説明

レーザレーダ装置

【課題】カバーで生じる内部反射光(外乱光)が受光センサに入り込むことをより確実に抑制することができ、外乱光に起因する誤検出を効果的に防止し得る構成を提供する。
【解決手段】レーザレーダ装置1では、フォトダイオード20の受光面20aの前方側且つ下方側にフィルタ部材90が配置され、このフィルタ部材90は、当該フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有すると共に、透過板80から受光センサ側に向かう斜め方向の外乱光の透過を抑制するように構成されている。また、上記フィルタ部材90は、上下方向の光については透過するように構成されているため、凹面鏡41によって上方に導かれる正規の反射光(外部空間の物体からの反射光)については、フィルタ部材90を透過する際に抑制されにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザ光を用いて物体を検出する技術として例えば特許文献1のような装置が提供されている。この特許文献1の装置では、レーザ光発生手段からのレーザ光の光軸上に光アイソレータが設けられており、光アイソレータでは、レーザ光発生手段からのレーザ光が透過し、検出物体からの反射光が受光センサ側に反射するようになっている。さらに、光アイソレータを透過したレーザ光の光軸上には、当該光軸方向の中心軸を中心として360°回転可能な凹面鏡が設けられており、この凹面鏡によってレーザ光を空間に向けて反射させると共に、物体からの反射光を受光センサに向けて反射させることで360°の水平走査を可能としている。そして、装置内に設けられた演算手段(物体位置算出手段)により、物体にレーザ光が照射されたときの凹面鏡の回転位置を特定すると共に当該レーザ光の受光までの時間を算出することで、その物体の方位や距離を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−20035号公報
【特許文献2】特開平2008−216238公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記レーザレーダ装置では、偏向部(例えば凹面鏡等)から外部空間に照射されるレーザ光の照射経路上に防塵、防滴などを目的とするカバーが設けられたものが多く、一般的には、外部空間に向けて照射されるレーザ光が透過し得るように、光透過性のカバー(光透過性カバー)を配置している。しかしながら、このようにレーザ光の照射経路上にカバーが設けられると、偏向部から空間に照射されるレーザ光(即ち、カバー内を透過しようとするレーザ光)の一部がカバーの表面で反射してしまうため、その反射光(外乱光)が装置内に配された受光センサによって受光される可能性がある。このように外乱光が受光センサに受光されてしまうと、演算手段(物体位置算出手段)が、その検出された外乱光を物体からの反射光と誤認識し、外部空間で物体が検出されたものと誤判断してしまう懸念がある。
【0005】
また、外部空間に照射されるレーザ光の一部が上記カバー(光透過性カバー)で鏡面反射してしまうと、この鏡面反射で生じる外乱光が受光センサで受光されたときに受光量が相当大きくなり、受光センサが飽和状態(最大の受光信号を発生させる受光量を超えた受光状態)に達してしまう虞がある。特に、上記レーザレーダ装置では、外部空間に存在する物体にレーザ光が照射されたときの拡散反射光を検出し得るように受光センサでの受光の感度をある程度高く設定する必要があるため、拡散反射光と比較して光量が格段に大きい鏡面反射光(外乱光)が受光されたときには、受光センサが飽和状態となる可能性が極めて大きくなる。そして、このように一旦受光の飽和が生じてしまうと、鏡面反射光(外乱光)が受光センサに入光しなくなってからもある程度の時間が経過するまで受光センサから大きな受光信号が出力され続け、飽和状態が継続(遅延)してしまうため、このような飽和状態が解除されるまでは、本来検出されるべき反射光を正確に検出できなくなる虞がある。
【0006】
また、カバー(光透過性カバー)で生じる鏡面反射光(外乱光)をノイズとして除去する方法も考えられるが、このような方法だけでは、上述のように鏡面反射光(外乱光)の受光タイミングと正規の反射光の受光タイミングとが近い場合(カバーの近くに検出物体が存在する場合等)など、外乱光の除去が難しい場合に対処できない。
【0007】
以上のような理由により、レーザレーダ装置では、カバー(光透過性カバー)で生じる鏡面反射光(外乱光)が受光センサに受光されにくい構成が望まれている。
このような課題に対し、発明者は、外乱光が受光センサに受光されにくい構成として、外乱光の経路上に何らかの部材を配置し、外乱光の入光経路を遮断することを検討した。しかしながら、カバー(光透過性カバー)から受光センサに向かう経路上に単なる遮蔽部材を配置するだけでは、デメリットが大きいことも判明した。例えば、上記のように遮蔽部材によって外乱光を遮断しようとした場合、より確実に遮断するためには遮蔽部材をある程度大きく構成する必要があるが、このように遮蔽部材が大きくなると、投光経路や受光経路から外して遮蔽部材を配置することが難しくなり、投光経路や受光経路から確実に避けて配置しようとすると装置構成の大型化が避けられなくなる。また、遮蔽部材の一部を受光経路に介在させることで小型化を図る方法も考えられるが、このような構成では、装置内に取り込まれた反射光(検出物体からの反射光)の一部が受光信号として利用できなくなり、受光感度を低減させることになってしまう。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、レーザ光の照射経路上に光透過性のカバーを配置してなるレーザレーダ装置において、カバーで生じる内部反射光(外乱光)が受光センサに入り込むことをより確実に抑制することができ、外乱光に起因する誤検出を効果的に防止し得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、
レーザ光を発生させるレーザ光源を備え、前記レーザ光源からのレーザ光を所定の上下方向に導くように構成されたレーザ光発生手段と、
前記上下方向に沿った中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれたレーザ光を前記偏向部によって当該偏向部の周囲の外部空間に向けて偏向させ、その偏向されたレーザ光が前記外部空間に存在する物体で反射して生じる反射光を前記偏向部で上方に反射して受光経路に導く回転偏向手段と、
前記偏向部によって受光経路に導かれた前記反射光を受光する受光センサと、
少なくとも前記受光センサ及び前記偏向部を収容する構成をなし、前記偏向部の周囲の少なくとも周方向一部分において前記レーザ光の走査経路上を前記レーザ光が透過可能な透過板によって閉塞してなるケースと、
を備え、
前記偏向部から照射される前記レーザ光が前記透過板に入射する位置よりも上方側に前記受光センサが配置され、
前記透過板における前記レーザ光が入射する部分は、前記レーザ光の入射面が前記中心軸に対して傾斜し且つ上方側を向くように配置されており、
前記中心軸の軸線と直交し且つ前記受光センサの受光面の中心を通る仮想線の方向を前後方向とし、前記受光センサにおける前記受光面が面する側を前側、前記受光面とは反対面側を後側としたとき、前記受光面の前方側且つ下方側であって且つ前記偏向部の上方の受光経路上には、前記偏向部からの前記レーザ光の一部が前記透過板で反射して生じる外乱光を抑制するフィルタ部材が配置されており、
前記フィルタ部材は、前記上下方向の光を透過すると共に当該フィルタ部材とのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有しており、前記偏向部から上方に導かれた前記反射光を透過させ、前記透過板から前記受光センサ側に向かう斜め方向の前記外乱光の透過を抑制するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、透過板におけるレーザ光入射部分の内面(レーザ光の入射面)が中心軸に対して傾斜し且つ上方側を向くように配置されているため、偏向部からのレーザ光の一部が透過板で反射して外乱光が生じた場合には、その外乱光は中心軸に対して傾斜した上側の方向(斜め上方)に向かうことになる。
このような構成では、透過板で反射して生じる外乱光が直接偏向部に入射してしまう問題は生じ難いが、偏向部から前側にレーザ光が照射されるときに透過板で生じる外乱光がその後方側且つ斜め上方側の受光センサに受光されてしまうことが懸念される。
そこで、本発明では、受光センサの受光面の前方側且つ下方側に、下面とのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する性質(角度依存性)を有するフィルタ部材を配置し、透過板から受光センサ側に向かう斜め方向の外乱光の透過を抑制している。
この構成では、偏向部によって上方に導かれる正規の反射光(外部空間の物体からの反射光)については当該フィルタ部材の下面に対して透過性の高い向き(上下方向に近い方向)に入射するためフィルタ部材で抑制されにくくなり、より確実に受光センサ側に導くことができる。一方、透過板で反射して斜め上方に向かう外乱光については、当該フィルタ部材の下面に対して透過性の低い向き(上下方向からある程度の角度分ずれた傾斜方向)に入射することになるため、フィルタ部材によって上方側への透過をより確実に遮断することができる。
特に、この構成では、透過板とフィルタ部材の配置関係が特徴的な配置関係となっており、角度依存性を有するフィルタ部材の機能(正規光を透過させる機能及び外乱光を遮断する機能)を十分に発揮させるため、偏向部の周囲に配される透過板に傾斜をつけ、正規の反射光がフィルタ部材下面に入射する入射の向きと、透過板で反射して斜め上方に向かう外乱光がフィルタ部材下面に入射するときの入射の向きとで角度差が出やすいようにしている。そして、その角度差が極めて顕著となる特徴的な場所にフィルタ部材を配置しているため、正規光の透過効果と外乱光の遮断効果をそれぞれ際立たせることができる。
【0011】
請求項2の発明では、前記中心軸を通り且つ前記受光面の中心を通る平面に沿って当該レーザレーダ装置を切断した前記切断面において、前記偏向部から前記切断面に沿って前記外部空間に照射されるときのレーザ光の前記透過板内面での入射位置と前記切断面における前記フィルタ部材の前端とを通って上方側に延びる仮想的な第一延長線を設定し、前記偏向部から前記切断面に沿って前記外部空間に照射されるときのレーザ光の前記透過板内面での入射位置と前記切断面における前記フィルタ部材の後端とを通って上方側に延びる仮想的な第二延長線を設定したときに、前記受光センサの前記受光面は、前記第一延長線の下側の領域において前記第一延長線から外れた位置に配置され、且つ前記第二延長線の上側の領域において前記第二延長線から外れた位置に配置される構成となっている。
この構成によれば、外乱光の影響が最も懸念される照射方向のとき(即ち、偏向部から前側にレーザ光が照射されるとき)において、透過板から受光センサの受光面に直接向かう外乱光についてはフィルタ部材によって確実に抑制することができる。また、フィルタ部材から外れた方向に向かう外乱光が存在しても、この外乱光が直接的に受光センサに入り込まない位置関係となっているため、受光センサに対する外乱光の影響を一層抑え易くなる。
【0012】
請求項3の発明では、前記フィルタ部材は、前記偏向部から前記切断面に沿って前方に照射されるレーザ光の一部が前記透過板で鏡面反射するときの鏡面反射光の経路上に配置されている。
この構成では、外乱光の影響が最も懸念される照射方向のとき(即ち、偏向部から前側にレーザ光が照射されるとき)においてエネルギーの大きい鏡面反射成分を確実に抑制することができ、より大きな遮蔽作用を生じさせることができる。
【0013】
請求項4の発明では、前記フィルタ部材の前端部が、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれるレーザ光の経路の一部に位置するように、又はその経路よりも後方側に外れるように配置されている。
この構成では、フィルタ部材がレーザ光の投光経路全体に介在せず前記レーザ光発生手段からのレーザ光の全部がフィルタ部材に入射しないため、フィルタ部材に起因する投光時の減衰を抑えることができる。
【0014】
請求項5の発明では、前記フィルタ部材は、上下方向に連通する貫通孔又は切欠部が形成されており、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれたレーザ光が前記貫通孔内又は前記切欠部内を通過して前記偏向部に入射するように構成されている。
この構成では、前記レーザ光発生手段からのレーザ光がフィルタ部材内部を通過しない構成となるため、フィルタ部材に起因する投光時の減衰をより効果的に抑えることができる。また、フィルタ部材を投光経路の一方側のみに寄せて配置するのではなく、投光経路の周囲に満遍なく配置することができるようになる。
【0015】
請求項6の発明では、前記受光経路において前記偏向部の上方側には、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれるレーザ光を通す通過孔が形成され且つ前記偏向部からの前記反射光を後方に反射する反射ミラーが設けられ、前記反射ミラーの後方側に前記受光センサが設けられており、前記反射ミラーと前記偏向部との間の位置に前記フィルタ部材が設けられている。
この構成では、受光センサを反射ミラーの側方側に配置することができ、受光センサをそれほど上方位置に配置せずに済む。そして、このように受光センサをある程度下側に配置すると、透過板から受光センサに向かう外乱光の傾斜度合いが大きくなるため、フィルタ部材での透過抑制効果がより高まることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、第1実施形態に係るレーザレーダ装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。
【図2】図2は、図1のレーザレーダ装置を水平方向に切断した断面を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1のレーザレーダ装置の一部を拡大して概略的に示す拡大図である。
【図4】図4は、図1のレーザレーダ装置に関し、透過板で反射して生じる外乱光とフィルタ部材との関係を説明する説明図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置の一部を概略的に例示する断面図である。
【図6】図6は、第3実施形態に係るレーザレーダ装置の一部を概略的に例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザレーダ装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るレーザレーダ装置の全体構成を概略的に例示する断面図である。図2は、図1のレーザレーダ装置を水平方向に切断した断面を概略的に示す断面図である。図3は、図1のレーザレーダ装置の一部を拡大して概略的に示す拡大図である。図4は、図1のレーザレーダ装置に関し、透過板で反射して生じる外乱光とフィルタ部材との関係を説明する説明図である。
【0018】
(全体構成)
まず、図1、図2を参照して第1実施形態に係るレーザレーダ装置の全体構成について説明する。
図1では、フォトダイオード20の受光面20aの中心位置P2と中心軸42aとを通るようにレーザレーダ装置1を中心軸42aに沿って切断した切断面を概略的に示しており、図2は、図1の切断面の一部を拡大して概略的に示している。なお、以下の説明では、透明板の断面については白抜きで示すこととする。
【0019】
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0020】
レーザダイオード10は、「レーザ光源」の一例に相当するものであり、制御回路100の制御により、図示しない駆動回路からパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光(レーザ光L1)を間欠的に出射している。なお、本実施形態では、レーザダイオード10から検出物体に至るまでのレーザ光を符号L1にて概念的に示し、検出物体からフォトダイオードに至るまでの反射光を符号L2にて概念的に示している。
【0021】
フォトダイオード20は、例えばアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)などによって構成されている。このフォトダイオード20は、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生し、そのレーザ光L1が検出物体(図示略)にて反射したとき、その反射光L2を受光して電気信号に変換している。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが凹面鏡41に取り込まれる構成となっており、図1では、符号L2で示す2つのライン(二点鎖線)間の領域の反射光が取り込まれる例を示している。図1、図3等に示す例では、フォトダイオード20は、後述する反射ミラー30の後方側に配置されており、レーザダイオード10よりも下方位置であって後述するフィルタ部材90及び凹面鏡41よりも上方位置に配置されている。
なお、フォトダイオード20は、「受光センサ」の一例に相当するものであり、後述する凹面鏡41によって受光経路に導かれた外部物体からの反射光を受光するように機能している。
【0022】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光L1の光軸上にはレンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L1を平行光に変換している。なお、本実施形態では、レーザダイオード10及びレンズ60が「レーザ光発生手段」の一例に相当しており、レーザダイオード10からのレーザ光を所定の上下方向(図1に示すY軸方向)に導くように機能している。
【0023】
なお、本実施形態では、後述する中心軸42aと平行な方向を上下方向(縦方向)としており、図1等では上下方向をY軸方向として示している。また、中心軸42aと直交する平面と平行な方向を水平方向としている。更に、中心軸42aの軸線と直交し且つフォトダイオード20の受光面20aの中心P2を通る仮想線A1(図3)と平行な方向を前後方向とし、フォトダイオード20における受光面20aが面する側を前側、その受光面20aとは反対面側を後側としており、前後方向についてはX軸方向として示している。
【0024】
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路付近には、反射ミラー30が設けられている。この反射ミラー30は、後述する凹面鏡41の上方側において受光経路上に配置されており、下面側には、レーザ光L1の光軸に対し所定角度で傾斜した反射面30aが形成されている。そして、この反射面30aにより、凹面鏡41から当該反射ミラー30に向かってくる反射光L2(外部物体からの反射光)を後方に反射するように構成されている。また、反射面30aと交差する方向の通過孔32とを備えており、この通過孔32の内部を、上述のレーザ光発生手段によって上下方向に導かれたレーザ光L1が通るようになっている。このように反射ミラー30は、レーザダイオード10からのレーザ光L1を通過孔32を介して通過させる一方、外部物体からの反射光L2(より詳しくは凹面鏡41にて反射された反射光)をフォトダイオード20に向けて反射させるように機能している。反射ミラー30とフォトダイオード20の間には、所定波長の光を通過させる光学フィルタ64と、反射ミラー30からの光を更に集光する集光レンズ62が配置されている。
【0025】
また、反射ミラー30を通過するレーザ光L1の光軸上には、回転反射装置40が設けられている。回転反射装置40は、「回転偏向手段」の一例に相当するものであり、上下方向に延びる中心軸42aを中心として回転可能に構成された凹面鏡41と、この凹面鏡41に連結された軸部42と、この軸部42を回転可能に支持する図示しない軸受と、凹面鏡41を回転駆動するモータ50とを備え、凹面鏡41を回転させつつ上述のレーザ光発生手段(レーザダイオード10及びレンズ60)によって上下方向に導かれたレーザ光L1を凹面鏡41により当該凹面鏡41の周囲の外部空間(レーザレーダ装置1の外側の空間)に向けて偏向させるように機能している。また、この回転反射装置40は、凹面鏡41によって偏向されて外部空間に照射されたレーザ光L1が外部空間に存在する物体で反射して生じる反射光L2を凹面鏡41で上方に反射して受光経路に導くように機能している。
【0026】
凹面鏡41は、「偏向部」の一例に相当するものであり、反射ミラー30を通過したレーザ光L1の光軸上に配置される凹状の反射面41aを備えると共に、中心軸42a(所定の中心軸)を中心として回転可能とされており、レーザダイオード10からのレーザ光L1をケース3外の空間に向けて偏向(反射)させ、且つケース3外の空間(外部空間)に存在する物体からの反射光L2をフォトダイオード20に向けて偏向(反射)させる構成をなしている。
【0027】
また、凹面鏡41の回転中心となる中心軸42aの方向は、反射ミラー30を通過して当該凹面鏡41に入射するレーザ光L1の方向と略一致しており、レーザ光L1が凹面鏡41に入射する入射位置P1が中心軸42a上の位置とされている。また、本実施形態では、凹面鏡41の反射面41aにおいて位置P1付近の部分が、上下方向(反射面41aに入射するレーザ光L1の方向)に対して45°の角度で傾斜しており、凹面鏡41の反射面41aで反射したレーザ光L1が水平方向に照射されるようになっている。また、凹面鏡41は入射するレーザ光L1の方向と一致した方向の中心軸42aを中心として回転するため、凹面鏡41の回転位置に関係なくレーザ光L1の入射角度が常に45°で維持され、位置P1からのレーザ光L1の向きは絶えず水平方向(中心軸42aと直交する方向)となるように構成されている。
【0028】
モータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、軸部42を回転させることで、軸部42と連結された凹面鏡41を、中心軸42aを中心として回転駆動している。このモータ50は、例えば公知の直流モータ或いは公知の交流モータによって構成されており、制御回路100からの駆動指示があったときに、図示しないモータドライバによって駆動状態(例えば、回転タイミングや回転速度)が制御されるようになっており、このときに、予め定められた一定の回転速度で定常回転するようになっている。
【0029】
このモータ50は、例えば回転駆動軸が軸部42と一体的に構成されており、軸部42と凹面鏡41とを、中心軸42aを回転中心として定常回転させるように構成されている。凹面鏡41は、上述したように偏向面(反射面41a)と中心軸42aとのなす角度θが一定角度(例えば45°)となるように配置されており、モータ50の駆動力を受けたときにこの角度θを一定角度で維持しつつ回転するようになっている。
【0030】
また、本実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち凹面鏡41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ52が設けられている。回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用できる。
【0031】
また、レーザレーダ装置1では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、反射ミラー30、レンズ60、回転反射装置40等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。このケース3は、主ケース部5と透過板80とを備えており、全体として箱状に構成されており、凹面鏡41の周囲の少なくとも周方向一部分においてレーザ光L1の走査経路上をレーザ光L1が透過可能な透過板80によって閉塞した構成をなしている。主ケース部5は、上壁部5a及び下壁部5bが上下に対向して配置され、前壁部5c及び後壁部5dが前後に対向して配置され、側壁部5e、5fが左右に対向して配置されており、一部が導光可能に開放された箱状形態をなしている。
【0032】
この主ケース部5は、凹面鏡41の周囲に、レーザ光L1及び反射光L2の通過を可能とする窓部4が形成されている。この窓部4は、主ケース部5において光の出入りを可能とするように開口した部分であり、主ケース部5の前壁部5cから両側壁部5e、5fに亘って溝状に形成されている。そしてこの開口形態の窓部を閉塞するように透過板80が設けられている。
【0033】
透過板80は、例えば、透明の樹脂板、ガラス板などによって構成されており、図2に示すように凹面鏡41の周囲のほぼ半周程度に亘り、レーザ光L1の走査経路上に配される窓部4を閉塞する構成で配置されている。この透過板80は、凹面鏡41からのレーザ光L1の走査経路上において周方向所定範囲に亘って配置されており、上記窓部4を閉塞すると共に凹面鏡41から投射されたレーザ光L1を透過させる構成をなしている。
【0034】
(フィルタ部材に関する構成)
次に、レーザレーダ装置1の特徴の一つであるフィルタ部材90、及びこれに関連する構成について説明する。
まず、フォトダイオード20、透過板80、及びフィルタ部材90の配置関係について説明する。図1、図3に示すように、レーザレーダ装置1では、中心軸42aの方向を上下方向としたとき、ケース3の内部領域において、凹面鏡41から照射されるレーザ光L1が透過板80に入射する位置(中心軸42aと直交し且つ位置P3を通る仮想平面の位置)よりも上方側の領域にフォトダイオード20が配置されるようになっている。
【0035】
そして、このようなフォトダイオード20の前方側且つ下方側に、フィルタ部材90が配置されている。このフィルタ部材90は、受光面20aの前方側且つ下方側において、凹面鏡41の上方の受光経路上に配置されている。本実施形態では、凹面鏡41から外部空間に照射されたレーザ光が外部空間の物体で反射して生じる反射光が凹面鏡41に取り込まれたときにこの凹面鏡41にて集光しつつ反射されるようになっている。このような構成において、この反射光が凹面鏡41から反射ミラー30に向かい、且つ反射ミラー30で反射されてフォトダイオード20に至るまでの経路が受光経路となっている。このような受光経路において、反射ミラー30と凹面鏡41との間の位置にフィルタ部材90が設けられている。
【0036】
図1、図2に示すように、透過板80は、凹面鏡41から照射されるレーザ光L1の走査経路上に配置されており、図2に示すように、凹面鏡41の周囲のほぼ半周程度に亘って凹面鏡41を囲んでいる。本実施形態では、図2に示すように、360°回転し得る凹面鏡41の全回転角度の内、レーザ光L1が位置Laの方向に照射される時の回転角度から位置Lbに照射される時の回転角度までの角度範囲が検出範囲となっており、凹面鏡41がこの検出範囲にあるときに凹面鏡41からのレーザ光L1が透過板80の内面80a(入射面)に入射するようになっている。そして、この透過板80は、中心軸42aを中心とした周方向のいずれの位置においても、レーザ光L1が入射する部分は、レーザ光L1の入射面が中心軸42aに対して傾斜し且つ上方側を向くように配置されている。即ち、周方向のいずれにおいても、レーザ光L1の入射位置が斜め上向きに傾斜している。
【0037】
より具体的には、中心軸42a上の位置で切断した切断面は、透過板80の周方向いずれの位置を通るように切断した場合でもその切断面における透過板80の内面形状は図3のような一定形状となっている。そして、中心軸42aを通るいずれの向きの切断面でも、透過板80の内面80aにおけるレーザ光L1が入射する位置(図3の場合はP3位置)の接線Lcは、水平方向に対する傾きが一定角度αとなっている(図3、図4参照)。
【0038】
また、本実施形態では、反射ミラー30と凹面鏡41とが所定の間隔をあけて配置されており、レーザ光L1が透過板80の周方向いずれの位置に入射する場合でも、透過板80からの外乱光の鏡面反射成分(正反射成分)が反射ミラー30と凹面鏡41との間を通るように、透過板80の形状(特に内面80aにおける傾斜角度)や配置、及び凹面鏡41及び反射ミラー30の形状や配置が定められている。なお、図1、図3、図4では、レーザ光L1の一部が透過板80の内面80aで反射した反射光(外乱光)の内、鏡面反射成分(正反射成分)を符号L3にて概念的に示している。
【0039】
次に、フィルタ部材90の構成について詳述する。
フィルタ部材90は、受光面20aの前方側且つ下方側において凹面鏡41の上方の受光経路上に配置されており、凹面鏡41からのレーザ光L1の一部が透過板80で反射して生じる外乱光を抑制するように機能している。このフィルタ部材90は、板状に構成されると共に、下面90a及びその反対の上面が水平方向(上下方向(Y軸方向)と直交する平面方向)とほぼ平行に配置されており、上下方向(Y軸方向)の光を透過すると共に当該フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有している。そして、凹面鏡41から上方に導かれた反射光(レーザ光L1が外部空間の物体で反射して生じる反射光であって、凹面鏡41に取り込まれた反射光)を透過させ、透過板80からフォトダイオード20側に向かう斜め方向の外乱光(レーザ光L1が透過板80で反射して生じる反射光)の透過を抑制するように構成されていることを特徴とする。角度依存性を有するフィルタ部材自体は公知であり、フィルタ部材90として、公知の多層膜フィルタ、バンドパスフィルタ(干渉フィルタ)、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ等を用いることができる。
【0040】
即ち、本構成では、凹面鏡41の真上に反射ミラー30が配置され、外部空間の物体からの反射光が凹面鏡41で集光されつつ反射ミラー30に向けて反射されるときの反射光の向きは、上下方向の光或いは上下方向とのなす角度が小さい光が多いため(つまり、フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が大きい光が多いため)、その一部がフィルタ部材90に入り込んだとしてもこのフィルタ部材90でそれほど抑制されることなく透過することとなる。一方、透過板80は、凹面鏡41の側方に配置されており、フィルタ部材90からある程度離れた側方に配置されているため、凹面鏡41からのレーザ光L1の一部が透過板80で反射して生じる外乱光が直接フィルタ部材90に入り込むときには、その外乱光の向きとフィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる。
【0041】
より具体的には、凹面鏡41からの正規の反射光(外部空間の物体からの反射光)がフィルタ部材90の下面90aに入り込むときのその反射光の向きと下面90aとのなす角度よりも、透過板80で反射して生じる外乱光が直接フィルタ部材90に入り込むときの外乱光の向きとフィルタ部材90の下面90aとのなす角度の方が格段に小さくなっており、外乱光を確実に減衰させることができるようになっている。更に詳しく言えば、凹面鏡41からの正規の反射光(外部空間の物体からの反射光)がフィルタ部材90の下面90aに入り込むときの、その反射光のうちの上下方向に対して最も傾斜した成分(上下方向とのなす角度が最も大きい成分)の向きと下面90aとのなす角度よりも、透過板80で反射して生じる外乱光が直接フィルタ部材90に入り込むときのその入り込む外乱光のうちの上下方向に対して最も傾斜していない成分(上下方向とのなす角度が最も小さい成分)の向きとフィルタ部材90の下面90aとのなす角度の方が小さくなっている。
【0042】
具体的には、図3のように、レーザ光L1が前方に照射されるときにおいて、図4及び以下に示すような位置関係とすることができる。凹面鏡41に対して外部からの光(反射光)が水平に入り込んだときの端部P4での反射方向Laと水平方向とのなす角度をθ1とし、その反射方向Laと上下方向とのなす角度をA1としたときに、A1=90−θ1となり、このA1は、端部P4から上方に向かう反射光が下面90aに入射するときの入射角となる。この反射方向Laの光がほぼ100%透過するように、反射方向La及びフィルタ部材90の構成が調整されていることが望ましい。
【0043】
また、図4に示すように、凹面鏡41からレーザ光L1が前方に出射されるときの方向(前後方向)と位置P3で鏡面反射して生じる鏡面反射光L3とのなす角度をX1としたとき、X1=180−2αとなる。このような鏡面反射光L3がフィルタ部材90に入射する位置関係となるように、レーザ光L1の入射位置P1、透過板80の傾斜角度α、及びフィルタ部材90の配置が調整されていることが望ましい。また、フィルタ部材90は、入射光と下面90aとのなす角度がこのX1のとき(即ち、X1=180−2αのとき)に透過率がほぼ0となるような構成であることが望ましい。
【0044】
また、鏡面反射光の経路L3を中心として角度β程度の範囲でガウス拡散することを想定した場合、凹面鏡41からレーザ光L1が前方に出射されるときの方向(前後方向)とガウス拡散光の上方側の境界の経路L4とのなす角度X2については、X2=180−2α+βとなる。このような経路L4の光がフィルタ部材90に入射する位置関係となるように、レーザ光L1の入射位置P1、透過板80の傾斜角度α、及びフィルタ部材90の配置が調整されていることが望ましい。また、フィルタ部材90は、入射光と下面90aとのなす角度がこのX2のとき(即ち、X2=180−2α+βのとき)に透過率がほぼ0となるような構成であることが望ましい。なお、θ2は、経路L4の光が下面90aに入射するときの入射角であり、θ2=90−(X1+β)の関係にあり、換言すれば、フィルタ部材90は、θ2が、90−(X1+β)のときに透過率がほぼ0となるような構成であることが望ましい。
【0045】
上記変数において、αは、例えば80°とすることができ、これ以外の角度としてもよい。また、βは、透過板80の材質や表面粗さなどによって変化する値であり、例えば10°程度に設定することができる。また、θ1は、例えば75°程度とすることができる。この場合、X2は、30°となり、θ2は、60°となるため、フィルタ部材90は、入射角θ2が、60°のときに透過率がほぼ0となるような構成であることが望ましい。また、入射角A1は、15°となるため、フィルタ部材90は、入射角A1が15°のときに透過率がほぼ100%となるように構成されていることが望ましい。
【0046】
図1、図3の切断面は、中心軸42aを通り且つ受光面20aの中心P2を通る平面に沿ってレーザレーダ装置1を切断した切断面であり、図3では、このような切断面において、凹面鏡41から当該切断面に沿って外部空間に照射されるときのレーザ光の透過板内面80aでの入射位置P3と当該切断面におけるフィルタ部材90の前端部90bとを通って上方側に延びる仮想的な第一延長線B1を設定している。また、凹面鏡41から当該切断面に沿って外部空間に照射されるときのレーザ光L1の透過板内面80aでの入射位置P3と当該切断面におけるフィルタ部材90の後端90cとを通って上方側に延びる仮想的な第二延長線B2を設定している。このような仮想的な第一延長線B1、第二延長線B2を設定したとき、フォトダイオード20の受光面20aは、第一延長線B1の下側の領域において第一延長線B1から外れた位置に配置され、且つ第二延長線B2の上側の領域において第二延長線B2から外れた位置に配置される構成となっている。即ち、第一延長線B1と第二延長線B2の間の領域において、これら第一延長線B1及び第二延長線B2にかからないように受光面20aが配置されるようになっている。
【0047】
また、フィルタ部材90は、凹面鏡41から当該切断面(図3等)に沿って前方に照射されるレーザ光L1の一部が前記透過板80で鏡面反射するときの鏡面反射光の経路L3上に配置されている。更に、図3に示す切断面において、フィルタ部材90の前端部90bが、上述のレーザ光発生手段によって上下方向(Y軸方向)に導かれるレーザ光L1の経路の一部に位置するように配置されている。なお、「フィルタ部材90の前端部90bがレーザ光L1の経路の一部に位置する」とは、レーザダイオード10から照射されるレーザ光L1の一部がフィルタ部材90の前端部に入り込んで透過し、その他の部分がフィルタ部材90の前端部に入り込まないように通過する位置関係を意味している。また、このような構成に限られることはなく、レーザダイオード10から照射されるレーザ光L1のほぼ全部がフィルタ部材90の前端部付近に入り込んで透過するように構成されていてもよい。
【0048】
(第1実施形態の主な効果)
上記構成では、透過板80におけるレーザ光入射部分の内面(レーザ光の入射面)が中心軸42aに対して傾斜し且つ上方側を向くように配置されているため、凹面鏡41からのレーザ光L1の一部が透過板80で反射して外乱光が生じた場合には、その外乱光は斜め上方に向かうことになる。このような構成では、透過板80で反射して生じる外乱光が直接凹面鏡41に入射してしまう問題は生じ難いが、凹面鏡41から前側にレーザ光が照射されるときに透過板80で生じる外乱光がその後方側且つ斜め上方側のフォトダイオード20に受光されてしまうことが懸念される。しかしながら、本発明では、フォトダイオード20の受光面20aの前方側且つ下方側にフィルタ部材90が配置され、このフィルタ部材90は、当該フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有すると共に、透過板80からフォトダイオード20側に向かう斜め方向の外乱光の透過を抑制するように構成されているため、外乱光がフィルタ部材90を透過してフォトダイオード20側に向かうことを確実に抑えることができ、フォトダイオード20に外乱光が入り込みにくくなる。
【0049】
一方、上記フィルタ部材90は、上下方向(Y軸方向)の光については透過するように構成されているため、凹面鏡41によって上方に導かれる正規の反射光(外部空間の物体からの反射光)については、フィルタ部材90を透過する際に抑制されにくく、装置内の受光経路での減衰を抑えてより確実にフォトダイオード20に導くことができる。特に、凹面鏡41からフィルタ部材90に入り込む反射光のうち、最も入射角が大きい(下面90aとのなす角度が最も小さい)成分についても、ほぼ透過する構成となっているため、受光感度を低下させることなく維持できる。
【0050】
更に、凹面鏡41からの受光経路上にフィルタ部材90を配置することが可能となっているため、フィルタ部材90を敢えて受光経路から避けて配置する必要が無く、フィルタ部材90の配置スペースを受光経路と共用できるため、小型化を図る上で非常に有利となる。特に、反射ミラー30の側方にフォトダイオード20を配置する構成のものでは、小型化を図る上ではフィルタ部材90をできるだけ反射ミラー30に近づけて密集させることが望ましく、このような場合、受光経路から外してフィルタ部材90を配置することが困難となる。この点、本発明では、受光感度をそれほど低下させることなく受光経路上にフィルタ部材90を配置することができるため、小型化の面で極めて有利となる。
【0051】
また、上記構成によれば、外乱光の影響が最も懸念される照射方向のとき(即ち、凹面鏡41から前側にレーザ光が照射されるとき)において、透過板80からフォトダイオード20の受光面20aに直接向かう外乱光についてはフィルタ部材90によって確実に抑制することができる。また、フィルタ部材90から外れた方向に向かう外乱光が存在しても、この外乱光が直接的にフォトダイオード20に入り込まない位置関係となっているため、フォトダイオード20に対する外乱光の影響を一層抑え易くなる。
【0052】
更に、フィルタ部材90は、凹面鏡41から図3の切断面に沿って前方に照射されるレーザ光L1の一部が透過板80で鏡面反射するときの鏡面反射光の経路L3上に配置されている。この構成では、外乱光の影響が最も懸念される照射方向のとき(即ち、凹面鏡41から前側にレーザ光が照射されるとき)においてエネルギーの大きい鏡面反射成分を確実に抑制することができ、より大きな遮蔽作用を生じさせることができる。
【0053】
また、フィルタ部材90の前端部90bが、レーザ光発生手段によって上下方向に導かれるレーザ光の経路の一部に位置するように配置されている。この構成では、フィルタ部材90がレーザ光の投光経路全体に介在せずレーザ光発生手段からのレーザ光の全部がフィルタ部材90に入射しないため、フィルタ部材90に起因する投光時の減衰を抑えることができる。
【0054】
また、上記構成によればフォトダイオード20を反射ミラー30の側方側に配置することができ、フォトダイオード20をそれほど上方位置に配置せずに済む。そして、このようにフォトダイオード20をある程度下側に配置すると、透過板80からフォトダイオード20に向かう外乱光の傾斜度合いが大きくなるため、フィルタ部材90での透過抑制効果がより高まることになる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置の一部を概略的に例示する断面図である。本実施形態では、フィルタ部材90の形状、及び配置位置のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同様の点については、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
図5に示すように、第2実施形態に係るレーザレーダ装置1では、フィルタ部材90において、上下方向に連通する貫通孔91が形成されており、レーザ光発生手段(レーザダイオード10及びレンズ60)によって上下方向に導かれたレーザ光L1が貫通孔91内を通過して凹面鏡41に入射するように構成されている。
【0057】
この構成では、前記レーザ光発生手段からのレーザ光がフィルタ部材90内部を通過しない構成となるため、フィルタ部材90に起因する投光時の減衰をより効果的に抑えることができる。また、フィルタ部材90を投光経路の一方側(後方側)のみに寄せて配置するのではなく、投光経路の周囲に満遍なく配置することができるようになる。
【0058】
なお、フィルタ部材90の材料自体は第1実施形態と同様のものを用いることができる。このフィルタ部材90は、第1実施形態のものと同様の機能を有しており、上下方向(Y軸方向)の光を透過すると共に当該フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有しており、凹面鏡41からのレーザ光L1が外部空間の物体で反射して生じる反射光が凹面鏡41に取り込まれ、この凹面鏡41によって上方に導かれたときに、この上方に向かう反射光を透過させるように構成されている。また、第1実施形態と同様、透過板80からフォトダイオード20側に向かう斜め方向の外乱光の透過を抑制するように構成されている。
【0059】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係るレーザレーダ装置の一部を概略的に例示する断面図である。本実施形態では、フィルタ部材90の形状、及び配置位置のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同様の点については、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
図6に示すように、第3実施形態に係るレーザレーダ装置1では、フィルタ部材90の全体が、中心軸42aの位置よりもある程度離れて前方寄りに配置されている。即ち、フィルタ部材90の前端部90bが、レーザ光発生手段(レーザダイオード10及びレンズ60)によって上下方向に導かれるレーザ光L1の経路の経路よりも後方側に外れるように配置されている。
【0061】
この構成でも、前記レーザ光発生手段からのレーザ光がフィルタ部材90内部を通過しない構成となるため、フィルタ部材90に起因する投光時の減衰をより効果的に抑えることができる。
【0062】
なお、この構成でも、フィルタ部材90の材料自体は第1実施形態と同様のものを用いることができる。このフィルタ部材90も、第1実施形態のものと同様の機能を有しており、上下方向(Y軸方向)の光を透過すると共に当該フィルタ部材90の下面90aとのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有しており、凹面鏡41からのレーザ光L1が外部空間の物体で反射して生じる反射光が凹面鏡41に取り込まれ、この凹面鏡41によって上方に導かれたときに、この上方に向かう反射光を透過させるように構成されている。また、第1実施形態と同様、透過板80からフォトダイオード20側に向かう斜め方向の外乱光の透過を抑制するように構成されている。
【0063】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
上記実施形態では、偏向部として反射面が凹面として構成される凹面鏡41を例示したが、反射面が平面として構成される平面鏡を用いてもよい。この場合、平面鏡からフォトダイオード20までの受光経路上において平面鏡からの反射光を集光するレンズを設けることが望ましい。
【0065】
第2実施形態では、フィルタ部材90に貫通孔を形成し、この貫通孔91内をレーザ光L1が通るように構成したが、完全な孔として構成されていなくてもよい。例えば、フィルタ部材90の前端部において後方側に凹むように切り欠かれた切欠部を設け、この切欠部内をレーザ光L1が通るように構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…レーザレーダ装置
3…ケース
10…レーザダイオード(レーザ光源、レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(受光センサ)
20a…受光面
30…反射ミラー
32…通過孔
40…回転反射装置(回転偏向手段)
41…偏向部
50…モータ(駆動手段)
60…レンズ(レーザ光発生手段)
80…透過板
80a…内面(入射面)
90…フィルタ部材
90a…下面
91…貫通孔
A1…仮想線
B1…第一延長線
B2…第二延長線
L3…鏡面反射光の経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光源を備え、前記レーザ光源からのレーザ光を所定の上下方向に導くように構成されたレーザ光発生手段と、
前記上下方向に沿った中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれたレーザ光を前記偏向部によって当該偏向部の周囲の外部空間に向けて偏向させ、その偏向されたレーザ光が前記外部空間に存在する物体で反射して生じる反射光を前記偏向部で上方に反射して受光経路に導く回転偏向手段と、
前記偏向部によって受光経路に導かれた前記反射光を受光する受光センサと、
少なくとも前記受光センサ及び前記偏向部を収容する構成をなし、前記偏向部の周囲の少なくとも周方向一部分において前記レーザ光の走査経路上を前記レーザ光が透過可能な透過板によって閉塞してなるケースと、
を備え、
前記偏向部から照射される前記レーザ光が前記透過板に入射する位置よりも上方側に前記受光センサが配置され、
前記透過板における前記レーザ光が入射する部分は、前記レーザ光の入射面が前記中心軸に対して傾斜し且つ上方側を向くように配置されており、
前記中心軸の軸線と直交し且つ前記受光センサの受光面の中心を通る仮想線の方向を前後方向とし、前記受光センサにおける前記受光面が面する側を前側、前記受光面とは反対面側を後側としたとき、前記受光面の前方側且つ下方側であって且つ前記偏向部の上方の受光経路上には、前記偏向部からの前記レーザ光の一部が前記透過板で反射して生じる外乱光を抑制するフィルタ部材が配置されており、
前記フィルタ部材は、前記上下方向の光を透過すると共に当該フィルタ部材の下面とのなす角度が小さくなる光ほど透過を抑制する角度依存性を有しており、前記偏向部から上方に導かれた前記反射光を透過させ、前記透過板から前記受光センサ側に向かう斜め方向の前記外乱光の透過を抑制するように構成されていることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記中心軸を通り且つ前記受光面の中心を通る平面に沿って当該レーザレーダ装置を切断した前記切断面において、
前記偏向部から前記切断面に沿って前記外部空間に照射されるときのレーザ光の前記透過板内面での入射位置と前記切断面における前記フィルタ部材の前端とを通って上方側に延びる仮想的な第一延長線を設定し、
前記偏向部から前記切断面に沿って前記外部空間に照射されるときのレーザ光の前記透過板内面での入射位置と前記切断面における前記フィルタ部材の後端とを通って上方側に延びる仮想的な第二延長線を設定したときに、
前記受光センサの前記受光面は、前記第一延長線の下側の領域において前記第一延長線から外れた位置に配置され、且つ前記第二延長線の上側の領域において前記第二延長線から外れた位置に配置される構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、前記偏向部から前記切断面に沿って前方に照射されるレーザ光の一部が前記透過板で鏡面反射するときの鏡面反射光の経路上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記フィルタ部材の前端部が、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれるレーザ光の経路の一部に位置するように、又はその経路よりも後方側に外れるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記フィルタ部材は、上下方向に連通する貫通孔又は切欠部が形成されており、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれたレーザ光が前記貫通孔内又は前記切欠部内を通過して前記偏向部に入射するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記受光経路において前記偏向部の上方側には、前記レーザ光発生手段によって前記上下方向に導かれるレーザ光を通す通過孔が形成され且つ前記偏向部からの前記反射光を後方に反射する反射ミラーが設けられ、
前記反射ミラーの後方側に前記受光センサが設けられており、
前記反射ミラーと前記偏向部との間の位置に前記フィルタ部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68582(P2013−68582A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209266(P2011−209266)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】