプレート13(ウエハ載置位置20)上の領域は、Y軸方向に沿って3分割されている。本図においては、3分割された領域をエリア41〜43と表した。ウエハ載置位置20の中心位置(ウエハ載置位置20に円形のシリコンウエハを載置したとき、シリコンウエハの中心が配置される位置)は、Y軸方向に関して端のエリア41、43には属さず、Y軸方向に関して中央のエリアであるエリア42に属する。
【0032】
エリア41〜43の各々には、冷媒、たとえば水を流通させることのできる、温度調整機構としての配管21〜23が配設されている。各チラー31〜33からの配管31a〜33aが、チャックプレート13の配管21〜23に接続可能である。チラー31〜33は、チャックプレート13の配管21〜23に、それぞれ一定温度に管理された水を流通させることができる。たとえばチラー31、33は、17℃に維持された水を配管21、23に流通させる。チラー32は、20℃に維持された水を配管22に流通させる。17℃の水が、配管21、23に流通されたエリア41、43のチャックプレート13温度は17℃(一定温度)に保たれる。20℃の水が、配管22に流通されたエリア42のチャックプレート13温度は20℃(一定温度)に保たれる。このように、第1の実施例によるステージは、チャックプレート13(半導体基板保持面)の温度をエリア41〜43ごとに調整することができる。なお、チャックプレート13の温度は、エリア42を最も高くする。
【0033】
図3は、第1の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。図2A及び図2Bに詳細を示したステージ55上(ウエハ載置位置20)に、アニール対象物であるシリコンウエハ60が保持されている。シリコンウエハ60は、たとえばIGBT製造の一工程に現れる半導体基板であり、表側の表面にはデバイスパターンが形成され、裏面からボロン(B)等の不純物が添加されている。シリコンウエハ60は、たとえば直径が6インチ〜8インチの円形状、厚さは約100μmである。第1の実施例によるレーザアニール装置を用いて、シリコンウエハ60の裏側表面にレーザビームを照射することにより、添加された不純物を活性化する。
【0034】
第1の実施例によるレーザアニール装置は、ステージ55のほか、たとえばパルスレーザビームを出射するレーザ光源50と、レーザ光源50を出射したレーザビームをステージ55上に保持されたシリコンウエハ60上に伝搬する伝搬光学系を含む。レーザ光源50は、たとえばNd:YAGレーザ発振器及び非線形光学結晶を含み、Nd:YAGレーザの2倍高調波(波長532nm)を3kHzの繰り返し周波数で出射する。Nd:YAGレーザに限らず、Nd:YLFレーザ、Nd:YVOレーザ等の固体レーザの2倍高調波(緑色の波長領域の光)を用いてもよい。また、たとえば波長800nm〜1000nm、一例として808nmの半導体レーザを使用することもできる。
【0035】
伝搬光学系は、入射したレーザビームのエネルギを減衰率可変に減衰して出射するアッテネータ51、レーザ照射面(シリコンウエハ60の裏側表面)におけるレーザビームの入射領域を矩形状に整形するとともに、入射領域におけるレーザビームの強度分布を均一化する、たとえばホモジナイザであるビーム整形光学系52、折り返しミラー53、及びフォーカスレンズ54を含む。
【0036】
レーザ光源50を出射したパルスレーザビームは、アッテネータ51により所定の減衰率でエネルギを減衰された後、ビーム整形光学系52、折り返しミラー53、フォーカスレンズ54を経由して、シリコンウエハ60上に伝搬される。シリコンウエハ60上におけるレーザビームの入射領域は、たとえばX軸方向に2.5mm、Y軸方向に0.3mmの矩形状である。また、シリコンウエハ60上に照射されるレーザビームのパルスエネルギ密度は2J/cmである。
【0037】
第1の実施例によるレーザアニール装置は、また、制御装置56を含む。制御装置56は、レーザ光源50に電流信号を与えることで、レーザ光源50からのレーザビームの出射を制御する。与える電流の大きさで出射するレーザビームのエネルギも制御することができる。また、アッテネータ51の減衰率を変化させることが可能である。また、ステージ55を制御する。ステージ55によるシリコンウエハ60の吸着保持、保持されたシリコンウエハ60のX軸方向、Y軸方向への移動、チャックプレート13のエリア41〜43の温度制御等を行う。
【0038】
制御装置56は、エリア41、43のチャックプレート13温度を17℃、エリア42のチャックプレート13温度を20℃に保った状態で、レーザ光源50に信号を印加してパルスレーザビームを出射させ、ウエハ載置位置20に載置されたシリコンウエハ60の裏側表面上にレーザビームを入射させる。レーザアニール時において、シリコンウエハ60の表側表面は、エリア41、43に載置された部分は17℃、エリア42に載置された部分は20℃に冷却される。シリコンウエハ60上におけるレーザビームのスキャン態様は図1Aに示す通りである。
【0039】
制御装置56でステージ55を制御し、レーザビームを照射しながら、シリコンウエハ60の裏側表面における矩形状ビーム断面の短軸方向(Y軸方向)にシリコンウエハ60を移動させることにより、ビーム断面の長軸方向(X軸方向)の長さを幅とする帯状の領域をアニールすることができる。シリコンウエハ60を、ビーム断面の長軸方向にずらして帯状の領域をアニールする処理を繰り返すことにより、シリコンウエハ60の全面をアニールする。長軸方向、短軸方向へのレーザビームの重複率は、たとえばともに80%である。なお、ずらす方向はビーム断面の短軸方向と交差する方向であればよい。
【0040】
第1の実施例によるレーザアニール装置を用いると、レーザアニール時に温度が相対的に高くなるシリコンウエハ60上の周辺領域(エリア41、43に載置された部分)を相対的に低い温度、たとえば17℃に冷却し、温度が相対的に低いシリコンウエハ60上の中央領域(エリア42に載置された部分)を相対的に高い温度、たとえば20℃に冷却しながら、レーザアニールを行うことができる。このため、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率及びデバイス特性の均一度を高めることができる。
【0041】
第1の実施例においては、エリア41、43(17℃)とエリア42(20℃)とで3℃の温度差を設けた。ここで温度差について考察する。室温でレーザアニールを行う場合、ステージ温度が室温である一方で、レーザ照射面であるシリコンウエハ60の裏側表面の温度は1000℃を超える。そこでシリコンウエハ60の表裏面の温度差をおおまかに1000℃と考える。また、シリコンウエハ60上の位置によって冷却温度(冷却能力)に差を設けずにアニールを行った場合、先に述べたように、中央部と周辺部とではデバイス特性に、シート抵抗値に換算して1%弱の差があるということもわかっている。このことから中央部と周辺部とでは、シリコンウエハ60表裏面の温度差が1000℃の1%、すなわち10℃程度、生じていると考えられる。したがって、エリア41、43とエリア42との間の温度差は10℃以上とすればよいであろう。また温度差を3℃以上としても、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度を高めることができるであろう。
【0042】
次に、エリア41〜43の境界線について説明する。図4A〜図4Eは、エリア41〜43の境界線とシリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の位置関係について示す概略的な平面図である。
【0043】
図4Aには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、(シリコンウエハ60の中心を通り、Y軸に平行な直線に沿ってみたとき、)シリコンウエハ60のY軸正方向側の40%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む20%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の40%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。このようにエリア41〜43を画定し、エリア41、43は相対的に低い温度に、エリア42は相対的に高い温度に冷却維持しても、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度を高めることができる。エリア41、43とエリア42との間の温度差は、たとえば3℃以上である。
【0044】
図4B、図4C、図4Dには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、それぞれシリコンウエハ60のY軸正方向側の33%、25%、15%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む33%、50%、70%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の33%、25%、15%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。このようにエリア41〜43を画定し、エリア42は相対的に高い温度に冷却維持し、エリア41、43はそれより3℃以上低い温度に冷却維持しても、シリコンウエハ60面内における不純物の活性化率の均一度を高めることができる。
【0045】
図4A〜図4Dに示すように、エリア42は、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む20%〜70%の領域がエリア42に属するように画定されればよい。
【0046】
図4Eには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60のY軸正方向側の15%の領域がエリア41に属し、シリコンウエハ60の中心を含む60%の領域がエリア42に属し、シリコンウエハ60のY軸負方向側の25%の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を定める例を示した。このようにエリア41とエリア43に属するシリコンウエハ60の割合は、等しくなくてもよい。ただし実施例のように、ウエハ載置位置20を、エリア41〜43の3つの領域に分割する場合、シリコンウエハ60のY軸正方向側の15%以上の領域がエリア41に属し、かつ、シリコンウエハ60のY軸負方向側の15%以上の領域がエリア43に属するように、エリア41〜43の境界線を画定する。
【0047】
ウエハ載置位置20を、3を超える数の領域に分割することもできる。図5A〜図5Cは、エリア44〜48の境界線とシリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の位置関係について示す概略的な平面図である。
【0048】
図5A及び図5Bに示すように、ウエハ載置位置20を、5つの領域に分割することも可能である。
【0049】
図5Aには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)の5%の領域がエリア44に属し、それに隣接する10%の領域がエリア45に属し、シリコンウエハ60の中心を含む70%の領域がエリア46に属し、Y軸負方向側でそれと隣接する10%の領域がエリア47に属し、シリコンウエハ60の最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)の5%の領域がエリア48に属するように、エリア44〜48の境界線を定める例を示した。
【0050】
このように5つの領域に分割するとき、たとえばステージ55のチャックプレート13は、各エリア44〜48に温度調節機構、一例として各エリア44〜48に独立して設けられる配管を備え、チラーを用いて各配管に一定温度の水を流通させることで、エリア44は17℃、エリア45は18.5℃、エリア46は20℃、エリア47は18.5℃、エリア48は17℃となるように、ステージ55のチャックプレート13(基板保持面)の温度を調整する。
【0051】
図5Bには、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60のそれぞれ20%の領域がエリア44〜48に属するように、エリア44〜48の境界線を定める例を示した。各エリア44〜48のチャックプレート13温度は、たとえば図5Aに示す境界線画定態様の場合と等しい。
【0052】
図5Aには、シリコンウエハ60の中心を含む70%の領域がエリア46に属する例を示し、図5Bには、シリコンウエハ60の中心を含む20%の領域がエリア46に属する例を示した。ウエハ載置位置20を、3を超える数の領域に分割する場合も、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む領域を、シリコンウエハ60全体の20%〜70%とする。
【0053】
また、ウエハ載置位置20を、3を超える数の領域に分割する場合、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の中心位置を基準として、Y軸方向側に離れているエリアの温度を、中心位置を含む、または中心位置に近いエリアの温度以下の温度とする。更に、実施例と同様に、シリコンウエハ60の中心が属するエリア46と、最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)のエリア44との温度差を、3℃以上とする。10℃以上としてもよい。エリア46と、最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)のエリア48との温度差についても同様である。
【0054】
図5Cには、ウエハ載置位置20を、4つの領域に分割する例を示した。本図に示す例においては、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の最もY軸正方向側(Y軸正方向側の端部)の15%の領域がエリア44に属し、それに隣接する35%の領域がエリア45に属し、更にそれにY軸負方向側で隣接する35%の領域がエリア46に属し、シリコンウエハ60の最もY軸負方向側(Y軸負方向側の端部)の15%の領域がエリア47に属するように、エリア44〜47の境界線を定める例を示した。
【0055】
シリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の中心位置Cは、エリア45とエリア46の境界線上にあるが、このような場合は、中心位置Cは、エリア45、エリア46の双方に属するものと考える。
【0056】
図5Cに示すように、ウエハ載置位置20を、エリア44〜47の4つの領域に分割するとき、たとえばステージ55のチャックプレート13は、各エリア44〜47に独立して設けられる配管を備え、チラーを用いて各配管に一定温度の水を流通させることで、エリア44は17℃、エリア45及びエリア46は20℃、エリア47は17℃となるように、ステージ55のチャックプレート13の温度を調整する。
【0057】
ウエハ載置位置20を、たとえば偶数の領域に分割し、ウエハ載置位置20の中心位置Cが二つの領域の境界線上にある(中心位置Cはその二つの領域に属する)場合も、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60の中心を含む領域(図5Cにおいてはエリア45及び46)の合計を、20%〜70%とする。
【0058】
また、Y軸に平行な直径方向についてみたとき、シリコンウエハ60(ウエハ載置位置20)の中心位置を基準として、Y軸方向側に離れているエリアの温度を、中心位置を含む、または中心位置に近いエリアの温度以下の温度とする。更に、シリコンウエハ60の中心が属するエリア45、46と、最もY軸方向側(Y軸方向側の端部)のエリア44、47との温度差を、3℃以上とする。10℃以上としてもよい。
【0059】
分割エリア数を多くし、各エリアでチャックプレート13の温度を調整することで、シリコンウエハ60の温度を細かく制御し、より均一度を高めることができる。
【0060】
図6A〜図6Cは、第2の実施例によるステージ95を示す概略図である。図6Aに示すように、第2の実施例によるステージ95は、ベース70、θステージ72、チャックプレート73、及び、駆動機構71を含む。θステージ72はベース70上に、また、チャックプレート73はθステージ72上に、それぞれたとえば水平面(XY平面)に平行に配置される。駆動機構71は、たとえばモータ及びベアリングを含み、θステージ72及びその上に固定的に配置されたチャックプレート73を、Z軸に平行な回転軸lの周囲に回転させる。回転方向は、たとえばθステージ72をZ軸正方向から見たとき、反時計回りである。チャックプレート73は、シリコンウエハを吸着して保持することができる。
【0061】
図6Bに、チャックプレート73の平面図を示す。チャックプレート73は、Z軸正方向から見たとき、たとえば円形状である。円の中心は、θステージ72の回転軸l上にある。チャックプレート73上には、円形のシリコンウエハを載置する位置(ウエハ載置位置73a〜73f)が画定されている。ウエハ載置位置73a〜73fはたとえば円形であり、各載置位置73a〜73fにシリコンウエハ60a〜60fが載置される。各載置位置73a〜73fの中心位置は、チャックプレート73の中心から等距離にあり、各載置位置73a〜73fの中心を結ぶと正六角形が形成される。なお、ウエハを載置するチャックプレート73上の位置は、少なくともチャックプレート73の円周方向と平行な方向(θステージ72及びチャックプレート73の回転方向と平行な方向)に関して画定されていればよい。ここで厳密に円周方向と平行な方向でなくても、多少のずれはあってもよく、ほぼ円周方向と平行な方向に関して画定されていればよい。
【0062】
ウエハ載置位置73a〜73f上の領域は、それぞれ、θステージ72及びチャックプレート73の回転方向と平行な方向に直交する一方向、本図に示す例では、チャックプレート73の中心と、ウエハ載置位置73a〜73fの中心を結ぶ直線の延在方向(回転半径方向)と直交する方向に沿って、3つの領域(エリア77〜79)に分けられている。ウエハ載置位置73a〜73fの中心位置(ウエハ載置位置73a〜73fに円形のシリコンウエハを載置したとき、シリコンウエハの中心が配置される位置)は、回転方向と平行な方向に直交する一方向と直交する方向に関して端のエリア77、79には属さず、中央のエリアであるエリア78に属する。なお、ウエハ載置位置73a〜73f上の領域は、回転方向と平行な方向に沿って見た場合に、3つの領域(エリア77〜79)に分けられるような態様で境界線が画定されている。本図に示すエリア77〜79の画定態様は、そのようなエリア画定態様の一例である。
【0063】
図6Cに、ウエハ載置位置73a近傍の詳細を示す。エリア77〜79の各々には、冷媒、たとえば水を流通させることのできる配管74〜76が配設されている。各チラー80〜82が、配管74〜76に接続されている。チラー80〜82は、たとえば回転軸lの近傍に配置され、θステージ72及びチャックプレート73の回転とともに回転する。
【0064】
チラー80〜82は、配管74〜76に、それぞれ一定温度の水を流通させることができる。たとえばチラー80、82は、17℃に維持された水を配管74、76に流通させる。チラー81は、20℃に維持された水を配管75に流通させる。17℃の水が、配管74、76に流通されたエリア77、79のチャックプレート73温度は17℃に保たれる。20℃の水が、配管75に流通されたエリア78のチャックプレート73温度は20℃に保たれる。このように、第2の実施例によるステージも、第1の実施例と同様に、チャックプレート73の温度をエリア77〜79ごとに調整することができる。なお、チャックプレート73の温度は、エリア78を最も高くする。本図には、ウエハ載置位置73a近傍の詳細を示したが、他のウエハ載置位置73b〜73fについても同様である。
【0065】
図7は、第2の実施例によるステージの変形例の特徴部分を示す概略図である。変形例は、エリア77〜79の画定態様が、実施例とは異なる。第2の実施例においては、θステージ72及びチャックプレート73の回転方向と平行な方向に直交する一方向と直交する方向に沿ってエリア77〜79を画定したが、変形例においては、回転方向と平行な方向に沿って、エリア77〜79が画定される。各エリア77〜79に配管74〜76が設けられる点等は、第2の実施例と等しい。
【0066】
図8は、第2の実施例によるレーザアニール装置を示す概略図である。図6A〜図6Cに詳細を示したステージ95上のウエハ載置位置73a〜73fに、シリコンウエハ60a〜60fが保持されている。シリコンウエハ60a〜60fは、第1の実施例におけるシリコンウエハ60と同様のアニール対象物である。
【0067】
第2の実施例によるレーザアニール装置は、ステージ95のほか、たとえばNd:YAGレーザの2倍高調波を出射するレーザ光源89と、レーザ光源89を出射したレーザビームをステージ95上に保持されたシリコンウエハ60a〜60f上に伝搬する伝搬光学系を含む。
【0068】
第1の実施例によるレーザアニール装置と同様に、伝搬光学系は、アッテネータ90、ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、及びフォーカスレンズ93を備える。ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、及びフォーカスレンズ93は、鏡筒94の内部に固定的に配置されている。
【0069】
第2の実施例によるレーザアニール装置は、更に、支柱85、ベース86、Yステージ88、ガイド87a、87b、及び、駆動機構87cを含む。
【0070】
ベース86は、支柱85によって一定高さに支持される。ベース86上に、Y軸方向に沿って移動可能にYステージ88が保持される。Yステージ88には、たとえばモータ、ボールスクリュー、及びベアリングを含む駆動機構87cが設けられている。また、ベース86とYステージ88との間には、ガイド87a、87bが設置されている。Yステージ88は、駆動機構87cにより、ガイド87a、87bに沿ってY軸方向に移動可能である。
【0071】
Yステージ88上に、レーザ光源89及び伝搬光学系が配置されている。なお、鏡筒94がYステージ88とともに移動可能であればよく、レーザ光源89及びアッテネータ90は、Yステージ88上に配置されなくてもよい。
【0072】
レーザ光源89から3kHzの繰り返し周波数で、パルスレーザビームが出射される。パルスレーザビームは、アッテネータ90、ビーム整形光学系91、折り返しミラー92、フォーカスレンズ93を経由して、ウエハ載置位置73a〜73fに載置され、θステージ72によって回転軸lの周囲に回転されているシリコンウエハ60a〜60f上に伝搬される。シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームの入射領域は、たとえば回転半径方向に2.5mm、回転円周方向に0.3mmの矩形状である。また、シリコンウエハ60a〜60f上におけるパルスエネルギ密度は、一例として2J/cmである。
【0073】
第2の実施例によるレーザアニール装置は、また、制御装置96を含む。制御装置96は、レーザ光源89からのレーザビームの出射、アッテネータ90の減衰率を制御する。更に、チャックプレート73によるシリコンウエハ60a〜60fの吸着保持、θステージ72による、シリコンウエハ60a〜60fの回転方向への移動、チャックプレート73のエリア77〜79の温度制御等を行う。また、Yステージ88による鏡筒94の移動を制御する。
【0074】
制御装置96は、エリア77、79のチャックプレート73温度を17℃、エリア78のチャックプレート73温度を20℃に保った状態で、レーザ光源89に信号を印加してパルスレーザビームを出射させ、ウエハ載置位置73a〜73fに載置されたシリコンウエハ60a〜60fにレーザビームを入射させる。レーザアニール時において、シリコンウエハ60a〜60fのステージに載置される面は、エリア77、79に載置される部分は17℃、エリア78に載置される部分は20℃に冷却される。
【0075】
制御装置96は、θステージ72でシリコンウエハ60a〜60fを、回転軸lの周囲に回転させることで、レーザビームの入射位置を回転方向と平行な方向に沿って移動させる。レーザビームは、シリコンウエハ60a〜60f上を、回転方向と反対方向に走査することになる。
【0076】
図9は、シリコンウエハ60a〜60f上におけるレーザビームのスキャン態様を示す概略図である。レーザビームは、たとえばまずチャックプレート73の中心から最も遠い位置のシリコンウエハ60a〜60fの端部領域に照射される。本図にはレーザアニール開始時のレーザビームの入射領域にLの符号を付して示した。θステージ72で、シリコンウエハ60a〜60fを保持したチャックプレート73を回転軸lの周囲に1回転することにより、シリコンウエハ60a〜60fの各々の、チャックプレート73の中心から最も遠い端部について、ビーム断面の長軸方向(回転半径方向)の長さを幅とする帯状の領域を、回転円周方向に沿ってアニールすることができる。レーザパルスの重複率は、たとえば回転円周方向に80%である。
【0077】
なお、回転に伴って、レーザビーム入射領域Lの位置に、シリコンウエハ60a〜60f以外のチャックプレート73上の位置が配置されるときには、制御装置96は、レーザ光源89に印加する信号を停止し、レーザ光源89からのレーザビームの出射を停止させる。
【0078】
制御装置96は、θステージ72でシリコンウエハ60a〜60fを、回転軸lの周囲に1回転させた後、Yステージ88をY軸正方向(ビーム断面の長軸方向)に、たとえば0.5mm移動させる。鏡筒94がY軸正方向に0.5mm移動し、レーザビーム入射領域LもY軸正方向に0.5mm移動する。レーザビームを照射しながら、シリコンウエハ60a〜60fを回転軸lの周囲に1回転させた後、レーザビーム入射領域Lを回転半径の内側方向に移動させる処理を繰り返すことにより、シリコンウエハ60a〜60fの各々の全面をアニールする。
【0079】
第2の実施例によるレーザアニール装置を用いても、第1の実施例と同様に、シリコンウエハ60a〜60f面内における不純物の活性化率及びデバイス特性の均一度を高めることができる。なお、エリア間の温度差や、エリアの分割数、エリアの境界線画定位置等については、第1の実施例の場合と同様である。
【0080】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0081】
たとえば、実施例においては、各エリアに配管を独立に設けた。一例として、図2Bに示す例においては、エリア41には配管21、エリア43には配管23を設置した。両エリア41、43を等しい温度に維持するのであれば、エリア41、43に連続する配管を配置してもよい。その場合、これに接続するチラーも1つでよい。
【0082】
また、実施例においては、温度調整機構としての配管を備えるが、温度調整機構は、たとえば電力を供給することで温度を調整する他の機構とすることができる。
【0083】
更に、実施例においては、パルスレーザビームを用いて、シリコンウエハに添加された不純物を活性化させるレーザアニールを行ったが、連続波のレーザビームを使用することもできる。
【0084】
また、実施例においては、Nd:YAGレーザの2倍高調波を、繰り返し周波数3kHzで出射し、2J/cmのパルスエネルギ密度で、かつ、走査方向、ステップ方向ともに80%の重複率でシリコンウエハに入射させたが、波長808nmの半導体レーザを用い、繰り返し周波数1kHz、パルスエネルギ密度4J/cm、重複率50%としてシリコンウエハに照射してもよい。なお、固体レーザの2倍高調波を用いる場合も、半導体レーザを用いる場合も、重複率は、走査方向、ステップ方向ともに50%以上あればよい。
【0085】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0086】
10 ベース
11 Xステージ
12 Yステージ
13 チャックプレート
14a、14b、15a、15b ガイド
14c、15c 駆動機構
20 ウエハ載置位置
21〜23 配管
31〜33 チラー
31a〜33a 配管
41〜48 エリア
50 レーザ光源
51 アッテネータ
52 ビーム整形光学系
53 折り返しミラー
54 フォーカスレンズ
55 ステージ
56 制御装置
60、60a〜60f シリコンウエハ
70 ベース
71 駆動機構
72 θステージ
73 チャックプレート
74〜76 配管
77〜79 エリア
80〜82 チラー
85 支柱
86 ベース
87a、87b ガイド
87c 駆動機構
88 Yステージ
89 レーザ光源
90 アッテネータ
91 ビーム整形光学系
92 折り返しミラー
93 フォーカスレンズ
94 鏡筒
95 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ光源と、
半導体基板を保持する領域が少なくとも第1の方向とほぼ平行な方向に関して画定され、該領域に保持した半導体基板を前記第1の方向と平行な方向に移動させる駆動機構を備え、nを3以上の整数とし、前記半導体基板を保持する領域を、前記第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、該n個の小領域の温度を調整可能なステージと、
前記レーザ光源を出射したレーザビームを、前記ステージに保持された半導体基板上に伝搬する伝搬光学系と、
前記n個の小領域のうち、前記半導体基板の中心が配置される小領域を第1の温度とし、前記第1の方向と平行な方向に沿って見た場合に、端にある小領域を、前記第1の温度より低い第2の温度とした状態で、前記レーザ光源からレーザビームを出射させ、出射されたレーザビームを、前記半導体基板上において前記第1の方向と平行な方向に走査させる制御装置と
を有するレーザアニール装置。
【請求項2】
前記第1の温度と前記第2の温度の差を3℃以上とする請求項1に記載のレーザアニール装置。
【請求項3】
前記半導体基板の中心が配置される位置を通り、前記第1の方向と平行な直線に沿ってみたとき、前記半導体基板の中心が配置される小領域を、前記半導体基板の20%〜70%とする請求項1または2に記載のレーザアニール装置。
【請求項4】
前記第1の方向が回転円周方向である請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
(a)nを3以上の整数とし、半導体基板を第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、前記半導体基板の中心を含む小領域を第1の温度とし、前記半導体基板の端部の小領域を、前記第1の温度より低い第2の温度とした状態で、レーザビームを前記半導体基板上において前記第1の方向と平行な方向に走査する工程と、
(b)レーザビームの入射位置を、前記第1の方向と交差する第2の方向にずらず工程と、
(c)前記工程(b)の後に前記工程(a)を繰り返す工程と
を有するレーザアニール方法。
【請求項6】
前記第1の温度と前記第2の温度の差を3℃以上とする請求項5に記載のレーザアニール方法。
【請求項7】
前記半導体基板の中心を通り、前記第1の方向と平行な直線に沿ってみたとき、前記半導体基板の中心を含む前記半導体基板の20%〜70%の領域を前記第1の温度とし、前記半導体基板の残余の領域は前記第1の温度以下の温度とする請求項5または6に記載のレーザアニール方法。
【請求項8】
前記第1の方向が回転円周方向である請求項5〜7のいずれか1項に記載のレーザアニール方法。
【請求項9】
加工対象物を保持する領域が少なくとも第1の方向とほぼ平行な方向に関して画定され、
該領域に保持した加工対象物を前記第1の方向と平行な方向に移動させる駆動機構と、
nを3以上の整数とし、前記加工対象物を保持する領域を、前記第1の方向に沿って見た場合に、n個の小領域に分けるとき、該n個の小領域の温度を調整する温度調整機構と
を有するステージ。
【請求項10】
前記第1の方向が回転円周方向である請求項9に記載のステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74246(P2013−74246A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214337(P2011−214337)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】