説明

レーザー消去装置及びレーザー消去方法

【課題】本発明は、簡素な構成でありながら、短いタクトタイムでレーザーを用いて非接触で可逆性感熱記録媒体への記録・消去を行うことができるレーザー消去装置及びレーザー消去方法を提供することを目的とする。
【解決手段】温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体101が所定の移動速度で移動しているときに、前記熱可逆記録媒体にレーザービームLを照射し、前記熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去装置80であって、
前記レーザービームを、前記熱可逆媒体の移動方向と同じ方向に、前記所定の移動速度よりも小さい所定の走査速度で走査させ、前記表示情報を消去するレーザー走査手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー消去装置及びレーザー消去方法に関し、特に、温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体にレーザービームを照射し、熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去装置及びレーザー消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、省資源及び環境保護の観点から、熱で発色及び消色する可逆性感熱記録媒体を、コンベア式物流システムの搬送容器用ラベルとして応用した記録情報更新装置及び記録情報更新方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の記録情報更新装置及び記録情報更新方法においては、サーマルヘッドをラベルに密着させて書き込みを行うが、サーマルヘッドを可逆性感熱記録媒体に密着させることが困難であるため、レーザーを用いて非接触で記録・消去を行う装置又は方法が多数開発されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
特許文献2には、停止させた可逆性感熱記録媒体に対し、1台のレーザー装置でレーザーを偏向させ、スキャンすることで記録と消去を行う記録情報更新装置が記載されている。また、特許文献3には、固定されたレーザーに対し、可逆性感熱記録媒体を移動させてスキャンすることで、記録と消去を行う記録消去装置が記載されている。
【0005】
このように、レーザーを用いることにより、可逆性感熱記録媒体に非接触で記録と消去を行うことができ、可逆性感熱記録媒体をコンベア式物流システムの搬送容器用ラベルとして利用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の構成のように、1台のレーザー装置でレーザーを偏向させてスキャンし、記録と消去の両方を行う記録情報更新装置では、記録と消去を交互に行うため、タクトタイムが長くなるという問題があった。
【0007】
また、レーザー装置を2台設け、消去と記録を別のレーザー装置で行ったとしても、消去は記録よりも多くのエネルギーが必要となるため、記録時間に比較して消去時間が遅いという問題があった。
【0008】
また、可逆性感熱記録媒体を停止させ、レーザーを偏向させてスキャンする方法を採ったとしても、搬送容器の移動停止に時間を取られ、タクトタイムの中で消去に割り当てられる時間が少なくなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載の構成のように、レーザーを固定し、可逆性感熱記録媒体を移動させてスキャンする記録消去装置においては、搬送容器幅に対して可逆性感熱記録媒体の幅が小さいと、タクトタイムの中で消去に割り当てられる時間が少なくなるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、簡素な構成でありながら、短いタクトタイムでレーザーを用いて非接触で可逆性感熱記録媒体への記録・消去を行うことができるレーザー消去装置及びレーザー消去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るレーザー消去装置は、温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体が所定の移動速度で移動しているときに、前記熱可逆記録媒体にレーザービームを照射し、前記熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去装置であって、
前記レーザービームを、前記熱可逆媒体の移動方向と同じ方向に、前記所定の移動速度よりも小さい所定の走査速度で走査させ、前記表示情報を消去するレーザー走査手段を有することを特徴とする。
【0012】
これにより、消去時間を長くすることができ、搬送を止めることなく熱可逆記録媒体の表示情報の消去を行うことができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係るレーザー消去装置において、
前記レーザービームの走査長は、前記熱可逆記録媒体の幅の長さよりも長いことを特徴とする。
【0014】
これにより、実質的な走査長を熱可逆記録媒体の幅よりも長くすることができ、十分なレーザー照射量を確保することができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るレーザー消去装置において、
前記レーザー走査手段は、前記レーザービームを偏向させる偏向手段と、
該偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記熱可逆記録媒体の前記所定の移動速度に基づいて、前記レーザービームの走査速度を設定する速度設定手段と、を含むことを特徴とする。
【0016】
これにより、レーザービームの走査速度の設定を容易に行うことができ、種々の消去状況に対応することができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明に係るレーザー消去装置において、
移動中の前記熱可逆記録媒体の移動速度を検出する移動速度検出手段を更に有し、
前記速度設定手段は、前記移動速度検出手段により検出された前記移動速度に基づいて、前記走査速度を補正して設定することを特徴とする。
【0018】
これにより、熱可逆記録媒体の移動速度に微妙な速度変化があった場合であっても、適切なレーザービームの走査速度を設定することができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明に係るレーザー消去装置において、
前記レーザービームのレーザーパワーを、補正された前記走査速度に応じて設定するレーザー設定手段を更に有することを特徴とする。
【0020】
これにより、走査速度が速く設定された場合にはレーザービームのレーザーパワーを上げ、照射される累積エネルギーを一定にする等行うことができ、走査速度が変化しても熱可逆記録媒体に与えるエネルギーを一定とさせ、常に適切な条件で表示情報の消去を行うことができる。
【0021】
第6の発明に係るレーザー消去方法は、温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体が所定の移動速度で移動しているときに、前記熱可逆記録媒体にレーザービームを照射し、前記熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去方法であって、
前記熱可逆記録媒体の前記所定の移動速度よりも遅い速度で前記レーザービームの走査速度を設定する工程と、
前記熱可逆記録媒体の移動方向と同じ方向に、設定された前記走査速度で前記レーザービームを走査させ、前記熱可逆記録媒体の前記表示情報を消去する工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
第7の発明は、第6の発明に係るレーザー消去方法において、
前記レーザービームの走査長は、前記熱可逆記録媒体の幅の長さよりも長いことを特徴とする。
【0023】
第8の発明は、第6又は第7の発明に係るレーザー消去方法において、
移動中の前記熱可逆記録媒体の移動速度を検出する工程と、
検出された前記移動速度に基づいて、前記レーザービームの前記走査速度を補正して設定する工程と、を更に有することを特徴とする。
【0024】
第9の発明は、第8の発明に係るレーザー消去方法において、
前記レーザービームのレーザーパワーを、補正された前記走査速度に応じて設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、レーザービームを用いて熱可逆記録媒体の表示情報を消去するときのタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例に係るレーザー消去装置を使用したコンベアシステムの一例の全体構成を示した図である。
【図2】本発明の実施例に係るレーザー消去装置80の一例を示した構成図である。
【図3】本実施例に係るレーザー消去装置の消去動作の説明図である。図3(A)は、消去開始点における消去動作の一例を示した図である。図3(B)は、消去中間点における消去動作の一例を示した図である。図3(C)は、消去終了点における消去動作の一例を示した図である。
【図4】比較例として従来の第1のレーザー消去装置による消去動作を示した図である。図4(A)は、消去開始点における消去動作を示した図である。図4(B)は、消去中間点における消去動作を示した図である。図4(C)は、消去終了点における消去動作を示した図である。
【図5】比較例として従来の第2のレーザー消去装置による消去動作を示した図である。図5(A)は、消去開始点における消去動作を示した図である。図5(B)は、消去中間点における消去動作を示した図である。図5(C)は、消去終了点における消去動作を示した図である。
【図6】本実施例に係るレーザー消去装置を用いたレーザー消去方法の動作フローを示した図である。
【図7】熱可逆記録媒体を用いた発色と消色についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0028】
図1は、本発明の実施例に係るレーザー消去装置を使用したコンベアシステムの一例の全体構成を示した図である。図1において、本実施例に係るコンベアシステムは、ローラーコンベア10と、ベルトコンベア12と、エンコーダ15と、センサ20〜22と、ストッパ30〜32と、レーザー消去手段60と、システム制御装置70と、レーザー書き込み装置90とを有する。なお、レーザー消去手段60とシステム制御装置70で、本実施例に係るレーザー消去装置80を構成する。
【0029】
また、図1においては、関連構成要素として、搬送対象となるコンテナ100が示されている。コンテナ100の側面には、本実施例に係るレーザー消去装置80の消去の対象となるリライタブルラベル101が貼られている。リライタブルラベル101は、加熱により印字とその消去が可能な熱可逆記録媒体から構成されており、既に描かれた表示情報の消去と更なる印字が可能に構成されている。なお、図1においては、リライタブルラベル101に、「ABC」の文字からなる情報が印字されている。
【0030】
ローラーコンベア10及びベルトコンベア12は、コンテナ100を移動させて搬送するための搬送手段である。ローラーコンベア10は、複数のローラー11が所定間隔で平行に配置され、ローラーの回転方向に列をなし、全体としてライン状に構成される。ローラーコンベア10は、各ローラー11を高速回転させることにより、コンテナ100を高速に移動させることが可能である。また、短い単位でローラー11の停止や速度を調整でき、ライン上のコンテナ100を個々に動作制御することができる。レーザー消去手段60が配置されている以外の箇所には、ローラーコンベア10が使用されている。
【0031】
一方、ベルトコンベア12は、複数のローラー11を巻回するようにベルト13が設けられている。ベルト13が巻かれているため、ローラーコンベア10より高速回転はできないが、ベルト13とコンテナ100の摩擦力が高いため、総てのコンテナ100を安定に保持して一定速度で移動させることができる。レーザー消去手段60によりリライタブルラベル101の表面の表示情報の消去を行う場合には、レーザービームLをリライタブルラベル101に安定して照射するために、リライタブルラベル101を安定した一定の速度で移動させる必要がある。よって、レーザー消去手段60の位置には、ベルトコンベア12が設けられている。
【0032】
エンコーダ15は、コンテナ100、つまりリライタブルラベル101の移動速度を検出するための速度検出手段である。ベルトコンベア12を用いた場合には、コンテナ100の移動速度が安定し、ほぼローラー11の回転速度に比例した速度で移動する。よって、エンコーダ15により、ローラー11の回転速度を検出できれば、リライタブルラベル101の移動速度を検出することができる。
【0033】
センサ20〜22は、コンテナ100が存在することを検知するための検知手段である。例えば、光を照射し、反射光を検出したらコンテナ100がセンサ20〜22の前に存在することを検知する構成であってもよい。
【0034】
ストッパ30〜32は、コンテナ100を所定位置に停止させておくための手段である。センサ20〜22でコンテナ100の存在が検知されたら、ストッパ30〜32がコンテナ100を挟むことにより、コンテナ100を固定して停止させることができる。なお、ストッパ30〜32は種々の構成とすることができ、例えば、ローラー11の間から板状のストッパ30〜32が上方に突き出て容器を停止させるような構成であってもよい。
【0035】
レーザー消去手段60は、レーザーをリライタブルラベル101に照射して、既に書かれている情報を非接触で消去するための手段である。よって、レーザー消去手段60は、レーザー光源等を含むレーザー光学系を備えている。レーザー消去手段60から発射されるレーザービームLは、図1に示すように縦長の形状であり、リライタブルラベル101の表示情報よりも縦長になるように構成されている。レーザー消去手段60は、ベルトコンベア12の横に設置され、コンテナ100が一定速度で移動している状態で消去を行う。なお、レーザー消去手段60は、システム制御装置70により駆動制御される。よって、レーザー光源を有するレーザー消去手段60と、システム制御装置70のレーザー消去手段60を制御する部分で、本実施例に係るレーザー消去装置80の全体を構成する。
【0036】
システム制御装置70は、コンベアシステム全体を制御する装置であり、各装置や部品と接続されている。各装置及び部品は、システム制御装置70の指示により動作する。レーザー消去手段60も、システム制御装置70により制御される。
【0037】
レーザー書き込み装置90は、リライタブルラベル101にレーザービームLWを照射し、非接触で印字を行うための装置である。レーザー書き込み装置90は、一筆書きで文字等を描画するため、レーザー消去手段60とは異なり、丸くスポット的に照射できるビーム形状となっている。レーザー書き込み装置90は、ローラーコンベア10の横に配置され、コンテナ100が停止している状態で印字を行う。
【0038】
次に、本実施例に係るコンベアシステムの動作を説明する。コンテナ100は、図1において左上から右下に向かって流れる。コンベアラインの左上から投入されたコンテナ100は、センサ20とストッパ30によりベルトコンベア12の手前で一時停止する。そして、前にあるコンテナ100がセンサ21を通過した所で、ストッパ20が開放され、ベルトコンベア12上に移動する。これは、ベルトコンベア12を流れるコンテナ100の間隔等を調整するための一時停止であり、レーザー消去手段60が確実に動作できるようにするためである。ベルト13に載ったコンテナ100は、レーザー消去手段60の前を、所定の速度で通過する。システム制御装置70は、センサ21で消去対象のコンテナ100が所定の位置に到達したことを検出し、レーザー消去手段60に消去開始の信号を出力する。レーザー消去手段60は、システム制御装置70から消去開始の信号を受け取り、レーザービームLを所定のパワーでリラタブルラベル101に照射しながら、所定の速度で所定の時間、コンテナ100が移動する方向と同じ方向にレーザーを走査させる。このレーザービームLを走査させる動作により、既に印字された情報が消去される。
【0039】
リライタブルラベル101の表示情報が消去されたコンテナ100は、続くローラーコンベア10に移動し、センサ22とストッパ31により、レーザー書き込み装置90の手前で一時停止する。これは、印字している最中のコンテナ100に衝突し、印字が乱れることを防止するためである。印字を終えた前のコンテナ100が移動すると、ストッパ31が開放され、レーザー書き込み装置90の前へと移動する。システム制御装置70は、センサ23が印字対象のコンテナ100が所定の位置に来たことを検出したら、ストッパ32を閉じてコンテナ100を固定させるとともに、レーザー書き込み装置90へ印字開始の信号を出す。レーザー書き込み装置90は、システム制御装置70から印字内容のデータと印字開始の信号を受け取り、レーザーで情報を印字する。印字が終了すると、レーザー書き込み装置90は、システム制御装置70へ印字終了の信号を出す。印字終了の信号を受けたシステム制御装置70は、ストッパ32を開放し、コンテナ100を次の工程へ移動させる。
【0040】
図2は、本発明の実施例に係るレーザー消去装置80の一例を示した構成図である。本実施例に係るレーザー消去装置80は、大きく分けてレーザー消去手段60と、システム制御装置70とから構成される。レーザー消去手段60は、レーザー光源40と、第1のシリンドリカルレンズ41と、第1の球面レンズ42と、マイクロレンズアレイ43と、第2の球面レンズ44と、第2のシリンドリカルレンズ45と、レーザードライバ46と、ガルバノミラー50と、ガルバノドライバ51とを有する。一方、システム制御装置70は、端子台71と、操作盤72と、消去条件設定手段73と、消去動作制御手段77と、レーザー制御手段78と、ガルバノ制御手段79とを有する。更に、消去動作制御手段77は、レーザーパワー設定手段76と、走査速度設定手段77とを備える。また、レーザー消去装置80の照射対象として、リライタブルラベル101も示されている。なお、リライタブルラベル101は、図1で説明したのと同様に、熱可逆記録媒体で構成されている。
【0041】
レーザー光源40は、レーザービームLを発射する手段である。本実施例に係るレーザー光源40のビーム形状の縦の長さは、リライタブルラベル101に表示されている情報の縦の長さよりも長いことが必要とされる。これにより、レーザービームLを水平方向に走査させるだけでリライタブルラベル101の情報を消去することができ、1回の走査でリライタブルラベル101の消去を行うことができる。
【0042】
レーザー光源40は、上述のようなリライタブルラベル101の情報よりも縦長の形状を有していれば、種々のレーザー光源40を用いることができるが、例えば、レーザーダイオードを縦に並べて配置したレーザーダイオイードアレイを用いるようにしてもよい。レーザーダイオードアレイは、複数個のレーザーダイオード光源が並んでいるモジュールであり、例えば、17個のレーザーダイオードアレイレーザーダイオード光源モジュールを使用してもよい。この場合、1番目から17番目までの光源の長さは、例えば10mmとしてもよい。このレーザーダイオードアレイのレーザー光源40から出射されたレーザービームLは、複数のレンズ41〜45で拡大されるとともに、エネルギー密度が均質化され、リライタブルラベル101上に長さ60mm、幅0.5mmのライン状ビームを形成する。
【0043】
次に、各レンズ41〜45の役割を説明する。第1のシリンドリカルレンズ41は、レーザー光源40から発射されたレーザービームLの横幅を狭めるための整形レンズである。第1の球面レンズ42は、レーザービームLを一旦縦に縮めるレンズである。マイクロレンズアレイ43は、レーザーダイオードアレイから発射された縦に配列された17個の点を、隣接するレーザービームLをオーバーラップさせ、全体として縦長のビーム形状を形成するためのレンズである。第2の球面レンズ44は、レーザービームLの高さをリライタブルラベル101に合わせるための高さ調整レンズである。第2のシリンドリカルレンズ45は、最後にレーザービームLの横幅を狭めて整形を行うためのレンズである。
【0044】
レーザードライバ46は、レーザー光源40の駆動電流を生成する回路である。レーザードライバ46は、システム制御装置70からの指示値に従い、レーザーパワーを制御する。
【0045】
このようなレーザー光源40及びレンズ41〜45からなる光学系と、レーザードライバ46により、ライン状のレーザービームLを生成することができる。
【0046】
ガルバノミラー50は、ガルバノメータ51にレーザービームLを反射するミラー52を装着した偏向手段であり、レーザービームLを偏向し、走査することができる。ガルバノドライバ53は、システム制御装置70からの指示値に従い、ミラー52の角度を制御する回路である。具体的には、ガルバノドライバ53は、ガルバノミラー50の角度センサ信号とシステム制御装置70からの指示値を比較し、その誤差が最小になるようにガルバノミラー50に駆動信号を与える。
【0047】
次いで、システム制御装置70の説明を行う。端子台71は、図1で説明したコンベアシステムの各装置や手段とシステム制御装置70とを電気的に接続するための手段である。端子台71には、消去開始信号、インターロック信号、環境温度信号、エンコーダ信号の入力信号端子と消去準備完了信号、消去中信号、異常発生信号の出力信号端子がある。なお、消去開始信号はレーザー消去手段60が消去動作を開始するための信号、インターロック信号は消去動作を緊急停止させるための信号、環境温度信号は環境温度でレーザーパワーを補正するための信号である。また、エンコーダ信号はリライタブルラベル101の移動速度を検出するための信号、消去準備完了信号は消去開始信号を受け付け可能になったことを示す信号、消去中信号は消去を実行していることを示す信号である。更に、異常発生信号は、レーザーの異常や、ガルバノミラー50の異常等、システム制御装置70が異常を発見したことを示す信号である。
【0048】
操作盤72は、簡単な表示器とスイッチによるユーザーインターフェースで、メニュー選択と数値入力が可能である。
【0049】
消去条件設定手段73は、操作盤72を制御するとともに、操作盤72に入力された情報から、種々の消去条件を設定する手段である。消去条件設定手段73は、例えば、ユーザが指定したレーザービームLの走査長、レーザービームLの走査速度、レーザービームLの走査方向、レーザー出力パワー、消去開始ディレイ時間、コンテナ移動速度等の消去条件を設定する。また、消去条件設定手段73は、これらの設定した消去条件を記憶するため、不揮発性メモリ74を備える。
【0050】
消去条件設定手段73は、レーザーパワー設定手段75と、走査速度設定手段76とを備える。レーザーパワー設定手段75は、レーザー光源40から出力されるレーザービームLのレーザーパワーを設定する手段である。レーザーパワーは、操作盤72から入力された数値に基づいて設定されてよい。操作盤72に、直接レーザーパワーが入力された場合には、入力に従って設定すればよい。一方、レーザーパワーが入力されなかった場合には、入力された項目の数値から、適切なレーザーパワーを計算して設定する。
【0051】
また、レーザーパワー設定手段75は、後述する消去動作制御手段77から、リライタブルラベル101の移動中における実際の移動速度が入力された場合には、移動中の移動速度に基づいて、設定されたレーザーパワーを補正し、再度レーザーパワーの設定を行う。但し、この動作を行う機能は、必ず必要な訳ではなく、必要に応じて備えられてよい。
【0052】
走査速度設定手段76は、レーザービームLの走査速度を設定する手段である。本実施例に係るレーザー消去装置80においては、走査速度設定手段76は、リライタブルラベル101の移動速度よりも遅い速度でレーザービームLの走査速度を設定する。よって、操作盤72から、コンテナ移動速度又はリライタブルラベル移動速度が入力された場合には、入力された移動速度よりも遅い速度でレーザービームLの走査速度を設定する。また、特に入力が無い場合には、消去条件設定手段73内に設定されて記憶されているコンテナ移動速度又はリライタブルラベル移動速度を参照し、その移動速度より遅い走査速度を設定する。
【0053】
走査速度の設定は、一定の演算処理式等のルールに基づいて設定されてよい。例えば、走査速度はコンテナ100又はリライタブルラベル101の移動速度の1/2と定められている場合には、そのルールに従い設定する。演算処理式等のルールは、用途に応じて自由に定められてよいが、例えば、コンテナ100又はリライタブルラベル101の移動速度の1/n(nは整数)、といったような、簡素な式で構成してもよい。演算処理の負担を減らし、容易にレーザービームLの走査速度の設定を行うことができる。
【0054】
走査速度設定手段76は、消去動作制御手段77から、実際に移動中のコンテナ100又はリライタブルラベル101の移動速度の信号が入力されたら、移動中の移動速度に基づいて補正を行い、走査速度の再設定を行うようにしてもよい。但し、この動作を行う機能は必ず必要な訳ではなく、必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0055】
消去動作制御手段77は、端子台71に入力された入力信号と、消去条件設定手段73を処理し、レーザー制御手段78やガルバノ制御手段79に指示を出すとともに、端子台の信号出力を生成する手段である。また、消去動作制御手段77は、端子台71から入力された信号のうち、コンテナ100又はリラタブルラベル101の移動速度のように、消去条件設定手段73で補正、再設定を行う項目については、消去条件設定手段にその信号を出力して情報を供給する。これにより、必要な補正を行うことができる。なお、この補正は、消去動作制御手段77が消去条件設定手段73で設定されている情報を参照し、消去動作制御手段77の方で行うようにしてもよい。このような処理手順は、用途に応じて種々の設定とすることができる。
【0056】
レーザー制御手段78は、レーザー光源40の駆動を制御する。具体的には、消去動作制御手段77が指示したレーザー出力値をアナログ信号に変換してレーザードライバ46に出力する。また、レーザー光源40を点灯・消灯させるためのタイミング信号を生成し、出力する。
【0057】
ガルバノ制御手段79は、ガルバノミラー50の駆動を制御する。具体的には、消去動作制御手段77が指示した走査開始位置から走査終了位置まで、指定速度でガルバノミラー50を動かすためのアナログ信号を生成し、出力する。
【0058】
次に、図3を用いて、かかる構成を有するレーザー消去装置の消去動作の一例について説明する。図3は、本実施例に係るレーザー消去装置の消去動作を説明するための図である。なお、今まで説明した構成要素と同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0059】
図3(A)は、消去開始点における消去動作の一例を示した図である。図3(A)に示すように、コンテナ100のリライタブルラベル101が、レーザ消去手段60の正面に到達する前に、リライタブルラベル101の前方部分からレーザービームLを照射する。レーザービームLは、レーザー消去手段60から後方に向かって照射されている。この後、レーザービームLは、リライタブルラベル101の移動方向と同じ方向に走査を開始する。そして、その走査速度は、リライタブルラベル101の移動速度よりも遅い速度である。つまり、レーザービームLは、リライタブルラベル101と同様に前方に向かって移動するが、その走査速度がリライタブルラベル101の移動速度よりも遅いため、レーザービームLが相対的に後方に移動し、リライタブルラベル101をゆっくりと後方に走査するような状態となる。
【0060】
図3(B)は、消去中間点における消去動作の一例を示した図である。図3(B)に示すように、リライタブルラベル101がレーザー消去手段60のほぼ正面に到達したときに、リライタブルラベル101の表示情報は、概ね半分程度まで消去されている。また、レーザー消去手段60から、レーザービームLはほぼ正面に向かって発射されている。図3(A)で示したように、走査の開始はリライタブルラベル101がまだレーザー消去手段60よりも後方にある位置からであるので、リライタブルラベル101の幅の半分の表示情報を消去するのに、リライタブルラベル101の半分の幅よりも長い距離を用いてレーザービームLをリライタブルラベル101に照射していることが分かる。つまり、時間を掛けてレーザービームをリライタブルラベル101に照射している。
【0061】
図3(C)は、消去終了点における消去動作の一例を示した図である。消去終了点においては、リライタブルラベル101は、レーザー消去手段60よりも前方に進んでおり、レーザービームLは、リライタブルラベル101の後方の端部を照射している。レーザービームLは、レーザー消去手段60から、前方に向かって照射されている。リライタブルラベル101に表示された情報は、総て消去されている。
【0062】
図3(A)〜(C)に示すように、レーザービームLを、リライタブルラベル101の移動方向と同一方向に、リライタブルラベル101の移動速度よりも遅い走査速度で走査させることにより、前後に走査距離を延ばすことができ、走査時間を長くすることができる。これにより、十分にリライタブルラベル101にエネルギーを与えることができ、確実に表示情報を消去することができる。
【0063】
図4は、比較例として、従来の第1のレーザー消去装置による消去動作の一例を示した図である。従来の第1のレーザー消去装置160においては、レーザービームLを固定させ、ベルトコンベア12の移動によりレーザービームのリライタブルラベル101への照射位置を移動させ、消去を行っている。なお、今まで説明した構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図4(A)は、消去開始点における消去動作を示した図である。消去開始点においては、リライタブルラベル101の前方の端部がレーザー消去手段60の正面に到達したときに消去を開始する。
【0065】
図4(B)は、消去中間点における消去動作を示した図である。消去中間点においても、レーザービームLは固定しており、リライタブルラベル101の中心がレーザー消去手段60の正面に来た状態となっている。
【0066】
図4(C)は、消去終了点における消去動作を示した図である。消去終了点においては、リライタブルラベル101の後方端部がレーザー消去手段60の正面に位置する状態となっている。
【0067】
このように、従来の第1のレーザー消去手段160においては、走査距離はリライタブルラベル101と同じ幅しか無く、リライタブルラベル101に十分なエネルギーを与えようとすると、ベルトコンベア12を相当にゆっくりとした移動速度にする必要があり、タクトタイムが大幅に増加してしまう。
【0068】
図5は、比較例として、従来の第2のレーザー消去装置による消去動作の一例を示した図である。従来の第2のレーザー消去装置161においては、リライタブルラベル101を停止させ、レーザービームLを走査させて表示情報の消去を行っている。なお、今まで説明した構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図5(A)は、消去開始点における消去動作を示した図である。消去開始点においては、リライタブルラベル101がレーザー消去装置161の正面に位置したときに停止する。そして、リライタブルラベル101の前方端部にレーザービームLが照射される。この後、レーザービームLは後方に向かって偏向移動してリライタブルラベル101を走査する。
【0070】
図5(B)は、消去中間点における消去動作を示した図である。消去中間点においては、レーザービームLが後方に移動し、リライタブルラベル101の中心まで走査されている。
【0071】
図5(C)は、消去終了点における消去動作を示した図である。消去終了点においては、レーザービームLがリライタブルラベル101の後方端部まで移動し、リライタブルラベル101の走査が終了する。
【0072】
このように、従来の第2のレーザー消去装置161においては、レーザービームLの走査距離は、リライタブルラベル101の幅と同じ長さしか無い。また、消去動作を行う場合には、ベルトコンベア12を停止させる必要があるので、タクトタイムが長くなってしまう。
【0073】
図3〜図5において説明したように、本実施例に係るレーザー消去装置80は、従来のレーザー消去装置160、161と比較して、走査距離及び走査時間を長くとることができるとともに、ベルトコンベア12を移動させたまま表示情報の消去ができるので、タクトタイムも大幅に向上していることが分かる。
【0074】
図6は、本発明の実施例に係るレーザー消去装置を用いたレーザー消去方法の動作フローを示した図である。なお図6においては、速度補正を行う場合の動作フローを示している。なお、今まで説明した構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略するものとする。
【0075】
まず、スタート時に、走査長、走査方向、走査速度及びレーザー出力パワーは、ユーザに設定され、消去条件設定手段73内の不揮発性メモリ74に保存されている。
【0076】
ステップ100では、消去動作制御手段77が、消去動作設定手段73に設定保存された走査長、走査方向から、走査の始点位置と終点位置を計算し、ガルバノ制御手段79に渡す。これは、ガルバノ制御手段79がガルバノドライバ53に対し、指示値を更新する周期である。
【0077】
ステップ110では、消去動作制御手段77が、消去条件設定手段73に記憶された走査長と走査速度から、細かなサイクルで所定長だけレーザービームLを移動させるための時間間隔を計算し、ガルバノ制御手段79に渡す。
【0078】
ステップ120では、消去動作制御手段77が、消去条件設定手段73で設定記憶されているレーザー出力パワーを電流値に変換し、レーザー制御手段78に渡す。
【0079】
ステップ130では、消去動作制御手段77が、ガルバノ制御手段79に指示を出し、ガルバノミラー50のミラー52を走査始点位置に移動させる。
【0080】
ステップ140では、消去準備完了信号を「High」にする。
【0081】
ステップ150では、消去開始信号が「High」になるのを待機する。消去開始信号が「High」になるまで、ステップ150を繰り返す。消去開始信号が「High」になったら、ステップ160に進む。
【0082】
ステップ160では、消去中信号を「High」にし、消去を開始する。また、その際、ステップ170に示すように、消去準備完了信号を「Low」にする。
【0083】
ステップ180は、エンコーダ15等のリライタブルラベル101の移動速度を検出する手段を用いて、リライタブルラベル101の移動速度を取得する。
【0084】
ステップ190では、取得したリライタブルラベル101の移動速度に基づいて、速度補正を許可するか否かの判定を行う。速度補正を許可するか否かは、取得した移動速度と設定された移動速度の誤差の大きさにより判定する。つまり、誤差が小さく、所定値未満であれば、誤差補正は行う必要が無いと判定し、誤差補正を許可しない。一方、誤差が所定値以上であれば、誤差補正を行う許可をする。なお、ステップ190における判定演算は、消去条件設定手段73の走査速度設定手段76で行うようにしてもよいし、消去条件制御手段77で行うようにしてもよい。
【0085】
ステップ190において、速度補正が許可されないと判定された場合には、ステップ240に進む。一方、速度補正が許可されると判定された場合には、ステップ200に進む。
【0086】
ステップ200では、取得した実際に移動しているリライタブルラベル101の移動中の移動速度を用いて、走査速度の計算を行う。なお、図6のステップ200では、リライタブルラベル101の移動速度の1/2が走査速度に設定された例が挙げられている。これらの演算方法は、用途に応じて種々定められてよい。
【0087】
ステップ210においては、走査速度設定手段76により、ステップ190の計算結果に基づいて、走査速度が設定される。
【0088】
ステップ220では、速度補正により再設定された走査速度に対応して、レーザーパワーの補正計算が行われる。走査速度が速くなると、同じ幅のリライタブルラベル101に対して、レーザービームLの走査距離及び照射時間が短くなるので、同じエネルギーを与える場合には、レーザーパワーを増加させる必要が出てくる。そのような補正演算を、ステップ220で行う。
【0089】
ステップ230では、ステップ220の計算結果に基づいて、レーザーパワーの設定を行う。
【0090】
ステップ240では、消去開始ディレイ時間を待つが、消去開始ディレイ時間は、ゼロに設定されていてもよく、必要に応じて設ければよい。
【0091】
ステップ250では、消去動作制御手段77が、ガルバノ制御手段79に指示して、走査を開始すると同時に、レーザー制御手段78に指示して、レーザー光源40を点灯させる。
【0092】
ステップ260では、レーザービームLの走査が開始する。図3で説明したように、リライタブルラベル101の移動方向と同じ方向で、設定された走査速度で走査を行う。
【0093】
ステップ270では、走査が終了したか否かの判定が行われる。走査終了の判定は、ステップ100で計算した走査の終点位置に達したか否かで判定される。この判定は、具体的にガルバノドライバ53を制御しているガルバノ制御手段79で行うようにしてよい。走査終了と判定されたときには、ガルバノ制御手段79は、消去動作制御手段77に走査終了の通知を行い、ステップ280に進む。
【0094】
ステップ280では、消去動作制御手段77が、レーザー制御手段78に指示して、レーザー光源40を消灯させる。
【0095】
ステップ290では、消去中信号が「Low」に切り替えられる。
【0096】
ステップ300では、リライタブルラベル101の対象が変わった等の何らかの条件変更があったか否かが判定される。条件変更があった場合には、一旦動作フローを終了し、最初から処理フローをやり直す。一方、条件変更が無い場合には、ステップ130から動作フローを繰り返す。
【0097】
このように、本実施例に係るレーザー消去方法の動作フローによれば、適切に走査速度の補正を行うとともに、それに応じたレーザーパワー等の補正を行うことができる。
【0098】
なお、ステップ190において、速度補正を行うか否かの判定を行っているが、このステップを設けずに、常に補正を行う動作フローとしてもよい。
【0099】
また、エンコーダ15等のリライタブルラベル101の移動速度を検出する手段を備えず、速度補正を行わない場合には、ステップ180、190、220、230を消去し、ステップ190の走査速度計算において、ベルトコンベア12に設定された移動速度をラベル速度として用いれば、同じように本実施例に係るレーザー消去方法を実行することができる。
【0100】
図7は、リライタブルラベル101に用いられている熱可逆記録媒体を用いた発色と消色について説明するための図である。
【0101】
熱可逆記録媒体は、融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0102】
図7において、まず、初め消色状態Aにある記録層を昇温していくと、溶融温度T2にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態Bとなる。溶融発色状態Bから急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態Cとなる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態A、あるいは急冷による発色状態Cよりも相対的に濃度の低い状態となる。
【0103】
具体的には、レーザー書き込み装置90において、レーザービームLWを熱可逆記録媒体に照射すると、照射した部分は、温度が上昇し、消色状態Aから、溶融発色状態Bになる。レーザー書き込み装置90のレーザービームLWは、スポット的なビームであり、一筆書きで描画を行うため、レーザービームLWが移動し、照射された部分が急激に冷える状態を作ることができる。よって、溶融発色状態Bから、発色状態Cに移行できる。
【0104】
一方、発色状態Cから再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T1にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態Aに戻る。
【0105】
溶融状態から急冷して得た発色状態Cは、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
【0106】
具体的には、レーザー消去装置80により、熱可逆記録媒体をレーザービームLで照射すると、照射された部分は温度が上昇するので、発色状態CからD、Eへと移行することができる。レーザー消去装置80では、レーザービームLを縦長のライン状のビームでゆっくりと照射するので、温度が徐々に上昇し、発色状態C→D→E→消色状態Aへと移行させることができる。
【0107】
なお、前記記録層を溶融温度T2以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に溶融温度T2と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しの記録消去による媒体の劣化を抑えられる。
【0108】
本実施例に係るレーザー消去装置80及びレーザー消去方法においては、十分時間を掛けて熱可逆記録媒体をレーザー照射し、十分なエネルギーを熱可逆記録媒体に付与できるので、十分な消色効果を得ることができる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、搬送容器等に貼り付けられるラベルの記録情報を消去するレーザー消去装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
10 ローラーコンベア
11 ローラー
12 ベルトコンベア
13 ベルト
15 エンコーダ
20、21、22 センサ
30、31、32 ストッパ
40 レーザー光源
41、42、43、44、45 レンズ
46 レーザードライバ
50 ガルバノミラー
51 ガルバノメータ
52 ミラー
53 ガルバノドライバ
60 レーザー消去手段
70 システム制御装置
71 端子台
72 操作盤
73 消去条件設定手段
74 不揮発性メモリ
75 レーザーパワー設定手段
76 走査速度設定手段
77 消去動作制御手段
78 レーザー制御手段
79 ガルバノ制御手段
80 レーザー消去装置
90 レーザー書き込み装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2006−231647号公報
【特許文献2】特開2007−76122号公報
【特許文献3】特開2001−88333号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体が所定の移動速度で移動しているときに、前記熱可逆記録媒体にレーザービームを照射し、前記熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去装置であって、
前記レーザービームを、前記熱可逆媒体の移動方向と同じ方向に、前記所定の移動速度よりも小さい所定の走査速度で走査させ、前記表示情報を消去するレーザー走査手段を有することを特徴とするレーザー消去装置。
【請求項2】
前記レーザービームの走査長は、前記熱可逆記録媒体の幅の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のレーザー消去装置。
【請求項3】
前記レーザー走査手段は、前記レーザービームを偏向させる偏向手段と、
該偏向手段を駆動する駆動手段と、
前記熱可逆記録媒体の前記所定の移動速度に基づいて、前記レーザービームの走査速度を設定する速度設定手段と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー消去装置。
【請求項4】
移動中の前記熱可逆記録媒体の移動速度を検出する移動速度検出手段を更に有し、
前記速度設定手段は、前記移動速度検出手段により検出された前記移動速度に基づいて、前記走査速度を補正して設定することを特徴とする請求項3に記載のレーザー消去装置。
【請求項5】
前記レーザービームのレーザーパワーを、補正された前記走査速度に応じて設定するレーザー設定手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載のレーザー消去装置。
【請求項6】
温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体が所定の移動速度で移動しているときに、前記熱可逆記録媒体にレーザービームを照射し、前記熱可逆記録媒体の表示情報を消去するレーザー消去方法であって、
前記熱可逆記録媒体の前記所定の移動速度よりも遅い速度で前記レーザービームの走査速度を設定する工程と、
前記熱可逆記録媒体の移動方向と同じ方向に、設定された前記走査速度で前記レーザービームを走査させ、前記熱可逆記録媒体の前記表示情報を消去する工程と、を有することを特徴とするレーザー消去方法。
【請求項7】
前記レーザービームの走査長は、前記熱可逆記録媒体の幅の長さよりも長いことを特徴とする請求項6に記載のレーザー消去方法。
【請求項8】
移動中の前記熱可逆記録媒体の移動速度を検出する工程と、
検出された前記移動速度に基づいて、前記レーザービームの前記走査速度を補正して設定する工程と、を更に有することを特徴とする請求項6又は7に記載のレーザー消去方法。
【請求項9】
前記レーザービームのレーザーパワーを、補正された前記走査速度に応じて設定することを特徴とする請求項8に記載のレーザー消去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−56257(P2012−56257A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203707(P2010−203707)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】