レーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法

【課題】迅速且つ精確に定量分析でき、定量操作が容易な、レーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法を提供する。
【解決手段】貴金属を含む試料を秤量する工程S11と、試料に融剤を調合する工程S12と、融剤を調合させた試料を融解させる工程S13と、融解した試料から鉛ボタンを形成する工程S14と、鉛ボタンにレーザー光を照射して鉛ボタンの一部を微粒子にするアブレーション工程S151と、微粒子をヘリウム(He)ガスによりICP分析装置内へ搬送し(S152)、微粒子をイオン化させて分析するICP分析工程S153とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石、製錬工程から発生する試料並びに貴金属リサイクル原料中の金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムの分析法として、例えば、(1)乾式試金−灰吹法(鉛ボタン法)(2)ニッケルマット法(3)アルカリ融解−ICPMS法などが知られている。
【0003】
しかしながら、(1)の分析方法では、定量操作が煩雑で迅速な対応が難しい場合がある。また、灰吹き時にルテニウムが四酸化ルテニウムとなり揮発すること、ロジウム及びイリジウムに対しては酸化物が生成して完全に溶解できないこと、或いは酸化物がキューペルに吸収されて低値を示すこと等により、精確な分析ができない場合がある。同様に(2)の分析方法も定量操作が煩雑で迅速な対応が難しい。更に(1)及び(2)の定量操作は、古典的な方法であるゆえに熟練技能が必要となる。一方(3)による分析方法では、分解できる試料量に制約があるため、試料の偏析などがある場合には、分析の精確さに問題が残る。
【0004】
そこで、従来方法よりも定量操作が簡便で迅速且つ精確な分析を行うことのできる様々な分析方法が検討されてきた。例えば、特許文献1では、乾式試金−灰吹法(鉛ボタン法)を応用し、ルテニウム、オスミニウム及び/またはイリジウムを含む試料を一括分離分析する方法が開示されている。特許文献2では、JIS M8111に準じた乾式試金−灰吹法(鉛ボタン法)を利用し、溶剤の融合作業を自動化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−217460号公報
【特許文献2】特開2000−97925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、乾式試金で得られた鉛ボタンあるいは錫ボタンを塩酸と過酸化水素とを用いて溶解し、蒸留して貴金属を分離回収した後、回収した溶液を用いて定量分析しているため、分析前の定量作業が煩雑で、迅速な分析が困難である。
【0007】
特許文献2の発明は、有価金属の定量分析に使用する融剤を調合する作業に関しては、効率の良い作業を行うことができる。しかしながら、融剤調合工程後の分析作業の迅速化については何ら対策が施されていないため、従来同様、鉛ボタンの灰吹工程、灰吹きにより得た合粒の秤量、秤量後の分析作業に時間を要し、迅速且つ精確に分析を行うことが難しい。
【0008】
上記問題点を鑑み、本発明は、迅速且つ精確に定量分析でき、定量操作が容易な、レーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねたところ、従来の乾式試金−灰吹法(鉛ボタン法)を応用した新たな分析方法を見出した。すなわち、本願発明では、鉛ボタンを溶液化してICP分析装置へ導入する代わりに、レーザーアブレーション法を用いて鉛ボタンに直接レーザー光を照射し、鉛ボタンから貴金属を含む試料を微粒子化する。そして、得られた微粒子をICP分析装置に直接導入してイオン化して分析することにより、従来方法に比べて分析作業を大幅に短縮化でき、迅速且つ精確に定量する分析法を見出した。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明は、一側面において、貴金属を含む試料を秤量する工程と、試料に融剤を調合する工程と、融剤を調合させた試料を融解させる工程と、融解した試料から鉛ボタンを形成する工程と、鉛ボタンにレーザー光を照射して鉛ボタンの一部を微粒子にするアブレーション工程と、微粒子を不活性ガスなどによりICP分析装置内へ搬送し、微粒子をイオン化させて分析するICP分析工程とを備えるレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法である。
【0011】
本発明に係るレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法は、一実施態様において、微粒子を、流量0.25〜0.35L/minのヘリウム(He)ガスによりICP分析装置へ搬送する。
【0012】
本発明に係るレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法は、一実施態様において、アブレーション工程が、18mJ以下のレーザー出力において、鉛ボタンの一部を微粒子にする。
【0013】
本発明に係るレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法は、一実施態様において、ICP分析工程が、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)ガスを流量0.45〜0.55L/minで供給する。
【0014】
本発明に係るレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法は、一実施態様において、ICP分析装置が、ICP質量分析装置又はICP発光分析装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、迅速且つ精確に定量分析でき、定量操作が容易な、レーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る分析方法を示すフローチャートである。
【図2】従来の一般的な分析方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られた鉛ボタン中のルテニウムの検量線の例を表すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られた鉛ボタン中のイリジウムの検量線の例を表すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られた金の検量線の例を表すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られた白金の検量線の例を表すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られた銀の検量線の例を表すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る分析方法を用いて得られたパラジウムの検量線の例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための方法を例示するものであり、この発明の技術的思想を下記のものに制限するものではない。
【0018】
本発明の実施の形態に係る分析方法は、JIS M8111に準拠する乾式試金−灰吹法(鉛ボタン法)を応用した分析方法を採用でき、図1に示すように、試料秤量工程S11と、調合工程S12と、融解工程S13と、鉛ボタン成形工程S14と、LA−ICP測定工程S15とを含む。
【0019】
試料秤量工程S11においては、まず、貴金属を含む試料を秤量する。試料としては、例えば、鉱石、製錬工程から発生する試料又は貴金属リサイクル原料等が用いられる。試料中には、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の貴金属が含まれている。試料の秤量は、例えばJIS M8083又はJIS M8101の規定に準じて行うことができる。
【0020】
調合工程S12においては、試料に融剤を調合する。例えば、概略の試料組成から貴金属の含有量を推定し、秤量した試料の還元力、酸化力等を求め、秤量した試料から所定量の鉛ボタンを形成するのに適した量の融剤を調合する。融剤としては、例えば、酸化鉄(III)、酸化マンガン(IV)等の酸化鉱、硫化鉱、硝酸カリウム、ソーダ灰、一酸化鉛、ホウ砂ガラス、小麦粉、食塩等が用いられる。
【0021】
融解工程S13においては、調合工程S12で調合した融剤を含む試料をるつぼに移し入れ、その試料を還元状態で融解させる。次いで、鉛ボタン成形工程S14において、融解させた試料を、鉛ボタンとスラグに分離させる。鉛ボタン中には貴金属が捕集される。
【0022】
LA−ICP測定工程S15については、鉛ボタン成形工程S14において得られた鉛ボタンをレーザーアブレーション(LA)装置内へ入れ、鉛ボタンにレーザー光を照射して、鉛ボタンの一部を微粒子化するレーザーアブレーション(LA)工程S151と、微粒子をアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスによりICP分析装置内へ搬送する工程S152と、微粒子をイオン化させて分析するICP分析工程(ICPMS/ICPOES測定)S153とを含む。
【0023】
−LA工程S151−
鉛ボタンに照射するレーザー光の出力は、出力を高めるほど、後述するICP測定における貴金属のイオン強度が増加する。しかしながら、レーザー光の出力を高くしすぎると、生成する微粒子のサイズが大きくなり、ICP分析における貴金属のイオン強度のばらつきが大きくなる。鉛ボタンに照射するレーザー光の出力は、18mJ以下が好ましく、より好ましくは2〜18mJ(相対値20〜60%)、更に好ましくは約6mJ(相対値30%)である。また、レーザー照射径は拡げるほど、貴金属のイオン強度の増加に有効であるため、レーザー径を使用するLA装置の最大径(例えば780μm)に設定するのが好ましい。
【0024】
−搬送工程S152−
LA工程S151において鉛ボタンから形成される微粒子は、LA工程S151に用いられるキャリアガスにより、ICP分析装置内へ搬送される。キャリアガスとしては、不活性ガスが用いられるが、中でも特にヘリウム(He)ガスを用いるのが好ましい。キャリアガスとしてヘリウムを用いると、アルゴンなどの不活性ガスに比べて鉛ボタンから生成する微粒子を大きくさせることなくICP分析装置へ導入することができ、その結果ICP分析における貴金属のイオン強度のばらつきを抑制でき、より精確な分析が行える。また、LA装置からICP分析装置へ微粒子を搬送する際のヘリウム(He)ガス流量においては、流量を多くしすぎると、Arプラズマにおいて微粒子の滞留時間が短くなるため、十分な貴金属のイオン強度を得ることができない場合がある。よって、微粒子を効率よくICP分析装置内へ搬送させ貴金属の十分なイオン強度を得るためには、LA装置内で流通させるヘリウム(He)ガスの流量を0.25〜0.35L/minに設定して微粒子を流量0.25〜0.35L/minでICP分析装置へ搬送させることが好ましく、より好ましくは、0.30L/minである。
【0025】
−ICP分析工程(ICPMS/ICPOES測定)S153−
搬送された微粒子は、ICP分析装置内のArプラズマにおいてイオン化させ、イオン化させた微粒子を分析系へ導入する。ICP分析装置としては、ICP質量分析装置(ICPMS)又はICP発光分析装置(ICPOES)が用いられる。ICP分析装置の選択は、分析対象に応じて好ましい装置を選択することができる。例えば、測定対象の物質の濃度が低い場合(例えば、0.00001〜5質量%)には、ICPOESよりもICPMSで測定する方が、比較的感度が高く精度も確保できる場合がある。一方、測定対象の物質の濃度が高い場合(例えば、5質量%を超える場合)には、ICPMSよりもICPOESで測定する方が有利となる場合もある。ICPMSにおいてもICPOESにおいても、基本的な測定条件は同様である。ICP分析装置は、高周波出力を上げるほど、微粒子のイオン化に寄与し、貴金属のイオン強度の増加に有効である。そのため、高周波出力はできるだけ高く設定するのが好ましく、例えば、1.5kW程度とすることができる。なお、ICP分析装置のArプラズマ維持及び微粒子をArプラズマへ搬送し、十分な貴金属のイオン強度を得るためには、ICP分析装置から導入するArキャリアガスの流量においても最適な範囲に設定することが好ましいが、流量を多くしすぎると、ヘリウム(He)ガスと同様に十分な貴金属のイオン強度を得ることができない場合がある。よって、アルゴン(Ar)ガス流量においても、最適な範囲(0.50〜0.60L/min)に設定する必要がある。ICP分析装置内に供給するガス流量の割合としては、一般的には微粒子の搬送及びArプラズマ維持を考慮した場合、He:Ar=1:1とすることができるが、より最適なガス流量の割合としては、He:Ar=1:2とするのが好ましい。なお、ここで「最適なガス流量の割合」とは、He流量についてはLA装置側の流量計を基準とし、Ar流量はICP分析装置側で求めた値を基準とした場合におけるHeガスとArガスの流量の割合を定義するものであり、Arガス流量にはシースガスも含まれる。
【0026】
LA−ICP測定工程S15に対するマトリックス効果は、アブレーション過程のレーザーで誘導された微粒子の生成効果や試料室の形状によって影響を受ける場合がある。また、試料の物理的或いは熱化学的性質にも依存すると言われている。本発明の実施の形態に係る分析方法においては、測定方法として、繰り返し測定における強度法と内標準法を採用することができるが、中でも特に、内標準法を採用するのが、精度の点からみて好ましい。また、貴金属の定量において、LA−ICP測定工程S15に対するスペクトル干渉を抑制し、高感度で測定するために、スキマーコーンから水素ガス/或いはヘリウム(He)ガスを導入するのが好ましい。
【0027】
従来、鉱石、製錬工程から発生する試料並びに貴金属リサイクル原料中の金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム等の貴金属を分析する場合には、図2に示すように、鉛ボタン成形工程(S24)を経た後、分析を行うまでに、灰吹き工程(S25)、ビード秤量(S26)、酸分解・Ag分離・定容工程(S27)を経なければならず、このため、分析操作が煩雑で、精確且つ迅速な分析が困難であった。
【0028】
一方、実施の形態にかかるレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法によれば、鉛ボタンに直接レーザー光を照射して、鉛ボタンの一部を微粒子化してそのままICP分析装置へ導入することにより、S25〜S27に示すステップを省略できる。このため、従来3日程度要していた分析を1日程度で完了させることができ、分析の迅速化が図れる。また、サンプルを粉砕しプレス成形したものをレーザーアブレーションにより微粒子化してICP分析装置へ導入しても、主成分が複雑すぎて測定におけるスペクトル干渉の影響を受けてしまう。一方、実施の形態に係る分析方法によれば、分析対象となる試料を、鉛ボタンに一旦成形することにより、試料中の成分の均一化がなされるため、スペクトル干渉などの影響が少なく、より精確に分析が行える。
【0029】
また、実施の形態に係るレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法によれば、従来法では、定量が困難であったルテニウム等をロスすることなく金等と同時に分析できる。また、LA−ICP測定工程(S15)を採用することにより、熟練技能を必要としない簡便な分析も実現できる。更に、分析結果においては、後述の実施例から分かるように、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム等の様々な貴金属に関し、良好な検量線を引くことができ、sub−ppmレベルの高精度な分析が、十分に可能である。
【0030】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの考案を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。
【0031】
上述の実施の形態においては、対象とする試料として、鉱石、製錬工程から発生する試料又は貴金属リサイクル原料を例に挙げ、貴金属を測定する例を開示している。しかしながら、本発明の実施の形態に係る分析方法は貴金属に限られず、例えば、銅やチタン等の金属材料中の砒素、鉛、錫、アンチモンや鉄、ニッケルなどに対しても同様な分析を行うことができ、いずれも良好な検量線を引くことができる。また、定量性においても、要求された定量下限(鉄:1ppm、ニッケル0.1ppm)でも、十分可能な定量結果を得ることができる。このように、本発明はここでは明示的に記載していない様々な態様を含むことは勿論であり、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲で変形して具体化できる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0033】
(実施例1)
−検量線の作製−
濃度が既知の5種類の試料を用意し、試料を秤量し、融剤を調合させた試料をそれぞれるつぼに入れて還元状態で融解させ、融解させた試料を、鉛ボタンとスラグに分離させ、ルテニウム添加量及びイリジウム添加量が互いに異なる鉛ボタンを形成した。得られた鉛ボタンをイー・エス・アイ・ジャパン社製UP−266MACRO型のLA装置へ導入した。LA装置の仕様は、レーザー波長266nm、レーザー最大出力40mJ以上(相対値100%)、レーザー照射径20〜780μm、繰り返し周波数1〜10Hzとし、スキャン速度はμmオーダーで可変可能であった。レーザー出力を6mJ、レーザー照射径780μm、Heガス流量0.30L/min、スキャン速度20μmとし、line測定を行った。このようなLA装置を用いて鉛ボタンにレーザー光を当て、鉛ボタンの一部を微粒子化した。微粒子化した試料をHeガス流量0.30L/minでICP分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPQ9400型及びSPQ9700型(CRI搭載))内へ搬送し、微粒子をイオン化させて、分析を行った。ICPMSの高周波出力は1.5kW、Arキャリアガス流量は0.55L/min、シースガス流量は0.05L/minであり、鉛ボタン中に吸収したルテニウム、イリジウムに関して得られた検量線の例を図3及び図4に示す。図3及び図4のグラフから分かるように、鉛ボタン中のルテニウム、イリジウムにおいて良好な検量線を引くことができる。更にスペクトル干渉が認められる場合の抑制効果策としてCRI技術を活用することとし、水素/或いはヘリウムをスキマーコーンから供給した。
【0034】
(実施例2)
−検量線の作製−
7種類の検量線用標準試料を秤量し、各試料に融剤を調合し、還元状態で融解させ、融解させた試料を、鉛ボタンとスラグに分離させ、貴金属を鉛ボタン中に捕集させた。得られた鉛ボタンをイー・エス・アイ・ジャパン社製UP−266MACRO型のLA装置へ導入した。LA装置の仕様は、レーザー波長266nm、レーザー最大出力40mJ以上(相対値100%)、レーザー照射径20〜780μm、繰り返し周波数1〜10Hzとし、スキャン速度はμmオーダーで可変可能であった。レーザー出力を6mJ、レーザー照射径780μm、Heガス流量0.30L/min、スキャン速度20μmとし、line測定を行った。このようなLA装置を用いて鉛ボタンにレーザー光を当て、鉛ボタンの一部を微粒子化した。微粒子化した試料をHeガス流量0.30L/minでICP分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPQ9400型及びSPQ9700型(CRI搭載))内へ搬送し、微粒子をイオン化させて、分析を行った。ICPMSの高周波出力は1.5kW、Arキャリアガス流量は0.55L/min、シースガス流量は0.05L/minであり、内標準法により求めた検量線の例を図5〜8に示す。更にスペクトル干渉が認められる場合の抑制効果策としてCRI技術を活用することとし、スキマーコーンから水素/或いはヘリウムをスキマーコーンから供給した。
−試料A、B、Cの分析−
試料A、B、Cに関し、検量線の作製と同様の工程により分析を行い、作製した検量線を用いてイオンカウント数の比に対応する試料中の測定元素の濃度を求めた。分析結果を表1に示す。
【0035】
(比較例)
7種類の検量線用標準試料に対し、図2に示す従来法(JIS M8111に準拠)を用いて分析を行った。図2の試料秤量工程S21、調合工程S22、融解工程S23、鉛ボタン成形工程S24までは、実施例2と同様の操作を行った。その後灰吹工程S25において、得られた鉛ボタンを灰吹炉内で加熱されたキューペル上に載せ、灰吹炉内で灰吹きした。次に、ビード秤量工程S26において、得られたビードの質量を秤量した。次に、酸分解・Ag分離・定容工程S27において、得られたビードを硫酸中に入れ、銀を溶解させ、洗浄により銀を分離させて試料を定容し、試料をICP−OES装置に導入して分析を行い、検量線を作製した。
−試料A、B、Cの分析−
実施例2と同様の試料A、B、Cに関し、図2に示す従来法に沿って分析を行い、試料中の測定元素の濃度を求めた。分析結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
図3、4から分かるように、実施例1によれば、鉛ボタン中のルテニウム、イリジウムに対して直線的で良好な検量線が引けていることがわかる。実施例2においても、図5〜図8に示すように、直線的で良好な検量線が引けていることがわかる。また、表1に示すように、金、銀、白金、パラジウムのいずれに対しても、実施例2と比較例とでほぼ同等の値が得られており、実施の形態に係る分析方法によっても、精確な分析が行えることが分かる。
【符号の説明】
【0038】
S11、S12 試料秤量工程
S12、S22 調合工程
S13、S23 融解工程
S14、S24 鉛ボタン成形工程
S15 LA−ICP測定工程
S25 灰吹工程
S26 ビード秤量
S27 酸分解・Ag分離、定容工程
S28 ICPOES測定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属を含む試料を秤量する工程と、
前記試料に融剤を調合する工程と、
前記融剤を調合させた前記試料を融解させる工程と、
融解した前記試料から鉛ボタンを形成する工程と、
前記鉛ボタンにレーザー光を照射して前記鉛ボタンの一部を微粒子にするアブレーション工程と、
前記微粒子を不活性ガスによりICP分析装置内へ搬送し、前記微粒子をイオン化させて分析するICP分析工程と
を備えることを特徴とするレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法。
【請求項2】
前記微粒子を、流量0.25〜0.35L/minのヘリウム(He)ガスによりICP分析装置へ搬送する請求項1に記載のレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法。
【請求項3】
前記アブレーション工程が、18mJ以下のレーザー出力において、前記鉛ボタンの一部を微粒子にする請求項1又は2に記載のレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法。
【請求項4】
ICP分析工程が、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)ガスを流量0.45〜0.55L/minで供給する請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法。
【請求項5】
前記ICP分析装置が、ICP質量分析装置又はICP発光分析装置である1〜4のいずれか1項に記載のレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−123016(P2012−123016A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54882(P2012−54882)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2009−262178(P2009−262178)の分割
【原出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本鉱業協会、「第59回 全国鉱山・製錬所現場担当者会議講演集 分析講演集」、平成21年5月29日
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】