説明

レーザビーム加工装置及び方法並びに薄膜太陽電池の製造装置及び方法

【課題】予め規定した線幅や繰り返しピッチの精度を維持して、所定パターン加工をすることができる装置及び方法を提供する。
【解決手段】シート材10を搬送するシート材搬送部2と、シート材10を保持する保持部24と、レーザを照射するレーザ照射部35と、レーザ照射部35をシート材の搬送方向及び幅方向に相対移動させるレーザ照射位置変更部31,33と、どの場所にレーザを照射するかを登録する加工パターン登録部と、登録された加工パターンに基づいて照射位置の変更を行いながらレーザを照射する制御部とを備え、基準マーク観察部と、基準マーク間隔計測部5とを更に備え、制御部は、基準マークの位置及びマーク間の寸法と、登録された所定パターン情報に基づいて、レーザ照射位置変更部31,33の相対移動位置を逐次補正変更しながら、レーザを照射する装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状材料にレーザビーム加工を行う装置及び方法に関し、特に薄膜太陽電池などに用いられる積層成膜で形成されるシート状基材の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示ディスプレイや薄膜太陽電池などは、基板材料としてガラスが用いられてきたが(例えば、特許文献1)、軽量化や柔軟性を持たせるために、樹脂フィルムが用いられるようになってきた。
【0003】
樹脂フィルムを用いた表示ディスプレイの製造過程では、レーザビームによるダイレクトマーキングや露光パターニングが行われている。
【0004】
一方、樹脂フィルムを用いた薄膜太陽電池の製造過程では、シート状基材の表面に有機材料や非導電材料などの成膜を施した後、所定の場所にレーザビームを照射して溝加工を施し、その部分に金属材料の成膜を施して配線パターンを形成し、これらの工程を何度か繰り返すことで、発電機能を有するシート状基材が製造されている。
【0005】
従来の加工装置及び方法では、予め登録しておいた設計上の所定パターンに基づいて、所定の位置にレーザビームを照射することで、いわゆるパターン転写加工を施していた。ここでいう位置とは、レーザビームを照射する始点と終点、幅や深さを含んだ照射位置情報であり、所定エネルギーのレーザビーム照射により、或いは所定エネルギーのレーザビーム照射を繰り返すことで、設計上の所定のパターンを加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−155250号公報
【特許文献2】特開2011−171483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加工対象となるシート状基材は、いわゆるロール・トゥ・ロール加工と呼ばれる工程で用いられ、最終製品として切り出しが行われる前の中間段階では、長尺のシート状基材がドラム状に巻き付けられた状態でハンドリングされる。そして、成膜やパターン加工を行う際に適宜巻き出しされ、成膜やパターン加工時が終われば再び巻き取られて、次の工程へと運ばれる。このようなロール・トゥ・ロール加工においては、シート状基材そのものが薄く変形しやすい材料の場合、その上に成膜やパターン加工を施してもシート材の搬送方向や幅方向に伸縮して変形してしまう。
【0008】
単一基材のシート材で厚さが同じであれば、走行方向の張力を調節したり、幅方向に張力を付与することで、全面均一に伸縮の調節ができる。しかし、実際には製造工程における品質管理上、シート材は厚みにある程度のばらつきが許容されているため、伸縮率が異なってしまう。また、シート材上に成膜が施されると、成膜の厚みのばらつきも加わり、所定の張力を付与するだけではシート材の寸法を所定の範囲内に調整することは難しい。そのため、シート材の加工対象エリアが大きくなったり、加工パターンが微細になるにつれて、加工パターンの位置ずれが生じやすくなる。
【0009】
一方、薄膜太陽電池などに用いられるシート状基材においては、幾重にも成膜が積層されて形成されている。そのため、多層膜で構成されるシート材に対してパターン加工を施す場合、各層の積層毎に伸縮率が異なると、予め規定された加工パターン(つまり、上層側の重ね合わせパターン)と、被加工側シート(つまり、下層側)のパターンとが一致せず、加工パターンの位置ずれが生じてしまう。さらに、多層膜シート場合、上下層のパターン同士の導通を得るための加工(例えば、ビアホール加工・ビア溝加工など)があるため、上下層の加工パターンで位置ずれがありると予め規定された導通状態とならないと、製品の性能が発揮できず不良品となってしまう。その上、薄膜太陽電池に用いられるシート状基材は、製品面内に集光起電エリアと、電気配線パターンが複雑に積層されて形成されているため、位置ずれは局所的に表れ、加工対象エリア全体の伸縮率を平均化して算出し、全エリアに伸縮計数を乗じて加工しても、重ね合わせの位置精度を局所的に補正することが難しかった。
【0010】
そこで本発明は、成膜後シート状基材が伸縮しやすい場合であっても、予め規定した位置・線幅・繰り返しピッチの精度を維持して所定パターン加工をすることができる、レーザビーム加工装置及び方法並びに薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
シート材を搬送するシート材搬送部と、
前記シート材を保持する保持部と、
前記保持したシート材に向けてレーザビームを照射するレーザ照射部と、
前記保持したシート材と前記レーザ照射部とを前記シート材の搬送方向及び幅方向に相対移動させるレーザ照射位置変更部と、
前記保持したシート材上に前記レーザビームを照射する位置を登録する加工パターン登録部と、
前記登録された加工パターンに基づいて前記レーザ照射部からレーザビームを照射させる制御部とを備え、
前記保持したシート材に形成された複数の基準マークの位置を観察する基準マーク観察部と、
前記複数の基準マーク間の寸法を計測する基準マーク間隔計測部とを更に備え、
前記制御部は、
前記複数の基準マークの位置及びマーク間の計測寸法と、前記登録された加工パターンに基づいて、前記レーザ照射位置変更部の相対移動位置を補正演算し、前記補正演算して得られた所定の位置に前記レーザビームを照射する機能を更に備えている
ことを特徴とするレーザビーム加工装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
シート材を搬送するシート材搬送ステップと、
前記シート材を保持する保持ステップと、
前記保持したシート材に向けてレーザビームを照射するレーザ照射ステップと、
前記保持したシート材とレーザ照射部とを前記シート材の搬送方向及び幅方向に相対移動させるレーザ照射位置変更ステップと、
前記保持したシート材上に前記レーザビームを照射するための加工パターン及び位置情報
を読み出す加工パターン読み出しステップと、
前記読み出しされた加工パターンに基づいて前記レーザ照射位置変更ステップにおける相対移動を行いながら前記レーザ照射部からレーザビームを照射するレーザ加工ステップとを有し、
前記保持したシート材に形成された複数の基準マークの位置を観察する基準マーク観察ステップと、
前記複数の基準マーク間の寸法を計測する基準マーク間隔計測ステップとを更に有し、
前記レーザ加工ステップでは、
前記複数の基準マークの位置及びマーク間の計測寸法と、前記読み出された加工パターンに基づいて、前記レーザ照射位置変更ステップの相対移動位置を補正演算し、前記補正演算して得られた所定の位置に前記レーザビームを照射するステップを更に有する
ことを特徴とする、レーザビーム加工方法である。
【0013】
上記発明の装置及び方法を用いるので、
レーザ加工する際にシート上に形成された複数の基準マークを観察し、それらの位置と間隔を計測して、予め登録しておいた加工パターンに対する実際の加工位置を補正することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
前記シート保持部は、前記シート材の裏面を吸着固定するテーブル部で構成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーザビーム加工装置である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
前記保持ステップでは、前記シート材の裏面を吸引して平坦なテーブル部に吸着固定することを特徴とする、請求項5に記載のレーザビーム加工方法である。
【0016】
上記発明の装置及び方法を用いれば、
シート材をより平坦に保持することができ、レーザ加工中にシート材がばたついたり変形したりすることを防ぐことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、
前記シート材が積層成膜で形成されるシート状基材であって、
前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載のレーザビーム加工装置を備え、
前記加工パターンは当該積層成膜毎に登録されており
前記制御部は、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、積層成膜シート材の製造装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、
前記シート材が積層成膜で形成されるシート状基材であって、
請求項5又は請求項6のいずれかに記載のレーザビーム加工方法を用い、
前記加工パターンは当該積層成膜で形成されるパターンに対応して積層成膜毎に登録されており、
前記レーザ加工ステップでは、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、積層成膜シート材の製造方法である。
【0019】
上記発明の装置及び方法を用いれば、積層成膜シート材のレーザ加工の際に、下層に形成されている回路パターンの送り方向や幅方向の伸縮率が異なっていても、上層の加工パターンは、下層に形成されている回路パターンの寸法にフィットするように、補正演算して適正量のピッチ送りを行うことができる。そのため、予め規定した線幅や上下層パターンの重ね合わせ位置精度を維持して、所定の立体配線パターンを再現することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、
前記シート状材が積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材であって、
前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載のレーザビーム加工装置を備え、
前記加工パターンは当該薄膜太陽電池の積層成膜毎に登録されており
前記制御部は、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、薄膜太陽電池の製造装置である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、
前記シート状材が積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材であって、
請求項5〜請求項7のいずれかに記載のレーザビーム加工方法を用い、
前記加工パターンは当該薄膜太陽電池の電極形成用パターンに対応して積層成膜毎に登録されており、
前記レーザ加工ステップでは、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、薄膜太陽電池の製造方法である。
【0022】
上記発明の装置及び方法を用いれば、積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材のレーザ加工の際に、下層に形成されている回路パターンの送り方向や幅方向の伸縮率が異なっていても、上層の加工パターンは、下層に形成されている回路パターンの寸法にフィットするように、補正演算して適正量のピッチ送りを行うことができる。そのため、予め規定した線幅や上下層パターンの重ね合わせ位置精度を維持して、所定の立体配線パターンを再現することができる。
【発明の効果】
【0023】
成膜後シート状基材が伸縮しやすい場合であっても、加工パターンの倍率を適切に補正しながら転写することができるので、予め規定した位置・線幅・繰り返しピッチの精度を維持して所定パターン加工をすることができる。さらに、重ね合わせのパターン加工に適用すれば、上下層パターンの重ね合わせ位置精度を維持して、所定の立体配線パターンを再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具現化する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。
【図3】本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。
【図4】本発明を適用して加工されるシート材の断面を工程毎に表した図である。
【図5A】本発明を適用して加工されるシート材の例を示す平面図である。
【図5B】本発明を適用して加工されるシート材の別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
図1は本発明を具現化する形態の一例を示す斜視図であり、図2はそのシステム構成図である。
図1において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向
とする。特にX方向の矢印の方向を下流側、その逆方向を上流側、Y方向の矢印の方向を奥側、その逆方向を手前側、Z方向の矢印の方向を上、その逆方向を下と表現する。以下各図においても同様に表現する。
【0026】
レーザビーム加工装置1は、シート材搬送部2と、レーザ加工部3と、加工パターン登録部4と、基準マーク間隔計測部5と、制御部9とを含んで構成されている。
【0027】
シート材搬送部2は、円筒状に巻き付けられたシート材10を巻き出す巻出部21と、巻き出されたシートを所定の方向に搬送する搬送ローラ22と、搬送されたシート材を平坦に保持する保持部24と、加工が済んだシート材を再び円筒状に巻き付ける巻取部26とを含んで構成されている。巻出部21、搬送ローラ22及び巻取部26は、Y方向を回転中芯軸として回転可能なように、レーザビーム加工装置1のフレーム15に取り付けられている。巻出部21、搬送ローラ22及び巻取部26には、駆動用モータ21m、22m、26mが取り付けられており、加工対象となるシート材10を矢印10vの方向に搬送することができる。
【0028】
シート材搬送部2は、加工エリアの上下流に取り付けた搬送ローラ22を用いる形態以外に、シート材端部を把持してX方向に定寸送りする把持送り機構(いわゆる、グリップフィーダー)を用いる形態や、それらを併用する様な形態であっても良い。
さらに、テーブルの上でシート材の裏面を保持する形態以外に、前記グリップフィーダでシート材端部を把持したまま、シート材の幅方向や搬送方向に張力を付与することができるように構成したものでも良く、そうすることでシート材を平坦に保持することができる。
また、シート材搬送部2には、シート吸引部28を適宜配置することが好ましい。このシート吸引部28は、上面に開口部を有する箱状の容器部と、前記容器部の下面に設けた吸引部で構成され、搬送経路中にシート材のたるみ部分10sを包み込むように配置しておく。そうすることで、シート吸引部28の前記容器部とシート材10との隙間から外気が流入するとともに、前記容器部内は負圧となる。そのため、シート材のたるみ部分10sには重力以上の張力が付与されるので、テーブル24に載置する際にシート材10にしわが発生することを防ぐことができる。
【0029】
レーザ加工部3は、レーザビーム加工装置1のフレーム15上に取り付けられてX方向に移動可能な一対のX軸スライダ部31と、前記平坦に保持されたシート材10を跨ぐように前記一対のX軸スライダ部31の上に取り付けられた門型フレーム32と、門型フレーム32に取り付けられてY方向に移動可能なY軸スライダ部33と、Y軸スライダ部33の上に取り付けられてシート材10に向けてレーザビームを照射することができるレーザヘッド部35とを含んで構成されている。
【0030】
本発明を具現化するために、レーザヘッド部35がレーザ照射部を構成しており、X軸スライダ部31及びY軸スライダ部33並びに門型フレーム32がレーザ照射位置変更部を構成している。
また、レーザ照射位置変更部を構成する別の具体例としては、レーザヘッド部35側が固定されて、前記保持されたシート材側が移動する形態や、X方向とY方向が個別に移動する形態が例示できる。
【0031】
加工パターン登録部4は、後述の制御部9に含まれて構成されており、平坦に保持されたシート材10に対してどの部分にレーザビームを照射するか、そのときのレーザビームの強さをどの程度にするか、などの情報が登録されている。また、登録された加工パターンは適宜読み出しされ、読み出された加工パターンに基づいて、レーザ加工部3のレーザ照射位置変更が行われる。
【0032】
基準マーク間隔計測部5は、シート材10に向けて取り付けられた観察カメラ51と、観察カメラ51に接続された演算ユニット52を含んで構成されている。
観察カメラ51は、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いたものを例示でき、観察した画像を電気信号に変換して、外部の機器へ映像信号として出力する形態のものが例示できる。
【0033】
演算ユニット52は、いわゆる画像処理装置と呼ばれる機器を組み込んだものを例示でき、観察カメラ51から出力された映像信号を入力することができる。演算ユニット52は、観察カメラ51の視野内のどの位置に基準マーク10mが写っているかを画像処理により演算することができる。さらに、複数配置された観察カメラ51の配置位置情報及び間隔情報を登録しておき、それぞれの観察カメラ51で観察された基準マーク10mの視野内の位置情報と、前記観察カメラの位置情報及び間隔情報に基づいて、シート材10上に形成された複数の基準マーク10mの位置及び間隔を演算することができる。
【0034】
制御部9には、制御用コンピュータ90と、情報入力手段91と、情報出力手段92と、発報手段93と、情報記録手段94と、機器制御ユニット95とが接続されて含まれている。
【0035】
制御用コンピュータ90としては、マイコン、パソコン、ワークステーションなどの、数値演算ユニットが搭載されたものが例示される。
情報入力手段91としては、キーボードやマウスやスイッチなどが例示される。
情報出力手段92としては、画像表示ディスプレイやランプなどが例示される。
【0036】
発報手段93としては、ブザーやスピーカ、ランプなど、作業者に注意喚起をすることができるものが例示される。
情報記録手段94としては、メモリーカードやデータディスクなどの、半導体記録媒体や磁気記録媒体や光磁気記録媒体などが例示される。
機器制御ユニット95としては、プログラマブルコントローラやモーションコントローラと呼ばれる機器などが例示される。
【0037】
制御用コンピュータ90には、基準マーク間隔計測部5の演算ユニット52から、前記基準マーク間の寸法情報が送信される。
また、上述の演算ユニット52に代えて、制御部9の画像処理部を用いたもの(具体的には画像処理ユニット96を用いる形態)であっても良い。この場合、観察カメラ51から出力された映像信号を画像処理ユニット96に入力し、前記基準マーク間の寸法情報を演算することができる。
【0038】
制御部9で用いられる前記画像処理部としては、上述の画像処理ユニット96に限らず、入手可能な画像処理機能を有する機器を採用することができる。例えば、一般にGPU(グラフィックプロセッシングユニット)と呼ばれ、制御用コンピュータ90の外部に設置される形態のものや、制御用コンピュータ90の筐体内に接続される形態のもの、制御用コンピュータ90の画像処理機能を利用したものなどが例示できる。
【0039】
機器制御ユニット95は、レーザビーム加工装置1を構成する各制御機器(図示せず)と接続されており、それらに対して制御用信号を与えることにより、各機器を動作させたり静止させたりすることができるようになっている。
【0040】
[加工フロー]
図3は、本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。図3では、シート材10に対してレーザ加工を行う一連のフローが、ステップ毎に示されている。レーザ加工に先立ち、加工パターンは予め登録しておく。
【0041】
先ず、シート材10を、レーザビーム加工装置1のシート材搬送部2にセットする(s101)。図1に示した形態の装置構成では、シート材10を巻出部21から巻き出し、搬送用ローラ22から巻取部26へと架け渡し、巻取部26で巻取ができるようにセットする。
【0042】
次に、レーザ加工の対象となるシート材10に、基準マークとなるパターンが形成されているかどうかを判断する(s102)。シート材10に、既に基準マーク10mが形成されていれば、当該シート材に対する加工パターンと加工位置情報を加工パターン登録部4から読み出し(s111)、シート材10を下流側に所定量だけ定寸送りし(s112)、シート材の加工対象領域とその周辺部を平坦に保持する(s113)。
【0043】
続いて、シート材上に形成されている複数の基準マーク10mを観察カメラ51を用いて観察し(s114)、複数の基準マーク10m間の寸法を計測する(s115)。
そして、寸法計測した基準マーク10m間の間隔と、加工パターン登録部4に登録されている加工パターンに対応する基準マーク10g間の寸法を比較し、この後、(詳細は後述するが、)重ね合わせパターンのレーザ加工位置情報を補正変更する(s116)。補正された加工位置情報に基づいて、X軸スライダ部31及びY軸スライダ部33とを動かしてレーザ加工位置を変更し(s117)、所定の場所でシート材10に向けてレーザビームを照射する(s118)。
【0044】
予め登録しておいた加工パターンに基づいて、所定のエリア内に対してレーザ加工が終了したかどうかを判断し(s119)、終了していないと判断すれば、続けて上記ステップs117,s118を繰り返す。レーザ加工が終了したと判断すれば、シート材10に対する全ての加工が終了したかどうかを判断し(s120)、終了していないと判断すれれば、上述のステップs112〜s119を繰り返す。シート材10に対する全ての加工が終了したと判断すれば、シート材10をシート材搬送部2から取り出す(s150)。
【0045】
一方、シート材10に基準マーク10mが形成されていない場合は、上述のステップs102において、基準マークが無いと判断し、次のフローに示すようなレーザ加工を行う。
先ず、当該シート材に対する加工パターンと加工位置情報を加工パターン登録部4から読み出し(s131)、シート材10を下流側に所定量だけ定寸送りし(s132)、シート材の加工対象領域とその周辺部を平坦に保持する(s133)。
続いて、加工パターン登録部4に登録されている加工パターン情報に基づいて、X軸スライダ部31及びY軸スライダ部33とを動かしてレーザ加工位置を変更し(s137)、所定の場所でシート材10に向けてレーザビームを照射する(s138)。
【0046】
予め登録しておいた加工パターンに基づいて、所定のエリア内に対してレーザ加工が終了したかどうかを判断し(s139)、終了していないと判断されれば、続けて上記ステップs117,s118を繰り返す。レーザ加工が終了したと判断されれば、シート材10に対する全ての加工が終了したかどうかを判断し(s140)、終了していないと判断されれば、上述のステップs132〜s139を繰り返す。シート材10に対する全ての加工が終了したと判断されれば、シート材10をシート材搬送部2から取り出す(s150)。
【0047】
上記のステップs101〜s119に基づいてシート材10に対してレーザ加工を行うことで、本発明を実施することができる。
そうすれば、成膜後シート状基材が伸縮しやすい場合であっても、適正量のピッチ送りが行えるので、予め規定した線幅や繰り返しピッチの精度を維持して、所定のパターン加工をすることができる。
【0048】
[重ね合わせ加工フロー]
図4は、本発明を適用して加工されるシート材の断面を工程毎に表した図であり、(a)〜(h)までアルファベット順に加工処理が進められる。
図4(a)は、シート材10の上に第1層目の成膜10aが形成された状態を表した断面図であり、シート材10はこの状態で保持部24に搬送される。
【0049】
図4(b)は、前記形成された第1層目の成膜10aに向けて、レーザヘッド部35からレーザビーム61が照射され、加工溝61sが形成された状態を表した断面図である。この第1層目の成膜10aは、所定の加工パターンに基づいて加工溝61sが形成された後、保持部24から下流へと搬送される。このとき、第1層目の成膜10aには基準マーク10mが複数個、所定の位置にマーキングされる。あるいは、既にシート材10上に基準マーク10mがマーキングされている場合もある。
【0050】
図4(c)は、加工溝が形成された第1層目の成膜10aの上に、さらに第2層目の成膜10bが形成された状態を表した断面図であり、シート材10はこの状態で保持部24に搬送される。その後、それぞれの基準マーク10mの位置を観察し、各基準マーク10mの位置に基づいて、第2層目の加工パターンの加工位置を補正する補正演算が行われる。
【0051】
図4(d)は、前記形成された第2層目の成膜10bに向けて、レーザヘッド部35からレーザビーム62が照射され、加工溝62sが形成された状態を表した断面図である。この第2層目の成膜10bは、所定の加工パターン及び前記補正演算の結果に基づいて加工溝62sが形成される。その後シート材10は、保持部24から下流へと搬送される。
【0052】
図4(e)は、加工溝が形成された第2層目の成膜10bの上に、さらに第3層目の成膜10cが形成された状態を表した断面図であり、シート材10はこの状態で保持部24に搬送される。その後、それぞれの基準マーク10mの位置を観察し、各基準マーク10mの位置に基づいて、第3層目の加工パターンの加工位置を補正する補正演算が行われる。
【0053】
図4(f)は、前記形成された第3層目の成膜10cに向けて、レーザヘッド部35からレーザビーム63が照射され、加工溝63sが形成された状態を表した断面図である。この第3層目の成膜10cは、所定の加工パターン及び前記補正演算の結果に基づいて加工溝63sが形成される。その後シート材10は、保持部24から下流へと搬送される。
【0054】
図4(g)は、加工溝が形成された第3層目の成膜10cの上に、さらに第4層目の成膜10dが形成された状態を表した断面図であり、シート材10はこの状態で保持部24に搬送される。その後、それぞれの基準マーク10mの位置を観察し、各基準マーク10mの位置に基づいて、第4層目の加工パターンの加工位置を補正する補正演算が行われる。
【0055】
図4(h)は、前記形成された第4層目の成膜10dに向けて、レーザヘッド部35からレーザビーム64が照射され、加工溝64sが形成された状態を表した断面図である。この第4層目の成膜10dは、所定の加工パターン及び前記補正演算の結果に基づいて加工溝64sが形成される。その後シート材10は、保持部24から下流へと搬送される。
【0056】
図5Aは、本発明を適用して加工されるシート材の1つの層での補正演算の例を示す平面図であり、シート材10上に設定された加工エリア10fのコーナ部周辺にそれぞれ基準マーク10m(10m−1〜10m−4)を配置した様子を示している。このように、加工エリア10fのコーナ部周辺にそれぞれ基準マーク10mが配置されているので、上述したフローに基づいて、複数の基準マーク10mの位置及び間隔を演算すれば、加工エリア全体を平均させたX方向及びY方向の伸縮率を求めることができる。
【0057】
図5Bは、本発明を適用して加工されるシート材の別の例を示す平面図であり、シート材10上に設定された加工エリア10fをさらに細分化し、それぞれ細分化したエリアの周辺部に基準マーク11mを配置した様子を示している。このように、加工エリア10fの周辺部には、それぞれ細分化された加工エリアの位置に対応した基準マーク11mが配置されているので、上述したフローに基づいて、複数の基準マーク11mの位置及び間隔を演算すれば、それぞれの加工エリア毎についてX方向及びY方向の伸縮率を求めることができる。そうすれば、薄膜太陽電池に代表されるような、下層の成膜や回路パターンの粗密具合が異なる多層膜シート材であっても、各細分化された加工エリア毎(つまり、局所的に)、X方向及びY方向の伸縮率を演算して求めることができる。そのため、加工エリア全体の伸縮率を平均化した場合と比較して、上下層の加工パターンの重ね合わせの位置精度を高めることができる。
【0058】
上述の図4(c)〜(h)並びに図5A,Bを用いて説明したように、積層成膜で形成されるシート状基材のレーザ加工装置及び方法並びに、積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材の製造装置及び製造方法に本発明を適用すれば、シート材10の各層で送り方向や幅方向の伸縮率が異なっていても、上層の加工パターンを加工するレーザヘッド部35は下層に形成されている成膜や回路パターンの位置や寸法にフィッティングするように、補正演算して適正量のピッチ送りを行うことができる。そのため、送り方向や幅方向の伸縮率が変化しやすいシート材10を用いた場合であっても、予め規定した線幅や上下パターンの重ね合わせ位置の精度を維持してレーザ加工を行うことができる。そして、上記成膜の積層と、各層に対するレーザパターニングを繰り返すことで、薄膜太陽電池などの所定の立体配線パターン構造を有する、積層成膜で形成されるシート状基材を製造することができる。























【符号の説明】
【0059】
1 レーザビーム加工装置
2 シート材搬送部
3 レーザ加工部
4 加工パターン登録部
5 基準マーク間隔計測部
9 制御部
10 シート材
10a 第1層目の成膜
10b 第2層目の成膜
10c 第3層目の成膜
10d 第4層目の成膜
10f 加工エリア
10g 基準マーク
10m 基準マーク
10s シート材のたるみ部
10v 矢印
11m 基準マーク
15 フレーム
21 巻出部
21m 駆動用モータ
22 搬送ローラ
22m 駆動用モータ
24 保持部
26 巻取部
26m 駆動用モータ
28 シート吸引部
31 X軸スライダ部
32 門型フレーム
33 Y軸スライダ部
35 レーザヘッド部
51 観察カメラ
52 演算ユニット
61 レーザビーム
61s 加工溝
62 レーザビーム
62s 加工溝
63 レーザビーム
63s 加工溝
64 レーザビーム
64s 加工溝
90 制御用コンピュータ
91 情報入力手段
92 情報出力手段
93 発報手段
94 情報記録手段
95 制御ユニット
96 画像処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送するシート材搬送部と、
前記シート材を保持する保持部と、
前記保持したシート材に向けてレーザビームを照射するレーザ照射部と、
前記保持したシート材と前記レーザ照射部とを前記シート材の搬送方向及び幅方向に相対移動させるレーザ照射位置変更部と、
前記保持したシート材上に前記レーザビームを照射する位置を登録する加工パターン登録部と、
前記登録された加工パターンに基づいて前記レーザ照射部からレーザビームを照射させる制御部とを備え、
前記保持したシート材に形成された複数の基準マークの位置を観察する基準マーク観察部と、
前記複数の基準マーク間の寸法を計測する基準マーク間隔計測部とを更に備え、
前記制御部は、
前記複数の基準マークの位置及びマーク間の計測寸法と、前記登録された加工パターンに基づいて、前記レーザ照射位置変更部の相対移動位置を補正演算し、前記補正演算して得られた所定の位置に前記レーザビームを照射する機能を更に備えている
ことを特徴とするレーザビーム加工装置。
【請求項2】
前記シート保持部は、前記シート材の裏面を吸着固定するテーブル部で構成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーザビーム加工装置。
【請求項3】
前記シート材が積層成膜で形成されるシート状基材であって、
前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載のレーザビーム加工装置を備え、
前記加工パターンは当該積層成膜毎に登録されており
前記制御部は、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、積層成膜シート材の製造装置。
【請求項4】
前記シート状材が積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材であって、
前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載のレーザビーム加工装置を備え、
前記加工パターンは当該薄膜太陽電池の積層成膜毎に登録されており
前記制御部は、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、薄膜太陽電池の製造装置。













【請求項5】
シート材を搬送するシート材搬送ステップと、
前記シート材を保持する保持ステップと、
前記保持したシート材に向けてレーザビームを照射するレーザ照射ステップと、
前記保持したシート材とレーザ照射部とを前記シート材の搬送方向及び幅方向に相対移動させるレーザ照射位置変更ステップと、
前記保持したシート材上に前記レーザビームを照射するための加工パターン及び位置情報
を読み出す加工パターン読み出しステップと、
前記読み出しされた加工パターンに基づいて前記レーザ照射位置変更ステップにおける相対移動を行いながら前記レーザ照射部からレーザビームを照射するレーザ加工ステップとを有し、
前記保持したシート材に形成された複数の基準マークの位置を観察する基準マーク観察ステップと、
前記複数の基準マーク間の寸法を計測する基準マーク間隔計測ステップとを更に有し、
前記レーザ加工ステップでは、
前記複数の基準マークの位置及びマーク間の計測寸法と、前記読み出された加工パターンに基づいて、前記レーザ照射位置変更ステップの相対移動位置を補正演算し、前記補正演算して得られた所定の位置に前記レーザビームを照射するステップを更に有する
ことを特徴とする、レーザビーム加工方法。
【請求項6】
前記保持ステップでは、前記シート材の裏面を吸引して平坦なテーブル部に吸着固定することを特徴とする、請求項5に記載のレーザビーム加工方法。
【請求項7】
前記シート材が積層成膜で形成されるシート状基材であって、
請求項5又は請求項6のいずれかに記載のレーザビーム加工方法を用い、
前記加工パターンは当該積層成膜で形成されるパターンに対応して積層成膜毎に登録されており、
前記レーザ加工ステップでは、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、積層成膜シート材の製造方法。
【請求項8】
前記シート状材が積層成膜で形成される薄膜太陽電池に用いられるシート状基材であって、
請求項5〜請求項7のいずれかに記載のレーザビーム加工方法を用い、
前記加工パターンは当該薄膜太陽電池の電極形成用パターンに対応して積層成膜毎に登録されており、
前記レーザ加工ステップでは、積層成膜形成後の当該複数の基準マークの位置及びマーク間の寸法と、当該積層成膜に対応する加工パターンに基づいて前記補正演算を行なう
ことを特徴とする、薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2013−86145(P2013−86145A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230099(P2011−230099)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】