説明

レーザーマーキング用添加剤

本発明は、ビスマス含有化合物と、官能基を0.01〜50重量%有する官能化ポリマーとを含み、この重量百分率が官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とする、レーザーマーキング用添加剤に関する。さらに本発明は、この種のレーザーマーキング用添加剤の調製方法、この種のレーザーマーキング用添加剤を含むレーザーマーキング可能な組成物およびその調製方法、およびこのレーザーマーキング可能な組成物を含む成形品、ならびにこのレーザーマーキング可能な組成物から作製されたフィルムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、レーザーマーキング用添加剤およびその調製方法、当該レーザーマーキング用添加剤を含むレーザーマーキング可能な組成物およびその調製方法に関する。さらに本発明は、レーザーマーキング可能な組成物を含む成形品およびレーザーマーキング可能な組成物から作製されたフィルムにも関する。
【0002】
レーザーマーキング用添加剤は周知であり、国際公開第01/00719号パンフレットに記載されているように、例えば三酸化アンチモンを含有している。しかしながら、三酸化アンチモンは発癌性の疑いがあることから、アンチモンを含まないレーザーマーキング用添加剤が望まれている。
【0003】
したがって本発明の目的は、良好なレーザーマーキング性能を示し、アンチモンがより減量されたレーザーマーキング用添加剤を提供することにある。
【0004】
驚くべきことに、ビスマス含有化合物と、官能基を0.01〜50重量%有する官能化ポリマーとを含む(この重量百分率は官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とする)レーザーマーキング用添加剤が、アンチモンが低量であっても良好なレーザーマーキング性能を示すことが見出された。このことは以下に列挙する実施例により例示された。
【0005】
本発明によるレーザーマーキング用添加剤のさらなる利点は調製が容易なことにある。本発明によるレーザーマーキング用添加剤の他の利点は、ハロゲン含有量がより少なく、好ましくはハロゲンフリーであることを含む。
【0006】
アンチモンフリーのレーザーマーキング用添加剤は周知である。欧州特許出願公開第1190988号明細書には、例えば、ビスマスおよび少なくとも1種のさらなる金属を含むレーザーマーキング可能な化合物が記載されている。米国特許出願第2007/02924号明細書には、式MOCl(式中、Mは、As、Sb、またはBiのいずれかである)およびBiONO、BiCO、BiOOH、BiOF、BiOBr、Bi、BiOC、Bi(C、BiPO、Bi(SOのレーザーマーキング可能な化合物が添加剤として記載されている。これらの添加剤の多くはハロゲンを含んでおり、これは望ましいことではない。他の欠点は、ビスマス含有化合物をそのまま混合した特定のマトリックスポリマーは、加工温度が高い場合に重度の変色を引き起こすことにある。マトリックスポリマーにポリエステルやポリアミド等を使用した場合は220℃を超える温度で組成物に重度の変色が起こる。その結果としてレーザーマーキング性能が低下する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、これはおそらくレーザーマーキング用添加剤およびマトリックスポリマーが反応し、その結果として分解が起こったためと考えている。
【0007】
本発明によるレーザーマーキング用添加剤は、マトリックスポリマーと混合しても変色が起こらないことが見出された。
【0008】
レーザーマーキング用添加剤をマトリックスポリマー中に分散させるために見出された解決策の1つが国際公開第2004/050766号パンフレットに記載されている。この文書には、コアおよびシェルおよびアンチモンを使用したレーザー光吸収剤を有する微小球が記載されている。国際公開第2004/050766号パンフレットに記載されている微小球は、微小球をマトリックスポリマー中に分散させる前に少なくとも2種類の担体が、1種はコア用、1種はシェル用に、必要になるという欠点を有する。さらに、レーザーマーキング用添加剤を得るためには2回の加工ステップが必要であるため、コストが追加されることになる。
【0009】
驚くべきことに、本発明によるレーザーマーキング用添加剤は、ビスマス含有化合物を、官能基を0.01〜50重量%有する官能化ポリマー(この重量百分率は、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の重量百分率の総量を基準とする)と溶融混練することにより容易に調製できることが見出された。この方法に必要とされる担体は1種類であり、それによって調製プロセスが簡素化される。
【0010】
本発明によるレーザーマーキング用添加剤の他の利点は、本発明によるレーザーマーキング用添加剤を添加しても、レーザーマーキング可能な組成物の比較トラッキング指数(以後CTI)が、レーザーマーキング用添加剤としてアンチモンを含む組成物よりも影響を受けにくいことにある。アンチモンを含む組成物はアンチモンを含まない組成物に対しCTIが低下することが示されているが、本発明によるレーザーマーキング用添加剤を用いてもCTIはほとんど影響を受けない。
【0011】
好ましくは、レーザーマーキング用添加剤は、アンチモンに発癌性の疑いがあることから、アンチモンフリーである。
【0012】
好ましくは、レーザーマーキング用添加剤は、ハロゲンが望ましくないことから、ハロゲンフリーである。
【0013】
本発明によるレーザーマーキング用添加剤は、マトリックスポリマーに添加することによってレーザーマーキング可能な組成物を提供する。マトリックスポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性ポリマーが挙げられる。好ましくは、マトリックスポリマーは、PA6、PA66、PA46、PA4,10、PA6,10、PA11、PA12等のポリアミドまたはPET、PBT、PEN等のポリエステルである。本レーザーマーキング用添加剤は220℃を超える温度を必要とするマトリックスポリマー中に溶融混練する場合に特に有利である。それは、このレーザーマーキング可能な組成物がこのような温度で変色しないことが示されているためである。
【0014】
驚くべきことに、マトリックスポリマーに添加されたレーザーマーキング可能な添加剤は、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル等の任意のさらなる熱可塑性ポリマーに用いるためのレーザーマーキング可能なマスターバッチとしての役割を果たすことができることがわかった。但し、このさらなる熱可塑性ポリマーの溶融温度がマトリックスポリマーの最も高い溶融温度を下回る場合に限る。
【0015】
ポリアミドの例としては、PA66、PA11、PA12、PA410、PA610、PA46が挙げられる。スチレン系樹脂の例としては、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)が挙げられる。アクリル系樹脂の例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が挙げられる。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)、およびその共重合体が挙げられる。他の例としては、エチレンメタクリレートポリマー(EMA)、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体(EBA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、マレイン酸グラフト化PEおよびPP、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)が挙げられる。
【0016】
得られる組成物は、本明細書において、レーザーマーキング可能な組成物とも称される。このレーザーマーキング可能な組成物は解像度がさらに向上しているという利点を有する。レーザーマーキング可能なマスターバッチを作製するためには、マトリックスポリマーとして、好ましくはポリアミドまたはポリエステル、より好ましくはポリアミド−6またはPBTが使用される。
【0017】
本発明はまた、レーザーマーキング可能な組成物の加工を少なくとも220℃の温度で実施する、レーザーマーキング可能な組成物の加工方法にも関する。こうすることにより、良好なレーザーマーキング性能を有する組成物であると同時に、変色がより低減されたレーザーマーキング可能な組成物が得られる。
【0018】
レーザーマーキング可能な組成物は、フィラー、難燃剤、顔料等の添加剤を含んでいてもよい。レーザーマーキング可能な組成物の増白剤として、二酸化チタンや硫化亜鉛等の様々な添加剤を使用することができる。本発明によるレーザーマーキング用添加剤は、有利には、増白剤としての硫化亜鉛を含む組成物中に使用することができ、それはこうすることによって、組成物をUVレーザーでレーザーマーキングすることが可能になるからである。好ましくは、レーザーマーキング用添加剤は、レーザーマーキング性能を高めるためのアルミニウムを含む。
【0019】
レーザーマーキング用添加剤は、特定の波長のレーザー光を吸収することができる。実際は、この波長は、レーザーに慣用される波長範囲である157nm〜10.6マイクロメートルの間にある。これよりも長波長または短波長のレーザーが利用可能となる場合、本発明による添加剤として他の吸収剤を適用することも考慮され得る。上記範囲で動作するこの種のレーザーの例は、COレーザー(10.6マイクロメートル)、Nd:YAGレーザー(1064、532、355、266nm)バナダト(vanadat)および以下の波長のエキシマレーザー:F(157nm)、ArF(193nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)、およびXeF(351nm)、FAYbファイバーレーザー、ダイオードレーザー、およびダイオードアレイレーザー(diode array laser)である。好ましくは、Nd:YAGレーザーおよびCOレーザーが使用される。その理由は、これらの種類はマーキングに利用される熱的過程を誘導するのに非常に適した波長範囲で動作するからである。
【0020】
本明細書における官能化ポリマーとは、他の官能基と反応することができる官能基を有するポリマーと理解される。
【0021】
好適な官能基の例は、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、塩基、エーテル基、エポキシ基、アミン基、アルコキシシラン基、アルコール基、またはオキサゾリン基である。好ましくは、官能基は、本発明によるレーザーマーキング用添加剤において良好なレーザー性能を示すことが判明している無水マレイン酸(MAH)またはエポキシの群から選択される。
【0022】
官能基を付与することが可能な好適なポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン、エラストマー、EPゴム、EPDMゴム、およびスチレン系ポリマーが挙げられる。
【0023】
好ましくは、ポリマーは、ポリオレフィンである。好適なポリオレフィンの例は、エチレンポリマーおよびプロピレンポリマーである。好適なエチレンポリマーの例は、エチレンのあらゆる熱可塑性単独重合体ならびに周知の触媒、例えば、チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)、フィリップス(Philips)、およびシングルサイト触媒等を用いて調製することができる、エチレンと、コモノマーとしての1種またはそれ以上の3〜10個のC原子を有するa−オレフィン、特に、プロピレン、イソブテン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンとの共重合体である。コモノマーの量は原則として0〜50重量%、好ましくは5〜35重量%である。この種のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖超低密度ポリエチレン(VL(L)DPE)、およびプラストマーとして周知である。
【0024】
好適なプロピレンポリマーの例は、プロピレンの単独重合体、ランダム共重合体、共重合体、およびシングルサイト触媒を用いた重合体(single−site polymer)である。
【0025】
官能基は、共重合体のようにポリマー中に本来存在するものであってもよいし、あるいはグラフト化により存在するものであってもよい。官能基が本来存在する好適なポリマーとしては、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリル酸メチル(EMA)、エチレンアクリル酸ブチル(EBA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリメタクリル酸グリシジル(PGMA)、スチレン無水マレイン酸(SMA)、およびアイオノマーが挙げられる。
【0026】
好ましくは、官能基は、エチレン性不飽和基を有する化合物をポリマーにグラフトすることによりポリマー中に存在する。
【0027】
エチレン性不飽和基を有する好適な化合物は、上述の好適なポリマーの少なくとも1種にグラフトさせることができるものである。エチレン性不飽和基を有する化合物は炭素−炭素二重結合を含み、ポリマーにグラフトさせることによって側鎖を形成することができる。
【0028】
好適なエチレン性不飽和基を有する化合物の例は、不飽和カルボン酸ならびにそのエステルおよび酸無水物および金属または非金属塩である。好ましくは、化合物中のエチレン性不飽和はカルボニル基と共役している。その例としては、アクリル、メタクリル、マレイン、フマル、イタコン、クロトン、メチルクロトン、およびケイ皮酸ならびにこれらのエステル、酸無水物、および可能な塩がある。少なくとも1個のカルボニル基を有する化合物の中では無水マレイン酸が好ましい。
【0029】
少なくとも1個のエポキシ環を有するエチレン性不飽和基を有する好適な化合物の例は、例えば、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、不飽和アルコールおよびアルキルフェノールのグリシジルエーテル、ならびにエポキシカルボン酸のビニルおよびアリルエステルである。メタクリル酸グリシジルが特に好適である。
【0030】
少なくとも1個のアミン基を有するエチレン性不飽和基を有する好適な化合物の例は、例えば、アリルアミン、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルアミン、アミンエーテル、例えば、イソプロペニルフェニルエチルアミンエーテルである。アミン基および不飽和の互いの相対的位置は、グラフト化反応にいかなる望ましくない影響も与えるべきではない。
【0031】
アミンは無置換であってもよいが、例えば、アルキルおよびアリール基、ハロゲン基、エーテル基、ならびにチオエーテル基で置換されていてもよい。
【0032】
少なくとも1個のアルコール基を有するエチレン性不飽和官能基を有する好適な化合物の例はいずれも、エーテル化またはエステル化されていてもいなくてもよいヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物であり、例えば、エチルアルコールや、より高級な分岐および非分岐アルキルアルコール等のアルコールのアリルおよびビニルエーテルに加えて、アルコール置換された酸(好ましくはカルボン酸)およびC3〜C8アルケニルアルコールのアリルおよびビニルエステルである。
【0033】
好ましい実施形態においては、官能化ポリマーは、グラフト化ポリオレフィンおよびポリ(メタクリル酸グリシジル)の群から選択される。より好ましい官能化ポリマーは、グラフト化ポリエチレンまたはグラフト化ポリプロピレンである。好ましくは、ポリエチレンまたはポリプロピレンは、エチレン性不飽和基を有する化合物でグラフト化されている。
【0034】
官能化ポリマーは、官能基を0.01〜50重量%有する(この重量百分率は、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とする)。好ましくは、官能化ポリマーは官能基を少なくとも0.05重量%、より好ましくは官能基を少なくとも0.1重量%有する(この重量百分率は、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とする)。好ましくは、官能化ポリマーは、官能基を最大で40重量%、より好ましくは最大で30重量%、よりさらに好ましくは官能基を最大で20重量%有する(この重量百分率は、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とする)。
【0035】
ビスマス含有化合物は当業者に周知であり、例えば、米国特許出願第2007/02924号明細書に開示されている。本明細書におけるビスマス含有化合物は、ビスマス塩やビスマス酸化物等を包含するものと理解される。この化合物は、例えば、BiONO、BiCO、BiOOH、BiOF、BiOBr、Bi、BiOC、Bi(C、BiPO、Bi(SO、およびBiクエン酸塩の群から選択することができる。ハロゲンは望ましくないので、ビスマス含有化合物は好ましくはハロゲンフリーである。より好ましくは、ビスマス含有化合物は、ハロゲンフリーであるBiクエン酸塩である。Biはハロゲンフリーであり、淡色であるため下地色にほとんど影響を与えず、かつ最大マーキング速度においても他のBi含有化合物と比較して高いコントラストが得られることから、Biが最も好ましいビスマス含有化合物である。
【0036】
本発明において、ビスマス含有化合物は、官能化ポリマー中に、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準として0.1重量%〜95重量%、より好ましくは5〜80重量%、最も好ましくは50〜80重量%の量で存在する。適切な濃度は、主としてマトリックスポリマー中に所望されるレーザーマーキング用添加剤の量に応じて当業者により選択されるであろう。
【0037】
良好な解像度を得るために、レーザーマーキング可能な組成物中のビスマスを500ppmという低量にすることも、または250ppmという低量にすることさえも可能である。好ましくは、レーザーマーキング可能な組成物中のビスマスの量は、組成物の総重量を基準として0.05〜2重量%である。こうすることにより良好なレーザーマーキング性能が得られると同時に、組成物の機械的性質が維持される。
【0038】
本発明はまた、レーザーマーキング用添加剤の調製方法であって、官能化ポリマーをビスマス含有化合物と溶融混練する方法にも関する。この方法には加工ステップを1回しか行わないという利点がある。
【0039】
本発明はまた、本発明によるレーザーマーキング可能な組成物を加工する方法であって、加工が少なくとも220℃の温度で実施される方法にも関する。この加工を用いることにより、マトリックスポリマーの分解が低減される。
【0040】
本発明はまた、レーザーマーキング可能な組成物を含む成形品にも関する。これらの物品は、例えば、遮断器またはランプソケットである。この部品は良好なレーザーマーキング性能を示す。
【0041】
本発明はまた、レーザーマーキング可能な組成物から作製されたフィルムにも関する。このフィルムは高いレーザーマーキング性能を示す。
【0042】
本発明を以下の実施例に基づき説明する。
【0043】
実施例および比較実験において以下の材料を使用する。
レーザーマーキング用添加剤中の吸収剤として:
A−1 酸化ビスマス(Bi
A−2 酸化アンチモンスズ
A−3 三酸化アンチモン
レーザーマーキング用添加剤(LMA)中のポリマーとして:
P1 官能化ポリマーに対しMAHを0.26重量%グラフトしたLLDPE
P2 官能化ポリマーに対しMAHを0.9重量%グラフトしたポリエチレンであるフサボンド(Fusabond)(登録商標)MO525D(DuPont)
P3 エチレンおよびオクテンの共重合体であり、メルトインデックスが30であるLLDPE
レーザーマーキング可能なマスターバッチ(LMB)中のポリマーとして:
P4 HDPE
レーザーマーキング可能な組成物(LMC)中のマトリックスポリマーとして:
M−1 DSMからのアクロン(Akulon)(登録商標)K222−KGV4:PA−6、ガラス繊維20%強化、難燃剤含有、ハロゲンおよびリンフリー
M1−1 ポリアミド6コンパウンド、ガラス繊維20%強化、難燃剤含有、ハロゲンおよびリンフリー
M−1.2 ポリアミド6、タルカム25%充填/強化、難燃剤含有、ハロゲンおよびリンフリー
M−2 ポリブチレンテレフタレート(PBT)1060(DSM)
M−2.1 ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維20%強化
M−2.2 ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維20%強化、難燃剤含有、ハロゲンおよびリンフリー
M−3 TPE 熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー
【0044】
特段の指定がない限り量はすべて重量部である。
【0045】
[レーザーマーキング用添加剤(LMA)の調製方法]
二軸押出機(ウェルナー・アンド・フライデラー(Werner & Pfleiderer)のZSK 30)を用いて複数種のレーザーマーキング用添加剤(LMA01〜LMA04)および比較例を製造した。LMAの組成を表1に示す。スクリュー回転数を250回転毎分とし、押出量を20kg/時とした。ゾーン1の温度を140℃とし、ゾーン10の温度を160℃とした。
【0046】
【表1】



【0047】
[レーザーマーキング可能な組成物(LMB)の調製方法]
二軸押出機(ウェルナー・アンド・フライデラーのZSK 30)を用いてレーザーマーキング用組成物を製造した。LMBの組成および加工条件を表1.1に示す。
【0048】
スクリュー回転数を250回転毎分とし、押出量を10kg毎時とした。ゾーン1〜10の温度を280℃の等温にした。
【0049】
【表2】



【0050】
[レーザーマーキング可能な組成物(LMC)の調製方法]
二軸押出機(ウェルナー・アンド・フライデラーのZSK 30)を用いてレーザーマーキング用組成物を製造した。LMCの組成および加工条件を表2に示す。
【0051】
スクリュー回転数を250回転毎分とし、押出量を15kg毎時とした。マトリックスとしてポリアミド(M−1、M−1.1、M−1.2)を用いる場合はゾーン1の温度を190℃とし、マトリックスとしてポリブチレンテレフタレート(M−2、M−2.1、M2.2)を用いる場合は230℃とした。ポリアミドおよびポリブチレンテレフタレートをベースとするマトリックスポリマー(M−1、1.1、M−2、M2.1、およびM2.2)の組成物の場合はゾーン10の温度を280℃とした。TPE熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー(M−3)を用いる場合はゾーンの温度を195℃とした。ゾーン10の温度は240℃とした。
【0052】
【表3】



【0053】
【表4】



【0054】
【表5】



【0055】
【表6】



【0056】
【表7】



【0057】
Alブレンド(LMC01〜LMC28)から得られた組成物は、レーザーマーキング用添加剤が存在しても色にはほとんど影響がなかった。ところが比較例1および2は重度の変色が起こるとともに、もはやレーザーマーキング可能な試料に加工することができなかった。比較例3および4もマトリックスポリマーと混合する際に重度の変色が見られ、またマトリックスポリマーが分解したためにもはやレーザーマーキング可能な試料に加工することができなかった。
【0058】
[レーザーマーキング用試料の調製]
射出成形を用いてレーザーマーキング可能な組成物から試料を作製した。どの試料の場合もゾーン1の温度を215℃に設定した。マトリックスポリマーとしてポリアミドを用いる試料の場合は、ゾーン2、ゾーン3、およびノーズ部の温度をすべて225℃とし、マトリックスポリマーとしてPBTを用いる試料の場合は、それぞれ230℃、240℃、および240℃とした。マトリックスポリマーとしてTPE(M−3)を用いる試料の場合は、どの試料の場合もゾーン1の温度を200℃に設定し、ゾーン2、3、およびノーズ部は210℃、230℃、および240℃とした。
【0059】
[レーザーマーキング性能]
ダイオード励起Trumpf VMc3レーザーシステムを用いてレーザーマーキング評価を実施した。いわゆる評価マトリックスを用いて評点を付けた。この種のマトリックスにおいては、所与の出力(p(%))、焦点距離(z=0(焦点位置)または試料の上方6mm)、およびライン間隔に対し、マーキング速度(v(mm/秒))および周波数(f(kHz))を変化させる。基本的に、評価マトリックスでは、特定のマーキング速度でレーザーパラメータを変化させることによってどのようなコントラストが得られるかが示される。コントラストおよびマーキング速度に関するレーザーマーキング性能の評価を非常に良い(+++++)〜悪い(−−−−−)の範囲で評価したものを表3に示す。
【0060】
【表8】



【0061】
表3に示した結果から、ビスマス含有化合物を含むレーザーマーキング可能な試料が非常に優れたマーキング性能を示し、レーザーマーキング用添加剤としてアンチモン化合物を使用した比較例さえも上回っていることが明らかである。
【0062】
[比較トラッキング指数]
本発明によるレーザーマーキング用添加剤を含むレーザーマーキング可能な組成物およびアンチモンを含む比較例についてIEC 60112に従いCTI値を測定した。レーザーマーキング用添加剤を含まないマトリックスポリマーのCTI値も示す。結果を表4にまとめる。
【0063】
【表9】



【0064】
表4から、アンチモンを含むレーザーマーキング用添加剤を適用(比較例2)することによりCTI値がレーザーマーキング用添加剤を含まない組成物(比較例1)よりも低下する一方で、本発明によるレーザーマーキング用添加剤がCTI値にほとんど影響しないことが明らかである。
【0065】
[燃焼性調査]
各種試料についてUL 94試験を実施した。これはプラスチックの燃焼性基準である。この基準を用いて様々な方向および厚みのプラスチックがどのように燃焼するかが分類される。最低(最も難燃性が低い)から最高(最も難燃性が高い)まで、測定される分類は:
・V2:垂直方向の試験片で30秒以上燃焼が続かない;燃焼粒子の滴下は許容される
・V0:垂直方向の試験片で10秒以上燃焼が続かない;粒子の滴下は、発火しなければ許容される
【0066】
結果を表5に示す。
【0067】
【表10】



【0068】
表5からも、本発明によるレーザーマーキング用添加剤を添加しても燃焼性試験に変化がないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス含有化合物と、官能基を0.01〜50重量%有する官能化ポリマーとを含み、前記重量百分率は官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とすることを特徴とする、レーザーマーキング用添加剤。
【請求項2】
前記ビスマス含有化合物が、Biおよびクエン酸Bi塩の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項3】
前記官能化ポリマーが、グラフト化ポリエチレンまたはグラフト化ポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項4】
前記官能基が、無水マレイン酸またはエポキシの群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項5】
前記レーザーマーキング用添加剤が、官能基を少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%含み、前記重量百分率が、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項6】
前記レーザーマーキング用添加剤が、官能基を最大で30重量%、好ましくは官能基を最大で20重量%含み、前記重量百分率が、官能化ポリマーおよびビスマス含有化合物の総量を基準とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項7】
前記レーザーマーキング用添加剤が、アンチモンフリーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項8】
前記レーザーマーキング用添加剤が、ハロゲンフリーであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤。
【請求項9】
前記官能化ポリマーを前記ビスマス−含有化合物と溶融混練することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤の調製方法。
【請求項10】
マトリックスポリマーとしての熱可塑性ポリマーおよび請求項1〜8のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用添加剤および場合によりさらなる熱可塑性ポリマーを含む、レーザーマーキング可能な組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、およびポリカーボネートの群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のレーザーマーキング可能な組成物。
【請求項12】
ビスマスの量が、前記組成物の総重量を基準として0.05〜2重量%であることを特徴とする、請求項10または11に記載のレーザーマーキング可能な組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のレーザーマーキング可能な組成物の調製またはその加工方法であって、前記調製または加工が少なくとも220℃の温度で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のレーザーマーキング可能な組成物を含む成形品。
【請求項15】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のレーザーマーキング可能な組成物から作製されたフィルム。

【公表番号】特表2013−509459(P2013−509459A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535667(P2012−535667)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006506
【国際公開番号】WO2011/050934
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】