説明

レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物及び成形品

【課題】耐衝撃性、耐熱性、着色外観性等に優れた成形品を与え、例えば、黒色物質により暗色系の色を呈する着色成形品の表面にレーザーを照射した場合に、照射部において、樹脂に由来する色等を鮮明に発現するレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明の組成物は、〔A〕ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂、〔B〕重合性不飽和単量体を重合して得られた重合体(但し、成分〔A〕を除く)であって、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を有する(共)重合体を含む重合体、及び〔C〕脂肪族ポリエステル系樹脂を含有し、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕、上記重合体〔B〕及び上記脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、15〜85質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等に優れた成形品を与え、黒色物質等の着色剤により白色以外の色に着色された成形品の表面にレーザーを照射した場合に、照射部において、樹脂に由来する色等を鮮明に発現するレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の表面に、文字、記号、絵等をマーキングする方法として、インクを用いたタンポ印刷やシルク印刷、レーザー照射によるレーザーマーキングが知られている。
レーザーマーキングは、例えば、黒色物質により暗色系の色を呈する樹脂成形品にレーザーを照射し、そのエネルギーを利用して、照射部における樹脂の化学変化、黒色物質等の化学変化等を発現させて、照射部を樹脂に由来する色(白色)等に発色させ、文字、記号、絵等とする方法である。
レーザーマーキング用の樹脂組成物としては、(メタ)アクリル酸エステルを用いて得られた樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
一方、近年における地球温暖化の問題、石油資源等の枯渇が危惧されるなか、植物由来の材料、例えば、ポリ乳酸の利用が増えている。植物由来の樹脂を使用することにより、石油の使用量を抑えることができるとともに、その使用後に燃焼処理を行った場合、大気中の二酸化炭素の収支がほとんど変化しないというカーボンニュートラルの概念に基づくからである。
しかしながら、このポリ乳酸は、既存の石油系樹脂に比べて、耐衝撃性等に劣るという欠点を有している。従って、例えば、耐衝撃性が改良された樹脂成形品とするためには、
ポリ乳酸と、他の熱可塑性樹脂と、必要に応じて配合される相溶化剤とを併用した組成物が用いられている。
ポリ乳酸等の生分解性樹脂を含むレーザーマーキング用の樹脂組成物も知られており(特許文献3参照)、ポリ乳酸及びポリカーボネート樹脂からなるアロイ、ポリ乳酸及びポリメチルメタクリレートからなるアロイ等を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−112968号公報
【特許文献2】特開2000−265029号公報
【特許文献3】特開2006−307061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に開示された樹脂組成物からなる樹脂成形品に対するレーザーマーキングによれば、コントラストが十分ではなく、また、家電製品、電子部品、家庭用品、OA機器用途等で使用するには、衝撃強度等の機械的特性、着色外観性及び成形加工性も十分ではなく、実用的に満足できるものが望まれていた。
本発明の目的は、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等に優れた成形品を与え、黒色物質等の着色剤により白色以外の色に着色された成形品の表面にレーザーを照射した場合に、照射部において、樹脂に由来する色等を鮮明に発現するレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.〔A〕ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂と、〔B〕重合性不飽和単量体を重合して得られた重合体(但し、ゴム強化樹脂〔A〕を除く)であって、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(b1)を有する(共)重合体を含む重合体と、〔C〕脂肪族ポリエステル系樹脂と、を含有する熱可塑性樹脂組成物において、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、ゴム強化樹脂〔A〕、重合体〔B〕及び脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、15〜85質量%であることを特徴とするレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
2.ゴム強化樹脂〔A〕の含有量及び重合体〔B〕の含有量の合計量、並びに、脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の含有量、の割合が、ゴム強化樹脂〔A〕、重合体〔B〕及び脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、20〜90質量%及び10〜80質量%である上記1に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
3.ゴム強化樹脂〔A〕の含有量及び重合体〔B〕の含有量の割合が、ゴム強化樹脂〔A〕及び重合体〔B〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜95質量%及び5〜95質量%である上記1又は2に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
4.重合体〔B〕に含まれる構造単位(b1)の含有量が、重合体〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量を100質量%とした場合に、55〜100質量%である上記1乃至3のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
5.重合体〔B〕が、構造単位(b1)の含有量が80〜100質量%である(共)重合体(B1)と、構造単位(b1)の含有量が20質量%以下である共重合体(B2)とからなり、
(共)重合体(B1)及び共重合体(B2)の含有割合が、(共)重合体(B1)及び共重合体(B2)の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、55〜95質量%及び5〜45質量%であり、
(共)重合体(B1)を構成する構造単位(b1)の含有量、及び、共重合体(B2)を構成する構造単位(b1)の含有量の合計量が、重合体〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量を100質量%とした場合に、55〜95質量%である上記1乃至4のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
6.ゴム強化樹脂〔A〕が、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた樹脂であり、ゴム強化樹脂〔A〕を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量が20質量%未満である上記1乃至5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
7.ゴム強化樹脂〔A〕が、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた樹脂であり、ゴム強化樹脂〔A〕を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量が20〜80質量%である上記1乃至5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
8.更に、黒色物質〔D〕を含有する上記1乃至7のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
9.上記8に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
10.上記9に記載の成形品の表面に、レーザーマーキングされてなることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等に優れた成形品を与え、黒色物質〔D〕等の着色剤により白色以外の色に着色された成形品の表面にレーザーを照射した場合に、照射部において発色した、樹脂に由来する色等が鮮明である(発色性及び視認性に優れる)ので、車両、船舶、電子機器、家電製品、建材等の部材や、日用雑貨、スポーツ用品、文具等の、レーザーマーキングによる発色性、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等の要求される成形品の形成に好適である。
また、本発明において、着色された成形品は、植物由来の材料への置き換えが可能な脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕を含むため、環境負荷の低いレーザーマーキング用樹脂成形品として好ましく用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
【0009】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物は、後述する、〔D〕黒色物質(以下、「成分〔D〕」ともいう。)等の着色剤を含む組成物により形成された白色以外の色の着色成形品にレーザーを照射し、照射部の色を元の地色から、樹脂に由来する色等の異なる色に変化させてマーキングされた物品を得るための熱可塑性組成物であって、〔A〕ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)と、〔B〕重合性不飽和単量体を重合して得られた重合体(但し、上記ゴム強化樹脂〔A〕を除く)であって、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(b1)を有する(共)重合体を含む重合体(以下、「成分〔B〕」ともいう。)と、〔C〕脂肪族ポリエステル系樹脂(以下、「成分〔C〕」ともいう。)と、を含有し、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(上記構造単位(b1)と同じ構造単位を意味し、以下、「(メタ)アクリル系構造単位」で統一する。)の含有量は、上記成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、15〜85質量%であることを特徴とする。
【0010】
上記成分〔A〕は、ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合すること(以下、「グラフト重合」という。)により得られた樹脂組成物(ゴム強化樹脂)である。
【0011】
上記ゴム質重合体は、25℃でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という。)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という。)が好ましい。更に、このゴム質重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
上記ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。上記ジエン系ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
また、上記非ジエン系ゴムとしては、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%以上。)されたものであってもよい。上記非ジエン系ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明においては、上記成分〔A〕は、ゴム質重合体として、ジエン系ゴムを用いて得られたゴム強化樹脂であることが好ましい。
【0015】
上記重合性不飽和単量体は、好ましくはビニル系単量体である。このビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記芳香族ビニル化合物は、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。但し、官能基等の置換基を有さないものとする。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0017】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。但し、カルボン酸は含まないものとする。その例としては、エステル部が炭化水素基を含む化合物、エステル部がヒドロキシアルキル基を含む化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エステル部が炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
また、エステル部がヒドロキシアルキル基を含む化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにε−カプロラクトンを付加して得られた化合物等が挙げられる。
【0019】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、p−ビニルベンジルアルコール、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明において、上記重合性不飽和単量体は、芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むことが好ましい。
上記重合性不飽和単量体に含まれる芳香族ビニル化合物の含有量の下限値は、好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは60質量%である。尚、上限値は、通常、100質量%である。
また、上記重合性不飽和単量体が芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む場合、これらの合計量の下限値は、好ましくは70質量%、より好ましくは80質量%、更に好ましくは95質量%である。尚、上限値は、通常、100質量%である。芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、組成物の成形加工性、並びに、成形品の耐薬品性、耐加水分解性、耐衝撃性、剛性、寸法安定性、成形外観性等の観点から、それぞれ、好ましくは40〜95質量%及び5〜60質量%、より好ましくは50〜90質量%及び10〜50質量%、更に好ましくは60〜85質量%及び15〜40質量%である。
【0023】
上記成分〔A〕としては、以下に例示される。これらのうち、(1)及び(2)の態様が好ましい。
(1)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂
(2)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂
(3)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂
【0024】
本発明において、好ましい成分〔A〕は、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む重合性不飽和単量体((メタ)アクリル酸エステル化合物を含んでもよい。)を重合して得られた樹脂であり、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位((メタ)アクリル系構造単位)の含有量が20質量%未満のゴム強化樹脂(以下、「ゴム強化樹脂(I)」という。)、及び、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた樹脂であり、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位((メタ)アクリル系構造単位)の含有量が20〜80質量%のゴム強化樹脂(以下、「ゴム強化樹脂(II)」という。)である。
上記ゴム強化樹脂(I)における(メタ)アクリル系構造単位の含有量は、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0質量%である。
また、上記ゴム強化樹脂(II)における(メタ)アクリル系構造単位の含有量は、より好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
本発明においては、上記成分〔A〕として、ゴム強化樹脂(I)及びゴム強化樹脂(II)を組み合わせて用いてよいし、いずれか一方を用いてもよい。
上記成分〔A〕が(メタ)アクリル系構造単位を含む場合、その含有量は、特に限定されない。
【0025】
上記成分〔A〕を製造する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合法とすることができる。
【0026】
尚、上記成分〔A〕を製造する際には、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、重合性不飽和単量体を、一括供給して重合を行ってよいし、分割して又は連続的に供給しながら重合を行ってもよい。また、ゴム質重合体の一部存在下、又は、非存在下に、重合性不飽和単量体を一括供給して重合を行ってよいし、分割して又は連続的に供給しながら重合を行ってもよい。このとき、上記ゴム質重合体の残部は、反応の途中で、一括して、分割して又は連続的に供給してもよい。
【0027】
乳化重合を行う場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
【0028】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等が挙げられる。
【0029】
上記有機過酸化物としては、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−アミル−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−tert−ヘキシルパーオキサイド、tert−アミル−tert−ヘキシルパーオキサイド、ジ(tert−ヘキシル)パーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0030】
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0031】
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
【0032】
上記重合開始剤の使用量は、上記重合性不飽和単量体の全量に対して、通常、0.05〜10質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
【0033】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記連鎖移動剤の使用量は、上記重合性不飽和単量体の全量に対して、通常、0.01〜5質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
【0035】
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記乳化剤の使用量は、上記重合性不飽和単量体の全量に対して、通常、0.1〜10質量%である。
【0037】
乳化重合は、重合性不飽和単量体、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスに対しては、通常、凝固剤による樹脂成分の凝固が行われ、粉体等とされる。その後、水洗等によって精製し、乾燥して回収される。凝固に際しては、従来、公知の凝固剤が用いられ、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
【0038】
溶液重合、塊状重合及び塊状−懸濁重合により成分〔A〕を製造する場合は、公知の方法を適用することができる。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔A〕は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
【0040】
上記成分〔B〕は、重合性不飽和単量体を重合して得られた、上記成分〔A〕を含まない重合体であって、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(b1)、即ち、(メタ)アクリル系構造単位を有する(共)重合体(以下、「重合体(BX)」という。)を含む重合体である。尚、この成分〔B〕は、重合体(BX)のみであってよいし、重合体(BX)と、(メタ)アクリル系構造単位を含有せず、後述する他の重合性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(b2)」という。)からなる他の(共)重合体(以下、「重合体(BY)」という。)との組み合わせであってもよい。これらの重合体(BX)及び重合体(BY)は、いずれも、上記成分〔A〕を含まないものとする。
上記成分〔B〕に含まれる重合体(BX)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。上記成分〔B〕に含まれる重合体(BY)もまた、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
尚、上記成分〔B〕を構成する(メタ)アクリル系構造単位の含有量は、レーザーマーキングによる発色性及び着色外観性の観点から、この成分〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量を100質量%とした場合に、55〜100質量%であり、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%である。
【0041】
上記重合体(BX)は、(メタ)アクリル系構造単位のみからなる(共)重合体であってよいし、(メタ)アクリル系構造単位と、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な他の重合性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(b3)」という。)とを含む共重合体であってもよい。
上記重合体(BX)に含まれる構造単位(b1)、即ち、(メタ)アクリル系構造単位の含有量は、レーザーマーキングによる発色性及び着色外観性の観点から、好ましくは55〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは65〜100質量%である。
【0042】
上記(メタ)アクリル系構造単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル化合物については、上記成分〔A〕の形成に用いられる重合性不飽和単量体として使用可能な(メタ)アクリル酸エステル化合物の例示化合物が適用される。上記重合体(BX)を構成する(メタ)アクリル系構造単位は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、エステル部が炭素数1〜4の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステル化合物(以下、「単量体(bm1)」という。)を含むことが好ましく、この単量体(bm1)と、エステル部が炭素数5以上の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステル化合物との組み合わせであってもよい。単量体(bm1)としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物に含まれる単量体(bm1)の割合は、レーザーマーキングによる発色性及び着色外観性の観点から、好ましくは55〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%である。
【0044】
上記構造単位(b3)を形成する重合性不飽和単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、α−オレフィン、含塩素不飽和化合物(塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、含フッ素不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
一方、上記重合体(BY)は、構造単位(b2)のみからなる(共)重合体である。この構造単位(b2)を形成する重合性不飽和単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、構造単位(b2)を形成する重合性不飽和単量体は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物が好ましく、上記重合体(BY)としては、スチレン・アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。
【0046】
上記成分〔B〕が重合体(BX)及び重合体(BY)からなる場合、これらの重合体の含有割合は、特に限定されない。レーザーマーキングによる発色性、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性の観点から、重合体(BX)及び重合体(BY)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは55〜100質量%及び0〜45質量%、より好ましくは65〜100質量%及び0〜35質量%である。
【0047】
本発明に係る成分〔B〕は、好ましくは、(メタ)アクリル系構造単位の含有量が80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である(共)重合体(B1)と、(メタ)アクリル系構造単位の含有量が0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、特に好ましくは0質量%である共重合体(B2)とからなり、これらの(共)重合体(B1)及び共重合体(B2)の含有割合を、両者の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは55〜95質量%及び5〜45質量%、より好ましくは57〜90質量%及び10〜43質量%、更に好ましくは60〜85質量%及び15〜40質量%とするものである。そして、上記(共)重合体(B1)を構成する(メタ)アクリル系構造単位の含有量、及び、上記共重合体(B2)を構成する(メタ)アクリル系構造単位の含有量の和(合計量)が、上記重合体〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量(上記(共)重合体(B1)を構成する全ての構造単位の含有量、及び、上記共重合体(B2)を構成する全ての構造単位の含有量、の和)を100質量%とした場合に、好ましくは55〜95質量%とするものである。このとき、レーザーマーキングによる発色性及び耐衝撃性の観点から、より好ましい割合は55〜85質量%、特に好ましくは60〜75質量%である。また、レーザーマーキングによる発色性及び着色外観性の観点から、より好ましい割合は70〜95質量%、特に好ましくは75〜90質量%である。
上記構成を有する成分〔B〕を用いることにより、レーザーマーキングによる発色性、耐衝撃性及び着色外観性に特に優れた成形品を得ることができる。
【0048】
上記成分〔B〕の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、成形加工性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは0.2〜0.9dl/g、より好ましくは0.25〜0.85dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
ここで、極限粘度[η]は、以下の要領で求めることができる。
上記成分〔B〕をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の溶液の還元粘度を測定することにより、極限粘度[η]が求められる。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔B〕は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
【0050】
上記成分〔C〕は、脂肪族ポリエステル系樹脂であり、従来、公知の樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分〔C〕の具体例としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・カーボネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート及びポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネートが好ましく、ポリ乳酸系樹脂及びポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
【0051】
上記ポリ乳酸系樹脂は、主たる構造単位がL−乳酸単位及び/又はD−乳酸単位であるものであれば、特に限定されない。これらの乳酸単位の(合計)含有量は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、更に好ましくは99〜100モル%である。
尚、上記ポリ乳酸系樹脂が、他の構造単位を含む場合、その具体例としては、2つ以上のエステル結合形成可能な官能基を有するジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等に由来する構造単位等が挙げられる。
【0052】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドが付加した化合物等の芳香族多価アルコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルカプロン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルカプロン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−エチル酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシバレリン酸、5−ヒドロキシバレリン酸、2−ヒドロキシヘプタン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルヘプタン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、7−ヒドロキシヘプタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルオクタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸等が挙げられる。
また、ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0053】
上記ポリ乳酸系樹脂の分子量及び分子量分布は、組成物が成形加工性を有するのであれば、特に限定されない。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の下限値は、好ましくは10,000であり、より好ましくは50,000、更に好ましくは100,000である。但し、上限値は、通常、400,000である。尚、上記Mwに相当するMFR(温度190℃、荷重10kg)の下限値は、好ましくは3g/10分、より好ましくは5g/10分、更に好ましくは7g/10分であり、上限値は、通常、100g/10分である。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔C〕は、1種単独で含まれていてよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分〔A〕及び〔B〕含有割合は、レーザーマーキングによる発色性並びに耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性の観点から、成分〔A〕及び〔B〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%であり、より好ましくは5〜65質量%及び35〜95質量%、更に好ましく6〜40質量%及び60〜94質量%、特に好ましくは8〜28質量%及び72〜92質量%である。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分〔A〕及び〔B〕の合計量、並びに、成分〔C〕の含有量、の割合は、レーザーマーキングによる発色性並びに耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性の観点から、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは20〜90質量%及び10〜80質量%であり、より好ましくは30〜90質量%及び10〜70質量%、更に好ましくは45〜90質量%及び10〜55質量%、特に好ましくは45〜80質量%及び20〜55質量%である。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(メタ)アクリル系構造単位の含有量は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、15〜85質量%であり、好ましくは25〜75質量%、より好ましくは40〜65質量%である。(メタ)アクリル系構造単位の含有量が上記範囲にあると、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキングによる発色性並びに耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等に優れた成形品を与え、例えば、黒色物質〔D〕等を含む着色剤により暗色系の色を呈する成形品とした場合にも、優れた外観性を得ることができる。
尚、(メタ)アクリル系構造単位は、上記のように、成分〔B〕のみに由来する場合、並びに、成分〔A〕及び〔B〕に由来する場合がある。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ゴム質重合体の含有量は、耐衝撃性の観点から、組成物全体に対して、好ましくは3〜75質量%、より好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
【0059】
本発明において、レーザーマーキングによる発色性、耐衝撃性、耐熱性、曲げ弾性率等の物理的物性、並びに、着色外観性のバランスに優れた成形品を与える組成物の構成は、以下の通りである。
(i)成分〔A〕として(メタ)アクリル系構造単位を含まないゴム強化樹脂(I)を用いる。
(ii)成分〔A〕の含有量及び成分〔B〕の含有量の割合が、両者の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、8〜38質量%及び72〜92質量%である。
(iii)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、成分〔A〕の含有量の割合が、6〜28質量%であり、成分〔C〕の含有量の割合が、18〜60質量%である。
(iv)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、成分〔A〕に含まれる(メタ)アクリル系構造単位の含有量、及び、成分〔B〕に含まれる(メタ)アクリル系構造単位の含有量の合計量の割合が、25〜52質量%である。
(v)ゴム質重合体の含有量は、組成物全体に対して、3〜50質量%である。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、他の重合体(他の樹脂等)を含有してもよい。
他の重合体としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、他の重合体(他の樹脂等)を含有する場合、その含有量は、上記成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量100質量部に対して、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部である。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分〔A〕に由来するゴム質重合体の含有量は、成形加工性及び成形品の耐衝撃性の観点から、組成物全体に対して、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、更に、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、滑剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、消泡剤、抗菌剤、防腐剤、着色剤、蛍光増白剤、導電性付与剤等を含有したものとすることができる。
【0063】
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、これらの変性化合物、縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。
【0070】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
また、反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0071】
上記滑剤としては、ワックス、シリコーン、脂質等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記着色剤としては、染料及び顔料のいずれでもよく、これらの組み合わせでもよい。 染料としては、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料等が挙げられ
る。
また、顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、チタンブラック、黒鉛、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、酸化亜鉛系顔料、カドミウム系顔料等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等が挙げられる。
【0073】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が着色剤を含有する場合、1種のみが含まれてよいし、2種以上が含まれてもよい。
上記着色剤の含有量は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含む熱可塑性樹脂成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001〜8質量部、より好ましくは0.002〜5質量部、更に好ましくは0.005〜2質量部である。
【0074】
本発明におけるレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の態様は、後述するが、白色以外の色に着色された着色成形品を得るための組成物としては、黒色物質、即ち、成分〔D〕の含有により暗色系の色を呈する成形品とするための組成物が好ましい。この成分〔D〕は、400〜700nmのすべての波長域の光を吸収する化合物が好ましく、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄、チタンブラック、黒鉛等を用いることができる。これらの物質は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの粒径は、好ましくは10〜80nm、より好ましくは12〜60nm、特に好ましくは15〜40nmである。粒径が上記範囲にあると、レーザーマーキングによる発色性が良好である。
【0076】
黒色酸化鉄は、Fe又はFeO・Feで表される黒色の鉄酸化物である。
黒色酸化鉄の粒径は、好ましくは0.3〜0.8μm、より好ましくは0.4〜0.6μmである。
黒色酸化鉄の形状は、球状、立方状、針状等とすることができる。
【0077】
チタンブラックは、二酸化チタンを還元することによって得られる化合物である。
チタンブラックの粒径は、好ましくは0.1〜60μm、より好ましくは1〜20μmである。
【0078】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が、上記成分〔D〕を含有する場合、成分〔D〕の含有量は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含む熱可塑性樹脂成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部、更に好ましくは0.01〜1質量部である。上記成分〔D〕の含有量が上記範囲にあると、レーザーマーキングによる発色性及び視認性に優れる。
【0079】
着色成形品が、成分〔D〕の含有により暗色系の色を呈する場合には、レーザーマーキングにより、照射部において、成分〔D〕に由来する色以外の色が鮮明に得られる。即ち、地色が暗色系の色である着色成形品の表面において、レーザー照射部が、例えば、樹脂に由来する色等で鮮明にマーキングされた物品を得ることができる。
尚、着色成形品が、成分〔D〕、及び、黒色以外の有色着色剤(以下、「有彩色着色剤」という。)の組み合わせた色を呈する場合には、レーザーの照射条件に依存するが、照射部が、有彩色着色剤に由来する色(有彩色着色剤そのものの色又は有彩色着色剤の構成材料の分解物に由来する色)、あるいは、成分〔D〕及び有彩色着色剤のいずれにも由来しない、樹脂に由来する色、が鮮明に発色しマーキングされた物品を得ることができる。この場合、有彩色着色剤の含有量は、成分〔D〕100質量部に対して、好ましくは0.001〜10,000質量部、より好ましくは0.005〜5,000質量部、更に好ましくは0.01〜2,000質量部である。
【0080】
本発明において、レーザーの照射で鮮明なマーキングを発現する、地色が白色以外の色である着色成形品は、以下の態様の組成物を利用することにより得ることができる。
(S1)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、着色剤として成分〔D〕を含有する組成物
(S2)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、着色剤として成分〔D〕及び有彩色着色剤を含有する組成物
(S3)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、着色剤として成分〔D〕及び白色の着色剤を含有する組成物
(S4)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、着色剤として成分〔D〕、有彩色着色剤及び白色の着色剤を含有する組成物
(S5)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、白色の着色剤を含有し、他の色の着色剤を含有しない組成物
(S6)成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、着色剤を含有しない組成物
上記(S5)及び(S6)の態様においては、必要に応じて、成分〔D〕及び/又は有彩色着色剤と混練されて、上記(S1)〜(S4)のいずれかの態様の組成物を調製し、地色が白色以外の色である着色成形品の形成に用いることができる。
【0081】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含む原料を混練することにより、製造することができる。
混練に際しては、従来、公知の混練装置を用いればよく、例えば、二軸押出機、単軸押出機、加熱可能な二軸又は単軸のスクリューフィーダー、フィーダールーダー、バンバリーミキサー、ロールミル等を用いることができる。
【0082】
上記原料の混練温度は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の種類によって、適宜、選択されるが、通常、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕のうち、溶融温度が最も低い成分の溶融温度以上の温度であり、好ましくは、その溶融温度より10℃程度高い温度である。
【0083】
本発明の成形品は、成分〔D〕を含有するレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物、具体的には、上記組成物(S1)〜(S4)のいずれかを、公知の成形装置に供給して得られた着色成形品である。尚、上記のように、上記組成物(S5)又は(S6)と、成分〔D〕と、必要に応じて、有彩色着色剤とから得られた着色成形品とすることもできる。成形装置としては、射出成形装置、シート押出成形装置、異形押出成形装置、中空成形装置、圧縮成形装置、真空成形装置、発泡成形装置、ブロー成形装置、射出圧縮成形装置、ガスアシスト成形装置、ウォーターアシスト成形装置等が挙げられる。
【0084】
本発明の(着色)成形品は、目的、用途等に応じて、任意の位置に、貫通孔、溝、凹部、凸部等を備えてもよい。
【0085】
上記着色成形品が、成分〔D〕を含有し、有彩色着色剤を含有しない場合、成形品にレーザーを照射すると、得られる物品において、その照射部(発色部)は、通常、樹脂、即ち、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の混合色に由来する色を呈する。
また、上記着色成形品が、成分〔D〕及び有彩色着色剤を含有する場合、成形品にレーザーを照射すると、得られる物品において、その照射部(発色部)は、上記のように、有彩色着色剤に由来する色(有彩色着色剤そのものの色又は有彩色着色剤の構成材料の分解物に由来する色)、あるいは、成分〔D〕及び有彩色着色剤のいずれにも由来しない、樹脂に由来する色等を呈する。レーザーの照射条件に依存して、照射部の色を、元の地色(暗色系の色)から異なる色に変化させてマーキングされた物品を得ることができる。
レーザーマーキングに使用するレーザーとしては、He−Neレーザー、Arレーザー、COレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザー;色素レーザー等を用いることができる。本発明においては、COレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0087】
1.製造原料
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料(樹脂成分及び重合体成分)は、以下の通りである。尚、極限粘度[η]の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
1−1.成分〔A〕
成分〔A〕として、以下のゴム強化樹脂A−1又はA−2を用いた。
【0088】
合成例1(ゴム強化樹脂の合成)
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水35部、ロジン酸カリウム0.25部、tert−ドデシルメルカプタン0.15部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)48部を含むラテックス120部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合ゴム(スチレン単位量30%)12部を含むラテックス30部、スチレン9部及びアクリロニトリル3部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.15部、硫酸第一鉄7水和物0.007部、ブドウ糖0.22部を、イオン交換水5部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.05部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水30部、ロジン酸カリウム0.5部、スチレン20部、アクリロニトリル8部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部及びクメンハイドロパーオキサイド0.07部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.15部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化樹脂(A−1)を得た。この樹脂のグラフト率は48%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.35dl/gであった。
【0089】
合成例2(ゴム強化樹脂の合成)
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水35部、ロジン酸カリウム0.25部、tert−ドデシルメルカプタン0.12部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)45部を含むラテックス110部、スチレン4部、アクリロニトリル1部及びメタクリル酸メチル12部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.18部、硫酸第一鉄7水和物0.01部、ブドウ糖0.28部を、イオン交換水7部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.06部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水40部、ロジン酸カリウム0.6部、スチレン9部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸メチル27部、tert−ドデシルメルカプタン0.12部及びクメンハイドロパーオキサイド0.09部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化樹脂(A−2)を得た。
【0090】
1−2.成分〔B〕
成分〔B〕として、下記の市販品、及び、合成例3〜4により得られた共重合体を用いた。
【0091】
成分(B−1)として、三菱レイヨン社製アクリル系樹脂「アクリペットVH5」(商品名)を用いた。この製品は、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルの共重合体(重合比98:2)であり、GPCによる重量平均分子量(Mw)は69,000である。
【0092】
合成例3(スチレン・アクリロニトリル共重合体の合成)
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン75部、アクリロニトリル25部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.15部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体を、成分(B−2)として用いた。
この成分(B−2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.60dl/gであった。
【0093】
合成例4(メタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体の合成)
単量体を、スチレン75部及びアクリロニトリル25部に代えて、メタクリル酸メチル72部、スチレン21部及びアクリロニトリル7部とした以外は、合成例3と同様にして、メタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体を得た。尚、1基目の反応器における2時間後の重合転化率は61%であり、2基目の反応器における2時間後の重合転化率は76%であった。
このメタクリル酸メチル・スチレン・アクリロニトリル共重合体を、成分(B−3)として用いた。
この成分(B−3)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.33dl/gであった。
【0094】
1−3.成分〔C〕
成分〔C〕として、下記の市販品を用いた。
成分(C−1)として、ユニチカ社製ポリ乳酸「テラマック TP−4000」(商品名)を用いた。MFR(温度190℃、荷重10kg)は、19g/10分である。
【0095】
1−4.成分〔F〕
他の樹脂〔F〕である成分(F−1)として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX 7022P」(商品名)を用いた。
【0096】
2.レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物の製造及び評価
実施例1〜20及び比較例1〜11
表1、表2及び表3に記載の成分を、所定の割合で用いて混練し、レーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、各表には記載していないが、組成物の評価に際しては、評価項目に応じた添加剤、成分〔D〕であるカーボンブラックを更に含む熱可塑性樹脂組成物を製造し、これを利用した。
【0097】
(I)レーザーマーキングによる発色性及び物性の評価用組成物
樹脂又は重合体の所定量を、ヘンシェルミキサーに供給した後、これらの合計100部に対して、酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.2部と、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「IRGANOX1010」、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.2部、及び、粒径が50nmのカーボンブラック(商品名「RCF#20」、三菱化学社製)0.05部を添加し、25℃で混合した。次いで、この混合物を、プラスチック工学研究所社製2軸押出機「BT40」(型式名)に供給して溶融混練し、ペレットを得た。尚、溶融混練の際のシリンダー設定温度は、180℃〜220℃とした。
その後、上記ペレットを十分に乾燥した後、流動性の評価を行い、また、ペレットを、東芝機械社製射出成形機「EC60」(型式名)又は日本製鋼社製射出成形機「J35AD」(型式名)に導入し、シリンダーの設定温度を180℃〜240℃として、その他の評価項目に適した試験片を作製し、測定に供した。
【0098】
(1)流動性
ISO 1133に準じて、温度220℃及び荷重10kgの条件で測定した。単位は「g/10分」である。
(2)レーザーマーキングによる発色性
板状試験片(80mm×55mm×2.4mm)の表面に、ロフィン・バーゼル社製ダイオード励起型レーザーマーカー「RSM30D」(型式名)により、走査速度(印字スピード)400mm/s、波長1,064nm、周波数5,500Hz、電流28A及び電力30Wの条件でレーザーを照射し、樹脂に由来する白色の文字をマーキングした。
照射部の発色性(鮮明さ及び視認性)を、下記基準で判定した。
「◎」:非常に良好(鮮明度、認識性共に非常に良好であった)
「○」:良好 (鮮明度、認識性共に良好で実用上問題ない)
「△」:良 (鮮明度と認識性の何れかが劣っていた)
「×」:劣る (鮮明度、認識性ともに劣っていた)
【0099】
(3)シャルピー衝撃強さ
ISO 179に準じて、温度23℃で測定した。単位は「kJ/m」である。
(4)荷重たわみ温度
ISO 75に準じて、曲げ応力1.8MPa及び0.45MPaの条件で測定した。単位は「℃」である。尚、各表においては、曲げ応力1.8MPaのときの荷重たわみ温度を、「耐熱性(i)」と示し、曲げ応力0.45MPaのときの荷重たわみ温度を、「耐熱性(ii)」と示した。
(5)曲げ強度
ISO 179に準じて、23℃で測定した。単位は「MPa」である。
(6)曲げ弾性率
ISO 179に準じて、23℃で測定した。単位は「MPa」である。
【0100】
(II)着色外観評価用組成物
成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の所定量を、ヘンシェルミキサーに供給した後、これらの合計100部に対して、酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.2部と、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「IRGANOX1010」、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.2部を添加し、更に、酸化チタン1.17部、チタンイエロー1.08部、ベンガラ0.12部、上記カーボンブラック0.33部、ヒマシ油水添硬化油(商品名「K−3ワックス」、川研ファインケミカル社製)0.30部を添加し、25℃で混合した。次いで、この混合物を、プラスチック工学研究所社製2軸押出機「BT40」(型式名)に供給して溶融混練し、ペレットを得た。尚、溶融混練の際のシリンダー設定温度は、180℃〜220℃とした。
その後、上記ペレットを十分に乾燥した後、最大長さが約10mmであるリブ形状のキャビティ空間を連続的に備える金型を配設した、FANUC社製射出成形機「ROBOSHOT α−150IA」(型式名)を用いて、射出成形に供した。シリンダー設定温度は、180℃〜210℃とし、射出速度は、毎秒15mm、30mm、60mm及び180mmとした。得られた成形品を、目視観察し、下記基準で判定した。
「◎」:射出速度によらず、リブの裏にも、表面のいずれの場所にも、色別れは見られなかった。
「○」:射出速度によって、一部のリブの裏に色別れが見られたが、表面のいずれの場所にも色別れは見られなかった。
「△」:射出速度によって、一部のリブの裏と表面に色別れが見られた。
「×」:全ての射出速度において、リブの裏だけでなく、表面全体に色別れが見られた。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表1、表2及び表3から、以下のことが明らかである。
比較例1は、成分〔A〕及び〔B〕を含有せず、重合体成分として、成分〔C〕のみを用いた組成物の例であり、発色性、耐衝撃性及び耐熱性に劣る。比較例2は、成分〔A〕及び〔B〕を含有せず、重合体成分として、成分〔C〕及び〔F〕を用いた組成物の例であり、発色性、流動性及び着色外観性に劣る。比較例3は、成分〔A〕を含有しない組成物の例であり、耐衝撃性に劣る。比較例4は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性、着色外観性及び耐衝撃性に劣る。比較例5は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、(メタ)アクリル系構造単位の含有量の割合が12.0%と少なく、本発明の範囲外の例であり、発色性及び着色外観性に劣る。比較例6は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、(メタ)アクリル系構造単位の含有量の割合が87.0%と多く、本発明の範囲外の例であり、耐衝撃性に劣る。比較例7は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性及び耐衝撃性に劣る。比較例8は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性、耐衝撃性及び耐熱性に劣る。比較例9は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性、耐衝撃性及び耐熱性に劣る。耐衝撃性及び耐熱性に劣る。比較例10は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性、着色外観性及び耐熱性に劣る。また、比較例11は、成分〔B〕を含有しない組成物の例であり、発色性、流動性及び耐熱性に劣る。
一方、本発明に係る成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を含有し、特定の構成とする組成物である実施例1〜20においては、発色性、耐衝撃性、耐熱性、着色外観性等のバランスに優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、耐熱性等の物理的物性、着色外観性等に優れた成形品を与えることから、その表面にレーザーを照射して、照射部における発色により、文字、記号、絵等を発現させるための着色成形品の形成に好適である。特に、着色剤として黒色物質を含む、暗色系の色を呈する着色成形品に対してレーザーマーキングを行うと、鮮明な文字、記号、絵等を得ることができる。
また、本発明の成形品は、レーザーマーキングされることとなる、車両、船舶、電子機器、家電製品、建材等の部材や、日用雑貨、スポーツ用品、文具等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂と、
〔B〕重合性不飽和単量体を重合して得られた重合体(但し、上記ゴム強化樹脂〔A〕を除く)であって、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位(b1)を有する(共)重合体を含む重合体と、
〔C〕脂肪族ポリエステル系樹脂と、
を含有する熱可塑性樹脂組成物において、
(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕、上記重合体〔B〕及び上記脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、15〜85質量%であることを特徴とするレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
上記ゴム強化樹脂〔A〕の含有量及び上記重合体〔B〕の含有量の合計量、並びに、上記脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の含有量、の割合が、該ゴム強化樹脂〔A〕、該重合体〔B〕及び該脂肪族ポリエステル系樹脂〔C〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、20〜90質量%及び10〜80質量%である請求項1に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
上記ゴム強化樹脂〔A〕の含有量及び上記重合体〔B〕の含有量の割合が、該ゴム強化樹脂〔A〕及び該重合体〔B〕の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜95質量%及び5〜95質量%である請求項1又は2に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
上記重合体〔B〕に含まれる上記構造単位(b1)の含有量が、該重合体〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量を100質量%とした場合に、55〜100質量%である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
上記重合体〔B〕が、上記構造単位(b1)の含有量が80〜100質量%である(共)重合体(B1)と、上記構造単位(b1)の含有量が20質量%以下である共重合体(B2)とからなり、
上記(共)重合体(B1)及び上記共重合体(B2)の含有割合が、該(共)重合体(B1)及び該共重合体(B2)の合計量を100質量%とした場合に、それぞれ、55〜95質量%及び5〜45質量%であり、
上記(共)重合体(B1)を構成する上記構造単位(b1)の含有量、及び、上記共重合体(B2)を構成する上記構造単位(b1)の含有量の合計量が、上記重合体〔B〕を構成する全ての構造単位の合計量を100質量%とした場合に、55〜95質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
上記ゴム強化樹脂〔A〕が、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた樹脂であり、上記ゴム強化樹脂〔A〕を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量が20質量%未満である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
上記ゴム強化樹脂〔A〕が、ジエン系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた樹脂であり、上記ゴム強化樹脂〔A〕を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量が20〜80質量%である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、黒色物質〔D〕を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
【請求項10】
請求項9に記載の成形品の表面に、レーザーマーキングされてなることを特徴とする物品。

【公開番号】特開2012−102271(P2012−102271A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253238(P2010−253238)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】