説明

レーザーイメージ形成可能紙

光活性化型色変化反応を起こすことが可能な発色剤を含む紙基材を製造する方法であって、該紙基材製造中に該紙基材に該発色剤が適用され、かつ該発色剤が金属オキシアニオンまたは分子有機体である方法。この方法によって得られる紙基材も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光活性化型色変化反応を起こすことが可能な発色剤を含む紙基材を製造する新規な方法、および当該方法によって得られる紙基材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開公報第02/074548号)、特許文献2(国際公開公報第06/018640号)、特許文献3(国際公開公報第07/045912号)は、光活性化型色変化技術によって表面をコーティングした紙について教示している。当該光活性化型色変化技術では、まず、結合剤および適合する液体担体と共に、液体インクが処方される。次いで、その液体インクをフレキソ印刷などの印刷技術を使用し、紙にコーティングする。次いで、基材を乾燥すると担体が除去されて、光活性化型色変化技術が結合剤により紙表面に結合して残る。この技法には、無駄が多く時間がかかる印刷段階の使用など、いくつかの欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報第02/074548号
【特許文献2】国際公開公報第06/018640号
【特許文献3】国際公開公報第07/045912号
【0004】
米国特許第6306493号には、吸収体材料および炭化用材料として、直鎖芳香族ポリエステルおよび/または直鎖ポリアリーレンなど、微粉末状にしたポリマーを含む紙およびボード製品が教示されている。しかし、この方法では、グレースケールの茶色の焦げ(brown−burn)マークが生じるだけである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1態様によれば、光活性化型色変化反応を起こすことが可能な発色剤を含む紙基材を製造する方法であって、該紙基材製造中に該紙基材に該発色剤が適用され、かつ該発色剤が金属オキシアニオンまたは分子有機体である方法が提供される。
【0006】
本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様による方法によって得られる紙基材が提供される。
【0007】
本発明者らは、ある種の光活性化型色変化剤(以後「発色剤」と呼ぶ)を紙、すなわち、紙が作られているセルロースパルプから製造された基材に含めることができることを見出した。その結果、得られるものは、二次的印刷塗布を必要とせずに、光を使用して直接イメージ形成処理できる紙基材である。製紙には、発色剤が潜在的に分解される可能性がある過酷な物理的および化学的加工段階が含まるので、発色剤をこのように組み込めるという事実は驚くべきことである。本発明で使用される発色剤は、茶色い焦げマークではなく、多色彩マークおよび黒色マークを生成するのでさらに有利である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明の紙基材は、主として木、織物、および、亜麻などのある種の草類から得られるセルロースパルプから基本的に製造され、水性懸濁液からの沈殿によって柔軟なシートまたはロールに加工される材料である。「紙基材」という用語は、紙、ボード、カードおよび段ボールなど、全ての「不織布」型セルロースパルプ基材を包含する。
【0009】
一般的に、紙基材は、機械的および/または化学的に得られたセルロースパルプ、そして必要に応じて合成繊維および助剤、例えば、賦形剤、サイズ用結合剤、歩留り向上剤、発光増白料および染料からなる。本発明で使用される発色剤は、様々な方法で紙本体に組み込むことができる。例えば、発色剤は、乾燥形で化学的および/または機械的パルプと混合することができる。あるいは、発色剤は、化学的および/または機械的パルプから製造した繊維ストックと混合することもできる。発色剤を製紙助剤の個々の成分に加えれば、同様に発色剤も均質に分配される。紙のサイジングに必要な結合剤に発色剤を加えることは特に好ましい。しかし、繊維ストックと製紙助剤を混合するまで、発色剤の添加を遅らせることも可能である。次に、完成した紙ストックは製紙機に送られる。
【0010】
一般的に、発色剤を含む未加工紙は、片面もしくは両面を一回もしくは数回コーティングされる。コーティング材に発色剤を組み込むことも同様に可能である。発色剤を含むコーティング組成物を使用し、吸収体材料を含まない未加工紙をコーティングすることによって、吸収体材料を紙またはボード製品に組み込むことも可能である。この場合は、発色剤は、コーティング材中にのみ存在し、紙の実質本体には含まれない。これは、製紙過程の仕上げ段階で行うことができ、それによって下流工程での別々の印刷段階が不要になる。
【0011】
使用する繊維材料は、機械および化学パルプの他には、サーモメカニカルパルプおよびケミ−サーモ−メカニカルパルプおよび/またはこれらのタイプのパルプの混合物等の特に改良された機械パルプである。さらには、古紙からの再生化学パルプを使用することも可能である。上記の繊維には、また、一部の人工繊維、特に、セルロース誘導体、セルロースエーテル、酢酸セルロース、ビスコース繊維および炭素繊維、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル(コ)ポリマーおよびポリアミド、例えば、耐熱性アラミド繊維を含めることもできる。
【0012】
紙の平滑性、印刷性および不透明性を改善するためには、賦形剤、例えば、CaCO、BaSO、Al(OH)、CaSO、ZnS、SiO、チョーク、TiO、粘土およびカオリンを繊維出発物質に加える。これらの賦形剤はまた、コーティング色素として、表面品質を改善するために、コーティング組成物またはキャストコーティングに使用される。
【0013】
製紙助剤の別の重要な構成物は、繊維構造、結合賦形剤および色素を増強し、耐水性を高め、印字性(inscribability)および印刷性を改善するための結合剤であり、例えば、澱粉、カゼイン、タンパク質、プラスチック分散剤、樹脂サイズなどがある。
【0014】
結合剤と発色剤とを混合し、この混合物を固体もしくは液体で機械および/または化学パルプと混合すれば、特に良好なイメージ形成処理結果が得られる。
【0015】
特に好適な結合剤は、溶剤不含サイズであり、このサイズは紙コーティング、コーティングおよび含浸にも使用される。好ましい結合剤は、カチオン性樹脂サイズ、コロホニウム、変性コロホニウム−エステル、合成アルキルジケテンおよびアルキルジアクリレートである。他の有用な結合剤は、ビニル−アセテート系およびアクリレート−樹脂系プラスチック分散剤、特に、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩およびコポリマー、ポリビニルピロリドンおよび水溶性セルロースエーテルの水溶性分散剤である。コート紙の場合には、未加工紙をスチレンとブタジエンのコポリマーの範囲の結合剤でコーティングするのが好ましい。紙の仕上げでは、上記の結合剤も同様に使用してよい。
【0016】
細粒および賦形剤を保持するために製紙中に使用される歩留り向上剤は、特に、硫酸アルミニウム、およびエチレンイミンポリマーなどの合成カチオン性化合物である。
【0017】
発色剤は、紙本体内でごく均質に分配すべきであるので、分散剤を使用するのが望ましく、それにより均一で明瞭なイメージ形成が得られる。好適な分散剤の例には、Byk 410(Byk−Chemie)、Laponite RD/RDS(Laporte)、Calgon neu(BK Ladenburg)およびPolysalz SK(BASF)がある。
【0018】
紙本体内の紙の等級に応じて、増白のために発光増白料を加えることが多い。
【0019】
紙本体の着色用、またはコーティング組成物に使用するための染料および色素のほかに、好ましい実施形態に係る表面着色では、紙に難燃剤を含めてもよい。
【0020】
通常の製紙助剤(上述したものを含む)に加え、ここに述べていない他の添加物を紙ストックに加えることも可能である。
【0021】
発色剤を含む紙基材は、従来のインクジェット工程または印刷インクのアブレーションによるレーザーマーキングを使用しこれまでに紙に印字してきたあらゆる分野で使用できるであろう。印字および際立ったイメージは、例えば、標識、家庭用品および消費財のあらゆる種類の紙包装、包装紙、タバコ包装および化粧品、アクセスしにくい位置であってもレーザー光を用いて付けることができる。
【0022】
レーザー印字の別の重要な適用部門は、高品質包装印刷用の高い美的要求度を満たしながらも、永久的かつ真贋を保証するマークを備えるグラフィック製品である。
【0023】
グラフィックデザイン製品では、紙またはボード製品の直接レーザーマーキング、コード付与および印字は、いかなる対比を得るためにも追加フィールド(白黒領域)の印刷なしには不可能である。本発明によれば、発色剤を含む紙製のグラフィック製品のアクセスしにくい位置にさえ、マークを付与することができる。
【0024】
本発明の別の用途は、有価証券/証券用紙および金融紙類、例えば通貨、紙幣、小切手などに使用する銀行券、送り状、チケット、荷札、および、例えばパスポート、免許証などのセキュリティ文書である。
【0025】
マークを付与した紙製品およびボード製品は、そのマーキング性に悪影響を与えることなく、さらにその後印刷し、さらに加工し、例えば表面コーティングし、ラミネートし、または封印することができる。実際、発色剤を含む紙基材は、インクジェット、フレキソ印刷などの技法を使用し、従来のインクおよび表面コーティング調合物でさらにその上に印刷することができる。
【0026】
本発明の発色剤を含む紙製品は、ラミネートなどの多層構築体中に使用することもできる。光は多くの基材を透過することができ、それにより多層構造体中に隠在もしくは顕在イメージを形成し、または包埋できるようになる。当該基材は、照射光波長以外の領域では不透明にもなりうる。
【0027】
本発明で使用される発色剤は、金属オキシアニオン、および、例えば国際公開公報第06/129086号、同第07/045912号、同第02/068205号、同第06/129078号、同第04/043704号、同第02/074548号、同第06/018640号、同第07/063339号および同第06/051309号に教示されているような分子有機体である。本発明者らの意味する「分子有機体」は、繰り返し配列を有するポリマー鎖の形とは対照的に、個別の分子形で存在する任意の有機分子である。以下に詳述するジアセチレンを使用してもよい。「分子有機体」は、ジアセチレンを形成するために使用される、その重合前の形のモノマーを指す。好ましい金属オキシアニオンには、モリブデン酸塩およびホウ酸塩が含まれる。特に好ましいものは、八モリブデン酸塩およびメタホウ酸塩である。よりさらに特に好ましいものは、八モリブデン酸アンモニウムおよびメタホウ酸ナトリウムである。好ましい分子有機体は、ジアセチレン、ロイコ染料および電荷移動剤である。これらの任意の組合せ、または他の任意の発色剤も使用することができる。
【0028】
本発明では、任意のジアセチレン、またはジアセチレンと、光に曝露すると色変化反応を起こすことが可能な他の物質との組合せを使用してもよい。
【0029】
ジアセチレン化合物は、少なくとも1個のジアセチレン基、すなわち−C≡C−C≡C−を含む物質である。特に好ましいものは、多色色変化反応を示すジアセチレン化合物である。これらの化合物は、通常、初めは無色であるが、紫外光などの好適な光に曝露されると、色変化反応を経て青色を生成する。次いで、ある種の青色形態のジアセチレンは、熱または近赤外光などのさらなる刺激に曝露され得、それによって青色形態はマゼンタ、赤、黄、および緑色形態に転換される。
【0030】
本発明で使用しうるジアセチレン化合物の具体例は、国際公開公報第2006/018640号、同第2009/081385号および同第2009/093028号に示されている。
【0031】
別の例には、以下の一般構造式によって表される化合物が含まれる。
【0032】
【化1】

または、
【0033】
【化2】

または、
【0034】
【化3】

または、
【0035】
【化4】

式中、
XおよびYは、二価の直鎖もしくは分枝鎖アルキレン型基(−CH−)(式中、n=0〜24)、または二価のフェニレン型基(−C−)(式中、n=0〜1)または両型の組合せであり、
QおよびVが存在する場合、QおよびVは、二価の架橋基、例えば、−S−、−O−、−NHR’−(式中、R’は水素またはアルキルである)、アミド、エステルまたはチオエステル基、カルボニルまたはカルバメートであり、
R1およびR2は、Hまたはアルキルであり、
AおよびTは、XもしくはYなどのアルキレン型もしくはフェニレン型でありうる二価の基、またはQもしくはVなどの架橋型、または両型の組合せ、Q基もしくはV基をさらに含むXもしくはYであり、
Zは、XもしくはQなどの二価の基、または両者の組合せ、Q基をさらに含むXであり、またはZは存在しなくてもよく、かつnは2〜20,000,000である。
【0036】
X基およびY基は、ジアセチレン基に関して、好ましくは[α]、[β]または[γ]位置で任意に置換されてもよい。例えば、下式に示すように、[α]−水酸基があってもよい。
【0037】
【化5】

ジアセチレンは、対称的であっても、または非対称的であってもよい。
【0038】
QおよびVは、アミン、アルコール、チオールまたはカルボン酸などの基によって任意に置換されてもよい。両QおよびVが存在してもよいし、または別法としてQだけが存在してもよい。
【0039】
上記化合物のR1およびR2がアルキルである場合、それらは直鎖もしくは分枝鎖であってよく、有機化学で既知の他の官能基、例えば、アルコール、アミン、カルボン酸、芳香環系、およびアルケンおよびアルキンなどの不飽和基をさらに含んでよい。
【0040】
基R1、R2、Q、V、XおよびYはイオン基を含んでよく、そのイオン基はアニオン性であっても、またはカチオン性であってもよい。例には、硫酸基(−SO−)およびアンモニウム基が含まれる。イオン基には、任意の好適な対イオンが含まれうる。ジアセチレンは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または双性イオンであってもよい。
【0041】
ジアセチレン化合物のさらなる例は、ジアセチレンカルボン酸およびその誘導体である。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ペンタコサジイン酸および10,12−ドコサジイン二酸および、これらの誘導体である。別の例には、5,7,−ドデカジイン二酸、4,6−ドデカジイン酸、5,7−エイコサジイン酸、6,8−ヘンエイコサジイン酸、8,10−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘンエイコサジイン酸、10,12−ヘプタコサジイン酸、12,14−ヘプタコサジイン酸、2,4−ヘプタデカジイン酸、4,6−ヘプタデカジイン酸、5,7−ヘキサデカジイン酸、6,8−ノナデカジイン酸、5,7−オクタデカジイン酸、10,12−オクタデカジイン酸、12,14−ペンタコサジイン酸、2,4−ペンタデカジイン酸、5,7−テトラデカジイン酸、10,12−トリコサジイン酸、2,4−トリコサジイン酸、および、これらの誘導体が含まれる。ジアセチレンアルコールおよびジオール化合物、および、これらの誘導体も好ましく、例には、5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール、5,7−エイコサジイン−1−オール、2,4−ヘプタデカジイン−1−オール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3,5−オクタジイン−1,8−ジオール、4,6−デカジイン−1,10−ジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2,7−ジオール、14−ヒドロキシ−10,12−テトラデカジイン酸が含まれる。他には、1,6−ジフェノキシ−2,4−ヘキサジイン、1,4−ジフェニルブタジイン、1,3−ヘプタジイン、1,3−ヘキサジインおよび2,4−ヘキサジインが含まれる。
【0042】
異なるジアセチレンの組合せを使用することもできる。特に好ましい組合せは、10,12−ペンタコサジイン酸、若しくは、10,12−ドコサジインジオイアク酸(docosadiyndioiac acid)及びその誘導体と、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールとの組合せである。10,12−ペンタコサジイン酸は、青、赤および黄を生成することができる。2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールは、シアン色を生成することができる。同時に、10,12−ペンタコサジイン酸を黄に、そして2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールをシアンに活性化すると緑が生じる。
【0043】
「活性化可能」なジアセチレン化合物、すなわち、光に対して比較的非反応性な第1の固体形態を有するが、「活性化」すると、光に対して比較的反応性な第2の形態に転換され、それによって可視イメージを形成するための色変化反応を起こすことが可能なジアセチレン化合物は、本発明では格別の有用性を持つ。理論により制限されることなく述べると、当該活性化とは、再結晶化、結晶形改変、共結晶組合せまたは溶融/再固化過程であろう。
【0044】
刺激または刺激除去に応答して不活性形態および活性化形態間を切り替えることができる、可逆的に活性化可能なジアセチレンも本発明の一部をなす。
【0045】
特に好ましいジアセチレンは、初期溶融および再固化活性化後は無色であるが、光、特にUV光に曝露すると青くなるジアセチレンである。最も好ましいジアセチレン化合物は、カルボン酸および次式で表されるその誘導体であり、
R−C≡C−C≡C−R’
式中、Rおよび/またはR’はCOX基を含み、その際、Xは、−NHY、−OY、−SYであり、その場合、YはHか、または少なくとも1個の炭素原子を含む任意の基である。
【0046】
さらに特に好ましいものは、カルボン酸基がアミド、エステルまたはチオエステルに転換された誘導体であり、アミドが特に好ましい。これらは、ジアセチレンカルボン酸と、塩化オキサリルなどの塩素化剤とを反応させ、次いでジアセチレン酸塩化物と、アミン、アルコールまたはチオールなどの求核性化合物とを反応させることによって容易に製造することができる。特に好ましいジアセチレンカルボン酸化合物は、10,12−ドコサジイン二酸、およびアミド、エステル、チオエステルなど、その誘導体である。より特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸誘導体はアミドである。さらに特に好ましい10,12−ドコサジイン二酸アミド誘導体は、少なくとも1個の、好ましくは両方のカルボン酸基が、以下に示すようなプロパルギルアミドに転換されているプロパルギルアミドである。
【0047】
【化6】

プロパルギルアミドは、カルボン酸とプロパルギルアミンとの反応によって生成される。好適なアミドの生成に使用できる他の好ましいアミンには、ジプロパルギルアミンおよび1,1−ジメチルプロパルギルアミンが含まれる。
【0048】
活性化可能なジアセチレンは、一般的にNIR光吸収剤と一緒に使用されるが、この吸収剤は、700〜2500nmの波長範囲の光を吸収する化合物である。
【0049】
NIRファイバーレーザーなどのNIR光源を使用して、イメージ形成が必要な領域にのみジアセチレンを熱する。次いで、殺菌灯などのUV光源を使用して、紙基材全体にUV光を照射する。しかし、ジアセチレン化合物のみが色変化反応を経て、最初にNIR光を曝露した領域にイメージが形成される。NIR光に曝露していないコーティング領域は、無視しうる色変化反応を経て、本質的に無色のままであり、バックグラウンド照射に対し安定している。熱をベースとする事前活性化ステップを開始するために熱プリントヘッドを使用してよい。
【0050】
NIR光吸収剤の具体例には次のものが含まれる。
i.有機NIR吸収剤
ii.NIR吸収性「導電」ポリマー
iii.無機NIR吸収剤
iv.非化学量論的無機吸収剤。
【0051】
特に好ましいNIR吸収剤は、スペクトル(400〜700nm)の可視領域では実質的に吸光度がゼロのものであり、従って視覚的に無色に見えるコーティングがもたらされる。
【0052】
有機NIR吸収剤は、NIR染料/色素として知られている。例としては、これらには限られないが、メタロ−ポルフィリン、メタロ−チオレンおよびポリチオレンのファミリー、メタロ−フタロシアニン、これらのアザ変異体、これらのアニール化(annellated)変異体、ピリリウム塩、スクアリリウム、クロコニウム、アンミニウム、ジイモニウム、シアニンおよびインドレニンシアニンが含まれる。
【0053】
本発明で使用可能な有機化合物の例は、米国特許第6911262号に教示されており、そしてDevelopments in the Chemistry and Technology of Organic dyes,J Griffiths(編),Oxford:Blackwell Scientific,1984、およびInfrared Absorbing Dyes,M Matsuoka(編),New York:Plenum Press,1990に示されている。本発明のNIR染料または色素の別の例は、米国ニュージャージー州Newark在Epolin社製Epolight(商標)シリーズ、カナダ、ケベック州American Dye Source社製ADSシリーズ、米国フロリダ州Jupiter在HW Sands社製SDAおよびSDBシリーズ、ドイツBASF社製Lumogen(商標)シリーズ、特にLumogen(商標)IR765およびIR788、および英国マンチェスター、Blackley在FujiFilmImaging Colorants社製Pro−Jet(商標)染料シリーズ、特にPro−Jet(商標)830NP、900NP、825LDIおよび830LDIに見出すことができる。別の例は、国際公開公報第08/050153号に教示されている。
【0054】
NIR吸収性「導電」ポリマーの例には、HC Starck社製の製品Baytron(登録商標)PなどのPEDOTが含まれる。別の例は、国際公開公報第05/12442号に教示されている。
【0055】
無機NIR吸収剤の例には、銅(II)塩が含まれる。リン酸ヒドロキシ銅(II)(Copper(II)hydroxyl phosphate)(CHP)が特に好ましい。別の例は、国際公開公報第05/068207号に教示されている。CHPは、約1μmの波長で作動するNIRファイバーレーザーと組み合せるのが特に好ましい。
【0056】
非化学量論的無機吸収剤の例には、還元酸スズインジウム、還元酸スズアンチモン、還元硝酸チタンおよび還元酸亜鉛が含まれる。別の例は、国際公開公報第05/095516号に教示されている。還元酸スズインジウムは、1550nm〜2500nmレーザーと組み合せるのが特に好ましい。
【0057】
NIR吸収剤の吸収プロフィールが、使用するNIR光源の発光波長とほぼ適合する場合が特に好ましい。
【0058】
NIR吸収剤の代わりに使用できる他の光吸収剤には、UV(120〜400nm)、可視(400〜700nm)および中赤外(約10.6μm)光吸収剤が含まれる。例には、染料/色素、UV吸収体およびイリオジン型薬剤が含まれる。
【0059】
本発明では、ジアセチレンと一緒に電荷移動剤を使用してもよい。これらは、初めは無色であるが、プロトン(H)と反応させると、着色形態を生成する物質である。本発明の一部をなす電荷移動剤には、カルバゾールとして知られる化合物が含まれ、好適な例は、国際公開公報第2006/051309号に記載されている。ロイコ染料など、当業者には公知のさらなる電荷移動剤も使用することができる。通常、電荷移動剤は、他の物質、例えば、波長特異的でありうる光吸収剤、熱発生剤、酸発生剤などと組み合せて使用される。
【0060】
本発明での使用に特に好ましい組合せは、青および赤を生ずる10,12−ペンタコサイジイン酸もしくは10,12−ドコサジイン二酸(またはその誘導体)などのジアセチレンと、緑を発生させる電荷移動剤との組み合わせである。
【0061】
ロイコ染料は、ある種の照射に曝露すると、色変化もしくは色形成を示す任意の数の着色剤でありうる。好適なロイコ染料の限定しない例には、フルオラン、フタリド、アミノ−トリアリールメタン、アミノキサンテン、アミノチオキサンテン、アミノ−9,10−ジヒドロ−アクリジン、アミノフェノキサジン、アミノフェノチアジン、アミノジヒドロ−フェナジン、アミノジフェニルメタン、アミノヒドロケイ皮酸(シアノエタン、ロイコメチン)および対応するエステル、2(p−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、インダノン、ロイコインダミン、ヒドラジン、ロイコインジゴイド染料、アミノ−2,3−ジヒドロアントラキノン、テトラハロ−p,p’−ビフェノール、2(p−ヒドロキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール、フェネチルアニリン、フタロシアニン前駆体(インド、Sitaram Chemicals社から購入できるものなど)、およびそれらの混合物が含まれる。実験的試験により、フルオラン系染料が望ましい特性を示すロイコ染料の1クラスであることが示されている。加えて、フタリドおよびアミノトリアリールメタンも、ある用途における使用に望ましいであろう。さらに適切なロイコ染料は、ノースカロライナ州在Ciba−Geigy社染料および化学薬品部門により、コーティング会議(1983,カリフォルニア州サンフランシスコ,pp157−165)で提供された「Dyestuffs and Chemicals for Carbonless Copy Paper」に記載されている。ある種のロイコ染料は、ハロクロム性(halochromism)を示し、中性またはアルカリ媒体では無色であるが、酸性のプロトン供与性または電子求引性物質と反応させると着色されることが分っている。好適な例には、トリフェニルメタネフタリド化合物、アザフタリド化合物、イソインドリドフタリド化合物、ビニルフタリド化合物、スピロピラン化合物、ローダミンラクタム化合物、ラクトンおよびジラクトン化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー(BLMB)、ビス−(p−ジ−アルキルアミノアリール)メタン誘導体、キサンテン、インドリル、アウラミン、クロメノインドール化合物、ピロロ−ピロール化合物、フルオレン化合物、およびフルオランおよびビスフルオラン化合物などの化合物が含まれ、フルオラン化合物が好ましい。特に好ましい市販のロイコ染料製品には、スイス、Basel在Ciba Speciality Chemicals社製Pergascript範囲、日本国京都府在、山田化学工業株式会社製のもの、日本曹達株式会社販売のもの、およびオハイオ州Cincinnati在BF Goodrich社供給のものが含まれる。
【0062】
好適なロイコ染料タイプ発色系の別の例は、欧州特許第1827859号、国際公開公報第2006052843号および同第2007114829号に教示されている。
【0063】
本発明では炭化剤(charrable agent)を使用してもよい。これらは、炭化し、またはカラメル化反応を経て、対照的なマークをもたらす薬剤である。例には炭水化物、多糖類、糖類、ガム、澱粉などが含まれる。さらなる例には、グルコース、スクロース、サッカロース、ポリデキストロース、(任意のDEの)マルトデキストリン、ローカストビーンガム、グアールガム、澱粉、還元性炭水化物(reducing carbohydrate)およびアルギネートなどが含まれる。炭化剤は、重炭酸ナトリウムなどの塩基と組み合せて使用するのが好ましい。メタホウ酸ナトリウムと炭化剤とを組み合せて使用するのが特に好ましい。
【0064】
加えてよい他の成分には、アミンなどの求核性基を含む化合物が含まれる。例には、エタノールアミンおよびアミノ酸、およびグリシンなどのアミノ炭水化物、およびD−グルコサミンが含まれる。硫酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム二塩基などのアンモニウム塩を加えることもできる。さらなる例は、国際公開公報第2008083912号および同第2008107345号に教示されている。
【0065】
本発明で使用するのに適している他の色変化化学物質は、国際公開公報第2009/003976号、同第2002/006058号、米国特許第6903153号、国際公開公報第2007/114829号、同第2006/063165号、米国公開公報第20070098900号、国際公開公報第2007/088104号、欧州特許第2085437号、国際公開公報第2009/024497号、同第2009/010405号、同第2009/010393号、同第2008107345号、同第2008083912号、同第2007088104号、同第2007031454号および同第2007012578号に教示されている。
【0066】
本基材には、光もしくは熱酸もしくは塩基発生剤を含めてもよい。光酸発生剤は、光に曝露すると、通常プロトンを遊離することによって酸性環境をもたらす物質である。熱酸発生剤は、熱に曝露すると、通常プロトンの遊離よって酸性環境をもたらす物質である。好ましい酸発生剤の例には、スルホニウム塩もしくはヨードニウム塩などの「オニウム」型化合物およびトリフル酸塩が含まれる。例には、Dow社供給のCyracure商品が含まれる。ハロクロム性ロイコ染料または電荷移動剤を使用する場合は、酸発生剤を含めるのが特に好ましい。
【0067】
他方、光塩基発生剤は、光に曝露すると、通常、プロトンを捕捉することによって塩基性環境をもたらす物質である。熱塩基発生剤は、熱に曝露すると、通常、プロトンを捕捉することによって塩基性環境をもたらす物質である。
【0068】
本発明の基材をイメージ形成処理するのに使用される光は、120nm〜20μmの領域の発光波長を有する光でもよい。当該光は、単色または広範な帯域であってもよい。当該光は、非干渉性照射またはレーザー照射であってもよい。レーザー照射は、パルス波または連続波であってもよい。レーザーは、UV、可視、近赤外または中赤外レーザーであってもよい。レーザーは、COレーザー、ファイバーレーザー、Nd:YAGレーザー、固体レーザー、エキシマレーザー、ダイオードレーザー、またはダイオードアレイであってもよい。
【0069】
レーザーは、デジタル印刷を生成するための好適なソフトウェアを備えたコンピューターによって制御することができるので、レーザー照射が特に好ましい。生成されるイメージは、人が読み取れるテキスト、写真もしくは図案か、またはバーコードなどの機械読み取り式コードでありうる。
【0070】
次に、本発明を以下の実施例により説明する。
【0071】
(実施例)
化学パルプおよびサーモメカニカルパルプを使用し、以下の紙を製造した。
【実施例1】
【0072】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解した100%パルプ。
サイズ剤0.5%
八モリブデン酸アンモニウム5%(例えば、Climax Molybdenum社)
Videojet 3320、30W、COレーザーを使用して当該紙をイメージ形成処理し、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを生成した。
【実施例2】
【0073】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
メタホウ酸ナトリウム四水和物10%(例えば、Aldrich社)
Videojet 3320、30W、COレーザーを使用して当該紙をイメージ形成処理し、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを生成した。
【実施例3】
【0074】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
八モリブデン酸アンモニウム5%(例えば、Climax Molybdenum社)およびリン酸水酸化銅(II)5%(Fabulase 322、例えば、Budenheim社)。
【0075】
1070nm、30W、ファイバーレーザーを使用し、当該紙をイメージ形成処理して、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを生成した。
【実施例4】
【0076】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
10,12−ペンタコサジイン酸2%(例えば、GFS Chemicals社)。
【0077】
266nm、5W、UVレーザーを使用し、当該紙をイメージ形成処理して、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを多色刷りで生成した。
【実施例5】
【0078】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
10,12−ペンタコサジイン酸プロパルギルアミド2%(10,12−ペンタコサジニオ酸(pentacosadinyoic acid)をその酸塩化物を介して、プロパルギルアミンと反応させた自社製)。
【0079】
266nm、5W、UVレーザーを使用し、当該紙をイメージ形成処理して、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを多色刷りで生成した。
【実施例6】
【0080】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
ビス−10,12−ペンタコサジイン酸ブチルアミド2%(10,12−ペンタコサジニオ酸(pentacosadinyoic acid)をその酸塩化物を介して、1,4−ジアミノブタンと反応させた自社製)。
【0081】
266nm、5W、UVレーザーを使用し、当該紙をイメージ形成処理して、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを多色刷りで生成した。
【実施例7】
【0082】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
Yamada ETACロイコ染料2.5%およびCyracure UVI Photoinitiator UVI−6992 光酸発生剤5%(例えば、Dow社)。
【0083】
355nm、5WUVレーザーを使用し、当該紙をイメージ形成処理して、人が読み取れるテキストおよび機械読み取り式バーコードを多色刷りで生成した。
【実施例8】
【0084】
単位面積当たりの重量が約70gm−2であり、以下を含む原紙。
繊維:約30°SRに叩解したパルプ100%。
サイズ剤0.5%。
Pergascript Blue SRB−P 1%(例えば、Ciba社)、Yamada Yellow Y−726 2%(例えば、Yamada社)、Cyracure UVI PhotoinitiatorUVI−6992 4%(例えば、Dow社)および10,12−ペンタコサジイン酸2.5%(例えば、GFS Chemicals社)。
【0085】
266nm UVレーザーを使用し、赤および青のイメージを生成し、355nm UVレーザーを使用し緑のイメージ生成した。これらのイメージを互いに独立に生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光活性化型色変化反応を起こすことが可能な発色剤を含む紙基材を製造する方法であって、
前記紙基材製造中において前記紙基材に前記発色剤が適用され、
かつ、前記発色剤は、金属オキシアニオン、分子有機体、又は、これらの組合せである方法。
【請求項2】
前記紙基材は、紙、ボード、カード、段ボール、又は、ラミネートである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製造のサイジング段階で、前記紙基材に前記発色剤が適用される、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記発色剤は、前記紙基材の本体中に組み込まれる、
請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記金属オキシアニオンは、モリブデン酸塩、好ましくは、八モリブデン酸塩又はホウ酸塩であり、好ましくは、メタホウ酸ナトリウムなどのメタホウ酸塩である、
請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記分子有機体は、ジアセチレン、ロイコ染料、又は、電荷移動剤である、
請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ジアセチレンが、10,12−ペンタコサジイン酸、又は、10,12−ドコサジイン二酸、又は、これらの誘導体である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記紙基材に、酸、若しくは、塩基発生剤を適用するステップをさらに含む、
請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記紙基材に、エネルギー吸収剤、好ましくは、近赤外吸収剤を適用するステップをさらに含む、
請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記近赤外吸収剤は、リン酸水酸化銅(II)、還元金属若しくは混合金属酸化物、導電性ポリマー、又は、有機NIR染料/色素である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発色剤は、多色彩イメージを生成することが可能な、
請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法によって得られる紙基材。
【請求項13】
請求項12に記載の紙基材から製造された製品。
【請求項14】
請求項12に記載の紙基材をイメージ形成処理する方法であって、
前記紙基材に光放射を指し向けるステップを含み、
好ましくは、前記光放射は、120nm〜20μmの領域の発光波長を有する方法。
【請求項15】
前記光放射は、レーザーによって提供される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法によって得られるイメージ形成処理された紙基材。

【公表番号】特表2012−501876(P2012−501876A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525617(P2011−525617)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051066
【国際公開番号】WO2010/026408
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(507055925)データレース リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
【Fターム(参考)】