レーザー照射装置
【課題】レーザーによる応力改善技術と、レーザー超音波法によるき裂検査技術との保全施工技術は、従来独立した装置として実現されているため、対象となる材料部分に設けられる装置が大型になり、材料が狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合、保全施工作業が非常に時間がかかり面倒である。
【解決手段】第一のレーザー光源1から発振され、材料Mに照射されて材料Mを改質する第一のレーザー光L1と、第二のレーザー光源6から発振され、材料Mに照射されてその反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をする第二のレーザー光L2とを共通の統合光学系29を介して材料Mに照射するようにする。第一の光伝送手段3は第一のレーザー光L1を第一のレーザー光源1から統合光学系29まで伝送し、第二の光伝送手段8は第二のレーザー光L2を第二のレーザー光源6から統合光学系29まで伝送する。
【解決手段】第一のレーザー光源1から発振され、材料Mに照射されて材料Mを改質する第一のレーザー光L1と、第二のレーザー光源6から発振され、材料Mに照射されてその反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をする第二のレーザー光L2とを共通の統合光学系29を介して材料Mに照射するようにする。第一の光伝送手段3は第一のレーザー光L1を第一のレーザー光源1から統合光学系29まで伝送し、第二の光伝送手段8は第二のレーザー光L2を第二のレーザー光源6から統合光学系29まで伝送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を利用して、狭あい空間、または狭あいな経路を経由して到達する空間に位置する材料の改質施工と、その施工前、施工中、施工後の材料検査または計測を行うレーザー照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば原子力プラントの炉内構造物など、供用期間中に機器や構造材料の劣化を未然に防止するための予防保全技術、あるいは万が一劣化が発生してしまった後の補修、保全、劣化進展防止などの事後保全技術の重要性が増している。
【0003】
一方、レーザー光線を応用したレーザー技術は、レーザー光の持つ高いエネルギー密度、ピークパワー、可干渉性、直進性などの特徴を利用することで、材料表面の応力改善、溶体化処理、クラッディング、付着物・表面層除去、研磨、き裂除去、溶接、切断等の材料の改質、あるいは、き裂検出、き裂寸法計測、応力計測、材料組成計測、距離計測、振動計測、形状計測、温度計測等の材料検査または計測に有効に利用できる。
【0004】
特にこれらレーザー技術は、原理的に、対象物が高温、高所、高放射線場、複雑形状部など接触が困難であったり、接近性が悪く遠隔非接触の検査手法が求められる部位であったりする場合に有効な手法である。
【0005】
また、狭あい部、遮蔽物の内側、配管内面など、レーザービームを材料まで空間的に伝送することが難しい部位への適用も光ファイバー技術の利用により、効率的に実現可能である。
一般的に保全技術の性質上、個々の技術が独立して適用されるケースは少ない。実際の保全施工を考えた場合には一例として以下の技術が必要となる。
【0006】
(1)応力改善施工の前には、施工部位にき裂がないことを確認するためのき裂検査が必要(施工前検査)。
(2)溶接施工後には溶接部およびその熱影響部にき裂発生がないことを確認する必要(施工後検査)。
(3)応力改善施工の後に応力を計測し、施工の効果を確認する必要(施工後計測)。
(4)改質施工中に、レーザー照射装置と対象物の間の距離を管理するための計測が必要(施工中検査・計測)。
【0007】
また、レーザー計測または検査の前には、施工面を予めクリーニングすることが望ましく、材料の改質技術と、検査または計測技術は、統合的に適用するのがより効果的、かつ効率的である。
【0008】
しかしながら、従来これらのレーザー技術を応用した保全施工技術は独立した装置として実現されてきているものの、統合的に保全施工技術を適用できる装置は存在しなかった。
【0009】
また、レーザー超音波き裂検査法のように、原理的に2本のレーザー光を用い、かつ条件を変更すれば、材料の改質にも、検査または計測にも使用可能な技術もある。
このような保全施工のためには、従来技術を組み合わせて利用することになる。
【0010】
レーザーによる応力改善(以下、レーザーピーニングと称する)技術とレーザー超音波法によるき裂検査技術との従来技術の組み合わせによる従来のレーザー照射装置の構成を図17に示す。
【0011】
まず、レーザーピーニング技術とレーザー超音波法によるき裂検査技術について説明する。
レーザーピーニングとは、金属材料をプラズマ化し得るピーク出力を有するパルスレーザー光を水中で材料表面に照射することにより、対象表面に高圧のプラズマを生成し、このプラズマの膨張を周囲の水で閉じ込め、材料に圧縮方向の応力(塑性領域の歪み)を与えることにより対象材料の残留応力を改善し、応力に起因する劣化(例えば応力腐食割れの発生、進展)を予防する技術である(例えば特許文献1、2参照)。
【0012】
レーザー超音波法によるき裂検査技術は、パルスレーザー光を材料に照射した際に発生する弾性領域の歪みを利用して超音波を送信し、別途材料に照射した受信用のレーザー光の干渉効果を用いて、その超音波を振動信号として計測し、き裂検査を行う(例えば、非特許文献1参照)。
このように送受信された超音波は、通常の接触型の素子で送受信した超音波と同じように、種々のき裂検査や材料計測に用いることができる。
【0013】
図17において、第一のレーザー光源1から発振した第一のレーザー光L1は、第一のファイバー入射用光学系2を介して第一の光ファイバー3に入射され、照射用光学系4を介して材料Mの所定の位置に照射される。
【0014】
照射用光学系4は搬送駆動機構5によって、材料Mに対して所定の位置に搬送され、必要な領域に対して応力改善作用を行う。この第一のレーザー光L1は、レーザーピーニングとレーザー超音波き裂検査の送信用として用いられる。
【0015】
また、第二のレーザー光源6から発振した第二のレーザー光L2は第二のファイバー入射用光学系7を介して第二の光ファイバー8に入射され、照射・集光用光学系9を介して材料M上に、第一のレーザー光L1の照射位置と所定の位置関係を持って照射される。
【0016】
照射・集光用光学系9は照射用光学系4と同様に搬送駆動機構5によって材料Mに対して所定の位置に搬送され、必要な領域に対してき裂検査を行う。この第二のレーザー光L2は、レーザー超音波き裂検査の受信用として用いられる。
【0017】
材料Mに照射した第二のレーザー光L2はその表面で反射・散乱され、往路と同じ経路を伝送されて第二のファイバー入射用光学系7まで戻ってくる。
ここで第二のレーザー光L2の往路と復路は経路を光学的に変更され、復路を通った反射・散乱成分は検査・計測用光学系10に入射される。
【0018】
検査・計測用光学系10では、必要な光情報が電気情報に変換され、検出される。この電気情報は信号処理装置11によって、必要に応じて信号処理、解析、表示、記録される(例えば、特許文献3、4参照)。
【0019】
次に、このようなレーザー照射装置の動作について説明する。照射用光学系4と照射・集光用光学系9はともに搬送駆動機構5で材料Mの所定の位置まで搬送され、まず照射用光学系4から照射されるき裂検査に最適化された第一のレーザー光L1で材料Mに超音波信号を送信する。
【0020】
その超音波信号は、照射・集光用光学系9から照射され、材料Mの表面で反射・散乱される第二のレーザー光L2の干渉効果を用いて検査計測用光学系10と信号処理装置11で計測することにより受信する。
【0021】
搬送駆動機構5は材料Mのある領域中で1次元あるいは2次元走査などの所定の保全動作をする。計測した超音波信号を伝播時間解析法、表面伝播波のき裂による反射成分あるいは透過成分を解析する方法、パルスエコー法、回折波検知法、回折波飛行時間法(TOFD法:Time-of-Flight Diffraction)、開口合成法(SAFT法:Synthetic Aperture Focusing Technique)などを用いて解析することで、材料Mのき裂が検査される。
【0022】
その結果、き裂なし、あるいは許容範囲内のき裂のみと判断された場合、照射用光学系4からは再び第一のレーザー光L1が、レーザーピーニングに最適化された条件で材料Mに照射される。この場合も、搬送駆動機構5は材料Mのある領域中で1次元あるいは2次元走査などの所定の保全動作をする。
【0023】
このようにすれば、き裂がないことが確認された材料に対して応力改善を行うことで、材料Mに対し、応力に起因する劣化の発生を防止する予防保全施工を効率的に完了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平07−246483号公報
【特許文献2】特開平08−206869号公報
【特許文献3】特開2001−318081号公報
【特許文献4】特開2002−257793号公報
【非特許文献1】「山脇:“レーザー超音波と非接触材料評価”、溶接学会誌、第64巻、No.2、P.104-108 (1995)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従来技術の組み合わせによる図17に示すような従来のレーザー照射装置においては、照射用光学系4と照射・集光用光学系9の両方を材料Mに対し所定の位置まで搬送する必要がある。このため、材料M近傍にあるべき装置部分が大型化する。
【0026】
したがって、材料Mが狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合、その部位に光学系を挿入すること、あるいは、挿入できたとしてもその位置で駆動することが非常に困難である。
【0027】
一方、保全施工装置を個々に準備し、シーケンシャルに施工する場合、例えば、まず搬送駆動機構5に検査計測用光学系を装着して材料まで挿入し、検査計測し、抜き出し、その後、検査計測用光学系を改質加工用光学系に付け替えて再び材料まで挿入し、改質し、抜き出す、という手順をとると、挿入・抜き出し作業が2回必要となり、保全施工作業全体の工程が伸びて作業時間が長くなると共にコストが高くなる。
【0028】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、材料が狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行えるレーザー照射装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明は、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とする。
【0030】
また、他の本発明は、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第三の光伝送手段と、前記第三の光伝送手段から出力される第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によるレーザー照射装置によれば、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光と、材料に照射され、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をする第二のレーザー光を共通の統合光学系を介して材料に照射するようにしたので、統合光学系を小型化することができ、材料が狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業を短時間に容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示すブロック構成図。
【図2】図1の光学系を拡大して示す構成図。
【図3】図1の統合光学系の具体的構成を示す構成図。
【図4】図1の統合光学系の第一の変形例を示す構成図。
【図5】図1の統合光学系の第二の変形例を示す構成図。
【図6】図1の統合光学系の第三の変形例を示す構成図。
【図7】本発明の第二の実施の形態を示すブロック構成図。
【図8】図7の統合光学系の具体例を示す構成図。
【図9】図7の統合光学系の具体的構成を示す構成図。
【図10】図7の統合光学系の第一の変形例を示す構成図。
【図11】図7の統合光学系の第二の変形例を示す構成図。
【図12】図7の統合光学系の第三の変形例を示す構成図。
【図13】本発明の第三の実施の形態を示すブロック構成図。
【図14】本発明の第四の実施の形態を説明するための概略構成図。
【図15】本発明の第四の実施の形態を示す構成図。
【図16】本発明の第五の実施の形態を示す構成図。
【図17】従来のレーザー照射装置を示すブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態の説明において、図17に示す従来のレーザー照射装置と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
図1は本発明の第一の実施の形態を示す図で、材料Mを改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、ファイバー入射用光学系を含む光学系12を介して光伝送手段13に入射される。ここで、光伝送手段としては光ファイバーあるいはミラー光学系を用いた空間光伝送路などが考えられるが、本実施の形態においては光ファイバーを用いた場合を説明する。
【0035】
一方、材料Mの第一のレーザー光L1の照射位置と同じ位置、あるいは着目すべき別の位置にレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、光学系12を介して光ファイバー13に入射される。
【0036】
第一および第二のレーザー光L1、L2は同一光ファイバー13中を伝播し、統合光学系14へと導かれる。ここで、統合光学系14は第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0037】
統合光学系14により集光された第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を逆に伝播し、光学系12で光路を変更されて、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
【0038】
なお、従来と同様に、統合光学系14を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
ここで、光学系12の具体的な構成例を図2に示す。まず、第一のレーザー光源1から第一のレーザー光L1が発振される。この第一のレーザー光L1は材料の改質用途、あるいはレーザー超音波き裂検査における超音波送信用として用いられるレーザー光であり、通常の場合、高いピークパワーを有する。
【0039】
このようなレーザー光L1をレンズで集光し、直接光ファイバー13に入射すると、光ファイバーはレーザー光L1のパワーのため損傷する恐れがある。そこで、まずビームエキスパンダー15でビーム口径を拡大した後、フライアイレンズ16にて焦点を空間的に分割(空間的なプロファイルを均一化)し、その後、入射レンズ17を介して光ファイバー13に入射する。
【0040】
光ファイバー13はステップインデックス型(SI)あるいはグレーデッドインデックス型(GI)のマルチモード光ファイバーなどが用いられる。
伝送するエネルギーが大きい場合には、テーパー形状の伝送路を有するファイバー(入射側の口径が太く、出力端に向かうに従って口径が細くなる光ファイバー)を用いても良い。
【0041】
また入射レンズ17の焦点は光ファイバー13の入射端面に合わせるのではなく、ややデフォーカスにして入射するようにすると光ファイバーの損傷防止に役立つ。
なお、フライアイレンズ16の代替として、すりガラス等を用いて空間的なプロファイルを均一化しても良い。
【0042】
一方、検査・計測用の第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、ビームスプリッタ18を介して光合成・分岐素子(ダイクロイックミラー)19で第一のレーザー光L1と同軸化し、入射レンズ17によって光ファイバー13に入射される。ここでビームスプリッタ18は透過と反射の比率が等しいハーフミラーを用いてもよいし、光学波長板と共に偏向ビームスプリッタを用いても良い。
【0043】
光ファイバー13からは、材料Mで反射され、往路と逆経路を伝送された第二のレーザー光L2の反射成分が出力されるが、この反射成分は光合成・分岐素子19で再び反射され、ビームスプリッタ18を透過して検査・計測用光学系10へ入射される。
【0044】
ここで、第一のレーザー光L1の波長をλ1、第二のレーザー光L2の波長をλ2とした場合、λ1≠λ2を満たす光源を用いれば、光合成・分岐素子19に、透過:反射が均等のハーフミラーでなく、波長λ1のレーザー光を透過、波長λ2のレーザー光を反射するような波長選択性のあるダイクロイックミラーを用いることで、光量ロスを最小にすることができる。
【0045】
また、検査・計測用光学系10の前段に波長λ2のレーザー光のみを透過する光波長フィルタ20を設けてもよい。これによってピークパワーの大きな第一のレーザー光L1が検査・計測用光学系10へ混入するのを防止することができ、検査・計測用光学系10での検査・計測精度を向上させることができる。
【0046】
また、第一および第二のレーザー光L1、L2の反射成分の一部には、ビームスプリッタ18において反射される成分もあるが、その反射光が第二のレーザー光源6に混入するのを防止するために光アイソレータ21を設置するようにしても良い。
【0047】
このようにすれば、材料Mの近傍に設置する統合光学系14を小型化することができ、しかも光ファイバーを1本しか使用しないため、材料Mが狭あい空間または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行うことができる。
【0048】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の具体的な構成について図3を参照して説明する。図3において、14は図1に示す統合光学系で、光ファイバー13中を伝播してきた第一および第二のレーザー光L1、L2は、統合光学系ケース22に取り付けられた光ファイバー13の端面から同じ光軸で出射される。
この同軸2本のレーザー光は反射ミラー23によって所定の角度で反射され、照射レンズ24によって所定の照射条件で材料Mに照射される。
【0049】
材料Mに照射された2本のレーザー光のうち、第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を辿り、コリメータレンズ25によって光ファイバー13に再び入射される。
ここで、コリメータレンズ25は、往路において、2本のレーザー光を並行光に光路変更する特性も兼ね備えている。但し、例えば、照射レンズ24を適切に設計すれば、コリメータレンズ25なしでもこの光学系は成立するし、また、光ファイバー13の光軸に平行方向に2本のレーザー光を出力したい場合、すなわち、材料Mが光ファイバー13の光軸に対して垂直方向に位置する場合には、反射ミラー23は必要ない。
【0050】
なお、第二のレーザー光L2の反射成分の光ファイバー13への再入射効率を考えると、照射レンズ24から材料Mへの照射角度は、照射面に対してほぼ垂直方向であることが望ましい。
また、照射レンズ24、あるいは照射レンズ24とコリメータレンズ25の組み合わせにより、照射スポットを拡大・縮小したり、あるいは点または円形スポットではなく、照射スポット形状をライン状にするなど照射条件を変更することも可能である。
【0051】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第一の変形例について図4(a)、(b)を参照して説明する。図4(a)において、26は第一の光学素子で、第一および第二のレーザー光L1、 L2を反射する機能と、反射した2本のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能と、材料にて反射された反射成分を光ファイバー13に再入射する機能の3つの機能を1つの光学素子で実現する曲率面ミラー26aを有している。
【0052】
この曲率面ミラー26aの反射面には、第一のレーザー光L1の波長λ1と第二のレーザー光L2の波長λ2の両方の波長を反射する反射膜を施すか、あるいは光学素子自体を両方の波長に対して高い反射率を有する材料で構成する。
【0053】
あるいは図4(b)に示すとおり、第一の光学素子26は凸面の曲率を有する曲率面ミラー26bとすることもできる。この場合には、第一の光学素子26は、当然、第一および第二のレーザー光波長λ1、λ2の両方に対して透過率を有し、かつ、反射面は両方の波長について反射率を有さねばならない。
【0054】
いずれの場合も曲率面ミラーは図3に示した構造に比べて照射レンズを省略することができ、使用する光学素子の数を減らして、統合光学系ケース22をより小型化することが可能で、狭あい部等での使用により適している。
【0055】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第二の変形例について図5を参照して説明する。図5において、統合光学系ケース22に接続された光ファイバー13から出力された2本のレーザー光は、コリメータレンズ25で並行光となり、選択反射ミラー27に入射される。
【0056】
ここで、選択反射ミラー27は、例えば、第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する材質で構成されており、その反射面には第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する反射膜を有するものである。
【0057】
反射された第一のレーザー光L1は材料Mに照射されるが、この経路上に照射レンズ24aを設置して、照射条件を調整することも可能である。
一方、選択反射ミラー27を透過した第二のレーザー光L2は反射ミラー23で反射され、照射レンズ24bによって、所定のパラメータで材料Mに照射される。
【0058】
照射レンズ24bによる材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、後述する集光過程を考えれば、材料Mの照射面に対しできるだけ垂直方向とすることが好ましい。
材料Mにおける反射成分は照射レンズ24bで集光され、反射ミラー23、コリメータレンズ25を介して光ファイバー13へと再入射する。
【0059】
ここで、照射レンズ24bと周辺媒質の屈折率差が大きい場合、照射レンズ24bの光学面で第二のレーザー光L2のうち、一部は反射され、材料Mを経由することなく光ファイバー13へと再入射されてしまう。これは迷光ノイズとなるため、照射レンズ24bの光学面には、第二のレーザー光L2の波長λ2に対応した無反射コーティングがなされていることが好ましい。
【0060】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。
また、本構成は第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の位置関係が上下方向に並んでいる場合を示しているが、左右方向の場合でも同じ考え方で構成可能である。
【0061】
また、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー13への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。
また、本構成をとった場合でも第一のレーザー光L1の照射位置と第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることは可能であり、また、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0062】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第三の変形例について図6を参照して説明する。図6において、統合光学系ケース22に接続された光ファイバー13から出力された2本のレーザー光は、第二の光学素子28に入射される。
【0063】
ここで第二の光学素子28は第二のレーザー光L2の波長λ2に対し透過度を有する材料で構成されており、その第一面28-1は、第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、かつ第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する曲率面である。
【0064】
反射された第一のレーザー光L1はその曲率面体の定める光路に従って材料Mへと照射される。
一方、第二の光学素子28の内部を透過した第二のレーザー光L2は、第二の光学素子28の第二面28-2に到達する。ここで第二面28-2には第二のレーザー光L2の波長λ2を反射する反射膜が施されており、第二のレーザー光L2を材料Mの方向へ反射する。
【0065】
ここで、材料Mへ照射された第二のレーザー光L2の反射成分は、往路の逆を辿って光ファイバー13へと再入射されるため、材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、できる限り垂直に近い方向の方が効率が良い。
【0066】
第二面28-2は曲率面でもよいし、後述の第三面28-3の仕様によっては、平面でもかまわない。このレーザー光は第二面28-2から材料Mへの途中、第二の光学素子28の第三面28-3を透過するが、この第三面28-3には、第二のレーザー光L2の波長λ2の反射防止膜が施されている。
また、第二面28-2の曲率面による集光効果の補正、あるいは第二面28-2が平面の場合には照射レンズとして機能するためのレンズ構造を有していても良い。
【0067】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。いずれの場合でも、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー13への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。
【0068】
本構成をとった場合でも、第一のレーザー光L1の照射位置と、第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることも、あるいは、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0069】
次に、本発明の第二の実施の形態について図7を参照して説明する。図7において、材料Mの材料を改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、第一のファイバー入射用光学系2を介して第一の光ファイバー3に入射される。
【0070】
一方、材料Mにレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、第二のファイバー入射用光学系7を介して光ファイバー8に入射される。
第一および第二のレーザー光L1、 L2は各々光ファイバー3、 8によって、ともに統合光学系29へと導かれる。
【0071】
ここで、統合光学系29は、第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0072】
統合光学系29により集光された第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を逆に伝播し、第二のファイバー入射用光学系7を経由して、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
なお、従来と同様に、統合光学系29を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
【0073】
このようにすれば、光ファイバーは第一および第二のレーザー光で個別に必要となるものの、材料Mの近傍に設置する統合光学系29は第一および第二のレーザー光で共用することで小型化することができ、材料Mが狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行うことができる。
【0074】
ここで、統合光学系29と光ファイバー3、8の接続は図8(a)、(b)のごとく構成することができる。すなわち、光ファイバー3、8は統合光学系29に接続されるが、一方の光ファイバー3の端部を(a)図のように所定の角度だけ傾けたり、(b)図のように端面を斜めに研磨して接続したりすることにより照射角度を変化させることができる。
【0075】
このようにすれば、1枚の照射レンズ24を用いることで第一および第二のレーザー光L1、L2の照射位置を異なる任意の点に設定できる上、高いエネルギーを有する第一のレーザー光L1を角度を付けて材料Mに照射することで、その反射成分の光ファイバー8への混入を防止することもできる。
【0076】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の具体的な構成について図9を参照して説明する。図9において、2本の光ファイバー3、8は1本のチューブ30で束ねられ、統合光学系ケース29に接続される。
【0077】
2本のレーザー光はコリメータレンズ25を介して反射ミラー31に照射され、反射ミラー31で材料Mの方向に反射される。反射されたレーザー光は照射レンズ24によって、所定の照射条件で材料Mへと照射される。
【0078】
ここで、第二のレーザー光L2の反射成分は同じ経路を辿って光ファイバー8に再入射されるが、一方、第一のレーザー光L1はある角度をもって照射されるため、反射成分の光ファイバー3への混入が防止される。
【0079】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第一の変形例について図10参照して説明する。図10において、32は第三の光学素子で、2つの光学面32-1、 32-2を有する反射ミラーであり、第一のレーザー光L1が反射される光学面32-1と、第二のレーザー光L2が反射される光学面32-2が各々のレーザー光に対して適切な角度で形成されている。
このような構成によっても、レーザー光L2の反射成分の光ファイバー3への混入が防止される。
【0080】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第二の変形例について図11を参照して説明する。図11において、33は第四の光学素子で、第一のレーザー光L1を反射する機能と、反射した第一のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能の2つの機能を実現する曲率面33-1と、第二のレーザー光L2を反射する機能と、反射した第二のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能と、材料Mにて反射された反射成分を光ファイバー8に再入射する機能の3つの機能を有する第二の曲率面33-2を有する。
【0081】
この第四の光学素子33の各々の反射面には、第一のレーザー光L1の波長λ1あるいは第二のレーザー光L2の波長λ2の波長を反射する反射膜を設けるか、あるいは素子自体を両方の波長に対して高い反射率を有する材料で構成する。
【0082】
このような構造の統合光学系であると、照射レンズを省略することができ、使用する光学素子の数を減少らして、統合光学系ケース29をより小型化することが可能で、狭あい部等での使用により適している。
【0083】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第三の変形例について図12を参照して説明する。図12において、統合光学系ケース29に接続された光ファイバー3、8から各々出力された2本のレーザー光は、第五の光学素子34に入射される。
【0084】
ここで第五の光学素子34は第二のレーザー光L2の波長λ2に対し透過度を有する材料で構成されており、その第一面34-1は、第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、かつ第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する曲率面である。反射された第一のレーザー光L1はその曲率面体の定める光路に従って材料Mへと照射される。
【0085】
一方、第五の光学素子34の内部を透過した第二のレーザー光L2は、第五の光学素子34の第二面34-2に到達する。ここで第二面34-2には第二のレーザー光L2の波長λ2を反射する反射膜が施されており、第二のレーザー光L2を材料Mの方向へ反射する。
【0086】
ここで、材料Mへ照射された第二のレーザー光L2の反射成分は、往路の逆を辿って光ファイバー8へと再入射されるため、材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、できる限り垂直に近い方向の方が効率が良い。
【0087】
第二面34-2は曲率面でもよいし、後述の第三面34-3の仕様によっては、平面でもかまわない。第二のレーザー光L2は第五の光学素子34の第二面34-2で反射された後、第三面34-3を透過するが、この第三面34-3には、第二のレーザー光L2の波長λ2の反射防止膜が施される。
【0088】
また、第二面34-2の曲率面による集光効果の補正、あるいは第二面34-2が平面の場合には照射レンズとして機能するためのレンズ構造を有していても良い。
【0089】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。
また、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー3への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。この観点から、本構成をとった場合でも、第一のレーザー光L1の照射位置と、第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることも、あるいは、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0090】
このような構成によれば、統合光学系ケース29のサイズを大きくすることなく、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の照射条件を任意に決めることができるという効果がある。
【0091】
次に、本発明の第三の実施の形態について図13を参照して説明する。図13において、材料Mの材料を改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、第一のファイバー入射用光学系2を介して光ファイバー3に入射される。
【0092】
一方、材料Mにレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、第二のファイバー入射用光学系7を介して光ファイバー8に入射される。
【0093】
第一および第二のレーザー光L1、L2は各々光ファイバー3、8によって、統合光学系35へと導かれる。ここで、統合光学系35は、第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0094】
さらに、集光された第二のレーザー光L2の反射成分は統合光学系35内で往路から分岐され、第三の光ファイバー36を伝播し、直接、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
なお、従来と同様に、統合光学系35を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
【0095】
このようにすれば、光ファイバーは3本必要となるものの、材料Mの近傍に設置する統合光学系は第一および第二のレーザー光で共用することで小型化することができる上、第二の光ファイバー8の端面で反射する光成分が検査・計測用光学系10に混入することを防止することができる。
【0096】
次に、本発明の第四の実施の形態について図14および図15を参照して説明する。図14に示すよう、例えば図7および図13における光ファイバー3は光を材料Mに照射する機能を有するが、図7における光ファイバー8、図13における光ファイバー36は材料Mからの反射成分が入射される機能を有する。個々の光ファイバーは固有の開口数N.A.
N.A.=n・sinθ
但しnは媒質の屈折率を有しており、この角度範囲内で入射してくる光は光ファイバー内を伝播し、逆にこの角度範囲外の入射光は伝播しない。
【0097】
ここで、材料Mは一般に粗面であるため、照射された第二のレーザー光L2は広い角度に散乱する。その散乱光を効率的に光ファイバーに入射させるためには、図7における光ファイバー8、図13における光ファイバー36は大きな開口数を有している方が有利である。
【0098】
一方、図7および図13における光ファイバー3に反射成分が混入すると、それは第一のレーザー光源1まで伝播し、光源に悪影響を及ぼす。従って、図7および図13における光ファイバー3は小さな開口数を有している方が有利である。
【0099】
本実施の形態においては、図15に示すように、統合光学系ケース37が媒質W中で使用され、第一および第二のレーザー光L1、L2の伝播経路の一部分を媒質Wと同じ清浄な液体で置換するものである。
【0100】
図15では、統合光学系ケース37にノズル38を取り付け、図示しないホースを介して矢印で示すように清浄な媒質Wの流れを光路に生成している。
第一のレーザー光L1は比較的高いエネルギーを有するため、材料Mに照射した際に材料Mの表面から微粒子が脱離する場合がある。これらの微粒子はレーザー光を散乱・吸収するため、これらがレーザー光路を横切ると改質、き裂検査・計測のいずれにも悪影響がある。そこで清浄な媒質Wで光路を常に置換し続けることで、微粒子の光路への混入を防止することができる。
【0101】
なお、媒質Wが水など超音波の良導体である場合には、第一または第二のレーザー光L1、L2の材料Mへの照射で媒質中に音波振動が発生する場合がある。この音波振動の影響を防止するためには、統合光学系ケース37を吸音材材料で構成するのも効果的である。
【0102】
次に、本発明の第五の実施の形態について図16を参照して説明する。図16において、材料Mを含む細管39は容器40の底部を貫いて設置されている。容器40は水Wで満たされていて、この水Wは細管39の内部にも存在する。
【0103】
図示しない第一および第二のレーザー光源から発振した2本のレーザー光L1、L2は、光ファイバー13で導かれる。光ファイバー13は統合光学系ケース37に接続されており、2本のレーザー光L1、L2は第二の光学素子28を介し、所定の照射条件で材料Mに照射される。
照射されたレーザー光のうち、第二のレーザー光L2は材料Mの表面で反射され、往路の逆経路で図示しない検査・計測用光学系まで導かれる。
【0104】
ここで、統合光学系ケース37は搬送駆動機構5に接続され、細管39内を上下方向、あるいは周方向に移動可能な構造となっており、移動しながら細管39内の保全すべき部位全体を施工する。
【0105】
統合光学系ケース37には水ノズル38が形成されており、統合光学系ケース37の内部から統合光学系ケース37と細管39の隙間に向かう方向で清浄水が噴出し、第一のレーザー光L1の照射によって発生した微粒子がすべて細管39の外側へ流出する構造となっている。
【0106】
このような構成においても、清浄な媒体Wで光路を常に置換し続けることで微粒子の光路への侵入を防止することができる。
搬送駆動機構5は細管Tの上側に何らかの方法によって固定可能な構造となっている。
【符号の説明】
【0107】
1…第一のレーザー光源、2…第一のファイバー入射用光学系、3…第一の光ファイバー、5…搬送駆動機構、6…第二のレーザー光源、7…第二のファイバー入射用光学系、8…第二の光ファイバー、10…検査・計測用光学系、11…信号処理装置、12…光学系、13…光ファイバー、14、29、35…統合光学系、15…ビームエキスパンダー、16…フライアイレンズ、17…入射レンズ、18…ビームスプリッタ、19…ダイクロイックミラー、20…光波長フィルタ、21…光アイソレータ、22…統合光学系ケース、23…反射ミラー、24…照射レンズ、25…コリメータレンズ、26…第一の光学素子、27…選択反射ミラー、28…第二の光学素子、31…反射ミラー、32…第三の光学素子、33…第四の光学素子、34…第五の光学素子、36…第三の光ファイバー、39…細管、40…容器、L1…第一のレーザー光、L2…第二のレーザー光、M…材料、W…媒質(水)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を利用して、狭あい空間、または狭あいな経路を経由して到達する空間に位置する材料の改質施工と、その施工前、施工中、施工後の材料検査または計測を行うレーザー照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば原子力プラントの炉内構造物など、供用期間中に機器や構造材料の劣化を未然に防止するための予防保全技術、あるいは万が一劣化が発生してしまった後の補修、保全、劣化進展防止などの事後保全技術の重要性が増している。
【0003】
一方、レーザー光線を応用したレーザー技術は、レーザー光の持つ高いエネルギー密度、ピークパワー、可干渉性、直進性などの特徴を利用することで、材料表面の応力改善、溶体化処理、クラッディング、付着物・表面層除去、研磨、き裂除去、溶接、切断等の材料の改質、あるいは、き裂検出、き裂寸法計測、応力計測、材料組成計測、距離計測、振動計測、形状計測、温度計測等の材料検査または計測に有効に利用できる。
【0004】
特にこれらレーザー技術は、原理的に、対象物が高温、高所、高放射線場、複雑形状部など接触が困難であったり、接近性が悪く遠隔非接触の検査手法が求められる部位であったりする場合に有効な手法である。
【0005】
また、狭あい部、遮蔽物の内側、配管内面など、レーザービームを材料まで空間的に伝送することが難しい部位への適用も光ファイバー技術の利用により、効率的に実現可能である。
一般的に保全技術の性質上、個々の技術が独立して適用されるケースは少ない。実際の保全施工を考えた場合には一例として以下の技術が必要となる。
【0006】
(1)応力改善施工の前には、施工部位にき裂がないことを確認するためのき裂検査が必要(施工前検査)。
(2)溶接施工後には溶接部およびその熱影響部にき裂発生がないことを確認する必要(施工後検査)。
(3)応力改善施工の後に応力を計測し、施工の効果を確認する必要(施工後計測)。
(4)改質施工中に、レーザー照射装置と対象物の間の距離を管理するための計測が必要(施工中検査・計測)。
【0007】
また、レーザー計測または検査の前には、施工面を予めクリーニングすることが望ましく、材料の改質技術と、検査または計測技術は、統合的に適用するのがより効果的、かつ効率的である。
【0008】
しかしながら、従来これらのレーザー技術を応用した保全施工技術は独立した装置として実現されてきているものの、統合的に保全施工技術を適用できる装置は存在しなかった。
【0009】
また、レーザー超音波き裂検査法のように、原理的に2本のレーザー光を用い、かつ条件を変更すれば、材料の改質にも、検査または計測にも使用可能な技術もある。
このような保全施工のためには、従来技術を組み合わせて利用することになる。
【0010】
レーザーによる応力改善(以下、レーザーピーニングと称する)技術とレーザー超音波法によるき裂検査技術との従来技術の組み合わせによる従来のレーザー照射装置の構成を図17に示す。
【0011】
まず、レーザーピーニング技術とレーザー超音波法によるき裂検査技術について説明する。
レーザーピーニングとは、金属材料をプラズマ化し得るピーク出力を有するパルスレーザー光を水中で材料表面に照射することにより、対象表面に高圧のプラズマを生成し、このプラズマの膨張を周囲の水で閉じ込め、材料に圧縮方向の応力(塑性領域の歪み)を与えることにより対象材料の残留応力を改善し、応力に起因する劣化(例えば応力腐食割れの発生、進展)を予防する技術である(例えば特許文献1、2参照)。
【0012】
レーザー超音波法によるき裂検査技術は、パルスレーザー光を材料に照射した際に発生する弾性領域の歪みを利用して超音波を送信し、別途材料に照射した受信用のレーザー光の干渉効果を用いて、その超音波を振動信号として計測し、き裂検査を行う(例えば、非特許文献1参照)。
このように送受信された超音波は、通常の接触型の素子で送受信した超音波と同じように、種々のき裂検査や材料計測に用いることができる。
【0013】
図17において、第一のレーザー光源1から発振した第一のレーザー光L1は、第一のファイバー入射用光学系2を介して第一の光ファイバー3に入射され、照射用光学系4を介して材料Mの所定の位置に照射される。
【0014】
照射用光学系4は搬送駆動機構5によって、材料Mに対して所定の位置に搬送され、必要な領域に対して応力改善作用を行う。この第一のレーザー光L1は、レーザーピーニングとレーザー超音波き裂検査の送信用として用いられる。
【0015】
また、第二のレーザー光源6から発振した第二のレーザー光L2は第二のファイバー入射用光学系7を介して第二の光ファイバー8に入射され、照射・集光用光学系9を介して材料M上に、第一のレーザー光L1の照射位置と所定の位置関係を持って照射される。
【0016】
照射・集光用光学系9は照射用光学系4と同様に搬送駆動機構5によって材料Mに対して所定の位置に搬送され、必要な領域に対してき裂検査を行う。この第二のレーザー光L2は、レーザー超音波き裂検査の受信用として用いられる。
【0017】
材料Mに照射した第二のレーザー光L2はその表面で反射・散乱され、往路と同じ経路を伝送されて第二のファイバー入射用光学系7まで戻ってくる。
ここで第二のレーザー光L2の往路と復路は経路を光学的に変更され、復路を通った反射・散乱成分は検査・計測用光学系10に入射される。
【0018】
検査・計測用光学系10では、必要な光情報が電気情報に変換され、検出される。この電気情報は信号処理装置11によって、必要に応じて信号処理、解析、表示、記録される(例えば、特許文献3、4参照)。
【0019】
次に、このようなレーザー照射装置の動作について説明する。照射用光学系4と照射・集光用光学系9はともに搬送駆動機構5で材料Mの所定の位置まで搬送され、まず照射用光学系4から照射されるき裂検査に最適化された第一のレーザー光L1で材料Mに超音波信号を送信する。
【0020】
その超音波信号は、照射・集光用光学系9から照射され、材料Mの表面で反射・散乱される第二のレーザー光L2の干渉効果を用いて検査計測用光学系10と信号処理装置11で計測することにより受信する。
【0021】
搬送駆動機構5は材料Mのある領域中で1次元あるいは2次元走査などの所定の保全動作をする。計測した超音波信号を伝播時間解析法、表面伝播波のき裂による反射成分あるいは透過成分を解析する方法、パルスエコー法、回折波検知法、回折波飛行時間法(TOFD法:Time-of-Flight Diffraction)、開口合成法(SAFT法:Synthetic Aperture Focusing Technique)などを用いて解析することで、材料Mのき裂が検査される。
【0022】
その結果、き裂なし、あるいは許容範囲内のき裂のみと判断された場合、照射用光学系4からは再び第一のレーザー光L1が、レーザーピーニングに最適化された条件で材料Mに照射される。この場合も、搬送駆動機構5は材料Mのある領域中で1次元あるいは2次元走査などの所定の保全動作をする。
【0023】
このようにすれば、き裂がないことが確認された材料に対して応力改善を行うことで、材料Mに対し、応力に起因する劣化の発生を防止する予防保全施工を効率的に完了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平07−246483号公報
【特許文献2】特開平08−206869号公報
【特許文献3】特開2001−318081号公報
【特許文献4】特開2002−257793号公報
【非特許文献1】「山脇:“レーザー超音波と非接触材料評価”、溶接学会誌、第64巻、No.2、P.104-108 (1995)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従来技術の組み合わせによる図17に示すような従来のレーザー照射装置においては、照射用光学系4と照射・集光用光学系9の両方を材料Mに対し所定の位置まで搬送する必要がある。このため、材料M近傍にあるべき装置部分が大型化する。
【0026】
したがって、材料Mが狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合、その部位に光学系を挿入すること、あるいは、挿入できたとしてもその位置で駆動することが非常に困難である。
【0027】
一方、保全施工装置を個々に準備し、シーケンシャルに施工する場合、例えば、まず搬送駆動機構5に検査計測用光学系を装着して材料まで挿入し、検査計測し、抜き出し、その後、検査計測用光学系を改質加工用光学系に付け替えて再び材料まで挿入し、改質し、抜き出す、という手順をとると、挿入・抜き出し作業が2回必要となり、保全施工作業全体の工程が伸びて作業時間が長くなると共にコストが高くなる。
【0028】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、材料が狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行えるレーザー照射装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明は、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とする。
【0030】
また、他の本発明は、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第三の光伝送手段と、前記第三の光伝送手段から出力される第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によるレーザー照射装置によれば、材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光と、材料に照射され、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をする第二のレーザー光を共通の統合光学系を介して材料に照射するようにしたので、統合光学系を小型化することができ、材料が狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業を短時間に容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示すブロック構成図。
【図2】図1の光学系を拡大して示す構成図。
【図3】図1の統合光学系の具体的構成を示す構成図。
【図4】図1の統合光学系の第一の変形例を示す構成図。
【図5】図1の統合光学系の第二の変形例を示す構成図。
【図6】図1の統合光学系の第三の変形例を示す構成図。
【図7】本発明の第二の実施の形態を示すブロック構成図。
【図8】図7の統合光学系の具体例を示す構成図。
【図9】図7の統合光学系の具体的構成を示す構成図。
【図10】図7の統合光学系の第一の変形例を示す構成図。
【図11】図7の統合光学系の第二の変形例を示す構成図。
【図12】図7の統合光学系の第三の変形例を示す構成図。
【図13】本発明の第三の実施の形態を示すブロック構成図。
【図14】本発明の第四の実施の形態を説明するための概略構成図。
【図15】本発明の第四の実施の形態を示す構成図。
【図16】本発明の第五の実施の形態を示す構成図。
【図17】従来のレーザー照射装置を示すブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態の説明において、図17に示す従来のレーザー照射装置と同一部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
図1は本発明の第一の実施の形態を示す図で、材料Mを改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、ファイバー入射用光学系を含む光学系12を介して光伝送手段13に入射される。ここで、光伝送手段としては光ファイバーあるいはミラー光学系を用いた空間光伝送路などが考えられるが、本実施の形態においては光ファイバーを用いた場合を説明する。
【0035】
一方、材料Mの第一のレーザー光L1の照射位置と同じ位置、あるいは着目すべき別の位置にレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、光学系12を介して光ファイバー13に入射される。
【0036】
第一および第二のレーザー光L1、L2は同一光ファイバー13中を伝播し、統合光学系14へと導かれる。ここで、統合光学系14は第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0037】
統合光学系14により集光された第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を逆に伝播し、光学系12で光路を変更されて、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
【0038】
なお、従来と同様に、統合光学系14を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
ここで、光学系12の具体的な構成例を図2に示す。まず、第一のレーザー光源1から第一のレーザー光L1が発振される。この第一のレーザー光L1は材料の改質用途、あるいはレーザー超音波き裂検査における超音波送信用として用いられるレーザー光であり、通常の場合、高いピークパワーを有する。
【0039】
このようなレーザー光L1をレンズで集光し、直接光ファイバー13に入射すると、光ファイバーはレーザー光L1のパワーのため損傷する恐れがある。そこで、まずビームエキスパンダー15でビーム口径を拡大した後、フライアイレンズ16にて焦点を空間的に分割(空間的なプロファイルを均一化)し、その後、入射レンズ17を介して光ファイバー13に入射する。
【0040】
光ファイバー13はステップインデックス型(SI)あるいはグレーデッドインデックス型(GI)のマルチモード光ファイバーなどが用いられる。
伝送するエネルギーが大きい場合には、テーパー形状の伝送路を有するファイバー(入射側の口径が太く、出力端に向かうに従って口径が細くなる光ファイバー)を用いても良い。
【0041】
また入射レンズ17の焦点は光ファイバー13の入射端面に合わせるのではなく、ややデフォーカスにして入射するようにすると光ファイバーの損傷防止に役立つ。
なお、フライアイレンズ16の代替として、すりガラス等を用いて空間的なプロファイルを均一化しても良い。
【0042】
一方、検査・計測用の第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、ビームスプリッタ18を介して光合成・分岐素子(ダイクロイックミラー)19で第一のレーザー光L1と同軸化し、入射レンズ17によって光ファイバー13に入射される。ここでビームスプリッタ18は透過と反射の比率が等しいハーフミラーを用いてもよいし、光学波長板と共に偏向ビームスプリッタを用いても良い。
【0043】
光ファイバー13からは、材料Mで反射され、往路と逆経路を伝送された第二のレーザー光L2の反射成分が出力されるが、この反射成分は光合成・分岐素子19で再び反射され、ビームスプリッタ18を透過して検査・計測用光学系10へ入射される。
【0044】
ここで、第一のレーザー光L1の波長をλ1、第二のレーザー光L2の波長をλ2とした場合、λ1≠λ2を満たす光源を用いれば、光合成・分岐素子19に、透過:反射が均等のハーフミラーでなく、波長λ1のレーザー光を透過、波長λ2のレーザー光を反射するような波長選択性のあるダイクロイックミラーを用いることで、光量ロスを最小にすることができる。
【0045】
また、検査・計測用光学系10の前段に波長λ2のレーザー光のみを透過する光波長フィルタ20を設けてもよい。これによってピークパワーの大きな第一のレーザー光L1が検査・計測用光学系10へ混入するのを防止することができ、検査・計測用光学系10での検査・計測精度を向上させることができる。
【0046】
また、第一および第二のレーザー光L1、L2の反射成分の一部には、ビームスプリッタ18において反射される成分もあるが、その反射光が第二のレーザー光源6に混入するのを防止するために光アイソレータ21を設置するようにしても良い。
【0047】
このようにすれば、材料Mの近傍に設置する統合光学系14を小型化することができ、しかも光ファイバーを1本しか使用しないため、材料Mが狭あい空間または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行うことができる。
【0048】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の具体的な構成について図3を参照して説明する。図3において、14は図1に示す統合光学系で、光ファイバー13中を伝播してきた第一および第二のレーザー光L1、L2は、統合光学系ケース22に取り付けられた光ファイバー13の端面から同じ光軸で出射される。
この同軸2本のレーザー光は反射ミラー23によって所定の角度で反射され、照射レンズ24によって所定の照射条件で材料Mに照射される。
【0049】
材料Mに照射された2本のレーザー光のうち、第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を辿り、コリメータレンズ25によって光ファイバー13に再び入射される。
ここで、コリメータレンズ25は、往路において、2本のレーザー光を並行光に光路変更する特性も兼ね備えている。但し、例えば、照射レンズ24を適切に設計すれば、コリメータレンズ25なしでもこの光学系は成立するし、また、光ファイバー13の光軸に平行方向に2本のレーザー光を出力したい場合、すなわち、材料Mが光ファイバー13の光軸に対して垂直方向に位置する場合には、反射ミラー23は必要ない。
【0050】
なお、第二のレーザー光L2の反射成分の光ファイバー13への再入射効率を考えると、照射レンズ24から材料Mへの照射角度は、照射面に対してほぼ垂直方向であることが望ましい。
また、照射レンズ24、あるいは照射レンズ24とコリメータレンズ25の組み合わせにより、照射スポットを拡大・縮小したり、あるいは点または円形スポットではなく、照射スポット形状をライン状にするなど照射条件を変更することも可能である。
【0051】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第一の変形例について図4(a)、(b)を参照して説明する。図4(a)において、26は第一の光学素子で、第一および第二のレーザー光L1、 L2を反射する機能と、反射した2本のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能と、材料にて反射された反射成分を光ファイバー13に再入射する機能の3つの機能を1つの光学素子で実現する曲率面ミラー26aを有している。
【0052】
この曲率面ミラー26aの反射面には、第一のレーザー光L1の波長λ1と第二のレーザー光L2の波長λ2の両方の波長を反射する反射膜を施すか、あるいは光学素子自体を両方の波長に対して高い反射率を有する材料で構成する。
【0053】
あるいは図4(b)に示すとおり、第一の光学素子26は凸面の曲率を有する曲率面ミラー26bとすることもできる。この場合には、第一の光学素子26は、当然、第一および第二のレーザー光波長λ1、λ2の両方に対して透過率を有し、かつ、反射面は両方の波長について反射率を有さねばならない。
【0054】
いずれの場合も曲率面ミラーは図3に示した構造に比べて照射レンズを省略することができ、使用する光学素子の数を減らして、統合光学系ケース22をより小型化することが可能で、狭あい部等での使用により適している。
【0055】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第二の変形例について図5を参照して説明する。図5において、統合光学系ケース22に接続された光ファイバー13から出力された2本のレーザー光は、コリメータレンズ25で並行光となり、選択反射ミラー27に入射される。
【0056】
ここで、選択反射ミラー27は、例えば、第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する材質で構成されており、その反射面には第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する反射膜を有するものである。
【0057】
反射された第一のレーザー光L1は材料Mに照射されるが、この経路上に照射レンズ24aを設置して、照射条件を調整することも可能である。
一方、選択反射ミラー27を透過した第二のレーザー光L2は反射ミラー23で反射され、照射レンズ24bによって、所定のパラメータで材料Mに照射される。
【0058】
照射レンズ24bによる材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、後述する集光過程を考えれば、材料Mの照射面に対しできるだけ垂直方向とすることが好ましい。
材料Mにおける反射成分は照射レンズ24bで集光され、反射ミラー23、コリメータレンズ25を介して光ファイバー13へと再入射する。
【0059】
ここで、照射レンズ24bと周辺媒質の屈折率差が大きい場合、照射レンズ24bの光学面で第二のレーザー光L2のうち、一部は反射され、材料Mを経由することなく光ファイバー13へと再入射されてしまう。これは迷光ノイズとなるため、照射レンズ24bの光学面には、第二のレーザー光L2の波長λ2に対応した無反射コーティングがなされていることが好ましい。
【0060】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。
また、本構成は第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の位置関係が上下方向に並んでいる場合を示しているが、左右方向の場合でも同じ考え方で構成可能である。
【0061】
また、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー13への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。
また、本構成をとった場合でも第一のレーザー光L1の照射位置と第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることは可能であり、また、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0062】
次に、本発明の第一の実施の形態における統合光学系の第三の変形例について図6を参照して説明する。図6において、統合光学系ケース22に接続された光ファイバー13から出力された2本のレーザー光は、第二の光学素子28に入射される。
【0063】
ここで第二の光学素子28は第二のレーザー光L2の波長λ2に対し透過度を有する材料で構成されており、その第一面28-1は、第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、かつ第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する曲率面である。
【0064】
反射された第一のレーザー光L1はその曲率面体の定める光路に従って材料Mへと照射される。
一方、第二の光学素子28の内部を透過した第二のレーザー光L2は、第二の光学素子28の第二面28-2に到達する。ここで第二面28-2には第二のレーザー光L2の波長λ2を反射する反射膜が施されており、第二のレーザー光L2を材料Mの方向へ反射する。
【0065】
ここで、材料Mへ照射された第二のレーザー光L2の反射成分は、往路の逆を辿って光ファイバー13へと再入射されるため、材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、できる限り垂直に近い方向の方が効率が良い。
【0066】
第二面28-2は曲率面でもよいし、後述の第三面28-3の仕様によっては、平面でもかまわない。このレーザー光は第二面28-2から材料Mへの途中、第二の光学素子28の第三面28-3を透過するが、この第三面28-3には、第二のレーザー光L2の波長λ2の反射防止膜が施されている。
また、第二面28-2の曲率面による集光効果の補正、あるいは第二面28-2が平面の場合には照射レンズとして機能するためのレンズ構造を有していても良い。
【0067】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。いずれの場合でも、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー13への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。
【0068】
本構成をとった場合でも、第一のレーザー光L1の照射位置と、第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることも、あるいは、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0069】
次に、本発明の第二の実施の形態について図7を参照して説明する。図7において、材料Mの材料を改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、第一のファイバー入射用光学系2を介して第一の光ファイバー3に入射される。
【0070】
一方、材料Mにレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、第二のファイバー入射用光学系7を介して光ファイバー8に入射される。
第一および第二のレーザー光L1、 L2は各々光ファイバー3、 8によって、ともに統合光学系29へと導かれる。
【0071】
ここで、統合光学系29は、第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0072】
統合光学系29により集光された第二のレーザー光L2の反射成分は往路と同じ経路を逆に伝播し、第二のファイバー入射用光学系7を経由して、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
なお、従来と同様に、統合光学系29を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
【0073】
このようにすれば、光ファイバーは第一および第二のレーザー光で個別に必要となるものの、材料Mの近傍に設置する統合光学系29は第一および第二のレーザー光で共用することで小型化することができ、材料Mが狭あい空間、または狭あいな経路を経由しなければ到達できない空間に位置している場合でも、材料の改質と材料検査または計測との保全施工作業が短時間に容易に行うことができる。
【0074】
ここで、統合光学系29と光ファイバー3、8の接続は図8(a)、(b)のごとく構成することができる。すなわち、光ファイバー3、8は統合光学系29に接続されるが、一方の光ファイバー3の端部を(a)図のように所定の角度だけ傾けたり、(b)図のように端面を斜めに研磨して接続したりすることにより照射角度を変化させることができる。
【0075】
このようにすれば、1枚の照射レンズ24を用いることで第一および第二のレーザー光L1、L2の照射位置を異なる任意の点に設定できる上、高いエネルギーを有する第一のレーザー光L1を角度を付けて材料Mに照射することで、その反射成分の光ファイバー8への混入を防止することもできる。
【0076】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の具体的な構成について図9を参照して説明する。図9において、2本の光ファイバー3、8は1本のチューブ30で束ねられ、統合光学系ケース29に接続される。
【0077】
2本のレーザー光はコリメータレンズ25を介して反射ミラー31に照射され、反射ミラー31で材料Mの方向に反射される。反射されたレーザー光は照射レンズ24によって、所定の照射条件で材料Mへと照射される。
【0078】
ここで、第二のレーザー光L2の反射成分は同じ経路を辿って光ファイバー8に再入射されるが、一方、第一のレーザー光L1はある角度をもって照射されるため、反射成分の光ファイバー3への混入が防止される。
【0079】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第一の変形例について図10参照して説明する。図10において、32は第三の光学素子で、2つの光学面32-1、 32-2を有する反射ミラーであり、第一のレーザー光L1が反射される光学面32-1と、第二のレーザー光L2が反射される光学面32-2が各々のレーザー光に対して適切な角度で形成されている。
このような構成によっても、レーザー光L2の反射成分の光ファイバー3への混入が防止される。
【0080】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第二の変形例について図11を参照して説明する。図11において、33は第四の光学素子で、第一のレーザー光L1を反射する機能と、反射した第一のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能の2つの機能を実現する曲率面33-1と、第二のレーザー光L2を反射する機能と、反射した第二のレーザー光を所定の照射条件で材料Mに照射する機能と、材料Mにて反射された反射成分を光ファイバー8に再入射する機能の3つの機能を有する第二の曲率面33-2を有する。
【0081】
この第四の光学素子33の各々の反射面には、第一のレーザー光L1の波長λ1あるいは第二のレーザー光L2の波長λ2の波長を反射する反射膜を設けるか、あるいは素子自体を両方の波長に対して高い反射率を有する材料で構成する。
【0082】
このような構造の統合光学系であると、照射レンズを省略することができ、使用する光学素子の数を減少らして、統合光学系ケース29をより小型化することが可能で、狭あい部等での使用により適している。
【0083】
次に、本発明の第二の実施の形態における統合光学系の第三の変形例について図12を参照して説明する。図12において、統合光学系ケース29に接続された光ファイバー3、8から各々出力された2本のレーザー光は、第五の光学素子34に入射される。
【0084】
ここで第五の光学素子34は第二のレーザー光L2の波長λ2に対し透過度を有する材料で構成されており、その第一面34-1は、第一のレーザー光L1の波長λ1を反射し、かつ第二のレーザー光L2の波長λ2を透過する曲率面である。反射された第一のレーザー光L1はその曲率面体の定める光路に従って材料Mへと照射される。
【0085】
一方、第五の光学素子34の内部を透過した第二のレーザー光L2は、第五の光学素子34の第二面34-2に到達する。ここで第二面34-2には第二のレーザー光L2の波長λ2を反射する反射膜が施されており、第二のレーザー光L2を材料Mの方向へ反射する。
【0086】
ここで、材料Mへ照射された第二のレーザー光L2の反射成分は、往路の逆を辿って光ファイバー8へと再入射されるため、材料Mへの第二のレーザー光L2の照射は、できる限り垂直に近い方向の方が効率が良い。
【0087】
第二面34-2は曲率面でもよいし、後述の第三面34-3の仕様によっては、平面でもかまわない。第二のレーザー光L2は第五の光学素子34の第二面34-2で反射された後、第三面34-3を透過するが、この第三面34-3には、第二のレーザー光L2の波長λ2の反射防止膜が施される。
【0088】
また、第二面34-2の曲率面による集光効果の補正、あるいは第二面34-2が平面の場合には照射レンズとして機能するためのレンズ構造を有していても良い。
【0089】
なお、本構成では、最初に第一のレーザー光L1が反射されるが、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の反射順序は逆でもかまわない。
また、第一のレーザー光L1の照射は、その反射成分の光ファイバー3への再入射防止の観点から、材料Mに対して、やや角度を付けて行うことが望ましい。この観点から、本構成をとった場合でも、第一のレーザー光L1の照射位置と、第二のレーザー光L2の照射位置を同じ点にすることも、あるいは、あえて所定の距離だけ離すことも容易である。
【0090】
このような構成によれば、統合光学系ケース29のサイズを大きくすることなく、第一のレーザー光L1と第二のレーザー光L2の照射条件を任意に決めることができるという効果がある。
【0091】
次に、本発明の第三の実施の形態について図13を参照して説明する。図13において、材料Mの材料を改質する第一のレーザー光L1は第一のレーザー光源1から発振され、第一のファイバー入射用光学系2を介して光ファイバー3に入射される。
【0092】
一方、材料Mにレーザー光を照射し、その反射成分を検出して該当部位のき裂検査または計測をするための第二のレーザー光L2は第二のレーザー光源6から発振され、第二のファイバー入射用光学系7を介して光ファイバー8に入射される。
【0093】
第一および第二のレーザー光L1、L2は各々光ファイバー3、8によって、統合光学系35へと導かれる。ここで、統合光学系35は、第一のレーザー光L1を所定の照射条件で材料Mに照射するとともに、第二のレーザー光L2を所定の照射条件で材料Mに照射し、かつ、その反射成分を集光する機能を有する。
【0094】
さらに、集光された第二のレーザー光L2の反射成分は統合光学系35内で往路から分岐され、第三の光ファイバー36を伝播し、直接、検査・計測用光学系10に入射される。ここで情報は電気信号に変換されて計測され、信号処理装置11にて処理される。
なお、従来と同様に、統合光学系35を材料M近傍まで搬送し、該当部位にて保全動作するための搬送駆動機構5を備える。
【0095】
このようにすれば、光ファイバーは3本必要となるものの、材料Mの近傍に設置する統合光学系は第一および第二のレーザー光で共用することで小型化することができる上、第二の光ファイバー8の端面で反射する光成分が検査・計測用光学系10に混入することを防止することができる。
【0096】
次に、本発明の第四の実施の形態について図14および図15を参照して説明する。図14に示すよう、例えば図7および図13における光ファイバー3は光を材料Mに照射する機能を有するが、図7における光ファイバー8、図13における光ファイバー36は材料Mからの反射成分が入射される機能を有する。個々の光ファイバーは固有の開口数N.A.
N.A.=n・sinθ
但しnは媒質の屈折率を有しており、この角度範囲内で入射してくる光は光ファイバー内を伝播し、逆にこの角度範囲外の入射光は伝播しない。
【0097】
ここで、材料Mは一般に粗面であるため、照射された第二のレーザー光L2は広い角度に散乱する。その散乱光を効率的に光ファイバーに入射させるためには、図7における光ファイバー8、図13における光ファイバー36は大きな開口数を有している方が有利である。
【0098】
一方、図7および図13における光ファイバー3に反射成分が混入すると、それは第一のレーザー光源1まで伝播し、光源に悪影響を及ぼす。従って、図7および図13における光ファイバー3は小さな開口数を有している方が有利である。
【0099】
本実施の形態においては、図15に示すように、統合光学系ケース37が媒質W中で使用され、第一および第二のレーザー光L1、L2の伝播経路の一部分を媒質Wと同じ清浄な液体で置換するものである。
【0100】
図15では、統合光学系ケース37にノズル38を取り付け、図示しないホースを介して矢印で示すように清浄な媒質Wの流れを光路に生成している。
第一のレーザー光L1は比較的高いエネルギーを有するため、材料Mに照射した際に材料Mの表面から微粒子が脱離する場合がある。これらの微粒子はレーザー光を散乱・吸収するため、これらがレーザー光路を横切ると改質、き裂検査・計測のいずれにも悪影響がある。そこで清浄な媒質Wで光路を常に置換し続けることで、微粒子の光路への混入を防止することができる。
【0101】
なお、媒質Wが水など超音波の良導体である場合には、第一または第二のレーザー光L1、L2の材料Mへの照射で媒質中に音波振動が発生する場合がある。この音波振動の影響を防止するためには、統合光学系ケース37を吸音材材料で構成するのも効果的である。
【0102】
次に、本発明の第五の実施の形態について図16を参照して説明する。図16において、材料Mを含む細管39は容器40の底部を貫いて設置されている。容器40は水Wで満たされていて、この水Wは細管39の内部にも存在する。
【0103】
図示しない第一および第二のレーザー光源から発振した2本のレーザー光L1、L2は、光ファイバー13で導かれる。光ファイバー13は統合光学系ケース37に接続されており、2本のレーザー光L1、L2は第二の光学素子28を介し、所定の照射条件で材料Mに照射される。
照射されたレーザー光のうち、第二のレーザー光L2は材料Mの表面で反射され、往路の逆経路で図示しない検査・計測用光学系まで導かれる。
【0104】
ここで、統合光学系ケース37は搬送駆動機構5に接続され、細管39内を上下方向、あるいは周方向に移動可能な構造となっており、移動しながら細管39内の保全すべき部位全体を施工する。
【0105】
統合光学系ケース37には水ノズル38が形成されており、統合光学系ケース37の内部から統合光学系ケース37と細管39の隙間に向かう方向で清浄水が噴出し、第一のレーザー光L1の照射によって発生した微粒子がすべて細管39の外側へ流出する構造となっている。
【0106】
このような構成においても、清浄な媒体Wで光路を常に置換し続けることで微粒子の光路への侵入を防止することができる。
搬送駆動機構5は細管Tの上側に何らかの方法によって固定可能な構造となっている。
【符号の説明】
【0107】
1…第一のレーザー光源、2…第一のファイバー入射用光学系、3…第一の光ファイバー、5…搬送駆動機構、6…第二のレーザー光源、7…第二のファイバー入射用光学系、8…第二の光ファイバー、10…検査・計測用光学系、11…信号処理装置、12…光学系、13…光ファイバー、14、29、35…統合光学系、15…ビームエキスパンダー、16…フライアイレンズ、17…入射レンズ、18…ビームスプリッタ、19…ダイクロイックミラー、20…光波長フィルタ、21…光アイソレータ、22…統合光学系ケース、23…反射ミラー、24…照射レンズ、25…コリメータレンズ、26…第一の光学素子、27…選択反射ミラー、28…第二の光学素子、31…反射ミラー、32…第三の光学素子、33…第四の光学素子、34…第五の光学素子、36…第三の光ファイバー、39…細管、40…容器、L1…第一のレーザー光、L2…第二のレーザー光、M…材料、W…媒質(水)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
統合光学系が、第一のレーザー光を反射する機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能を有する光学面と、第二のレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する光学面とを有し、少なくともその一面を第一および第二のレーザー光の光学面として共有する光学素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
統合光学系が、第一のレーザー光を反射する機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能とを有する曲率面と、第二のレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する曲率面とを1つの側面に有する光学素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項4】
統合光学系が、第一または第二のレーザー光の一方を反射し、他方を透過する選択反射機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能を有する曲率面である第一面と、前記第一面を透過したレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する曲率面である第二面と、前記第二面で反射されたレーザー光の反射防止機能、あるいは第二面で反射されたレーザー光の材料への照射条件を補正するためのレンズ機能の、少なくともいずれか一方を有する光学面である第三面を有する光学素子を備え、かつ、その光学素子が前記第一面を透過したレーザー光に対して透過率を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項5】
材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第三の光伝送手段と、前記第三の光伝送手段から出力される第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項6】
第一および第二の光伝送手段が光ファイバーであり、第一、第二の光ファイバーの一方の端面が、他方の光ファイバーの光軸と角度を持つことを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載のレーザー照射装置。
【請求項7】
第一および第二の光伝送手段が光ファイバーであり、第二の光ファイバーの開口数が、第一の光ファイバーの開口数よりも大きいことを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載のレーザー照射装置。
【請求項8】
第一、第二および第三の光伝送手段が光ファイバーであり、第三の光ファイバーの開口数が、第一および第二の光ファイバーの開口数よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のレーザー照射装置。
【請求項1】
材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
統合光学系が、第一のレーザー光を反射する機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能を有する光学面と、第二のレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する光学面とを有し、少なくともその一面を第一および第二のレーザー光の光学面として共有する光学素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
統合光学系が、第一のレーザー光を反射する機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能とを有する曲率面と、第二のレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する曲率面とを1つの側面に有する光学素子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項4】
統合光学系が、第一または第二のレーザー光の一方を反射し、他方を透過する選択反射機能、および反射したレーザー光を材料に照射する機能を有する曲率面である第一面と、前記第一面を透過したレーザー光を反射する機能、反射したレーザー光を材料に照射する機能、および材料にて反射されたレーザー光の反射成分を光伝送手段に入射する機能とを有する曲率面である第二面と、前記第二面で反射されたレーザー光の反射防止機能、あるいは第二面で反射されたレーザー光の材料への照射条件を補正するためのレンズ機能の、少なくともいずれか一方を有する光学面である第三面を有する光学素子を備え、かつ、その光学素子が前記第一面を透過したレーザー光に対して透過率を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項5】
材料に照射され、材料を改質する第一のレーザー光を発振する第一のレーザー光源と、材料に照射され、材料からの反射成分を検出して該当部位の検査または計測をするための第二のレーザー光を発振する第二のレーザー光源と、前記第一および第二のレーザー光が入射され、第一および第二のレーザー光を材料に照射し、かつ前記第二のレーザー光の反射成分を検出する統合光学系と、前記第一のレーザー光を第一のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第一の光伝送手段と、前記第二のレーザー光を第二のレーザー光源から統合光学系まで伝送する第二の光伝送手段と、前記第二のレーザー光の反射成分を伝送するための第三の光伝送手段と、前記第三の光伝送手段から出力される第二のレーザー光の反射成分が入射され、反射成分から情報を検知し、電気信号に変換する検査・計測用光学系と、前記検査・計測用光学系から出力される電気信号を信号処理する信号処理手段とからなることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項6】
第一および第二の光伝送手段が光ファイバーであり、第一、第二の光ファイバーの一方の端面が、他方の光ファイバーの光軸と角度を持つことを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載のレーザー照射装置。
【請求項7】
第一および第二の光伝送手段が光ファイバーであり、第二の光ファイバーの開口数が、第一の光ファイバーの開口数よりも大きいことを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載のレーザー照射装置。
【請求項8】
第一、第二および第三の光伝送手段が光ファイバーであり、第三の光ファイバーの開口数が、第一および第二の光ファイバーの開口数よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のレーザー照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−160658(P2009−160658A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92157(P2009−92157)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【分割の表示】特願2003−201195(P2003−201195)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【分割の表示】特願2003−201195(P2003−201195)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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