説明

レーザー加工装置

【課題】不活性ガスを用いることなく、プラズマプルームのレーザー光に対する影響を除くと共に、レーザー光照射部の酸化防止が可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】レーザーノズル1の外筒部1bには、内部が環状吸引路5aとなっている環状吸引部5が連結されている。環状吸引路5aと、外筒部1bの内部空間とは、外筒部1bに設けられた複数箇所(本実施形態では4箇所)の連通孔7により連通している。真空ポンプ9により吸引される時、空気8が、先端1eとワーク12との間を中心方向に向かうと共に開口部1dに流れ込む。この時、照射部11及びその近傍に負圧部10が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を照射して、ワークの溶断或いは溶接等の加工を行うレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザー光の照射により、ワークの溶断或いは溶接等を行うレーザー加工においては、良好な加工を行うために解決すべき課題が種々存在する。例えば、レーザー光照射部から発生する、プラズマプルームと称される、一部イオン化したプラズマを含む金属蒸気に関るものがある。プラズマプルームは、レーザー光を吸収したり屈折させたりする。このため、プラズマプルームにより、レーザー光エネルギーの有効活用が妨げられてロスが生じ、レーザー加工装置の加工能力が低下することになる。従って、レーザー加工において発生するプラズマプルームは、その量を減じられたり、除去されたりすることが好ましい。
【0003】
また、酸化により、レーザー光照射部における見栄えの劣化や材質劣化がもたらされる問題があげられる。この酸化を防止するためには、レーザー光照射部の近傍において酸素を遮断したり酸素の量を減じたりする必要がある。このため、レーザー光照射部に不活性ガスを供給することが、種々方法により行われている。この不活性ガスの供給は、レーザー光照射部から発生したプラズマプルームを吹き飛ばして除去する効果を同時にもたらす。なお、不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴン・ヘリウム混合ガス、ヘリウム・窒素混合ガス、炭酸ガス、アルゴン・酸素混合ガス等があげられる。
【0004】
特許文献1に開示されているレーザー加工装置は、図9に示すように、鏡面81の反射によって集光させたレーザー光82をワーク85に照射して加工するものである。この装置においては、レーザー光82を取り囲んで環状ノズル84が設けられている。そして、この環状ノズル84よりワーク85のレーザー光照射部に向けて不活性ガス83が吹き付けられるようになっている。この不活性ガス83の吹き付けにより、プラズマプルームの発生を抑えたり除去したりすると共に、レーザー光照射部の酸化を防止している。
【0005】
特許文献2に開示されているレーザー溶接装置は、図10に示すように、レーザーノズル91内に不活性ガス93を導入する際、その不活性ガス93の導入口92をレーザーノズル91の中心に対して偏心した位置に設けている。そして、偏心した導入口92から導入されて旋回流94となった不活性ガス93をレーザー光照射部95の周囲に吹き付けて、レーザー光照射部95とその近傍を負圧とするようになっている。この負圧により、プラズマプルームはレーザー光照射部95から外方へ吸い出されるので、プラズマプルームによるレーザー光エネルギーのロスが防止される。また、大気の侵入が妨げられるのでレーザー光照射部95の酸化が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−151191号公報
【特許文献2】特開2000−317671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2における装置では、いずれも不活性ガスを用い、その不活性ガスを直接レーザー光照射部へ吹き付けたり、レーザー光照射部の周囲へ旋回流として吹き付けたりしている。このため、不活性ガスを用いるために、レーザー加工におけるコストが嵩む問題がある。また、上記の不活性ガスには、窒素等の一部を除き、大気中に不必要に放出すべきではないと思われるものが含まれるので、レーザー加工が環境問題を伴うことになる虞がある。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、不活性ガスを用いることなく、プラズマプルームのレーザー光に対する影響を除くと共に、レーザー光照射部の酸化防止が可能なレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために請求項1に記載のレーザー加工装置の発明は、ワークにレーザー光を照射して、前記ワークを加工するレーザー加工装置において、開口部から奥行方向に向かって拡径するように内部が形成されたレーザーノズルと、前記開口部から空気を吸引するための吸引手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、レーザーノズルの内部が開口部から奥行方向に拡径されていると共に、レーザーノズルの内部に空気を吸引する吸引手段が備えられている。このため、吸引手段によりレーザーノズルの内部に吸引された空気は、開口部を通過する際、その開口部により絞られるため、流速が最も速くなる。すると、高速の空気流により開口部とワークとの間に負圧部が生じるので、その負圧部における酸素を含む空気が希薄となり、ワークのレーザー光照射部の酸化が防止される。また、レーザー光照射部において発生したプラズマプルームは、空気流により吸い出されて除去されるので、レーザー光エネルギーのロスが防止される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザー加工装置において、前記吸引手段が、外側から中心側へ向かう空気流を、前記レーザーノズルの先端と前記ワークとの間に生じさせることにより、前記レーザー光が照射される照射部及びその近傍に負圧部が生成されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザー加工装置において、前記レーザーノズルには、環状ノズル部が備えられていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置において、前記レーザーノズルには、外方へ延在したフランジ部が備えられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置において、前記レーザーノズルには、前記空気流を旋回させるための旋回手段が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザーノズル内に吸引される高速の空気流により、開口部とワークとの間に生成させた負圧部において、酸素量を少なくすることができる。このため、不活性ガスを用いることなく、レーザー光照射部におけるワークの酸化防止が可能なレーザー加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のレーザーノズルを示す断面図。
【図2】図1におけるA−A矢視断面図。
【図3】第2実施形態のレーザーノズルを示す断面図。
【図4】図3におけるB−B矢視断面図。
【図5】第3実施形態のレーザーノズルを示す断面図。
【図6】図5におけるC−C矢視断面図。
【図7】第4実施形態におけるレーザーノズルを示す、(a)は一部断面図、(b)は(a)におけるD−D矢視図。
【図8】第5実施形態におけるレーザーノズルを示す、(a)は一部断面図、(b)は(a)におけるE−E矢視図。
【図9】従来技術のレーザー加工装置を示す断面図。
【図10】他の従来技術のレーザーノズルを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザー加工装置のレーザーノズル1は、レンズ4を有するホルダ部1aと、そのホルダ部1aの下端に連結する外筒部1bとを備えている。外筒部1bは、その先端1eの開口部1dからホルダ部1a側に向かって、即ち奥行方向に向かって拡径する筒状体である。
【0017】
図1及び図2に示すように、外筒部1bには、内部が環状吸引路5aとなっている環状吸引部5が連結され、その環状吸引部5と、吸引手段としての真空ポンプ9とが、内部に吸引路6aを有する吸引部6を介して、連通している。吸引部6は、図2に示すように、外筒部1bの中心を指向するように配置されている。そして、吸引部6と真空ポンプ9との間には、真空ポンプ9の作動に際して開閉されるバルブ9aが設けられている。また、環状吸引路5aと、外筒部1bの内部空間とは、外筒部1bに設けられた複数箇所(本実施形態では4箇所)の連通孔7により連通している。そして、レーザー発振器2から出力されたレーザー光3は、レンズ4により集束されて、外筒部1b先端の開口部1dを通って、ワーク12の照射部11に照射されるようになっている。
【0018】
次に、レーザーノズル1を用いたワーク12のレーザー加工について説明する。
先ず、レーザー発振器2からレーザー光3を出力する前に、レーザーノズル1の先端1eとワーク12との間の隙間が、レーザーノズル1の上下動により、所定の間隔となるように調整される。そして、バルブ9a開のもとに、真空ポンプ9が作動されて、開口部1dを介して吸引された空気8は、外筒部1bの内壁面1cに沿って流れて、連通孔7から環状吸引路5a内に流入する。環状吸引部5内に流入した空気8は、吸引路6a及びバルブ9aを介して真空ポンプ9に吸引される。その後、レーザー発振器2から出力されたレーザー光3によりワーク12が加工される。
【0019】
上記のようにして行われるレーザー加工において、レーザーノズル1の先端1eとワーク12との間の前記隙間が所定間隔に調整されていれば、開口部1dから吸引される空気8は、この隙間において高速流となる。また、この高速流の空気8は、外側から中心側へ向かうように流れて、開口部1dにより絞られるため、高速流に囲まれた領域である照射部11及びその近傍には、負圧部10が生成される。
【0020】
この負圧部10は、空気8の流れが速ければ速いほど、真空状態に近くなる。そして、負圧部10では空気8が希薄となるため、照射部11においてワーク12を酸化させる酸素の量も少なくなる。従って、不活性ガスを用いないにも関らず、照射部11におけるワーク12の酸化が防止される。また、照射部11において発生したプラズマプルームは、空気8の高速流に吸い出されるので、負圧部10に留まったり、レーザー光3の光路に漂ったりすることがない。即ち、プラズマプルームは、空気8の高速流に吸い出された後、内壁面1cに沿って流れる空気8と共に、環状吸引路5a及び吸引路6aを介して真空ポンプ9に至る。このため、レーザー光3のエネルギーは、プラズマプルームに吸収されたり屈折されたりせずに、レーザー加工に有効に費やされる。更に、図示しないフィルターを真空ポンプ9に至る途中の空気8の流路に配置すれば、プラズマプルームは、大気中に放出されずに捕捉されるので、環境問題を起こす虞がない。
【0021】
なお、上記実施形態では、連通孔7を4箇所に設けたが、連通孔7を設ける箇所は4箇所に限らない。連通孔7は、4箇所以外の複数箇所に設けることが好ましいが、1箇所とすることもできる。また、環状吸引路5aと外筒部1bの内部空間とが、外筒部1bに設けた図示しない環状スリットにより連通されるようにしてもよい。この場合、前記環状スリットで分断された外筒部1bは環状吸引部5により連結されることになる。
【0022】
また、吸引手段としては真空ポンプ9に限らず、ブロアーを用いるようにしても良い。ブロアーの選定により、レーザーノズル1の先端1eとワーク12との間の隙間が比較的広い場合であっても、より高速で空気8を吸引することが可能となる。
【0023】
従って、上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、レーザーノズル1の外筒部1bを、その先端1eの開口部1dから奥行方向に向かって拡径する筒状体として、レーザーノズル1内に吸引される空気8の流れが、開口部1dにおいて絞られるようにした。この絞られた開口部1dにより、また、外筒部1bの先端1eとワーク12との間の隙間を所定間隔とすることにより、その隙間を流れる空気8が高速流となるようにした。この空気8の高速流により、ワーク12の照射部11及びその近傍には負圧部10が生成される。このため、負圧部10の酸素濃度が希薄となるため、不活性ガスを用いることなく、照射部11における酸化を防止することができる。また、照射部11から発生したプラズマプルームは、負圧部10から空気8に吸い出される。このため、レーザー光3のエネルギーを、レーザー加工に有効に費やすことができる。
【0024】
(2)上記実施形態では、外筒部1bに環状吸引部5を連結して、その環状吸引部5と真空ポンプ9とが、吸引部6を介して連通するようにした。また、環状吸引部5の環状吸引路5aと、外筒部1bの内部空間とを、外筒部1bに設けられた複数箇所の連通孔7により連通するようにした。このため、外筒部1bの開口部1dから吸引された空気8は、内壁面1cに沿って流れるので、空気8に吸い出されたプラズマプルームが外筒部1bの内部空間に漂うことを防止することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図3及び図4を用いて説明する。
【0026】
本実施形態のレーザー加工装置のレーザーノズル20においては、外筒部1bの内部空間と真空ポンプ9とは、内部に吸引路61aを有する吸引部61を介して連通している。この吸引部61は、図4に示すように、吸引路61aが外筒部1bの内壁面1cの接線方向に沿うように配置されている。換言すれば、吸引部61は、外筒部1bの中心に対して偏心して配置されている。この偏心配置された吸引路61aを有する吸引部61が、本実施形態における旋回手段となる。
【0027】
そして、真空ポンプ9の作動により開口部1dから吸引される空気8は、外筒部1b内部を通過して、偏心配置された吸引路61aの連通孔71から吸引されるので、空気8の流れは、内壁面1cに沿うようにして流れる旋回流80となる。このため、外筒部1bの先端1eと12との間の隙間を流れる空気8も旋回しながら開口部1d内に流入するようになる。従って、高速であると共に旋回して流れる空気8により、照射部11及びその近傍には、より確実に負圧部10が生成される。この負圧部10は、旋回流80となった空気8の高速流により、その負圧度合いが高められる。
【0028】
従って、この負圧部10により、照射部11における酸化がより効率的に防止される。また、プラズマプルームは、旋回流80となった空気8に容易に吸い出されるので、レーザー加工がより効率的に行われる。
【0029】
なお、上記実施形態では、偏心した吸引路61aへの連通孔71を1箇所に設けるようにしたが、吸引路61aと共に連通孔71を、同一高さ或いは異なる高さの位置の複数箇所に設けるようにしてもよい。この複数箇所の連通孔71は、より高速の旋回流80が生じるように配置されることが望ましい。
【0030】
そして、この第2実施形態においては、第1実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(3)上記実施形態では、外筒部1bの中心に対して偏心した位置に吸引部61を配置して、真空ポンプ9により吸引された空気8が、外筒部1bの内壁面1cに沿った旋回流80となるようにした。このため、レーザーノズル1の先端1eとワーク12との間の隙間を流れる空気8は、高速流且つ旋回流となる。従って、負圧度合いが高い負圧部10が生成されるので、照射部11における酸化を、より効率的に防止することができる。また、プラズマプルームを容易に吸い出すことができるので、レーザー加工を、より効率的に行うことができる。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を、第1、2実施形態と異なる部分を中心に図5及び図6を用いて説明する。
【0032】
本実施形態のレーザー加工装置のレーザーノズル30においては、外筒部30bの内側に内筒部31が配置され、外筒部30bの内壁面30cと内筒部31の外壁面31aとの間に空気8が流通する流通路32が設けられている。この流通路32が、環状ノズル部を構成している。流通路32と真空ポンプ9とは、内部に吸引路61aを有する吸引部61を介して連通している。この吸引部61は、図6に示すように、吸引路61aが外筒部30bの内壁面30cの接線方向に沿うように配置されている。換言すれば、第2実施形態と同様に、吸引部61は、外筒部30bの中心に対して偏心して配置されている。また、同様に、この吸引部61が旋回手段となる。
【0033】
そして、真空ポンプ9の作動により開口部1dから吸引される空気8は、流通路32を通過して、偏心配置された吸引路61aの連通孔71から吸引されるので、空気8の流れは、流通路32内において旋回流80となる。本実施形態の旋回流80は、内壁面30cと外壁面31aとで形成された環状隙間を流れるので、より高速で且つ確実に旋回する空気8の流れにより発生する。このため、高速旋回流となって開口部30dに流れ込む空気8により、照射部11及びその近傍には、更により確実に負圧度合いが高められた負圧部10が生成される。
【0034】
なお、本実施形態においても、偏心した吸引路61aへの連通孔71を1箇所に設けるようにしたが、吸引路61aと共に連通孔71を、同一高さ或いは異なる高さの位置の複数箇所において、流通路32に臨むように設けるようにしてもよい。
【0035】
そして、この第3実施形態においては、第1、2実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(4)上記実施形態では、レーザーノズル30が、外筒部30bの内側に配置された内筒部31の外壁面31aと、外筒部30bの内壁面30cとの間に流通路32を有する環状ノズルとなるようにした。そして、偏心配置された吸引部61の連通孔71から吸引される空気8により、流通路32には、高速且つ確実に旋回する旋回流80が発生される。このため、高速旋回流となって流れる空気8により、照射部11及びその近傍には、更により確実に負圧度合いが高められた負圧部10を生成することができる。
【0036】
(第4及び第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4、5実施形態を、第1〜3実施形態と異なる部分を中心に図7及び図8を用いて説明する。
【0037】
図7に示すように、第4実施形態においては、第1実施形態のレーザーノズル1及び第2実施形態のレーザーノズル20とは異なり、その先端1e(図1、3参照)に、外方へ延在したフランジ部40が備えられている。そして、図7(b)に示すようにフランジ部40のワーク12に臨む側には、複数箇所(本実施形態では6箇所)に旋回手段としての突条部41が渦巻き状に配置されている。このため、空気8が開口部1d内に吸引される時、フランジ部40とワーク12との間の隙間を中心側へ向かって流れる空気8は、突条部41に案内されて旋回する。
【0038】
更に、レーザーノズル20においては、突条部41を有するフランジ部40が備えられた場合、偏心配置された吸引部61と渦巻状に配置された突条部41とにより、空気8は強い旋回流となる。このため、負圧度が高められた負圧部10の生成やプラズマプルームの吸出しがより効率的に行われる。
【0039】
また、図8に示すように、第5実施形態においては、第3実施形態のレーザーノズル30とは異なり、その先端30e(図5参照)には、第4実施形態と同様の突条部41を有するフランジ部40が備えられている。このため、空気8が開口部30d内に吸引される時、フランジ部40とワーク12との間の隙間を中心側へ向かって流れる空気8は、突条部41に案内されて旋回流となる。この旋回流は、流通路32内を流れる旋回流80により、加速された旋回流となるので、負圧度が高められた負圧部10の生成やプラズマプルームの吸出しがより効率的に行われる。
【0040】
なお、図7(b)及び図8(b)において、突条部41の渦巻き方向が時計方向となっているが、突条部41の渦巻き方向を半時計方向とすることもできる。いずれの場合であっても、レーザーノズル20或いはレーザーノズル30おいては、それらの吸引部61により発生される旋回流80の旋回方向と、突条部41の渦巻き方向とが一致するように、渦巻き方向が選択されることが好ましい。
【0041】
また、突条部41の配置箇所は6箇所に限らず、複数箇所であれば、空気8の流れの抵抗とならない範囲において、何箇所であってもよい。
(5)上記実施形態では、レーザーノズル1、20、30の先端に、外方へ延在したフランジ部40が備えられるようにした。そして、フランジ部40のワーク12に臨む側には、複数箇所に旋回手段としての突条部41を渦巻き状に配置するようにした。このため、空気8が開口部1d、30d内に吸引される時、フランジ部40とワーク12との間の隙間を中心側へ向かって流れる空気8は、突条部41に案内されて旋回流となる。従って、フランジ部40に渦巻状に配置された突条部41を設ける簡単な構成で旋回流を発生させることができる。
【0042】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 第1実施形態では、吸引部6を1箇所に設けたが、複数箇所に設けること。
・ 第2実施形態では、吸引路61aを外筒部1bの内壁面1cの接線方向に沿うように配置したが、接線方向に沿う位置と、外筒部1bの中心を指向する位置との間で、外筒部1bの中心に対して偏心した位置に配置すること。
・ 第3実施形態では、吸引路61aを外筒部30bの内壁面30cの接線方向に沿うように配置したが、接線方向に沿う位置と、外筒部30bの中心を指向する位置との間で、外筒部30bの中心に対して偏心した位置に配置すること。
・ 第4、5実施形態では、突条部41を直線状としたが、突条部41を渦巻き方向に沿った曲線状とすること。
【符号の説明】
【0043】
1,20,30…レーザーノズル、1d,30d…開口部、3…レーザー光、8…空気、10…負圧部、11…照射部、12…ワーク、40…フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにレーザー光を照射して、前記ワークを加工するレーザー加工装置において、開口部から奥行方向に向かって拡径するように内部が形成されたレーザーノズルと、前記開口部から空気を吸引するための吸引手段とを備えたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、外側から中心側へ向かう空気流を、前記レーザーノズルの先端と前記ワークとの間に生じさせることにより、前記レーザー光が照射される照射部及びその近傍に負圧部が生成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記レーザーノズルには、環状ノズル部が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記レーザーノズルには、外方へ延在したフランジ部が備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記レーザーノズルには、前記空気流を旋回させるための旋回手段が備えられていることを特徴とする請求項2ないし4のうちいずれか一項に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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