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レーザー脱離装置、マススペクトロメーター組立及び環境液体マススペクトロメトリー法
説明

レーザー脱離装置、マススペクトロメーター組立及び環境液体マススペクトロメトリー法

【課題】レーザ脱離装置、マススペクトロメトリー組立、及び大気圧下で液体試料を直接、質量分析することができる質量分析法を提供する。
【解決手段】ノズルを有するエレクトロスプレーユニット、前記ノズルとレシービングユニットとの間に、前記ノズルで形成されるエレクトロスプレー用溶媒の液滴が帯電し、移動経路に沿ってノズルから前記レシービングユニットに強制的に向かうような電位差を生じさせる電圧供給部、試料にレーザーを照射するために設けられたエレクトロスプレー支援レーザー脱離ユニットであって、レーザー照射時に前記試料に含まれる分析物が脱離し、前記移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行することにより前記多価帯電液滴に閉じ込められ、前記移動経路に沿って移動し液滴のサイズがだんだん小さくなり、前記液滴の電荷が前記液滴に閉じ込められた分析物の少なくとも一つに移動してイオン化分析物を形成するレーザー脱離ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「エレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化装置、マススペクトロメーター、及びマススペクトロメトリー法」というタイトルの米国特許出願No.11/561,131の一部継続出願である。
本発明は、マススペクトロメトリー法に関し、特には、大気圧下で液体試料にマススペクトロメトリーの分析を直接行うことができる環境液体マススペクトロメトリーの方法に関する。また、本発明は、マススペクトロメーターのレシービングユニット、エレクトロスプレーユニット及び電圧供給部と共に使用されて環境液体マススペクトロメトリーを行うように適合されたレーザー脱離装置に関する。さらに、本発明は、レーザー脱離装置が組み込まれたマススペクトロメーター組立に関する。
【背景技術】
【0002】
マススペクトロメトリーの方法にはレーザー脱離質量分析(LD-MS)と呼ばれるものがある。LD−MSでは、レーザービームが組織切片の表面に照射され、レーザービームが衝突したタンパク質分子がレーザービームのエネルギーを吸収し、それによって、電荷を運ぶイオンの形態で組織切片の表面から直接的に脱離する。その後、質量分析器によってマススペクトロメトリーの分析が行われる(関連技術について、非特許文献1を参照)。レーザービームによって脱離された分析物のうち中性分析物の数がイオン化分析物の数をはるかに超えていることは広く認識されている。つまり、イオン化率は極めて低い。このように極めて低い比率のイオン化分析物から生じる信号は非常に小さく、それゆえ、ノイズ信号によって簡単に妨害される。同時に、信号の検出感度及び再現性が非常に低いため、マススペクトロメトリック分析の結果は比較的信頼性が低く、ほとんど決定力がない。
【0003】
マススペクトロメトリーの別の方法は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)と呼ばれている。ESI-MSでは、液体試料に含まれるタンパク質のイオン化が行われ、続いてタンパク質分析が行われる。図1に示すように、エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメーター(ESI-MS)1は、エレクトロスプレーイオン化装置11を含む(関連技術である非特許文献2参照)。
【0004】
エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメーター1のエレクトロスプレーイオン化装置11は、液体試料中のタンパク質をイオン化するためにエレクトロスプレーイオン化手段を実行する。エレクトロスプレーイオン化装置11はキャピラリー112を含む。キャピラリー112は、エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメーター1に含まれる質量分析器12の入口側121に向かって開口する開口端111を有する。使用中は、例えば2kV〜5kVの電圧差の電場がキャピラリー112の開口端111と質量分析器12の入口側121との間に設定される。続いて、液体試料がキャピラリー112を通り開口端111に向かって押し出される。液体試料は、電荷で満たされたテイラーコーン2を形成する。液体試料は、キャピラリー112の開口端111と質量分析器12の入口側121との間に存在する電場と、開口端111の液体試料の表面張力とが組み合わされた効果によって、キャピラリー112の開口端111を通過する。電場の力が、キャピラリー112の開口端111にある液体試料の表面張力を上回ると、多価電荷とタンパク質分子を含む噴霧液滴が形成され、質量分析器12の入り口側121を通って当該質量分析器12の中に押し込まれる。
【0005】
帯電液滴が空気を伝ってキャピラリー112の開口端111から質量分析器12の入口側121に向かって移動すると、前記帯電液滴の液体部分が蒸発して当該帯電液滴のサイズがだんだん小さくなる。これにより、多価電子がタンパク質分子に付き、比較的小さいm/z値(即ち、質量対電荷比率。ここで、mはイオン化分子の質量、zは初期電荷のイオン化電荷/数)のイオン化タンパク質が形成される。
タンパク質分子のような高分子の分子量は数10万に達するので、質量分析器12で検出可能なほどm/z値が十分に小さくなるように、イオン化分子を形成する高分子の各々に付着している電荷は多価である必要がある。エレクトロスプレーイオン化法は巨大分子を効率よくイオン化できるだけでなく、より低いm/z値が得られるので質量分析器12の検出限界を克服することができる。それ故、タンパク質分子は、エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリーを用いて研究できる。
【0006】
しかし、体液やその他の生化学溶液は、通常は高濃度の様々な塩を含んでいる。透析のような「脱塩」という前処理なしでは、タンパク質分子は、体液/生化学溶液に含まれるNa+,K+,H+のような塩から電荷を受け取り、容易にイオン化される。このため、マススペクトルには、塩から電荷を受け取りイオン化されたタンパク質分子によっていくつものイオンピークが形成され、このような複雑なイオンピーク形状によってイオンピークの同定が困難なものとなる。コンピュータ・ソフトウェアの助けを借りても、タンパク質の分子量の正確な計算やタンパク質の正確な同定は期待できない。
【0007】
透析後、液体試料(体液やその他の生化学溶液)は、マススペクトルでより単純なピーク形状が得られるように「脱塩」される。しかし、「脱塩」という前処理を行うためにはプロフェッショナルな人材が必要とされるが、脱塩処理は、退屈で、時間を浪費し、非常に不便な処理である。
【0008】
マススペクトロメトリーの他の方法は、分析の実施に先立ち、当初、液体状態にある試料を固体状態の試料へ変換する必要がある。これらの方法の一つは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化マススペクトロメトリー(MALDI-MS)と呼ばれている。この方法は、比較的高感度であり、検出範囲が比較的広い(関連技術である非特許文献3参照)。
【0009】
MALDI-MSを用いてタンパク質分子を含む液体試料の質量分析を行うとき、一般的な方法では、高レーザ光吸収性の小さな有機分子(例えば2,5-ジヒドロキシ安息香酸にある共役二重結合や芳香環を有する小さい分子)の水溶性有機酸マトリックスを、液体試料と一緒に混ぜる。混合物は均一化された後、脱水され、有機酸マトリックスがタンパク質分子と共に結晶化される。それから、レーザー照射装置によってレーザービームが結晶の表面に照射され、その結果、タンパク質分子がイオン化及び脱離が起きる。電界を受けて、イオン化タンパク質分子は、マススペクトロメトリー法による分析のための質量分析計に導入される。
【0010】
しかし、MALDI-MSの分解能は非常に低く、適用できるタンパク質分子(分析物)の量が少ないおかげで、MALDI-MAの脱離工程は真空中で行う必要がある。このことは、器具のコストを上げるだけでなく、いくつかのつまらない操作を必要とする試料の交換の間、真空/大気圧に切り換えるという不便さがある。
【0011】
大気圧下でマススペクトロメトリー分析の実行が可能な大気圧MALDI(AP-MALDI)が紹介されたが、AP-MALDIはまた、試料を固体状にする必要がある。
何度も上述したマススペクトロメトリーの方法は、試料に含まれるタンパク質の種類をうまく同定できることが分かる留意すべきである。しかしながら、多くの環境下で、試料は、体液(例えば尿、血液)のように液体状なので、特に分析される試料の量が非常に多いときは、マススペクトロメトリー分析を行うために液状試料を固体状試料に変換することは、むしろ不便であり、時間がかかる。
【0012】
グリセリン、ニトロベンジルアルコール等のいくつかの液状材料が、MALDIで用いられるマトリックスとして適していることが分かっている。グリセリンとカーボンパウダーの混合物が、表面支援レーザー脱離イオン化(SALDI)質量分析法(SALDI-MS)と呼ばれるMALDI-MSの特別なタイプで、マトリックスとして機能することが論文「Anal. Chem. 1995;67:4335-4342.」に開示されている。タンパク質(即ち分析物)を含む液体試料とマトリックス(例えばグリセリンとカーボンパウダーの混合物)は、波長が337nmの紫外線が照射されればSALDI-MSで分析され得る。この特別なタイプのMALDI-MS法は、液体試料について質量分析の実行が可能であるが、真空状態にする必要はある。さらに、グリセリンのような高粘着性の溶質が液体試料を調製するために必要であり、器具のコストを高騰させ、試料の調製をつまらなくしている。加えて、液体状体のマトリックスは、分子量が30,000以下の試料を分析するためだけに用いることができ、SALDI-MSの適用を制限している。SALDI-MSのもう一つの欠点は、用いられるマトリックスが大抵は有機酸であり、分析物(例えばタンパク質)にその構造を変化させるといった化学的な影響を及ぼす。
【非特許文献1】Tabet, J. C., Cotter, R. J. Anal. Chem. 1984;56,1662.
【非特許文献2】Yamashita, M., Fenn, J. B. J.Phys. Chem. 1984;88,4451.
【非特許文献3】Karas, M., Hillenkamp, F. Anal. Chem. 1988;60,2299.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
質量分析技術を用いて液体試料のタンパク質分析を直接実行することに、様々な困難さと不便さが存在することは、上述したことから理解できる。器官や組織中のタンパク質についての空間的な分布の分析情報は、医療やバイオテクノロジーの分野において非常に重要であるため、大気圧下で液体試料について迅速且つ簡便に正確なタンパク質分析を行うことができるマススペクトロメトリーの方法に対する多大なニーズが存在する。
従って、本発明の目的は、レーザ脱離装置、マススペクトロメトリー組立、及び大気圧下で液体試料を直接、質量分析することができる質量分析法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に従い、「環境液体マススペクトロメトリー」と名付けられる質量分析法を提供する。この分析法は、次のステップを含む。
多数の分析物を含有する溶液と、少なくとも一つの分析物の脱離を支援するためにレーザーエネルギーを吸収する、マトリックスとして機能する材料とを含む液体試料を試料台に載置するステップ、
エレクトロスプレー用溶媒の液滴をその場で連続的に形成するように設計されたノズルを含むエレクトロスプレーユニットを提供するステップ、
前記液体試料から取り出されたイオン化分析物を受け入れるように設けられたレシービングユニットであって、該レシービングユニットの後段に配置された質量分析器によって分析される前記イオン化分析物を受入れ、前記エレクトロスプレーユニットのノズルから長手方向に離れて配置され、これにより移動経路を定義する、レシービングユニットを提供するステップ、
前記エレクトロスプレーユニットのノズルと前記レシービングユニットとの間に、前記液滴に多数の電荷が帯電し、その液滴が多価帯電液滴として強制的にノズルから放出され、前記移動経路に沿って前記レシービングユニットに向かうような強度の電位差を生じさせるステップ、及び
前記液体試料に次のようなレーザーを照射するステップ。
レーザー照射時に、前記レーザーエネルギーがマトリックスを経て、液体試料の溶液中に含まれる分析物の少なくとも一つに伝わり、その結果、前記少なくとも一つの分析物が脱離して、前記エレクトロスプレー用溶媒の多価帯電液滴の前記移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行することにより前記多価帯電液滴に閉じ込められ、且つ、前記移動経路に沿って前記エレクトロスプレーユニットのノズルから前記レシービングユニットに近づくときに前記多価帯電液滴のサイズがだんだん小さくなる結果、前記液滴の電荷が前記液滴に閉じ込められた分析物の少なくとも一つに移動して対応するイオン化分析物が形成される。
【0015】
本発明の別の態様に従い、マススペクトロメトリー組立に用いられるレーザー脱離装置を提供する。
前記マススペクトロメトリー組立は、レシービングユニット、エレクトロスプレーユニット、及び電圧供給部を含む。前記レーザー脱離装置は、試料台とレーザー伝送機構を含む。試料台及びレーザー伝送機構は、上述した全てのステップが正しく実行できるような方法で、レシービングユニット、エレクトロスプレーユニット、及び電圧供給部と共に配置される。レーザー伝送機構は、紫外線(UV)レーザー、赤外線(IR)レーザー、ニトロゲンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、二酸化炭素(CO2)レーザー、ガーネット(Nd:YAG)レーザーの一つである。
本発明の他の特徴及び長所は、好適な実施形態について、添付図面を参照した以下の詳細な説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明についてさらに詳細に述べる前に、開示全体を通して同様の構成要素には同じ参照符号が付されていることをここで述べておく。また、添付図面では、構成要素の大きさや構成要素間の相対距離を一定の縮尺で図示していないことをここで述べておく。
【0017】
本発明の出願人は、大気圧下で、様々な種類の固体試料の直接的な検出を行うために、既に述べたレーザー脱離(LD)技術(これは真空下で実行する必要がある)とエレクトロスプレーイオン化(ESI)技術(これは溶液試料の調製が必要である)を組み合わせた。得られた質量分析結果は、エレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化(ELDI)と比べて新規なこのイオン化技術が、レーザー脱離(すなわち、真空下で)の操作条件に課される制限がもはや必要ではなく、また、エレクトロスプレーイオン化に必要な試料の調製(すなわち透析)も廃止して、実行可能であることを立証した。従って、エレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化技術を介して、大気圧下での固体試料について満足のいく分析結果が得られる。
【0018】
この発明では、エレクトロスプレー支援レーザー脱離イオン化質量分析の実行に先立って、適切なマトリックスが液体試料に加えられる。特に、図4〜図6に示すように、エレクトロスプレーイオン化プロセスが、液体エレクトロスプレー用溶媒51の多価電荷液滴511を連続的に形成するために実行され、この間に、レーザービーム821が液体試料4に照射された。前記液体試料4は、分析物412及びレーザーエネルギーを吸収するマトリックスとして機能する材料413(マトリックス材料413ともいう)から成る溶液41を含む。また、前記液体試料4は、マススペクトロメトリック分析のために液体試料4から生じるイオン化分析物414が入り込むように設けられたレシービングユニット6の通路に配置される。驚くべきことに、得られたマススペクトロメトリック分析の結果は、環境液体マススペクトロメトリー(ALMS)と称されるこの新規技術が、大気圧下で直接、液体試料に対して実行可能であることを立証した。
【0019】
前記液体試料4にレーザービーム821が照射されると、レーザーエネルギーは液体試料4の溶液41に含まれるマトリックス材料413に吸収される。レーザーエネルギーは、おそらく前記マトリックス材料413を介して分析物412の少なくとも一つに伝えられ、その結果、前記分析物412の少なくとも一つが脱離して、エレクトロスプレーイオン化の過程で形成される多価液滴511に閉じ込められる。多価液滴511がレシービングユニット6に近づき、そのサイズがだんだん小さくなる結果、液滴511の電荷が、当該液滴に閉じ込められた分析物412の少なくとも一つに移動し、対応するイオン化分析物414が形成されるのであろう。イオン化分析物414は、質量分析のためにレシービングユニット6に受け取られる。
【0020】
さらに、水分子は赤外光を非常に吸収するので、水溶液に含まれる水分子は、おそらくレーザーエネルギーを吸収し、レーザーエネルギーを分析物に伝えるマトリックスとして機能するであろう。それ故、上述した手段と同様の手段で、水溶液に直接照射するために赤外レーザービームを用いることができる。レーザーエネルギーとして赤外レーザービームを用いることにより、正確な質量分析結果が得られた。
【0021】
要するに、出願人が提示する考え方によれば、多くの分析物とレーザーエネルギーを吸収するマトリックスとして機能する材料を含む液体試料を調製することによって、また、続いて前記液体試料にレーザービームを照射することによって、前記溶液に含まれる分析物の少なくとも一つが脱離される。それから、エレクトロスプレーイオン化工程を組み込むことによって、脱離された分析物がイオン化され、対応するイオン化分析物がその後に行われる質量分析のために形成される。さらに、前記溶液が、多くの水分子を含む水溶液であるときは、赤外レーザービームを液体試料に照射することによって、満足のいく結果を得られる。
【0022】
環境液体マススペクトロメトリー法(ALMS)と名付けられた上述の新規な質量分析法は、液体試料、特にタンパク質を含む水溶液の大気圧下での質量分析にとって、新しい時代を切り開く。環境液体マススペクトロメトリー法の操作手法は、比較的単純で迅速である。また、その分解能は、ESI-MSよりも高い。環境液体マススペクトロメトリー法は、分析物がタンパク質のような巨大分子であっても、その分析物の分子量を正確に検出することができ、このことにより、タンパク質を同定する優れた能力を示す。これらの長所により、環境液体マススペクトロメトリー法では、生化学的及び医学的液体試料が迅速に分析され、信頼できる結果が得られる。このことは、病気の即時診断のような関連用途において非常に有益である。
【0023】
図2〜図4に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法は、以下のステップを実行することによって完成する。
・液体試料4を試料台81に載置すること。前記液体試料4は、多くの分析物412を含む溶液41と、レーザーエネルギーを吸収して分析物412の脱離を支援する、マトリックスとして機能する材料413(マトリックス材料413ともいう)とを含む。特に、溶液41は、分析物412と材料413から成る溶媒411を含む。
・液体エレクトロスプレー溶媒51を収容する貯留槽52を有するエレクトロスプレーユニット5と、前記貯留槽52の後段に配置され、エレクトロスプレー溶媒51の液滴511を連続的に形成するように設計されたノズル53を提供すること。
・液体試料4から生じたイオン化分析物414を受取分析するための、エレクトロスプレーユニット5のノズル53から離れて設けられたレシービングユニット6を提供すること。
・レシービングユニット6でイオン化分析物414が分析された結果、発生される信号を検出し、その信号から液体試料4のマススペクトルを生成する検出器7を提供すること。
・エレクトロスプレーユニット5のノズル53とレシービングユニット6の質量分析器61の間に、液滴511が多電荷を帯びるような強度であって、その多価液滴が前記移動経路(X)に沿ってレシービングユニット6に向かうように、前記液滴511を前記ノズル53から強制的に放出させるような強度の電位差を生じさせること。
・液体試料4に、次のようなレーザービームを照射すること。
液体試料4の溶液41に含まれる分析物412の少なくとも一つを脱離させて、前記移動経路(X)と交差する飛行経路(Y)に沿って飛行させ、前記多価液滴の中に閉じ込めることができるようなレーザービーム821であって、前記移動経路(X)に沿ってレシービングユニット6の質量分析器61に近づくときに多価液滴511のサイズがだんだん小さくなる結果、その液滴511の電荷が分析物412の少なくとも一つに伝えられ、対応するイオン化分析物414を形成させるようなレーザービーム821。
【0024】
ここで、液滴51に運ばれる電荷の極性は、エレクトロスプレーユニット5のノズル53とレシービングユニット6の質量分析器61の間の電位差によって生じる電場の方向に依存する。図2〜4に示した例では、液滴511には正電荷が帯電している。また、液滴511に帯電している電荷は、大抵は多価であるが、時には一価となり得る。
【0025】
液滴を形成するエレクトロスプレー用溶媒は、普通はエレクトロスプレー法に用いられる溶液である。エレクトロスプレー用溶媒の例には、質量分析計がイオン化分析物を受け取る前に、液滴中の液体部分が蒸発し得るような揮発性の液体を含む溶液がある。さらに、タンパク質分子の溶解を助け、揮発性の液体中の塩を添加による障害を回避し、結果として得られるマススペクトルを単純なものとするために、不揮発性の液体は、好ましくは、イソアセトニトリルやアセトン、アルコール等の低極性の物質である。
【0026】
マススペクトルの解釈を容易にするために、プロトン(H+)を有する荷電液滴を使用する"ポジティブイオン・モード"が、エレクトロスプレー技術を組み込んだマススペクトロメトリー分析に用いられる。このモードは、エレクトロスプレーユニットのノズルとレシービングユニットの質量分析器の間に、電場の方向がノズルから質量分析器に向かう方向となるような電位差を生じさせることによって得られる。前記電位差は、質量分析器の構造、例えば、2kVを超える電圧をノズルに供給し質量分析器を接地することによって、或いはノズルを接地し質量分析器に−4kVの電圧を供給することによって、定まるはずである。
【0027】
そして、もし、脱離後、イオン化された分析物の感度を上げたければ、エレクトロスプレー用溶媒がプロトン(H+)を含む溶液から構成することが好ましい。プロトンは、酸を溶液に添加することにより得られる。好ましくは、酸は、ギ酸、酢酸、トリフルロ酢酸、及びこれらの組み合わせからなるグループから選ばれる。
【0028】
もう一つの態様は、例えば、液体試料中の分析物がタンパク質であり、そのタンパク質の非変性状態を詳細に調べることが望まれている場合、エレクトロスプレー用溶媒は好ましくは、水性メタノール溶液のような、揮発性の液体であって酸を含まない溶液である。
【0029】
上記した理由から、本発明の実施形態では、異なる要件に基づいて「メタノールや酢酸を含む水溶液」や「水性メタノール溶液」がエレクトロスプレー用溶媒としてそれぞれ用いられる。また、得られた分析物のイオン部分が、プロトン(H+)から与えられた電荷を有する多価イオンであることを前提とする。
【0030】
本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法の主たる目的の一つは、分析物と、分析物の少なくとも一つの脱離を支援するマトリックスとして機能する材料からなる溶液を含む液体試料からの分析物の検出である。従って、本発明を実施するために、溶液のタイプや検出可能な分析物の種類について制限が課されない。溶液が有機溶媒を含む水溶液であろうと、生物によって分泌され、複雑な組成を有する体液(生命体の体液とも呼ばれる)であろうと、また、分析物がタンパク質のような巨視的分子であろうと普通の化合物のような微視的分子であろうと、本発明の環境液体マススペクトロメトリー法の実施によってマススペクトロメトリー分析の結果が得られる。
【0031】
従って、検討した液体試料は、生命体の体液や化学溶液、環境サンプリング溶液あるいは液体クロマトグラフィーの様々な溶出液等を含む様々な溶液を含み得る。好ましくは、生命体の体液は、血液、涙液、乳、汗、腸液、脳液、髄液、リンパ液、血清、唾液、鼻汁、尿、糞便からなるグループから選ぶことができる。本発明のいくつかの実施形態で検討した液体試料には血液、涙液、乳、あるいは血清が含まれている。ここで開示したいくつかの実施形態に示すように、検討した液体試料が化学溶液を含むときは、当該化学溶液はインスリン、ミオグロビン、シトクロムc、あるいはこれらの組み合わせからなるたんぱく質溶液である。前記化学溶液は有機溶液でもよく、前記有機溶液の溶媒は、どのような有機溶媒にも限定されず、前記有機溶液の分析物も、どのような有機化合物にも制限されない。ここで開示したいくつかの実施形態によれば、化学溶液は、ヘミンのメタノール溶液、18-クラウン-6-エーテルのテトラヒドロフラン(THF)溶液、1-ヘキサデシルアミンのエチルアセテート溶液、メチル(トリフェニル-フォスフォラニリデン)のエチルアセテート溶液、桂皮酸ベンジルのトルエン溶液、及び塩化セチルピリジニウムのn-ヘキサン溶液である。
【0032】
好ましくは、マトリックスとして機能する材料はレーザー非伝送性の材料から作られる。より好ましくは、マトリックスとして機能する材料は、金、カーボン、コバルト、鉄、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHA)、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸、(SA))、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(α-CHC)、及びこれらの組み合わせから成るグループから選ばれる。
【0033】
より良い結果は、マトリックスとして機能する材料が、ある特定のサイズよりも大きい粒径を有するときに得られる。好ましくは、マトリックスとして機能する材料の粒径は50nm〜50μmである。本発明のいくつかの実施形態では、マトリックスとして機能する材料は、金ナノ粒子、カーボンパウダー、2,5-DHB、SA、α-CHC、及びこれらの組み合わせから成るグループから選ばれる。
【0034】
特に、液体試料に含まれる溶液が水溶液であるときは、その水溶液に含まれる水分子がマトリックスとして機能する材料となり、赤外レーザービームが照射されることにより、水溶液に含まれる分析物が脱離する。なお、マトリックスとして機能させるために故意に別の材料を水溶液に加えることもできる。しかし、有機溶液の分析が求められているときは、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法の実施に先立つ研究で、液体試料を形成する溶液の中にマトリックスとして機能する材料が加えられる。環境液体マススペクトロメトリー法の詳細な操作手順やメカニズムに関する説明はこの後の実施形態で述べる。
【0035】
本発明に係るマススペクトロメーター組立は、上述した環境質量分析法を実施する。前記マススペクトロメーター組立は、質量分析器を有するレシービングユニット、エレクトロスプレーユニット、電圧供給部、レーザー脱離装置を備える。前記レーザー脱離装置は、液体試料が載置される試料台、前記液体試料にレーザーを照射するために設けられたレーザー伝送機構を備える。
【0036】
マススペクトロメーター組立の主要部は、使用者のニーズに従い必要に応じて再構築できる。また、その主要部の種類や相対的な位置も変更可能である。例えば、レーザー脱離装置の試料台及びレーザー伝送機構、レシービングユニットの質量分析器、エレクトロスプレーユニットは、必要に応じて使用者がこれらの配置を調節できるように移動可能に設計される。従って、本発明に係るマススペクトロメーター組立の様々な構成要素の間の相対的な位置関係や距離は、以下の目的を達成できるようにする必要がある。その目的とは、分析物の少なくとも一つが液体試料から脱離すること、前記少なくとも一つの分析物が、電圧供給部によって確立される電位差のもと、エレクトロスプレーユニットのノズルで形成されるエレクトロスプレー用溶媒の多価帯電液滴の中に閉じ込められ、前記多価帯電液滴が移動経路に沿ってレシービングユニットの質量分析器に近づくことにより当該多価帯電液滴のサイズが徐々に小さくなる結果、前記液滴の電荷が前記少なくとも一つの分析物に移動し、対応するイオン化分析物を形成すること、である。
【0037】
マススペクトロメーター組立を操作している間、スプレーユニットのノズルとレシービングユニットの質量分析計との間の電位差によって生じる電場の良好な方向性を維持して前記レシービングユニットにイオン化分析物をうまく入り込ませるようにするために、レーザー脱離装置の試料台は好ましくは接地されない。
【0038】
前記試料台は、液体試料を載置するために設けられる。試料台の構造に関しては、例えば、レーザー非伝送性材料から作られる支持部を含むことができる。また、エレクトロスプレーユニットのノズルとレシービングユニットの間の電位差によって生じる電場との干渉を避けるためには、テフロン(登録商標)やプラスチックのような非金属材料から前記支持部を作ることを勧める。レーザービームエネルギーのほとんどを確実に液体試料に集中させるために、前記支持部は前記液体試料を配置するために設けられ、前記液体試料が直接的に載置される支持面を有する。そして、マススペクトロメーター組立の作業者は、液体試料を前記支持面に滴下することによって環境質量分析法の実施を開始できる。
【0039】
あるいは、いくつかの液体試料についての連続的なマススペクトロメトリー分析を容易にするために、レーザー脱離装置の試料台は可動トラックと、そのトラックに移動可能に設けられる支持部を有する。前記液体試料は、前記支持部と共にトラックに沿って移動するように当該支持部に載置される。このため、環境液体マススペクトロメトリー法を用いた分析のための特定の位置に前記液体試料を移動する工程を自動化するために前記試料台をコンピュータ制御することができる。これにより、分析効率の向上及び省力化を図ることができる。試料台に関する設備技術は従来からよく知られているので、簡潔にするために、同一の詳細な説明は省略する。
【0040】
レシービングユニットの質量分析器は、液体試料から生じたイオン化分析物を受け取り分析するための管路を有する。質量分析器は前記管路を通じてイオン化分析物を受け取り、そのイオン化分析物のm/z値(質量対電荷率)に従って当該イオン化分析物を分離し、前記イオン化分析物に対応する信号を出力する。なるべくなら、前記質量分析器はイオントラップ質量分析器、四重極飛行時間質量分析器、トリプル四重極質量分析器、イオントラップ飛行時間質量分析器、飛行時間/飛行時間質量分析器、フーリエ変換型イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析器からなるグループから選ばれる。この実施形態では前記質量分析器は、イオントラップ質量分析器及び四重極飛行時間質量分析器のうちの一つである。
【0041】
マススペクトロメーター組立はさらに、質量分析器によってイオン化分析物が分析された結果、発せられる信号を検出するための検出器を備える。信号の検出後、検出器はその信号をマススペクトルに変換する。好ましくは、本発明の実施形態に記載したように、前記検出器は電子倍増管である。
【0042】
エレクトロスプレーユニットは、液体エレクトロスプレー用溶媒を貯留するための容器と、前記容器の下流側に設けられたノズルを備える。前記ノズルは、前記エレクトロスプレー用溶媒の液滴をその場で連続的に形成するように設計される。好ましくは、前記ノズルはエレクトロスプレー用溶媒の液滴を連続的に形成するように設計された吐出部を有するキャピラリーである。前記エレクトロスプレーユニットはさらに、容器の下流側であってノズルの上流側に設けられ、エレクトロスプレー用溶媒をノズルに吸い込ませるためのポンプを有する。本実施形態では、ノズルは金属材料から作られたキャピラリーである。
【0043】
電圧供給部は、エレクトロスプレーユニットのノズルとレシービングユニットの質量分析器の間に、液滴が多電荷に帯電し当該液滴が多電荷液滴としてノズルを出て移動経路に沿ってレシービングユニットの質量分析計に向かうような強さの電位差を生じさせるために設けられる。
【0044】
好ましくは、エレクトロスプレーユニットのノズルはエレクトロスプレー用溶媒の液滴を連続的に形成するように設計された吐出部を有するキャピラリーである。また、エレクトロスプレーユニットはポンプとマイクロチューブを有する。前記ポンプは、前記容器の下流側であってノズルの上流側に設けられ、エレクトロスプレー用溶媒を前記容器から吸い込む。前記マイクロチューブは、ポンプとキャピラリーの間に接続され、前記ポンプとキャピラリーに液体を流通させるために設けられたチューブ本体、当該チューブ本体に接続され前記電圧供給部に連結された中心部を備える。前記電圧供給部は、前記マイクロチューブとレシービングユニットの質量分析器の間に電位差を生じさせる。この設計は、非電導性材料(例えばガラス)から作られるキャピラリーに適している。
【0045】
レーザー脱離装置のレーザー伝送機構によって伝送されるレーザーは、レーザーが照射された液体試料中の分析物の少なくとも一つを脱離させることができれば、当該レーザーの波長、エネルギー、周波数には何ら制限がない。好ましくは、レーザー伝送機構は、紫外線レーザー、赤外線レーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、二酸化炭素(CO2)レーザー、及びガーネットレーザー(Nd:YAG))から成るグループから選ばれる。
【0046】
レーザー伝送機構が赤外線レーザーを伝送できるとき(すなわち、レーザー伝送機構が赤外線レーザーであるとき)は、分析物の脱離を支援するマトリックスとして機能する別の材料を加えることなく、水溶液を含む液体試料から分析物の少なくとも一つが脱離され、環境質量分析法を用いて分析を行うことができる点に注目すべきである。
【0047】
本発明に係るマススペクトル組立の各構成部品は、使用者の要望に応じてその位置を調節できるように移動可能にデザインでき、マススペクトル組立の様々な構成部品間の相対的な位置や距離を決めることができる。同様に、レーザー伝送機構によって照射されたレーザービームのエネルギーや周波数、入射角、エレクトロスプレー用溶媒の流速などのパラメータも光学的検出結果を得るために、目的に応じて調節可能である。
【0048】
エレクトロスプレーユニットのノズルが、エレクトロスプレー用溶媒の液滴を連続的に作ることができるように設計された吐出口を有するキャピラリーであるとき、エレクトロスプレーユニット及びレーザー脱離装置は、キャピラリーの中心軸と質量分析器の管路が互いにほぼ平行であり、前記キャピラリーの吐出口と前記管路の入口の間の距離が0.5mm〜20mmになるように設けられる。液体試料から脱離した分析物の少なくとも一つのイオン化を成功させるためには、キャピラリーの吐出口と試料台に載置された液体試料の間の最短距離は、0.1mm〜2mmであることが好ましい。
【0049】
[最良の実施形態]
以下、本発明の最良の実施形態及び模範的な使用例についてより詳しく説明する。実施形態及び模範的な使用例は一例にすぎず、本発明を限定するものではない点に注意すべきである。
【0050】
用いた薬品及び器具
好適な実施形態、模範的な方法、比較(実験)例は、以下の薬品及び器具を用いて実行された。
1.レーザー伝送機構
a. 紫外線(UV)レーザー、型番 VSL-337i,レーザー、サイエンス社(米国)製。
前記紫外線レーザーによって伝送されるレーザービームの波長は337nm、周波数は1 0Hz、パルス幅は4ns、パルスエネルギーは100μJである。
b. 赤外線(IR)レーザー、型番 LS-2130SHP、LOTIS TII(ロシア)製。
前記赤外線レーザーによって伝送されるレーザービームの波長は1064nm、周波数は 2Hz、パルス幅は0.5ns、パルスエネルギーは50mJである。
2.質量分析器(検出器を含む):四重極飛行時間型質量分析器、型番BioTOF-Q, Brucker Dalton社(ドイツ)製。
3. エレクトロスプレー用溶媒
a. メタノール:HPLC溶媒、ドイツのメルク(Merck)社製。
【0051】
b. 酢酸:HPLC溶媒、ドイツのMallinckrodt社製。
4. 分析物:
a. タンパク質標準物:インスリン(分子量5733)、ミオグロビン(分子量17566)、リゾチーム(分子量14305)及びシトクロムc(分子量12232)。これら全ては濃度が95%以上の高純度のタンパク質標準物であり、Sigma-Aldrich社(米国)製である。
b. ヘミン:分子量652.0、型番H-2250、Sigma-Aldrich社(米国)製。
c. 18-クラウン-6-エーテル:分子量264.32、型番:C0860、東京化成工業株式会社(日本)製。
d. 1-ヘキサデシルアミン:分子量241.46、型番H740-8、Sigma-Aldrich社(米国)製。
e. メチル(トリフェニル-1フォスフォラニリデン)アセテート:分子量334、型番:64941、Fluka社製。
f. 桂皮酸ベンジルエステル:分子量260、型番C0358、東京化成工業株式会社(日本)製。
g. セチルピリジニウムクロリド:分子量339.99(注意:薬剤の分子量は一般的に平均分子量であるが、マススペクトルで得られる分子量は339.27である。)、型番145-100G、AJAXケミカル製。
h. カルコン:分子量208、型番136123、Sigma-Aldrich社(米国)製。
【0052】
5. 溶媒
a. メタノール(上記したものと同じ)
b. テトラハイドロフラン(THF):型番9440-03、J.T.Baker社(米国)製。
c. 酢酸エチル:型番9282-03、J.T.Baker社(米国)製。
d. 二塩化メチレン:メルク社(ドイツ)製のHPLC溶媒。
e. トルエン:J.T.Baker社(米国)製のHPLC溶媒。
f. N-ヘキサン:J.T.Baker社(米国)製のHPLC溶媒。
【0053】
6. 他の薬品
a. H2O2:濃度30%、型番31642、Riedel-de Haen社製
b. NaOH:型番SK371842、昭和化学ケミカル社製。
7. マトリックス材料
a. カーボンパウダー:型番4206Aメルク社(ドイツ)製。粒径50μm以下。
b. 金ナノ粒子:個人的に提供されたもの。粒径ほぼ56nm。
c. α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(α-CHC):Sigma-Aldrich社(米国)製のHPLC材料。
d. 2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB):型番D0569、東京化成工業株式会社(日本)製。
e. 3,5-ジメチル-4-ヒドロキシシナミック酸(シナピン酸、SA):型番D1765、東京化成工業株式会社(日本)製。
【0054】
8.マトリックス支援レーザー脱離イオン化マススペクトロメーター(MALDI-MS):型番Autoflex MALDI/TOF、Bruker Dalton社(ドイツ)製、リニアモードでの高分子分析に適している。
9.エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメーター(ESI-MS):エレクトロスプレーユニット、質量分析器及び検出器を含む。エレクトロスプレーユニット、質量分析器及び検出器は、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の実施形態に用いられるものと同じである。
【0055】
10.細菌抽出物のための関連する薬品あるいは器具
a. ガラスビーズ:型番11079101、バイオスペックプロダクツ社製;直径100μm。
b. 超音波洗浄器:型番XL2020、ヒートシステム社製。
c. 遠心分離機:型番DSC-1524SDT TFA、ディジシステムラボラトリーインストゥルメンツ社製。
d. トリフルロ酢酸:分析クラス酸、型番61030、Riedel-de Hean社製。
e. アセトニトリル(ACN):型番UN1648のHPLC材料、メルク社(ドイツ)製。
【0056】
第1の好適な実施形態―環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立
図4を参照しながら、環境液体マススペクトロメトリー法を実行するマススペクトロメーター組立の第1の好適な実施形態は、液体試料4についてマススペクトロメトリーの分析を行うために適用される。図2及び図3に戻って、液体試料4は、多くの分析物412と当該分析物の少なくとも一つの脱離を支援するためのマトリックスとして機能する材料413(マトリックス材料413ともいう)からなる溶媒を含む溶液41を含んでいる。マススペクトロメーター組立はエレクトロスプレーユニット5、レシービングユニット6、電圧供給部3及びレーザー脱離装置8を含む。
【0057】
レーザー脱離装置8は液体試料4が載置される試料台81、レーザービーム821を伝送でき、液体試料4にレーザービームを照射するように設けられたレーザー伝送機構82、レーザー伝送機構82からのレーザービーム821を受けて当該レーザービーム821が運ぶエネルギーを集めるために設けられたレンズ83、レーザービーム821の経路を変えるために設けられたリフレクター84を有する。本実施形態においては、レーザー伝送機構82はレーザービーム821を伝送することができる紫外線レーザー伝送機構82aである。原理上は、レーザー脱離装置8が液体試料4にレーザーを照射することができれば、照射によって液体試料4の溶液41中に含まれる分析物412の少なくとも一つが脱離されるように、レーザー脱離装置8はデザインされる。従って、実際には、レンズ83とリフレクター84は、必要に応じて位置を変えることができ、本発明の他の実施形態によっては完全になくすことができる。
【0058】
レーザー脱離装置8の試料台81は、レーザー非伝送性材料からなる支持部811と、当該支持部811を持ち上げるために設けられた、移動可能な巻上げ台812を有する。支持部811は液体試料4を載置するために設けられており、液体試料4が直接載置される支持面813を有する。これにより、作業者は、液体試料4を支持面813に滴下することにより環境液体マススペクトロメトリー法の実行を開始することができる。
【0059】
レシービングユニット6は、液体試料4から生じ、マススペクトロメトリー分析で分析されるイオン化分析物414が入り込むように配置される。レシービングユニット6はイオン化分析物414を分析するために設けられた質量分析器61を有する。質量分析器61は周囲と空気が流通する管路611を備えて形成される。検出器7は、マススペクトロメトリー分析結果、即ちマススペクトルを生成するようなイオン化分析物414の分析を行った結果として質量分析器61が発する信号を受け取るように配置される。
【0060】
エレクトロスプレーユニット5は液体エレクトロスプレー用溶媒51を貯留する容器52、容器52の下流側に配置され、エレクトロスプレー用溶媒51の液滴511を連続的に形成するように設計されたノズル53(本発明の実施形態では、ノズル53はキャピラリー53aである)、容器52の下流側であってノズル53の上流側に配置されエレクトロスプレー用溶媒51をノズル53に吸い上げるためのポンプ54を有する。ノズル53は、レシービングユニット6の質量分析器61から長手方向に離れて配置され、移動経路(X))を定める。
【0061】
電圧供給部3は、エレクトロスプレーユニット5のノズル53とレシービングユニット6の質量分析器61の間に、液滴511に多くの電荷が帯電し、前記液滴511が多価帯電液滴として移動経路(X)に沿ってノズル53から質量分析器61に向かって移動するような強度の電位差を生じさせるように設けられる。
【0062】
第1の好適な実施形態では、ノズル53は金属材料から作られる。前記ノズル53の第1中心軸532と質量分析器61の管路611の第2中心軸612とは互いに実質的に平行である。試料台81の支持部811は、その支持面813が長手方向に水平な面を規定するように長手方向に広がる。ノズル53の吐出口531の突端と質量分析器61の管路611内への入口613との間の水平距離はほぼ8mmである。加えて、液体試料4が支持部81の支持面813に載置されるときの液体試料4とノズル53の吐出口531との最短距離は1.5mmである。
【0063】
レーザー脱離装置8のレーザー伝送機構82がレーザービーム821を伝送して液体試料4に照射されると、液体試料4の溶液41に含まれる分析物412の少なくとも一つが脱離されて移動経路(X)と交差する飛行経路(Y)に沿って飛行し、少なくとも一つの分析物412が多価帯電液滴511の中に閉じ込められる。多価帯電液滴511が移動経路(X)に沿ってレシービングユニット6の質量分析器61に近づき、その結果、前記液滴511のサイズが徐々に小さくなると、当該液滴511の電荷が少なくとも一つの分析物412に移動し、対応するイオン化分析物412が形成される。続くマススペクトロメトリー分析のために、イオン化分析物412は入口613から管路611を通り質量分析器61に入る。
【0064】
第2の好適な実施形態
図5に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の第2の好適な実施形態は第1の好適な実施形態と同じである。第1及び第2の好適な実施形態の唯一の相違は、第2の好適な実施形態のエレクトロスプレーユニット5'は、さらに、多価帯電液滴511(図2〜図4参照)が移動経路(X)に沿って質量分析器61(図5参照)に近づくときに、多価帯電液滴511の蒸発を促進して液滴511のサイズを小さくするエアー流供給機構55’を有していることである。エアー流供給機構55’はノズル53を取り囲んでおり、窒素エアー流551’を供給する。特に、窒素エアー流551’の温度は、必要に応じてユーザーが室温から325℃までの温度に調節できる。
【0065】
第3の好適な実施形態
図6に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の第3の好適な実施形態は第1の好適な実施形態と同じである。第1及び第3の好適な実施形態の相違は、第3の好適な実施形態のエレクトロスプレーユニット5”のノズル53”が非金属材料から作られていること、及びエレクトロスプレーユニット5”がさらにマイクロチューブ56”を有していることである。前記マイクロチューブ56”は、チューブ本体561”と中心部562”を有している。チューブ本体561”は、ポンプ54とノズル53”との間に連結されており、ポンプ54とノズル53”の間に液体を流通させる。前記中心部562”は、前記チューブ本体561”に接続され、マイクロチューブ56”とレシービングユニット6の質量分析器61の間に電位差を生じさせる電圧供給部3(図5参照)に連結される。
【0066】
第4の好適な実施形態
図7に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の第4の好適な実施形態は第1の好適な実施形態と同じである。第1及び第4の好適な実施形態の相違は、レーザー脱離装置8'''の試料台81'''が可動トラック814'''と、順につながれた多数の支持部816'''(図7では1個だけ見えている)からなる支持部セット815'''を有していることである。前記支持部816'''は、トラック814'''に移動可能に設けられている。
【0067】
第4の好適な実施形態のマススペクトロメーター組立を用いてマススペクトロメトリーの分析を行うために、多数の液体試料4(図4に示すように)がまずコンテナ10(例えば試験管或いは遠心分離管)(図7では1個だけ見えている)に収容される。続いて、コンテナ10が対応する支持部816'''にそれぞれ配置される。コンピュータソフトウェアの制御によって、支持部816'''がトラック814'''に沿って移動してその上の液体試料4を運び、操作者によってセットされた所定の位置に順に配置される。各液体試料4が所定の位置に配置されると、レーザー脱離装置8のレーザー伝送機構82によって伝送されたレーザービーム821が液体試料4に照射され、その後、マススペクトロメトリーの分析が行われる。
【0068】
観察する方向のせいで、図7では1個の支持部816'''と1個のコンテナ10しか見えていないことに、ここでは留意する
【0069】
第5の好適な実施形態
図4に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の第5の好適な実施形態は第1の好適な実施形態と同じである。第1及び第5の好適な実施形態の唯一の相違は、第5の好適な実施形態のレーザー伝送機構を、第1の好適な実施形態の紫外線レーザー82aの代わりに赤外線(IR)レーザー82cとしたことである。
【0070】
第6の好適な実施形態
図6に示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施するマススペクトロメーター組立の第6の好適な実施形態は第4の好適な実施形態と同じである。第4及び第6の好適な実施形態の唯一の相違は、第6の好適な実施形態のレーザー伝送機構を、第4の好適な実施形態の赤外線(IR)レーザー82c(図4参照)の代わりに紫外線レーザー82aとしたことである。
【0071】
〈模範的な方法及び比較例〉
以下に、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法の模範的な方法をいくつかの比較例と共に提示する。模範方法及び比較例では、液体試料及びエレクトロスプレー用溶媒は、室温下及び大気圧下で、以下に示す所定の比率で調製され、或いは直接得られる。特に指摘しなければ液体試料は水溶液を含み、エレクトロスプレー用溶媒の組成は〔水:メタノール:酢酸=50:50:0.1〕であり、エレクトロスプレー用溶媒の流速は150μL/minである。
さらに、特に指摘しなければ、模範方法及び比較例は、本発明の第3の好適な実施形態に従って行われる。また、質量分析器は、0.2s/scanの走査速度で走査を行う。提示される各液体試料に関して、溶媒の分子量は質量分析器の走査範囲から除かれる。
【0072】
加えて、比較例はマトリックス支援レーザ脱離イオン化マススペクトロメトリー(MALDI-MS)を用いて行う例を含む。これらMALDI-MSの比較例で用いられる各試料は、液体試料を脱水化して脱水試料とすることによって調製される。比較例は、さらにエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いて行われる例を含んでいる。ESI-MSは、試料溶液の流速を150μL/minとしてタンパク質試料溶液について直接、マススペクトロメトリーの分析を行う。
【0073】
模範方法1,2及び比較例1―タンパク質標準物の試料溶液について行われるマススペクトロメトリー分析
模範方法1及び2並びに比較例1では、用いられるエレクトロスプレー用溶媒は20vol%のメタノール水溶液であり、液体試料のマトリックス材料は様々な濃度のカーボンパウダーからそれぞれ作った。模範方法1及び2並びに比較例1の各々で用いた液体試料の組成、及び対応するマススペクトルの図番を以下の表1に示す。
【表1】

【0074】
用いられたエレクトロスプレー用溶媒は酸を含んでいないため、出願人は、得られるマススペクトルは、非変性タンパク質の形態を示していると予測している。言い換えると、ALMS分析が用いられた模範方法1及び2で得られるミオグロビンの分子量は、ヘム分子(分子量616Da)が1個不足した非変性タンパク質の分子量である16951Daではなく、17567Daのはずである。
【0075】
結果
図8b及び図8cに示すように、それぞれ■、▲、●の記号で示される3個のイオンピークが存在することが明らかである。3個のピークの分子量は、コンピュータソフトウェアによって、それぞれ12232Da、14306Da、及び17567Daと計算される。計算された分子量は、製造メーカーが提示する、ミオグロビン、シトクロムc、リゾチームの分子量とほぼ完全に一致する。加えて、検出されたミオグロビンは非変性状態であることが明らかである。前記結果は、環境液体マススペクトロメトリー法が有効に動作し、タンパク質を含む液体試料を直接検出して正確で且つ満足できる定量的な結果を得ることができることを裏付ける。
【0076】
このような成功の理由は、紫外線レーザービームの照射により、そのレーザーエネルギーがマトリックス材料(カーボンパウダー)を通して液体試料の溶液に含まれる分析物(タンパク質)の少なくとも一つに渡され、前記分析物が旨く脱離したからである。一方、比較例1で用いられた液体試料はカーボンパウダーその他のマトリックスとして機能する材料を含んでおらず、分析物が液体試料から有効に脱離することができなかった(或いは脱離した分析物の量が非常に少なかった)。マススペクトロメトリック分析のために質量分析計に到達し、当該質量分析計で検出される分析物がないか非常に少量であるため、分析物に対応する信号は発生されなかった。
【0077】
図8aに示すピークは干渉信号であり、分析物に対応する信号が存在しないことに起因して比較的拡大されていることに注意すべきである。
【0078】
模範方法3〜6―異なるマトリックス材料が与えられた液体試料について行われるALMS分析
模範方法3〜6では、異なるマトリックス材料が分析物の脱離を支援するマトリックスとして用いられた。これら異なる材料のうち、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB)、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシシナミック酸(シナピン酸、SA)、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(α-CHC)は水溶性である。また、模範方法4〜6では、ALMS分析は、液体試料が2つの異なる状態で行われた。第1状態の液体試料とは、液体試料の溶液にマトリックス材料が溶解して状態をいう。第2状態の液体試料とは、溶液中の溶媒が徐々に蒸発してマトリックス材料の濃度が徐々に上昇し、飽和して、マトリックス材料が沈殿している状態をいう。模範方法3〜6のそれぞれで用いられる液体試料の組成、及び対応するマススペクトルの図番を以下の表2に示す。模範方法4〜6で用いられたマトリックス材料は以下のようにして添加されたことに注意する。まず、2mgのマトリックス材料を70vol%のACN水溶液に溶かして1mlとし、続いて、マトリックス溶液の上澄みと、予め調製したミオグロビン溶液(濃度10-4M)を体積比1:1で混ぜ合わせて液体試料を作成する。
【表2】

【0079】
結果
図9aは、分析物(非変性及び変性ミオグロビン)によって作られたイオンピークを明瞭に示している。図9a中、●は非変性ミオグロビンによって作られたイオンピークを示し、○は変性ミオグロビンによって作られたイオンピークを示している。しかし、模範方法4〜6では、液体試料が第1状態にあるときにALMS分析が行われ、図9b、図9d、図9fのそれぞれに示した結果の通り、液体試料による干渉が観察されるだけで、ミオグロビンによって形成されるピークは観察されなかった。一方、模範方法4〜6では、液体試料が第2状態にあるときにALMS分析が行われ、図9c、図9e、図9gのそれぞれに示した結果の通り、変性ミオグロビンによって形成されるイオンピークが観察され、これら模範方法で得られる分子量が互いに非常に近似する。
【0080】
加えて、図9c、図9e、図9gでは、非変性ミオグロビンに対応し、m/z値が1400よりも大きいイオンピークは観察されない。この理由について出願人は、用いたマトリックス材料、すなわち2,5-DHB、SA、α-CHCが有機酸であるので、模範方法4〜6で用いた液体試料中のミオグロビンが全て変性したためであると推測している。それ故、図9c、図9e、図9gのいずれにおいても非変性ミオグロビンに対応するイオンピークが現れていない。
【0081】
カーボンパウダー以外の、金ナノ粒子、2,5-DHB、SA、α-CHC等のような材料もまた、ALMS分析においてマトリックスとして機能することは上述した通りである。しかし、続けてマススペクトロメトリック分析を行えるように分析物の脱離を支援できるようにするためには、前記材料は、特定値以上の粒径を有している必要がある。
【0082】
模範方法7〜12―有機溶液及びカーボンパウダーが含まれている液体試料について行われるALMS分析
使用される液体試料の組成、及び模範方法7〜12の各々に対応するマススペクトルの図番を以下の表3に示す。
【表3】

【0083】
結果
模範方法7〜12で用いられた液体試料の分析物によって形成されるイオンピークが図10a〜10fに明瞭に観察される。また、計算により得られる分子量も既知の事実に合致し、有機溶液及び有機組成物を含む液体試料についての環境液体マススペクトロメトリー法の実施可能性が確認された。
【0084】
模範方法13及び比較例2,3― ALMS分析、ESI-MS分析、MALDI-MS分析を用いて得られたタンパク質標準物についての分析結果の比較
模範方法13及び比較例2、3では、同一の分析物(インスリン、シトクロムc、リゾチーム、ミオグロビンを含むタンパク質標準物)が用いられ、ALMS法、ESI-MS法、MALDI-MS法を用いたマススペクトロメトリック分析に適した液体試料にそれぞれ調製された。用いた液体試料の組成、模範方法13及び比較例2,3にそれぞれ対応するマススペクトルの図番を下記の表4に示す。ここでは、液体試料は水溶液を含む。MALDI-MSが用いられた比較例3における試料の調製方法は、まず、マトリックス材料の飽和水溶液と分析物を含む溶液を体積比1:1で混ぜ合わせて液体試料を得る。それから、適当な量の液体試料を脱水し、MALDI-MSを用いた分析用の固体試料を得る。
【0085】
【表4】

【0086】
結果
図11aのマススペクトルは、異なる種類の分析物(すなわちタンパク質標準物)によって生成される全てのイオンピーク群を示している。図11aでは、◆はインスリンによって形成されるイオンピークを、■はシトクロムcによって形成されるイオンピークを、▲はリゾチームによって形成されるイオンピークを、●は非変性ミオグロビンによって形成されるイオンピークを、○は変性ミオグロビンによって形成されるイオンピークを示している。図11aのマススペクトルをデコンボリュートした図11bでは、図11aで用いた記号に対応する記号で、異なる種類の分析物を示すイオンピークが明瞭に示されている。m/z値が17567と16951である2つのイオンピークはそれぞれ非変性、変性ミオグロビンを示している。
【0087】
さらに、液体試料中のインスリン、シトクロムc、リゾチーム、ミオグロビンの比率は1:2:5:10であり、インスリン、シトクロムc、リゾチーム、ミオグロビンによって形成されるイオンピークの相対強度が、液体試料中のそれぞれの比率に大体一致することが図11bから分かる(ミオグロビンの相対的な強度はm/z値が17567と16951のイオンピークの相対強度を足し合わせたものを参照することに注意する)。
【0088】
しかし、図11aにおいて▲で示された、リゾチームに対応するイオンピークは、図11cには見られない。図11cはESI-MS法を用いて比較例2のマススペクトロメトリック分析を行ったものである。また、インスリンから生じたイオンピークの強度は非常に低く、その観察が難しい。図11cのマススペクトルをデコンボリュートした図11dからでさえ、リゾチームのイオンピークは明瞭に観察できない。
【0089】
同様に、MALDI-MS法を用いてマススペクトロメトリック分析を行った図11eでも、リゾチームに対応するイオンピークが観察できない。また、図11eの残りのイオンピークの相対的な強度も、脱水前の元の液体試料中のインスリン、シトクロムc、リゾチーム、ミオグロビンの比率を実質的に反映していない。
【0090】
結果は、MALDI-MS及びESI-MSと対照的に、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法が、迅速且つ正確に液体試料中に含まれる様々な分析物の成分比率を反映できることを示している。さらに、環境液体マススペクトロメトリー法は、タンパク質の量を決定できる。言い換えると、もし、液体試料中に既知の濃度の特別なタンパク質と、未知の濃度の分析物が存在すれば、当該分析物の濃度は、ALMS分析を用いて得られたデコンボリュート・マススペクトルの様々なイオンピークの相対強度からコンピュータによって計算できる。
【0091】
模範方法14―ALMS分析を用いた生化学反応の進行の追跡
ALMS分析の分析プロセスは非常に速いため、化学反応や生化学反応の進行を理解するための当該反応の観察やモニタリングに環境液体マススペクトロメトリー法を適用できると出願人は考えている。
【0092】
模範方法14では、シトクロムc水溶液が最初に調製され、その中にトリプシン(個人的提供)でコートされた磁気ナノ粒子が加えられて液体試料が作られる。ALMS分析は、液体試料の作成時(0min)、液体試料の作成後15min及び30minで行われた。用いた液体試料の組成及び模範方法14の各時間のマススペクトルの図番を以下の表5に示す。
【0093】
【表5】

【0094】
トリプシンはタンパク質のアルギニンとリシンの間の結合を切断することが報告されている。従って、シトクロムcによって生じるペプチドの量が、反応時間の経過と共に増加すると推定される。言い換えると、シトクロムcによって形成されるイオンピークについて、時間の経過と共に、ペプチドによって形成されるイオンピークの相対強度は、シトクロムcによって作られるイオンピークの相対強度に徐々に近づき、超えることさえある。
【0095】
結果
図12aに示される3つのイオンピークは全てシトクロムcによって形成されたものであり、ペプチドによって形成されるイオンピークは観察されていない。しかし、図12b及び図12cでは、ペプチドによって生じるイオンピークが明瞭に観察される。図12bのペプチドイオンピークの相対強度は、図12cに示されるイオンピークの相対強度に比べると、シトクロムcのイオンピークの相対強度により近い。図12b及び図12c中、●はペプチドによって形成されたイオンピークを示し、シトクロムcによって形成されたイオンピークには記号が付されていない。このような結果は、環境液体マススペクトロメトリー法が生化学反応の観察やモニタリングに適用できるという出願人の推測を裏付ける。
【0096】
模範方法15〜18及び比較例4〜11―ALMS分析、ESI-MS分析、MALDI-MS分析を用いて得られた様々な体液についての分析結果の比較
模範方法15〜18及び比較例4〜11では、それぞれ様々な種類の体液を脱イオン水で10倍に希釈して、ALMS、ESI-MS、MALDI-MS分析用の液体試料を調製した。比較例5,7,9,11に関しては、液体試料を脱水して、MALDI-MA分析用の脱水固体試料を得た。
【0097】
用いた液体試料の組成、及び模範方法15〜18及び比較例4〜11のそれぞれに対応するマススペクトルの図番を以下の表6に示す。模範方法18及び比較例10,11で用いた細菌抽出物は以下のように調製した。
【0098】
1ミリリットルの純水を用いて培養細菌(台湾の食品工業発展研究所(FIRDI)で生産された標準細菌、型番「大腸菌-13082」)を洗浄し、続いて遠心分離を行った。その後、上澄み液を取り除き、1.0gのガラスビーズ、70vol%のACN、0.25vol%のTFAを含む500μlの水溶液を加えた。それから、細菌の細胞壁を破壊するために超音波プローブを用いて間欠的に超音波処理した。超音波処理では、処理を10秒間、休止を10秒間という工程が20分間繰り返された。その後、再び遠心分離を行うと共に上澄み液を取り除き、細菌抽出物の調製を終了した。
【0099】
【表6】

【0100】
結果
模範方法15に関する図13a及び図13bに示すように、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法は、ヒトの涙液に含まれる三種の主要タンパク質をうまく検出できることが分かる。図13a及び図13bにおいて、符号Aが付されたイオンピーク群はリゾチームから形成され、符号Cが付されたイオンピーク群は涙液リポカリンから形成され、符号Bが付されたイオンピーク群は未知のタンパク質から形成される。模範方法16に関する図14a及び図14bに示すように、ミルクに含まれる主要タンパク質、すなわちカゼインによって形成されるイオンピーク群が観察される。図14a及び図14bの他のイオンピークは脂質によって形成される。模範方法17に関する図15a及び図15bに示すように、血清中の主要タンパク質であるアルブミンが観察される。図15a及び図15bにおいて、符号Aが付されたイオンピークはアポリポタンパク質A1(Apo-A1)によって形成され、符号Bが付されたイオンピークは涙液リポカリンによって形成される。
【0101】
模範方法18に関する図16a及び図16bには、大腸菌に含まれる三大タンパク質によって形成されるイオンピークが観察される。
【0102】
さらに、図13a〜図16dから、ESI-MS法(図13c、14c、15c、16cに示す)及びMALDI-MS法(図13d、14d、15d、16dに示す)を用いたマススペクトロメトリック分析を行った場合に比べて、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を用いてマススペクトロメトリック分析を行うと、分解能が非常に高いため、コンピュータ計算によって分析物の正確な分子量が得られることが分かる。
【0103】
ESI-MSやMALDI-MSに比べて環境液体マススペクトロメトリー法でこのような進歩が達成された理由は次に示すとおりであると出願人は考えている。すなわち、液体試料は大量の様々な塩(体液中に元々存在する)を含むが、ALMS分析工程では分析物が脱離するだけで、塩は分析物に付着しない。また、エレクトロスプレー用溶媒に含まれる陽イオンはプロトンHを有しているだけなので、質量分析器によって受け取られる全てのイオン化分析物は、MHnn+(Mは分析物を示しており、nは分析物に帯電したプロトンの数を示している。)となる。この結果、得られるマススペクトルが比較的高い解像度を有する。
【0104】
模範方法19―ALMS分析を用いた糖尿病患者の血液分析
模範方法19で用いられたエレクトロスプレー用溶媒は20vol%メタノール水溶液である。液体試料は、糖尿病患者の血液(個人的提供)を脱イオン水で10倍に希釈し、濃度が0.8mg/μLとなるようにカーボンパウダーを加えて調製した。ALMS分析は、液体試料中のヘモグロビン(Hb)と糖化ヘモグロビン(HbA1)の検出を目的として行われ、図17a及び図17bに示す分析結果が得られた。図17bは図17aをデコンボリュートしたマススペクトルである。
【0105】
ヘモグロビンは非共有結合したα鎖分子とβ鎖分子から構成されているので、α鎖とβ鎖の結合強度が弱い。糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビン分子がグルコース分子と結合することにより形成される。図17aに示すように、ヘモグロビン中のα鎖分子及びβ鎖分子によって形成されるイオンピークが明瞭に観察される。ここで、符号αはヘモグロビン中のα鎖によって形成されたイオンピークを示し、符号βはヘモグロビン中のβ鎖によって形成されたイオンピークを示す。図17bに示すように、糖化ヘモグロビン中のグルコース結合α鎖分子及びグルコース結合β鎖分子が明瞭に観察される。ここで、「α+glucose」は糖化ヘモグロビン中のグルコース結合α鎖分子によって形成されたイオンピークを、「β+glucose」は糖化ヘモグロビン中のグルコース結合β鎖によって形成されたイオンピークを示している。
【0106】
さらに、図17bから、糖化ヘモグロビンとヘモグロビンの比(以下、(HbA1/Hb)値とする)を計算した。計算では、α鎖分子とグルコース結合α鎖分子が対応するものとして扱い、α鎖分子によって形成されたイオンピークの面積の値をc、グルコース結合α鎖分子によって形成されたイオンピークの面積の値をdとすると、(HbA1/Hb)はD/(C+D)に相当する。
【0107】
模範方法20―「ALMS分析を用いた糖尿病患者の血液中に含まれる糖化ヘモグロビンの量の分析」の信頼性評価
9人の糖尿病患者から得た血液試料について模範方法19で述べたものと同一のALMS分析をそれぞれ3回ずつ行った。また、ALMS分析を行う毎に(HbA1/Hb)値を計算した。その結果、計27個の(HbA1/Hb)値がALMS分析を用いて得られた。さらに、各血液試料についてALMS分析を行うごとに、(HbA1/Hb)値の検出及び計算のために、イオン化クロマトグラフィー(IC,これは、医療分野でヘモグロビン及び糖化ヘモグロビンの量を検出するために普通に用いられる方法である。)も行った。従って、患者ごとに1個の血液試料が得られ、合計9個の平均(HbA1/Hb)値がイオン化クロマトグラフィーを用いて得られた。
【0108】
続いて、その結果が図18に示すX-Y座標系にマークされた。図18中、X軸はイオン化クロマトグラフィーを用いて得られた平均(HbA1/Hb)値を示し、Y軸はALMS分析を用いて得られた(HbA1/Hb)値を示している。X-Y座標系には、患者毎に3個の(HbA1/Hb)値の印が付けられている。これら3個の(HbA1/Hb)値の平均が計算により求められ、その結果、X-Y座標系には合計9個の平均(HbA1/Hb)値が示されている。この後、これら9個の平均値について線形回帰分析が行われ、次の一次方程式(数1)が得られた。
(数1)
y=0.5882x+1.1964(ピアソン係数R2は0.8666)
【0109】
結果
線形回帰分析によって得られた一次方程式から、ALMS分析を用いて得られた(HbA1/Hb)値とイオン化クロマトグラフィーを用いて得られた(HbA1/Hb)値との間には特別な相関があることが分かる。イオン化クロマトグラフィーは、医療分野においてヘモグロビン及び糖化ヘモグロビンの量を求めるために一般的に用いられている方法である。従って、ALMS分析を用いて得られた(HbA1/Hb)値は、ある程度の信頼性があり、参考値となるはずである。特に、イオン化クロマトグラフィーを行うのに要する時間は、試料の調製時間を含めておよそ1時間であることが報告されている。一方、ALMS分析を用いれば、瞬時に検出でき結果が得られる。従って、環境液体マススペクトロメトリー法は、イオン化クロマトグラフィーに置き換わって病気診断の基盤を提供する可能性がある。
【0110】
模範方法21―ALMS分析を用いた糖尿病患者の血液分析
模範方法21は、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を行うマススペクトロメータ組立の第5の好適な実施形態である。環境液体マススペクトロメトリーでは20vol%のメタノール水溶液がエレクトロスプレー用溶媒として用いられる。
【0111】
水分子は、赤外光を非常によく吸収するので、水溶液に含まれる水分子は、レーザーエネルギーを分析物に伝え、その分析物を脱離させて続くマススペクトロメトリック分析のために質量分析器に入り込ませるマトリックスとして機能するのであろうと、出願人は推測している。言い換えると、水溶液を含む液体試料では、その中に含まれる「水分子」がレーザーエネルギーを分析物に伝え、分析物の少なくとも一つを脱離させるマトリックスとして機能する。
【0112】
上述の考え方に基づいて、この模範方法で用いられる液体試料を、模範方法19で用いたものと同様の糖尿病患者の血液試料、即ち、他のマトリックス材料(例えば前述の模範方法においてマトリックスとして機能する材料)を加えることなく脱イオン水で10倍に希釈した糖尿病患者の血液試料から得た。前記液体試料についてALMS分析を直接行い、図19a及び図19bに示す分析結果が得られた。図19bは図19aのマススペクトルをデコンボリュートしたものである。
【0113】
結果
図19a及び図19b、特に単純化した図19bに、イオンピーク群が明瞭に示された。図19bに示されているイオンピークは、模範方法19の図17bに示したものとほぼ同じである。この結果は、液体試料が水溶液を含むときは、たとえその水溶液が複雑な組成で、大量の塩を含む体液であっても、単純な希釈工程の後は、更なるマトリックス材料を加えることなく、赤外線レーザービームを液体試料に照射することによって、迅速で且つ簡便な分析を行うことができ、信頼性の高いマススペクトロメトリーの分析結果を得ることができる、という出願人の推測が正しいものであることを証明している。
【0114】
模範方法と比較例について上述した結果を参照すると、本発明は、実際に、迅速且つ正確なマススペクトロメトリック分析を液体試料に対して直接行うことができることがわかる。また、分析試料に課される特別な制限がない。すなわち、分析試料が複雑な組成の体液や有機溶液、タンパク質溶液等であっても、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法によって、試料中の含有物の定性的情報を得ることができる。さらに、定性的情報以外の、液体試料中の様々な分析物の組成比といった相対的な定量的情報もまた、ALMS分析を用いて得ることができる。液体試料が水溶液を含むときは、前記液体試料に赤外線レーザーを照射することによって、ALMS分析によって満足できる検出結果が得られるというのは、特に重要である。
【0115】
また、環境液体マススペクトロメトリー法を実行するマススペクトロメーター組立は、他の分析器具に連結することができる。後述の例として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。生化学試料(通常は水溶液を含む)をHPLCに通して溶出するときは、環境液体マススペクトロメトリー法を実行するエレクトロスプレーユニットとマススペクトロメーター組立の質量分析器との間に前記HPLCを配置し、溶出試料に対してレーザーを照射することによりALMS分析を行うことができる。
【0116】
まとめると、本発明の環境液体マススペクトロメトリー法は、真空ではなく大気圧下で、直接的に行うことができるため、また、必要な作業時間が非常に短いため、本発明を実行するための設備費用、そのような設備を加工したりそのような方法を行うための技術的要件の全てが、従来のマトリックス支援レーザー脱離イオン化マススペクトロメトリー(MALDI-MS)と比べて低減される。さらに、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法は、タンパク質水溶液や体液、有機化合物を含有する有機溶液等を含む様々な種類の液体試料の分析に用いることができ、液体試料を固体試料にすることに比べると、(最小の試料調製で)液体試料を直接的に分析することができるということが実証された。また、定性的分析(すなわち、検出された分析物の同定)、相対的な定量的分析(すなわち、液体試料に含まれる様々な種類の分析物の定量)の両方について満足できる結果が得られた。
【0117】
本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法の簡便性及び迅速性のおかげで、また、この方法を用いて得られる迅速な結果のおかげで、本発明が、大量の液体試料中の分析物の定性的分析や液体試料中の分析物の相対的濃度の決定が必要とされる、医療分野や環境試験、犯罪鑑定、学問的研究等のような関連分野で有利であることは明白である。本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法はまた、人間から分泌される体液の分析にも適用可能である。人間の体液中の基質の同定や相対濃度を通して、人間の生物学的状態を決定することができる。
【0118】
さらに、本発明に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実行するマススペクトロメーター組立は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような他の分析器具に連結することができるので、作業者は、試料の精製に引き続いて、試料に含まれる基質についての情報を得るためにALMS分析を行うことができる。このことは、同じ試料について様々な分析を行う必要があるときに、作業の簡便性を大いに高め、作業時間を大いに低減することになる。
【0119】
最も実用的で且つ好適な実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明したが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神に含まれる様々な変更や最も広い解釈及び同等の変更の範囲に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】従来のエレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリー(ESI-MS)の様々な構成要素の相対位置及びESI-MSに関する操作方法を説明するための、前記構成要素の概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る環境液体マススペクトロメトリー法を実施する質量分析組立のレーザー脱離装置及びエレクトロスプレーユニットの概略図。液体試料に含まれる分析物が脱離し、多価帯電液滴の移動経路を横切る飛行経路に沿って飛行する様子を示す。
【図3】多価帯電液滴の中に分析物が閉じ込められた様子及び、その多価帯電液滴のサイズが徐々に小さくなることによりイオン化分析物を形成する様子を説明する概略図。
【図4】本発明の環境液体マススペクトロメトリー法を実行する、第1及び第5の実施形態に係る質量分析組立の概略的な側面図。
【図5】本発明の環境液体マススペクトロメトリー法を実行する、第2の実施形態に係る質量分析組立の断片的な拡大図。空気流供給機構とノズルの相対位置を説明する。
【図6】本発明の環境液体マススペクトロメトリー法を実行する、第3の実施形態に係る質量分析組立断片的な側面図。マイクロチューブ、ノズル、ポンプの相対位置を説明する。
【図7】本発明の環境液体マススペクトロメトリー法を実行する、第4の実施形態に係る質量分析組立断片的な側面図。
【図8a】比較例1の実験結果を示すマススペクトル。
【図8b】模範方法1の実験結果を示すマススペクトル。
【図8c】模範方法2の実験結果を示すマススペクトル。
【図9a】模範方法3の実験結果を示すマススペクトル。
【図9b】液体試料が第1状態にある模範方法4の実験結果を示すマススペクトル。
【図9c】液体試料が第2状態にある模範方法4の実験結果を示すマススペクトル。
【図9d】液体試料が第1状態にある模範方法5の実験結果を示すマススペクトル。
【図9e】液体試料が第2状態にある模範方法5の実験結果を示すマススペクトル。
【図9f】液体試料が第1状態にある模範方法6の実験結果を示すマススペクトル。
【図9g】液体試料が第2状態にある模範方法6の実験結果を示すマススペクトル。
【図10a】模範方法7の実験結果を示すマススペクトル。
【図10b】模範方法8の実験結果を示すマススペクトル。
【図10c】模範方法9の実験結果を示すマススペクトル。
【図10d】模範方法10の実験結果を示すマススペクトル。
【図10e】模範方法11の実験結果を示すマススペクトル。
【図10f】模範方法12の実験結果を示すマススペクトル。
【図11a】模範方法13の実験結果を示すマススペクトル。
【図11b】図11aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図11c】ESI-MSを用いて質量分析を行った比較例2の実験結果を示すマススペクトル。
【図11d】図11cのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図11e】MALDI-MSを用いて質量分析を行った比較例2の実験結果を示すマススペクトル。
【図12a】用いられた液体試料の反応時間が0分である、模範方法14の実験結果を示すマススペクトル。
【図12b】用いられた液体試料の反応時間が15分である、模範方法14の実験結果を示すマススペクトル。
【図12c】用いられた液体試料の反応時間が30分である、模範方法14の実験結果を示すマススペクトル。
【図13a】模範方法15の実験結果を示すマススペクトルで。
【図13b】図13aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図13c】ESI-MSを用いて質量分析を行った比較例4の実験結果を示すマススペクトル。
【図13d】MALDI-MSを用いて質量分析を行った比較例5の実験結果を示すマススペクトル。
【図14a】模範方法16の実験結果を示すマススペクトル。
【図14b】図14aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図14c】ESI-MSを用いて質量分析を行った比較例6の実験結果を示すマススペクトル。
【図14d】MALDI-MSを用いて質量分析を行った比較例7の実験結果を示すマススペクトル。
【図15a】模範方法17の実験結果を示すマススペクトル。
【図15b】図15aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図15c】ESI-MSを用いて質量分析を行った比較例8の実験結果を示すマススペクトル。
【図15d】MALDI-MSを用いて質量分析を行った比較例9の実験結果を示すマススペクトル。
【図16a】模範方法18の実験結果を示すマススペクトル。
【図16b】図16aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図16c】ESI-MSを用いて質量分析を行った比較例10の実験結果を示すマススペクトル。
【図16d】MALDI-MSを用いて質量分析を行った比較例11の実験結果を示すマススペクトル。
【図17a】模範方法19の実験結果を示すマススペクトル。
【図17b】図17aのマススペクトルをデコンボリュートした図。
【図18】模範方法20の実験結果を示すX−Y座標図。X軸はICを用いて得られた(HbA1/Hb)値を示し、Y軸はALMS分析を用いて得られた(HbA1/Hb)値を示す。
【図19a】模範方法21の実験結果を示すマススペクトル。
【図19b】図19aのマススペクトルをデコンボリュートした図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシービングユニット、エレクトロスプレーユニット、及び電圧供給部を有する、質量分析計で用いられるレーザー脱離装置であって、
前記レシービングユニットが、液体試料から取り出された、該質量分析計で分析されるべきイオン化分析物を受け入れるように設けられ、
前記エレクトロスプレーユニットが、液体のエレクトロスプレー用溶媒の液滴をその場で連続的に形成するように設計されたノズルを有し、前記レシービングユニットから長手方向に離れて設けられ、これにより移動経路が定義され、
前記電圧供給部が、前記エレクトロスプレーユニットと前記レシービングユニットとの間に、前記液滴に多数の電荷が帯電し、その液滴が多価帯電液滴として強制的にノズルから放出され、前記移動経路に沿って前記レシービングユニットに向かうような強度の電位差を生じさせるように設けられた、以下のものを備えるレーザー脱離装置。
前記分析物を含有する溶液とレーザーエネルギーを吸収するためのマトリックスとして機能する材料とを含む前記液体試料が置かれる試料台;及び
前記液体試料にレーザーを照射するために設けられたレーザー伝送機構、
前記レーザー伝送機構によるレーザー照射時に、レーザーエネルギーがマトリックスを経て、液体試料の溶液中に含まれる分析物の少なくとも一つに伝わり、その結果、前記少なくとも一つの分析物が脱離して、前記エレクトロスプレー用溶媒の多価帯電液滴の前記移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行することにより前記多価帯電液滴に閉じ込められ、且つ、前記移動経路に沿って前記エレクトロスプレーユニットのノズルから前記レシービングユニットに近づくときに前記多価帯電液滴のサイズがだんだん小さくなる結果、前記液滴の電荷が前記液滴に閉じ込められた分析物の少なくとも一つに移動して対応するイオン化分析物が形成される。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー脱離装置において、
前記溶液が水溶液であり、マトリックスとして機能する材料がその水溶液に含まれる水の分子であり、前記レーザー伝送機構が赤外線レーザーであること。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザー脱離装置において、
マトリックスとして機能する材料がレーザー非伝送性材料から成ること。
【請求項4】
以下のものを備えるマススペクトロメトリー組立。
液体試料から取り出された、質量分析計で分析されるべきイオン化分析物を受け入れるように設けられたレシービングユニット;
液状のエレクトロスプレー用溶媒を貯留するための容器と、この容器の後段に配置され、前記エレクトロスプレー用溶媒の液滴をその場で連続的に形成するように設計されたノズルであって、前記レシービングユニットから長手方向に離れて設けられ、これにより移動経路を定義するノズルとを含むエレクトロスプレーユニット;
前記ノズルと前記レシービングユニットとの間に、前記液滴に多数の電荷が帯電し、その液滴が多価帯電液滴として強制的にノズルから放出され、前記移動経路に沿って前記レシービングユニットに向かうような強度の電位差を生じさせるように設けられた電圧供給部;及び
前記分析物を含有する溶液とレーザーエネルギーを吸収するためのマトリックスとして機能する材料とを含む前記液体試料が置かれる試料台と、前記液体試料にレーザーを照射するために設けられたレーザー伝送機構とを有するレーザー脱離装置、
前記レーザー伝送機構によるレーザー照射時に、前記レーザーエネルギーがマトリックスを経て、液体試料の溶液中に含まれる分析物の少なくとも一つに伝わり、その結果、前記少なくとも一つの分析物が脱離して、前記エレクトロスプレー用溶媒の多価帯電液滴の前記移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行することにより前記多価帯電液滴に閉じ込められ、且つ、前記移動経路に沿って前記エレクトロスプレーユニットのノズルから前記レシービングユニットに近づくときに前記多価帯電液滴のサイズがだんだん小さくなる結果、前記液滴の電荷が前記液滴に閉じ込められた分析物の少なくとも一つに移動して対応するイオン化分析物が形成される。
【請求項5】
請求項4に記載のマススペクトロメーター組立において、
前記液体試料の溶液が水溶液であり、前記マトリックスとして機能する材料が水溶液に含まれる水の分子であり、上記レーザー伝送機構が赤外線レーザーであるとき、マススペクトロメーター組立。
【請求項6】
請求項4に記載のマススペクトロメーター組立において、
前記レーザー脱離装置の試料台が、可動トラックと、前記液体試料が載置される支持部とを含んでおり、前記支持部が、前記液体試料が当該支持部と共に前記可動トラックに沿って動くように前記可動トラックに移動可能に設けられていること。
【請求項7】
請求項4に記載のマススペクトロメーター組立において、
前記レーザー脱離装置の試料台が、レーザー非伝送性材料から成る支持部を含んでおり、前記支持部が、液体試料が直接載置される支持面を有していること。
【請求項8】
以下のステップを備える質量分析方法。
試料台の上に、多数の分析物を含有する溶液と、レーザーエネルギーを吸収するマトリックスとして機能する材料とを含む液体試料を載置するステップと、
エレクトロスプレー用溶媒の液滴をその場で連続的に形成するように設計されたノズルを含むエレクトロスプレーを提供するステップと、
前記液体試料から取り出され質量分析器によって分析されるイオン化分析物を受け入れるように設けられたレシービングユニットであって、該レシービングユニットの後段に前記質量分析器が配置され、前記レシービングユニットは前記エレクトロスプレーユニットのノズルから長手方向に離れて設けられ、これにより移動経路を定義するレシービングユニットを提供するステップと、
前記エレクトロスプレーユニットのノズルと前記レシービングユニットとの間に、前記液滴に多数の電荷が帯電し、その液滴が多価帯電液滴として強制的にノズルから放出されて前記移動経路に沿って前記レシービングユニットに向かうような強度の電位差を生じさせるステップと、
前記液体試料にレーザービームを照射するステップであって、レーザー照射時に、前記レーザーエネルギーがマトリックスを経て、液体試料の溶液中に含まれる分析物の少なくとも一つに伝わり、その結果、前記少なくとも一つの分析物が脱離して、前記エレクトロスプレー用溶媒の多価帯電液滴の前記移動経路と交差する飛行経路に沿って飛行することにより前記多価帯電液滴に閉じ込められ、且つ、前記多価帯電液滴が移動経路に沿って前記エレクトロスプレーユニットのノズルから前記レシービングユニットに近づくときにそのサイズがだんだん小さくなる結果、前記液滴の電荷が前記液滴に閉じ込められた分析物の少なくとも一つに移動して対応するイオン化分析物を形成するようなレーザービームを前記液体試料に照射するステップ。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記溶液は水溶液であり、前記マトリックスとして機能する材料が前記水溶液に含まれる水分子であり、前記レーザービームが赤外線レーザービームであること。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、
前記マトリックスとして機能する材料が、レーザーによる非伝送性材料であること。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記マトリックスとして機能する材料が、金、炭素、コバルト、鉄、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB)、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシシナミック酸(シナピン酸、SA)、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(α-CHC)、或いはこれらの組み合わせから成るグループから選ばれること。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記マトリックスとして機能する材料が、金、炭素、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB)、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(シナピン酸、SA)、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(α-CHC)、或いはこれらの組み合わせから成るグループから選ばれること。
【請求項13】
請求項8に記載の方法において、
前記マトリックスとして機能する材料の粒径が50nmから50μmの範囲にあること。
【請求項14】
請求項8に記載の方法において、
前記液体試料に含まれる前記溶液が、生物から分泌される体液であること。
【請求項15】
請求項8に記載の方法において、
液体試料に含まれる溶液が、生物から分泌された体液であって、水で希釈されたものであること。
【請求項16】
請求項15の方法において、
前記体液が、血液、涙液、乳、汗、腸液、脳液、髄液、リンパ液、膿汁、血清、唾液、鼻汁、尿、及び排泄物から成るグループから選ばれること。
【請求項17】
請求項16の方法において、
前記体液が、血液、涙液、乳、血清から成るグループから選ばれること。
【請求項18】
請求項8に記載の方法において、
前記液体試料に含まれる前記溶液が、タンパク質溶液であること。
【請求項19】
請求項8に記載の方法において、
前記液体試料に含まれる前記溶液が有機溶媒であり前記溶液に含まれる分析物が有機化合物であること。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、
エレクトロスプレー用溶媒が、揮発性液体を含む水溶液であること。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記揮発性液体が、イソアセトニトリル、アセトン、アルコール、或いはこれらの組み合わせから成るグループから選ばれる。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記揮発性液体がアルコールであること。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記揮発性液体がメタノールであること。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、
前記エレクトロスプレー用溶媒が、さらに酸を含む水溶液であること。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記エレクトロスプレー用溶媒がアルコールを含む水溶液であり、前記酸が、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、及びこれらの組み合わせから成るグループから選ばれること。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、
前記エレクトロスプレー用溶媒がメタノールとギ酸を含む水溶液であること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図9g】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図15d】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【公開番号】特開2008−147165(P2008−147165A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−253798(P2007−253798)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507324496)国立中山大学 (4)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SUN YAT−SEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 70, Lian−Hai Road, Gu−Shan District, Kaohsiung City, Taiwan
【Fターム(参考)】