説明

レーザファセットのための光電気化学エッチング

ファセットが、ファセットによって囲まれているキャビティ内の光学モードを支持するために十分に平滑であるように、光電気化学(PEC)エッチを使用してファセットをエッチングすることによって半導体レーザ素子を加工する方法。PECエッチングは、平滑な側壁を伴い、いかなるイオン損傷ももたらすことなく、GaN内に深い異方性トレンチをエッチングするために使用することが可能な方法であって、エッチングされたファセットの角度は、エッチングに作用するために使用される光の方向によって制御することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、同時係属で共通譲受人の出願(Adele C.Tamboli、Evelyn L.Hu、Steven P.DenBaars、およびArpan Chakrabortyによる米国仮特許出願第61/148,679号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING FOR LASER FACETS」、2009年1月30日出願、代理人整理番号第30794.301−US−P1(2009−360−1)号))の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張し、この出願は、本明細書に参考として援用される。
【0002】
本願は、同時係属で共通譲受人の米国特許出願(Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国実用出願第12/464,723号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SEMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2009年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−U1(2008−533−2))号であって、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/052,421号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SEMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2008年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−P1(2008−533−1)号)の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張する出願)および米国特許出願(Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、およびJames S.Speckによる米国実用出願第12,576,946号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING FOR CHIP SHAPING OF LIGHT EMITTING DIODES」、2009年10月9日出願、代理人整理番号第30794.289−US−U1 (2009−157−2)号)であって、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、およびJames S.Speckによる米国仮特許出願第61/104,015号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING FOR CHIP SHAPING OF LIGHT EMITTING DIODES」、2008年10月9日出願、代理人整理番号第30794.289−US−P1(2009−157−1)号)の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張する出願)に関連し、これらの出願は、本明細書に参考として援用される。
【0003】
(1.発明の分野)
本発明は、レーザファセットのための光電気化学(PEC)エッチングに関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
レーザダイオードにおいて、最も困難な処理ステップのうちの1つは、高品質なレーザファセットの形成である。これらのファセットの反射率は高くある必要があり、ファセットの角度は正確に決定されなければならず、イオン損傷は、活性領域の質を確保するために最小に維持されるべきである。一般的には、レーザファセットは、高品質なファセットをもたらすが、所望の方向における好適な劈開面の存在に依存するウエハ劈開によって形成される。劈開されたファセットが不可能である状況では(例えば、適切な劈開面の欠如、活性領域材料と格子不整合である基板の存在、統合されたレーザレイを形成することを所望する場合)、ドライエッチングが使用されてもよい。しかしながら、ドライエッチングによって、鏡様の平滑表面を生成するとともに、正確なファセット角度を達成することは困難である。加えて、イオン支援ドライエッチングは、活性材料に損傷を及ぼし、レーザ性能を劣化させる可能性がある。また、多くのウェットエッチング液は、結晶学的(crystallographic)であって、必ずしも、レーザファセットのための最適角度である結晶学的平面によって決定される角度でエッチングされた側壁を生成するわけではないので、単純(すなわち、非PEC)ウェットエッチングを使用してレーザファセットを形成することも制限を有する。このことは、図1および2に例示される。
【0005】
図1Aおよび1Bは、シリコン(Si)の等方性エッチングを説明しており、図1Aは、等方性エッチングされた輪郭の顕微鏡写真であって、図1Bは、等方性エッチングされた輪郭の概略図であって、両図とも、エッチングされたSi100およびSiOエッチングされたマスク102を示す(これらの図は、非特許文献1に見出され得る)。これらの図は、「単純」ウェットエッチングされた輪郭が、レーザファセットに好適ではない場合があることを例示する。具体的には、これらの図は、非PECウェットエッチを使用しても、イオン損傷を伴わずに、レーザファセットに要求されるエッチングされた角度または輪郭が達成され得る保証がないことを例示する。
【0006】
図2Aおよび2Bは、Si結晶学的エッチングを説明しており、図2Aは、異方性エッチングされた輪郭の断面概略図であって、図2Bは、上面概略図であって、両方とも、エッチングされたSi200およびSiOエッチングされたマスク202を示す(これらの図は、非特許文献2に見出され得る)。また、これらの図は、異方性エッチング液によって(100)Siウエハ200内に形成されたキャビティ204およびピラミッド形孔206を例示する。図に記載されるように、SiOエッチングされたマスク202の表面は、<100>面に沿って配向され、キャビティ204の側壁は、<111>面に沿って配向され、ピラミッド形孔206の側壁は、SiOエッチングされたマスク202の表面に対して、角度φ=54.74°にエッチングされる。
【0007】
サファイヤ上に成長させられたc−面窒化ガリウム(GaN)を含む、多くの一般的なレーザ幾何学形状の場合、劈開されたレーザファセットを形成することは困難である(その理由の1つは、サファイヤ基板が、GaNと格子不整合であることである)。実際、GaNが、格子不整合の誤配向基板上に成長させられるあらゆる場合において、劈開されたファセットの問題は困難となる。
【0008】
最近、本結晶面上に高インジウム含有量量子井戸を得ることが可能であって、GaNベースのレーザによって可能な波長の範囲を拡大し、特に、より長い波長の緑色光を発するレーザの開発を可能にするために、(11−22)方向に沿って成長させられた半極性レーザが注目を集めている。残念ながら、これらの素子のための好適な劈開面が存在せず、したがって、エッチングされたファセットが代わりに使用されなければならない。
【0009】
エッチングされた側壁の幾何学形状が、材料自体の結晶構造以外の要因によって制御可能である、レーザファセットのウェットエッチングのための方法が、素子サイズおよび形状に対する改善された制御をもたらすので、あらゆる結晶面にとって望ましいであろう。しかしながら、そのような方法は、ウェットまたはドライエッチングが唯一の選択肢である半極性配向に特に望ましいであろう。本発明は、この必要性を充足する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Madou、「Fundamentals of Microfabrication」、CRC Press、2nd Edition、p.210
【非特許文献2】Campbell、「The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication」、Oxford University Press、2nd Edition、p.528
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の先行技術における制限を克服し、本発明の熟読および理解によって明白となるだろう他の制限を克服するために、本発明は、レーザファセットのPECエッチングのための方法を開示する。
【0012】
GaNベースのレーザ構造の加工における主要な困難点の1つは、イオン損傷によって損なわれない平滑ファセットの形成である。一般的には、最良のレーザファセットは、ウエハ劈開によって形成されるが、半極性GaNを含む多くの結晶学的配向は、ファセット形成のための適切な角度である劈開面を有していない。また、サファイヤ上のGaN等、構造が非格子不整合基板上に成長させられる場合、劈開されたファセットを形成することは不可能である。
【0013】
PECエッチングは、平滑な側壁を伴い、いかなるイオン損傷ももたらすことなく、GaN内に深い異方性トレンチをエッチングするために使用可能な方法であって、エッチングされたファセットの角度は、エッチングに作用するために使用される光の方向によって制御可能である。本技法は、ほとんどのレーザ設計において、電気注入およびクラッディング(担体および光閉じ込め)の両方のために要求される、厚いp型AlGaN層を通したエッチングの際に困難であるので、GaN材料系内のレーザファセットには未だ適用されていない。
【0014】
PECエッチングを使用してエッチングされた輪郭に対する改善された制御(例えば、PECエッチングを使用するLED成形、エッチの光駆動性質の強調)は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、および James S.Speckによる米国実用出願第12,576,946号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING FOR CHIP SHAPING OF LIGHT EMITTING DIODES」、2009年10月9日出願、代理人整理番号第30794.289−US−U1(2009−157−2)号)において実証されており、本願は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、および James S.Speckによる米国仮特許出願第61/104,015号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING FOR CHIP SHAPING OF LIGHT EMITTING DIODES」、2008年10月9日出願、代理人整理番号第30794.289−US−P1(2009−157)号)の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張するものであって、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0015】
p型GaNをエッチングする能力は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、および Steven P.DenBaarsによる米国実用出願第12/464,723号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2009年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−U1(2008−533−2)号)において実証されており、本願は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、および Steven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/052,421号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2008年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−P1(2008−533)号)の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張するものであって、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0016】
本発明は、これらの技法を半極性(11−22)レーザ構造に適用し、PECエッチングを使用して、レーザファセットを形成することが可能であることを示す。エッチの方向性は、入射光の照射角度によって決定されるので、本発明の技法は、GaNベースの素子の任意の結晶面に広く適用することが可能であるが、しかしながら、実施例として、本発明は、その配向が好適な劈開面を欠いているので、半極性平面を使用する技法を実証することを選択する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
次に、図面を参照する(同一参照番号は、全体を通して対応する部品を表す)。
【図1】図1Aおよび1Bは、非PECウェットエッチを使用しても、イオン損傷を伴わずに、レーザファセットのために要求される、エッチングされた角度または輪郭が達成可能である保証はないことを例示する、シリコン(Si)の等方性エッチングを説明する。
【図2】図2Aおよび2Bは、異方性エッチング液によって、(100)Siウエハ内に形成される、ピラミッド形孔およびキャビティの断面(A)および上面図(B)を示す、結晶学的エッチングを説明する。
【図3】図3は、本発明のPECエッチングにおいて使用される装置を例示する、概略図である。
【図4】図4は、PECプロセスによってエッチングされた(11−22)GaNの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、エッチングされた面の角度は、これらのエッチ条件下において結晶学的である(勾配ファセットから明白)。
【図5】図5Aおよび5Bは、照射源の角度による、エッチングされた表面の角度のPEC制御を例示し、非常に平滑なエッチングされた表面(レーザファセットにとって重要)を示すSEM画像である。
【図6】図6は、本発明による、半導体レーザ素子を加工する方法を例示する工程図である。
【図7】図7は、図6のエッチング方法において使用される、レーザ素子構造の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい実施形態についての以下の説明では、本明細書の一部を形成し、本発明が実践され得る特定の実施形態の一例として示される添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、構造的変化は、本発明の範囲から逸脱することなく成され得ることを理解されたい。
【0019】
(技術説明)
次の2つの概念が、本発明には必要である。
【0020】
(1)PECエッチングを使用して、GaN内に、(m−面GaN基板を使用して成長させられた)平滑な側壁を有する深層異方性トレンチをエッチングする能力
(2)p型GaNおよびp型AlGaN等のp型半導体をPECエッチングする能力(Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、および Steven P.DenBaarsによる米国実用出願第12/464,723号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2009年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−U1(2008−533−2)号)に記載されており、この出願は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、および Steven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/052,421号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2008年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−P1(2008−533−1)号)の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張するものであって、参照することによって本明細書に組み込まれる)。本技法は、現在、レーザファセット、例えば、半極性レーザ試料の加工に適用されている。
【0021】
図3は、本発明のPECエッチングにおいて使用される装置を例示する概略図であって、PECエッチングは、GaNおよびその合金を含む、III窒化物半導体をエッチングするために使用可能な光支援ウェットエッチプロセスである。装置は、光源300(例えば、1000ワットキセノンランプ)と、電気化学セル302とから構成され、電解質306(例えば、KOHまたはHNO)内に浸漬された半導体304(例えば、GaN試料)は、アノードとして作用し、接触またはその上に直接パターン化され、カソード308として作用する、金属(通常、チタン/白金二重層)を有する。光源300からの光310は、半導体304内に電子−正孔対を発生させ、電子(−)は、カソード308を通して抽出される一方、正孔(+)は、半導体304表面において、酸化反応に関与し、半導体304表面を電解質306内に溶融させる。
【0022】
p型半導体のエッチングは、p型材料の表面におけるバンド屈曲によって、表面から正孔が追いやられ、酸化物の形成が防止されるので困難である。ヘテロ構造を使用するGaNを含むp型半導体をエッチングするための方法は、以前に開発されている(Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国実用出願第12/464,723号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、、2009年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−U1(2008−533−2)号)に記載されており、この出願は、Adele Tamboli、Evelyn L.Hu、Mathew C.Schmidt、Shuji Nakamura、およびSteven P.DenBaarsによる米国仮特許出願第61/052,421号(名称「PHOTOELECTROCHEMICAL ETCHING OF P−TYPE SMICONDUCTOR HETEROSTRUCTURES」、2008年5月12日出願、代理人整理番号第30794.272−US−P1(2008−533−1)号)の米国特許法第119条第(e)項に基づく利益を主張するものであって、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0023】
GaNのために使用される典型的なレーザ構造は、クラッディングとして厚い(0.5μmの)p型AlGaN層を組み込むが、p−GaNのPECエッチングのために、構造は本発明の技法に従い、したがって、厚いp型クラッディング層だけではなく、構造の残りも通してエッチングすることが可能である。
【0024】
PECエッチングを使用して形成される、半極性GaNレーザ構造の両端における2つのレーザファセットの実施例が、図4および5A−5Bに示される。
【0025】
図4は、PECプロセスによってエッチングされた(11−22)GaNの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、エッチングされた平面の角度は、これらのエッチ条件下、結晶学的である(勾配ファセットから明白)。図5Aおよび5Bは、照射源の角度による、エッチングされた表面の角度のPEC制御を例示し、非常に平滑なエッチングされた表面(レーザファセットのために重要)を示す、SEM画像である。
【0026】
最も平滑なエッチングされたファセットを達成するために、さらなるプロセス最適化が要求されるが、本図は、PECエッチングにおける入射光の角度に依存するエッチングされた表面を例示し、また、非常に平滑なエッチングされたファセットの可能性を示す。電解質濃度、照射強度、および適用されるバイアスを含め、プロセスを微調整するために使用可能な多数のパラメータが存在する。
【0027】
GaNのPECエッチングは、通常、図3に示されるように、電解質としてのKOHとともに、照射源として広帯域Xeランプを使用して、行われる。ランプ強度およびエッチング液濃度は、好ましいエッチ速度および形態に基づいて、選択される。
【0028】
図4に示されるエッチングされたファセットの場合、本発明は、6M KOH、約1センチメートルのスポットサイズに焦点が当てられるフィルタ無しの1000W Xeランプを使用して、バイアスを適用せず、エッチングは30分間行われた。Ti/Ptカソードが、伝導性n型GaN基板の裏面に配置され、使用されたエッチマスクは、絶縁であるが、不透明エッチマスクをもたらす、絶縁SiNにTiが続く二重層であった。エッチングされたファセットの結晶学的性質を低減することを含め、エッチの質を改善するために、これらの変数はすべて最適化されるべきである。
【0029】
GaNフィルタと広帯域ランプとの併用も含め、他の種類の光源も使用されているが、依然として、p型層をエッチング可能であるが、下層n−GaN上でエッチが停止されるだろう。多くの場合、レーザが、PECエッチングのために使用され、エッチ特性に対する向上された制御を提供し得る。
【0030】
図5Aおよび5Bに示されるエッチングされた輪郭は、レーザファセットに対して最適なものではないが(しかしながら、面発光幾何学形状のために使用され得る)、これらのSEM画像は以下を示す。
【0031】
(1)エッチングされた輪郭の角度は、入射光の角度によって決定される(結晶学的平面ではない)。
【0032】
(2)エッチングされた側壁は、平滑である(ファセットを「超」平滑にするために、何ら特別な注意が払われていない)。
【0033】
図5Aおよび5Bに示されるエッチは、広域ランプによって実行された。集束レーザ源は、さらに優れた制御可能ファセットを生成し得る。図5Aおよび5Bは、ファセットの方向性(従って、角度)、またはエッチングされた平面が、照射(例えば、レーザ)方向または入射光の角度によって、決定および制御されてもよいことを示す。
【0034】
NaOH、HNO、およびHClを含め、他の酸および塩も、GaNをエッチングするために使用されており、エッチの結晶学的選択性を低減するために、KOHより優れた選択肢であることが証明され得る。
【0035】
Tiは、本発明のエッチ条件下において劣化すると考えられるので、マスクおよび接点のための他の選択肢も使用され得る。
【0036】
最後に、エッチングの際、外部バイアスを適用することによって、結果として生じるエッチの速度および形態を実質的に変化させることが可能であって、結果を大幅に改善させる可能性が非常に高い。
【0037】
再び、図4を参照すると、レーザ構造を通して、深いエッチを行う能力の第1の実証は、半極性(11−22)試料であって、レーザに対して望ましくない非常に結晶学的なエッチファセットを示す。しかしながら、結晶学的エッチングの程度は、エッチングの際に、電解質組成および照射強度を修正することによって制御可能である。本経験は、PECエッチングが、レーザ構造を通してエッチングするために使用可能であるが、さらなる最適化が必要となることを示した。
【0038】
(プロセスステップ)
図6は、本発明に従う、光によって照射される領域内においてのみ化学エッチングが進行するように、半導体素子をウェットエッチングすることによって半導体レーザ素子を加工するための方法を例示する工程図である。具体的には、方法は、半導体レーザ素子のファセットが、ファセットによって囲まれている半導体レーザ素子のキャビティ内の光学モードの振動を支持するために十分に平滑であるように、半導体レーザの1つ以上のファセットをエッチングするステップを含む。
【0039】
一実施形態では、方法は、以下のステップを含む。
【0040】
ブロック600は、半導体レーザ素子を提供するステップを表し、半導体レーザ素子は、p型III窒化物層とn型III窒化物層との間に、発光III窒化物活性層クラッドを備える構造を有し、n型III窒化物層は、n型GaN基板上に形成される。
【0041】
ブロック602は、n型GaN基板の裏面上に1つ以上のカソードを配置するステップを表す。
【0042】
ブロック604は、n型GaN基板の裏面上に絶縁かつ不透明エッチマスクを配置するステップを表し、マスクは開口部を有する。
【0043】
ブロック606は、電解質溶液に内に浸漬され、カソードを介して電流源に電気的に連結されるように、図3の装置内に構造を留置するステップと、入射光強度によって、マスクの開口部を通して、n型GaN基板の裏面から構造を照射するステップとを表す。電流源からの外部バイアスは、電解質溶液内カソードと基準電極との間に適用されてもよい。
【0044】
ブロック608は、電解質濃度で、マスクの開口部を通して、照射された構造をエッチングしてファセットを形成することを表し、ファセットは、構造の第1の端部における第1のファセットと、レーザ構造の第2の端部における第2のファセットとを含み、開口部は、第1および第2のファセットのための所望の場所の上方に配置され、カソードは、第1および第2のファセットが、ファセットによって囲まれているキャビティ内の光学モードの振動を支持するために適切に配置されるように、エッチングされる材料の近傍かつn型層に接触して配置される。
【0045】
ブロック608は、ファセットのエッチングが、より大きく光駆動され、より小さく化学的に駆動されるようにPECエッチを制御するステップを含んでもよいことに留意されたい。
【0046】
例えば、制御するステップは、入射光強度をPECエッチのための電解質濃度と均衡させることを含んでもよい。制御するステップは、PECエッチのための入射光方向によって、ファセットのエッチングされた輪郭を決定することを含んでもよく、エッチングは、PECエッチのための入射光によって照射された領域内でのみ進行する。さらに、均衡させるステップは、入射光強度とPECエッチのための電解質濃度との間の均衡を選択して、より高速かつより深いエッチングを達成することを含んでもよい。
【0047】
別の実施例では、エッチングは、ファセットが半導体レーザ素子の劈開面に沿わないように、結晶学的とならないよう制御されてもよい。この点に関して、エッチングは、エッチングの際、電解質組成および入射光強度を修正することによって、結晶学的とならないように制御されてもよい。
【0048】
図7は、図6のエッチング方法において使用される、レーザ素子構造700の断面概略図であって、カソード702、マスク704、p型III窒化物706、発光III窒化物活性領域708、n型III窒化物710、n型GaN基板712、ならびにファセット714および716を示す。
【0049】
本方法の最終結果として、結晶学的でもなく、半導体レーザ素子の劈開面にも沿わない、ファセットによって囲まれているキャビティを有する半導体レーザ素子となる。好ましくは、上述のように、半導体レーザ素子のファセットは、ファセットによって囲まれている半導体レーザ素子のキャビティ内の光学モードの振動を支持するために適切に配置され、十分に平滑である。
【0050】
(可能性のある修正例)
本明細書で使用されるように、用語「III窒化物」、および同等用語「III族窒化物」、「(Al,Ga,In)N」、「Al(1−x−y)InGaN」(式中、0≦x≦1および0≦y≦1)、または「III−V窒化物」は、Al、Ga、およびInのそれぞれの窒化物だけではなく、そのようなIII窒化物の二元、三元、四元組成、または合金を含むものとして、広く解釈されることが意図される。故に、これらの用語は、化合物AlN、GaN、およびInNだけではなく、三元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、ならびに四元化合物AlGaInNを含む。(Al,Ga,In)成分種のうちの2つ以上が存在する場合、化学量論的な割合だけではなく、「化学量論外的な」割合(組成内に存在する(Al,Ga,In)成分種のそれぞれの相対的モル分率の存在に対して)を含む、あらゆる可能な組成が、発明の広範な範囲内で採用可能である。故に、GaNを参照しての本明細書における特定の議論は、また、より一般的には、種々の他の(Al、Ga、In)N材料の形成にも適用可能であることを理解されるであろう。さらに、発明の範囲内の(Al,Ga,In)N材料は、少量のドーパントおよび/または他の不純物あるいは含有材料をさらに含んでもよい。
【0051】
本発明の本技法の第1の実証は、非常に結晶学的なエッチングとなり、望ましくない傾斜ファセットをもたらした。高品質なファセットのためには、エッチが、より大きく光駆動され、より小さく化学的に駆動されるように、図6のプロセスステップを最適化する必要があり、このことは光強度を電解質濃度と均衡させることを要求する。適切な均衡によって、高速かつより深いエッチングを得ることが可能であって、この場合、エッチングされる輪郭は入射光方向によって決定される。
【0052】
(利点および改良点)
本方法を使用して形成されるファセットを伴うレーザは、ドライエッチングを使用して形成されるファセットを伴うレーザよりも、イオン損傷が少なく、より平滑なファセットを有し得る。本プロセスは、特に、好適な劈開面を有していないIII窒化物レーザの性能を改善するであろう。ドライエッチングは、キャビティへのイオン損傷およびその粗度を低減させるので、プロセスから完全に排除され得る。
【0053】
(結論)
ここで、本発明の好ましい実施形態の説明を結論付ける。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、例示および説明の目的のために提示されている。本発明を包括的または開示される正確な形態に制限することを意図するものではない。多くの修正例および変形例が、上述の教示に照らして可能である。本発明の範囲は、本発明を実施するための形態によってではなく、本明細書に添付の請求項によって制限されることが意図される。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子を加工する方法であって、
ファセットが、該ファセットによって囲まれている該半導体レーザ素子のキャビティ内の光学モードの振動を支持するために十分に平滑であるように、光電気化学(PEC)エッチを使用して該半導体レーザ素子の1つ以上のファセットをエッチングすることを含む、方法。
【請求項2】
前記半導体レーザ素子は、III窒化物半導体から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ファセットのエッチングが、より大きく光駆動され、より小さく化学的に駆動されるように、前記PECエッチを制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記制御するステップは、入射光強度を前記PECエッチのための電解質濃度と均衡させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御するステップは、前記PECエッチのための入射光方向によって、前記ファセットのエッチングされた輪郭を決定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチングすることは、前記PECエッチのための入射光によって照射される領域内でのみ進行する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記均衡させることは、前記入射光強度と前記PECエッチのための電解質濃度との間の均衡を選択して、より高速かつより深いエッチングを達成することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチングは、前記ファセットが、前記半導体レーザ素子の劈開面に沿わないように、結晶学的にならないよう制御される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
エッチングは、該エッチングの際に、前記電解質組成および前記入射光強度を修正することによって、結晶学的にならないよう制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体レーザ素子を提供することであって、該半導体レーザ素子は、p型III窒化物層とn型III窒化物層との間にIII窒化物活性層クラッドを備えている構造を有し、該n型III窒化物層は、n型GaN基板上にある、ことと、
1つ以上のカソードを該n型GaN基板の裏面上に配置することと、
絶縁かつ不透明エッチマスクを該n型GaN基板の該裏面上に配置することであって、該マスクは開口部を有する、ことと、
該マスクの開口部を通して、該n型GaN基板の裏面から、該入射光強度で該構造を照射することと、
該マスクの開口部を通して、該照射された構造を前記電解質濃度でエッチングして、前記ファセットを形成することであって、該ファセットは、該構造の第1の端部における第1のファセットと、レーザ構造の第2の端部における第2のファセットとを含み、該マスクの開口部は、該第1および第2のファセットのための所望の場所の上方に配置され、カソードが、該第1および第2のファセットが該ファセットによって囲まれているキャビティ内の前記光学モードの振動を支持するために適切に配置されるように、エッチングされた材料の近傍かつ該n型GaN基板に接触して配置される、ことと
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
エッチングの際に、外部バイアスを適用して、結果として生じるエッチの速度および形態を変更することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
半導体レーザ素子であって、
結晶学的でもなく、該半導体レーザ素子の劈開面にも沿わないファセットによって囲まれているキャビティを備える、素子。
【請求項13】
前記ファセットは、前記キャビティ内の光学モードの振動を支持するために適切に配置され、十分に平滑である、エッチングされたファセットである、請求項12に記載の半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記半導体レーザ素子は、III窒化物半導体から構成されている、請求項12に記載の半導体レーザ素子。
【請求項15】
前記半導体レーザ素子は、p型III窒化物層とn型III窒化物層との間に、III窒化物活性層クラッドを備える構造を有する、請求項12に記載の半導体レーザ素子。
【請求項16】
半導体素子を加工する方法であって、
化学エッチングが、光によって照射される領域内でのみ進行するように、該半導体素子をウェットエッチングすることを含む、方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517104(P2012−517104A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548372(P2011−548372)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/022753
【国際公開番号】WO2010/088613
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】