説明

レーザー溶着用難燃性樹脂組成物及び成形体

【課題】意匠性を損なうことなく、高いレーザー透過性と優れた難燃性とを両立でき、優れた樹脂特性を有するレーザー溶着用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】前記樹脂組成物を、ポリエステル系樹脂(A2)およびスチレン系樹脂(A1)で構成された熱可塑性樹脂(A)と、難燃剤(B)(例えば、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなど)とで構成するとともに、樹脂組成物中に含まれる有機酸又はその塩の割合を、2000ppm以下とする。前記樹脂組成物において、難燃剤(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1〜70重量部程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光の照射による溶着を利用して、被接合体である樹脂成形体に接合させるための組成物であって、レーザー光を透過する側の樹脂成形体(第1の樹脂成形体)を構成するためのレーザー溶着用樹脂組成物、この樹脂組成物で構成された成形体(第1の樹脂成形体)及びこの成形体が被接合体(第2の樹脂成形体)に接合された複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂部材同士を接合させる方法には、接着剤や粘着剤を介して樹脂部材を接着する方法が知られているが、リサイクル性や作業工程の短縮などの点から樹脂部材同士を溶着により直接接合させる方法が着目されている。溶着による接合方法のうち、特にレーザー光照射を利用するレーザー溶着法は、熱板溶着法や超音波溶着法、振動溶着法に比べて、熱や振動の影響を受けにくく、樹脂成形品の形状に大きく依存することなく効率よく接合可能であるという利点があり、近年注目されている。しかし、レーザー溶着法では、樹脂成形体を溶着する場合、レーザー透過側の樹脂部材はレーザー光に対して高い透過性が要求され、通常、10%以上の透過率がないと、充分な溶着が得られない。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂などに代表されるポリエステル系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、成形加工性などの特性に優れるため、家電やオフィスオートメーション(OA)機器や自動車部品などの幅広い用途に利用されている。このようなポリエステル系樹脂のレーザー溶着において、結晶性の高いポリエステル系樹脂(例えば、PBTなど)は、レーザー光の透過率が低く、レーザー透過側の樹脂部材として使用する場合、充分に溶着するためには、部材を薄肉化する必要が生じる。さらに、ポリエステル系樹脂で構成された部材は、ひけや反りが発生し易く、耐衝撃性も充分ではない。
【0004】
そこで、特開2003−292752号公報(特許文献1)には、PBT系樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリフェニレンオキシド、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート及びPETから選択された少なくとも一種の樹脂(B)とで構成され、樹脂(B)の割合が、PBT系樹脂(A)及び樹脂(B)の合計に対して1〜50重量%であるレーザー溶着用樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかし、この樹脂組成物でも、剛性などの機械的特性が充分ではない。例えば、好ましい樹脂として挙げられているポリカーボネートを配合した場合、流動性が低下する。また、ポリカーボネートとPBTとはエステル交換反応を起こし易く、樹脂特性が不安定化したり、結晶化速度が遅くなって、ひけや反りが発生し易い。また、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)を配合した場合には、耐衝撃性が低下して脆くなる。
【0006】
一方、特開2004−262961号公報(特許文献2)には、ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体を重合して得られるゴム強化樹脂(A1)、又はこのゴム強化樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(b)との組成物(A2)を含む熱可塑性樹脂(A)からなり、厚さ4mmの試験片として成形した時の波長808nmの光の透過率が5%以上であるレーザー溶着用成形材料が開示されている。
【0007】
しかし、ABS樹脂などのゴム強化樹脂を用いた場合には、ポリエステル系樹脂に比べて、耐熱性や耐薬品性、成形加工性などが低下するだけでなく、溶着性も充分でない。さらに、ゴム強化樹脂の種類によっては、レーザー溶着によりガスが発生し、溶着性が低下する。
【0008】
また、このようなレーザー透過可能な樹脂組成物には、用途(電気部品用など)に応じて、高い難燃性が必要となる場合がある。例えば、WO2003/085046号公報(特許文献3)には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(b1)、スチレン系樹脂(b2)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(b3)、及びアクリル系樹脂(b4)から選択された少なくとも一種の樹脂(B)とで構成されたレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が開示されている。この文献には、前記樹脂組成物に、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填剤(無機充填剤など)、染顔料などの着色剤、分散剤、可塑剤などを添加してもよいことが記載されている。
【0009】
さらに、特開2005−187798号公報(特許文献4)には、ポリブチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート共重合体とからなるポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂(B)、2種類以上の有機系顔料(C)からなり、前記樹脂(B)が、前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計に対し1〜50重量%、前記顔料(C)が前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計量100重量部に対し0.02〜0.5重量部であるレーザ溶着用着色樹脂組成物が開示されている。この文献には、前記レーザ溶着用着色樹脂組成物には、効果を損なわない範囲で、離型剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、結晶核剤、末端封鎖剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加できることが記載されている。
【0010】
しかし、レーザー透過可能な樹脂組成物に、難燃剤を添加すると、通常、レーザー透過性(又は透明性)が低下するため、レーザー溶着性が低下する。このため、レーザー透過性の成形体又は部材に、レーザー透過性と高い難燃性とを両立させて付与することは困難である。
【0011】
また、特開2005−314602号公報(特許文献5)には、ゴム強化スチレン系樹脂を含有する難燃性樹脂組成物(I)からなる成形材料であって、アンチモン化合物の含有量が前記難燃性樹脂組成物(I)全体の2質量%以下であり、難燃性がUL規格のV−2以上である、レーザー溶着される成形品用の成形材料が開示されている。この文献には、難燃性樹脂組成物(I)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;PA6、PA66、PA46、PA12などポリアミド樹脂;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテルまたはポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂などのポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアセタール、塩化ビニル樹脂、ポリスルフォン、PPS、ポリエーテルスルフォン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、EVOHなどの他のポリマーを含んでいてもよいことが記載されている。また、この文献には、難燃性樹脂組成物(I)は、難燃性を向上させるために、通常、難燃剤、例えば、水酸化マグネシウム、アルミナ、硼酸カルシウム、低融点ガラス等の無機系難燃剤、赤リン等の無機リンや有機リン系難燃剤などのリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコーン化合物、有機金属化合物、ヒンダードアミン系難燃剤等の有機系難燃剤などを含んでいてもよいことが記載されている。
【0012】
しかし、この文献の樹脂組成物では、ある程度難燃性を向上できても、ゴム強化スチレン系樹脂を使用するため、前記のようにレーザー溶着によりガスが発生し、溶着性が低下する虞がある。しかも、ガス発生により、レーザー溶着部の外観又は意匠性が低下する。
【特許文献1】特開2003−292752号公報(請求項1、段落番号[0020])
【特許文献2】特開2004−262961号公報(請求項1)
【特許文献3】WO2003/085046号公報(請求項1、第13頁26〜29行)
【特許文献4】特開2005−187798号公報(請求項1、段落番号[0037])
【特許文献5】特開2005−314602号公報(請求項1、段落番号[0034][0039])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、レーザー光照射により、被接合体(樹脂成形体)に対して強固に接合可能であり、かつ各種の優れた樹脂特性(耐熱性、耐衝撃性など)および難燃性を付与できるレーザー溶着用難燃性樹脂組成物及びその成形体、並びにこの成形体を用いたレーザー溶着方法及びその方法により得られた複合成形体を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、スチレン系樹脂(特にゴム含有スチレン系樹脂)およびポリエステル系樹脂で構成しても、外観や意匠性を損なうことなく、かつ被接合体に対して強固に接合可能であるレーザー溶着用難燃性樹脂組成物及びその成形体、並びにこの成形体を用いたレーザー溶着方法及びその方法により得られた複合成形体を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、被接合体に対してレーザー溶着しても、外観や意匠性を低下させることがなく、レーザー透過性(又は透明性)と難燃性とを高いレベルで両立できるレーザー溶着用難燃性樹脂組成物、及びその成形体、並びにこの成形体を用いたレーザー溶着方法及びその方法により得られた複合成形体を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、難燃剤を含んでいても、レーザー透過性の低下を高いレベルで抑制でき、レーザー光照射により被接合体(樹脂成形体)に対して強固に接合可能であり、かつ各種の樹脂特性に優れた難燃性樹脂組成物及びその成形体、並びにこの成形体を用いたレーザー溶着方法及びその方法により得られた複合成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、スチレン系樹脂(特にゴム含有スチレン系樹脂)およびポリエステル系樹脂と難燃剤(特に、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなどのレーザー透過性の低下を高いレベルで抑制できる難燃剤)とを組み合わせて、樹脂組成物中における有機酸又はその塩の割合を一定の範囲に調整すると、外観や意匠性を損なうことなく、強固にレーザー溶着が可能であり、かつ耐衝撃性、成形性、耐熱性などの各種樹脂特性にも優れるだけでなく、高い難燃性を付与できるレーザー溶着用難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物は、第2の樹脂成形体に対して、レーザー光の照射により接合可能であり、かつレーザー光を透過する側の第1の樹脂成形体を構成するための樹脂組成物であって、ポリエステル系樹脂(A1)およびスチレン系樹脂(A2)で構成された熱可塑性樹脂(A)と、難燃剤(B)とで構成され、樹脂組成物中に含まれる有機酸又はその塩の割合が、2000ppm以下のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物である。
【0019】
前記ポリエステル系樹脂(A1)は、少なくともC2−4アルキレンアリレート単位を含む芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。また、前記スチレン系樹脂(A2)は、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(例えば、AS樹脂などのアクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を共重合成分とするスチレン系樹脂)、および塊状重合法で得られたゴム含有スチレン系樹脂(例えば、(i)耐衝撃性ポリスチレン、及び(ii)アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を共重合成分とするゴム含有スチレン系樹脂から選択された少なくとも1種)から選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。
【0020】
前記組成物において、スチレン系樹脂(A2)は、特に、塊状重合法で得られたスチレン系樹脂であってもよい。このような塊状重合法で得られたスチレン系樹脂には、樹脂中に混在する有機酸又はその塩が極めて少なく、このため、樹脂組成物中の有機酸又はその塩の含有割合を低減するのに有効である。また、前記スチレン系樹脂(A2)は、ナトリウム、塩素及び硫酸イオンの含有割合が合計で10ppm以下のスチレン系樹脂であってもよい。
【0021】
前記組成物において、ポリエステル系樹脂(A1)とスチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=90/10〜10/90程度であってもよい。
【0022】
前記難燃剤(B)は、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)(例えば、トリ(ハロアリール)シアヌレート)および芳香族縮合リン酸エステル(B2)から選択された少なくとも1種であってもよい。これら特定の難燃剤を用いると、樹脂の種類によらず(例えば、PBT樹脂などのレーザー光透過率が比較的小さい樹脂であっても)、レーザー溶着性を損なうことなく効率よく高い難燃性を付与できる。
【0023】
なお、ハロゲン化(イソ)シアヌール酸エステルは、難燃化効果が特に高いため、前記難燃剤(B)は、少なくともハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)で構成されていてもよい。前記組成物において、難燃剤(B)の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1〜70重量部程度であってもよい。
【0024】
前記有機酸又はその塩は、例えば、C6−30飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、テルペン酸及びC6−30アルキル基を有する有機スルホン酸から選択された少なくとも一種の有機酸又はその塩であってもよい。
【0025】
代表的な前記組成物には、(1)ポリエステル系樹脂(A1)が、少なくともC2−4アルキレンアリレート単位を含む芳香族ポリエステル系樹脂であり、(2)スチレン系樹脂(A2)が、塊状重合法で得られたスチレン系樹脂であって、(i)芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体との共重合体、及び(ii)ゴム含有スチレン系樹脂から選択された少なくとも1種であり、(3)ポリエステル系樹脂(A1)とスチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)が、前者/後者=85/15〜40/60であり、(4)難燃剤(B)が、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)および芳香族縮合リン酸エステル(B2)から選択された少なくとも1種であり、(5)難燃剤(B)の割合が、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、3〜60重量部であり、(6)樹脂組成物中に含まれる有機酸又はその塩の割合が、500ppm以下である樹脂組成物などが含まれる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、レーザー透過性および難燃性に優れ、例えば、(i)厚み(組成物又は成形体の厚み)1.5mmで測定したとき、UL94に基づく難燃性の等級でV−2以上であり、かつ(ii)厚み(組成物又は成形体の厚み)2mmで測定したとき、レーザー光線透過率が10%以上であってもよい。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物では、特定の難燃剤を使用するなどの方法により、高いレベルで熱可塑性樹脂のレーザー光線透過率を保持でき、例えば、前記樹脂組成物において、下記式で表されるレーザー光線透過保持率R(%)は、50%以上であってもよい。
【0028】
R(%)=(T2/T1)×100
(式中、Rはレーザー光線透過保持率、T1は、熱可塑性樹脂(A)の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)、T2は前記熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(B)とで構成されている樹脂組成物(前記樹脂組成物)の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)を示す。)。
【0029】
本発明には、前記樹脂組成物で構成された樹脂成形体(第1の樹脂成形体)も含まれる。また、本発明には、前記樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とがレーザー溶着により接合されている複合成形体も含まれる。さらに、本発明には、前記樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とをレーザー光を照射することにより接合する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物では、レーザー透過側の成形体又は部材を構成するための樹脂組成物を、特定の樹脂(含有スチレン系樹脂およびポリエステル系樹脂)と難燃剤とで構成するとともに、樹脂組成物中における有機酸又はその塩の割合を調整するため、レーザー光照射により、被接合体(樹脂成形体)に対して強固に接合可能であり、かつ各種の優れた樹脂特性(耐熱性、耐衝撃性など)および難燃性を付与できる。また、本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物は、前記のような構成により、レーザー溶着におけるガス発生を高いレベルで抑制できるため、スチレン系樹脂(特にゴム含有スチレン系樹脂)およびポリエステル系樹脂で構成しても、外観や意匠性を損なうことなく、かつ被接合体に対して強固に接合可能である。
【0031】
さらに、本発明の組成物では、前記特定の樹脂と特定の難燃剤とを組み合わせることにより、被接合体に対してレーザー溶着しても、外観や意匠性を低下させることがなく、レーザー透過性(又は透明性)と難燃性とを高いレベルで両立できる。特に、本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物は、難燃剤を含んでいても、レーザー透過性の低下を高いレベルで抑制でき、レーザー光照射により被接合体(樹脂成形体)に対して強固に接合可能であり、かつ各種の樹脂特性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
[レーザー溶着用樹脂組成物]
本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物(単に、樹脂組成物、組成物などということがある)は、熱可塑性樹脂(A)(単に、熱可塑性樹脂、樹脂などということがある)と、難燃剤(B)とで少なくとも構成されている。
【0033】
[熱可塑性樹脂(A)]
熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル系樹脂(A1)およびスチレン系樹脂(A2)で少なくとも構成されている。
【0034】
(ポリエステル系樹脂(A1))
ポリエステル系樹脂(A1)は、熱可塑性ポリエステル系樹脂であればよく、通常、芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。
【0035】
芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステルを少なくとも含むジカルボン酸成分と、ジオール成分との重縮合物が挙げられる。
【0036】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜14程度の芳香族ジカルボン酸、これらのエステル(例えば、メチルエステルなどのC1−3アルキルエステルなど)などが挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの芳香族ジカルボン酸のうち、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸が好ましい。
【0037】
ジカルボン酸成分には、芳香族ジカルボン酸に加えて、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの炭素数2〜14程度の飽和脂肪族ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、アコニット酸などの不飽和脂肪族トリカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸など)、これらのエステル(例えば、メチルエステルなどのC1−3アルキルエステルなど)などの非芳香族ジカルボン酸成分が含まれていてもよい。これらの非芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0038】
ジオール成分としては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−12アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール)、アルケンジオール(1,4−ブテンジオールなど)などの不飽和脂肪族グリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)、ポリC2−4アルキレングリコールなどが挙げられる。これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ジオール成分は、特に、少なくとも(アルカンジオール、特にC2−4アルカンジオール)で構成してもよい。
【0039】
代表的な芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート)、このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど)などのホモ又はコポリアルキレンアリレートの他、アルキレンアリレート単位(特に、アルキレンテレフタレート単位)を主成分として(例えば、50重量%以上)含むコポリエステル]などが挙げられる。これらのポリアルキレンアリレート系樹脂は、非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合単位としてもよい。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。
【0040】
ポリエステル系樹脂(特に芳香族ポリエステル系樹脂)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
(スチレン系樹脂(A2))
スチレン系樹脂(A2)としては、少なくとも芳香族ビニル系単量体(又はスチレン系単量体)を重合成分とする樹脂(又は重合体)が挙げられる。
【0042】
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、ハロゲン置換スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなど)、α位にアルキル基が置換したα−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)などが挙げられる。これらの芳香族ビニル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの芳香族ビニル単量体のうち、通常、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン(特にスチレン)などのスチレン系単量体が使用される。
【0043】
スチレン系樹脂は、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体(共重合性単量体)との共重合体であってもよい。共重合性単量体(ビニル系単量体)には、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物、イミド系単量体などが含まれる。その他、ビニル系単量体は、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル系単量体であってもよいが、溶着性の点から、非ハロゲン系単量体が好ましい。
【0044】
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらのシアン化ビニル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシアン化ビニル系単量体のうち、通常、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリルが使用される。
【0045】
アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル]、(メタ)アクリル酸シクロアルキル(例えば、(メタ)アクリル酸シクロへキシルなど)、(メタ)アクリル酸アリール(例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなど)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−4アルキルエステルなど]などが挙げられる。これらのアクリル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアクリル系単量体のうち、通常、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステルが好適に使用される。なお、本明細書において、「アクリル系単量体」とはメタクリル系単量体を含む意味に用いる。すなわち、本明細書では、アクリル系単量体とメタクリル系単量体とを「アクリル系単量体」と総称する。
【0046】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。これらのビニルエステル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はその酸無水物などが挙げられる。これらの(無水)不飽和多価カルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
イミド系単量体としては、例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド(例えば、N−C1−4アルキルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(例えば、N−シクロヘキシルマレイミドなど)、N−アリールマレイミド(例えば、N−フェニルマレイミドなど)などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。これらのイミド系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
これらの共重合性単量体のうち、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどのアクリル系単量体、(無水)マレイン酸などの(無水)不飽和多価カルボン酸、又はこれらを組み合わせた混合モノマー、特に、シアン化ビニル系単量体(好ましくはアクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリル)、アクリル系単量体(好ましくはメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステル)、又はこれらを組み合わせた混合モノマーが好ましい。
【0050】
芳香族ビニル系単量体と、共重合性単量体(例えば、シアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体)との共重合体において、芳香族ビニル系単量体と共重合性単量体との割合(モル比)は、例えば、前者/後者=99/1〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70程度であってもよい。なお、スチレン系樹脂が、後述するゴム含有スチレン系樹脂である場合には、特に、共重合性単量体の使用量は、通常、全単量体中1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度であってもよい。
【0051】
スチレン系樹脂(後述のゴム含有スチレン系樹脂では、ゴムを除くマトリックス樹脂としてのスチレン系樹脂)の重量平均分子量は、例えば、10,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜500,000、さらに好ましくは100,000〜500,000程度であってもよい。
【0052】
また、スチレン系樹脂は、樹脂組成物に耐衝撃性などの優れた特性を付与するという観点から、ゴム成分を含む樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂)であってもよい。ゴム含有スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂とゴム成分(又はゴム状重合体)との混合(又はブレンド)、共重合(グラフト重合、ブロック重合など)などにより、スチレン系樹脂で構成されたマトリックス中にゴム状重合体(ゴム成分)が粒子状に分散した重合体であってもよい。ゴム含有スチレン系樹脂は、通常、ゴム状重合体の存在下、少なくとも芳香族ビニル単量体を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)で重合することにより得られるグラフト共重合体(ゴムグラフトスチレン系重合体)である。なお、後述するように、本発明では、ゴム含有スチレン系樹脂として、塊状重合法で得られた樹脂を好適に用いることができる。
【0053】
ゴム状重合体としては、例えば、ジエン系ゴム[ポリブタジエン(低シス型又は高シス型ポリブタジエン)、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合ゴムなど]、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム(ポリアクリル酸C2−8アルキルエステルを主成分とする共重合エラストマーなど)、エチレン−α−オレフィン系共重合体[エチレン−プロピレンゴム(EPR)など]、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体[エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエン共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)などが挙げられる。なお、これらのゴム状重合体において、共重合体はランダム又はブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体等が含まれる。これらのゴム状重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
好ましいゴム成分は、共役1,3−ジエン又はその誘導体の重合体、特にポリブタジエン(ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴムである。
【0055】
ゴム含有スチレン系樹脂において、ゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂全体に対して1〜60重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜30重量%(特に10〜30重量%)程度である。
【0056】
スチレン系樹脂で構成されたマトリックス中に分散するゴム状重合体の形態は、特に限定されず、サラミ構造、コア/シェル構造、オニオン構造などであってもよい。
【0057】
分散相を構成するゴム状重合体の粒子径は、例えば、重量平均粒子径230〜3000nm、好ましくは240〜2000nm、さらに好ましくは240〜1500nm程度の範囲から選択できる。また、ゴム状重合体のグラフト率は、5〜150%、好ましくは10〜150%程度である。
【0058】
なお、スチレン系樹脂は、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)を用いて得られる。例えば、ゴム非含有スチレン系樹脂は、芳香族ビニル系単量体(および必要に応じてシアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体などの共重合性単量体)を慣用の方法(塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)で重合することにより得ることができる。また、ゴム含有スチレン系樹脂は、通常、ゴム状重合体の存在下、少なくとも芳香族ビニル単量体を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)で重合することにより得られる。しかし、溶液重合、乳化重合などの方法では、反応系中の他の成分(重合に用いる溶媒、界面活性剤、重合開始剤、塩析に用いる塩など)に由来する不純物が樹脂中に混在しやすい。
【0059】
そこで、本発明では、後述の有機酸(又はその塩)などの不純物が樹脂中に混在しにくい重合方法(懸濁重合、塊状重合、塊状懸濁重合など)により得られたスチレン系樹脂を好適に用いることができる。特に、塊状重合で得られたスチレン系樹脂は、乳化重合などで得られた樹脂に比べて、有機酸又はその塩、さらにはナトリウム、塩素および硫酸イオンなどの不純物の含有量を高いレベルで低減しやすく、結果として、樹脂組成物中のこれらの不純物の含有量を低減させるのに有効である。
【0060】
このため、スチレン系樹脂(A2)は、塊状重合法で得られた樹脂、すなわち、少なくとも芳香族ビニル系単量体を塊状重合することにより得られた樹脂[例えば、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体とを塊状重合して得られた共重合体、ゴム状重合体の存在下で少なくとも芳香族ビニル系単量体を塊状重合して得られたゴム含有スチレン系樹脂など]であってもよい。
【0061】
代表的なスチレン系樹脂としては、例えば、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂(ゴム非含有スチレン系樹脂){例えば、ポリスチレン(GPPS)、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体との共重合体[例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など]、芳香族ビニル系単量体と無水不飽和カルボン酸との共重合体[例えば、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)など]など}、ゴム含有スチレン系樹脂{例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、メタクリル酸メチル変性HIPS(透明HIPS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル変性ABS樹脂(透明ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体(MBS樹脂)、AXS樹脂、メタクリル酸メチル変性AXS樹脂など}が挙げられる。なお、前記AXS樹脂とは、ゴム成分X(アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)にアクリロニトリルAとスチレンSとがグラフト重合した樹脂を指し、具体的には、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン・プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)などが挙げられる。ゴム含有スチレン系樹脂(およびゴム非含有スチレン系樹脂)は、特に、塊状重合で得られた樹脂であってもよい。
【0062】
これらのスチレン系樹脂のうち、耐衝撃性ポリスチレン、アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を重合成分(又は共重合成分)とするスチレン系樹脂[アクリル系単量体単位及び/又はシアン化ビニル系単量体単位を構成単位とするスチレン系樹脂、例えば、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体との共重合体(例えば、AS樹脂などのスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体との共重合体)などのゴム成分を含有しないスチレン系樹脂、アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を共重合成分とするゴム含有(ゴムグラフト)スチレン系樹脂(ゴム成分にアクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体とスチレン系単量体とがグラフト重合した共重合体、例えば、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、メタクリル酸変性ABS樹脂など)など]などが好ましい。これらのスチレン系樹脂は、前記のように、特に塊状重合法で得られた樹脂であるのが好ましい。
【0063】
これらのスチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
なお、スチレン系樹脂に含まれるナトリウム、塩素及び硫酸イオンの割合は、例えば、合計で10ppm(μg/g)以下(例えば、0又は検出限界〜10ppm)、好ましくは0〜5ppm、さらに好ましくは0〜1ppm(特に0〜0.5ppm)程度であってもよい。
【0065】
このようなナトリウム、塩素及び硫酸イオンは、例えば、ゴム含有スチレン系樹脂の製造過程で混入するが、このような元素やイオンが存在すると、レーザー溶着性が低下し、ガス発生の原因ともなる。これらの元素やイオンの含有量は、スチレン系樹脂を精製することにより低減してもよいが、製造方法の調整や選択により低減してもよい。例えば、前記のように、乳化重合や懸濁重合、溶液重合(特に乳化重合)でスチレン系樹脂を製造する場合には、重合に用いる溶媒、界面活性剤、重合開始剤、塩析に用いる塩などに由来する元素やイオンが樹脂に混入するため、塊状重合で製造したスチレン系樹脂を用いてもよい。
【0066】
ポリエステル系樹脂(特に芳香族ポリエステル系樹脂)(A1)とスチレン系樹脂(特にゴム含有スチレン系樹脂)(A2)との割合(重量比)は、前者/後者=95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、好ましくは90/10〜20/80、さらに好ましくは85/15〜30/70(例えば、83/17〜35/65)、通常85/15〜40/60(例えば、80/20〜50/50)程度であってもよい。
【0067】
(他の熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル系樹脂(A1)およびスチレン系樹脂(A2)で少なくとも構成すればよく、他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、レーザーを透過可能であれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、例えば、ポリアミド系樹脂(ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド系樹脂;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド系樹脂;脂環族ポリアミド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネート、水添ビスフェノール型ポリカーボネートなど)、ポリフェニレンオキシド系樹脂[ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンとのブレンド、ポリスチレンがグラフトしたポリフェニレンオキシドなど)など]、ポリウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂{ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなども含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンゴムなどのオレフィンの単独又は共重合体(エラストマーも含む)、環状オレフィン系樹脂など}、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、熱可塑性エラストマー(スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなど)などが挙げられる。これらの他の熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であってもよく、非結晶性樹脂であってもよい。これらの他の熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0068】
代表的な他の熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)などが挙げられる。また、樹脂組成物の難燃性を向上させるという観点からは、熱可塑性樹脂(A)は、ポリカーボネート系樹脂を含んでいてもよく、例えば、熱可塑性樹脂(A)は、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル系樹脂)とスチレン系樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂)と、ポリカーボネート系樹脂とで構成してもよい。
【0069】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、少なくとも芳香族ジオール成分[例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)など]で構成されたジオール成分と、カーボネート前駆体とを反応させて得られるポリカーボネート樹脂(例えば、芳香族ポリカーボネート)などが挙げられる。
【0070】
ビスフェノール類としては、例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−4アルカンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C5−8シクロアルカンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(ヒドロキシフェニル−アルキル)アレーン類[例えば、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールなど]などが含まれる。ビスフェノール類は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0071】
また、ジオール成分は、ビスフェノール類と他のジオール成分{例えば、脂肪族ジオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオールなどのC2−10アルカンジオール)など]、脂環族ジオール化合物[例えば、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカン]、芳香脂肪族ジオール[例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど]など}とで構成してもよい。
【0072】
カーボネート前駆体としては、例えば、カーボネート類[例えば、ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネートなど)ジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)などの炭酸ジエステル類]、カルボニルハライド類[例えば、ホスゲン類(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲンなど)など]、ハロホルメート類[例えば、非芳香族ビスハロホルメート(エチレングリコールビスクロロホルメート、1,4−ブタンジオールビスクロロホルメート、1,6−ヘキサンジオールビスクロロホルメートなどのC2−10アルカンジオールビスハロホルメート;ジエチレングリコールビスクロロホルメート、トリエチレングリコールビスクロロホルメートなどのポリC2−4アルカンジオールビスハロホルメートなど)、芳香族ビスハロホルメート(例えば、ハイドロキノンビスクロロホルメート、レゾルシノールビスクロロホルメートなどのジヒドロキシアレーンビスハロホルメート;ビスフェノールA−ビスクロロホルメートなどのビスフェノール類のビスハロホルメート)など]などが挙げられる。カーボネート前駆体は、単独で又は2種以上組みあわせて用いてもよい。
【0073】
好ましいポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂(芳香族ジオール成分を重合成分とするポリカーボネート系樹脂)、特に、ビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノール類を重合成分とするポリカーボネート系樹脂)が挙げられる。後述する特定の難燃剤と芳香族ポリカーボネート系樹脂とを組み合わせることにより、より一層効率よく前記樹脂組成物の難燃性を向上することができる。
【0074】
ポリカーボネート系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0075】
熱可塑性樹脂(A)を、ポリカーボネート系樹脂で構成する場合、熱可塑性樹脂[例えば、前記樹脂(A1)および樹脂(A2)]とポリカーボネート系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜1/99(例えば、98/2〜2/98)、好ましくは97/3〜3/97(例えば、95/5〜5/95)、さらに好ましくは95/5〜15/85(例えば、93/7〜20/80)程度であってもよい。
【0076】
[難燃剤(B)]
本発明の樹脂組成物において、難燃剤(B)は、レーザー透過性を保持できれば特に制限されず、熱可塑性樹脂の種類(例えば、熱可塑性樹脂そのもののレーザー透過性の程度など)に応じて、例えば、無機系難燃剤(水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、アルミナなどの金属酸化物、赤リンなど)、有機系難燃剤[例えば、有機リン系難燃剤(ホスフェート化合物、ホスファゼン化合物、芳香族縮合リン酸エステルなど)、ハロゲン系難燃剤(ハロゲン化ビスフェノール化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステルなど)、ヒンダードアミン系化合物など]などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0077】
これらの難燃剤のうち、特に、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)および芳香族縮合リン酸エステル(B2)から選択された少なくとも1種を好適に使用してもよい。これらの特定の難燃剤は、熱可塑性樹脂に混合しても、ほとんどレーザー透過性を低下させることがないため、レーザー透過性を保持しつつ、高いレベルで前記樹脂組成物を難燃化できる。すなわち、通常、慣用の難燃剤(アンチモン系難燃剤など)を熱可塑性樹脂に添加すると、レーザー透過率が大きく低下しやすいため、熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂などの透明性を有しない樹脂)そのものではレーザー溶着可能であっても、難燃剤の添加によりレーザー溶着ができなくなる場合が多い。しかし、前記特定の難燃剤を用いると、熱可塑性樹脂のレーザー透過性を高いレベルで保持できるため、熱可塑性樹脂の種類によらず、特に、ABS樹脂などのレーザー透過性が比較的低い樹脂であっても、確実に難燃性とレーザー溶着性とを両立して付与できる。
【0078】
(ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1))
ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)(例えば、臭素化(イソ)シアヌル酸エステル)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物などが含まれる。
【0079】
【化1】

【0080】
(式中、R、RおよびRは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン原子を有する炭化水素基である。)
【0081】
【化2】

【0082】
(式中、R、RおよびRは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つが、ハロゲン原子を有する炭化水素基である。)
上記式(1)および(2)の基R〜Rにおいて、炭化水素基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などのC1−20アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基、アリル基などのC2−6アルケニル基)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(トリル基、キシリル基など)などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などが挙げられる。
【0083】
前記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など)、アミノ基、N−置換アミノ基(N,N−ジアルキルアミノ基など)、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は2種以上組み合わせて前記炭化水素基に置換していてもよい。
【0084】
なお、前記式(1)において基R、RおよびRのうち少なくとも1つ、又は前記式(2)においてR、RおよびRのうち少なくとも1つが、置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素基である。このような炭化水素基は、ハロゲン原子とハロゲン原子以外の他の置換基とを有していてもよい。
【0085】
代表的なハロゲン原子を有する炭化水素基としては、ハロアルキル基(例えば、ジブロモプロピル基、ジブロモブチル基、トリブロモネオペンチル基などのモノ乃至トリハロC1−10アルキル基、好ましくはモノ乃至トリブロモC1−8アルキル基、さらに好ましくはジ又はトリブロモC1−5アルキル基など)、ハロアリール基[例えば、ジブロモフェニル基(2,6−ジブロモフェニル基など)、トリブロモフェニル基などのモノ乃至トリハロC6−10アリール基、好ましくはジ又はトリブロモC6−8アリール基、さらに好ましくはジ又はトリブロモフェニル基]などが挙げられる。
【0086】
代表的なハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステルとしては、例えば、ハロゲン化シアヌル酸エステル{例えば、トリ(ハロアルキル)シアヌレート[又は2,4,6−トリ(ハロアルキルオキシ)−1,3,5−トリアジン、例えば、トリス(2,3−ジブロモプロピル)シアヌレート、トリス(2,3−ジブロモブチル)シアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)シアヌレートなどのトリス(ハロC1−8アルキル)シアヌレート、好ましくはトリス(ジ又はトリブロモC1−6アルキル)シアヌレートなど)など]、これらのトリ(ハロアルキル)シアヌレートに対応し、ハロアルキル基のいずれかがハロゲン原子を有しないアルキル基であるシアヌレート[例えば、モノアルキル−ジ(ハロアルキル)シアヌレートなど]などのハロアルキルシアヌレート類;トリ(ハロアリール)シアヌレート[又は2,4,6−トリ(ハロアリールオキシ)−1,3,5−トリアジン、例えば、トリス(2,6−ジブロモフェニル)シアヌレート、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)シアヌレート(又は2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン)などのトリス(ハロC6−10アリール)シアヌレート、好ましくはトリス(ジ又はトリブロモC6−8アリール)シアヌレート、さらに好ましくはトリス(ジ又はトリブロモフェニル)シアヌレートなど]、これらのトリ(ハロアリール)シアヌレートに対応し、ハロアリール基のいずれかがハロゲン原子を有しないアリール基であるシアヌレート[例えば、モノアリール−ジ(ハロアリール)シアヌレートなど]などのハロアリールシアヌレート類など}、ハロゲン化イソシアヌル酸エステル{例えば、トリ(ハロアルキル)イソシアヌレート[例えば、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)イソシアヌレートなどのトリス(ハロC1−8アルキル)イソシアヌレート、好ましくはトリス(ジ又はトリブロモC1−6アルキル)イソシアヌレートなど)など]、これらのトリ(ハロアルキル)イソシアヌレートに対応し、ハロアルキル基のいずれかがハロゲン原子を有しないアルキル基であるイソシアヌレート[例えば、モノアルキル−ジ(ハロアルキル)イソシアヌレートなど]などのハロアルキルイソシアヌレート類;トリ(ハロアリール)イソシアヌレート[例えば、トリス(2,6−ジブロモフェニル)イソシアヌレート、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)イソシアヌレートなどのトリス(ハロC6−10アリール)イソシアヌレート、好ましくはトリス(ジ又はトリブロモC6−8アリール)イソシアヌレート、さらに好ましくはトリス(ジ又はトリブロモフェニル)イソシアヌレートなど]、これらのトリ(ハロアリール)イソシアヌレートに対応し、ハロアリール基のいずれかがハロゲン原子を有しないアリール基であるイソシアヌレート[例えば、モノアリール−ジ(ハロアリール)イソシアヌレートなど]などのハロアリールイソシアヌレート類など}などが挙げられる。
【0087】
好ましいハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステルには、ハロアリール骨格(ハロアリール基)を有する化合物(例えば、トリ(ハロアリール)シアヌレート)が挙げられ、特に、ブロモアリール基を有する化合物[例えば、トリス(ジ又はトリブロモC6−8アリール)シアヌレートなど]が好ましい。
【0088】
これらのハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0089】
(芳香族縮合リン酸エステル(B2))
芳香族縮合リン酸エステル(B2)は、通常、オキシ塩化リンなどのリン成分と、少なくとも芳香族ポリオール類で構成されたポリオール類と、モノアルコール類(特に、フェノール類などのモノヒドロキシアレーン類)との反応生成物(特に、芳香族縮合リン酸エステル)であり、少なくとも2つ(特に2つ)のリン酸単位を分子中に有する化合物である。
【0090】
ポリオール類は、少なくとも芳香族ポリオール(通常、多価フェノール類、ビスフェノール類など)で構成されていればよく、非芳香族ポリオール(例えば、脂肪族ポリオールなど)を含んでいてもよい。通常、ポリオール類は、芳香族ポリオール単独で構成されていてもよい。
【0091】
代表的な多価フェノール(ポリヒドロキシベンゼン)類としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール、ヒドロキノンなど)、置換基を有するジヒドロキシベンゼン{アルキル−ジヒドロキシベンゼン[ジヒドロキシトルエン、5−t−ブチルレゾルシノール、ジヒドロキシキシレン(2,6−ジヒドロキシ−p−キシレンなど)などのモノ又はジC1−10アルキル−ジヒドロキシベンゼンなど]、アリール−ジヒドロキシベンゼン(2,4−ジヒドロキシビフェニルなどのC6−10アリール−ジヒドロキシベンゼンなど)、モノ又はジハロ−ジヒドロキシベンゼン(2,4−ジフルオロヒドロキノンなど)など}などのジヒドロキシベンゼン類、;これらのジヒドロキシベンゼン類に対応するトリヒドロキシベンゼン類などが挙げられる。
【0092】
代表的なビスフェノール類としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカン]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどの置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)C5−10シクロアルカン]、これらに対応するビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(ヒドロキシフェニル−アルキル)アレーン類[4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールなど]、これらのアルキレンオキシド付加物(例えば、エチレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシドなど)などが挙げられる。
【0093】
これらのうち、好ましいポリオール類は、ジヒドロキシベンゼン類[ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール、ヒドロキノンなど)、アルキル−ジヒドロキシベンゼン、ハロ−ジヒドロキシベンゼンなどの置換基を有していてもよいジヒドロキシベンゼン(特に、置換基を有していてもよいレゾルシノール)]、ビスフェノール類などが挙げられ、特にジヒドロキシベンゼン類が好ましい。
【0094】
モノアルコール類(モノヒドロキシ化合物)としては、非芳香族モノアルコール(脂肪族アルコールなど)、モノヒドロキシアレーン類が挙げられる。モノアルコール類は、通常、モノヒドロキシアレーン類であってもよい。代表的なモノヒドロキシアレーン類としては、例えば、フェノール類{例えば、フェノール、置換基を有するフェノール類[アルキルフェノール(o−、m−、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールなどのモノ又はジC1−10アルキルフェノール、好ましくはモノ又はジC1−6アルキルフェノール、さらに好ましくはジC1−4アルキルフェノール)、アリールフェノール(o−フェニルフェノールなど)、シクロアルキルフェノールなどの炭化水素基を有するフェノール、アルコキシフェノール(o−メトキシフェノールなど)、ハロフェノール(クロロフェノールなど)、アシルフェノールなど]などの置換基を有していてもよいモノヒドロキシC6−10アレーンなどが含まれる。
【0095】
これらのモノアルコール類のうち、フェノール、炭化水素基を有するフェノール類が好ましく、特にアルキルフェノールが好ましい。なお、リン成分およびポリオール類と反応させるモノアルコール類は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0096】
好ましい芳香族縮合リン酸エステルには、モノアルコール類がモノヒドロキシアレーン類である芳香族縮合リン酸エステル、例えば、ジヒドロキシベンゼンビス(ジアリールホスフェート)類{例えば、レゾルシノールビス(ジアリールホスフェート)類[例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート);レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)(例えば、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)など)などのレゾルシノールビス[ジ(モノ乃至トリC1−4アルキル)フェニルホスフェート]など]、ハイドロキノンビスアリールホスフェート類[例えば、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート);ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシリルホスフェート)(例えば、ハイドロキノンビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)など)などのハイドロキノンビス[ジ(モノ乃至トリC1−4アルキル)フェニルホスフェート]など]などのポリオール類がジヒドロキシベンゼン類であり、かつモノアルコール類がモノヒドロキシアレーン類である芳香族縮合リン酸エステル}、ビスフェノールビス(ジアリールホスフェート)類{例えば、ビスフェノールA−ビス(ジアリールホスフェート)類[例えば、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート);ビスフェノールA−ビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジキシリルホスフェート)などのビスフェノールA−ビス[ジ(モノ乃至トリC1−4アルキル)フェニルホスフェート]など]などのポリオール類がビスフェノール類であり、かつモノアルコール類がモノヒドロキシアレーン類である芳香族縮合リン酸エステル}などが挙げられる。特に好ましい芳香族縮合リン酸エステルには、ジヒドロキシベンゼンビス(ジアリールホスフェート)類(特に、レゾルシノールビス(ジアリールホスフェート)類)が含まれる。これらの芳香族縮合リン酸エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0097】
これらの難燃剤(B)のうち、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)は特に難燃効果が高い。そのため、前記難燃剤(B)は、少なくともハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)で構成してもよい。また、難燃剤(B)は、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)と、芳香族縮合リン酸エステル(B2)とで構成してもよい。ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)と、芳香族縮合リン酸エステル(B2)とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜99/1(例えば、95/5〜10/90)、好ましくは90/10〜15/85(例えば、85/15〜25/75)、さらに好ましくは80/20〜40/60(例えば、75/25〜50/50)、通常95/5〜55/45(例えば、90/10〜60/40)程度であってもよい。
【0098】
なお、難燃剤(B)は、前記樹脂組成物(又は樹脂成形体)において、熱可塑性樹脂(A)と均一に混合されているのが好ましい。そのため、前記難燃剤(B)は、熱可塑性樹脂(A)の溶融温度(又は融点又は軟化点)において溶融可能であるのが好ましく、前記難燃剤(B)の融点は、例えば、300℃以下(例えば、70〜290℃程度)、好ましくは280℃以下(例えば、100〜270℃程度)、さらに好ましくは260℃以下(例えば、120〜250℃程度)であってもよい。
【0099】
本発明の樹脂組成物において、難燃剤(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、例えば、1〜70重量部、好ましくは3〜60重量部(例えば、5〜55重量部)、さらに好ましくは10〜50重量部(例えば、15〜45重量部)程度であってもよい。
【0100】
本発明の樹脂組成物には、レーザー透過性や樹脂特性を低下させない限り、慣用の添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、難燃助剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂など)、着色剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラーなど)、安定剤(酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤など)、滑剤、分散剤、発泡剤、抗菌剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0101】
これらの添加剤のうち、特に、ひけを抑制し、耐熱性や機械的特性を向上させるために、充填剤を用いてもよい。充填剤としては、慣用の無機又は有機充填剤を使用できるが、レーザー透過性の点から、繊維状無機充填剤(例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維など)、特に、ガラス繊維を好ましく使用できる。ガラス繊維の平均径は、例えば、1〜50μm(好ましくは3〜30μm)程度であり、平均長は、例えば、100μm〜12mm(好ましくは500μm〜6mm)程度であってもよい。充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0102】
充填剤の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、10〜100重量部、好ましくは20〜90重量部、さらに好ましくは30〜80重量部程度であってもよい。
【0103】
さらに、成形品の外観特性などを向上させるために、着色剤を用いてもよい。着色剤には、レーザー光が透過可能な着色剤や、レーザー光に対して非吸収性の着色剤が含まれる。このような着色剤としては、各種の有彩色又は無彩色着色剤、例えば、白色染顔料(例えば、チタン白、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンなどの無機顔料)、黄色染顔料[例えば、カドミイエロー(カドミ黄)、黄鉛(クロム黄)、ジンククロメート、黄土(オーカー)などの無機顔料、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピグメントイエローなどの有機顔料]、橙色染顔料、赤色染顔料[例えば、赤口顔料、アンバー、カドミウムレッド(火赤)、鉛丹(四三酸化鉛、光明丹)などの無機顔料、パーマンネントレッド、レーキレッド、ウォッチャンレッド、ブリリアント・カーミン6Bなどの有機顔料]、青色染顔料[例えば、紺青、群青、コバルトブルー(テナール青)などの無機顔料、フタロシアニンブルーなどの有機顔料]、緑色染顔料[例えば、クロムグリーンなどの無機顔料、フタロシアニングリーンなどの有機顔料]などが挙げられる。
【0104】
着色剤は、前記例示の染顔料などを単独で用いてもよく、複数の着色剤を組み合わせて用いて所望の色調に調整してもよい。例えば、減色混合を利用して、複数(例えば、2〜4)の着色剤を用いて、樹脂を黒色に着色することもできる。
【0105】
着色剤は、光散乱性を有していてもよく、このような着色剤(例えば、酸化チタンなどの顔料など)を用いると成形品に光散乱性を付与でき、効果的に被接合体を隠蔽することもできる。なお、レーザー光を透過せず、反射拡散させる着色剤を使用する場合は、レーザー溶着が可能な程度にレーザー光を透過させるため、組成物中の含有割合や成形体の厚みを調整して使用するのが好ましい。
【0106】
着色剤の割合は、特に制限されないが、樹脂や着色剤の種類、レーザー光の発振波長、被接合体の色などに応じて適宜選択でき、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0〜10重量部(例えば、0.0001〜10重量部)、好ましくは0.001〜7重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部程度であってもよい。
【0107】
本発明の樹脂組成物において、レーザー溶着用難燃性樹脂組成物中の有機酸又はその塩の割合は、2000ppm(μg/g)以下(例えば、0又は検出限界〜1500ppm)であればよく、例えば、1000ppm以下(例えば、0.1〜700ppm)、好ましくは500ppm以下(例えば、0.3〜200ppm)、さらに好ましくは100ppm以下(例えば、0.5〜50ppm)程度であってもよい。本発明では、樹脂組成物中の有機酸又はその塩の含有量がこの範囲に抑制されているため、レーザー溶着においてガス発生量が少なく、溶着性も向上できる。
【0108】
有機酸には脂肪酸や有機スルホン酸などが含まれる。脂肪酸は、酢酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸であってもよいが、通常、炭素数6以上の高級脂肪酸やテルペン酸である。有機スルホン酸も、通常、炭素数6以上のアルキル基を有する有機スルホン酸である。
【0109】
高級脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ダチュリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などのC6−30飽和脂肪族カルボン酸や、リンデル酸、マッコウ酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸などのC6−30不飽和脂肪族カルボン酸、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0110】
テルペン酸としては、例えば、シトロネル酸などのモノテルペン酸、ヒノキ酸やサンタル酸などのセスキテルペン酸、アビエチン酸(ロジン酸)、ピマル酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、アガテンジカルボン酸、ルベニン酸などのジテルペン酸、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0111】
有機スルホン酸としては、C6−30アルキル基を有するスルホン酸、例えば、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ヘキサデシル(セチル)スルホン酸、オクタデシルスルホン酸などのC6−30アルキルスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのC6−30アルキル−アリールスルホン酸(好ましくはC8−24アルキル−アリールスルホン酸など)、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0112】
有機酸の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム、リチウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩(メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン塩などのアルキルアミン塩)やアルカノールアミン塩(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールアミン塩など)、又はこれらの組み合わせなどが例示できる。有機酸の塩は、通常、アルカリ金属塩(特に、ナトリウム塩)、アルカリ土類金属塩(特にカルシウム塩)である。
【0113】
有機酸又はその塩は、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ゴム含有スチレン系樹脂など)の製造過程で混入するが、有機酸が存在すると、ガス発生の直接の原因となるとともに、樹脂部材の溶着性が低下する。有機酸の含有量は、樹脂組成物又は原料樹脂を精製することにより低減してもよいが、原料樹脂の製造方法を調整することにより低減してもよい。例えば、前記のように、スチレン系樹脂として、塊状重合で製造した樹脂を用いることにより有機酸又はその塩の含有量を調整してもよい。
【0114】
また、レーザー溶着用難燃性樹脂組成物中に含まれるナトリウム、塩素及び硫酸イオンの割合が、例えば、合計で10ppm(μg/g)以下(例えば、0又は検出限界〜10ppm)、好ましくは0〜5ppm、さらに好ましくは0〜1ppm(特に0〜0.5ppm)程度である。
【0115】
このようなナトリウム、塩素及び硫酸イオンもまた、前記のように、スチレン系樹脂などの製造過程で混入するが、このような元素やイオンが存在すると、樹脂部材の溶着性が低下し、ガス発生の原因ともなる。これらの元素やイオンの含有量は、熱可塑性樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂など)を精製することにより低減してもよいが、製造方法の調整や選択により低減してもよい。例えば、前記のように、スチレン系樹脂として、塊状重合で製造した樹脂を用いることにより、ナトリウム、塩素および硫酸イオンの含有量を調整してもよい。
【0116】
[樹脂成形体]
本発明の樹脂組成物は、レーザー光を透過する側の樹脂成形体(第1の樹脂成形体、第1の成形体)又は部材(透過部材)を構成するための樹脂組成物として用いることができる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、第2の樹脂成形体(被接合体)に対して、レーザー光の照射により接合可能であり、かつレーザー光を透過する側の樹脂成形体(第1の樹脂成形体)を構成するための樹脂組成物として利用できる。そして、本発明の樹脂成形体(第1の樹脂成形体)は、前記レーザー溶着用樹脂組成物で構成され、レーザー光を透過する側の部材(透過部材)として使用できる。
【0117】
本発明の樹脂組成物(又は樹脂成形体)は難燃剤を含むにもかかわらず、レーザー透過性に優れている。特に、難燃剤を前記特定の難燃剤(B1)及び/又は難燃剤(B2)で構成すると、熱可塑性樹脂(A)レーザー透過性を損なうことなく高いレベルで保持できる。例えば、本発明の樹脂組成物(第1の樹脂成形体)のレーザー光に対する透過率(全光線透過率)は、使用するレーザー光の発振波長(例えば、740〜1600nmの範囲から選択される波長)に応じ、例えば、厚み2mmの成形体の厚み方向において、通常、10%以上(例えば、10〜100%程度)の範囲から選択でき、例えば、12〜99%(例えば、13〜98%)、好ましくは15〜97%(例えば、16〜96%)、さらに好ましくは18〜95%、特に20%以上(例えば、22〜95%程度)である。
【0118】
また、本発明の樹脂組成物では、難燃剤を含んでいても、熱可塑性樹脂(A)のレーザー光線透過率を高いレベルで保持でき、例えば、前記樹脂組成物において、下記式で表されるレーザー光線透過保持率R(%)は、例えば、50%以上(例えば、55〜100%程度)、好ましくは60%以上(例えば、65〜99%程度)、さらに好ましくは70%以上(例えば、75〜98%程度)、特に80%以上(例えば、85〜97%程度)であってもよい。
【0119】
R(%)=(T2/T1)×100
(式中、Rはレーザー光線透過保持率、T1は、熱可塑性樹脂(A)(又は難燃剤(B)を含まず、熱可塑性樹脂(A)で構成されている樹脂組成物)の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)、T2は、前記樹脂組成物(すなわち、熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(B)とで構成されている樹脂組成物)の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)を示す。)
さらに、本発明の樹脂組成物(又は樹脂成形体又は第1の樹脂成形体)は難燃性に優れており、例えば、厚み1.5mmで測定したとき、UL94に基づく難燃性の等級で、例えば、V−2以上、好ましくはV−1以上、さらに好ましくはV−0以上である。
【0120】
このような樹脂成形体(第1の樹脂成形体)は、熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)及び必要に応じて他の構成成分(充填剤など)を、押出機、ニーダー、ミキサー、ロールなどを用いた慣用の混合方法で混合(例えば、溶融混練)し、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などにより、成形することにより得ることができる。なお、前記のように、溶融混練において、難燃剤(B)が溶融することが好ましい。
【0121】
樹脂成形体の形状は、接合させるに充分な接触面(平面など)を少なくとも一部に有する限り、特に制限されず、二次元的形状(例えば、板状)又は三次元的形状であってもよい。
【0122】
樹脂成形体の厚み(少なくとも透過部材のレーザー溶着位置の厚み)は、用途や、レーザー光に対する透過性などに応じて、例えば、50μm〜10mm、好ましくは70μm〜8mm、さらに好ましくは100μm〜5mm程度であってもよい。
【0123】
[複合成形体]
本発明の複合成形体では、前記樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体(接合体)と、熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体(被接合体)とがレーザー溶着により接合されている。前述の如く、前記樹脂組成物で構成された接合体は、レーザー透過性に優れているため、透過部材として使用され、熱可塑性樹脂で構成された被接合体(第2の樹脂成形体)が吸収部材として使用される。
【0124】
被接合体(第2の樹脂成形体)における熱可塑性樹脂としては、レーザー溶着により接合体に対して接合(又は貼付)可能である限り、特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂が使用できる。
【0125】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド系樹脂;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド系樹脂;脂環族ポリアミド系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリC2−4アルキレンテレフタレート、ポリC2−4アルキレンナフタレート、これらのコポリエステル、ポリアリレート、液晶性ポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネート、水添ビスフェノール型ポリカーボネートなど)、オレフィン系樹脂[ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなども含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンゴムなどのオレフィンの単独又は共重合体(エラストマーも含む)など]、スチレン系樹脂[ポリスチレン(GPPSなど)、スチレン−アクリル系共重合体(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、AS樹脂、MS樹脂など)、スチレン−ジエン又はオレフィン系共重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体など)、ゴム含有スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、AXS樹脂(AAS樹脂、AES樹脂など)、MBS樹脂など)など]、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、ビニル系重合体(塩化ビニル系重合体、酢酸ビニル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリフェニレンオキシド系樹脂[ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンとのブレンド、ポリスチレンがグラフトしたポリフェニレンオキシドなど)など]などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であってもよく、非結晶性樹脂であってもよい。
【0126】
前記熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系重合体、及びポリフェニレンオキシド系樹脂[特にポリアミド系樹脂(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド系樹脂など)、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの単独又は共重合体など)、スチレン系樹脂(AS樹脂など)など]などが好ましい。さらに、接合体(第1の樹脂成形体)との親和性の点から、第2の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂(A)と同一又は同系統の樹脂であってもよい。
【0127】
被接合体には、レーザー光吸収剤及び/又は着色剤が含まれていてもよい。
【0128】
レーザー光吸収剤としては、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)、チタンブラック、黒色酸化鉄などの黒色顔料を使用する場合が多い。これらのレーザー光吸収剤は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。また、これらのレーザー光吸収剤は、着色剤として添加されてもよい。なお、前記黒色顔料の平均粒径は、例えば10nm〜3μm(好ましくは10nm〜1μm)程度の広い範囲から選択できる。カーボンブラックの平均粒径は、例えば、10〜100nm、好ましくは15〜90nm程度であってもよい。レーザー光吸収剤の割合は、被接合体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度であってもよい。
【0129】
着色剤としては、樹脂の着色に使用される種々の無機又は有機染顔料、例えば、白色染顔料(チタン白など)、黄色染顔料(ベンジジンイエローなどの有機顔料)、橙色染顔料(ハンザイエローなど)、赤色染顔料(レーキレッドなどの有機顔料)、青色染顔料(フタロシアニンブルーなどの有機顔料)、緑色染顔料(フタロシアニングリーンなどの有機顔料)などが挙げられる。着色剤の割合は、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0〜10重量部(例えば、0.001〜10重量部)、好ましくは0.01〜5重量部程度であってもよい。
【0130】
被接合体にも、必要により、前記レーザー溶着用樹脂組成物と同様の慣用の添加剤が含まれていてもよい。例えば、被接合体は、難燃剤を含んでいてもよい。なお、被接合体(又は第2の樹脂成形体)に含有させる難燃剤は、前記難燃剤(B)に限定されず、慣用の難燃剤(例えば、アンチモン化合物など)であってもよい。
【0131】
複合成形体は、接合体(又は透過部材)と被接合体(又は吸収部材)とを、少なくとも両者の接合部を面接触させ、レーザー光を照射することにより、前記接合体と被接合体との界面を部分的に溶融させて接合面を密着させ、冷却して接合(又は一体化)することにより得られる。
【0132】
溶着に用いるレーザー光源としては、通常、発振波長193〜1600nm程度のレーザー光源が使用でき、例えば、固体レーザー(Nd:YAG励起、半導体レーザー励起など)、半導体レーザー(650〜980nm)、チューナブルダイオードレーザー(630〜1550nm)、チタンサファイアレーザー(Nd:YAG励起、690〜1000nm)などを用いる場合が多い。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のレーザー溶着用難燃性樹脂組成物(及び成形体及び複合成形体)は、難燃性に優れているため、例えば、家庭用又はオフィスオートメーション(OA)用機器、例えば、コンピューター、ワードプロセッサー、プリンター、コピー機、ファックス、電話、モバイル機器(携帯電話、携帯情報端末(PDA)など)などの機器類や家電製品(テレビ、ビデオデッキ、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)プレーヤー、エアコン、冷蔵庫、洗濯機など)の構成部品(ハウジング、ケース、カバー、ドア、カートリッジ(インクカートリッジ、トナーカートリッジなど)など)などの他、自動車部品、家庭用品、建築材料などの用途において有用である。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各成分の略号の内容、及び各評価項目の評価方法は以下の通りである。
【0135】
[樹脂成形体の各成分]
(熱可塑性樹脂)
PBT:ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー(株)製、商品名「700FP」)
PET:ポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン(株)製、商品名「MA−521H」)
PC:ポリカーボネート樹脂(出光興産(株)製、商品名「タフロンFN2700」)
ABS1:ABS樹脂(塊状重合法により得られたポリマー、ゴム種:ポリブタジエン、ゴム含有量20重量%、マトリックスを構成するモノマー成分の共重合比:スチレン/アクリロニトリル=77/23(重量比)、ゴム重量平均粒径1300nm)
ABS2:ABS樹脂(乳化重合法により得られたポリマー、酸凝固物、ゴム種:ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体、ゴム含有量40重量%、マトリックスを構成するモノマー成分の共重合比:スチレン/アクリロニトリル=74/26(重量比)、ゴム重量平均粒径350nm)
AS:AS樹脂(塊状重合法により得られたポリマー、ダイセルポリマー(株)製、商品名「010SF」)
(難燃剤)
FR1:2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン(第一エフアール(株)製、商品名「SR−245」)
FR2:レゾルシノールビス[ジ(2,6−キシリル)ホスフェート](大八化学工業(株)製、商品名「PX−200」)
FR3:エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)(アルベマール(株)製、商品名「SAYTEX BT-93」)
FR4:エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール(株)製、商品名「SAYTEX8010」)
FR5:三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、商品名「PATOX−M」)
(その他の成分)
GF:ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、商品名「ECS−03−T−120」)、平均径13μm、平均長3mm
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製、商品名「ポリフロンTFE」)。
【0136】
[難燃性]
試験片の厚み1.5mmで、UL94に基づいて難燃性(燃焼性)を評価した。
【0137】
[有機酸又はその塩の濃度]
試料(ペレット)20mgを精秤し、250℃で10分間加熱して発生したガスを−50℃の捕集管でトラップした後、キューリーポイントで再ガス化した。再ガス化した試料をガスクロマトグラフィー分析装置[分析機器:ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)社製、HP5890II型、検出器:水素炎イオン化検出器(FID)]に注入し、以下の条件で試料中の全有機酸(又はその塩)量を測定した(単位:ppm(μg/g))。
【0138】
(測定条件)
オーブン:100℃、5分間
100〜240℃(10℃/分で昇温)
検出器:300℃。
【0139】
[レーザー光の透過率]
厚み2mmの試験片(成形品)の垂直方向に対して、レーザーマーカー(NEC(株)製、「マーカーエンジンSL475H」)を用いて、レーザー光(波長1064nm、YAGレーザー、出力1.5W)を照射して試験片を透過したレーザー光と、試験片を介することなく通過したレーザー光(すなわち、レーザー光そのもの)とを、それぞれ、レーザーパワーメーター(COHERENT製、LASERMATE10)に照射し、このレーザーパワーメーターに連結したテスターによりレーザー光により生じた電圧(V)を測定した。測定した電圧をそれぞれレーザー光の強度として、試験片のレーザー光線透過率を下記式により求めた。
【0140】
レーザー光線透過率(%)=(A/B)×100
(式中、Aは試験片を透過したレーザー光の強度(V)、Bはレーザー光の強度(V)を示す。)
そして、測定したレーザー光線透過率に基づいて、レーザー光の透過性を以下の基準で評価した。
【0141】
○:20%以上
×:20%未満。
【0142】
[溶着性]
レーザー光透過部材とレーザー光吸収部材とをレーザー溶着後、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUCT−1T)を用いて、チャック間距離80mm及びヘッド速度5.0mm/分の条件で、前記吸収部材及び前記透過部材のそれぞれを、接合部を中心にして外方に引張り、破壊した状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0143】
○:溶着強度が高く、溶着面以外の部分で破壊
△:溶着強度がやや低く、溶着面及び溶着面以外の部分で破壊
×:溶着強度が低く、溶着面で破壊。
【0144】
[発生ガス量]
レーザー溶着時において、レーザー光吸収部材とレーザー光透過部材との接合部から発生するガスの発生量を目視により、以下の基準で評価した。
【0145】
○:少ない
△:やや多い
×:多い。
【0146】
[反り]
レーザー光透過部材を、縦120mm×横120mm×厚み2mmのサイズに成形した平板を、平らな水平面の上に、平板の中央部が水平面と接触するように(反りが生じている場合には各コーナー部が浮き上がるように)載置した。次に、各コーナー部を水平面に固定した後、固定したコーナー部に対して対角線上にあるコーナー部の水平面に対する高さ(持ち上がり高さ)を測定した。これを各コーナー部について測定し、最も大きい持ち上がり高さについて、以下の基準で評価した。
【0147】
○:2mm未満
△:2mm以上10mm未満
×:10mm以上。
【0148】
[耐衝撃性]
レーザー光透過部材を成形して得られた成形品を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、試験片を作製した。前記試験片の両端を支持し、シャルピー衝撃試験機に供して衝撃強度(kJ/m)を測定した。
【0149】
[加熱変形温度(HDT)]
ISO 75に準拠し、荷重1.8MPaで測定した。
【0150】
実施例1〜7及び比較例1〜7
表1および表2に示す組成の樹脂組成物を用いて、樹脂成形体(三段プレート、縦90mm×横50mm×厚み1、2及び3mm)(レーザー光透過部材)を成形するとともに、表1に示す組成の樹脂組成物に、組成物全体に対して0.5重量%のカーボンブラックを含有させた樹脂組成物を用いて、前記成形体と同様のサイズ及び形状のレーザー光吸収部材を成形した。
【0151】
得られた黒色に着色したレーザー光吸収部材の上に、レーザー光透過部材を置き、さらにこの透過部材の上に透明なガラス板を重しとして置き、ファインデバイス社製120Wレーザー溶着機(半導体レーザー)を用いて、両者を溶着させた(溶着条件:波長940nm、出力50W、スポット径1.2mm、走査距離30mm)。なお、吸収側の三段プレートと透過側の三段プレートとを重ねて、透過部材及び吸収部材の厚みが双方とも2mmとなる位置にレーザー光を照射した。得られた複合成形体の特性を評価した結果を表1に示す。なお、表1および表2において、熱可塑性樹脂、難燃剤、およびその他の成分における数値は、全て「重量部」単位である。また、表1および表2において、T1は熱可塑性樹脂のレーザー光線透過率(すなわち、難燃剤を含まない熱可塑性樹脂そのもののレーザー光線透過率)、Rは樹脂組成物(難燃剤を含む樹脂組成物)のレーザー光線透過保持率を示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
表から明らかなように、実施例の樹脂成形体では、ポリエステル系樹脂およびスチレン系樹脂と特定の難燃剤とを組み合わせるとともに、樹脂組成物中の有機酸又はその塩の濃度を著しく低減しているため、ガス発生が抑えられて意匠性を損なうことがなく、優れた樹脂特性を有しているとともに、透過率及び溶着性が高く、しかも難燃性も高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の樹脂成形体に対して、レーザー光の照射により接合可能であり、かつレーザー光を透過する側の第1の樹脂成形体を構成するための樹脂組成物であって、ポリエステル系樹脂(A1)およびスチレン系樹脂(A2)で構成された熱可塑性樹脂(A)と、難燃剤(B)とで構成され、樹脂組成物中に含まれる有機酸又はその塩の割合が、2000ppm以下であるレーザー溶着用難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂(A1)が、少なくともC2−4アルキレンアリレート単位を含む芳香族ポリエステル系樹脂であり、スチレン系樹脂(A2)が、ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂、および塊状重合法で得られたゴム含有スチレン系樹脂から選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂が、アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を共重合成分とするスチレン系樹脂であり、ゴム含有スチレン系樹脂が、(i)耐衝撃性ポリスチレン、及び(ii)アクリル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体を共重合成分とするゴム含有スチレン系樹脂から選択された少なくとも1種である請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
スチレン系樹脂(A2)が塊状重合法で得られたスチレン系樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
スチレン系樹脂(A2)が、ナトリウム、塩素及び硫酸イオンの含有割合が合計で10ppm以下のスチレン系樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂(A1)とスチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)が、前者/後者=90/10〜10/90である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
難燃剤(B)が、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)および芳香族縮合リン酸エステル(B2)から選択された少なくとも1種である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)が、トリ(ハロアリール)シアヌレートである請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
難燃剤(B)が、少なくともハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項10】
難燃剤(B)の割合が、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1〜70重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
有機酸又はその塩が、C6−30飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、テルペン酸及びC6−30アルキル基を有する有機スルホン酸から選択された少なくとも一種の有機酸又はその塩である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(1)ポリエステル系樹脂(A1)が、少なくともC2−4アルキレンアリレート単位を含む芳香族ポリエステル系樹脂であり、(2)スチレン系樹脂(A2)が、塊状重合法で得られたスチレン系樹脂であって、(i)芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体及び/又はアクリル系単量体との共重合体、及び(ii)ゴム含有スチレン系樹脂から選択された少なくとも1種であり、(3)ポリエステル系樹脂(A1)とスチレン系樹脂(A2)との割合(重量比)が、前者/後者=85/15〜40/60であり、(4)難燃剤(B)が、ハロゲン化(イソ)シアヌル酸エステル(B1)および芳香族縮合リン酸エステル(B2)から選択された少なくとも1種であり、(5)難燃剤(B)の割合が、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、3〜60重量部であり、(6)樹脂組成物中に含まれる有機酸又はその塩の割合が、500ppm以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(i)厚み1.5mmで測定したとき、UL94に基づく難燃性の等級でV−2以上であり、かつ(ii)厚み2mmで測定したとき、レーザー光線透過率が10%以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項14】
下記式で表されるレーザー光線透過保持率R(%)が、50%以上である請求項1記載の樹脂組成物。
R(%)=(T2/T1)×100
(式中、Rはレーザー光線透過保持率、T1は、熱可塑性樹脂(A)の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)、T2は前記熱可塑性樹脂(A)と難燃剤(B)とで構成されている樹脂組成物の厚み2mmの成形体の厚み方向におけるレーザー光線に対する透過率(%)を示す。)
【請求項15】
請求項1記載の樹脂組成物で構成された樹脂成形体。
【請求項16】
請求項1記載の樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とがレーザー溶着により接合されている複合成形体。
【請求項17】
請求項1記載の樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とをレーザー光を照射することにより接合する方法。

【公開番号】特開2007−224168(P2007−224168A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47967(P2006−47967)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】