説明

レーザー彫刻による書き込みを遮断するIDカード

本発明は、レーザー彫刻により情報を書き込むことができるIDカード用の層状構造体であって、該層状構造体は、レーザー彫刻後にカード本体へ貼り合され、レーザー彫刻による該カードへのマーキングを制限または完全に妨害する更なる層を有し、その結果として、記入された身元確認情報の改ざんを妨げる該層状構造体に関し、また、レーザー彫刻によって情報を書き込むことができる層状構造体への更なるレーザー彫刻によるマーキングを妨害する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻が終了した後にカード本体へ施され、その後、レーザー彫刻を用いて記入される識別情報を後から改ざんすることを制限するか、完全に妨害する付加的な層を有する、レーザー彫刻可能なIDカード用の層状構造体を提供し、ならびに、レーザー彫刻によりマーキングした層状構造体において、レーザー彫刻による更なる書き込みを妨害する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
レーザー彫刻によりプラスチックフィルムへ書き込みを行なうことは、複合フィルムの製造において重要な工程である。これらの複合フィルムは、例えば、パスポート、識別ドキュメント、IDカードまたはクレジットカードなどのIDドキュメントに対して重要な役割を担う。レーザー彫刻を用いて黒および白でカードを個人化すること、すなわち、文字または白黒写真を施すことは既知である。一般に、レーザー彫刻による個人化は、特に、その高い耐偽造安全性が認識されている。画像はカードの内部に形成されるので、画像を取り除き新しい画像を付与することは不可能である。全てポリカーボネートから製造されるカードの場合、レーザー印刷層へたどり着くためにカードを個々の層へ分離することは不可能である。
【0003】
一般的に、プラスチックカードは、複数のフィルムを貼り合せることにより製造される。レーザー彫刻によってカードの個人化を可能とするために、感レーザー性添加剤を備えるフィルムが、多層カード構造の外層表面全体に亘りラミネートされる。
【0004】
カード本体を貼り合せた後、文字情報および/または画像情報形態の個人情報が、該カードへ、レーザー印刷、すなわち、レーザー彫刻される。しかしながら、このレーザー印刷後も、活性を有するレーザー添加剤を多く含有するフィルムは、更なるデータを付与することができるので、内容に関する修正が可能である。このことは、データおよび画像情報を追加することにより、身分証明ドキュメント(以下IDドキュメントと称する)の偽造を可能とする。
【0005】
したがって、レーザー彫刻を用いて情報を備える多層複合フィルムを、後から改ざんすることを妨げるか、あるいは少なくとも大幅に制限し、その結果、セキュリティドキュメント、好ましくはIDドキュメントの耐偽造安全性を増加させることが必要とされている。
【0006】
従って、本発明に基づく目的は、レーザー彫刻による後からのマーキングを大幅に減少させるか、または完全に遮断させる多層複合フィルムを見出すことである。
【0007】
この目的は、ポリマー層へレーザー彫刻を用いてマーキングした後に、赤外線を反射または吸収でき、該ポリマー層の表面の全体または一部を被覆する少なくとも1つの外層を備える、レーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体が提供される本発明により達成された。
【0008】
米国特許公開第2005/0259326A1号明細書において、カード内の赤外線光を反射する多層光学フィルムの使用が開示されている。赤外線反射層は、フィルム複合材の内部に配設され、すなわち、カード中の少なくとも2つの別のポリマー層の間に配設され、赤外線の反射を用いることによりカード認識が可能となる。これらは、VLT(可視光透過)カードと称される。この明細書において、レーザー彫刻による書き込みを妨げる外層として赤外線反射フィルムを使用することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第2005/0259326A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、レーザー彫刻によりマーキング可能な少なくとも1つの熱可塑性ポリマー層、および、該ポリマー層の表面の全体もしくは一部を被覆する外層であって、赤外線を反射または吸収する該外層を具備する、レーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体を提供する
【課題を解決するための手段】
【0011】
レーザー彫刻によりプラスチックフィルムをマーキングすることは、当業者の間で省略して称されており、以下、レーザーマーキングと称する。従って、以下「レーザーにより記録された」という用語は、レーザー彫刻を用いて記録されることを意味する。レーザー彫刻の方法は当業者に既知であり、レーザープリンターを用いる印刷と混同されることはない。
【0012】
好ましくは、レーザー彫刻による記録性を備えた熱可塑性ポリマー層は、少なくとも1種の感レーザー性添加剤を含有する。感レーザー性添加物は、暗い背景上に明るい部分をマーキングするレーザー彫刻、明るい背景上に暗い部分をマーキングするレーザー彫刻、あるいは着色したマーキングを施すレーザー彫刻に適している。明るい背景上に暗い部分をマーキングするレーザー彫刻用の感レーザー性マーキング添加剤が好ましい。
【0013】
適当な感レーザー性添加剤は、例えば、いわゆるレーザーマーキング添加剤であり、すなわち、使用されるレーザーの波長域、好ましくはND:YAGレーザー(ネオジミウムでドープしたイットリウム-アルミニウム-ガーネットレーザー)の波長域に吸収能を有する吸収体を含有する添加剤である。これらのレーザーマーキング添加剤および成形材料におけるそれらの使用は、例えば国際特許出願公開第2004/50766号A明細書および同第2004/50767号A明細書に記載され、また、「Micabs(登録商標)」の商品名でDSM社から商業的に入手できる。感レーザー性添加剤として適当な他の吸収体は、カーボンブラック、商業的に入手可能な商品名「Lazerflair(登録商標)」および例えば独国特許出願公開第19522397号A明細書において記載されるような被覆層状珪酸塩、商業的に入手可能な商品名「Mark-it(登録商標)」および例えば米国特許第6693657号明細書において記載されるようなアンチモンをドープした酸化スズ、ならびに例えば国際特許出願公開第2006/042714号A明細書に記載されているようなリン含有スズ−銅混合酸化物である。
【0014】
感レーザー性添加剤の粒径は、100nm〜10μmの範囲内であることが好ましく、該粒径が500nm〜2μmの範囲内であることが特に有利である。
【0015】
とりわけ最も好ましい感レーザー性添加剤はカーボンブラックである。
【0016】
好ましくは、熱可塑性ポリマー層における熱可塑性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーおよび/または二官能性反応性化合物の重縮合物および/または二官能性反応性化合物の重付加生成物のポリマーから選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマーである。ある用途に関して有利であるので、透明な熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。
【0017】
特に適当な熱可塑性ポリマーは、ジフェノールに基づくコポリカーボネートまたはポリカーボネート、ポリ-若しくはコポリアクリレートおよびポリ-若しくはコポリメタクリレート、例えば好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)など、スチレンを有するコポリマーまたはポリマー、例えば好ましくは、ポリスチレン(PS)またはポリスチレン-アクリロニトリル(SAN)など、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、例えば好ましくは、ポリプロピレングレードまたは環状オレフィンに基づくポリオレフィン(例えばTOPAS(登録商標)、ホーキャスト社製)、テレフタル酸の重縮合物若しくは共重縮合物、例えば好ましくはポリエチレンテレフタレート若しくはコポリエチレンテレフタレート(PET若しくはCoPET)、グリコール変性PET(PETG)、グリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTG)若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート(PBT若しくはCoPBT)など、ナフタレンジカルボン酸の重縮合物若しくは共重縮合物、例えば好ましくは、ポリエチレングリコールナフタレート(PEN)など、少なくとも1種のシクロアルキルジカルボン酸の重縮合物若しくは共重縮合物、例えば好ましくは、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボン酸(PCCD)など、ポリスルホン(PSU)あるいはこれらの混合物である。
【0018】
好ましい熱可塑性ポリマーはポリカーボネートまたはコポリカーボネート、あるいは少なくとも1種のポリカーボネートまたはコポリカーボネートを含有する混合物である。特に好ましいものは、少なくとも1種のポリカーボネート若しくはコポリカーボネート、およびテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはシクロアルキルジカルボン酸、好ましくはシクロヘキサンジカルボン酸の少なくとも1種の重縮合物若しくは共重縮合物を含有する混合物である。とりわけ最も好ましいものは、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートであり、特に、500〜100000、好ましくは10000〜80000、特に好ましくは15000〜40000の平均分子量Mwを有するポリカーボネートまたはコポリカーボネートであり、または10000〜200000、好ましくは26000〜120000の平均分子量Mwを有する、少なくとも1種のテレフタル酸の重縮合物若しくは共重縮合物を含有するそれらの混合物である。
【0019】
本発明における好ましい実施態様において、テレフタル酸の重縮合物若しくは共重縮合物として適当なものは、ポリアルキレンテレフタレートである。適当なポリアルキレンテレフタレートは、例えば、芳香族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体(例えば、ジメチルエステルまたは無水物)と、脂肪族、脂環式若しくは芳香脂肪族(araliphatic)ジオールの反応生成物、およびこれらの反応生成物の混合物である。
【0020】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法(プラスチックハンドブック(Kunstostoff-Handbuch)、第VIII巻、第695頁以降、カール-ハンサー-バーグ社、ミュンヘン、1973年)により、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と、2個〜10個の炭素原子を有する脂肪族若しくは脂環式ジオールから生成することができる。
【0021】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に基づき、少なくとも80モル%、好ましくは90モル%のテレフタル酸基と、ジオール成分に基づき、少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%のエチレングリコール基および/または1,4-ブタンジオール基および/または1,4-シクロヘキサンジメタノール基を含有する。
【0022】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、
8〜14個のC原子を有する他の芳香族ジカルボン酸基、または4〜12個のC原子を有する脂肪族ジカルボン酸基、例えばフタル酸基、イソフタル酸基、2,6-ナフタレンジカルボン酸基、4,4'-ジフェニルジカルボン酸基、コハク酸基、アジピン酸基、セバシン酸基、アゼライン酸基およびシクロヘキサン二酢酸基などを最大20モル%含有してもよい。
【0023】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレンまたは1,4-ブタンジオールグリコール基に加えて、3〜12個のC原子を有する他の脂肪族ジオール、または6〜21個のC原子を有する脂環式ジオール、例えば、1,3-プロパンジオール基、2-エチル-1,3-プロパンジオール基、ネオペンチルグリコール基、1,5-ペンタンジオール基、1,6-ヘキサンジオール基、1,4-シクロヘキサンジメタノール基、3-メチル-2,4-ペンタンジオール基、2-メチル-2,4-ペンタンジオール基、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール基および2-エチル-1,6-ヘキサンジオール基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール基、2,5-ヘキサンジオール基、1,4-ジ-([ベータ]-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン基、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン基、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン基、2,2-ビス(3-[ベータ]-ヒドロキシ-エトキシフェニル)プロパン基および2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン基など(独国特許出願(DE-OS)第2407674号明細書、同第2407776号明細書、同第215932号明細書参照)を最大80モル%含有してもよい。
【0024】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えば独国特許出願(DE-OS)第1900270号明細書、米国特許公開(US-PS)第3692744号明細書に記載されるような、3価-若しくは4価-アルコールまたは3塩基性-若しくは4塩基性カルボン酸を比較的少量組み込むことにより、枝分かれさせてもよい。好ましい分岐剤の例は、例えばトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールである。
【0025】
好ましくは、酸成分に基づき、1モル%未満の分岐剤が使用される。
【0026】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)と、エチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールおよび/または1,4-シクロヘキサンジメタノール基から生成されるポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0027】
また、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、少なくとも2種類の上述の酸成分から生成されるコポリエステルおよび/または少なくとも2種類の上述のアルコール成分から生成されるコポリエステルであり、特に好ましいコポリエステルはポリ(エチレングリコール/1,4-ブタンジオール)テレフタレートである。
【0028】
好ましくは、成分として好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、何れの場合においても、25℃にて、フェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1重量部)を用いて測定した場合、約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gの固有粘度を有する。
【0029】
本発明における特に好ましい実施態様において、少なくとも1種のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、テレフタル酸の少なくとも1種の重縮合物若しくは共重縮合物との混合物は、少なくとも1種のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、ポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物である。好ましくは、このような、ポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、ポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、1〜90wt%のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、99〜10wt%のポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有し、好ましくは、1〜90wt%のポリカーボネートと、99〜10wt%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有する。ただし、該割合の合計は100wt%である。特に好ましくは、このような、ポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、ポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、20〜85wt%のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、80〜15wt%のポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有する混合物であり、好ましくは20〜85wt%のポリカーボネートと、80〜15wt%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有する混合物である。ただし、該割合の合計は100wt%である。とりわけ最も好ましくは、このような、ポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、ポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの混合物は、35〜80wt%のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートと、65〜20wt%のポリブチレンテレフタレート若しくはコポリブチレンテレフタレート、またはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート若しくはグリコール変性コポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有する混合物であり、好ましくは、35〜80wt%のポリカーボネートと、65〜20wt%のポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートを有する混合物である。ただし、該割合の合計は100wt%である。最も好ましい実施態様の場合、それらは、上述した組成に係る、ポリカーボネートおよびグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの混合物である。
【0030】
好ましい実施態様において、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートとして適当なものは、一般に、芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートである。
【0031】
ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、直鎖状であってもよく、既知の方法で分岐させてもよい。
【0032】
これらのポリカーボネートの製造は、ジフェノール、炭酸誘導体、所望により連鎖停止剤および所望により分岐剤から既知の方法で行なうことができる。ポリカーボネートの製造に関する詳細は、約40年間に亘り多くの明細書に記載されている。以下に参照文献の一例を記載する:シュネル著「ポリカーボネートの化学および物理」Polymer Reviews、第9巻、インターサイエンス出版、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964年、D.フライタック、U.グリゴ.P.R.ミューラー、H.ノウバートン(バイエルAG社)著「ポリカーボネート」ポリマーサイエンスおよびエンジニアリング百科事典、第11巻、第2版、1988年、第648頁〜第718頁、最後に、Dr.U.グリゴ、Dr.K.キルヒャーおよびDr.P.Rミューラー著「ポリカーボネート」ベッカー/ブラウン、プラスチックハンドブック、第3/1巻、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、カールハンサーバーグ、ミュンヘン、ウイーン1992年、第117頁〜第299頁。
【0033】
例えば、適当なジフェノールは、一般式(I)で表されるジヒドロキシアリール化合物である。
【0034】
【化1】

式中、Zは、6〜34個のC原子を有する芳香族基であり、所望により置換された芳香族環、および脂肪族基、脂環式基、アルキルアリール、または橋かけ結合としてのヘテロ原子を1種または複数種含有できる。
【0035】
適当なジヒドロキシアリール化合物の例には、以下のものが含まれる:ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびに、それらの環アルキル化化合物および環ハロゲン化化合物。
【0036】
これらの化合物および更に適当な他のジヒドロキシアリール化合物は、例えば、独国特許出願公開第3832396号A明細書、仏国特許出願公開第1561518号A明細書、H. シュネル著「ポリカーボネートの化学および物理」、インターサイエンス出版、ニューヨーク、1964年、第28頁以降、第102頁以降、およびD.Gレグランド、J.T.ベンドラー「ポリカーボネート化学およびテクノロジーハンドブック」マーセル・デッカー社、ニューヨーク、2000年、第72頁以降に開示されている。
【0037】
好ましいジヒドロキシアリール化合物には、以下のものが含まれる:例えば、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1ナフチル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよび2,2’,3,3’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオール、または以下の式(Ia)で表されるジヒドロキシジフェニルシクロアルカン;
【0038】
【化2】

式中、
およびRは、相互に独立して、水素、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C−C10アリール、好ましくはフェニル、およびC〜C12アラルキル、好ましくはフェニル−C−C−アルキル、特にベンジルを表し、
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5を表し、
およびRは、各Xに独立して選択でき、相互に独立して、水素またはC〜Cアルキルを表し、および、
Xは、炭素を表す
ただし、少なくとも1つのX原子、RおよびRは、同時にアルキルを表す。好ましくは、式(Ia)において、1または2個のX原子、特に1つのX原子、RおよびRは、同時にアルキルを表す。
【0039】
式(Ia)におけるRおよびR基に関して好ましいアルキル基はメチルである。
ジフェニル置換されたC原子(C−1)に対してアルファ位に位置するX原子は、好ましくは、ジアルキル置換されず、一方で、C−1に対してベータ位のアルキル二置換が好ましい。
【0040】
特に好ましい、式(Ia)で表されるジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、脂環式基中のXが式(Ia)においてm=4または5を示すことにより、5員環または6員環を有するものであり、例えば、式(Ia-1)〜(Ia-3d)で表されるジフェノールである:
【0041】
【化3】

【0042】
とりわけ最も好ましい、式(Ia)で表されるジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである(式(Ia-1)で表され、RおよびRは共にHに相当する)。
【0043】
欧州特許出願公開第359953号A明細書に従い、式(Ia)で表されるジヒドロキシジフェニルシクロアルカンからこのようなポリカーボネートを調製できる。
【0044】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物には、以下のものが含まれる:レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1ナフチル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピルベンゼン、および1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピルベンゼン。
【0045】
最も好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0046】
ホモポリカーボネートの形成を伴う、1種のジヒドロキシアリール化合物、またはコポリカーボネートの形成を伴う、複数種のジヒドロキシアリール化合物を使用できる。
ホモポリカーボネートの形成を伴う、式(I)若しくは式(Ia)で表される1種のジヒドロキシアリール化合物、またはコポリカーボネートの形成を伴う、式(I)および/または式(Ia)で表される複数種のジヒドロキシアリール化合物を使用できる。この場合、複数種のジヒドロキシアリール化合物は、不規則またはブロック形態で相互に結合できる。式(I)および式(Ia)で表されるジヒドロキシアリール化合物のコポリカーボネートの場合、必要に応じて使用される、式(I)で表される別のジヒドロキシアリール化合物に対する式(Ia)で表されるジヒドロキシアリール化合物のモル比は、好ましくは、99モル%(Ia):1モル%(I)〜2モル%(Ia):98モル%(I)、特に、99モル%(Ia):1モル%(I)〜10モル%(Ia):90モル%(I)、並びに就中、99モル%(Ia):1モル%(I)〜30モル%(Ia):70モル%(I)の間である。
【0047】
とりわけ最も好ましいコポリカーボネートは、式(Ia)および式(I)で表されるジヒドロキシアリール化合物である、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いて調製することができる。
【0048】
適当な炭酸誘導体は、例えば一般式(II)で表されるジアリールカーボネートである:
【0049】
【化4】

式中、
R、R’およびR’’は、相互に独立して、同一であるかまたは異なっており、
水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34アリールであり、Rは更に−COO−R'''であってもよく、R'''は、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールを表す。
【0050】
好ましい、ジアリールカーボネートには以下のものが含まれる:例えば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルフェニルカーボネートおよびジ(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−イソプロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−イソプロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−イソブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−フェニルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−イソオクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニルフェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニルフェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4−(1−ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ[4−(2−ナフチル)フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(メチルサリチレート)カーボネート、エチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(エチルサリチレート)カーボネート、n−プロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(n−プロピルサリチレート)カーボネート、イソプロピルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(イソプロピルサリチレート)カーボネート、n−ブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(n−ブチルサリチレート)カーボネート、イソブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(イソブチルサリチレート)カーボネート、tert−ブチルサリチレートフェニルカーボネート、ジ(tert−ブチルサリチレート)カーボネート、ジ(フェニルサリチレート)カーボネートおよびジ(ベンジルサリチレート)カーボネート。
【0051】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]カーボネートおよびジ(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0052】
とりわけ最も好ましいものはジフェニルカーボネートである。
【0053】
1種のジアリールカーボネートを使用してもよく、複数種のジアリールカーボネートを使用してもよい。
【0054】
末端基を制御または変性させるために、使用されるジアリールカーボネートの製造に使用されなかった、例えば1種または複数種のモノヒドロキシアリール化合物を連鎖停止剤として使用することも更に可能である。これらは、一般式(III)で表される化合物であることができる:
【0055】
【化5】

式中、
は、直鎖または枝分かれしたC−C34アルキル、C−C34アルキルアリール、C−C34アリールまたは−COO-Rを表し、Rは水素、直鎖または枝分かれしたC−C34アルキル、C−C34アルキルアリールまたはC−C34アリールを表し、および
、Rは、相互に独立して、同一または異なっており、水素、直鎖または枝分かれしたC−C34アルキル、C−C34アルキルアリールまたはC−C34アリールを表す。
【0056】
この種のモノヒドロキシアリール化合物には、以下のものが含まれる:例えば、1−、2−または3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−イソオクチルフェノール、
4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)フェノール、4−(2−ナフチル)フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、イソプロピルサリチレート、n−ブチルサリチレート、イソブチルサリチレート、tert−ブチルサリチレート、フェニルサリチレートおよびベンジルサリチレート。
【0057】
4−tert−ブチルフェノール、4-イソオクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0058】
適当な分岐剤は、3以上の官能基を有する化合物であり、好ましくは3以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
【0059】
3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する適当な化合物は、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノールおよびテトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0060】
3以上の官能基を有する別の適当な化合物は、例えば、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸(三塩化物)、シアヌル酸三塩化物および3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0061】
好ましい分岐剤は、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジ−ヒドロインドールおよび1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0062】
好ましくは、赤外線を反射または吸収する外層は、800〜1200nm、好ましくは850〜1100nmの波長の赤外線に対して、20%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満の透過率を有する。また、好ましくは、赤外線を反射または吸収する外層は、400〜700nmの波長における放射に対して、60%より高い、好ましくは70%より高い透過率を有する。透過率は、ASTM D1003に従って測定する。
【0063】
好ましくは、赤外線を反射または吸収する外層は、少なくとも1種の赤外線吸収剤を含有する。本発明において、有機赤外線吸収剤が好ましい。適当な有機赤外線吸収剤は、700〜1500nm(近赤外線=NIR)の間で最も高い吸収可能域を示す化合物である。
【0064】
適当な例は、例えばM.マツオカ著「赤外線吸収染料」、プレナムプレス、ニューヨーク、1990年に記載される種類の物質として、文献から既知の赤外線吸収剤である。特に適当なものは、以下に記載される種類の物質から選択される赤外線吸収剤である:アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、インダントロン、ピラントロン、フラバントロン、ベンズアントロン、フタロシアニン、ペリレン、ジオキサジン、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、キナクリドン、ピロロピロール、またはキノフタロン顔料、並びに、アゾ、アゾメチン若しくはメチン染料の金属錯体又はアゾ化合物の金属塩。これらのうち、フタロシアニンおよびナフタロシアニンが最も適当である。熱可塑性ポリマー中でのそれらの改良された溶解度に起因して、嵩張った側基を有するフタロシアニンおよびナフタロシアニンが好ましい。
【0065】
赤外線を反射または吸収する外層に含有される赤外線吸収剤の量は、赤外線の所望された吸収と適正な透過率が保証される限り特に制限されない。赤外線を反射または吸収する外層の組成物が、赤外線を反射または吸収する外層の組成物の総重量に基づき、0.0001〜10wt%、特に0.001〜0.05wt%の量で赤外線吸収添加剤を含有する場合、特に有利である。赤外線吸収添加剤の混合物も特に適当である。当業者は、最大吸収波長の異なる染料を用いて、近赤外領域における吸収を最適化することができる。
【0066】
赤外線を反射または吸収するシートまたはフィルムは既知であり、商業的に入手できる。
【0067】
好ましくは、赤外線を反射または吸収する外層は、多層構造体であってもよく、最も好ましくは、多層光学干渉性フィルムであり、交互ポリマー層を共押出しすることにより好ましく製造できる。好ましくは、これらは、光の干渉の結果として、狭い反射領域を示し、赤外線を反射する共押出しフィルムに基づく層である。
【0068】
好ましくは、これらの多層フィルムは、上述の熱可塑性ポリマーが適当である、透明な熱可塑性ポリマー製の、複数の平行な層から構成され、いずれの場合も、直接隣接する層が異なる熱可塑性ポリマーから製造され、それらの屈折率は、少なくとも0.03、特に好ましくは少なくとも0.06相互に異なる。好ましくは、この種の多層フィルムは少なくとも10層具有する。
【0069】
好ましくは、該多層フィルムの個々の層は極めて薄く、約30〜500nmの範囲、好ましくは約50〜400nmの範囲で層厚を有し、その結果、多くの界面で反射された光波の干渉を強化させる。層厚および熱可塑性ポリマーの屈折率に起因して、主波長域が反射されると共に残存する光がフィルムにより伝播される。
【0070】
反射光の量(反射率)は、2層の屈折率差、該層の光学的厚さの比、層数、および層厚の均一性に依存する。
【0071】
この種の多層フィルムは当業者に既知であり、例えば、米国特許第3610729号明細書、同第3711176号明細書、同第4446305号明細書、同第4540623号明細書、同第5448404号明細書、同第5882774号明細書、同第6531230号明細書、同第6783349号明細書、国際特許出願公開第99/39224号A明細書、および同第03/100521号A明細書に記載されている。
【0072】
好ましくは、本発明による層状構造体は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の充填剤を含有する少なくとも1種の層(「充填層」)を有する。
この目的のために、上述の熱可塑性ポリマーが熱可塑性ポリマーとして適当である。
【0073】
好ましくは、充填層における充填剤は、少なくとも1種の着色顔料および/または
該充填層へ半透明性をもたらす少なくとも1種の他の充填剤、好ましくは二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、またはガラス繊維、特に好ましくは二酸化チタンである。
【0074】
好ましくは、それらを製造するのに使用される充填フィルムおよび充填層は、380nm〜780nmの可視波長範囲において、50%未満、好ましくは35%未満、特に好ましくは25%未満、もっともの好ましい実施態様においては15%未満の透過率を有する。
【0075】
好ましくは、上述の充填剤は、プラスチックフィルムを形成する前に、充填剤および熱可塑性ポリマーの総重量に基づき、2〜45wt%、特に好ましくは5〜30wt%の量で熱可塑性ポリマーへ添加され、該添加は、例えば、押出しまたは共押出しによって行なうなうことができる。
【0076】
本発明による好ましい実施態様において、充填層は他の情報を具備することができる。この他の情報は、例えば、常套の印刷技術、例えばインクジェット印刷またはオフセット印刷などを用いて施すことができる。
【0077】
本発明による層状構造体は他の更なる層を含有でき、例えば、該層を用いることにより、セキュリティドキュメント、好ましくはIDドキュメント内へ、他の情報を取り入れることができる。
【0078】
例えば、この別の情報は、個人写真または個人情報でない一般情報であってもよく、それは、例えば任意の機密情報と同種のもの、好ましくはIDドキュメントなどと同じ形態で含まれる。
【0079】
例えば、常套の印刷方法、好ましくはインクジェット印刷またはレーザー印刷、特に好ましくはカラー印刷を用いることによりこの情報を事前に備えたフィルムからもたらされるこれらの層を、本発明に係る層状構造体内へ組み込んでもよい。
【0080】
インクジェット印刷法により印刷できるフィルムは当業者に既知であり、例えば、該フィルムは、上述の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーから製造でき、所望により、上述の少なくとも1種の充填剤を含有する。
特に好ましい実施態様において、印刷した情報の良好な視認性のために、充填剤、例えば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウム等を使用して白または半透明に着色されたプラスチックフィルムが使用される。
【0081】
レーザー印刷、特にカラーレーザー印刷により印刷されるフィルムの場合、これらのプラスチックフィルムは、10〜1013Ω、好ましくは10〜1012Ωの表面抵抗率を有する上述の熱可塑性樹脂のうちの1種から製造されることが特に適当である。表面抵抗率(単位Ω)は、DIN IEC93に従って測定される。
【0082】
好ましくは、これらのフィルムは、例えば、三級または四級、好ましくは四級アンモニウム、部分的にフッ素化された若しくはフッ素置換した有機酸のホスホニウム塩、四級アンモニウムまたはホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、好ましくは、部分的にフッ素化された若しくはフッ素置換したアルキルスルホン酸、好ましくはパーフルオロアルキルスルホン酸から選択される添加剤を、表面抵抗率をもたらすために熱可塑性ポリマー中へ添加させたフィルムである。
【0083】
好ましく適当な四級アンモニウムまたはホスホニウム塩には、以下のものが含まれる:
− パーフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩
− パーフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩
− パーフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩
− パーフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩
− パーフルオロオクタンスルホン酸トリメチルネオペンチルアンモニウム塩
− パーフルオロブタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩
− パーフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジネオペンチルアンモニウム塩
− N-メチルトリプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート
− N-エチルトリプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート
− テトラプロピルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート
− ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネート
− ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート
− N-メチルトリブチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート
− シクロヘキシルジエチルメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート
− シクロヘキシルトリメチルアンモニウムパーフルオロオクチルスルホネート
および対応するホスホニウム塩。アンモニウム塩が好ましい。
【0084】
1種以上の上述した四級アンモニウム塩またはホスホニウム塩、即ち混合物も好ましく使用できる。
【0085】
とりわけ最も適当なものは、
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラプロピルアンモニウム塩
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラペンチルアンモニウム塩
パーフルオロオクタンスルホン酸テトラヘキシルアンモニウム塩および
パーフルオロオクタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩並びに対応するパーフルオロブタンスルホン酸塩である。
【0086】
特に最も好ましい実施態様の場合、パーフルオロブタンスルホン酸ジメチルジイソプロピルアンモニウム塩(ジイソプロピルジメチルアンモニウムパーフルオロブチルスルホネートが添加剤として使用できる。
【0087】
上述の塩は既知であるか、または既知の方法により調製できる。スルホン酸の塩は、例えば、室温で、水中に等モル量の遊離スルホン酸と対応するカチオンのヒドロキシ型を添加し、溶液を濃縮させることにより調製できる。他の調製方法は、例えば、独国特許出願公開第1966931号A明細書およびオランダ特許出願公開第7802830号A明細書に記載されている。
【0088】
好ましくは、上述の塩は、プラスチックフィルムが成型される前に、0.001〜2wt%、好ましくは0.1〜1wt%の量で熱可塑性ポリマーへ添加され、該添加は、例えば押出しまたは共押出しにより行うことができる。
【0089】
本発明による層状構造体は、紫外線保護層および/または機械的損傷からの保護層、例えば傷防止コーティング層などの他の更なる層を具備できる。
【0090】
本発明による層状構造体は、例えば以下の方法により製造できる:
− 赤外線を反射または吸収する外層を除く、各々の層に対応するフィルムを、積層フィルム形態で相互に配設し、貼り合せ、層状複合体を形成させ、
− 次いで、レーザー彫刻を用いて、貼り合せた層状複合体へ施されるデータまたは情報、好ましくは個人データまたは情報を、レーザーマーキングにより層状複合体内へ導入し、次いで、
− 赤外線を反射または吸収する外層を、接着および/または貼り合せにより施す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
好ましくは、本発明による層状構造体は、セキュリティドキュメント、特に好ましくはIDドキュメントの耐偽造安全性の向上に適する。最も好ましくは、本発明による層状構造体は、プラスチックカード、例えば身分証明書、パスポート、運転免許証、クレジットカード、銀行カード、出入管理カードまたは他のIDドキュメントなどの、貼り合せまたはラミネートした層状複合体の形をとり、これらのIDドキュメントの耐偽造安全性の向上に適する。本発明の構成内に含まれる好ましいIDドキュメントは、多層構造体、安全機能を有する平面記録ドキュメント、例えばチップ、写真、バイオメトリックスデータ等である。これらのセキュリティ機能は、視認できるか、少なくとも外部から照会できる。好ましくは、この種のIDドキュメントは、小切手カードサイズとパスポートサイズの間に大きさを有する。また、この種のIDドキュメントは、複合ドキュメントの一部であってもよく、例えば、紙または厚紙部も具有するパスポート中のプラスチック製IDドキュメントであってもよい。
【0092】
従って、本発明は、本発明による少なくとも1種のレーザーマークした層状構造体を具備するセキュリティドキュメント、好ましくはIDドキュメントも提供する。
【0093】
レーザー彫刻により施された個人データを後から修正することを妨げ、耐偽造安全性を向上させるために、赤外線を反射または吸収する外層は、レーザー彫刻を用いて個人化された層状構造体、好ましくはセキュリティドキュメントまたはIDドキュメントの表面全体または表面の一部に施される。
【0094】
従って、本発明は、レーザーマーキングした層状構造体のレーザーマーキングを妨げる方法も提供し、該方法は、レーザーマーキングの後に、赤外線を反射または吸収する外層をその表面の全体または一部に施すことにより、レーザーマーキングが施された少なくとも1種の熱可塑性ポリマー層を含有する層状構造体がもたらされ、後からのレーザーマーキングを妨げることを特徴とする。
【0095】
本発明の範囲内において、レーザーマーキングを妨げることは、更なるレーザーマーキング性を著しく減少させること、および更なるレーザーマーキングを完全に妨害することを意味する。
【0096】
好ましくは、赤外線を反射または吸収する外層は、レーザーマーキング後に、フィルム形態、好ましくは多層フィルム形態、特に好ましくは多層光学干渉性フィルム形態で、レーザーマーキングした層状構造体へ施される。
【0097】
このことは、接着剤を用いておよび/または貼り合せにより行なうことができ、貼り合せにより行なわれる場合、接着剤による補助を受けて行なってもよく、接着剤を全く用いずに行なってもよい。
【0098】
接着剤を用いて施す場合、潜状反応性接着剤(latent-reactive adhesive)を使用することがとりわけ最も好ましい。
【0099】
潜状反応性接着剤は当業者に既知である。好ましい潜状反応性接着剤は、30℃より高い融点または軟化点を有するジ-またはポリイソシアネートと、イソシアネート反応性ポリマーとを含有する水性分散液を含むものである。好ましくは、この種の水性分散液は、少なくとも2000mPasの粘度を有する。この分散液におけるイソシアネート反応性ポリマーは、熱機械分析(TMA)により測定した場合、+110℃より低い温度、好ましくは+90℃より低い温度で部分的または完全に脱結晶する(decrystallise)結晶化ポリマー鎖からなるポリウレタンであることが好ましい。TMAによる測定は、ISO11359パート3「侵入温度の測定」と同様にして行なわれる。ジまたはポリイソシアネートは、以下の群からなるものから選択されることが好ましい:TDI(トルエンジイソシアネート)またはIPDI(イソホロンジイソシアネート)の二量化生成物、三量化生成物および尿素誘導体。この種の潜状反応性接着剤は、例えば、独国特許出願公開第102007054046号A明細書に記載されている。
【0100】
これらの潜状反応性接着剤を使用することにより、水蒸気および/または空気が層状構造体の端部から内部へ拡散することを不可能とし、その結果、このことは後の層間剥離をもたらさないので、耐偽造安全性をさらに向上させることができる。これらの層状構造体は、もはや、破壊されなければ剥離できない。したがって、赤外線を反射または吸収する外層は、セキュリティドキュメントまたはIDドキュメント全体が破壊されなければ剥離されない。さらに、貼り合せにより施された赤外線を反射または吸収する外層へ、同様の施しがおこなわれる。
【0101】
レーザーマーキングされた層状構造体、好ましくはセキュリティドキュメント、特に好ましくはIDドキュメントのレーザーマーキングを妨げるために、赤外線を反射または吸収するフィルムを使用することは知られていないが、本発明によりもたらされた。
【0102】
以下の実施例は、例として本発明を説明するものであり、制限して解釈されるものではない。
【実施例】
【0103】
本発明によるラミネートカード構造に使用されるフィルム
フィルム1-1:白色充填フィルム
Makrolon3108(登録商標)バイエルマテリアルサイエンスAG社製ポリカーボネートと、白色顔料充填剤として二酸化チタン(kronos(登録商標)2230、クロノスチタン社製)に基づき、85wt%のMakrolon3108(登録商標)と15wt%の二酸化チタンの組成を有し、100μmの厚さを有するポリカーボネートフィルムを、約280℃の溶融温度で押出すことにより製造した。
【0104】
フィルム1-2:白色充填フィルム
フィルム1−1と同じ組成を有するフィルムを、400μmの厚さで製造した。
【0105】
フィルム2:レーザー彫刻可能なフィルム
Makrolon3108(登録商標)バイエルマテリアルサイエンスAG社製ポリカーボネートと、感レーザー性添加剤として95nmの平均粒径を有するカーボンブラック(デグサ社製、Flamuruse101)に基づく、50μmの厚さを有するポリカーボネートフィルムを、約280℃の溶融温度で押出すことにより製造した。この目的のために、85wt%Makrolon3108(登録商標)ポリカーボネートと、99.004wt%Makrolon3108(登録商標)および0.006wt%(60ppm)カーボンブラックの組成を有するマスターバッチを15wt%含有する配合物を使用した。
【0106】
フィルム3:透明フィルム
Makrolon3108(登録商標)バイエルマテリアルサイエンスAG社製ポリカーボネートに基づく50μmの厚さを有するポリカーボネートフィルムを、約280℃の溶融温度で押出すことにより製造した。
【0107】
フィルム4:赤外線反射フィルム
3M社製の市販のIR反射フィルム(3M Vikuiti(登録商標)クリアカード赤外線フィルタ)を使用した。これは、850〜1100nmの範囲で、20%未満の光透過率を有する透明な赤外線反射フィルムである(ASTM D1003に従い測定した。)
【0108】
実施例1:レーザー書き込み可能な層状構造体の製造
上述したフィルムから、IDカードの形態で、以下の記載のようにレーザー書き込み可能な層状構造体をラミネート加工した:
(1)フィルム3;50μm
(2)フィルム2;50μm
(3)フィルム1-1;100μm
(4)フィルム1-2;400μm
(5)フィルム1-1;100μm
(6)フィルム2;50μm
(7)フィルム3;50μm
【0109】
カードの対称な層状構造体は、カードが曲がることを避けるために選択された。
【0110】
この目的のために、フィルムの積層を上述の順番でおこない、ラミネート加工を、以下の条件でビュルクレ社製ラミネートプレスを用いて行なった:
− プレス機を170〜180℃まで予備加熱し
− 15N/cmの圧力で8分間押圧し、
− 200N/cmの圧力で2分間押圧し、
− プレス機を38℃まで冷却し、該プレス機を開放する。
【0111】
実施例2:このIDカード上へ後ほど貼り合せる、赤外線反射フィルムを施すための接着剤の調製
上述のフィルム4を赤外線反射フィルムとして使用した。接着剤コーティング用の接着剤分散液を調製すために、以下の成分を使用した:
A)ポリウレタン分散液:
約45wt%の固形分を有するポリウレタン分散液:直鎖状ポリウレタン鎖を含むイソシアネート反応性ポリマー水溶液
B)増粘剤 Borchi(登録商標)Gel L 75 N
非イオン性、液体、脂肪族、ポリウレタンを基剤とする増粘剤:23℃での粘度>9000mPas;非揮発性成分:50wt%
C) 不活性化ポリイソシアネート:Dispercoll(登録商標)BL XP2514
約40wt%の固形分を有し、表面-不活性化TDI-ウレトジオン(TDI二量体)を水中で懸濁させた懸濁液
【0112】
接着剤分散液を調製するために、まず、7重量部の増粘剤B)を、700重量部のポリウレタン分実機A)へ攪拌しながら添加し、粘度を増加させた。
【0113】
次に、10重量部の不活性化ポリイソシアネートC)を、100重量部のこの増粘させた分散液へ攪拌しながら添加することにより、水性分散液が得られた。
【0114】
次に、約30μmの乾燥膜厚が得られるように、接着剤分散液の湿潤膜厚を100μmに設定し、巻線型コーティングロッドを使用することにより、赤外線反射フィルムをこの接着剤分散液で被覆した。次いで、被覆したフィルムを、乾燥キャビネット中で約35℃にて90分間乾燥させ、次いで、貼り合せて使用できる状態にした。
【0115】
実施例3
実施例1で製造されたIDカードの層(1)の左半分を、実施例2で得られた、接着剤で被覆された赤外線反射フィルムと共に、第2ラミネート工程においてラミネート加工に付した。この目的のために、ラミネート加工を、以下の条件でビュルクレ社製ラミネートプレスを用いて行なった:
− プレス機を90℃まで予備加熱し
− 15N/cmの圧力で8分間押圧し、
− プレス機を38℃まで冷却し、該プレス機を開放する。
【0116】
実施例4
実施例3で得られた、赤外線反射フィルムで半分が被覆されたIDカードへ、以下の条件でFoba社製レーザー装置を使用することにより、レーザー彫刻をおこなった:
レーザー媒質:Nd:YAG
波長:1064nm
出力:40ワット
電流:30A
パルス振動数:14kHz
供給速度:200mm/秒
【0117】
レーザー彫刻を用いて、情報を、IDカードのレーザー書き込み可能なフィルム層(層(2))へのみ書き込んだ。情報としての女性の完全な肖像写真を、レーザー彫刻を用いてレーザー書き込み可能な層内へ書き込んだ。以下の結果が得られた。
【0118】
赤外線反射フィルムがラミネートされた、IDカードの左半分では、該反射フィルムの下方に位置するレーザー書き込み可能なフィルム層に、レーザー彫刻は施されなかった。該カードの右半分では、顔の右半分が、高いコントラストでレーザー書き込み可能なフィルム層内へ書き込まれた。このことは基本的にレーザー層への書き込みが可能であることを証明した。
【0119】
従って、本発明による構造体は、赤外線を反射または吸収する外層を施すことにより、レーザー彫刻によりIDカードの個人化が完了した後の更なるレーザー彫刻を妨害する可能性を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー彫刻によりマーキング可能な少なくとも1つの熱可塑性ポリマー層、及び該ポリマー層の表面の全体または一部を被覆する外層であって、赤外線を反射または吸収する該外層を具備する、レーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項2】
レーザー彫刻によるマーキング可能な熱可塑性ポリマー層が、少なくとも1種の感レーザー性添加剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項3】
感レーザー性添加剤がカーボンブラックであることを特徴とする請求項2に記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項4】
レーザー彫刻によりマーキング可能な熱可塑性ポリマー層の熱可塑性ポリマーが、以下のもののポリマーから選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体:エチレン性不飽和モノマーおよび/または二官能性反応性化合物の重縮合物、好ましくはジフェノールに基づく1種以上のポリカーボネート若しくはコポリカーボネート、ポリアクリレート若しくはコポリアクリレートおよびポリメタクリレート若しくはコポリメタクリレート、スチレンを有するポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン、およびポリオレフィン、テレフタル酸の重縮合物若しくは共重縮合物、ナフタレンジカルボン酸の重縮合物若しくは共重縮合物、少なくとも1種のシクロアルキルジカルボン酸の重縮合物若しくは共重縮合物、ポリスルホンまたはこれらの混合物、特に好ましくは、ジフェノールに基づく1種以上のポリカーボネート若しくはコポリカーボネート、または少なくとも1種のポリカーボネート若しくはコポリカーボネートを含有する混合物。
【請求項5】
赤外線を反射または吸収する外層における800〜1200nm、好ましくは850〜1100nmの波長の赤外線に対する透過率が、20%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満であり、また、400〜700nmの波長の放射に対する該透過率が60%より高く、好ましくは70%より高いことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項6】
赤外線を反射または吸収する外層が、多層構造体、好ましくは多層光学干渉性フィルムから成ることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項7】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の充填剤とを含有する少なくとも1つの層(充填層)を具備することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項8】
充填剤が、充填層へ半透明性を付与する着色顔料または他の充填剤、好ましくは二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、硫酸バリウムまたはガラス繊維であることを特徴とする請求項7に記載のレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のレーザー彫刻によりマーキングされた少なくとも1つの層状構造体を具備する、セキュリティドキュメント、好ましくはIDドキュメント。
【請求項10】
レーザー彫刻によりマーキング可能な少なくとも1つの熱可塑性ポリマー層を具備するレーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体を、レーザー彫刻によるマーキング処理に付した後、赤外線を反射または吸収する外層で、該ポリマー層の表面の全体または一部を被覆することを特徴とする、レーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体のレーザー彫刻によるマーキングの妨害方法。
【請求項11】
レーザー彫刻によるマーキング後に、赤外線を反射または吸収する外層を、接着剤または貼り合せにより、レーザー彫刻によってマーキングされた層状構造体上へ、フィルム形態、好ましくは多層フィルム形態、特に好ましくは多層光学干渉性フィルム形態で貼付けることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
接着剤が潜状反応性接着剤であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
レーザー彫刻によりマーキングされた層状構造体、好ましくはセキュリティドキュメント、特に好ましくはIDドキュメントのレーザー彫刻によるマーキングを妨害するための、赤外線反射性または吸収性フィルムの使用。

【公表番号】特表2012−506328(P2012−506328A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532521(P2011−532521)
【出願日】平成21年10月10日(2009.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007269
【国際公開番号】WO2010/046042
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】