説明

レーザリフトオフ方法及びレーザリフトオフ装置

【課題】基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、当該基板から当該材料層を剥離できるようにすること。
【解決手段】基板1と前記材料層2との界面で前記材料層を前記基板から剥離させるため、基板1上に材料層2が形成されたワーク3に対し、基板1を通して、パルスレーザ光をワーク3に対する照射領域を刻々と変えながら、前記ワーク3において隣接する各照射領域が重畳するように照射する。重畳する照射領域におけるそれぞれのレーザ光の大きさを、材料層2を基板1から剥離させるに必要な分解閾値を超えるエネルギーとなるような大きさとすることで、基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、材料層を基板から確実に剥離させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体により形成される半導体発光素子の製造プロセスにおいて、基板上に形成された材料層にレーザ光を照射することによって、当該材料層を分解して当該基板から剥離する(以下、レーザリフトオフという)ためのレーザリフトオフ方法及びレーザリフトオフ装置に関する。
特に、本発明は、ワーク上のレーザ光照射領域を刻々と変えながら、ワーク上の隣接する照射領域に照射される各レーザ光が重畳するようにしてレーザ光を照射することにより、材料層を基板から剥離するレーザリフトオフ方法及びレーザリフトオフ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)系化合物半導体により形成される半導体発光素子の製造プロセスにおいて、サファイア基板の上に形成されたGaN系化合物結晶層を当該サファイア基板の裏面からレーザ光を照射することにより剥離するレーザリフトオフの技術が知られている。
例えば、特許文献1においては、サファイア基板の上にGaN層を形成し、当該サファイア基板の裏面からレーザ光を照射することにより、GaN層を形成するGaNが分解され、当該GaN層をサファイア基板から剥離する技術について記載されている。
ところで、サファイア基板の上に形成されたGaN系化合物結晶層を当該サファイア基板の裏面からレーザ光を照射することにより剥離するためには、GaN系化合物をGaとNとに分解するために必要な分解閾値以上の照射エネルギーを有するレーザ光を照射することが重要になる。
ここで、レーザ光を照射した際には、GaNが分解することによりNガスが発生することから、当該GaN層にせん断応力が加わり、当該レーザ光の照射領域の境界部においてクラックが生じる場合がある。例えば、図10に示すように、レーザ光の1ショットの照射領域110が正方形状である場合、GaN層111のレーザ光の照射領域の境界112にクラックが発生してしまう問題がある。
【0003】
特に、数μm以下の厚みのGaN系化合物結晶層を用いて素子を形成する場合には、GaN系化合物結晶層がNガス発生によるせん断応力に耐えるための十分な強度を有しない場合もあり、容易にクラックが発生してしまう。更に、GaN系化合物結晶層のみならず、その上に形成された結晶層にクラックが伝播し、素子そのものが破壊されてしまう場合もあり、微小なサイズの素子を形成する際の問題となっている。
かかる問題に対して特許文献2には、サファイア基板上に形成されたGaN層を半導体発光素子のチップに対応するよう分離するためのストリートを形成し、レーザリフトオフの工程を実行中にサファイア基板とGaN層との界面で発生する残留応力を、当該ストリートによって緩和する技術が開示されている。
同文献によれば、GaN層を小領域に分断し、周囲からの残留応力による影響を最小にし、また、小領域自体は最小の残留応力しか有しないようにすることによって、レーザリフトオフの最中におけるGaN層の割れを低減することができる、とされている。
【0004】
このように、GaN層にストリート(チップ分離用境界線:スクライブライン)を形成してレーザリフトオフの工程を実行するときには、特許文献2のFig.13に示すように、レーザ光の照射領域のエッジ部が当該ストリートに一致するようにレーザ光を照射することが好ましい。これは、各レーザ光の照射領域は必然的にそれぞれの端部同士が重畳することになるが、各レーザ光の照射領域がGaN層の表面(つまり、ストリート以外の部分)において重畳すると、当該重畳した領域に照射されるレーザ光のエネルギーが過大になるため、GaN層に悪影響を生じるおそれがあるからである。
【0005】
しかしながら、GaN層にストリートを形成した場合は、前記した残留応力を緩和するためにストリートの幅をある程度大きくしなければならないが、そうすることによって、1枚のサファイア基板から採取される半導体発光素子のチップの個数が減少するという問題がある。
而して、GaN層にストリートを形成した場合は、レーザ光の照射領域のエッジ部がストリートに一致するように、レーザ光の照射領域とサファイア基板上に形成されたGaN層とを精度良くアライメントすることが必要になる。したがって、ストリートの幅を小さくした場合は、レーザ光の照射領域のエッジ部をGaN層に形成されたストリート上に精度良くアライメントすることが困難になり、アライメントのための装置構成が複雑になるばかりか、その操作・管理が難しくなる。
さらには、半導体発光素子のチップサイズが相違する毎に、上記したアライメントを行うことが必要になるため、レーザリフトオフの工程が極めて複雑化するといった問題が生じる。
【0006】
一方、特許文献3には、上記のようなストリートをGaN層に形成することなく、GaN層の割れを低減することを目的として、図11に示すように、サファイア基板121とGaN系化合物の結晶層122の界面への照射領域123がライン状になるようにレーザ光124を成形し、サファイア基板121をレーザ光124の長手方向と垂直方向に移動させながら、当該レーザ光124をサファイア基板121の裏面から照射する技術が開示されている。同文献には、レーザ光124が光学系の解像度以下のライン幅になるように成形されていることにより、図12に示すように、レーザ光124のライン幅方向の光強度分布が、略中央にピークを有し当該ピークからエッジ部に向けてなだらかになっていることが記載されている。
同文献によれば、レーザ光124を上記のように成形することにより、レーザ光124を結晶層122に照射した際のレーザ光124のライン幅方向のエッジ部に当る照射領域で急激なレーザアブレーションが行われない。したがって、GaN層である結晶層122の分解時にNが急激に発生することがないので、過剰な応力が結晶層122に加わらず、結晶層122及びその上に形成される素子へのクラック発生を低減することができる、とされている。
しかしながら、本発明者らが上記特許文献3に開示されるレーザリフトオフ工程を検証したところ、GaN層である結晶層に発生する割れを低減する効果は、必ずしも十分でないことが確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−501778号公報
【特許文献2】特表2007−534164号公報
【特許文献3】特開2003−168820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
具体的に、本発明者らは、特許文献3に従って、サファイア基板上に形成された結晶層をライン状に成形されたレーザ光の長手方向と垂直な方向に移動させ、サファイア基板の移動速度及び間歇的に照射されるパルスレーザ光の照射間隔を適宜変更して、ライン状に成形したレーザ光を結晶層に照射したところ、結晶層であるGaN層にクラックが生じることが確認された。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、本発明の第1の目的は、基板上に形成された結晶層(以下材料層と呼ぶ)に割れを生じさせることなく、当該基板から当該材料層を剥離することができるレーザリフトオフ方法およびレーザリフトオフ装置を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、材料層を基板から剥離させるために十分なレーザエネルギーを与えることで基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、かつ、基板に材料層が再接着する等の不具合を生じさせることなく、当該基板から当該材料層を剥離することができるレーザリフトオフ方法およびレーザリフトオフ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
レーザリフトオフでは、材料層が形成されたサファイア基板(以下、ワークという)或いはレーザ源をスキャンさせ、ワークに対するレーザ光の照射領域を刻々と変えながらレーザ光を材料層に照射することが通常行われる。それは、レーザ源から出射するレーザ光の照射領域をワークと同等の大きさにすることは困難だからである。このため、ワーク上の隣接する各レーザ光の照射領域のエッジ部は必然的に重畳することになるが、レーザリフトオフの工程では、いかにして各レーザ光を重畳させるかが極めて重要である。これについて図2を用いて説明する。
レーザリフトオフ工程では、パルスレーザ光を出射するレーザ源を使用し、レーザ光の照射領域が刻々と変わるようにレーザ光を照射している。つまり、後述する図2を用いて説明すると、パルスレーザ光の照射領域S1にレーザ光を照射した後に、ワーク或いはレーザ源を搬送して次なる領域S2にレーザ光を照射する。このとき、パルスレーザ光の照射領域S1とS2のそれぞれのエッジ部が重畳する。
【0010】
ここで、照射領域S1とS2のそれぞれのエッジ部が重畳する領域STにおいては、以下の理由により、照射領域S1およびS2のそれぞれに照射されるパルスレーザ光の照射量が積算されない。これは、照射領域S1にレーザ光を照射した後に照射領域をS1からS2に移行させたときには、照射領域S1のGaNの温度が室温レベルまで低下するのに要する時間が、照射領域をS1からS2に移行させるまでの時間に比べて格段に短いため、領域S1の温度は既に室温レベルまで低下した状態となるためであると考えられる。
本発明者らがシミュレーションにより検討したところでは、照射領域S1のGaNの温度が室温レベルまで低下するのに要する時間は100マイクロ秒以内であると推定される。照射領域S1の温度が室温レベルに低下した状態で照射領域S2にレーザ光を照射したとしても、照射領域S1とS2とが重畳した領域STは、照射領域S2に照射されたレーザ光によって加熱されるのみである。
このように、照射領域S1、S2が重畳する領域STにおいては、それぞれの照射領域S1、S2に照射されるパルスレーザ光の照射量が積算されないので、領域S1、S2のそれぞれに照射されるパルスレーザ光を、材料層の分解閾値を超えるエネルギー領域で重畳させることが必要である。
【0011】
一方、上記照射領域S1とS2のそれぞれのエッジ部が重畳する領域STにおける、それぞれのパルスレーザ光の強度が、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値に対して大きすぎると、基板に材料層が再接着する等の不具合を生ずることが確認された。
これは、同じ領域に、強度が大きなパルスレーザ光が2度照射されることにより、一度基板から剥離した材料層が、2度目に照射されるパルスレーザ光により再接着するものと考えられる。
実験等により、各レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度は、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下にするのが望ましいことが分かった。したがって、上記のような基板と材料層が再接着するという不具合を回避するためには、各レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度が大きすぎないようにすることが望ましい。
ここで、[レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度(最大値)]/[分解閾値VE]を重畳度Tと定義すると、基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、材料層を基板から確実に剥離させるためには、重畳度Tを1≦Tとするのが望ましく、また、基板と材料層の再接着を回避するためには、T≦1.15とするのが望ましい。
【0012】
以上に基づき、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通して、パルスレーザ光を照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ方法において、前記パルスレーザ光を、ワークに対する照射領域を刻々と変えながら、前記ワークにおいて隣接する各照射領域が重畳するように照射し、重畳するそれぞれのパルスレーザ光の大きさが、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値を超えるエネルギーの大きさになるようにする。
(2)上記(1)において、前記ワークにおいて隣接する各照射領域に照射される各レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度を、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下とする。
(3)上記(1)(2)において、前記ワークを、第1の搬送方向に搬送する第1の搬送動作と、第1の搬送動作の搬送方向と直交する方向に搬送する第2の搬送動作と、前記第1の搬送動作の搬送方向と180°異なる方向に搬送する第3の搬送動作とを順次に実行し、順次、各照射領域に前記パルスレーザ光を照射する。
(4)上記レーザリフトオフを行うレーザリフトオフ装置において、レーザ源から発したパルスレーザ光を成形して、前記ワークに照射する投影レンズを有するレーザ光学系を設け、前記ワークの光入射面が、前記レーザ光の光軸方向において前記投影レンズの焦点位置に一致しないように配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレーザリフトオフ方法によれば、次の効果を期待することができる。
(1)ワーク上の隣接する照射領域に照射されるレーザ光が、材料層を分解するために必要な分解閾値を超えるエネルギー領域で重畳しているので、各レーザ光が重畳するように照射された領域において、材料層を基板から剥離させるために十分なレーザエネルギーが与えられるので、基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、材料層を基板から確実に剥離させることができる。
(2)隣接する各照射領域に照射される各レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度を、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下とすることにより、基板と材料層が再接着するという不具合を回避することができる。
(3)ワークの光入射面が、前記レーザ光の光軸方向において前記投影レンズの焦点位置に一致しないように配置することにより、ワークに照射されるパルスレーザ光のビームプロファイルをなだらかな形状とする(照射されるパルスレーザ光の周縁部の光照度分布をピーク部からエッジ部に向けてなだらかに低下する形状とする)ことができる。これにより、パルスレーザ光の照射間隔を調整する(ワークを一定速度で搬送している場合)か、あるいは、ワークの搬送速度を調整する(パルスレーザ光の照射間隔が一定の場合)ことで、各レーザ光が重畳している領域における各レーザ光の強度を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例のレーザリフトオフ処理の概要を説明する概念図である。
【図2】レーザ光がワークに照射される様子を示す図である。
【図3】本発明の実施例において、ワークの互いに隣接する領域S1、S2に重畳して照射されるレーザ光の光強度分布を示す図である。
【図4】本発明の実施例のレーザリフトオフ装置の概念図である。
【図5】レーザ光の光強度分布のその他の実施例を示す図である。
【図6】本実施例のレーザ光の光強度分布と比較するための比較例を示す図である。
【図7】レーザ光の重畳度が剥離後の材料層に与える影響を調べた実験結果を示す図である。
【図8】レーザ光の光強度分布をなだらかな形状とすることにより、重畳部分におけるレーザ光の強度を調整できることを説明する図である。
【図9】レーザリフトオフ処理を適用することができる半導体発光素子の製造方法を説明する図である。
【図10】レーザ光の1ショットの照射領域が正方形状である場合を示す図である。
【図11】ライン状のレーザ光を、レーザ光の長手方向と垂直方向に移動させながら、基板の裏面から照射する従来技術を説明する図である。
【図12】図11に示す従来技術におけるレーザ光の光強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施例のレーザリフトオフ処理の概要を説明する概念図である。
同図に示すように、本実施例において、レーザリフトオフ処理は次のように行われる。
レーザ光を透過する基板1上に材料層2が形成されたワーク3が、ワークステージ31上に載置されている。ワーク3を載せたワークステージ31は、コンベヤのような搬送機構32に載置され、搬送機構32によって所定の速度で搬送される。ワーク3は、ワークステージ31と共に図中の矢印ABC方向に搬送されながら、基板1を通じて、図示しないパルスレーザ源から出射するパルスレーザ光Lが照射される。
ワーク3は、サファイアからなる基板1の表面に、GaN(窒化ガリウム)系化合物の材料層2が形成されてなるものである。基板1は、GaN系化合物の材料層を良好に形成することができ、尚且つ、GaN系化合物材料層を分解するために必要な波長のレーザ光を透過するものであれば良い。材料層2には、低い入力エネルギーによって高出力の青色光を効率良く出力するためにGaN系化合物が用いられる。
【0016】
レーザ光は、基板1および基板1から剥離する材料層を構成する物質に対応して適宜選択すべきである。サファイアの基板1からGaN系化合物の材料層2を剥離する場合には、例えば波長248nmを放射するKrF(クリプトンフッ素)エキシマレーザを用いることができる。レーザ波長248nmの光エネルギーは、GaNのバンドギャップ(3.4eV)とサファイアのバンドギャップ(9.9eV)の間にある。したがって、波長248nmのレーザ光はサファイアの基板からGaN系化合物の材料層を剥離するために望ましい。
【0017】
続いて、本発明の実施例のレーザリフトオフ処理について、図1及び2を用いて説明する。図2は、レーザ光Lがワーク3に照射される様子を示す図である。
図2(a)はワーク3に対するレーザ光の照射方法を示し、図2(b)は図2(a)のX部を拡大して示したものであり、図2(b)では、ワーク3の各照射領域の照射されるレーザ光の光強度分布の断面の一例を示している。なお、図2に示すワーク3上の実線は、レーザ光の照射領域を仮想的に示すものに過ぎない。
ワーク3は、搬送機構32によって図2に示す矢印HA、HB、HCの方向に繰返し搬送される。レーザ光Lはサファイアの基板1の裏面から照射され、基板1と材料層2の界面に照射される。レーザ光Lの形状は略方形状に成形される。
ワーク3は、図1、2に示すように、ワーク自体のサイズに対応して、図1の矢印Aの方向に搬送される第1の搬送動作HAと、レーザ光の1ショットの照射領域Sに相当する距離から重畳領域STを差し引いた距離だけ第1の搬送動作HAの搬送方向と直交する方向(図1の矢印Cの方向)に搬送される第2の搬送動作HBと、図1の矢印Bの方向に搬送される第3の搬送動作HCとが順次に実行される。第1の搬送動作HAおよび第3の搬送動作HCのそれぞれの搬送方向は180°異なっている。
ここで、レーザ光の光学系は固定されたままであり搬送されない。つまり、レーザ光の光学系を固定した状態でワーク3のみが搬送されることによって、ワーク3におけるレーザ光Lの照射領域が、図2の矢印に示すようにS1ないしS12の順に相対的に刻々と変わることになる。
【0018】
次に、本発明の実施例のレーザリフトオフ処理についてより具体的に説明する。図2に示す実施例では、ワーク3は円形状の輪郭を持つものであるが、レーザ光の照射領域が略方形状となっており、このような方形状の照射領域に対するレーザ照射方法について説明する。
図2に示すように、ワーク3を図2のHA方向に搬送させながら、S1、S2、S3、S4の4つの照射領域に対して、それぞれ1回ずつ合計4回に亘りレーザ光を照射する。これが第1の搬送動作である。
次に、レーザ光がワーク3の次なる照射領域S5に照射されるようにするため、ワーク3を図2のHB方向に搬送する。これが第2の搬送動作である。ワーク3が矢印HB方向に搬送される距離は、パルスレーザ光の1ショット(1パルス)分の照射領域に相当する距離から重畳領域STを差し引いた距離に等しい。
その次に、ワーク3を図2のHC方向に搬送させながら、S5、S6、S7、S8、S9、S10の6つの照射領域に対して、それぞれ1回ずつ合計6回に亘りレーザ光を照射する。これが第3の搬送動作である。ワーク3のその他の照射領域についても上記の一連の手順に従ってワーク3を搬送することにより、ワーク3の全域に亘りレーザ光が照射される。
【0019】
レーザ光の照射領域は、図2に示すようにS1、S2、S3の順に相対的に移動することになるが、それぞれの照射領域は例えば0.5mm×0.5mmであり面積は0.25mmとされる。これに対して、ワーク3の面積は4560mmである。つまり、レーザ光の照射領域S1、S2、S3はワーク面積に比して遥かに小さいものである。
本実施例のレーザリフトオフ処理では、ワーク3に比して小さい照射領域のレーザ光が図1に示す矢印AおよびBの方向(つまりワークの左右方向)にスキャンしながらワーク3に対して照射される。なお、本発明の実施例とは逆に、ワークを固定したままで、上記した搬送動作HAないしHCに従ってレーザの光学系を搬送しても良い。要は、ワーク上のレーザ光の照射領域が時間とともに刻々と移り変わるように、ワークに対してレーザ光が照射されれば良い。
【0020】
ここで、本発明のレーザリフトオフ処理においては、図2(b)に示すように、レーザ光がワーク3の互いに隣接する照射領域S1、S2、S3において、間歇的に照射される各レーザ光の幅方向の端部が互いに重畳するようにワーク3に照射される。レーザ光Lは、パルスレーザ光であり、間歇的にワーク3に照射される。ワーク3の照射領域S1、S2、S3においてレーザ光が重畳する幅は、例えば0.1mmである。
レーザ光のパルス間隔は、ワーク3の搬送速度と、ワーク3上の隣接する照射領域S1、S2、S3、…に照射されるレーザ光の重畳領域STの幅を考慮して適宜設定される。
基本的にはワーク3が次なる照射領域に移動する前にレーザ光がワークに照射されることのないように、レーザ光のパルス間隔が決められる。つまり、レーザ光のパルス間隔は、ワーク3がレーザ光の1ショット分の照射領域に相当する距離を移動するために要する時間よりも長く設定される。例えば、ワーク3の搬送速度が100mm/秒、レーザ光の重畳領域STの幅が0.1mmである場合、レーザ光のパルス間隔は0.004秒(250Hz)である。
【0021】
図3は、図2に示すワーク3の互いに隣接する領域S1、S2に重畳するようにワークに照射されるレーザ光の光強度分布を示す図であり、図2(b)におけるa−a´線断面図である。
同図において縦軸はワークの各照射領域に照射されるレーザ光の強度(エネルギー値)を、横軸はワークの搬送方向を示す。また、L1、L2は、それぞれワークの照射領域S1、S2に照射されるレーザ光のプロファイルを示す。なお、レーザ光L1,L2は同時に照射されるわけではなく、レーザ光L1が照射されてから1パルス間隔後にレーザ光L2が照射される。
この例では、図3に示すように、レーザ光L1、L2の断面は、周方向になだらかに広がるエッジ部LEに続いて頂上(ピークエネルギーPE)に平坦面を有する略台形状に形成されている。そして、レーザ光L1、L2は、図3に破線で示すように、GaN系化合物の材料層を分解してサファイアの基板から剥離させるために必要な分解閾値VEを超えるエネルギー領域において重畳される。
【0022】
すなわち、各レーザ光の光強度分布における、レーザ光L1とL2との交差位置Cでのレーザ光の強度(エネルギー値)CEは、上記分解閾値VEを越える値になるように設定される。
これは、前述したように、図2の照射領域S1にレーザ光を照射した後に照射領域をS1からS2に移行させたとき、領域S1の温度は既に室温レベルまで低下した状態となるため、照射領域S1の温度が室温レベルに低下した状態で照射領域S2にレーザ光を照射したとしても、それぞれの照射領域S1、S2に照射されるパルスレーザ光の照射量が積算されないためである。
レーザ光L1とL2との交差位置Cでのレーザ光の強度CE、すなわち、レーザ光が重畳して照射される領域におけるそれぞれのパルスレーザ光の強度を、上記分解閾値VEを越える値になるように設定することで、材料層を基板から剥離させるために十分なレーザエネルギーが与えることができ、基板上に形成された材料層に割れを生じさせることなく、材料層を基板から確実に剥離させることができる。すなわち、前記段落0011に定義される重畳度Tは、1≦Tとするのが望ましい。
なお、ワーク3とレーザ光の相対的な移動量に対して、レーザ光のパルス間隔は、ワーク3の隣接する照射領域に照射されるレーザ光が前記のように重畳するように予め調整されている。同図に示す実施例では、材料層がGaNであるため、分解閾値は500〜1500J/cmである。分解閾値VEは、材料層を構成する物質毎に設定することが必要とされる。
【0023】
ここで、上記のようにレーザ光L1とL2とは分解閾値VEを超えるエネルギー領域で重畳されるが、後述するように、基板と材料層が再接着するという不具合を回避するためには、重畳するそれぞれのレーザ光の分解閾値VEに対する大きさの割合を適切な値に設定する必要があり、具体的に、上記分解閾値VEに対して、VE×1.15以下になるように設定するのが望ましいことが分かった。
図3の実施例では、各レーザ光の光強度分布におけるレーザ光L1とL2との交差位置Cでのレーザ光の強度(エネルギー値)CEは、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下になるように設定する。
すなわち、前記重畳度Tは、T≦1.15とするのが望ましい。
【0024】
図4は、本発明の実施例のレーザリフトオフ装置の概念図である。
同図において、レーザリフトオフ装置10は、前記したパルスレーザ光を出射するレーザ源20と、レーザ光を所定の形状に成形するためのレーザ光学系40と、ワーク3が載置されるワークステージ31と、ワークステージ31を搬送する搬送機構32と、レーザ源20で発生するレーザ光の照射間隔および搬送機構32の動作を制御する制御部33とを備えている。
光学系40は、シリンドリカルレンズ41、42と、レーザ光をワークの方向へ反射するミラー43と、レーザ光を所定の形状に成形するためのマスク44と、マスク44を通過したレーザ光Lをワーク3上に集光させる投影レンズ45とを備えている。
光学系40の先にはワーク3が配置されている。ワーク3はワークステージ31上に載置されている。ワークステージ31は搬送機構32に載置されており、搬送機構32によって搬送される。これにより、ワーク3が、前記図1に示した矢印A、B、Cの方向に順次に搬送され、ワーク3におけるレーザ光の照射領域が刻々と変わる。制御部33は、ワーク3の隣接する照射領域に照射される各レーザ光の重畳度が所望の値になるように、レーザ源20で発生するパルスレーザ光のパルス間隔を制御する。
【0025】
レーザ源20から発生するレーザ光Lは波長248nmの紫外線を発生する、例えばKrFエキシマレーザである。レーザ源としてArFレーザやYAGレーザを使用しても良い。
ここで、ワーク3の光入射面3Aは、投影レンズ45の焦点Fよりもレーザ光の光軸方向において遠方側に配置するか、これとは反対に、レーザ光の光軸方向において、ワーク3の光入射面3Aを投影レンズ45の焦点Fよりも投影レンズ45に近づけるように配置しても良い。このように、ワーク3の光入射面3Aを投影レンズ45の焦点Fに一致しないように配置することにより、図3に示すような、レーザ光L1,L2のビームプロファイルのエッジ部LEがなだらかに低下する、断面が台形状の光強度分布を持つレーザ光が得られる。
レーザ源20で発生したレーザ光Lは、シリンドリカルレンズ41、42、ミラー43、マスク44を通過した後に、投影レンズ45によってワーク3上に集光される。
投影レンズ45により、ワーク3の光入射面3Aに入射されるレーザ光は、図3に示す断面において、周方向になだらかに広がるエッジ部LEに続いて頂上に平坦面を有する略台形状の光強度分布を持つように成形される。
【0026】
ワークの隣接する照射領域に重畳するように照射される各々のレーザ光の光強度分布は、上記したように断面が略台形状であることが理想的であるが、必ずしも台形状でなくても良い。
図5は、ワークに照射されるレーザ光の光強度分布のその他の実施例を示す。
図5(a)に示すレーザ光の光強度分布は、中央にピークが位置すると共に、該ピークに続いてなだらかに広がるエッジ部LEを有する略山状に形成されている。レーザ光の光強度分布は、図4に示す投影レンズ45の焦点Fとワーク3の光入射面3Aとの距離を調整することによって適宜変更することができる。
レーザ光の光強度分布は、投影レンズ45の焦点Fとワーク3の光入射面3Aとの距離が近付くにつれてシャープな矩形状となり、投影レンズ45の焦点Fとワーク3の光入射面3Aとの距離が遠くなるにつれてエッジがなだらかに形成されると共に山状に形成される。
また、図5(b)に示すようにレーザ光L1,L2の光強度分布を矩形状にしても良い。この場合、レーザ光L1,L2が重なっている領域におけるレーザ光の強度(レーザ光L1とL2との交差位置でのレーザ光の強度であり、この場合はレーザ光L1のピーク値に対応)をCEとすると、前記重畳度Tは、T=CE/[分解閾値VE]で計算される。
この場合においても、上記レーザ光L1とL2との交差位置でのレーザ光の強度CEは、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEより大きく、かつ、分解閾値VEに対して、VE×1.15以下とすることが望ましい。
【0027】
ここで、本実施例のレーザリフトオフ処理を実行することによって得られる効果について図3、図6を用いて説明する。
図3は本実施例のレーザリフトオフ方法に使用されるレーザ光の光強度分布を示し、図6はこれと比較するためのレーザ光の光強度分布を示す。図3、図6のL1、L2は、図2に示すS1、S2の照射領域に照射されるレーザ光を示す。ワークの隣接する照射領域に照射されるレーザ光の重畳度が基板から剥離後の材料層に与える影響について、図3、6を用いて比較検討する。
図3に示すレーザ光L1、L2は、周方向になだらかに広がるエッジ部LEに続いて頂上に平坦面を有する略台形状の光強度分布を有し、尚且つ、分解閾値VEを超えるエネルギー領域においてレーザ光L1、L2は重畳度Tが適切な値(1以上1.15以内)になるように重畳している。
従って、図3の実施例のレーザリフトオフ方法は、レーザ光が基板1との界面側の材料層2の表面に照射され材料層2を構成するGaNが分解する際に、Nガスが急激に発生することがない。しかも、図3の実施例のレーザリフトオフ方法は、図2においてレーザ光L1とL2とが重畳する重畳領域STに対して照射されるレーザ光のエネルギーが、過不足なく最適なエネルギーになるため、材料層2と基板1が再接着する不具合を回避することができ、材料層2を基板1から確実に剥離させることができる。
実際に図3に示す実施例のレーザ光をワークに照射した場合の、剥離後の材料層の表面状態はとても綺麗であり、汚れ、傷などといった発光特性に悪影響を与えるものは見あたらなかった。
【0028】
これに対し、図6(a)の比較例に示すレーザ光をワークに照射した場合は、レーザ光L1とL2のそれぞれの光強度分布が分解閾値VEを下回るエネルギー領域で交差しているので、図2に示すワークにおいてレーザ光L1とL2との重畳領域STに照射されるレーザ光のエネルギーが不足するといった不具合がある。
実際に図6(a)に示す比較例のレーザ光をワークに照射した場合、材料層を構成するGaNの未分解領域が形成され、材料層を基板から十分に剥離させることができなかった。GaNの未分解領域は、ワークにおいてレーザ光L1とL2とが重畳する重畳領域STに一致していた。
一方、図6(b)の比較例に示すレーザ光をワークに照射した場合は、レーザ光L1とL2との重畳度Tが大きすぎるため、図2に示すワークにおいてレーザ光L1とL2との重畳領域STに過剰なエネルギーのレーザ光が照射されるといった不具合がある。
後述する図7(b−4)に示すように、実際に図6(b)に示す比較例のレーザ光をワークに照射した場合の、剥離後の材料層の表面状態は、表面に黒いシミのような汚れが多数形成されている。
これは、エネルギーが大きなレーザ光が同じ個所に2度照射されることにより、一度基板から剥離した材料層が、2度目に照射されるレーザ光により再接着し、基板を構成するサファイアの成分が付着したものと考えられる。このように材料層の表面に形成された黒いシミは発光特性に悪影響を及ぼす。
【0029】
上記効果を確認するため、レーザ光が重畳する照射領域におけるレーザ光の重畳度が、剥離後の材料層に与える影響について実験を行った。
図7はその結果を示す図である。図7(a)は実験に使用した隣接する領域に重畳させて照射したレーザ光の光強度分布を示す図であり、本実験では、同図に示すように、矩形状の光強度分布を有するレーザ光L1,L2(KrFレーザが出力するパルスレーザ光)を、サファイア基板上にGaN材料層を形成したワークに照射して行った。
レーザ光L1,L2が重畳する領域でのレーザ光の強度を、GaN材料層の分解閾値VE(870mJ/cm)に対して105%、110%、115%、120%と変えて照射し、剥離後の材料層の表面を調べた。
図7(b−1)、(b−2)(b−3)、(b−4)に、重畳する領域におけるレーザ光の強度を分解閾値VEに対して、それぞれ105%、110%、115%、120%と変えた場合の剥離後の材料層の表面を示す。
図7(b−1)、(b−2)(b−3)に示すように、分解閾値VEに対して、重畳する領域でのレーザ光の強度が105%、110%、115%の場合には、剥離後の材料層の表面状態は良好であり、汚れ、傷などといった発光特性に悪影響を与えるものは見あたらなかった。これに対し、レーザ光の強度を分解閾値VEに対して120%にすると、図7(b−4)に示すように、剥離後の材料層の表面状態は、黒いシミのような汚れが多数形成された。
なお、図7には示していないが、分解閾値VEに対して、重畳する領域でのレーザ光の強度が100%以下の場合も、レーザ光が重畳して照射される領域に、GaN材料層に未分解部分が発生することが確認された。
【0030】
ところで、図7に示した例では、矩形状の光強度分布を有するレーザ光L1,L2を用いており、この場合、図8(a)に示すように重畳する領域でのレーザ光の強度を調整することができず、重畳する領域でのレーザ光の強度の調整は、各レーザ光L1,L2の強度を調整することにより行う必要がある。
これに対し、レーザ光L1,L2の光強度分布(ビームプロファイル)を前記図3に示したように、周方向になだらかに広がるエッジ部LEを有する形状とすることにより、レーザ光L1,L2の照射間隔(あるいはワークの移動速度)を調整し、上記エッジ部LEの重なり程度を調整することで、重畳部分におけるレーザ光の強度を自在に調整することができる。
図8(b−1)はレーザ光L1,L2の重ね量が適正な場合であり、照射間隔(あるいはワークの移動速度)を適切に調整した場合であり、同図(b−2)に示すように剥離後の材料層の表面状態は良好であり、汚れ、傷などといった発光特性に悪影響を与えるものは見あたらなかった。
図8(C−1)はレーザ光L1,L2の重ね量が大きく、重畳する領域におけるレーザ光の強度が分解閾値VEに対して115%を超える場合であり、同図(C−2)に示すように、剥離後の材料層の表面状態は、黒いシミのような汚れが多数形成された。
【0031】
また、レーザ光107を図4に示すレーザ光学系40によって、図3に示す断面において、周方向になだらかに広がるエッジ部LEに続いて頂上に平坦面を有する略台形状の光強度分布を有するように成形することにより、図9に示すレーザ光をGaN層102に照射した際に、レーザ光の照射領域のエッジ部において急激なレーザアブレーションが行わることを緩和することができる。
よって、GaN層102の分解時にNガスが急激に発生することによる過剰な応力がGaN層102に加わることを緩和し、剥離後のGaN層102へのクラック発生を確実に低減することができる。
さらに、本発明においては、レーザ光はGaN層102の隣接する照射領域に照射されるレーザ光が適切な重畳度となるように重畳されている。それにより、GaN層102のレーザ光の各照射領域のエッジ部に照射されるレーザ光のエネルギーが、GaN層102を剥離させるために十分であり、GaN層102をサファイア基板101から確実に剥離させることができる。
【0032】
次に、上記したレーザリフトオフ処理を適用することができる半導体発光素子の製造方法について説明する。以下ではGaN系化合物材料層により形成される半導体発光素子の製造方法について図9を用いて説明する。
結晶成長用の基板には、レーザ光を透過し材料層を構成する窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体を結晶成長させることができるサファイア基板を使用する。
図9(a)に示すように、サファイア基板101上には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて迅速にGaN系化合物半導体よりなるGaN層102が形成される。続いて、図9(b)に示すように、GaN層102の表面には、発光層であるn型半導体層103とp型半導体層104とを積層させる。例えば、n型半導体としてはシリコンがドープされたGaNが用いられ、p型半導体としてはマグネシウムがドープされたGaNが用いられる。続いて、図9(c)に示すように、p型半導体層104上には、半田105が塗布される。続いて、図9(d)に示すように、半田105上にサポート基板106が取付けられる。サポート基板106は例えば銅とタングステンの合金からなる。そして、図9(e)に示すように、サファイア基板101の裏面側からサファイア基板101とGaN層102との界面に向けてレーザ光107を照射し、GaN層102を分解することによってサファイア基板101を剥離する。サファイア基板101から剥離後のGaN層102の表面に透明電極であるITO108を蒸着により形成し、ITO108の表面に電極109を取付ける。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
2 材料層
3 ワーク
10 レーザリフトオフ装置
20 レーザ源
31 ワークステージ
32 搬送機構
33 制御部
40 レーザ光学系
41、42 シリンドリカルレンズ
43 ミラー
44 マスク
45 投影レンズ
101 サファイア基板
102 GaN層
103 n型半導体層
104 p型半導体層
105 半田
106 サポート基板
107 レーザ光
108 透明電極(ITO)
109 電極
L,L1,L2 レーザ光
LE エッジ部
VE 分解閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通してパルスレーザ光を照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ方法において、
前記パルスレーザ光は、ワークに対する照射領域を刻々と変えながら上記ワークに照射され、
前記ワークにおいて隣接する各照射領域に照射されるそれぞれのパルスレーザ光が、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値を超えるエネルギー領域において重畳する
ことを特徴とするレーザリフトオフ方法。
【請求項2】
前記ワークにおいて隣接する各照射領域に照射される各レーザ光が重畳している領域におけるレーザ光の強度が、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下である
ことを特徴とする請求項1記載のレーザリフトオフ方法。
【請求項3】
前記ワークを第1の搬送方向に搬送する第1の搬送動作と、前記ワークを第1の搬送動作の搬送方向と直交する方向に搬送する第2の搬送動作と、前記ワークを前記第1の搬送動作の搬送方向と180°異なる方向に搬送する第3の搬送動作とを順次に実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ方法。
【請求項4】
基板上に材料層が形成されてなる前記基板を通してパルスレーザ光を照射し、前記基板と前記材料層との界面で前記材料層を前記基板から剥離するレーザリフトオフ装置において、
前記基板を透過すると共に前記材料層を分解するために必要な波長域のパルスレーザ光を発生するレーザ源と、
前記ワークと前記レーザ源とを相対的に搬送する搬送機構と、
前記レーザ源から発したパルスレーザ光を成形して、前記ワークに照射するレーザ光学系と、
前記レーザ光の照射間隔を制御するとともに、前記搬送機構を制御して、レーザ光の1ショット毎にワークに対する照射領域が刻々と変わるようにワークを移動させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記ワークにおいて隣接する各照射領域に照射されるそれぞれのレーザ光を、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値を超えるエネルギー領域において重畳させるように、レーザ光の照射間隔を制御することを特徴とするレーザリフトオフ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ワークにおいて隣接する各照射領域に照射される各レーザ光の重畳度が、前記材料層を前記基板から剥離させるに必要な分解閾値VEに対して、VE×1.15以下となるように、前記レーザ光の照射間隔を制御することを特徴とする請求項4記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項6】
前記レーザ光学系は、前記レーザ光を前記ワークに集光させる投影レンズを有し、
前記ワークの光入射面は、前記レーザ光の光軸方向において前記投影レンズの焦点位置に一致することなく配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、前記ワークを第1の搬送方向に搬送する第1の搬送動作と、前記ワークを第1の搬送動作の搬送方向と直交する方向に搬送する第2の搬送動作と、前記ワークを前記第1の搬送動作の搬送方向と180°異なる方向に搬送する第3の搬送動作とを順次に実行することを特徴とする請求項4,5または請求項6記載のレーザリフトオフ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−15150(P2012−15150A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147362(P2010−147362)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】