説明

レーザマーキング方法およびユリア樹脂成形体

【課題】ユリア樹脂成形体に対して視認可能なマーキングをすることのできるレーザマーキング方法、および視認し易いレーザ印字がされたユリア樹脂成形体を提供する。
【解決手段】このユリア樹脂成形体YPに対してマーキングをするレーザマーキング方法において、3.0質量%以上の二酸化チタンを含有するユリア樹脂成形体YPに対し、1064nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユリア樹脂を主成分とするユリア樹脂成形体に対してマーキングをするレーザマーキング方法、およびユリア樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ユリア樹脂成形体として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
当該文献1では、活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分を透明樹脂に含有することにより、所定の色のマーキングを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユリア樹脂成形体に対してCOレーザのような長波長のレーザを照射すると、発泡し、レーザ照射した部分が白くなる。
このため、緑色等白色以外に着色されたユリア樹脂成形体に対しては、レーザによりマーキングを行うことにより視認性の高いマーキングを形成する。一方、白色系に着色されたユリア樹脂成形体に対しては、レーザマーキングを行うと印字されたマーキングが白色であり母体の色と見分けがつかず視認性が高くないため、レーザマーキングを行うことができない。そこで、白色系のユリア樹脂成形体については、スタンピング等の方法によりマーキングを行っている。
【0005】
しかし、スタンピング等のマーキングでは、レーザマーキングに比較して、マーキングの内容を容易に変更することができない。このため、白色系のユリア樹脂成形体に対し、視認することができる程度のマーキングをレーザにより行う方法が求められているが、未だその方法が提案されていない。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユリア樹脂成形体に対して視認可能なマーキングをすることができるレーザマーキング方法、および視認可能なマーキングが形成されたユリア樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザマーキング方法は、3.0質量%以上の二酸化チタンを含有する前記ユリア樹脂成形体に対して、1064nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングすることを特徴としている。
【0008】
本発明のレーザマーキング方法は、0.1質量%以上の二酸化チタンを含有した前記ユリア樹脂成形体に対して532nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングすることを特徴としている。
【0009】
本発明のレーザマーキング方法において、レーザとしてパルス幅が20ns未満のパルス光を用いることが好ましい。
本発明のユリア樹脂成形体は、ユリア樹脂を主成分とし、3.0質量%以上の二酸化チタンを含有するものであり、1064nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされていることを特徴としている。
【0010】
本発明のユリア樹脂成形体は、ユリア樹脂を主成分とし、0.1質量%以上の二酸化チタンを含有するものであり、532nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユリア樹脂成形体に対して視認可能なマーキングをすることのできるレーザマーキング方法、および視認可能なマーキングが形成されたユリア樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に関して、レーザによる二酸化チタンの変色を確認する試験方法を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態に関して、二酸化チタンのレーザ照射後の状態を示す写真。
【図3】同実施形態のユリア樹脂成形体について、その吸収スペクトルを示すグラフ。
【図4】同実施形態のユリア樹脂成形体について、レーザの拡散経路を模式的に示す模式図。
【図5】同実施形態のユリア樹脂成形体について、二酸化チタンの含有率が0〜10%の範囲において二酸化チタンの含有率と明度との関係を示すグラフ。
【図6】同実施形態のユリア樹脂成形体について、二酸化チタンの含有率が0〜1%の範囲において二酸化チタンの含有率と明度との関係を示すグラフ。
【図7】同実施形態のユリア樹脂成形体について、二酸化チタンの含有率が0〜10%の範囲において二酸化チタンの含有率と明度差との関係を示すグラフ。
【図8】同実施形態のユリア樹脂成形体について、二酸化チタンの含有率が0〜1%の範囲において二酸化チタンの含有率と明度差との関係を示すグラフ。
【図9】同実施形態のユリア樹脂成形体について、レーザの掃引速度と発泡量、二酸化チタンの変色度、およびユリア樹脂成形体の変色度との関係を模式的に示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<ユリア樹脂成形体>
本実施形態のユリア樹脂成形体YPは、主成分であるユリア樹脂のほか、充填剤としてのパルプ、ユリア樹脂成形体YPの型離れをよくするための離型剤、着色剤としての二酸化チタン、樹脂を硬化させるための硬化剤を含有する。
【0014】
ユリア樹脂成形体YPは、次のような工程により形成される。液状のユリア樹脂に、パルプ、安定剤、硬化剤および二酸化チタンを加え、これらを加熱しながら混合して混練物とし、この混練物を乾燥させる。次に、乾燥した混練物(以下、「ドライミックス」)に、離型剤を加えて、ボールミルにより粉砕し、パウダー状のユリア樹脂成形材料とする。さらに、このパウダー状のユリア樹脂成形材料を混練し、粉砕することにより粒状のユリア樹脂成形材料を得る。そして、この粒状のユリア樹脂成形材料を用いて圧縮形成によりユリア樹脂成形体YPを形成する。なお、ユリア樹脂成形体YPを白色以外の色に着色するときは、混練物を形成するときに、着色顔料が加えられる。ユリア樹脂は混練物に対して80質量%以上とされ、充填材は1〜10質量%とされる。
【0015】
二酸化チタンは、ユリア樹脂成形体YPを白色に着色する着色剤として用いられている。また、二酸化チタンは、レーザ照射により、マーキングを可能とするため添加剤としても機能する。
【0016】
ユリア樹脂成形体YPはレーザの照射により発泡する。発泡したところは肉眼により白色に視認される。この発泡は、レーザ波長に関係なく生じる。具体的には、波長が10.2μmであるCOレーザ、または波長が1064nmであるYVOレーザを用いても発泡が生じる。また、YVOレーザの第二高調波を用いたレーザ(以下、「SHGレーザ」)、またはYVOレーザの第三高調波を用いたレーザ(以下、「THGレーザ」)を用いても発泡が生じる。また、ユリア樹脂成形体YPが着色されているとき、無色透明のとき、いずれの場合でも白色に発泡する。
【0017】
二酸化チタンは、レーザの照射により黒色に変化する。このような変色は、次式(1)に示すように、二酸化チタンの光の吸収または光による加熱により生じるチタンの4価から3価への還元に起因する。
【0018】
【化1】

なお、二酸化チタンと還元剤とが混合したものにCOレーザを照射することにより、二酸化チタンを還元して、二酸化チタンを変色させることができることが知られている。これに対し、1064nm以下の波長のレーザ光によれば、還元剤を用いることなく二酸化チタンを黒く変色させることができることが確認された。このため、本実施形態では還元剤を用いていない。
【0019】
図1〜3を参照して、レーザ波長による二酸化チタンの変色度合いについて説明する。なお、二酸化チタンの原色は白色であることから、黒色に近い色に変色するほど変色度合いが高いとする。
【0020】
図1を参照して、レーザによる二酸化チタンの変色試験について説明する。
スライドガラス1に粉末状の二酸化チタンを載せ、二酸化チタンを透明テープ2で固定する。そして、スライドガラス1側からレーザを照射する。本変色試験では、波長が355nmであるTHGレーザ、波長が532nmであるSHGレーザ、波長が1064nmであるYVOレーザ、および波長が10.2μmのCOレーザを用いて、二酸化チタンの変色試験を行った。
【0021】
図2は、レーザ照射された二酸化チタンの写真である。
図2(A)は、THGレーザの光を照射した二酸化チタンの写真である。同図に示されるように、THGレーザの照射により、二酸化チタンは白色から黒色系に変色する。図2(B)は、SHGレーザの光を照射した二酸化チタンの写真である。同図に示されるように、SHGレーザの照射により、二酸化チタンは白色から黒色系に変色する。図2(C)は、YVOレーザの光を照射した二酸化チタンの写真である。同図に示されるように、YVOレーザの照射により、二酸化チタンは白色から黒色系に変色する。
【0022】
なお、COレーザの光を二酸化チタンに照射することによっても二酸化チタンは変色する。COレーザによる二酸化チタンの変色度合いは、THGレーザによる二酸化チタンの変色度合い、SHGレーザによる二酸化チタンの変色度合い、およびYVOレーザによる二酸化チタンの変色度合いのいずれ場合よりも小さい。
【0023】
図3に、二酸化チタンを含有したユリア樹脂成形体YP(以下、「試料品」)の吸収スペクトルと、二酸化チタンを含有していないユリア樹脂成形体YP(以下、「比較品」)の吸収スペクトルを示す。
【0024】
試料品および比較品の吸収スペクトルは、波長400nm以下の範囲および波長1145nm以上の範囲に吸収率40%の吸収帯を有する。波長400nm〜1145nmの範囲においては、吸収率20%以上の吸収帯を有する。試料品と比較品とを比較すると、波長355nm付近に吸収率の差があり、試料品の吸収率は比較品の吸収率よりも高い。この部分の吸収率は二酸化チタンの有無による。すなわち、この吸収帯では、THGレーザの光が効率的に二酸化チタンに吸収される。
【0025】
図4を参照して、532nmの光のユリア樹脂成形体YPへの拡散経路と、1064nmの光のユリア樹脂成形体YPへの拡散経路との経路の相違を説明する。図4に示すように、1064nmの光のほうが、532nmの光よりもユリア樹脂成形体YPの深いところまで透過する。このため、1064nmの光による照射によれば、532nmの光の照射によりも深いところで二酸化チタンの変色が生じると考えられる。
【0026】
また、光がユリア樹脂成形体YPに進入してから外部に出るまでの経路を比較すると、1064nmの光の方が532nmの光よりも長い。このため、1064nmのレーザを照射するほうが、532nmの光を照射するときよりも、ユリア樹脂成形体YPの発泡量が多くなる。
【0027】
ところで、レーザによるユリア樹脂成形体YPの変色度合いは、ユリア樹脂成形体YPに含まれる二酸化チタンの含有率に依存する。以下、この点について説明する。
図5〜図8を参照して、二酸化チタンの含有率に対するレーザ照射部分の明度および明度差について説明する。明度は、白色に近いほど大きい値を示し、黒色に近いほど小さい値を示す。明度差は、図5および図6のデータに基づいて算出している。図5および図6の各データは、次の条件により得ている。なお、図中の二酸化チタンの含有率は、ユリア樹脂の質量を100としたときの割合を示す。
[試料]
(ユリア樹脂成形体の組成)
・ユリア樹脂の質量比:〜90質量%
・パルプの質量比:1〜10質量%
・二酸化チタンの質量比:0.09〜10質量%
[マーキング条件]
・レーザ掃引速度(mm/s)およびレーザ強度(W)は、照射部分と非照射部分との明度差が最も大きくなる条件に調整される。例えば、酸化チタンの濃度が質量比で0.5質量%のユリア樹脂成形体の場合、レーザ掃引速度は900mm/s、レーザ強度は1.5Wに調整される。
【0028】
明度は、分光測色計(ミノルタ製 CM−2002)により計測した値を示す。明度差は、当該ユリア樹脂成形体YPにおいてレーザが照射されていない部分(非照射部分)の明度と、当該ユリア樹脂成形体YPにレーザを照射したときの当該照射部分の明度との差を示す。
【0029】
図5に示すように、ユリア樹脂成形体YPの明度は、二酸化チタンの含有率が1.0質量%以上では、その含有率に拘わらず略一定となる。一方、図6に示すように、二酸化チタンの含有率が1.0質量%より小さいとき、ユリア樹脂成形体YPを透過する光量が多くなるため、明度が小さくなる。
【0030】
図5および図6に示すように、YVOレーザが照射された照射部分の明度は、二酸化チタンの含有量を多くするほど、小さくなる。照射部分と非照射部分との明度差について言えば、図7に示すように、二酸化チタンの含有量を3.0質量%以上としたとき、照射部分とユリア樹脂成形体YPの非照射部分との明度差が1以上となる。
【0031】
図5および図6に示すように、SHGレーザが照射された照射部分の明度は、二酸化チタンの含有量を多くするほど、小さくなる。照射部分と非照射部分との明度差について言えば、図7および図8に示すように、二酸化チタンの含有量を0.1質量%以上としたとき、ユリア樹脂成形体YPとの明度差が1以上となる。
【0032】
明度差が1以上のとき、レーザの照射部分とレーザが照射されていない非照射部分との差が明確となるため、レーザによるマークを視認により判別することができる。したがって、明度差が1以上となることを視認可能の基準とすると、ユリア樹脂成形体YPの組成とレーザ波長との関係は、次のようになる。
(1)「3.0質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」は、「1064nm以下の波長を有するレーザにより視認可能なレーザマーキングが可能」である。
(2)「0.1質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」は、「532nm以下の波長を有するレーザにより視認可能なレーザマーキングが可能」である。
【0033】
なお、データとして示していないが、THGレーザによるレーザマーキングによれば、0.1質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YPに対するレーザマーキングのマークは、十分視認可能であり、明度差が1以上となる。
【0034】
<レーザマーキング方法>
レーザマーキング方法について説明する。
上記に示したように、ユリア樹脂成形体YPは、二酸化チタンの含有率により、視認可能なマークを形成することができるレーザ波長が異なる。すなわち、二酸化チタンの含有率が少ないときは、短波長のレーザによるレーザマーキングが好ましい。二酸化チタンの含有率が多いときは、長波長のレーザによるレーザマーキングでも視認可能なマークを形成することができる。例えば、以下のように、二酸化チタンの含有率に応じてレーザ波長を選択する。
(1)「3.0質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」に対しては、「1064nm以下の波長を有するレーザ」を用いて、レーザマーキングをする。
(2)「0.1質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」に対しては、「532nm以下の波長を有するレーザ」を用いて、レーザマーキングをする。
【0035】
ところで、ユリア樹脂成形体YPにレーザマーキングをするとき、レーザの照射条件、例えばパルス幅や掃引速度によって、マークの変色度合いが変化する。このため、レーザによる照射部分とマーキングがされていない非照射部分との明度差が大きくなるようにレーザの照射条件が調整される。
【0036】
図9を参照して、レーザの掃引速度に対するユリア樹脂成形体YPの変色度合いについて説明する。
図9(A)は、レーザによりユリア樹脂成形体YPに形成される発泡量の傾向を示す。
【0037】
発泡量はレーザの掃引速度を遅くするほど多くなる。すなわち、レーザの掃引速度が遅くなるほど同じ箇所にレーザの照射時間が長くなり、加えられる熱量が大きくなる。このため、ユリア樹脂成形体YPの発泡量しやすくなる。
【0038】
仮に、二酸化チタンの含有量およびレーザ波長が認識可能なマークを形成する条件を満たしている場合であっても、掃引速度が所定速度よりも遅いとき、照射部分が黒く変色せず、ユリア樹脂成形体YPの発泡のため白色系に変色する。例えば、二酸化チタンの含有量が3.0質量%において、YVOレーザを用いてマーキングしたとき、所定掃引速度よりも遅い掃引速度では白色系のマークが形成される。
【0039】
図9(B)は、掃引速度に対する二酸化チタンの変色度合いの傾向を示す。
変色度はレーザの掃引速度を速くするほど小さくなる。すなわち、レーザの掃引速度が速くなるほど同じところにレーザが照射される時間が短くなり、加えられる光および熱が小さくなる。このため、ユリア樹脂成形体YPが変色しにくくなる。
【0040】
仮に、二酸化チタンの含有量およびレーザ波長が認識可能なマークを形成する条件を満たしていたとしても、掃引速度が所定速度よりも速いとき、照射部分が黒く変色しない。例えば、二酸化チタンの含有量が3.0質量%においてYVOレーザを用いてマーキングするとき、所定掃引速度よりも速い掃引速度では変色が生じない。
【0041】
図9(C)は、二酸化チタンを含有したユリア樹脂成形体YPについて、掃引速度に対するユリア樹脂成形体YPのマークの変色度の傾向を示す。なお、同図は、レーザによる発泡と二酸化チタンの変色度合いとを考慮したものである。
【0042】
レーザの掃引速度が遅いときは、ユリア樹脂成形体YPの発泡が支配的となる。このとき、レーザによるマークは白色系となる。すなわち、マークの色とユリア樹脂成形体YPの色とが同系となるため、マークの視認性は低い。
【0043】
レーザの掃引速度が所定掃引速度Aよりも大きく掃引速度Bよりも小さいとき、ユリア樹脂成形体YPの発泡が少なくなり、二酸化チタンの変色が目立つようになる。このとき、レーザによるマークは黒色系となる。すなわち、マークの色はユリア樹脂成形体YPの色と異なるため、マークの視認性が高くなる。
【0044】
レーザの掃引速度が掃引速度Bよりも大きいとき、一箇所に照射されるレーザの光量が少なくなるため、ユリア樹脂成形体YPの発泡量および二酸化チタンの変色度合いが小さくなる。このとき、ユリア樹脂成形体YPにはレーザによるマークの痕跡が少なくなる。
【0045】
次に、レーザのパルス幅によるユリア樹脂成形体YPの変色度合いについて説明する。
YVOレーザ波長は1064nmであり、そのパルス幅は約10nsである。YAGレーザ波長は1064nmであり、そのパルス幅は約100nsである。YVOレーザのレーザ強度とYAGレーザのレーザ強度を同じとし、ユリア樹脂成形体YPにそれぞれのレーザによりレーザマーキングしたとき、前者の方が照射部分の変色度合いが大きい。すなわち、同じ波長を有するレーザを用いてレーザマーキングするときでも、パルス幅が短いレーザによりレーザマーキングを行う方がより視認性の高いマークを形成することができる。パルス幅が短いレーザによれば、短時間でエネルギーの高いレーザを照射することができるため、照射部分からの熱の拡散を抑制することができ、結果的に発泡部分の面積を小さくすることができる。
【0046】
本実施形態よれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、3.0質量%以上の二酸化チタンを含有するユリア樹脂成形体YPに対して、1064nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングする。
【0047】
二酸化チタンを含有したユリア樹脂成形体YPに所定波長以下のレーザを照射したとき、ユリア樹脂成形体YPの発泡と二酸化チタンの還元が生じる。ユリア樹脂成形体YPの発泡部分は白色に視認され、二酸化チタンが還元されたものは黒色に視認される。このため、ユリア樹脂成形体YPの発泡量が、二酸化チタンの還元量よりも大きいときは、レーザが照射された照射部分は白色に視認される。
【0048】
具体的には、二酸化チタンの含有量が3.0質量%より少ないユリア樹脂成形体YPに、1064nmの波長のレーザを照射したとき、発泡が支配的となり、照射部分の変色度合いが小さくなり、レーザによるマークを視認しにくくなる。
【0049】
上記方法では、二酸化チタンの含有量が3.0質量%以上のユリア樹脂成形体YPに1064nm以下の波長のレーザを照射する。これにより、二酸化チタンの含有量が3.0質量%より少ないユリア樹脂成形体YPに1064nm以上の波長のレーザを照射したときと比較して、視認しやすいマークを形成することができる。
【0050】
(2)本実施形態によれば、0.1質量%以上の二酸化チタンを含有したユリア樹脂成形体YPに対して532nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングする。
二酸化チタンの含有量が0.1質量%より少ないユリア樹脂成形体YPに、532nmの波長のレーザを照射したとき、発泡が支配的となり、照射部分の変色度合いが小さくなり、レーザによるマークを視認しにくくなる。これに対し、上記方法では、二酸化チタンの含有量が0.1質量%以上のユリア樹脂成形体YPに532nm以下の波長のレーザを照射する。これにより、二酸化チタンの含有量が0.1質量より少ないユリア樹脂成形体YPに532nm以上の波長のレーザを照射したときと比較して、視認しやすいマークを形成することができる。
【0051】
(3)本実施形態によれば、ユリア樹脂成形体YPに印字するためのレーザとしてパルス幅が20ns未満のパルス光を用いる。
二酸化チタンを含有するユリア樹脂成形体YPの黒色系への変色は、同じ波長かつ同じ出力であっても、パルス幅が長いレーザにより照射するときよりも、パルス幅が短いレーザにより照射するときの方が、その変色度合いが大きい。上記方法では、パルス幅が20ns未満のパルス光を用いるため、20ns以上のパルス幅のレーザによりレーザ照射する場合と比較して、照射部分をより黒色系に変色させることができる。
【0052】
(4)本実施形態によれば、ユリア樹脂成形体YPは、ユリア樹脂を主成分とし、3.0質量%以上の二酸化チタンを含有し、1064nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされている。
【0053】
二酸化チタンの含有量が3.0質量%より少ないユリア樹脂成形体YPでは、1064nmの波長のレーザを照射したときレーザによるマークを視認しにくくなる。この点、上記構成では、3.0質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YPに対して1064nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングしている。このため、二酸化チタンの含有量が3.0質量%未満のユリア樹脂成形体YPに対して1064nmより大きい波長のレーザによりレーザマーキングしたものと比較して、マークをより視認しやすいユリア樹脂成形体YPにすることができる。
【0054】
(5)本実施形態によれば、ユリア樹脂成形体YPは、ユリア樹脂を主成分とし、0.1質量%以上の二酸化チタンを含有し、532nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされている。
【0055】
二酸化チタンの含有量が0.1質量%より少ないユリア樹脂成形体YPでは、532nmの波長のレーザを照射したときレーザによるマークを視認しにくくなる。この点、上記構成では、0.1質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YPに対して532nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングしている。このため、二酸化チタンの含有量が0.1質量%未満のユリア樹脂成形体YPに対して532nmより大きい波長のレーザによりレーザマーキングしたものと比較して、マークをより視認しやすいユリア樹脂成形体YPにすることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0057】
・上記実施形態では、二酸化チタンを還元する還元剤を用いていないが、ユリア樹脂成形体YPの成分として還元剤を含めることもできる。
・上記実施形態では、マークの視認性のパラメータとして明度差を基準としている。しかし、ユリア樹脂成形体YPが白色以外に着色されているとき、明度差が1以上でないときであっても、マークを視認することができる場合がある。そこで、明度を視認性のパラメータとすることもできる。
【0058】
例えば、レーザによる照射部分の明度が8.5以下となることを視認可能の基準とすると、図5〜図8のデータに基づいて、ユリア樹脂成形体YPの組成とレーザ波長との関係は、次のようになる。
(1)「4.0質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」は、「1064nm以下の波長を有するレーザによりレーザマーキング可能」である。
(2)「0.05質量%以上の二酸化チタンを含むユリア樹脂成形体YP」は、「532nm以下の波長を有するレーザによりレーザマーキング可能」である。
【0059】
・上記実施形態では、YVOレーザを用いているが、YAGレーザを用いて、第二高調波、第三高調波のレーザを形成することもできる。また、固体レーザに限定されず、液体レーザまたは気体レーザを用いることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1…スライドガラス、2…透明テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユリア樹脂を主成分とするユリア樹脂成形体に対してマーキングをするレーザマーキング方法において、
3.0質量%以上の二酸化チタンを含有する前記ユリア樹脂成形体に対して、1064nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングする
ことを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項2】
ユリア樹脂を主成分とするユリア樹脂成形体に対してマーキングをするレーザマーキング方法において、
0.1質量%以上の二酸化チタンを含有した前記ユリア樹脂成形体に対して532nm以下の波長のレーザを照射してレーザマーキングする
ことを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザマーキング方法において、
前記レーザとしてパルス幅が20ns未満のパルス光を用いる
ことを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項4】
ユリア樹脂を主成分とするユリア樹脂成形体において、
3.0質量%以上の二酸化チタンを含有するものであり、
1064nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされている
ことを特徴とするユリア樹脂成形体。
【請求項5】
ユリア樹脂を主成分とするユリア樹脂成形体において、
0.1質量%以上の二酸化チタンを含有するものであり、
532nm以下の波長のレーザによりレーザマーキングされている
ことを特徴とするユリア樹脂成形体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−116145(P2012−116145A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269480(P2010−269480)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】