説明

レーザハンドピース

【課題】光ファイバの先端突出量を容易かつ連続的に加減可能であり、太さの異なる複数種類の光ファイバに対しても柔軟に対応可能なレーザハンドピースを提供する。
【解決手段】回転自在に配置された受け側ローラ22と、該受け側ローラ22と対向する位置に回転自在に配置された加圧ローラ20と、この加圧ローラ20を受け側ローラ22の方向に常時付勢する引張りバネ34, 36と、加圧ローラ20を受け側ローラ22から離間する方向に移動させる解除レバー24cと、加圧ローラ20及び解除レバー24cの一部を外部に露出させる開口部38を備えたレーザハンドピース10。導入口18bから導入された光ファイバ60は、加圧ローラ20と受け側ローラ22によって挟持され、その先端部は導出口16bから外部に導出される。加圧ローラ20の回転に応じて、光ファイバ60の先端部の突出量が加減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーザハンドピースに係り、特に、レーザビームの出射端となる光ファイバ先端部の突出量を調節する機構を備えたレーザハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームを患部に照射して生体の切開や蒸散を行うレーザ治療に際しては、片手で容易に操作できるレーザハンドピースが用いられる。
このレーザハンドピースの先端部からは、レーザビームの出射端となる光ファイバが突出しており、その先端部を治療対象部位に近づけてレーザビームを照射することにより、生体組織の切開や蒸散が行われる。
【0003】
ところで、このようなレーザ治療を続けると、生体組織の一部が光ファイバの先端部に付着し、その光学特性が劣化するため、汚染された光ファイバの先端部を切除した後、後続の光ファイバを繰り出して被覆を除去し、先端部を露出させる作業が適時実施される。
そして、この光ファイバの繰り出しに際しては、複数の部材から構成されたハンドピースを分解し、光ファイバの固定具を緩めた上で光ファイバを先端側に必要量引き出した後、再度固定具による光ファイバの締結、及びハンドピースの組立を行う必要があった。
【0004】
このような光ファイバの繰り出しに要する手間を省くために、特許文献1においては、光ファイバ固定用のコレットチャックをハンドピース内に設けておくことにより、シャープペンシルの芯の長さを調整するように、ノック操作によって光ファイバを送り出す技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−146516
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これにより、施術者はコレットチャックを必要回数ノックすることにより、容易に光ファイバの先端部を繰り出すことが可能となり、ハンドピースの分解/組立の作業から解放されることとなる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の方式では、ワンノックで繰り出される量が一定に固定されているため、先端突出量の微調整が面倒となる欠点があった。例えば、ワンノックでは足りないがツーノックでは長すぎる場合、一旦ツーノックして長めに繰り出した後、コレットチャックを押圧したまま手動で光ファイバを戻す操作を行う必要がある。
また、治療に用いるレーザビームの種類に応じて光ファイバの太さも当然に異なってくるが、特許文献1のハンドピースの場合には光ファイバの太さに応じた専用のコレットチャックを用いる必要があり、太さの異なる複数の光ファイバに柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題を解決するために案出されたものであり、光ファイバの先端部の突出量を容易かつ連続的に加減可能であり、しかも太さの異なる複数種類の光ファイバに対しても柔軟に対応可能なレーザハンドピースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のレーザハンドピースは、光ファイバの導入口と導出口を備えた本体部と、該本体部内に回転自在に配置された受け側ローラと、該受け側ローラと対向する位置に回転自在に配置された加圧ローラと、この加圧ローラを受け側ローラ方向に常時付勢する付勢手段と、この加圧ローラを受け側ローラから離間する方向に移動させる解除レバーとを備え、上記加圧ローラ及び解除レバーの一部が、上記本体部の外部に露出しており、上記導入口から本体部内に導入された光ファイバが、上記加圧ローラと受け側ローラによって挟持されると共に、上記導出口から光ファイバの先端部が外部に導出され、上記加圧ローラの回転に応じて、光ファイバ先端部の突出量が加減されることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のレーザハンドピースは、請求項1に記載のレーザハンドピースであって、その一端側に上記加圧ローラの回転軸が回転自在に係合され、その他端側が上記解除レバーとなる支持部材と、この支持部材の回転軸が係合される軸受けと、この支持部材の加圧ローラ側を上記受け側ローラ方向に常時付勢する引張りバネを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載のレーザハンドピースは、請求項1に記載のレーザハンドピースであって、その一端側に上記加圧ローラの回転軸が回転自在に係合され、その他端側が上記解除レバーとなる支持部材と、この支持部材の回転軸が係合される軸受けと、この支持部材の解除レバー側を上記受け側ローラの反対方向に常時付勢する押圧バネを備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載のレーザハンドピースは、請求項1〜3に記載のレーザハンドピースであって、上記加圧ローラと受け側ローラにより、外径の異なる複数種類の光ファイバ(例えば、外径が100μm〜800μmの範囲の光ファイバ)が選択的に挟持されると共に、上記加圧ローラの回転に応じて選択された光ファイバ先端部の突出量が加減できるように、上記付勢手段が加圧ローラを付勢することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載のレーザハンドピースは、請求項1〜4に記載のレーザハンドピースであって、上記本体部の先端に、光ファイバの外径に対応した内径の貫通孔を備えたパイプ部材を、着脱自在に装着したことを特徴としている。このパイプ部材の形状は直線状に限定されるものではなく、施術内容に応じて、所定の曲率で湾曲させたパイプ部材と交換することもできる。
【0013】
請求項6に記載のレーザハンドピースは、請求項1〜5に記載のレーザハンドピースであって、上記加圧ローラ及び受け側ローラの少なくとも光ファイバと接する部分が、シリコンゴム等の弾性素材によって構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るレーザハンドピースの場合、指先で加圧ローラを所定の方向に所定量回転させることにより、光ファイバの先端部の突出量を自在に加減することができる。
また、付勢手段による付勢力によって加圧ローラは受け側ローラに向けて常時付勢されているため、指先による回転操作を停止すれば、そのまま光ファイバ先端部の突出量を固定することが可能となる。
しかも、このように引張りバネや押圧バネ等の付勢手段によって光ファイバの固定が実現されるため、外径寸法の異なる複数種類の光ファイバに対しても柔軟に対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明に係るレーザハンドピース10の構造を示す断面図であり、中枢部12と、先端部14と、パイプ部材16と、後端部18とから構成される。この中枢部12、先端部14及び後端部18によって、本体部が構成される。
【0016】
中枢部12の内部には、加圧ローラ20と、受け側ローラ22と、支持部材24が設けられている。
【0017】
図2に示すように、支持部材24の左端側には第1の支持板24aと第2の支持板24bが形成されており、両者の間に加圧ローラ20が回転自在に配置されている。
具体的には、加圧ローラ20の中央部に挿通された回転軸26が、第1の支持板24a及び第2の支持板24bの各対向面に形成された軸受凹部(図示省略)内に、回転自在に嵌装されている。
加圧ローラ20は、金属や硬質プラスチック等よりなる硬質素材層20a, 20c間に、シリコンゴム等よりなる弾性素材層20bを挟み込んだ三層構造を備えている。
【0018】
受け側ローラ22の中央部には回転軸27が挿通されており、図3に示すように、この回転軸27の両端は、中枢部12の内壁面に形成された軸受けボス28a, 28bに回転自在に嵌装されている。
受け側ローラ22も加圧ローラ20と同様、金属や硬質プラスチック等よりなる硬質素材層22a, 22c間に、シリコンゴム等よりなる弾性素材層22bを挟み込んだ三層構造を備えている。
【0019】
支持部材24の中央部には回転軸30が挿通されており、図3に示すように、この回転軸30の両端は、中枢部12の内壁面に形成された軸受けボス31a, 31bに回転自在に嵌装されている。
【0020】
この支持部材24の第1の支持板24aの下面及び第2の支持板24bの下面には、それぞれ引張りバネ34, 36の上端が接続されている。各引張りバネ34, 36の下端は、中枢部12の底面に固定されている。
このため、第1の支持板24a、第2の支持板24b、及び加圧ローラ20は、第1の引張りバネ34及び第2の引張りバネ36により、常時受け側ローラ22の方向に付勢されている。
【0021】
中枢部12の上面には矩形状の開口部38が形成されており、加圧ローラ20の上部と、支持部材24の右端部が外部に突出している。この支持部材24の右端部が、解除レバー24cとして機能することとなる。
【0022】
中枢部12の先端側壁部40の内面には、第1の案内管42が突設されている。この第1の案内管42の受け口は、漏斗状に形成されている。
また、中枢部12の後端側壁部44の内面には、第2の案内管46が突設されている。
【0023】
中枢部12の先端側壁部40の外面には、第1の係合管48が突設されており、この第1の係合管48の外周面には雄ネジが形成されている(図示省略)。
また、この第1の係合管48の内部には貫通孔が形成されており、第1の案内管42の貫通孔と連通接続されている。
【0024】
中枢部12の後端側壁部44の外面には、第2の係合管50が突設されており、この第2の係合管50の外周面には雄ネジが形成されている(図示省略)。
また、この第2の係合管50の内部には貫通孔が形成されており、第2の案内管46の貫通孔と連通接続されている。
【0025】
上記先端部14は略円錐形状を備えており、その中心には貫通孔が形成されている。
この先端部14の後端面には、係合凹部14aが形成されている。この係合凹部14aの内周面には雌ネジが形成されており(図示省略)、上記中枢部12の第1の係合管48が螺合されている。
先端部14の先端面には係合管14bが突設されており、この係合管14bの外周面には雄ネジが形成されている(図示省略)。
【0026】
上記パイプ部材16は、略円柱形状を備えており、その後端面には係合凹部16aが形成されている。この係合凹部16aの内周面には雌ネジが形成されており(図示省略)、上記先端部14の係合管14bが螺合されている。
パイプ部材16の貫通孔と、先端部14の貫通孔とは、連通接続されている。
【0027】
上記後端部18は略円錐台形状を備えており、その中心には貫通孔が形成されている。
この後端部18の先端面には係合凹部18aが形成されている。この係合凹部18aの内周面には雌ネジが形成されており(図示省略)、上記中枢部12の第2の係合管50が螺合されている。
【0028】
光ファイバ60の先端部は、まず後端部18の導入口18bに挿入され、中枢部12の第2の案内管46から中枢部12内に導かれる。
ここで解除レバー24cを押し下げると、加圧ローラ20が引張りバネ34, 36の引張り力に抗して上に持ち上がり、受け側ローラ22との間に隙間が生まれるため、光ファイバ60を通すことができる。
この結果、光ファイバ60は第1の案内管42の受け口から内部に侵入し、先端部14、パイプ部材16の貫通孔を通り、導出口16bから外部に導出される。
【0029】
この時点で、解除レバー24cの押し下げ動作を止めると、加圧ローラ20が引張りバネ34, 36によって下方に戻され、受け側ローラ22との間で光ファイバ60を挟持・固定する。
【0030】
光ファイバ60の先端部の突出量が足りない場合、施術者は加圧ローラ20を所定方向(図1においては右方向)に所定量回動させ、光ファイバ60を繰り出すことができる。
また、光ファイバ60の先端部の突出量が多すぎる場合、施術者は加圧ローラ20を所定方向(図1においては左方向)に所定量回動させ、光ファイバ60を後端部側に戻すことができる。
【0031】
光ファイバ60の後端部は、図示しない医療用レーザ発振機(半導体レーザ、Nd:YAGレーザ、Er:YAGレーザ等)に接続されており、施術者は専用のカッターを用いて光ファイバ60の先端部の被覆を除去した後、図示しないスイッチをONする。この結果、レーザ発振機から出射されたレーザビームが、光ファイバ60の先端部から患部に向けて照射される。
【0032】
また、治療を続けて光ファイバ60の先端部が劣化した場合、先端露出部を切除した後、光ファイバ60の被覆を剥いて露出させる。この時点で長さが不足する場合、施術者は加圧ローラ20を指で所定方向に所定量回して、突出量を増大させる。
【0033】
上記のように、加圧ローラ20は引張りバネ34, 36によって受け側ローラ22の方向に付勢されているため、異なる太さの光ファイバ(例えば、外径100μm〜800μmの範囲)に対しても柔軟に対応可能となる。
【0034】
上記のように、加圧ローラ20及び受け側ローラ22は共に弾性素材層20b, 22bを備えており、加圧ローラ20及び受け側ローラ22によって光ファイバ60を挟み込んだ際にはこれらの層が光ファイバ60と接触することになるため、光ファイバ60を傷付けるおそれがない。
【0035】
引張りバネ34, 36によって加圧ローラ20を受け側ローラ22の方向に付勢する代わりに、図4に示すように、押圧バネ64によって解除レバー24cの下面を上方に向けて付勢するようにしてもよい。
【0036】
また、付勢手段としては図示したコイルバネに限定されるものではなく、ワイヤバネや板バネ、皿バネ等、各種弾性部材を広く用いることができる。
【0037】
上記のパイプ部材16として、貫通孔の内径が異なるものを複数用意しいておき、利用する光ファイバ60の外径に合わせて交換するようにしてもよい。先端部14の貫通孔の口径、中枢部12の第1の案内管42及び第2の案内管46の口径、後端部18の貫通孔の口径は、利用が想定される光ファイバ60の最大径に合わせておく必要があるが、最小径の光ファイバ60を用いる際にはこれに最適化した貫通孔を備えたパイプ部材16に交換することにより、光ファイバ60の安定保持が可能となる。
【0038】
また、上記においては略円柱形状を備えたパイプ部材16を用いる例を示したが、患部の位置や施術内容等に応じて、先端部が湾曲あるいは屈曲したパイプ部材と交換することもできる。
図1においては、湾曲パイプ部材66と交換する例が示されている。この湾曲パイプ部材66の後端面には、内周面に雌ネジが刻設された係合凹部66aが形成されており、これを先端部14の係合管14bに螺合することにより、着脱自在に装着される。光ファイバ60の先端部は、湾曲パイプ部材66の導出口66bから外部に取り出される。
【0039】
パイプ部材16や湾曲パイプ部材66の装着は、上記のようにネジ込み方式に限定されるものではなく、テーパー形状による摩擦を利用した単純な押し込み/引き抜き方式にしてもよい。
【0040】
図示は省略したが、中枢部12は、第1のケース部材と第2のケース部材をビス留め等によって結合させた、分解可能な構造にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明に係るレーザハンドピースの構造を示す断面図である。
【図2】このレーザハンドピースの平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】この発明に係るレーザハンドピースの他の構成例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 レーザハンドピース
12 中枢部
14 先端部
16 パイプ部材
18 後端部
20 加圧ローラ
22 受け側ローラ
24 支持部材
24a 第1の支持板
24b 第2の支持板
24c 解除レバー
34 引張りバネ
36 引張りバネ
38 開口部
60 光ファイバ
64 押圧バネ
66 湾曲パイプ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの導入口と導出口を備えた本体部と、
該本体部内に回転自在に配置された受け側ローラと、該受け側ローラと対向する位置に回転自在に配置された加圧ローラと、この加圧ローラを受け側ローラ方向に常時付勢する付勢手段と、この加圧ローラを受け側ローラから離間する方向に移動させる解除レバーとを備え、
上記加圧ローラ及び解除レバーの一部が、上記本体部の外部に露出しており、
上記導入口から本体部内に導入された光ファイバが、上記加圧ローラと受け側ローラによって挟持されると共に、上記導出口から光ファイバの先端部が外部に導出され、
上記加圧ローラの回転に応じて、光ファイバ先端部の突出量が加減されることを特徴とするレーザハンドピース。
【請求項2】
その一端側に上記加圧ローラの回転軸が回転自在に係合され、その他端側が上記解除レバーとなる支持部材と、
この支持部材の回転軸が係合される軸受けと、
この支持部材の加圧ローラ側を上記受け側ローラ方向に常時付勢する引張りバネを備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザハンドピース。
【請求項3】
その一端側に上記加圧ローラの回転軸が回転自在に係合され、その他端側が上記解除レバーとなる支持部材と、
この支持部材の回転軸が係合される軸受けと、
この支持部材の解除レバー側を上記受け側ローラの反対方向に常時付勢する押圧バネを備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザハンドピース。
【請求項4】
上記加圧ローラと受け側ローラにより、外径の異なる複数種類の光ファイバが選択的に挟持されると共に、上記加圧ローラの回転に応じて選択された光ファイバ先端部の突出量が加減できるように、上記付勢手段が加圧ローラを付勢することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレーザハンドピース。
【請求項5】
上記本体部の先端に、光ファイバの外径に対応した内径の貫通孔を備えたパイプ部材を、着脱自在に装着したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレーザハンドピース。
【請求項6】
上記加圧ローラ及び受け側ローラの少なくとも光ファイバと接する部分が、弾性素材によって構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレーザハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−234988(P2011−234988A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110598(P2010−110598)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000187220)昭和薬品化工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】