レーザー加工装置
【課題】加工幅を任意に調整可能にすることにより、1回の加工工程により任意の加工幅を有するレーザー加工溝を形成することができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】チャックテーブル36に保持された被加工物100にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、チャックテーブルとレーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、X軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段とを具備するレーザー加工装置であって、レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、発振されたレーザー光線を集光する集光器7とを具備し、集光器は集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度θを調整する加工幅調整手段とを具備している。
【解決手段】チャックテーブル36に保持された被加工物100にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、チャックテーブルとレーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、X軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段とを具備するレーザー加工装置であって、レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、発振されたレーザー光線を集光する集光器7とを具備し、集光器は集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度θを調整する加工幅調整手段とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を照射して形成するレーザー加工溝の加工幅を任意に調整することができるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画されており、このストリートに沿って分割することによって個々のデバイスを製造している。
【0003】
このような半導体ウエーハのストリートに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定され厚みが20μm程度に形成されている。
【0004】
近時においては、IC、LSI等の半導体チップの処理能力を向上するために、シリコン等の半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)と回路を形成する機能膜が積層された積層体によって半導体チップを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0005】
上述したLow−k膜はシリコン等の半導体基板の素材と異なるため、切削ブレードによって同時に切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達し半導体チップに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断し、この2条のレーザー加工溝の外側間に切削ブレードを位置付けて切削ブレードと半導体ウエーハを相対移動することにより、半導体ウエーハをストリートに沿って切断するウエーハの分割方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−64231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上述した半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、レーザー光線の集光スポットをストリートの両側に位置付けてレーザー加工溝を形成しなければならず、生産性が悪いという問題がある。また、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、2条のレーザー加工溝に挟まれたストリートの中央部に積層体が残存するため、切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題もある。更に、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、ストリートの幅が30〜100μmとウエーハによって異なることから、形成すべきレーザー加工溝の間隔をその都度調整しなければならず、生産性が更に悪化する。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、加工幅を任意に調整可能にすることにより、1回の加工工程により任意の加工幅を有するレーザー加工溝を形成することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工装置においては、チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、集光器が集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備しているので、楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整することにより、加工幅を任意に調整可能となり、1回の加工工程により任意の加工幅を有するレーザー加工溝を形成することができる。従って、例えば半導体ウエーハのストリートに沿って半導体基板の表面に積層された積層体を除去するためにレーザー加工溝を形成する場合、中央部に積層体を残存させることなく所望の加工幅に形成することができるので、半導体ウエーハをレーザー加工溝に沿って切削ブレードにより切削する際に切削ブレードの直進性が維持される。従って、中央部に積層体が残存することにより切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題を未然に防止することができる。また、ウエーハに形成されるストリートの幅が30〜100μmと異なっていても、集光器から照射されるレーザー光線の楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整することによりレーザー加工溝の加工幅を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図3】図2に示すレーザー光線照射手段を構成する第1の実施形態における集光器を備えた加工ヘッドの説明図。
【図4】図3に示す加工ヘッドの斜視図。
【図5】図3に示す加工ヘッドの集光器を構成するシリンドリカルレンズユニットの斜視図。
【図6】図5に示すシリンドリカルレンズユニットの構成部材を分解して示す斜視図。
【図7】図5に示すシリンドリカルレンズユニットを構成するシリンドリカルレンズを保持したレンズ保持部材の断面図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置に装備され集光レンズとシリンドリカルレンズユニットとの間隔を調整する間隔調整機構の斜視図。
【図9】図8に示す間隔調整機構にシリンドリカルレンズユニットをセットした状態を示す斜視図。
【図10】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段の構成ブロック図。
【図11】集光レンズと凸レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図12】集光レンズと凸レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図13】集光レンズと凹レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図14】図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニットを構成する加工幅調整手段によって楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動し、長軸をX軸方向に対する角度調整した状態を示す説明図。
【図15】図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニットを構成する加工幅調整手段のパルスモータに印加する駆動パルス数と楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度θとの関係を示す制御マップ。
【図16】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
【図17】図16に示す半導体ウエーハを環状のフレームFに装着された保護テープに貼着した状態を示す斜視図。
【図18】図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成された加工装置としてのレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。また、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一方の側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0023】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング521を具備している。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段522および出力調整手段523と、ケーシング521の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段522によって発振されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する加工ヘッド6を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。出力調整手段523は、パルスレーザー光線発振手段522から発振されたパルスレーザー光線の出力を調整する。
【0024】
上記加工ヘッド6は、図3に示すように方向変換ミラー61と、集光器7とからなっている。方向変換ミラー61は、上記パルスレーザー光線発振手段522によって発振され出力調整手段523を介して照射されたパルスレーザー光線を集光器7に向けて方向変換する。集光器7は、図示の第1の実施形態においては上記チャックテーブル36に保持された被加工物と対向する集光レンズ8と、該集光レンズ8よりレーザー光線照射方向上流側、即ち集光レンズ8と方向変換ミラー61との間に配設されたシリンドリカルレンズユニット9と、集光レンズ8とシリンドリカルレンズユニット9との間隔を調整するための後述する間隔調整機構とを具備している。上記方向変換ミラー61とシリンドリカルレンズユニット9および後述する間隔調整機構は、図4に示すように上記ケーシング521の先端に装着された加工ヘッドハウジング60内に配設されている。また、上記集光レンズ8は、加工ヘッドハウジング60の下端に装着されるレンズハウジング80内に配設されている。この集光レンズ8は、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。なお、上記集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91および間隔調整機構10は、後述するように集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段として機能する。
【0025】
上記シリンドリカルレンズユニット9について、図5乃至図7を参照して説明する。図5にはシリンドリカルレンズユニット9の斜視図が示されており、図6には図5に示すシリンドリカルレンズユニット9の分解斜視図が示されている。
図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニット9は、シリンドリカルレンズ91と、該シリンドリカルレンズを保持するレンズ保持部材92と、該レンズ保持部材92を保持する枠体93とを具備している。
【0026】
シリンドリカルレンズ91は、図7に示すように断面が半円形状に形成された凸レンズからなっている。このシリンドリカルレンズ91は、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。シリンドリカルレンズ91を保持するレンズ保持部材92は、図示の実施形態においては合成樹脂によって円形に形成されている。このレンズ保持部材92は、レンズ保持部921と、該レンズ保持部921の下面中心部から突出して形成された回動軸部922とからなっている。レンズ保持部921にはレンズ嵌合穴921aが設けられており、このレンズ嵌合穴921aにシリンドリカルレンズ91が嵌合して保持される。回動軸部922には、レンズ保持部921に設けられたレンズ嵌合穴921aと連通するレーザー光線挿通穴922aが軸方向に貫通して形成されている。
【0027】
上記レンズ保持部材92を保持する枠体93は、図6に示すように矩形状に形成されており、その上面には上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921が配置される凹部931が形成されている。また、凹部931の底壁931aには、上記レンズ保持部材92の回動軸部922を回動可能に嵌合する軸穴931bが設けられている。このように構成された枠体93の凹部931に上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921を配置し、軸穴931bに回動軸部922を嵌合することにより、レンズ保持部921はシリンドリカルレンズ91を通るレーザー光線の光軸を中心として回動可能に装着される。
【0028】
図示の実施形態におけるシリンドリカルレンズユニット9は、上記レンズ保持部材92を回動軸部922を中心として回動し楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段94を具備している。加工幅調整手段94は、図示の実施形態においてはパルスモータ941と無端ベルト942とからなっている。パルスモータ941は上記枠体93の下面に装着され、その駆動軸941aが凹部931内に突出して配設される。駆動軸941aにはプーリー943が装着され、このプーリー943と上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921の外周に無端ベルト942が掛け回される。従って、パルスモータ941に駆動パルスを印加することにより、プーリー943および無端ベルト942を介してレンズ保持部材92が回動軸部922を中心として所定方向に回動せしめられる。この加工幅調整手段94は、後述するように集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91および間隔調整機構10とからなる楕円スポット形成手段によって形成される楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動し楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する。
【0029】
以上のように構成されたシリンドリカルレンズユニット9は、図8に示す間隔調整機構10にセットされる。以下、間隔調整機構10について説明する。
図8に示す間隔調整機構10は、支持基板11と、該支持基板11の下端に設けられた集光レンズ支持板12と、該支持基板11の前面に沿って上下方向に移動可能に配設された支持テーブル13とを具備している。
【0030】
支持基板11は、前面中央部に上下方向に形成された案内溝111を備えている。この支持基板11の側面中間部には、第1の調整板112が固定されている。集光レンズ支持板12は、支持基板11の前面に対して直角に突出して形成されている。この集光レンズ支持板12には、中央部に穴121が形成されている。このように構成された集光レンズ支持板12の下面における穴121と対応する位置に集光レンズ8が配設されたレンズハウジング80が装着される。
【0031】
上記支持テーブル13は、支持部14と、該支持部14の下端に設けられたテーブル部15とからなっている。支持部14は、後面に上記支持基板11に形成された案内溝111に嵌合する被案内レール141が形成されている。この被案内レール141が案内溝111に嵌合することにより、支持テーブル13は支持基板11に案内溝111に沿って上下方向に移動可能に支持される。なお、支持部14の上端には、上記第1の調整板112の上方に位置する第2の調整板142が固定されている。上記テーブル部15は、支持部14の前面に対して直角に突出して形成されている。このテーブル部15には、中央部にレーザー光線が通過する穴151が形成されているとともに、上記加工幅調整手段94のパルスモータ941が挿通する穴152が設けられている。また、テーブル部15の両側端には支持基板11の前面に対して直角に延びる位置決めレール153、154が形成されている。この位置決めレール153、154の間隔は、上記シリンドリカルレンズユニット9を構成する枠体93の幅方向寸法に対応した寸法に設定されている。
【0032】
上記第2の調整板142には調整ネジ手段16が配設されている。この調整ネジ手段16は、第2の調整板142に装着された支持筒161と、該支持筒161に進退可能に配設された計測ロッド162と、該計測ロッド162を進退せしめる調整ダイアル163とからなっており、マイクロメーターと同様の機構に構成されている。このように構成された調整ネジ手段16は、計測ロッド162の先端(下端)が上記第1の調整板112の上面に当接することにより支持テーブル13を構成する支持部14の上下方向位置を規制する。従って、調整ダイアル163を一方向または他方向に回動して計測ロッド162を進退させることにより支持部14の上下方向位置即ち支持部14の下端に設けられたテーブル部15と集光レンズ支持板12との間隔を変更することができる。このとき、支持筒161および調整ダイアル163に形成された目盛りに基いて計測ロッド162の進退量を調整することにより、支持テーブル13のテーブル部15と集光レンズ支持板12との間隔を適宜調整することができる。
【0033】
以上のように構成された間隔調整機構10の支持テーブル13を構成するテーブル部15には、図9に示すように上記シリンドリカルレンズユニット9がセットされる。即ち、シリンドリカルレンズユニット9の枠体93を支持テーブル13を構成するテーブル部15における位置決めレール153、154の間に載置する。なお、支持テーブル13のテーブル部15上の所定位置に載置されたシリンドリカルレンズユニット9は、図示しない適宜の固定手段によって支持テーブル13のテーブル部15に固定される。
【0034】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段17が配設されている。この撮像手段17は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0035】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図10に示す制御手段20を具備している。制御手段20は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206とを備えている。制御手段20の入力インターフェース205には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、撮像手段17、入力手段210等からの検出信号が入力される。そして、制御手段20の出力インターフェース206からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52、パルスモータ941等に制御信号を出力する。
【0036】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述したレーザー光線照射手段52によって照射されるレーザー光線の集光スポット形状について、図11および図12を参照して説明する。
先ず、図11の(a)および11の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)と同一の40mmに設定した場合について説明する。この場合、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図11の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0037】
一方、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってX方向が集光される。即ち、シリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)が40mmに設定されているので、図11の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってレーザー光線L がX方向に集光される集光点P2は集光レンズ8の中心位置となる。このようにして集光レンズ8の中心位置で集光されたレーザー光線Lは、集光レンズ8の下面に向けて広がり、集光レンズ8の下面から上記集光点P1で再度集光される。集光された状態で集光レンズ8を通過する。このように、シリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)と同一にすると、シリンドリカルレンズ91に入射された断面が円形のレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によって矢印X方向が集光され、集光レンズ8によって矢印Y方向が集光されるので、集光点P1において図11の(c)に拡大して示すように断面が円形の集光スポットS1が形成される。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が円形の集光スポットS1によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0038】
次に、図12の(a)および12の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)の半分の20mmに設定した場合について説明する。この場合もレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図12の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0039】
一方、シリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)が40mmに設定されているので、図12の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってX方向に集光されるレーザー光線Lは集光される途中で集光レンズ8に入光し、集光レンズ8によって更に集光され集光点P3で集光された後被加工物に達するまで矢印Xで示す方向に広げられる。この結果、集光点P1の位置においては、図12の(c)に拡大して示すように断面が楕円形の集光スポットS2が形成される。この楕円形の集光スポットS2は、長軸D1が矢印Xで示す方向に向けて形成される。なお、楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0040】
次に、上記シリンドリカルレンズユニット9を構成するシリンドリカルレンズ91が凹レンズによって形成されている場合について、図13を参照して説明する。なお、凹レンズからなるシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)を−40mmに設定し、シリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)を20mmに設定した場合について説明する。
この場合もレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図13の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0041】
一方、凹レンズからなるシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)が−40mmに設定されているので、図13の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってX方向に拡散されるレーザー光線Lは集光レンズ8によって集光されるが、シリンドリカルレンズ91によってX方向に拡散されているので集光レンズ8による集光途中で集光レンズ8の焦点距離(f1)である上記集光点(P1)に達する。この結果、集光レンズ8の焦点距離(f1)である集光点(P1)の位置においては、図13の(c)に拡大して示すように断面が楕円形の集光スポットS2が形成される。この楕円形の集光スポットS2は、長軸D1が矢印Xで示す方向に向けて形成される。なお、楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0042】
以上のように、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を調整する間隔調整機構10は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段として機能する。そして、上記レンズ保持部材92を回動軸部922を中心として回動せしめる加工幅調整手段94は、断面が楕円形の集光スポットS2を光軸を中心として回動し、長軸D1のX軸方向に対する角度を調整する。即ち、図14の(a)に示すように楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向に合わせると加工幅は短軸D2の幅となり、図14の(b)に示すように図14の(a)に示す状態から90度回動して楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向と直交する方向(Y軸方向)に合わせると加工幅は長軸D1の長さとなる。そして、図14の(c)に示すように楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向に対して角度θをもって位置付けると加工幅はD1sinθとなる。このように楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度を調整することにより加工幅を調整するために、加工幅調整手段94のパルスモータ941に印加する駆動パルス数と楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θとの関係が図15に示す制御マップのように設定されている。図15に示す制御マップは、横軸が駆動パルス数で縦軸が楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを示しており、制御手段20のランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。
【0043】
次に、上述した図1に示すレーザー加工装置において図12および図13に示すように楕円形の集光スポットS2を用いて、被加工物にレーザー加工溝を形成する加工方法について説明する。
図16(a)には被加工物としての半導体ウエーハの斜視図が示されており、図16(b)には図16(a)に示す半導体ウエーハの要部拡大断面図が示されている。図16(a)および図16(b)に示す半導体ウエーハ100は、シリコン等の半導体基板101の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体102によって複数のIC、LSI等のデバイス103がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス103は、格子状に形成されたストリート104によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、積層体102を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。
【0044】
上述した半導体ウエーハ100にストリート104に沿ってレーザー加工溝を形成して積層体102を除去するには、半導体ウエーハ100を図17に示すように環状のフレームFに装着された保護テープTに貼着する。このとき、半導体ウエーハ100は、表面100aを上にして裏面側を保護テープTに貼着する。
【0045】
なお、半導体ウエーハ100にストリート104に沿ってレーザー加工溝を形成して積層体102を除去するには、積層体102を除去するレーザー加工溝の溝幅を設定するために、オペレータは入力手段210から上記楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを入力する。このように、楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θが入力されると、制御手段20はランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納された図15に示す制御マップを参照して加工幅調整手段94のパルスモータ941に印加する駆動パルス数を決定し、パルスモータ941に駆動パルス制御信号を出力する。この結果、上述したようにパルスモータ941の駆動軸941aに装着されたプーリー943および無端ベルト942を介してレンズ保持部材92が回動軸部922を中心として回動せしめられ、楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θとなるように調整される。
【0046】
図17に示すように、環状のフレームFに保護テープTを介して支持された半導体ウエーハ100は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ100は、保護テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレームFは、クランプ362によって固定される。このように半導体ウエーハ100を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段17の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段17の直下に位置付けられると、撮像手段17および制御手段20によって半導体ウエーハ100のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段17および制御手段20は、半導体ウエーハ100の所定方向に形成されているストリート104と、ストリート104に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ100に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート104に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0047】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ100に形成されているストリート104を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図18の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート104を集光器7の直下に位置付ける。次に、集光器7からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図18の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で加工送りする。このようにして集光器7から照射されるパルスレーザー光線は、図18の(b)で示すようにX軸方向に延びる所定のストリート104上において楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θを有している。このようにして集光器7からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を加工送りし、図18の(c)で示すように集光器7から照射されるレーザー光線の照射位置にストリート104の他端(図18において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図18の(c)および図18の(d)に示すように半導体ウエーハ100のストリート104に沿って半導体基板101の表面に積層された積層体102が除去されたレーザー加工溝105が形成される(レーザー加工溝形成工程)。このようにして形成されたレーザー加工溝105は、集光器7から照射されるパルスレーザー光線の楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θを有しているので、1回の加工で後述する切削ブレードの切れ刃の厚みより広い必要な加工幅が得られる。
【0048】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :10kHz
平均出力 :7W
スポット形状 :短軸(10μm)長軸(100μm)の楕円形
加工送り速度 :100mm/秒
【0049】
上述したようにして半導体ウエーハ100の所定方向に延在する全てのストリート104についてレーザー加工溝形成工程を実施したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート104に沿って上記レーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ100に形成されている全てのストリート104に沿って積層体102を除去したレーザー加工溝105を形成することができる。
【0050】
以上のようにして半導体ウエーハ100に形成されている全てのストリート104に沿って積層体102を除去したレーザー加工溝105を形成したならば、半導体ウエーハ100はストリート104に形成されたレーザー加工溝105に沿って切断し、個々のデバイスに分割する切削工程に搬送される。この切削工程は、厚みが20μm程度の切れ刃を有する切削ブレードを備えた切削装置によって実施されるが、レーザー加工溝105の幅は切削ブレードの切れ刃の厚みより広くしかも中央部に積層体102が残存しないので、切削ブレードの直進性が維持される。従って、中央部に積層体が残存することにより切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題を未然に防止することができる。また、ウエーハに形成されるストリートの幅が30〜100μmと異なっていても、集光器7から照射されるレーザー光線の楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを調整することによりレーザー加工溝105の加工幅を容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1の割り出し送り手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
6:加工ヘッド
61:方向変換ミラー
7:集光器
8:集光レンズ
9:シリンドリカルレンズユニット
91:シリンドリカルレンズ
92:レンズ保持部材
93:枠体
94:加工幅調整手段
10:間隔調整機構
11:支持基板
12:集光レンズ支持板
13:支持テーブル
16:調整ネジ手段
100:半導体ウエーハ
101:半導体基板
102:積層体
103:デバイス
104:ストリート
105:レーザー加工溝
F:環状のフレーム
T:保護テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線を照射して形成するレーザー加工溝の加工幅を任意に調整することができるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画されており、このストリートに沿って分割することによって個々のデバイスを製造している。
【0003】
このような半導体ウエーハのストリートに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定され厚みが20μm程度に形成されている。
【0004】
近時においては、IC、LSI等の半導体チップの処理能力を向上するために、シリコン等の半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)と回路を形成する機能膜が積層された積層体によって半導体チップを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0005】
上述したLow−k膜はシリコン等の半導体基板の素材と異なるため、切削ブレードによって同時に切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達し半導体チップに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断し、この2条のレーザー加工溝の外側間に切削ブレードを位置付けて切削ブレードと半導体ウエーハを相対移動することにより、半導体ウエーハをストリートに沿って切断するウエーハの分割方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−64231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上述した半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、レーザー光線の集光スポットをストリートの両側に位置付けてレーザー加工溝を形成しなければならず、生産性が悪いという問題がある。また、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、2条のレーザー加工溝に挟まれたストリートの中央部に積層体が残存するため、切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題もある。更に、半導体ウエーハに形成されたストリートに沿って2条のレーザー加工溝を形成して積層体を分断する方法は、ストリートの幅が30〜100μmとウエーハによって異なることから、形成すべきレーザー加工溝の間隔をその都度調整しなければならず、生産性が更に悪化する。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、加工幅を任意に調整可能にすることにより、1回の加工工程により任意の加工幅を有するレーザー加工溝を形成することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工装置においては、チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、集光器が集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備しているので、楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整することにより、加工幅を任意に調整可能となり、1回の加工工程により任意の加工幅を有するレーザー加工溝を形成することができる。従って、例えば半導体ウエーハのストリートに沿って半導体基板の表面に積層された積層体を除去するためにレーザー加工溝を形成する場合、中央部に積層体を残存させることなく所望の加工幅に形成することができるので、半導体ウエーハをレーザー加工溝に沿って切削ブレードにより切削する際に切削ブレードの直進性が維持される。従って、中央部に積層体が残存することにより切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題を未然に防止することができる。また、ウエーハに形成されるストリートの幅が30〜100μmと異なっていても、集光器から照射されるレーザー光線の楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整することによりレーザー加工溝の加工幅を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図3】図2に示すレーザー光線照射手段を構成する第1の実施形態における集光器を備えた加工ヘッドの説明図。
【図4】図3に示す加工ヘッドの斜視図。
【図5】図3に示す加工ヘッドの集光器を構成するシリンドリカルレンズユニットの斜視図。
【図6】図5に示すシリンドリカルレンズユニットの構成部材を分解して示す斜視図。
【図7】図5に示すシリンドリカルレンズユニットを構成するシリンドリカルレンズを保持したレンズ保持部材の断面図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置に装備され集光レンズとシリンドリカルレンズユニットとの間隔を調整する間隔調整機構の斜視図。
【図9】図8に示す間隔調整機構にシリンドリカルレンズユニットをセットした状態を示す斜視図。
【図10】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段の構成ブロック図。
【図11】集光レンズと凸レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図12】集光レンズと凸レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図13】集光レンズと凹レンズからなるシリンドリカルレンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図14】図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニットを構成する加工幅調整手段によって楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動し、長軸をX軸方向に対する角度調整した状態を示す説明図。
【図15】図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニットを構成する加工幅調整手段のパルスモータに印加する駆動パルス数と楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度θとの関係を示す制御マップ。
【図16】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
【図17】図16に示す半導体ウエーハを環状のフレームFに装着された保護テープに貼着した状態を示す斜視図。
【図18】図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成された加工装置としてのレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出することもできる。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。また、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出することもできる。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一方の側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0023】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング521を具備している。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段522および出力調整手段523と、ケーシング521の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段522によって発振されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する加工ヘッド6を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。出力調整手段523は、パルスレーザー光線発振手段522から発振されたパルスレーザー光線の出力を調整する。
【0024】
上記加工ヘッド6は、図3に示すように方向変換ミラー61と、集光器7とからなっている。方向変換ミラー61は、上記パルスレーザー光線発振手段522によって発振され出力調整手段523を介して照射されたパルスレーザー光線を集光器7に向けて方向変換する。集光器7は、図示の第1の実施形態においては上記チャックテーブル36に保持された被加工物と対向する集光レンズ8と、該集光レンズ8よりレーザー光線照射方向上流側、即ち集光レンズ8と方向変換ミラー61との間に配設されたシリンドリカルレンズユニット9と、集光レンズ8とシリンドリカルレンズユニット9との間隔を調整するための後述する間隔調整機構とを具備している。上記方向変換ミラー61とシリンドリカルレンズユニット9および後述する間隔調整機構は、図4に示すように上記ケーシング521の先端に装着された加工ヘッドハウジング60内に配設されている。また、上記集光レンズ8は、加工ヘッドハウジング60の下端に装着されるレンズハウジング80内に配設されている。この集光レンズ8は、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。なお、上記集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91および間隔調整機構10は、後述するように集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段として機能する。
【0025】
上記シリンドリカルレンズユニット9について、図5乃至図7を参照して説明する。図5にはシリンドリカルレンズユニット9の斜視図が示されており、図6には図5に示すシリンドリカルレンズユニット9の分解斜視図が示されている。
図5および図6に示すシリンドリカルレンズユニット9は、シリンドリカルレンズ91と、該シリンドリカルレンズを保持するレンズ保持部材92と、該レンズ保持部材92を保持する枠体93とを具備している。
【0026】
シリンドリカルレンズ91は、図7に示すように断面が半円形状に形成された凸レンズからなっている。このシリンドリカルレンズ91は、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。シリンドリカルレンズ91を保持するレンズ保持部材92は、図示の実施形態においては合成樹脂によって円形に形成されている。このレンズ保持部材92は、レンズ保持部921と、該レンズ保持部921の下面中心部から突出して形成された回動軸部922とからなっている。レンズ保持部921にはレンズ嵌合穴921aが設けられており、このレンズ嵌合穴921aにシリンドリカルレンズ91が嵌合して保持される。回動軸部922には、レンズ保持部921に設けられたレンズ嵌合穴921aと連通するレーザー光線挿通穴922aが軸方向に貫通して形成されている。
【0027】
上記レンズ保持部材92を保持する枠体93は、図6に示すように矩形状に形成されており、その上面には上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921が配置される凹部931が形成されている。また、凹部931の底壁931aには、上記レンズ保持部材92の回動軸部922を回動可能に嵌合する軸穴931bが設けられている。このように構成された枠体93の凹部931に上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921を配置し、軸穴931bに回動軸部922を嵌合することにより、レンズ保持部921はシリンドリカルレンズ91を通るレーザー光線の光軸を中心として回動可能に装着される。
【0028】
図示の実施形態におけるシリンドリカルレンズユニット9は、上記レンズ保持部材92を回動軸部922を中心として回動し楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段94を具備している。加工幅調整手段94は、図示の実施形態においてはパルスモータ941と無端ベルト942とからなっている。パルスモータ941は上記枠体93の下面に装着され、その駆動軸941aが凹部931内に突出して配設される。駆動軸941aにはプーリー943が装着され、このプーリー943と上記レンズ保持部材92のレンズ保持部921の外周に無端ベルト942が掛け回される。従って、パルスモータ941に駆動パルスを印加することにより、プーリー943および無端ベルト942を介してレンズ保持部材92が回動軸部922を中心として所定方向に回動せしめられる。この加工幅調整手段94は、後述するように集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91および間隔調整機構10とからなる楕円スポット形成手段によって形成される楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動し楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する。
【0029】
以上のように構成されたシリンドリカルレンズユニット9は、図8に示す間隔調整機構10にセットされる。以下、間隔調整機構10について説明する。
図8に示す間隔調整機構10は、支持基板11と、該支持基板11の下端に設けられた集光レンズ支持板12と、該支持基板11の前面に沿って上下方向に移動可能に配設された支持テーブル13とを具備している。
【0030】
支持基板11は、前面中央部に上下方向に形成された案内溝111を備えている。この支持基板11の側面中間部には、第1の調整板112が固定されている。集光レンズ支持板12は、支持基板11の前面に対して直角に突出して形成されている。この集光レンズ支持板12には、中央部に穴121が形成されている。このように構成された集光レンズ支持板12の下面における穴121と対応する位置に集光レンズ8が配設されたレンズハウジング80が装着される。
【0031】
上記支持テーブル13は、支持部14と、該支持部14の下端に設けられたテーブル部15とからなっている。支持部14は、後面に上記支持基板11に形成された案内溝111に嵌合する被案内レール141が形成されている。この被案内レール141が案内溝111に嵌合することにより、支持テーブル13は支持基板11に案内溝111に沿って上下方向に移動可能に支持される。なお、支持部14の上端には、上記第1の調整板112の上方に位置する第2の調整板142が固定されている。上記テーブル部15は、支持部14の前面に対して直角に突出して形成されている。このテーブル部15には、中央部にレーザー光線が通過する穴151が形成されているとともに、上記加工幅調整手段94のパルスモータ941が挿通する穴152が設けられている。また、テーブル部15の両側端には支持基板11の前面に対して直角に延びる位置決めレール153、154が形成されている。この位置決めレール153、154の間隔は、上記シリンドリカルレンズユニット9を構成する枠体93の幅方向寸法に対応した寸法に設定されている。
【0032】
上記第2の調整板142には調整ネジ手段16が配設されている。この調整ネジ手段16は、第2の調整板142に装着された支持筒161と、該支持筒161に進退可能に配設された計測ロッド162と、該計測ロッド162を進退せしめる調整ダイアル163とからなっており、マイクロメーターと同様の機構に構成されている。このように構成された調整ネジ手段16は、計測ロッド162の先端(下端)が上記第1の調整板112の上面に当接することにより支持テーブル13を構成する支持部14の上下方向位置を規制する。従って、調整ダイアル163を一方向または他方向に回動して計測ロッド162を進退させることにより支持部14の上下方向位置即ち支持部14の下端に設けられたテーブル部15と集光レンズ支持板12との間隔を変更することができる。このとき、支持筒161および調整ダイアル163に形成された目盛りに基いて計測ロッド162の進退量を調整することにより、支持テーブル13のテーブル部15と集光レンズ支持板12との間隔を適宜調整することができる。
【0033】
以上のように構成された間隔調整機構10の支持テーブル13を構成するテーブル部15には、図9に示すように上記シリンドリカルレンズユニット9がセットされる。即ち、シリンドリカルレンズユニット9の枠体93を支持テーブル13を構成するテーブル部15における位置決めレール153、154の間に載置する。なお、支持テーブル13のテーブル部15上の所定位置に載置されたシリンドリカルレンズユニット9は、図示しない適宜の固定手段によって支持テーブル13のテーブル部15に固定される。
【0034】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段17が配設されている。この撮像手段17は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0035】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図10に示す制御手段20を具備している。制御手段20は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206とを備えている。制御手段20の入力インターフェース205には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、撮像手段17、入力手段210等からの検出信号が入力される。そして、制御手段20の出力インターフェース206からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52、パルスモータ941等に制御信号を出力する。
【0036】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述したレーザー光線照射手段52によって照射されるレーザー光線の集光スポット形状について、図11および図12を参照して説明する。
先ず、図11の(a)および11の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)と同一の40mmに設定した場合について説明する。この場合、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図11の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0037】
一方、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってX方向が集光される。即ち、シリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)が40mmに設定されているので、図11の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってレーザー光線L がX方向に集光される集光点P2は集光レンズ8の中心位置となる。このようにして集光レンズ8の中心位置で集光されたレーザー光線Lは、集光レンズ8の下面に向けて広がり、集光レンズ8の下面から上記集光点P1で再度集光される。集光された状態で集光レンズ8を通過する。このように、シリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)と同一にすると、シリンドリカルレンズ91に入射された断面が円形のレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によって矢印X方向が集光され、集光レンズ8によって矢印Y方向が集光されるので、集光点P1において図11の(c)に拡大して示すように断面が円形の集光スポットS1が形成される。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が円形の集光スポットS1によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0038】
次に、図12の(a)および12の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)の半分の20mmに設定した場合について説明する。この場合もレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図12の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0039】
一方、シリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)が40mmに設定されているので、図12の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってX方向に集光されるレーザー光線Lは集光される途中で集光レンズ8に入光し、集光レンズ8によって更に集光され集光点P3で集光された後被加工物に達するまで矢印Xで示す方向に広げられる。この結果、集光点P1の位置においては、図12の(c)に拡大して示すように断面が楕円形の集光スポットS2が形成される。この楕円形の集光スポットS2は、長軸D1が矢印Xで示す方向に向けて形成される。なお、楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0040】
次に、上記シリンドリカルレンズユニット9を構成するシリンドリカルレンズ91が凹レンズによって形成されている場合について、図13を参照して説明する。なお、凹レンズからなるシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)を−40mmに設定し、シリンドリカルレンズ91と集光レンズ8の間隔(d1)を20mmに設定した場合について説明する。
この場合もレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91によってY方向は集光されず、集光レンズ8のみによってY方向に集光される。即ち、図13の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91を通過したレーザー光線Lは、集光レンズ8の焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0041】
一方、凹レンズからなるシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f2)が−40mmに設定されているので、図13の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91によってX方向に拡散されるレーザー光線Lは集光レンズ8によって集光されるが、シリンドリカルレンズ91によってX方向に拡散されているので集光レンズ8による集光途中で集光レンズ8の焦点距離(f1)である上記集光点(P1)に達する。この結果、集光レンズ8の焦点距離(f1)である集光点(P1)の位置においては、図13の(c)に拡大して示すように断面が楕円形の集光スポットS2が形成される。この楕円形の集光スポットS2は、長軸D1が矢印Xで示す方向に向けて形成される。なお、楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0042】
以上のように、集光レンズ8とシリンドリカルレンズ91との間隔(d1)を調整する間隔調整機構10は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段として機能する。そして、上記レンズ保持部材92を回動軸部922を中心として回動せしめる加工幅調整手段94は、断面が楕円形の集光スポットS2を光軸を中心として回動し、長軸D1のX軸方向に対する角度を調整する。即ち、図14の(a)に示すように楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向に合わせると加工幅は短軸D2の幅となり、図14の(b)に示すように図14の(a)に示す状態から90度回動して楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向と直交する方向(Y軸方向)に合わせると加工幅は長軸D1の長さとなる。そして、図14の(c)に示すように楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向に対して角度θをもって位置付けると加工幅はD1sinθとなる。このように楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度を調整することにより加工幅を調整するために、加工幅調整手段94のパルスモータ941に印加する駆動パルス数と楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θとの関係が図15に示す制御マップのように設定されている。図15に示す制御マップは、横軸が駆動パルス数で縦軸が楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを示しており、制御手段20のランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納されている。
【0043】
次に、上述した図1に示すレーザー加工装置において図12および図13に示すように楕円形の集光スポットS2を用いて、被加工物にレーザー加工溝を形成する加工方法について説明する。
図16(a)には被加工物としての半導体ウエーハの斜視図が示されており、図16(b)には図16(a)に示す半導体ウエーハの要部拡大断面図が示されている。図16(a)および図16(b)に示す半導体ウエーハ100は、シリコン等の半導体基板101の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体102によって複数のIC、LSI等のデバイス103がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス103は、格子状に形成されたストリート104によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、積層体102を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。
【0044】
上述した半導体ウエーハ100にストリート104に沿ってレーザー加工溝を形成して積層体102を除去するには、半導体ウエーハ100を図17に示すように環状のフレームFに装着された保護テープTに貼着する。このとき、半導体ウエーハ100は、表面100aを上にして裏面側を保護テープTに貼着する。
【0045】
なお、半導体ウエーハ100にストリート104に沿ってレーザー加工溝を形成して積層体102を除去するには、積層体102を除去するレーザー加工溝の溝幅を設定するために、オペレータは入力手段210から上記楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを入力する。このように、楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θが入力されると、制御手段20はランダムアクセスメモリ(RAM)203に格納された図15に示す制御マップを参照して加工幅調整手段94のパルスモータ941に印加する駆動パルス数を決定し、パルスモータ941に駆動パルス制御信号を出力する。この結果、上述したようにパルスモータ941の駆動軸941aに装着されたプーリー943および無端ベルト942を介してレンズ保持部材92が回動軸部922を中心として回動せしめられ、楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θとなるように調整される。
【0046】
図17に示すように、環状のフレームFに保護テープTを介して支持された半導体ウエーハ100は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ100は、保護テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレームFは、クランプ362によって固定される。このように半導体ウエーハ100を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段17の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段17の直下に位置付けられると、撮像手段17および制御手段20によって半導体ウエーハ100のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段17および制御手段20は、半導体ウエーハ100の所定方向に形成されているストリート104と、ストリート104に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ100に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート104に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0047】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ100に形成されているストリート104を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図18の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート104を集光器7の直下に位置付ける。次に、集光器7からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図18の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で加工送りする。このようにして集光器7から照射されるパルスレーザー光線は、図18の(b)で示すようにX軸方向に延びる所定のストリート104上において楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θを有している。このようにして集光器7からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を加工送りし、図18の(c)で示すように集光器7から照射されるレーザー光線の照射位置にストリート104の他端(図18において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図18の(c)および図18の(d)に示すように半導体ウエーハ100のストリート104に沿って半導体基板101の表面に積層された積層体102が除去されたレーザー加工溝105が形成される(レーザー加工溝形成工程)。このようにして形成されたレーザー加工溝105は、集光器7から照射されるパルスレーザー光線の楕円形の集光スポットS2における長軸D1がX軸方向に対して角度θを有しているので、1回の加工で後述する切削ブレードの切れ刃の厚みより広い必要な加工幅が得られる。
【0048】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :10kHz
平均出力 :7W
スポット形状 :短軸(10μm)長軸(100μm)の楕円形
加工送り速度 :100mm/秒
【0049】
上述したようにして半導体ウエーハ100の所定方向に延在する全てのストリート104についてレーザー加工溝形成工程を実施したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート104に沿って上記レーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ100に形成されている全てのストリート104に沿って積層体102を除去したレーザー加工溝105を形成することができる。
【0050】
以上のようにして半導体ウエーハ100に形成されている全てのストリート104に沿って積層体102を除去したレーザー加工溝105を形成したならば、半導体ウエーハ100はストリート104に形成されたレーザー加工溝105に沿って切断し、個々のデバイスに分割する切削工程に搬送される。この切削工程は、厚みが20μm程度の切れ刃を有する切削ブレードを備えた切削装置によって実施されるが、レーザー加工溝105の幅は切削ブレードの切れ刃の厚みより広くしかも中央部に積層体102が残存しないので、切削ブレードの直進性が維持される。従って、中央部に積層体が残存することにより切削ブレードの直進性が損なわれデバイスを損傷させるという問題を未然に防止することができる。また、ウエーハに形成されるストリートの幅が30〜100μmと異なっていても、集光器7から照射されるレーザー光線の楕円形の集光スポットS2における長軸D1のX軸方向に対する角度θを調整することによりレーザー加工溝105の加工幅を容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1の割り出し送り手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
6:加工ヘッド
61:方向変換ミラー
7:集光器
8:集光レンズ
9:シリンドリカルレンズユニット
91:シリンドリカルレンズ
92:レンズ保持部材
93:枠体
94:加工幅調整手段
10:間隔調整機構
11:支持基板
12:集光レンズ支持板
13:支持テーブル
16:調整ネジ手段
100:半導体ウエーハ
101:半導体基板
102:積層体
103:デバイス
104:ストリート
105:レーザー加工溝
F:環状のフレーム
T:保護テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、集光スポットの形状を楕円形に形成する楕円スポット形成手段と、該楕円スポット形成手段によって形成された楕円形の集光スポットにおける長軸のX軸方向に対する角度を調整する加工幅調整手段とを具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−35003(P2013−35003A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171229(P2011−171229)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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