説明

レーザガス分析装置

【課題】多成分混合ガスの濃度を統計的手法によらない面積法を用いて比較的簡単に測定できるレーザガス分析装置を実現すること。
【解決手段】広い波長可変幅を有する波長可変レーザと、前記波長可変レーザの出力光を測定光と参照光に分岐する光分岐手段と、被測定ガスが導入され前記測定光が入射される測定用ガスセルと、前記参照光に関連した参照信号と前記測定用ガスセルの出力光に関連した吸収信号に基づいて前記被測定ガスの各成分単独の吸収スペクトルを求め、各成分の濃度を求めるデータ処理部、とで構成されたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザガス分析装置に関し、詳しくは、炭化水素多成分混合ガスの測定が効率よく行えるレーザガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy;波長可変半導体レーザ吸収分光)法を用いたレーザガス分析計は、測定対象に波長可変半導体レーザからの光を照射するだけで、高温や腐食性ガスなどの測定対象成分の濃度でも、他の成分の干渉を受けることなく成分選択性が高く、非接触で、高速にリアルタイムで測定できるという利点がある。
【0003】
図19はTDLAS法を用いた従来のレーザガス分析装置の一例を示すブロック図であり、測定ガス雰囲気中に向けて測定用レーザ光を照射する半導体レーザを含む光源ユニットと、測定ガス雰囲気の測定空間を透過した測定用レーザ光を検出する受光素子およびこの受光素子の出力信号を処理する演算処理部を含む検出ユニットとで構成されている。
【0004】
図19に示すレーザガス分析装置は、赤外から近赤外領域に存在する測定対象成分分子の振動・回転エネルギー遷移による分子固有の光吸収スペクトルを、極めて発振波長スペクトル線幅の狭い半導体レーザを用いて測定する。O2、NH3、H2O、CO、CO2など大半の分子の分子特有の吸収スペクトルは赤外〜近赤外領域であり、特定波長における光吸収量(吸光度)を測定することで対象成分の濃度を算出できる。
【0005】
図19において、光源ユニット10に設けられている半導体レーザ11は、測定用レーザ光を測定ガス20の雰囲気中に照射出力する。この半導体レーザ11が出力するレーザ光は、発振波長スペクトル線幅が極めて狭く、レーザ温度や駆動電流を変えることで発振波長を変更できるので、吸収スペクトルの各吸収ピークの1本のみを測定できる。
【0006】
したがって、干渉ガスの影響を受けない吸収ピークを選定することができ、波長選択性が高く、他干渉成分の影響を受けることがないため、測定の前段階における干渉ガスを除去することなくプロセスガスを直接測定できる。
【0007】
半導体レーザ11の発振波長を測定成分の1本の吸収線の近傍でスキャンすることにより、干渉成分と重ならない正確なスペクトルの測定が行えるが、そのスペクトル形状は、測定ガス温度、測定ガス圧力、共存ガス成分などによるスペクトルのブロードニング(Broadening)現象により変化する。このため、これらの環境変動を伴う実プロセス測定では、その補正が必要になる。
【0008】
そこで、図19の装置では、半導体レーザ11の発振波長をスキャンして吸収スペクトルを測定することによりスペクトル面積を求め、そのスペクトル面積から成分濃度に変換するスペクトル面積法を用いている。
【0009】
他のレーザガス分析装置では、吸収スペクトルのピーク高さから測定成分を求めるピーク高さ法や波長スキャン信号を変調してその周波数の2倍周波数変調波形のP−P(ピーク・ツー・ピーク)値から測定成分の濃度を求める2f法が使われているが、これらは、温度、圧力、共存ガス成分の変動などにより大きな影響を受けやすい。
【0010】
これに対し、スペクトル面積は原理的に共存ガス成分の違いによる変化の影響を受けることはなく(スペクトルの面積は共存ガス成分によらずほとんど一定)、圧力変動に対してもスペクトル面積は原理的に線形変化を示す。
【0011】
ピーク高さ法や2f法では、上記3変動要因(温度、圧力、共存ガス成分)が全て非線形に影響し、これら変動要因が共存する場合は補正が困難であるが、スペクトル面積法によれば、ガス圧力変動に対する線形補正とガス温度変動に対する非線形補正を行うことができ、正確な補正を実現できる。
【0012】
測定ガス20の雰囲気中を通過した測定用レーザ光は検出ユニット30に設けられている受光素子31で受光され、電気信号に変換される。
【0013】
受光素子31の出力信号はゲイン可変のアンプ32を介して適切な振幅レベルに調整されてA/D変換器33に入力され、デジタル信号に変換される。
【0014】
A/D変換器33の出力データについて、半導体レーザ11の波長のスキャンに同期して、積算器34とメモリ35との間で所定回数(たとえば数百〜数千回)の積算とメモリ35への格納が繰り返されて測定信号に含まれるノイズが除去されてデータが平滑化された後、CPU36に入力される。
【0015】
CPU36は、ノイズが除去された測定信号に基づき測定ガスの濃度解析などの演算処理を行うとともに、受光素子31の出力信号の振幅レベルがA/D変換器33の入力レベルとして適切でない場合にアンプ32のゲイン調整を行う。
【0016】
非特許文献1には、波長可変半導体レーザ分光を応用したレーザガス分析計の測定原理とその特長および具体的な測定事例について記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】田村 一人、外3名、「レーザガス分析計TDLS200とその産業プロセスへの応用」、横河技報、横河電機株式会社、2010年、Vol.53 No.2(2010) p.51−54
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、図19に示すような構成のレーザガス分析装置では、半導体レーザ11の波長可変範囲が狭いことから、単一成分の測定に限られている。
【0019】
たとえば炭化水素多成分混合ガスを測定する場合、CH4以外の炭化水素では構造が複雑で多数の吸収線が重なり合うことから、鋭い吸収線以外にブロードな吸収がベースに存在するため、吸収が無い波長は存在しない。このため、ガスセル自体の透過率の変化などによるベースライン変動を補正することができない。
【0020】
また、炭化水素多成分混合ガスを測定する場合には、CH4以外の炭化水素のブロードな吸収が重なり合った吸収スペクトルから各炭化水素の濃度(ガス分圧)を求める手法が必要となる。
【0021】
このような手法として、従来から統計的手法(ケモメトリクス)が知られているが、各アプリケーションに応じて個別に検量線を求める必要があるため、多大なエンジニアリング工数が発生する。
【0022】
一方、単一成分の測定では、前述の非特許文献1に記載されているような統計的手法によらない面積法が用いられている。
【0023】
この統計的手法によらない面積法を用いてブロードな吸収が重なり合った多成分混合ガスの測定を行うためには、重なり合った吸収スペクトルから各ガス単独の吸収スペクトルを分離する必要があることから、分析装置としては実用化されていない。
【0024】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、その目的は、レーザ光源として広い波長可変幅の波長可変レーザを用い、多成分混合ガスの濃度を統計的手法によらない面積法を用いて比較的簡単に測定できるレーザガス分析装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
広い波長可変幅を有する波長可変レーザと、
前記波長可変レーザの出力光を測定光と参照光に分岐する光分岐手段と、
被測定ガスが導入され前記測定光が入射される測定用ガスセルと、
前記参照光に関連した参照信号と前記測定用ガスセルの出力光に関連した吸収信号に基づいて前記被測定ガスの各成分単独の吸収スペクトルを求め、各成分の濃度を求めるデータ処理部、
とで構成されたことを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のレーザガス分析装置において、
前記データ処理部は、
前記被測定ガスの吸収線波長データを保存する吸収線波長データ格納部と、
前記参照信号および吸収信号が入力されるとともに前記吸収線波長データ格納部が接続され、これら吸収線波長データと参照信号および吸収信号に基づき吸収スペクトルの波長を校正するとともに吸光度の吸収スペクトルを求める波長校正手段と、
前記被測定ガスの吸収スペクトルデータを保存する吸収スペクトルデータ格納部と、
前記波長校正手段から吸光度の吸収スペクトルが入力されるとともに前記吸収スペクトルデータ格納部が接続され、前記吸光度の吸収スペクトルから被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルを分離するスペクトル分離手段と、
前記被測定ガスの吸収線の面積を計算する波長範囲データとその面積とガス分圧の比例定数データを保存する面積対濃度比データ格納部と、
前記スペクトル分離手段から被測定ガスの吸収スペクトルが入力されるとともに前記面積対濃度比データ格納部が接続され、指定された波長範囲の面積を求めるとともに被測定ガスの分圧を計算する濃度検出手段、
とで構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のレーザガス分析装置において、
前記波長校正手段は、前記校正用ガスの吸収線と既知の吸収線を比較することを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のレーザガス分析装置において、
前記波長校正手段は、前記校正用ガスの吸収線と既知の吸収線を多項式近似を用いて比較することを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のレーザガス分析装置において、
前記校正用ガスセルの吸収率は前記測定用ガスセルの吸収率よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
これらにより、多成分混合ガスに含まれる各ガスの濃度を統計的手法によらない面積法を用いて比較的簡単に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明に基づくレーザガス分析装置の具体例を示すブロック図である。
【図3】図2の装置の測定動作全体の流れを説明するフローチャートである。
【図4】メタンのスペクトル図である。
【図5】図4のピークP1の1674.5nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。
【図6】エチレンのスペクトル図である。
【図7】図6のピークP1の1675.9nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。
【図8】エタンのスペクトル図である。
【図9】図8のピークP2の1683.1nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。
【図10】プロピレンのスペクトル図である。
【図11】図10に示すプロピレンのピーク付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。
【図12】プロパンのスペクトル図である。
【図13】図12に示すプロパンのピーク付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。
【図14】構成ガスの違いによるピーク幅の変化例図である。
【図15】データベースから適切なスペクトルを選択する手順を説明するフローチャートである。
【図16】抽出されたエタンのスペクトル図である。
【図17】エチレンのスペクトル面積領域を決定する説明図である。
【図18】面積計算領域図である。
【図19】従来のレーザガス分析装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に基づくレーザガス分析装置の一実施例を示すブロック図である。図1において、波長可変レーザ101は、被測定ガスの吸収スペクトルの測定光を発生するものであり、その発振波長を制御する発振波長制御回路102に接続されている。
【0033】
波長可変レーザ101の出射光はレンズ103で平行光となり、アイソレータ104を通り、ビームスプリッタ105により測定光と参照光の2つの平行光に分けられる。
【0034】
ビームスプリッタ105で2つに分けられた一方の平行光は測定光として被測定ガスが導入されているガスセル106に入射されてレンズ107により集光され、フォトダイオード108に入射されて電気信号に変換され、波長校正手段111の一方の入力端子に入力される。
【0035】
他方の平行光はレンズ109で集光されて参照光としてフォトダイオード110に入射され、電気信号に変換されて波長校正手段111の他方の入力端子に入力される。
【0036】
波長校正手段111には、被測定ガスの吸収線波長データを保存する吸収線波長データ格納部112が接続されている。波長校正手段111は、吸収線波長データ格納部112に格納されている吸収波長データとフォトダイオード108から得られた吸収スペクトルを用い、フォトダイオード108と110から得られたスペクトルデータの波長を校正する。
【0037】
さらに波長校正手段111は、波長校正されたフォトダイオード108と110のスペクトルデータを割り算することにより吸光度を計算して吸光度の吸収スペクトルを求め、得られた吸光度の吸収スペクトルをスペクトル分離手段113に入力する。
【0038】
スペクトル分離手段113には、各被測定ガスの吸収スペクトルデータを保存する吸収スペクトルデータ格納部114が接続されている。スペクトル分離手段113は、たとえば被測定ガスの吸収スペクトルを用いた最小二乗フィッティングにより、波長校正手段111から入力された吸光度の吸収スペクトルから各被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルを分離し、得られた各被測定ガスの吸収スペクトルを濃度検出手段115に入力する。
【0039】
濃度検出手段115には、各被測定ガスの吸収線の面積を計算する波長範囲データと、その面積とガス分圧の比例定数データを保存する面積対濃度比データ格納部116が接続されている。濃度検出手段115は、スペクトル分離手段113から入力された各被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルから、指定された波長範囲の面積を求め、さらに指定された比例定数を掛けることにより被測定ガスの分圧を計算する。
【0040】
図2は炭化水素多成分を測定する本発明に基づくレーザガス分析装置の具体例を示すブロック図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。波長可変レーザ101は、炭化水素の吸収スペクトルの測定光を発生する波長1620〜1640nmを出射する第1のMEMS-VCSEL(MEMS-Vertical Cavity Surface Emitting LASER;MEMS垂直共振器面発光レーザ)と波長1670〜1700nmを出射する第2のMEMS-VCSELとで構成される。各MEMS-VCSELは発振波長制御回路102に接続され、発振波長制御回路102は各MEMS-VCSELに交互に電流を印加して交互に発振させるとともに、発振しているMEMS-VCSELに印加する電圧を制御してそれぞれの発振波長を制御する。
【0041】
各MEMS-VCSELの出射光はレンズ103で平行光となり、アイソレータ104を通り、さらにCH4とC24が封入された波長校正用ガスセル117を通ってビームスプリッタ105により測定光と参照光の2つの平行光に分けられる。
【0042】
ビームスプリッタ105で2つに分けられた一方の平行光は、測定光として被測定ガスが導入されているガスセル106に入射され、被測定ガスの吸収信号となる。ガスセル106の出力光はレンズ107により集光され、フォトダイオード108に入射されて電気信号に変換され、波長校正手段111の一方の入力端子に入力される。
【0043】
他方の平行光はレンズ109で集光されて参照光として直接フォトダイオード110に入射され、電気信号に変換されて波長校正手段111の他方の入力端子に入力される。これにより、各MEMS-VCSELの出力光強度の参照信号となる。
【0044】
ガスセル106はガスセル温度制御装置118により所定の温度に制御され、また被測定ガスはガス温度制御装置119によりガスセル106と同じ温度に制御される。
【0045】
波長校正手段111に接続されている吸収線波長データ格納部112には、被測定ガスのうち波長校正用ガスセル117に封入されているCH4とC24の吸収線波長データが保存されている。波長校正手段111は、吸収線波長データ格納部112に格納されているCH4とC24の吸収波長データとフォトダイオード110から得られたCH4とC24の吸収スペクトルを用いて、フォトダイオード108と110から得られたスペクトルデータの波長を校正する。
【0046】
さらに波長校正手段111は、波長校正されたフォトダイオード108と110のスペクトルデータを割り算することにより吸光度を計算して被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルを求め、得られた被測定ガスの吸光度のスペクトルをスペクトル分離手段113に入力する。
【0047】
スペクトル分離手段113に接続されている吸収スペクトルデータ格納部114には、被測定ガスである炭化水素成分(CH4、C24、C26、C36、C38)の吸収スペクトルデータが保存されている。スペクトル分離手段113は、被測定ガスの吸収スペクトルを用いた最小二乗フィッティングにより、波長校正手段111から入力された吸光度の吸収スペクトルから各炭化水素成分(CH4、C24、C26、C36、C38)の吸光度の吸収スペクトルを分離し、得られた各被測定ガスの吸収スペクトルを濃度検出手段115に入力する。
【0048】
濃度検出手段115に接続されている面積対濃度比データ格納部116には、各被測定ガスである炭化水素成分(CH4、C24、C26、C36、C38)の吸収線の面積を計算する波長範囲データと、事前に実測されたその面積とガス分圧の比例定数データが保存されている。
【0049】
濃度検出手段115は、スペクトル分離手段113から入力された各被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルから指定された波長範囲の面積を求め、指定された比例定数を掛けることにより各被測定ガスの分圧を求める。さらに、求めた各被測定ガスの分圧をガスセル106の出口経路に設けられている圧力計120で測定された全圧で割ることにより、各被測定ガスの濃度を求めることができる。
【0050】
図3は、図2のように構成された装置の測定動作の全体の流れを説明するフローチャートである。信号の処理は、被測定ガスの影響を受けない参照信号を用いた波長校正から始める。
【0051】
波長校正手段111は、フォトダイオード110から出力される参照信号に基づいてCH4とC24の鋭い吸収スペクトルのピークのデータ番号を検出し、吸収線と波長のテーブルからそのデータ番号の正確な波長を確定する。得られた複数のデータ番号と波長の関係から、たとえば多項式近似で各データ番号と波長1685nmレンジと1630nmレンジを対応付ける(ステップS1〜S3)。
【0052】
波長校正した後、参照信号と吸収信号から各波長帯における吸光度を計算して(ステップS4)、最適な純スペクトルを選別し(ステップS5)、大まかなガス濃度分析を行った後(ステップS6)、影響度の大きな成分から順次(C24→CH4→C26→C38→C36)スペクトル分離と濃度分析を繰り返して行う(ステップS7〜S16)。
【0053】
測定ガスへの入射強度をI1、測定ガスからの透過光強度をI2、被測定ガスの吸収率をAとすると、波長λにおけるガスの吸光度は、
吸光度=log10[I1(λ)/I2(λ)]
=log10[I1(λ)/I1(λ)×A(λ)]
=log10[1/A(λ)] (1)
となる。
【0054】
さらに、参照光の光強度をIr、波長校正用ガスセル117直前の光強度をI0、波長校正用ガスの吸収率をA1、波長校正用ガスセル117の透過率をTr1、ビームスプリッタ105による分岐比をR1:R2(R1+R2=1)、測定用ガスセル106の透過率をTrとすると、
r(λ)=I0(λ)×A1(λ)×Tr1×R1(λ) (2)
2(λ)=I0(λ)×A1(λ)×Tr1×R2(λ)×A(λ)×Tr(λ) (3)
と表すことができる。
【0055】
したがって、
log10[Ir(λ)/I2(λ)]=log10[R1(λ)/(R2(λ)×A(λ)×Tr(λ))]
=log10[1/A(λ)]+log10[R1(λ)/(R2(λ)×Tr(λ))]
=吸光度+装置関数 (4)
となる。ここで、第2項は測定ガスに依存しない項であるため、事前に測定用ガスセルに吸収を無視できるガスを封入してスペクトルを取得しておけば、第2項を除去できる。つまり、(4)式の第1項のようにフォトダイオード108と110の出力信号の比を取って常用対数を計算すれば吸光度が得られる。
【0056】
なお、注意すべき点はIrとI2のいずれにも波長校正用ガスセル117による影響が含まれていることである。このことから、(4)式の第1項のように、両信号の比を取れば波長校正用ガスセル117の信号はなくなるため、計算が簡単に行える。
【0057】
次に、各炭化水素の濃度(ガス分圧)を検出する時に用いる波長帯について説明する。本発明の要点は、測定された混合ガスの吸収スペクトルから、各被測定ガス(炭化水素)単独のスペクトルを分離し、得られた単独の吸収線の面積から濃度(ガス分圧)を求めることである。
【0058】
このスペクトル分離を精度良く行うためには、被測定ガスの特徴的な吸収線が存在し、かつ他の混合ガスの特徴的な吸収線が存在しない波長帯を選択すればよい。このような波長帯を選べば、他のガスの主な影響はベースライン変動と同等になるため、ベースライン変動の影響を受けない濃度(ガス分圧)検出方法を採用すれば他のガスの影響を最小にできる。そこで、本発明では、被測定ガス(炭化水素)ごとに上記の条件が当てはまる異なる波長帯を用い、かつベースライン変動の影響を受けない方法で濃度(ガス分圧)検出を行っている。以下それぞれについて説明する。
【0059】
図4はメタンのスペクトル図であり、(A)は1685nm帯を示し、(B)は1630nm帯を示している。図4から明らかなように、メタンはそれぞれの波長帯に複数の鋭いピークを持っている。これら鋭いピークの中で、他のガスの吸収成分が小さく濃度(ガス分圧)検出に適しているのは矢印で示しているピークP1〜P6である。
【0060】
図5は、図4のピークP1の1674.5nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。図5によれば、他のガススペクトルに比べて、メタンのピークが明らかに鋭く大きいことが分かる。これにより、他のガスの影響はベースライン変動とみなすことができる。
【0061】
図6はエチレンのスペクトル図であり、(A)は1685nm帯を示し、(B)は1630nm帯を示している。図6から明らかなように、エチレンもそれぞれの波長帯に複数の鋭いピークを持っているが、1630nm帯ではピーク間隔が狭いので特定のピークを抽出することは困難である。これに対し、1685nm帯に矢印で示すピークP1〜P3は、濃度(ガス分圧)検出には適している。
【0062】
図7は、図6のピークP1の1675.9nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。図7によれば、他のガススペクトルに比べて、エチレンのピークが明らかに鋭く大きいことが分かる。これにより、ピークP1は、これら鋭いピークの中で、他のガスの吸収成分が小さく濃度(ガス分圧)検出に適しているものといえる。
【0063】
図8はエタンのスペクトル図であり、(A)は1685nm帯を示し、(B)は1630nm帯を示している。図8から明らかなように、エタンは、1630nm帯ではピークがなく、1685nm帯では数本のピークを持っている。これらピークの中で、矢印で示すピークP1〜P3が濃度(ガス分圧)検出には適している。
【0064】
図9は、図8のピークP2の1683.1nm付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。図9によれば、エチレンやメタンが1683.1nm付近で吸収を持っているが、エタンの吸収が最も高い。
【0065】
図10はプロピレンのスペクトル図であり、(A)は1685nm帯を示し、(B)は1630nm帯を示している。図10から明らかなように、プロピレンは、1628.7nmに一本のピークを持っているだけであり、このピークを濃度(ガス分圧)検出に用いる。
【0066】
図11は、図10に示すプロピレンのピーク付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。図11によれば、エチレンとメタンの吸収が大きいため、これらのガスの影響を取り除いてプロピレンを抽出する方法が重要となる。
【0067】
図12はプロパンのスペクトル図であり、(A)は1685nm帯を示し、(B)は1630nm帯を示している。図12から明らかなように、プロパンは、1686.4nmに一本のピークを持っているだけであり、このピークを濃度(ガス分圧)検出に用いる。
【0068】
図13は、図12に示すプロパンのピーク付近におけるメタン、エチレン、エタン、プロピレン、そしてプロパンのスペクトル図である。図13によれば、エチレンとメタンの吸収が大きいため、これらのガスの影響を取り除いてプロピレンを抽出する方法が重要となる。
【0069】
次に、スペクトル分離方法について説明する。ここで注意しなければならないのが、全圧、ガス濃度(ガス分圧)そして混合ガスの種類によって吸収スペクトルの形状が変化することである。これらの変化に対応しなければ、精確なスペクトル分離はできない。
【0070】
そこで、本発明では、スペクトル分離にあたり、スペクトル形状の変化を考慮した各被測定ガスの吸収スペクトルを使用する。
【0071】
図14を用いてピーク幅が変化する具体例を説明する。図14は構成ガスの違いによるピーク幅の変化例図であり、メタン以外の吸収を除去してメタンの吸収スペクトルのみを抽出したものであり、特性Aはメタンと水素を50%ずつ混合したガスのスペクトルを示し、特性Bはメタンとプロピレンを50%ずつ混合したガスのスペクトルを示している。図14から明らかなように、プロピレンと混合したときは、水素と混合したときに比べてピーク幅が広くなっている。
【0072】
このようなスペクトル形状の変化に対応するために、事前に取得したスペクトルデータベースの中から、図15のフローチャートに示す処理手順方法によって、実際のスペクトル形状に最も近い各被測定ガスの吸収スペクトルを選択する。スペクトル形状の近い吸収スペクトルを選択するためには、スペクトルデータベースが様々な形状の吸収スペクトルを含んでいなければならない。
【0073】
スペクトル形状が変化する原因は、分子間の衝突が多く起こるためと考えられる。つまり、分子の衝突断面積が大きいプロピレンやプロパンはスペクトル形状を変化させる効果が大きい。一方、スペクトル形状を変化させる効果が小さい分子としては、分子の衝突断面積が小さい窒素分子が挙げられる。
【0074】
これらの理由に基づき、以下に示す2種混合ガスの組み合わせについて混合比を変えた多数のスペクトルを測定してスペクトルデータベースを構築し、これらデータベースの中からスペクトル形状が最も近いスペクトルを選んで使用する。
CH4:CH4+N2,CH4+C36,CH4+C38
24:C26+N2,C24+C36,C24+C38
26:C26+N2,C26+C36
26:C26+N2
38:C38+N2
【0075】
図15のフローチャートに基づき、データベースから適切なスペクトルを選択する手順を説明する。まず、計算に用いる各被測定ガス単独の吸収スペクトル(以下初期の純スペクトル)をデータベースから読み出す。ここではスペクトル形状の変化などは考える必要はなく、任意の純スペクトルでよい(ステップS1)。
【0076】
次に、ガス選択ループを開始して(ステップS2)、最適純スペクトルを決定するガス種を選択する(ステップS3)。そして、混合ガススペクトルから、選択ガスが特徴的なピークを持っている事前に選択されている波長領域部分を切り取る(ステップS4)。
【0077】
続いて、純スペクトル決定ループを開始する(ステップS5)。選択ガスについてはデータベースから1本ずつ純スペクトルを選択し、選択ガス以外のスペクトルについてはステップS1の純スペクトルを選択する(ステップS6)。
【0078】
これらの純スペクトルを用いて、次式のようにスペクトル残差を求める。
A=CK+R (5)
【0079】
ここで、Aは混合ガススペクトル、Kは各ガスの純スペクトルを並べたもの、Cは各ガスの濃度(ガス分圧)を示し、Rはスペクトル残差である。ここで各ガスの純スペクトルが決定していれば、(5)式から次の(6)式のように濃度(ガス分圧)を求めることができる。
【0080】
C=AKT(KKT-1 (6)
こうして得られた濃度(ガス分圧)を再び(5)式に代入してスペクトル残差の二乗和演算を行い、スペクトル残差Rを求めることができる(ステップS7)。
【0081】
スペクトル残差の二乗和を記録したら(ステップS8)、選択ガスについて別の純スペクトルを選び、スペクトル残差の二乗和を記録する。これを選択ガスのすべての純スペクトルについて行う(ステップS9)。こうして得られたスペクトル残差の二乗和の中で、最も小さいときの純スペクトルを最適純スペクトルとする(ステップS10)。
【0082】
最適純スペクトルが得られたら、次のガスについても同様のフローを繰り返して、すべてのガスについて最適な純スペクトルを取得する(ステップS11)。
【0083】
図3のステップS6で得られた最適な純スペクトルを用いて各ガスのピーク付近で(6)式を再計算し、概算の各ガス濃度(ガス分圧)を求める。ある炭化水素について選択したピーク付近のスペクトルから、他のガスの最適純スペクトルを(6)式で求められた濃度(ガス分圧)分だけ差し引くことによって、その炭化水素のピークのみを抽出することができる。たとえば5種の炭化水素(メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン)の混合ガススペクトルからエタンのみを抽出する場合、
A(C26)=A−K(CH4)C(CH4)−K(C24)C(C24
−K(C36)C(C36)−K(C38)C(C38) (7)
とすればよい。
【0084】
この(7)式で用いる各炭化水素ガスの濃度(ガス分圧)は、それぞれのピーク付近で(6)式で求められた値を使えば抽出精度が高くなる。このようにして抽出されたエタンのスペクトルを図16に示す。図16において、(A)は混合ガスのスペクトルを示し、(B)は抽出されたエタンスペクトルを示し、(C)はエタンの純スペクトルを示している。図16から明らかなように、エタンは15%しか含まれていないが、純スペクトルとほぼ同じ形のエタンスペクトルが抽出できている。
【0085】
なお、ベースライン変動の影響が残っている場合、0次(単純なオフセット)と1次(傾いたオフセット)とエタンの純スペクトルで最小二乗フィッティングを行うことで、ベースライン変動を除去することができる。本発明では一次項の補正まで行って、ベースライン変動を除去した各被測定ガスの吸収スペクトルを分離している。
【0086】
抽出されたスペクトルを用いて濃度(ガス分圧)を計算するために、スペクトルの面積を用いる。各ガスの分圧が一定ならば、全圧や構成ガスなどの外部環境が変化しても、面積と濃度(ガス分圧)の比例関係が常に成り立つ領域が存在する。このような領域の面積を用いることによって各ガスの分圧を計算する。
【0087】
具体例として、エチレンのスペクトル面積領域を決定する場合について、図17を用いて説明する。まず、ベースライン分を差し引くために、(A)に示すように、C24ではピーク部分を挟んで、短波長側にXポイント、長波長側にYポイントの2点を結ぶ直線分を差し引く。これにより、(B)に示すように、ベースライン変動の影響を完全に除くことができる。そして、この2点間の面積を求める。
【0088】
このような処理を、濃度(ガス分圧)が既知であるスペクトルデータベースのすべてのスペクトルについて同様に行う。図18は面積計算領域図であり、XとYの値をそれぞれ1から400まで変化させて、濃度(ガス分圧)と面積の関係が最も比例関係に近いときのXとYの組み合わせを求めた結果を示している。横軸がX、縦軸がYに対応しており、青い部分(B)は検出誤差が小さくなることを示し、赤い部分(R)は検出誤差が大きくなることを示している。エチレンではX=317,Y=373の組み合わせが有効となる。
【0089】
これまで炭化水素多成分系の分析は、その成分分離能力の高さから、主にガスクロが用いられてきたが、測定時間が長くかかることから、測定値を直接制御に用いることはできなかった。一方、リアルタイムで測定可能なレーザガス分析計は、光源の波長可変幅が狭く主に単成分の測定に限られていた。
【0090】
これらに対し、本発明では、機械的な稼働部が無く工業計器として要求される高い信頼性を持ち、かつ広い波長範囲で波長可変可能なMEMS-VCSELを光源に用いることにより、多成分混合ガスの吸収スペクトルをリアルタイムで測定可能な工業用レーザガス分析計を実現した。
【0091】
具体的には、波長1620〜1750nmの範囲で発振するMEMS-VCSELを光源に用いることで、リアルタイムで測定可能な炭化水素多成分混合ガスの分析が可能なレーザガス分析計を実現した。
【0092】
CH4、C24の吸収線を用いて波長校正を行うことにより、広い波長範囲で正確な吸収スペクトルを得ることができる。
【0093】
CH4とC24が封入されている波長校正用ガスセル117を用いることにより、被測定ガス中の波長校正に用いるガス濃度(ガス分圧)が低くなって波長校正に用いる吸収線が測定できなくなることを回避できる。
【0094】
波長校正用ガスセル117は、従来の装置ではビームスプリッタ105で2つに分けられた参照光の光路に挿入されていたが、本発明ではビームスプリッタ105の前段に入れていることにより、波長校正と光出力校正を一つの受光素子で行える。そして、フォトダイオード108から得られる被測定ガスの吸収信号とフォトダイオード110から得られる参照信号を単純に割り算することで、被測定ガスの吸収信号から校正用ガスの吸収信号を除くことができる。
【0095】
波長校正用ガスのCH4とC24の吸収線と波長のテーブルを用いて得られた炭化水素多成分混合ガスの吸収スペクトルの波長校正を行うことにより、正確な吸収スペクトルが得られる。
【0096】
炭化水素多成分混合ガスの各ガスの吸収スペクトルデータベースを用いて各ガスの吸収スペクトルを分離することにより、各ガス単独の吸収スペクトルが得られる。
【0097】
多成分系の吸収スペクトルから各成分濃度(ガス分圧)を求める手段として、統計的手法(ケモメトリクス)を用いない面積法を開発して採用したことにより、各アプリケーション毎に検量線を求める必要がなくなり、多大なエンジニアリング工数を削減できる。これにより、各ガス単独の吸収スペクトルを得ることができ、統計的手法(ケモメトリクス)を用いずに各ガスの濃度(ガス分圧)を求めることができる。
【0098】
面積法を用いるためには、混合ガスの重なり合った吸収スペクトルから各被測定ガス単独の吸収スペクトルを分離する必要があるが、本発明ではガスの混合による吸収スペクトル形状の変化まで含んだ吸収スペクトルデータベースを用い、各ガスの特徴的な吸収線が存在する波長帯で最小二乗フィッティングを行い、混合ガスの吸収スペクトルから各被測定ガス単独の吸収スペクトルを分離した。これにより、他のガスの吸収の影響をベースライン変動程度に抑えることができる。
【0099】
本発明では、面積法として、吸収線の形状から決まる値を吸収スペクトルから差し引いて面積を求める方法を採用したので、ベースライン変動の影響を除くことができる。
【0100】
各炭化水素ガスのピークとして、他の炭化水素ガスの吸収が小さく、不純物の吸収が小さい波長領域を用いることにより、検量線作成が不要になった。
スペクトルデータベースから実スペクトル形状に最も適したスペクトルを選ぶことによって、スペクトル形状の変化に対応できるようになり、ロバスト性が向上した。
スペクトル形状が変化しても、濃度(ガス分圧)誤差が小さくなる領域の面積を用いることによって、高い精度の濃度(ガス分圧)計測を可能にした。
【0101】
なお、濃度(ガス分圧)値によっては、選択したピーク付近における他のガススペクトルが大きくなって、抽出誤差が大きくなる可能性がある。そのような場合には、混合ガスの濃度(ガス分圧)値によって使うピークを変えればよい。
【0102】
ガスセル106に入力される被測定ガスの温度は、ガス温度制御装置119により一定にすることが望ましい。これにより、温度変化に伴うスペクトル形状の変化を抑制でき、温度変化による測定誤差を軽減できる。
【0103】
光学系を光ファイバを用いて構成することにより、設計上の制約条件を緩和できて小型化が図れるとともに、機械的な振動に対する安定性を高めることができる。
【0104】
マルチパスにして光路長を伸ばすことにより、吸収の小さいガスへの適用や、微量ガスの検出が可能になる。
【0105】
被測定ガスを減圧して測定してもよい。これにより、重なり合っている吸収線の分離が期待できる。
【0106】
複数の波長可変光源を用い、共通の受光素子で時分割測定することもできる。
【0107】
波長校正用ガスはCH4とC24に限るものではなく、測定に用いる波長帯域に応じてC24OやHClを用いてもよい。波長校正用ガスは、たとえば原子数の少ない鋭い吸収線を持つ分子のガスや、近い波長範囲に吸収線を持つたとえば被測定ガスと同じかその同位体や組成が近いガスなどを用いる。たとえば炭化水素のスペクトルを測定するときは、炭素数が1もしくは2の炭化水素を用いて波長校正を行う。
【0108】
波長校正用ガスの全圧は、校正に用いる吸収線を鋭くするため、減圧することが望ましい。特に、複数の吸収線の重なりが解けて分離されるまで減圧することにより、さらに高精度の測定が行える。たとえばメタンを波長校正に用いるときは、0.1気圧以下にすると複数の吸収線の重なりが解けるので有効である。
【0109】
波長校正用ガスセル117の吸収率は、測定信号のS/Nに対する影響を少なくするため、測定用ガスセル106の吸収率の1/10以下にすることが望ましい。
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、レーザ光源として広い波長可変幅の波長可変レーザを用い、炭化水素多成分混合ガスの濃度を統計的手法によらない面積法を用いて比較的簡単に測定できるレーザガス分析装置を実現でき、各種プロセスガスの直接測定に有効である。
【符号の説明】
【0111】
101 波長可変レーザ
102 発振波長制御回路
103、107、109 レンズ
104 アイソレータ
105 ビームスプリッタ
106 ガスセル
108、110 フォトダイオード
111 波長校正手段
112 吸収線波長データ格納部
113 スペクトル分離手段
114 吸収スペクトルデータ格納部
115 濃度検出手段
116 面積対濃度比データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広い波長可変幅を有する波長可変レーザと、
前記波長可変レーザの出力光を測定光と参照光に分岐する光分岐手段と、
被測定ガスが導入され前記測定光が入射される測定用ガスセルと、
前記参照光に関連した参照信号と前記測定用ガスセルの出力光に関連した吸収信号に基づいて前記被測定ガスの各成分単独の吸収スペクトルを求め、各成分の濃度を求めるデータ処理部、
とで構成されたことを特徴とするレーザガス分析装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記被測定ガスの吸収線波長データを保存する吸収線波長データ格納部と、
前記参照信号および吸収信号が入力されるとともに前記吸収線波長データ格納部が接続され、これら吸収線波長データと参照信号および吸収信号に基づき吸収スペクトルの波長を校正するとともに吸光度の吸収スペクトルを求める波長校正手段と、
前記被測定ガスの吸収スペクトルデータを保存する吸収スペクトルデータ格納部と、
前記波長校正手段から吸光度の吸収スペクトルが入力されるとともに前記吸収スペクトルデータ格納部が接続され、前記吸光度の吸収スペクトルから被測定ガスの吸光度の吸収スペクトルを分離するスペクトル分離手段と、
前記被測定ガスの吸収線の面積を計算する波長範囲データとその面積とガス分圧の比例定数データを保存する面積対濃度比データ格納部と、
前記スペクトル分離手段から被測定ガスの吸収スペクトルが入力されるとともに前記面積対濃度比データ格納部が接続され、指定された波長範囲の面積を求めるとともに被測定ガスの分圧を計算する濃度検出手段、
とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザガス分析装置。
【請求項3】
前記波長校正手段は、前記校正用ガスの吸収線と既知の吸収線を比較することを特徴とする請求項2に記載のレーザガス分析装置。
【請求項4】
前記波長校正手段は、前記校正用ガスの吸収線と既知の吸収線を多項式近似を用いて比較することを特徴とする請求項3に記載のレーザガス分析装置。
【請求項5】
前記校正用ガスセルの吸収率は前記測定用ガスセルの吸収率よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−113664(P2013−113664A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258910(P2011−258910)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】