説明

レーザーアトムプローブおよびレーザーアトムプローブ分析方法

【課題】優れたレーザーアトムプローブシステム、およびレーザーアトムプローブトモグラフィによって試料を分析するための方法を提供する。
【解決手段】レーザーアトムプローブシステムは、チップ形状を有する分析試料2を取り付けるように構成した試料ホルダ3と、検出器4と、試料ホルダ3と検出器4との間に配置された電極1と、試料チップと電極との間に電位差を印加するように構成した電源1と、レーザービームを試料チップに横方向から照射するように構成したレーザーシステム5と、試料チップの形状を検出および測定するように構成したチップ形状監視手段10、ならびに/または試料チップの形状を維持、復元もしくは制御するために、前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを変更および/もしくは制御するための手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトムプローブトモグラフィに関し、特に、レーザーアトムプローブシステムおよびアトムプローブ分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのスケーリング、および3次元(3D)トランジスタへの傾向は、インターフェイス、およびサブナノメートルの深度および空間解像度を有するナノメータサイズの構造の特徴付けを可能にする計測方法を必要としている。レーザー支援アトムプローブは、次の世代へ向けての計測ツールとして提案され、可能性のある解決法として発展してきた。
【0003】
アトムプローブトモグラフィは、電界誘起蒸発(field induced evaporation)をベースとした、いずれの層混合にも完全に鈍感であろうプロセスである。それゆえに、アトムプローブは、理論的には結晶中の格子距離に近づく深度の解像度を有する理想的な探査ツールであると示されてきた。また、電界誘起蒸発プロセスは、100%の効率であると説明されており、定量化も正確である必要があることを示している。
【0004】
アトムプローブトモグラフィに関連する最先端の技術に対する概観は、文献(Miller et al., Atom probe tomography, Materials characterization 60 (2009), p. 461-469)における指導的な考察において見ることができる。アトムプローブトモグラフィ(APT)はまた、プローブ電界イオン顕微鏡(APFIM)としても知られており、あるいはパルスレーザーを使用する場合には、しばしばパルスレーザーアトムプローブ(PLAP)と呼ばれる。例えばイマーゴ(Imago)社のLEAPシステム、またはカメカ(Cameca)社の3Dレーザー支援アトムプローブ(LA−WATAP)を、アトムプローブ顕微鏡測定に使用してもよい。
【0005】
図1に概略的に示すように、当技術分野で周知のレーザーアトムプローブシステムは、少なくとも次のコンポーネント、即ち試料ホルダ3に取り付けた試料2と検出器4との間を接続するように構成したDC電源1を備える。試料2は、最初の曲率半径Rinit204が50〜100nmの範囲にあるチップ端部またはチップ先端201(図3)を備える小さく尖ったプローブである。曲率半径は、チップ端部の曲率に適合する円203の半径と定義される。チップ端部の曲率が小さいほど、即ち、チップ端部が鋭いほど、曲率半径Rは小さくなる。曲率が大きいほど、即ち、チップ端部が鈍いほど、曲率半径Rは大きくなる。プローブチップに向けられる1つ以上のレーザービームを生成するために、レーザーシステム5を導入する。レーザーシステムの好ましい位置は、試料チップを横方向から照射するビームを生成する位置である。用語「レーザーシステム」は、レーザービームを生成するための手段、およびレーザービームを制御するための手段、即ち波長、偏光および出力のようなレーザービームパラメータを変更するための手段を備える装置と理解するべきである。チップから蒸発したイオンが検出手段3に投影され、蒸発したイオンの飛行時間および衝突位置を基礎として組成を決定するアルゴリズムによって分析される。図2に示すように、試料と検出器との間に配置された、内部にホール7を設けた電極6は、追加可能なコンポーネントである。電極6は、検出器4でなく、同じ、または異なる電源1に接続してもよい。電極6の機能は、要求される蒸発のための電界を局所的にのみ生成し、分析動作のためのエリア選択を提供することである。
【0006】
試料の小さいチッププローブを達成するために、集束イオンビーム(FIB)技術を使用してもよい。また、試料、特に金属製試料を準備するために、ケミカルエッチングを使用してもよい。したがって、試料の構成材料に依存して、異なる試料準備技術を使用してもよい。
【0007】
AP分析中に、高いDC電圧または好ましくはDC電圧パルス列(典型的には2〜20kVの間)を試料チップに、即ち電極と試料との間に印加してもよい。これにより、試料プローブの先端付近に非常に強い電界(数10V/nm)が生じ、イオンがチップ表面から放出する。この電界は、次の式で与えられる。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、Fは電界(V/nm)、Vはプローブ試料に印加する電圧(V)、Rはプローブ試料の先端の曲率半径(nm)、およびβはプローブ試料の幾何学的形状因子である。結果として、チップ先端の曲率半径が小さいほど、即ちチップ端部が鋭いほど、そして印加する電圧が大きいほど、より大きい電界を達成することができる。
【0010】
この方法で、導電性の大きい試料材料、例えば金属について、チップ表面からイオンを放出させるのに充分強い電界に達することができる。しかしながら、半導体材料、例えばシリコンについては、試料材料のより低い導電性に起因してこれが当てはまらない。これがレーザーシステムをアトムプローブに付加する理由である。レーザーシステムは、レーザ−ビーム、または試料チップの方向を向いたいくつかのレーザービーム束、例えば様々な波長のビーム束を生成する。入射ビームにより、半導体プローブチップからイオンを放出させるのに充分な電界がパルス状に増加する。
【0011】
既在のレーザーAPTシステムに関する課題を、これ以降で説明する。レーザーアトムプローブトモグラフィは、試料材料の、より具体的には試料チップの端部の材料の、蒸発プロセスに起因した破壊性を有するので、小さく尖ったプローブの、最初の曲率半径Rinitは、アトムプローブトモグラフィ測定中に変更されることになる。より正確に言うと、分析の最初、チップは球形を有しているが、分析が進むにつれて形状は球形から異なるようになるかもしれない。例えば、図1および図2に示すように、レーザーを一方に印加する場合、チップ材料の蒸発は、手前側でより大きくなり、チップ形状は手前側で平面状になる一方、反対側では球形が維持される。検出器を介して実施する実際の試料分析アルゴリズムは、チップは球形であり、チップの変形は分析の誤差につながるという前提をベースにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、優れたレーザーアトムプローブシステム、およびレーザーアトムプローブトモグラフィによって試料を分析するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明の態様に従って、レーザーアトムプローブシステムが開示される。該レーザーアトムプローブシステムは、チップ形状を有する分析試料を載置することができる試料ホルダと、検出器と、試料チップと検出器との間に電位差を印加するように構成したDC電源と、1つ以上のレーザービームを試料チップの方向へ向けるように構成したレーザーシステムと、試料チップの形状を検出および測定するように構成したチップ形状監視手段とを備え、必要に応じて、試料ホルダと検出器との間に配置した電極を備える。
【0014】
試料チップの形状は、好ましくは球形チップ形状である。レーザーアトムプローブシステムは、試料チップの形状を維持するように前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを制御するための手段をさらに備えてもよく、前記制御するための手段は、検出したチップ形状を基礎として、ビームパラメータを制御するように構成される。
【0015】
監視手段は、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)から成る群から選択する。実施形態に従って、監視手段が走査型プローブ顕微鏡(SPM)システムである場合には、SPMシステムが測定位置に出入りすることができるように、SPMシステムを移動可能に取り付ける。SPMシステムは、移動可能なアームの上に取り付けてもよい。試料チップもまた、SPMチップに向かって近づいてもよく、および/または遠ざかってもよい。
【0016】
実施形態に従って、レーザーアトムプローブシステムは、チップ形状監視手段と少なくとも1つの前記レーザーシステムとの間に配置したコントロールループを有する1つ以上のレーザーシステムをさらに備える。
【0017】
1つ以上のレーザーシステムのうちの2つは、試料チップの両側に正反対に位置してもよい。
【0018】
実施形態に従って、レーザーアトムプローブシステムは、前記レーザーシステムによって生成したレーザービームを反射するように構成した少なくとも1つのミラーをさらに備えてもよい。前記チップ形状監視手段と前記ミラーとの間にコントロールループを配置してもよい。
【0019】
第2の発明の態様に従って、レーザーアトムプローブシステムを開示する。レーザーアトムプローブシステムは、チップ形状を有する分析試料を載置することができる試料ホルダと、検出器と、試料チップと検出器との間に電位差を印加するように構成したDC電源と、1つ以上のレーザービームを試料チップに向けるように構成した1つのレーザーシステムと、試料チップの形状を維持、復元または制御するための前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを変更および/または制御するための手段とを備え、必要に応じて、試料ホルダと検出器との間に配置した電極を備える。試料チップの形状のかかる維持、復元もしくは制御は、測定もしくは監視したチップ形状に応じて維持、復元もしくは制御してもよく、または刺激結果、計算結果に応じて、もしくは所定のアルゴリズムもしくはルックアップテーブルをベースとして維持、復元もしくは制御してもよい。
【0020】
試料チップの形状は、球形チップ形状でもよい。
【0021】
レーザーアトムプローブシステムは、試料チップの形状を検出し、測定するように構成したチップ形状監視手段を備えてもよい。
【0022】
該システムは、チップ形状監視手段と、試料チップの形状を維持、復元または制御するように前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを変更および/または制御するための手段、との間に配置したコントロールループを備えてもよい。
【0023】
監視手段は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)から成る群から選択してもよい。チップ形状監視手段は、SPMシステムでもよく、前記SPMシステムは、測定位置に出入りできるように移動可能に設置する。代替として、試料ホルダもまた、監視手段に対する測定位置に向かって、ATP測定位置の外側で試料チップを移動させるために、移動可能にしてもよい。
【0024】
実施形態に従って、前記変更および/または制御するための手段は、結合したすべてのレーザーシステムの動作がチップ形状を維持するように配置した少なくとも1つの追加のレーザーシステムを備える。
【0025】
実施形態に従って、2つのレーザーシステムは、試料チップの両側に正反対に位置してもよい。
【0026】
実施形態に従って、前記変更および/または制御するための手段は、チップ形状を維持するために、前記レーザーシステムによって生成したレーザービームを反射して試料チップの方向へ戻すように構成した少なくとも1つのミラーを備える。
【0027】
実施形態に従って、少なくとも1つのレーザービームパラメータは、波長、偏光、ビーム出力、試料チップに対して同じ方向を有するビームの数、試料チップに対して異なる方向を有するビームの数、試料チップに対する入射角、(必要ならば)ミラーの位置、から成る群から選択する。
【0028】
第3の発明の態様に従って、レーザーアトムプローブトモグラフィによって試料を分析するための方法を開示する。該方法は、試料チップ形状、好ましくは球形チップ形状を有する試料をホルダに取り付けるステップと、試料チップと検出器との間にDC電位差を印加するステップと、レーザービームパルス列を試料チップに向け、試料チップからイオンを蒸発させ、前記イオンを検出器の方向へ向けるステップと、検出器が検出したイオンを分析するステップと、中断時間間隔中のいろいろな時間に前記レーザーパルス列を中断するステップと、前記時間間隔中に、試料チップの形状を検出および測定するステップと、前記時間間隔後に、前記レーザービームパルス列を再開するステップとを含む。
【0029】
実施形態に従って、該方法は、試料チップの形状を検出および測定する各ステップの後に、前記レーザービームパルスの1つ以上のパラメータを調整するステップをさらに含み、前記調整は、検出した試料チップの形状をベースとし、チップ形状を維持する。また、前記時間間隔の後、調整したパラメータをレーザービームパルスに適用して、ビームパルス列を再開する。
【0030】
発明の第4の態様に従って、レーザーアトムプローブトモグラフィによって試料を分析するための方法を開示する。該方法は、チップ形状、好ましくは球形チップ形状を有する試料をホルダに取り付けるステップと、試料チップと検出器との間にDC電位差を印加するステップと、第1レーザービームパルス列を試料チップに向け、試料チップからイオンを蒸発させ、前記イオンを検出器の方向へ向けるステップと、検出器が検出したイオンを分析するステップと、チップ形状を維持、復元または制御するために、前記第1ビームパルス列の1つ以上のパラメータを変更および/または制御するステップとを含む。
【0031】
該方法はまた、中断時間間隔中のいろいろな時間に、前記レーザーパルス列を中断するステップ、および前記時間間隔中に、試料チップの形状を検出および測定するステップを含んでもよく、前記変更および/または制御するステップは、検出したチップ形状をベースにして変更および/または制御することを含む。
【0032】
実施形態に従って、変更および/または制御するステップは、第1ビームパルス列の方向とは異なる方向から試料チップに向けた少なくとも1つの更なるレーザービームパルス列を方向づけることを含む。
【0033】
実施形態に従って、レーザーパルスのパラメータは、波長、偏光、ビーム出力、試料チップに対して同じ方向を有するビームの数、試料チップに対して異なる方向を有するビームの数、試料チップに対するビームの入射角、ビームパルスを反射して試料チップの方向へ戻すように置かれたミラーの位置、から成る群から選択してもよい。
【0034】
特定の発明の態様の利点は、試料チップの形状を、レーザーアトムプローブシステムの原位置(in-situ)で、レーザーアトムプローブ測定中に監視できることである。
【0035】
特定の発明の態様の利点は、試料チップの形状を、レーザーアトムプローブシステムの原位置で、レーザーアトムプローブ測定中に制御できることである。
【0036】
特定の発明の態様の利点は、球形試料チップの形状を、レーザーアトムプローブ測定中に維持できることである。
【0037】
特定の発明の態様の利点は、球形チップの形状に依存する試料のレーザーアトムプローブ分析アルゴリズムを使用することによって、試料の信頼できる定量的材料分析が可能になることである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】先行技術において知られているレーザーアトムプローブシステムの概略図である。
【図2】先行技術において知られているレーザーアトムプローブシステムの概略図である。
【図3】試料チップの曲率半径の定義を示す。
【図4a】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【図4b】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【図4c】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【図4d】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【図4e】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【図4f】本発明の種々の実施形態に係るアトムプローブシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載した図面は概略的なものに過ぎず、限定的でない。図面において、いくつかのエレメントのサイズは、説明目的のため、誇張し、およびスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施化と対応していない。
【0040】
さらに、説明および請求項での用語「第1」「第2」「第3」等は、類似のエレメントを区別するための使用しており、必ずしもシーケンスを時間的、空間的に、序列で、または他のどの様式で表したものでもない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0041】
さらに、説明および請求項での用語「上(top)」「底(bottom)」「〜の上(over)」「〜の下(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であって、ここで説明した本発明の実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0042】
請求項で使用する用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他のエレメントまたはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたはコンポーネント、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントAおよびBだけからなるデバイスに限定すべきでない。本発明に関して、デバイスの関連したコンポーネントだけがAおよびBであることを意味する。
【0043】
この明細書を通じての「一実施形態(one embodimentまたはan embodiment)」の参照が意味するのは、該実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造または特性は、本発明の少なくとも一実施形態に含まれるということである。したがって、この明細書を通じてさまざまな場所で現れるフレーズ「一実施形態(one embodimentまたはan embodiment)」は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するわけではないが、参照してもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、この開示から当業者にとって明らかなように、1以上の実施形態において、好適な方法で組み合わせることができる。
【0044】
同様に、本発明の例示の実施形態の説明において、本発明の種々の特徴は、開示を効率化し、1以上のさまざまな発明の態様を理解することを助ける目的で、時には単一の実施形態、図面、またはその説明の中に一緒にグループ化されることを認識するべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求項記載の発明が、各請求項に明確に記載されたものより多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が示すように、発明の態様は、先に開示された単一の実施形態のすべての特徴より少なくなる。したがって、詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に包含され、各請求項は、この発明の別々の実施形態としてそれ自身で成立する。
【0045】
さらに、ここに記載したいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴は含むが、他の特徴は含まない。一方、当業者が理解することになるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の請求の範囲において、請求項記載の実施形態のいずれもが、任意の組み合わせで使用可能である。
【0046】
さらに、いくつかの実施形態が、方法、または方法のエレメントであって、コンピュータシステムのプロセッサまたは機能を実行する他の手段によって実装可能なエレメントの組み合わせ、として記載される。したがって、かかる方法または方法のエレメントを実効するために必要な命令を有するプロセッサが、該方法または方法のエレメントを実行するための手段を形成する。さらに、ここで記載された、装置の実施形態のエレメントが、本発明を実行する目的で、該エレメントによって実施される機能を実行するための手段の例である。
【0047】
ここでされる説明において、多くの具体的詳細が明記される。しかしながら、本開示の実施形態はこれらの具体的詳細なしに実践してもよいことが理解される。他の例において、周知の方法、構造、および技術は、この説明の理解を不明瞭にしないために、詳細には示さない。
【0048】
一態様において、本発明は、図1または図2に示すようなエレメントを備えるレーザーアトムプローブシステムであって、試料チップの形状を検出および測定するように構成されたチップ形状監視手段、ならびに/または前記試料チップ形状を維持するための、1つ以上のレーザーパラメータを変更および/もしくは制御するための手段をさらに設けたレーザーアトムプローブシステムに関する。好ましくは、最初、試料チップの形状は、球形チップ形状であり、好ましくは、球形チップ形状が維持される。そして本発明は、主にこの好ましい実施形態を基に説明することになる。しかしながら、本発明のシステムにおいて、もしくは本発明の方法を用いて、いずれのチップ形状を維持し、および/または制御してもよい。
【0049】
好ましい実施形態が、監視手段および1つ以上のレーザーパラメータを制御するための手段の両方を備え、検出したチップ形状に基づいて前記パラメータを制御し、球状チップ形状を維持する。「1つ以上のレーザーパラメータを変更すること」は、レーザーシステム5が生成した単一レーザービームの1つ以上のパラメータ、例えば波長、偏光または出力を変更することを含み、また、レーザーシステム5が生成するビームの数を増加させることによって、または別の角度からチップの方向を向くビームを生成するように構成した追加のレーザーシステムを設け、活性化させることによって、またはレーザービームを反射させて試料チップの方向へ戻すように構成したミラーを移動させることによって、チップに向けられた1つ以上の追加のレーザービームを付加することを含む。
【0050】
図4aは、第1実施形態を示しており、一レーザーシステム5を、先行技術のシステムのように試料の一方に設け、そこにチップ形状監視手段10を設けている。該装置は、第1に半導体試料の分析に使用される。チップ形状監視手段10は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のいずれのシステムも可能である。TEMまたはSEMの場合、試料チップに対するチップ形状監視手段の配置は、既知の方法に従って、したがって当業者の知識の範囲内で行うことができる。本発明のATPシステムに含まれるSPMシステムを、SPMプローブチップの製造に使用される既知の方法を利用するように構成してもよく、チップ形状は専用のトポグラフィを用いて走査することによって検出する。今回のケースにおいて、既知の形状を有するSPMプローブを、試料チップに対して走査し、試料チップ形状を検出してもよい。好ましい実施形態に従って、プローブチップと試料チップとが互いに面した測定位置であって、基本的に縦軸方向に沿った方向を向いた測定位置にSPMプローブを出入りさせるように構成した移動可能なアームに該SPMプローブを取り付ける。このようにして、レーザーパルスが付与される場合は、SPMプローブは試料チップから離れ、レーザーパルスが付与されない場合には、これらの移動は断続的な時間で繰り返され、試料チップ形状を測定および監視する。また、代替として、試料チップ形状を移動可能に取り付けて、ATP配置の周辺に位置する測定システムにおいてチップを測定してもよい。
【0051】
図4bは、本発明の別の実施形態に係るアトムプローブシステムのエレメントを概略的に示す。該システムは、プローブチップ形状監視手段10、およびレーザーシステム5が生成したレーザービームの1つ以上のパラメータを制御するための手段の両方を備え、球形の試料チップを維持する。監視システム10とレーザーシステム5の制御部との間に配置されたフィードバックコントロールループ11が、レーザービームパラメータを制御するための手段を表す。球形を維持するための制御アルゴリズムは、レーザーシステム5が生成した各レーザービームの1つ以上のパラメータを制御するように構成することができる。これらのパラメータは、レーザービームの波長、ビームの偏光、ビームの出力、レーザーシステムが生成するビームの数、試料チップに対するレーザービームの入射角度、または他のパラメータが可能である。例えば、チップが平坦となったのを検出した場合、ビームの周波数を紫外線領域から緑光周波数領域または赤外線周波数領域へ変更してもよい。なぜならこれらの波長で、レーザービームの吸収深度が増加するからである。
【0052】
図4cは別の実施形態を示しており、第2レーザーシステム8を、第1レーザーシステム5に対向するように設ける。第2レーザービームは、第1システム5と同時に1つ以上のレーザービームを提供するように構成し、球形の試料チップ形状を維持する。第2レーザーシステム8が生成したビームは、第1レーザーシステム5が生成したビームと異なるパラメータ(例えば波長)を有してもよい。
【0053】
図4dは、2つのレーザーシステム5,8、およびチップ形状監視手段10を備える実施形態を示している。レーザーパラメータを制御するための手段は、好ましくは2つのコントロールループ11a,11bを備えるが、レーザーシステムの1つに、コントロールループを1つだけ設けてもよい。このケースにおけるコントロールアルゴリズムは、両レーザーシステムの、上記の通り名前を付けたパラメータを制御するように構成してもよい。図4dのシステムの特定用途に従って、第1レーザー5を使用し、チップの劣化を第1レーザーの側で検出した場合、第2レーザー8が活性化する。他の実施形態に従って、2つのレーザーシステムを互いに反対側に配置してもよく、または2つより多いレーザーシステムをチップ周辺に設けてもよい。
【0054】
図4eは、別の実施形態を示しており、ミラー20を、レーザーシステム5に対向するように設ける。該ミラーはレーザービームを反射し、その結果、反射したレーザー光は試料チップの反対側を照射する(impinge)。このようにして、レーザー側のチップの平坦化は相殺される。
【0055】
図4fは、ミラー20と、チップ形状監視手段10とを備えた実施形態を示す。レーザーシステム5およびミラー20に対してフィードバックコントロールを提供するコントロールループ11を示している。例えば、ミラーの位置を、検出した試料チップ形状に応じて調整し、球形チップ形状を維持してもよい。代替として、レーザーシステム5のみ、またはミラー20のみに対してコントロールループを設けてもよい。本発明は、チップ形状監視手段を有する実施形態または有しない実施形態を含み、1つ以上のミラーを、1つ以上のレーザーシステムに対向するように取り付けてもよい。
【0056】
同様に、本発明は、本発明のレーザーアトムプローブシステムを用いて適用することができる測定方法および分析方法に関する。第1の実施形態に従って、本発明の方法は、
・ホルダ3に、(好ましくは球形の)チップ形状を有する試料2を取り付けるステップと、
・試料チップと検出器との間にDC電位差を印加するステップと、
・レーザービームパルス列を試料チップに向け、該試料チップからイオンを蒸発させ、前記アトムを検出器の方向へ向けるステップと、
・検出器が検出したイオンを分析するステップと、
・中断時間間隔中のいろいろな時間に、前記レーザーパルス列を中断するステップと、
・前記時間間隔中に、試料チップの形状を検出および測定するステップと、
・前記時間間隔後に、前記レーザービームパルスを再開するステップとを含む。
【0057】
該方法のすべての実施形態において、好ましくは、DC電圧を、一定のDC値にパルス列を加えた形態で印加する。レーザービームパルスはDCパルスと同時に印加する。好ましい実施形態に従って、該方法はさらに、試料チップの形状を検出および測定する各ステップの後に、前記レーザービームパルスの1つ以上のパラメータを調整するステップをさらに含む。前記調整は、検出した試料の形状をベースとして球形チップ形状を維持し、前記時間間隔の後、調整したパラメータをレーザービームパルスに適用した状態で、ビームパルス列を再開する。
【0058】
本発明はさらに、
・ホルダ3に、(好ましくは球形の)チップ形状を有する試料2を取り付けるステップと、
・試料チップと検出器との間にDC電位差を印加するステップと、
・レーザービームパルス列を試料チップに向け、該試料チップからイオンを蒸発させ、前記イオンを検出器の方向へ向けるステップと、
・検出器が検出したイオンを分析するステップと、
・球形チップ形状を維持するために、前記ビームパルス列の一つ以上のパラメータを変更および/または制御するステップとを含む方法に関する。
【0059】
一実施形態に従って、変更および/または制御するステップは、ビームパルス列の方向と異なる方向から、試料チップに少なくとも1つの更なるレーザービームパルス列を方向づけることを含む。本発明の方法の上述の実施形態において、前記パラメータは、
・波長、
・偏光、
・ビーム出力、
・試料チップに対して同じ方向を有するビームの数、
・試料チップに対して異なる方向を有するビームの数、
・試料チップに対する入射角、
・ビームパルスを反射して試料チップの方向へ戻すように置かれたミラーの位置、から成る群から選択してもよい。
【0060】
図4a〜図4fは、本発明のシステムおよび方法の実施形態を示す。本発明のシステムの詳細な説明において説明されているすべての詳細は、本発明の方法に適用可能である。
【0061】
本発明、およびこの中で説明した本発明のシステムおよび方法のさまざまな実施形態は、試料チップの形状、より具体的には、球形試料チップの形状、ならびにレーザーアトムプローブ測定中に該球形試料チップ形状を維持および/または制御することに関する。しかしながら、いずれの試料チップ形状を使用してもよいことは、当業者に明らかである。本発明のシステムおよび方法の実施形態の利点は、試料チップの形状を維持および/または制御することができ、試料チップの形状は、球形、またはレーザーアトムプローブ技術に好適ないずれの他種の形状でもよいことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ形状を有する分析試料(2)を取り付けるように構成された試料ホルダ(3)と、
検出器(4)と、
試料チップと検出器との間に電位差を印加するように構成されたDC電源(1)と、
1つ以上のレーザービームを試料チップに向けるように構成されたレーザーシステム(5)と、
試料チップの形状を維持、復元または制御するために、前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを変更および/または制御するための手段とを備えたレーザーアトムプローブシステム。
【請求項2】
前記変更および/または制御するための手段は、すべてのレーザーシステムの結合した動作が、チップ形状を維持、復元または制御するように配置された、少なくとも1つの追加のレーザーシステム(8)を備える請求項1記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項3】
試料チップの両側に正反対に配置された2つのレーザーシステム(5,8)を備える請求項1または2記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項4】
前記変更および/または制御するための手段は、チップ形状を維持、復元または制御するために、前記レーザーシステムによって生成された試料チップに向かうレーザービームを反射するように構成された少なくとも1つのミラー(20)を備える請求項1〜3のいずれかに記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレーザービームパラメータは、波長、偏光、ビーム出力、試料チップに対して同じ方向を有するビームの数、試料チップに対して異なる方向を有するビームの数、試料チップに対するビームの入射角、ミラー(20)の位置、から成る群から選択される請求項1〜4のいずれかに記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項6】
前記試料チップ形状は、球形チップ形状である請求項1〜5のいずれかに記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項7】
試料チップの形状を検出および測定するように構成されたチップ形状監視手段(10)を備える請求項1〜6のいずれかに記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項8】
試料チップ形状を維持、復元または制御するために、前記チップ形状監視手段と前記レーザービームの1つ以上のレーザーパラメータを変更および/または制御するための手段との間に配置されたコントロールループ(11,11a,11b)を備える請求項7記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項9】
該監視手段は、走査電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)から成る群から選択される請求項7または8記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項10】
チップ形状監視手段はSPMシステムであり、前記SPMシステムは、測定位置に出入りできるように、移動可能に取り付けられた請求項7〜9のいずれかに記載のレーザーアトムプローブシステム。
【請求項11】
レーザーアトムプローブトモグラフィによって試料を分析するための方法であって、
ホルダ(3)に、チップ形状を有する試料(2)を取り付けるステップと、
試料チップと検出器(4)との間にDC電位差を印加するステップと、
レーザービームパルス列を試料チップの方向に向け、試料チップからイオンを蒸発させ、前記アトムを検出器の方向へ向けるステップと、
検出器によって検出されたイオンを分析するステップと、
チップ形状を維持、復元または制御するために、前記ビームパルス列の1つ以上のパラメータを変更および/または制御するステップとを含む方法。
【請求項12】
変更および/または制御するステップは、ビームパルス列の方向とは異なる方向から試料チップに向かう少なくとも1つの更なるレーザービームパルス列を方向づけることを含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記パラメータは、波長、偏光、ビーム出力、試料チップに対して同じ方向を有するビームの数、試料チップに対して異なる方向を有するビームの数、試料チップに対するビームの入射角、ビームパルスを反射して試料チップの方向へ戻すように置かれたミラーの位置、から成る群から選択される請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記試料チップ形状は、球形チップ形状である請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
中断時間間隔中のいろいろな時間に前記レーザーパルス列を中断するステップと、
前記時間間隔中に、試料チップの形状を検出および測定するステップとを含み、
前記変更および/または制御するステップは、検出したチップ形状をベースにして変更および/または制御することを含む請求項11〜14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【公開番号】特開2012−73242(P2012−73242A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−188103(P2011−188103)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】