説明

レーザーを用いた生体物質検出方法

【課題】従来方法に比べて簡便な操作で測定ができ、さらに生体組織や生細胞内の生体物質についても検出が可能な生体物質検出方法の提供。
【解決手段】多光子励起を利用して、生体物質に所定の反応を進行させ、該反応の反応生成物である自家蛍光性物質からの蛍光を検知することによって、前記生体物質を検出する方法を提供する。併せて、この方法から得られた蛍光検出値に基づいて、疾患状態及び生理機能の判定を行う方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質の検出方法などに関する。より詳しくは、多光子励起を利用した生体物質の検出方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組織や細胞内の生体物質の検出は、液体高速クロマトグラフ(以下、「HPLC」という)やELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbentAssay)等を用いて行われている。これらの方法では、まず、組織の一部を摘出してホモジネートを調製したり、培養細胞を回収してライセートを調製した後、組織ホモジネート又は細胞ライセートを遠心分離して目的生体物質を含む抽出液を調製する。
【0003】
その後、HPLCを用いる方法では、得られた抽出液を分画化し、特定の分画にフラクション化された生体物質を紫外線吸収検出器により検出する。また、ELISAでは、生体物質に特異的な抗体を用い、抗原抗体反応によって抽出液中の生体物質を検出する。
【0004】
非特許文献1には、HPLCを用いて、生体物質として糖化タンパク質を検出、測定する方法が記載されている。また、非特許文献2には、ELISAを用いて糖化タンパク質を検出、測定する方法が記載されている。
【非特許文献1】J Clin Chem Clin Biochem. 1981 Feb;19(2):81-87
【非特許文献2】Clin Chim Acta. 1989 Nov;185(2):157-164
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したHPLCやELISAを用いる従来の生体物質検出方法では、組織又は細胞の抽出液や生体物質分画を調製する必要があり、その操作が煩雑となっていた。また、従来方法では、組織や細胞を溶解しなければならないため、組織や細胞が生きた状態で、その内部の生体物質を検出することは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明は、従来方法に比べて簡便な操作で測定ができ、さらに生体組織や生細胞内の生体物質についても検出が可能な生体物質検出方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため、本発明は、多光子励起を利用して、生体物質に所定の反応を進行させ、該反応の反応生成物である自家蛍光性物質からの蛍光を検知することによって、前記生体物質を検出する方法を提供する。
前記生体物質は、生体内に存在する物質であってもよい。
前記生体物質として糖化ヘモグロビンや糖化アルブミン、糖化グロブリンなどの糖化タンパク質を、前記自家蛍光性物質として終末糖化産物を適用することができる。
また、前記生体物質としてヘモグロビンやアルブミン、グロブリン、クロモグラニン、トリプシン、キモトリプシンなどの芳香族アミノ酸含有タンパク質を、前記自家蛍光性物質としてこれら芳香族アミノ酸含有タンパク質の反応生成物を適用してもよい。
さらに、前記生体物質としてカテコールアミン又はセロトニンを、前記自家蛍光性物質としてカテコールアミン又はセロトニンの反応生成物を適用することもできる。
本発明は、上記の生体物質検出方法から得られた蛍光検出値に基づいて、疾患状態の判定又は及び生理機能の判定を行う方法をも提供するものである。
【0008】
ここで、本発明における各用語の定義を説明する。
【0009】
「生体物質」とは、生体組織や細胞内に存在する化学物質をいうものとする。生体物質には、アミノ酸やペプチド、タンパク質、ヌクレオチドやヌクレオシド、核酸、糖類や脂質、ビタミンやホルモン、金属元素や金属元素を含むタンパク質等が広く包含される。
【0010】
「多光子励起」とは、1個の分子に同時に複数個の光子を吸収(多光子吸収)させ、第一電子励起状態以上へ遷移させることをいう。多光子励起は、パルス幅がフェムト秒からピコ秒(サブピコ秒)のフェムト秒レーザー光を対物レンズで標的分子に集光することにより誘起できる。
【0011】
励起された分子は、その高いエネルギー状態のために反応性が高く、元のエネルギー状態に比べて反応速度が大きくなる。このため、元のエネルギー状態では緩徐にしか進行しない反応であっても、励起状態では迅速に反応を進行させることが可能となる。
【0012】
また、励起された分子は、元のエネルギー状態に戻る際に蛍光を発生する。この蛍光をとらえることで、標本中の分子を検知することが可能となる。
【0013】
多光子励起では、複数個の光子により励起を行うため、従来の一光子励起に比べてエネルギーが低い長波長のレーザーを使用することができる。また、多光子励起過程は、複数個の光子がほぼ同時に分子に到達したときのみ起こるため、レーザーの焦点付近だけで誘起される。さらに、深部到達性に優れた長波長のレーザーを使用するため、標本表面から深部にある標的分子を励起することが可能である。
【0014】
「芳香族アミノ酸含有タンパク質」とは、化学構造中に芳香環を有するチロシン及びフェニルアラニン、トリプトファン(芳香族アミノ酸)をアミノ酸配列中に含有するタンパク質を意味する。芳香族アミノ酸は、芳香環に由来する自家蛍光性を有し、例えば、トリプトファンは、波長270nm近傍の励起光の照射によって、波長360nm近傍の自家蛍光を発する。従って、芳香族アミノ酸含有タンパク質は自家蛍光性を有するが、さらに酸化、還元、環化、架橋、二量体形成等の反応によって、自家蛍光性が顕著に増強されることや蛍光波長が変化することが知られている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る生体物質検出方法によれば、簡便な操作で生体物質の検出が可能であり、さらに生体組織や生細胞内の生体物質についても検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
図1は、本発明に係る生体物質検出方法の手順を示す概念図である。本方法は、多光子励起を利用して、検出対象とする生体物質に所定の反応を進行させるステップ(A)(図1中、符号(A)で示す)と、生成した自家蛍光性物質から発生する蛍光の検知を行うステップ(B)(同、符号(B))とを含む。多光子励起は、ステップ(A)とステップ(B)の両方で利用される。
【0018】
まず、ステップ(A)では、目的生体物質に対して多光子励起を行う。励起された生体物質は、高い反応性を有する状態となるため、元のエネルギー状態に比べて反応速度が大きくなる。これにより、生体物質に所定の反応を迅速に進行させ、生体物質を反応生成物である自家蛍光性物質へと転換させる。
【0019】
次に、ステップ(B)では、生成した自家蛍光性物質に対して多光子励起を行う。励起された自家蛍光性物質は、元のエネルギー状態に戻る際に蛍光を発生する。この蛍光を検知することによって、自家蛍光性物質を検出する。ステップ(A)とステップ(B)は、自家蛍光性物質が拡散しない状態で保持されれば、連続して行なう必要はない。
【0020】
ここで、自家蛍光性物質はステップ(A)において生体物質から生成したものであるから、ステップ(B)における自家蛍光性物質の検出は、所定の反応当初に存在した生体物質の検出を意味する。
【0021】
また、ステップ(B)において自家蛍光性物質から検知される蛍光検出値(以下、「蛍光強度」ともいう)は、当初存在した生体物質の量に依存する。従って、自家蛍光性物質の蛍光強度を測定することで、生体物質の量を測定することが可能となる。
【0022】
このように、本発明に係る生体物質検出方法は、生体物質を、その反応生成物である自家蛍光性物質からの蛍光の検知によって検出することを特徴としている。従って、所定の反応によって自家蛍光性物質を生成し得る生体物質であれば広く検出対象とすることができる。
【0023】
このような生体物質としては、例えば、糖化タンパク質や芳香族アミノ酸含有タンパク質、カテコールアミン、セロトニン等がある。糖化タンパク質は、メイラード反応と呼ばれる反応により、自家蛍光性物質である終末糖化産物(AGE:Advanced Glycation Endproducts)を生成する。また、芳香族アミノ酸含有タンパク質は、酸化、還元、環化、架橋、二量体形成等の反応により、自家蛍光性を有する反応生成物を生成する。また、芳香族アミノ酸であるチロシンから生成されるカテコールアミンや、トリプトファンから生成されるセロトニンも、酸化、還元、環化、架橋、二量体形成等の反応により、同様に自家蛍光性物質を生成する。
【0024】
以下、目的生体物質として、糖化タンパク質を検出する場合を例に、本発明に係る生体物質検出方法をより詳しく説明する。
【0025】
本発明において、「糖化タンパク質」とは、非酵素的反応により糖が付加されたタンパク質をいう。代表的な糖化タンパク質として、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、糖化アルブミン、糖化グロブリンがある。これらは、糖尿病病態下における高血糖状態の指標として、重要な診断マーカーとなっている。この点については、詳しく後述する。
【0026】
糖化タンパク質を生成する非酵素的糖付加反応は、一般にグリケーション(Glycation)、もしくはメイラード反応と呼ばれている。
【0027】
図2は、メイラード反応を説明する図である。メイラード反応は、アマドリ転位産物を生成する前期反応(図中、符号(A)で示す)と、アマドリ転位産物がさらに終末糖化産物(AGE:Advanced Glycation Endproducts)へと変化する後期反応(同、符号(B))に分けられる。
【0028】
前期反応(A)では、還元糖のアルデヒド基がタンパク質のN末端アミノ基やリジン残基のε−アミノ基と反応してシッフ塩基が形成された後、さらにシッフ塩基のアマドリ転位によってアマドリ転位産物が生成する。
【0029】
還元糖とタンパク質の反応によるシッフ塩基の形成は、可逆的反応であり、かつ、速やかに反応が進行する。これに対して、アマドリ転位は、不可逆的反応であり、極めて緩徐に進行する。上記した糖化ヘモグロビン(HbA1c)や糖化アルブミン、糖化グロブリンは、この不可逆的反応により生成したアマドリ転位産物である。
【0030】
さらに後期反応(B)において、アマドリ転位産物は、脱水、酸化、縮合、転位などの複雑な反応を経て、AGEへと変化する。
【0031】
AGEは強い自家蛍光を発する自家蛍光性物質であるので、このAGEから発生する蛍光を検知することで、アマドリ転位産物を検出することが可能となる。
【0032】
すなわち、まず、アマドリ転位産物に対して多光子励起を行うことにより、メイラード反応を迅速に進行させ、アマドリ転位産物をAGEへと変換する。次に、生成したAGEに対して多光子励起を行い、励起されたAGEからの蛍光を検知する。これにより、当初存在していたアマドリ転位産物の検出を行なう。さらに、この際AGEからの蛍光強度を測定すれば、アマドリ転位産物の量を測定することが可能である。この方法は、アマドリ転位産物である糖化ヘモグロビン(HbA1c)、糖化アルブミン、糖化グロブリンを検出・測定したい場合に適用される。
【0033】
芳香族アミノ酸含有タンパク質及びカテコールアミン、セロトニンの検出・測定についても同様の原理により行なうことが可能である。
【0034】
上述の通り、芳香族アミノ酸は、芳香環に由来する自家蛍光性を有するため、芳香族アミノ酸を含有タンパク質や、芳香族アミノ酸であるチロシンから生成されるカテコールアミン、トリプロファンから生成されるセロトニンは自家蛍光性を有する。しかしながら、芳香族アミノ酸含有タンパクやカテコールアミンは、酸化や還元、環化、架橋、二量体形成等の反応により、反応生成物の蛍光強度が顕著に増強されることや蛍光波長の変化が起こることが知られている。
【0035】
従って、芳香族アミノ酸含有タンパク又はカテコールアミンに対して多光子励起を行うことにより、酸化や還元、環化、架橋、二量体形成等の反応を迅速に進行させ、これらの反応生成物を得て(図1(A)参照)、反応生成物の多光子励起から発生する蛍光を検知すれば(図1(B)参照)、芳香族アミノ酸含有タンパク又はカテコールアミン、セロトニンを検出することができる。
【0036】
なお、ヘモグロビンやアルブミン、グロブリン、クロモグラニン、トリプシン、キモトリプシンなどの芳香族アミノ酸含有タンパク質のうち、特にクロモグラニンは、神経・内分泌系腫瘍(褐色細胞種や下垂体腫瘍)患者で血中濃度が顕著に増加することが知られており、腫瘍マーカーとして用いられている。また、唾液腺または副腎から分泌されるクロモグラニンは、精神的ストレスマーカーとしても利用されている。唾液中に分泌されるグロブリンは、既日リズムを持っていることが知られており、生体リズムのマーカーとしても利用されている。
【0037】
トリプシン、キモトリプシンは膵臓から分泌されるため、膵液の分泌能力のマーカーとなる。ヘモグロビンやアルブミンは血清タンパク総量(TP)のマーカーや、涙腺から分泌されて既日リズムを持っていることが知られており、生体リズムのマーカーとしても利用されている。
カテコールアミンも、その血中及び尿中濃度が褐色細胞種の診断マーカーとされており、さらに、カテコールアミン及びセロトニンは神経伝達物質であるので、神経活動をモニターできる。
【0038】
トリプシン、キモトリプシン、クロモグラニン、カテコールアミン、セロトニンは生体中で機能を発現するまでは分泌小胞中に高濃度で存在することから、上記反応が容易に起こりうると考えられる。よって、上記反応の後の自家蛍光を測定することで、トリプシン、キモトリプシン、クロモグラニン、カテコールアミン、セロトニンを分泌する器官の生理機能がモニターすることができる。
【0039】
次に、本発明において、自家蛍光性物質の蛍光強度に基づいて目的生体物質の量を測定する方法について説明する。
【0040】
生体物質の量(H)は次の式(1)で表すことができる。
【0041】
【数1】

(aは補正係数を表す。Fnは内部標準物質の多光子励起によって得られる蛍光強度、Fn0は内部標準物質を多光子励起しない場合に得られる蛍光強度(バックグランウンド値)を表す。Fhは多光子励起によって生体物質から生成した自家蛍光性物質に由来する蛍光強度、Fh0は生体物質を多光子励起しない場合に得られる蛍光強度(バックグランド値)を表す。ここで、蛍光強度とは、時間当たりの蛍光増加量と言い換えることもできる。
【0042】
Fhの測定は、多光子励起によって生体物質が全て自家蛍光性物質に変化し、自家蛍光性物質から得られる蛍光強度が安定した時点で測定を行う。
【0043】
ここで、内部標準物質とは、生体物質の量(H)を校正するためのものである。内部標準物質としては、生体組織及び生細胞に普遍的に存在する自家蛍光物質が用いられる。例えば、補酵素であるNADPH(ニコチナミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を用いる。
【0044】
補正係数aは、既存方法により測定した生体物質の量と、上記蛍光比((Fh-Fh0)/(Fn-Fn0))を対応させるための係数である。補正係数aは、既存方法によって予め量を測定した生体物質を多光子励起によって自家蛍光性物質へ転換し、生成した自家蛍光性物質からの蛍光強度を求めることによって統計処理を行い算出する。補正係数aは、検出対象とする生体物質や測定条件(レーザー光強度、レーザー光照射時間等)ごとに異なる数値を設定する。
【0045】
目的生体物質又は自家蛍光性物質の多光子励起には、パルス幅がフェムト秒からピコ秒(サブピコ秒)の近赤外フェムト秒レーザー光を用いる。レーザー光には、モード同期レーザーを用いて、上記のパルス幅を実現する。モード同期レーザーには、チタンサファイアやエルビム添加ファイバーレーザー媒質などが採用される。
【0046】
近赤外フェムト秒レーザー光(以下、単に「レーザー光」ともいう)は、波長が650nmから1100nmの範囲であり、この範囲から検出対象とする生体物質及び自家蛍光性物質の吸光波長に合わせて適宜選択される。より具体的には、例えば、波長830nmでは、パルス幅は200fs以下、繰り返し周波数は80MHzとなる。また、出力安定性は±0.5%程度であり、平均光出力は2W程度である。
【0047】
この近赤外フェムト秒レーザー光を、集光レンズ(対物レンズ)を用いて、測定対象とする生体物質及び自家蛍光性物質が存在する焦点へ集光する。集光レンズには、赤外透過性のものを用いる。レンズの倍率は特に限定されないが、20倍〜40倍程度が適当である。
【0048】
生体物質及び自家蛍光性物質は、焦点(生体物質及び自家蛍光性物質の存在部位)付近において、集光されたレーザー光の複数個の光子を同時に吸収し、多光子励起過程に至る。励起状態へ遷移した生体物質は、速やかに所定の反応によって自家蛍光性物質に転換される。また、励起状態へ遷移した自家蛍光性物質は、元のエネルギー状態に戻る際に蛍光を発生する。この蛍光をとらえることで、生体物質を検出・測定することが可能となる。
【0049】
蛍光の検出は、自家蛍光性物質の多光子励起により発生した蛍光を集光レンズで集光し、光電変換素子へ導光することにより行う。光電変換素子は、蛍光を検知して、その強度をデータ変換し、接続されたコンピューターへデータを出力する。
【0050】
測定対象とする生体物質は、所定の反応によって自家蛍光性物質を生成し得る生体物質を広く含み得る。in vitro条件下では、従来方法に従って調製した組織又は細胞の抽出液や生体物質分画を用いることができる。これら抽出液や生体物質分画の溶液中の生体物質に対し多光子励起を行って、生体物質を検出・測定する。なお、本発明に係る生体物質検出方法は、このようなin vitro条件下における測定のみでなく、生体組織や生細胞内の生体物質(in vivo条件下)についても検出が可能である点に特徴を有する。
【0051】
以下、in vivo条件下での生体物質検出について説明する。近赤外フェムト秒レーザー光の特徴として、従来の一光子励起に用いられるレーザー光に比べて波長が長く、エネルギーが低い点がある。また、近赤外フェムト秒レーザー光では複数個の光子により励起を行うので、焦点付近の分子のみを励起することができる。従って、近赤外フェムト秒レーザー光による多光子励起では、高い深部到達度が得られるほか、標本の焦点以外での蛍光退色やダメージを抑えて、長時間の測定を行い得るといった利点がある。
【0052】
これらの利点から、多光子励起を利用した生体物質検出方法は、生体組織や生細胞内の生体物質の検出に最適な方法ということができる。高い深部到達度が得られるという特徴は、生体組織の内部(深部)に存する生体物質を検出できることを意味する。また、標本の焦点以外での蛍光退色やダメージを抑制できるという特徴は、組織や細胞を傷害することなく(非侵襲的に)、長時間の測定を可能にする。従って、多光子励起を利用した生体物質検出方法では、従来方法とは異なり組織ホモジネートや細胞ライセートを調製することなく、生体組織及び生細胞内の生体物質を直接検出することが可能となる。
【0053】
以下、生体物質として上述の糖化ヘモグロビン(HbA1c)を例にとり、本発明に係る生体物質検出方法の具体的な実施方法について説明する。
【0054】
糖化ヘモグロビンは、血液中の糖(グルコース等)が非酵素的反応(メイラード前期反応)により赤血球ヘモグロビンに結合したものである。グルコースとヘモグロビンがシッフ塩基を形成した安定型糖化ヘモグロビンと、さらに安定型糖化ヘモグロビンのアマドリ転位によって生じる不安定型糖化ヘモグロビンがある。現在、糖尿病の診断マーカーに用いられているHbA1cは、この不安定型糖化ヘモグロビン(アマドリ転位産物)である。HbA1cは、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均値を反映するものと考えられている。
【0055】
図3(A)は、赤血球内のHbA1cを測定するための方法を示した模式図である。
【0056】
図3(A)中、符号Sは皮膚表面、符号Vは血管、Eは血管V内の赤血球を表している。測定部位は、皮膚表面Sが平滑であり、体毛が少なく、表皮が薄い部位が望ましい。また、血管Vとしては、皮膚表面Sに近い細静脈又は毛細血管が好ましい。例えば、下腕部の肘裏から手首にかけての細静脈又は毛細血管が好適である。このような部位とすることにより、皮膚表面でのレーザー光の吸収、散乱を防止でき、効率よく蛍光を検出することが可能である。さらに、皮膚表面に水や油等を塗布して、生体表面でのレーザー光の散乱を防止することで、より測定精度を向上させることができる。
【0057】
近赤外フェムト秒レーザー光(図中、破線で示す)は、集光レンズ28aにより、測定対象のHbA1cの存在部位である赤血球E内の一点(焦点)へ集光される。この際、近赤外フェムト秒レーザー光は、皮膚組織内の水や血液による吸収、組織による散乱が少なく、高い深部到達性を発揮する。また、皮膚に対する侵襲性は極めて低いため、皮膚の傷害はほとんどない。
【0058】
測定中は、環境からの光が混入しないように測定部位を遮光する。照射されたレーザー光は、XY平面が直径500μm程度、Z軸方向が1mm程度の棒推計をした領域(図中、点線で囲った楕円領域)を特に励起する。励起は、集光レンズLの作動距離の5mm皮膚表面より深部で起こる。
【0059】
アマドリ転位産物であるHbA1cは、照射されたレーザー光により多光子励起され、速やかに脱水、酸化、縮合、転位(メイラード後期反応)反応を引き起こし、AGEへと変換される。さらに、このAGEを多光子励起し、得られる蛍光の強度を測定する。このとき、同時に、赤血球E内のNADPHの多光子励起によって得られる自家蛍光についても測定を行う。
【0060】
AGE及びNADPHの蛍光強度の測定は、測定誤差をなくすため、同一の赤血球で行うことが望ましい。このため、赤外感度があるCCDカメラによって血管V内の赤血球像をリアルタイムに取得し、赤血球Eの追尾を行なう。画像処理によって、視野内の赤血球Eの位置を逐次測定し、この位置情報に基づいてレーザー光を同一赤血球の同一部位に照射し続ける。
【0061】
上記式(1)において、FnはNADPHの多光子励起によって得られる蛍光強度、Fn0はNADPHを多光子励起しない場合に得られる蛍光強度(バックグランウンド値)を表す。Fhは多光子励起によってHbA1cから生成したAGEに由来する蛍光強度、Fh0はHbA1cを多光子励起しない場合に得られる蛍光強度(バックグランド値)を表す。
【0062】
Fhの測定は、レーザー照射開始後1ミリ秒後から、波長350-400nmの蛍光を33ミリ秒間測定する。また、NADPHについても、波長450-500nmの蛍光を33ミリ秒間測定する。蛍光強度は、この間の蛍光増加量と言い換えることもできる。
【0063】
HbA1cの多光子励起には、中心波長520nm、波長域50nmの光学フィルターを用いる。AGEが発する自家蛍光は波長330-550nmであり、その極大は350-400nmにあることが知られていることから、AGEの蛍光強度の取得には中心波長375nm、波長域50nmの光学フィルターを用いる。また、NADPHの蛍光強度の取得には、中心波長475nm、波長域50nmの光学フィルターを用いる。
【0064】
別法として、糖化アルブミン、糖化グロブリンといった他の糖タンパク質を測定することも可能である。糖化アルブミンは、血液中の糖(グルコース等)が非酵素的反応(メイラード前期反応)により血清アルブミンに結合して生成する。また、糖化グロブリンは、糖(グルコース等)と血清グロブリンが反応して生成する。血清アルブミン及び血清グロブリンは、両者を合わせてフルクトサミンとも呼ばれる。これらは、いずれもHbA1cと同様に、高血糖状態の指標となる診断マーカーとして用いられている。
【0065】
糖化アルブミン、糖化グロブリン、フルクトサミンの測定を行う場合には、図3(B)に示すように、レーザー光を血管V内の赤血球E非存在部位を焦点として照射する。このとき、血管V内の血流は、一時的に止める必要がある。
【0066】
焦点付近に存在する糖化アルブミンや糖化グロブリンは、多光子励起によってAGEへ転換される。このAGEに対して、HbA1cと同様に多光子励起を行い、蛍光強度を測定することにより、糖化アルブミン又は糖化グロブリンの量を測定することができる。
【0067】
この際、使用する光学フィルター及び上記式(1)における補正係数aは、検出対象とする糖タンパク質に応じて適宜最適なものが選択される。
【0068】
以上、特に、赤血球内のHbA1cを例にとり、生体組織内の生体物質の量を測定する方法について説明した。本発明において測定部位となり得る生体組織は、血管に限定されず、目的生体物質の存在部位に応じて、皮膚の他、つめや耳、指先、口唇、網膜、毛髪等が広く含まれる。また、これら体表に露われる組織に限らず、肝臓や脳、腎臓、筋肉等の体内臓器への適用も可能である。
【0069】
例えば、上述のクロモグラニンについては、神経・内分泌系腫瘍腫瘍マーカーとして用いられる場合には、副腎、甲状腺、視床下部を測定部位とする。また、精神的ストレスマーカーとしても利用する場合には、下顎腺導管部が好適な測定部位となる。また、カテコールアミンやセロトニンについては、副腎、交感神経節、脳を測定部位とする。
【0070】
体内臓器組織内の生体物質を検出するためには、光ファイバーを用いて、レーザー光を体内臓器の測定部位に導光し、かつ蛍光の集光を行う。光ファイバーを用いた測定は、内視鏡検査時や開腹手術時などに、患部(術部)組織内の生体物質を検出するといった応用が考えられる。
【0071】
図4は、生細胞内の生体物質を検出するための方法を示した模式図である。
【0072】
図4中、符号Cは培養細胞を表す。本図では、培養細胞Cをシャーレ内で培養された状態として示した。細胞の培養は、シャーレの他、フラスコやチャンバースライドなど特に限定されず、レーザー光を透過する素材であれば使用可能である。
【0073】
近赤外フェムト秒レーザー光(図中、破線で示す)は、集光レンズ28aにより、生体物質の存在部位である培養細胞C内へ集光される。この際、核、ミトコンドリア、ゴルジ体等の特定の細胞内オルガネラに対して集光を行うことにより、これら細胞内オルガネラに存在する生体物質を検出することができる。測定中は、環境からの光が混入しないように遮光する。
【0074】
続いて、本発明に係る生体物質検出方法に用いる装置について説明する。図5は、その一例を表す模式図である。装置の基本構造は、公知の近赤外多光子励起正立顕微鏡のシステムを転用することが可能である。以下、図に基づいてその構造を簡単に説明する。
【0075】
図5中、符号11は、近赤外パルスで発振するレーザー光源である。レーザー光源11から出射されたレーザー光(図中、破線で示す)は、レーザー光径を調節するためのレーザー光径調整器21を透過し、標本4上でのレーザー光走査に機能するガルバノミラー22によって反射される。
【0076】
続いて、レーザー光は光分岐部23に入る。この光分岐部23は、ダイクロイックフィルターを用いた光学システムやダイクロイックミラー等からなる。図のバンドパスフィルター24は、レーザー光を透過させるとともに、光源61から波長600〜950nmの光を照射された標本4からの反射光(図中、点線で示す)を、特定の波長を吸収・減衰した上で、後述するCCDカメラユニット32へ反射する。
【0077】
バンドパスフィルター24を透過したレーザー光は、光分岐部25へ導かれる。光分岐部25も、光分岐部23と同様に、ダイクロイックフィルターを用いた光学システムやダイクロイックミラー等から構成される。図のダイクロイックミラー26は、レーザー光源11からのレーザー光を透過させる。また、標本4からの蛍光を、特定の波長を選択して、後述する蛍光検出部31へ反射するとともに、反射光を光分岐部23へと透過させる。
【0078】
ダイクロイックミラー26を透過したレーザー光は、焦点位置調整機構27に取り付けられた集光レンズ28aにより、標本4の焦点位置4aに集光される。集光レンズ28a及びレーザー光径調整器21、バンドパスフィルター24、ダイクロイックミラー26には、赤外透過性のものを用いる。この点については、特に言及しない限り、他の光学フィルターについても同様である。また、集光レンズ28aの倍率は特に限定されないが、20倍〜40程度が適当である。
【0079】
集光されたレーザー光は、焦点位置4aにおいて、目的生体物質及び自家蛍光性物質の多光子励起過程を誘導する。集光レンズ28aは、焦点位置調整機構27内において、図上下(高さ)方向への位置を調整可能に取り付けられている。これにより、標本4内において焦点位置4aの上下(深さ)方向の位置を調節することができる。
【0080】
また、集光レンズ28aは、焦点位置4aから発せられた蛍光及び反射光(図中、それぞれ一点破線及び点線で示す)を集光して、蛍光検出部31及びCCDカメラユニット32へ導くためにも機能する。集光された蛍光は、まず、ダイクロイックミラー26により、特定の波長が反射される。反射された蛍光は、さらにショートパスフィルター29を透過して、蛍光検出部31へ導かれる。なお、ショートパスフィルター29は、特定波長以上を遮断する特性を有する。
【0081】
蛍光検出部31は特定の波長を選択して受光する機能を有し、一つ以上を用いる。蛍光検出部31は、蛍光を検出するための光電変換素子からなる。蛍光検出部31には、光電変換素子からのデータを蓄積し処理するための不図示のコンピューターが接続される。光電変換素子は、蛍光を検知して、その強度をデータ変換し、接続されたコンピューターへデータを出力する。このデータ(蛍光測定値)から、上記の式(1)に従って、生体物質の量(H)が算出される。
【0082】
また、集光レンズ28aにより集光され、光分岐部25のダイクロイックミラー26を透過した反射光(図中、点線で示す)は、光分岐部23のバンドパスフィルター24に反射され、CCDカメラユニット32へ導かれる。なお、CCDカメラユニット32の前段には、ロングパスフィルター33を設けている。ロングパスフィルター33は、特定波長以下を遮断する特性を有する。
【0083】
CCDカメラユニット32には、不図示の画像表示手段が接続される。これにより、通常の白色光源61を落射光学系により照明し、赤外領域にも感度のあるCCDカメラユニット32及び画像表示手段によって標本4をモニター上で確認しながら、レーザー光を照射する部位を定めることが可能となる。落射光学系は、図3中、符号61の光源、符号71の光径調節器、符号72のロングパスフィルターを備える。なお、光源61から標本4への落射光については図示を省略した。
【0084】
CCDカメラユニット32は赤外領域にも感度があるため、例えば、標本4が皮膚であるような場合には、赤外光の皮膚透過性を利用して、血管内の赤血球を観察することも可能である。
【0085】
これにより、先に説明したように、血管内の赤血球像をリアルタイムに取得し、赤血球の追尾を行なうことが可能となる。すなわち、取得された画像の画像処理によって、視野内の赤血球の位置を逐次測定し、この位置情報に基づいてレーザー光を同一赤血球の同一部位に照射し続けることが可能とされる。
【0086】
レーザー光源に用いる近赤外フェムト秒レーザー光は、波長が650nmから1100nmの範囲であり、この範囲から使用する基質及び基質代謝産物の吸光波長に合わせて適宜選択される。より具体的には、例えば、波長830nmでは、パルス幅は200fs以下、繰り返し周波数は80MHzとなる。また、出力安定性は±0.5%程度であり、平均光出力は2W程度である。
【0087】
この場合、蛍光検出部31で検出される蛍光は、例えば、波長500-600nmであり、CCDカメラユニット32で検知される反射光の波長は、600-950nmである。
【0088】
レーザー光の波長、蛍光検出部31で検出される蛍光の波長は、検出対象とする生体物質及び自家蛍光性物質によって変化する。バンドパスフィルター24、ダイクロイックミラー26、ショートパスフィルター29の各特性は、目的とする生体物質及び自家蛍光性物質に応じて適宜最適なものを使用する。
【0089】
標本4としては、皮膚やつめ、耳、指先、口唇、網膜、毛髪等の体表に露われる組織を広く含む(図3も参照)。また、標本4を培養細胞とし、図4に示したように生細胞内の生体物質を検出することもできる。
【0090】
図6に示される生体物質検出装置は、レーザー光、蛍光及び反射光を伝送するための光ファイバー28cを備える点が特徴である。この装置は、標本4として肝臓や脳、腎臓、筋肉等の体内臓器へ適用するためのものである。光ファイバー28cによって、レーザー光を伝送し、これらの体内臓器へ照射できるよう工夫されている。
【0091】
レーザー光源11から出射されたレーザー光は、光分岐部25のダイクロイックミラー26を透過した後、集光レンズ28bによって光ファイバー28c内へ導光され、光ファイバー28c内を伝送されて、集光レンズ(対物レンズ)28aに送られる。続いて、レーザー光は、集光レンズ28aによって標本4の焦点位置4aに集光され、ここで生体物質及び自家蛍光性物質の多光子励起過程を誘導する。
【0092】
自家蛍光性物質の多光子励起過程により焦点位置4aから発生した蛍光(並びに反射光)は、集光レンズ28aによって集光され、光ファイバー28c内を伝送され、蛍光検出部31及びCCDカメラユニット32へ導かれる。
【0093】
臓器組織内の生体物質の検出は、内視鏡検査時や開腹手術時などにおいて行うことが想定される。このため、集光レンズ28a及び光ファイバー28cは、可能な限り小型化することが望ましい。
【0094】
最後に、本発明に係る生体物質検出方法によって得られた蛍光検出値に基づいて、疾患状態又は生理機能の判定を行なう方法について説明する。
【0095】
本発明において、測定対象とする生体物質は、in vitro及びin vivoの条件下であらゆる生体物質を含み得ることは既に説明した通りである。ここで、生体物質として、生体組織及び生細胞内における該生体物質の出現又は多量の蓄積が、特定の疾患や生理機能と関連付けられている生体物質を測定することによって、疾患状態や生理機能を判定することが可能となる。
【0096】
好適な例として、上述の糖化タンパク質が挙げられる。糖化ヘモグロビン、糖化アルブミン、糖化グロブリン、フルクトサミンといった糖化タンパク質は、糖尿病下における高血糖状態を示す指標として診断マーカーに用いられている。
【0097】
従来方法では、例えばHbA1cであれば、まず患者から採決を行い、赤血球を分離・溶解し、ヘモグロビンをHPLCによって分画し、分画化されたHbA1cの量を測定する必要があった。
【0098】
これに対して、本発明に係る生体物質検出方法を用いれば、このようなHPLCを用いた分析を行うことなく、直接に赤血球内のHbA1cの量を測定することできるため、簡便かつ迅速に患者の血糖状態を把握することができる。これにより、患者に肉体的な負担を与えることなく、短時間で糖尿病の発症リスクや予後判定、治療成績等の評価を行なうことが可能となる。
【0099】
また、上述のクロモグラニンやカテコールアミンやセロトニンについても、その血漿中や唾液中の濃度をHPLCやELISA法によることなく、直接交感神経節や副腎髄質、脳においてその量を測定することができ、例えば、下顎腺導管部においてクロモグラニン量の測定を行えば、ストレス状態を規定する自律神経機能の評価を簡便に行なうことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る生体物質検出方法は、例えば、創薬分野での薬理試験や安全性試験において、生体組織や生細胞内における生体物質の検出に利用することが可能である。また、本発明に係る生体物質検出方法は、糖尿病などの疾患の発症リスク、予後判定、治療成績等の評価に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係る生体物質検出方法の手順を示す概念図である。
【図2】メイラード反応を説明する図である。
【図3】赤血球内のHbA1cを測定するための方法を示した模式図である。
【図4】生細胞内の生体物質を検出するための方法を示した模式図である。
【図5】本発明に係る生体物質検出方法に用いる装置の一例を表す模式図である。
【図6】本発明に係る生体物質検出方法に用いる装置の他の例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0102】
S 皮膚表面
V 血管
E 赤血球
C 細胞
11 レーザー光源
21 レーザー光径調節器
22 ガルバノミラー
23 光分岐部
24 バンドパスフィルター
25 光分岐部
26 ダイクロイックミラー
27 焦点合わせ機構
28a 集光レンズ(対物レンズ)
28b 集光レンズ
28c 光ファイバー
29 ショートパスフィルター
31 放射波検出部
32 CCDカメラユニット
33 バリアフィルター
4 標本
4a 焦点位置
61 光源
71 光径調節器
72 ロングパスフィルター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多光子励起を利用して、
生体物質に所定の反応を進行させ、
該反応の反応生成物である自家蛍光性物質からの蛍光を検知することによって、
前記生体物質を検出する方法。
【請求項2】
前記生体物質が生体内に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生体物質は糖化タンパク質であり、前記自家蛍光性物質は終末糖化産物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記糖化タンパク質は、糖化ヘモグロビン、糖化アルブミン、糖化グロブリンから選択される一以上であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記生体物質は、芳香族アミノ酸含有タンパク質であり、前記自家蛍光性物質は該芳香族アミノ酸含有タンパク質の反応生成物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記芳香族アミノ酸含有タンパク質は、ヘモグロビン、アルブミン、グロブリン、クロモグラニン、トリプシン、キモトリプシンから選択される一以上であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記生体物質は、カテコールアミン又はセロトニンであり、前記自家蛍光性物質はカテコールアミン又はセロトニンの反応生成物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法から得られた蛍光検出値に基づいて、疾患状態又は/及び生理機能の判定を行うことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−47540(P2009−47540A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213612(P2007−213612)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】