説明

レーザー装置の冷却装置

【目的】 十分な冷却能力を確保して、励起ランプの点灯性を良好に保ちつつ、安定したレーザー出力を得ることができるようにすること。
【構成】 タンク1に貯留された冷却用水は、一部をイオン交換樹脂8を通して循環させる。ポンプ2により循環させられる流量の残りは、レーザー発振器4の励起ランプ21に送った後、加温された冷却用水を熱交換器5を介して冷却される。制御装置9により、タンク1内に設けられた温度センサー10が検知した温度が所定値以上のとき、電磁弁便7を閉めて、イオン交換樹脂8に流れる冷却用水の流量をカットする。つまり、レーザー発振器4の励起ランプ21に送る冷却水の流量を増やし、冷却効率を上げ、ランプの温度上昇を止める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザー発振器の発熱源を冷却するレーザー装置の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザー光を照射するレーザー装置は、レーザー発振器によりレーザー光を発振するようになっている。このレーザー装置のレーザー発振器は、その励起ランプがレーザー照射中に発熱する。そのため前記レーザー装置では、励起ランプを冷却が必要となり、冷却用の水を循環させている。
【0003】前記励起ランプの電極が冷却水中にあるタイプでは、この励起ランプを点灯させる際、冷却用水の電気抵抗値が低いと、電流が電極間でなく、冷却水中を流れてしまい、同ランプが点灯しにくくなる。そこで、冷却用水として純水を用い、この純水をイオン交換樹脂に通すことによって電気抵抗値をさらに上げ、つまり絶縁性を良くして、励起ランプの点灯性を良くしている。
【0004】しかし、冷却用の純水を循環させるためのポンプと、前記レーザー発振器との間にイオン交換樹脂を設けると、圧力損失が大きすぎる。すなわち、全体的に循環効率が悪くなってしまう。このため、前記ポンプから出る冷却水を2つに分け、一方(大半)をレーザー発振器へ、そしてもう一方をイオン交換樹脂を通して、ポンプの前にあるタンクへ帰還させる様にしている。この様にしているため、前記レーザー発振器に行く純水の流量はポンプの能力一杯でなく、この冷却用の純水の一部が、イオン交換樹脂の方に回されており、全体として冷却能力をおとしていることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来技術では、冷却水の流量はその一部がイオン交換樹脂にうばわれているため、必ずしも効率のよい冷却ができているとはいえなかった。
【0006】冷却能力が劣ると、冷却水の水温が上昇し、励起ランプの温度も上昇してしまうので、レーザー出力が低下してしまうこととなる。
【0007】本発明は、前記事情にかんがみてなされたもので、十分な冷却能力を確保して、安定したレーザー出力を得ることができるレーザー装置の冷却装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、タンクに貯留された冷却用水が循環駆動手段により循環させられる流量のうち、その一部をイオン交換手段を通して前記冷却用水中のイオンを除去し、再度前記タンクに送り返す一方、残りの流量をレーザー発振手段の発熱源に送った後、前記発熱源により加温された前記冷却用水を熱交換手段を介して冷却して前記タンクに再度送り返すレーザー装置の冷却装置において、前記冷却用水の温度またはレーザー発振手段の発熱源の温度の少なくとも一方を検知する温度検知手段と、前記イオン交換手段を流れる前記冷却用水の流量を調整する流量調整手段と、前記温度検知手段の検知した温度に基づいて、前記流量調整手段による流量調整を制御する制御手段とを設けている。
【0009】
【作 用】本発明は、制御手段により、温度検知手段が検知した温度に基づいて、流量調整手段を制御し、イオン交換手段に流れる冷却用水の流量を調整する。この調整により、レーザー発振手段の発熱源に流れる冷却用水の流量も調整される。
【0010】
【実施例】図を参照して本発明の実施例について、以下に説明する。図1は本発明の一実施例に係るレーザー装置の冷却装置の構成図である。
【0011】図1(a)に示すレーザー装置の冷却装置20は、図1(b)に示す発熱源となる励起ランプ21の発熱を抑え、同ランプ21の点灯性を良好に保たせるためのものである。
【0012】図3(c)は、前記レーザー装置を構成するレーザー用プローブ31である。このレーザー用プローブ31は、後述するレーザー発振器が発するレーザー光を導くファイバ32を有すると共に、ファイバ32が導いた光をハンドピース33の先端部33aから照射するようになっている。
【0013】図3(c)のA−A線断面図である図3(d)に示すように、ハンドピース33の本体部33bには、その外周に、レーザーの出射をON/OFFする三つのスイッチ34が設けられている。三つのスイッチ34は、前記外周において、ほぼ等分の間隔で配置されている。三つのスイッチ34は、電気的に並列に接続されている。従って、いずれか一つを押せばスイッチがONとなる。
【0014】また、ハンドピース33の本体部33bは、前記三つのスイッチ34を含めてその外周の一部が、樹脂または金属製で、外周方向に弾性力を有するカバーリング35により覆われている。さらに、カバーリング35は、ゴムカバー36により覆われている。
【0015】さらに、図2(a),(b)は、従来から用いられているレーザープローブ41を示している。このレーザープローブ41は、指でレーザーの出射をON/OFFするスイッチ42をハンドピース43に設けてある。尚、図2(a)において、一点鎖線で示すのは、接触型チップ44である。この接触型チップ44は、ハンドピース先端部43aに着脱自在となっており、照射体に接触させてレーザー光を照射させる型のものである。
【0016】図2に示す構成の場合、前記スイッチ42は一ケ所であり、スイッチ42を操作するためには、ハンドピース43の握り位置をいちいち確認する必要があり、いざというときに、スイッチが押せないことなどがあった。特に、図2(b)に示すように、ハンドピースの先端部45が曲がったタイプのものでは、使用状態によっては、スイッチ42が押し易い位置で把持できないこともあり、使いにくい場合があった。
【0017】これに対して図3に示すプローブ31は、スイッチ34を複数個設け、それをカバーリング35で覆い、さらに防水のためゴムカバー36で保持固定している。これにより、いずれの方向からハンドピース33を把持しても、カバーリング35を縮める様に把持すれば、スイッチ34はONされ、レーザー光が出射される。一方、把持する力を弱めれば、カバーリング35が、弾性力により外周方向にその形状が復帰して、スイッチ34はOFFとなり、レーザー光の出射が停止する。
【0018】このように、図3に示すプローブ33は、把持位置を気にすることなく、押し易くかつ使いやすいので、必要に応じて容易にレーザー出射のON/OFFさせることができる。
【0019】次に、図1に示す前記冷却装置20の構成について、説明する。
【0020】前記冷却装置20は、前記励起ランプ21の電極が冷却水中にあるタイプである。この冷却装置20は、冷却用の純水を同ランプ21を通るように循環させる一方、使用する純水の電気抵抗を高く保つための後述するイオン交換樹脂にも純水の一部を流すように構成されている。
【0021】前記冷却装置20は、冷却用水としての純水を貯留するタンク1を有している。冷却装置20の一方の循環系統としては、前記タンク1、循環駆動手段としてのポンプ2、フィルタ3、レーザー発振手段としてのレーザー発振器4、及び熱交換手段としての熱交換器5がそれぞれ管路で連通接続され、さらに熱交換器5がタンク1に連通接続されて構成されている。前記タンク1の冷却水は、この水の循環の駆動源であるポンプ2によりフィルタ3を介して、レーザー発振器4へ送られるようになっている。前記フィルタ3は、冷却水中の不純物、例えばごみなどを吸着し、冷却水から除去するものである。
【0022】図1(b)に示すように、前記レーザー発振器4は、レーザー装置を構成するものであって、励起ランプ21を内蔵している。前記励起ランプ21は、レーザー発振器4の外部に設けられた電源22を接続しており、励起光を発行するようになっている。前記励起光により励起された図示しないレーザー媒体、例えばYAGロッドは、レーザー光を発振するようになっている。
【0023】前記レーザー発振器4へ送られた純水は、前記励起ランプ21の周囲を通って、熱交換器5へ送られ、再びタンク1に還流するようになっている。
【0024】また、ポンプ2とフィルタ3とを接続する管路は、その中途が分岐しており、分岐の端部が、バルブ6へ接続されて連通している。前記バルブ6は、順に、電磁弁7、そしてイオン交換樹脂8を介して、前記タンク1へ連通・接続されている。すなわち、前記冷却装置20は、冷却水の一部がイオン交換樹脂6を通してタンク1に戻ってくる他方の循環系統も有している。
【0025】前記バルブ6は、イオン交換手段としてのイオン交換樹脂8へ行く純水の量の割合を予め設定するためのものである。また、前記バルブ6とイオン交換樹脂8との間に設けた流量調整手段としての電磁弁7は、制御手段としての制御装置9により、電気的に制御されるようになっている。この制御装置9は、タンク1内に設けた温度センサー10の検知した温度信号を受け、前記電磁弁7の開閉を制御するものである。
【0026】前記励起ランプ21を点灯させる際、冷却水の電気抵抗値が低いと、電流が電極間でなく、冷却水中を流れてしまい、同ランプ21が点灯しにくくなる。そこで、冷却水として純水を用い、さらにこの純水をイオン交換樹脂8に通すことによって電気抵抗値をさらに上げ、励起ランプの点灯性を良くしている。
【0027】既に述べたように、冷却用の純水を循環させるためのポンプ2と、前記レーザー発振器4との間にイオン交換樹脂8を設けると、圧力損失が大きすぎる。このため本実施例では、、前記ポンプから出る冷却水を2つに分け、一方をレーザー発振器4へ、そしてもう一方をイオン交換樹脂5を通って、ポンプ2の前にあるタンクへ1帰還させる様に構成してある。
【0028】前記構成で、ポンプ2により吸引されたタンク1の冷却水は、フィルタ3を通り不純物が取り除かれて、レーザー発振器4へ送られる。前記冷却水は、レーザー発振器4の励起ランプ21の熱を吸収する。これにより、前記冷却用の水は、加温されることになり、この加温された水はさらに熱交換器5へ流入する。熱交換器5では、外部の空気を吹き付けることにより、熱交換を行い、流入した水の温度を下げる。熱交換器5にて再び冷却された純水は、その後タンク1へ戻り、ポンプ2からイオン交換樹脂8を通り、再度レーザー発振器4へ向う。このように、ポンプ2が必要に応じて駆動される限り、前記励起ランプ21を冷却するための循環が、繰り返し行われる。
【0029】また、ポンプ2から出た純水の一部は、あらかじめ流量が設定されたバルブ6により、決められた割合でイオン交換樹脂7へ送られる。イオン交換樹脂7では、イオン交換により純水中の抵抗値が高く維持される。イオン交換樹脂7を経た純水は、再び、前記タンク1に戻る。タンク1に入っている温度センサー10は、タンク1内の純水の温度を検知して制御装置9へ送信する。
【0030】前記制御装置9は、温度センサー10が検知した温度に基づいて、電磁弁7の開閉を制御する。すなわち、温度がレーザー出力の低下を招かない温度であれば、電磁弁7を開のままとし、レーザー出力が低下する温度になれば電磁弁7を閉とする。例えば、前記励起ランプ21のレーザー出力が低下するときの臨海水温を45℃程度とする。そして、この水温を電磁弁7を開閉制御する制御装置9内部での設定温度とする。ここで、前記冷却水は循環しており、冷却水の水温と励起ランプ21の温度と高い相関関係を有しているので、水温検知によりレーザー出力が低下することを検知できる。
【0031】従って、レーザー発振器4からレーザーが発振され、冷却用の純水の温度が次第に上昇し、45℃以上になった場合、制御装置9は前記電磁弁7を閉じるように制御する。
【0032】尚、励起ランプ21の温度を直接検知して、電磁弁7の開閉を制御するようにしてもよい。あるいは、前記レーザー発振器4内の水温を検知するようにしても良い。
【0033】前記電磁弁7を閉とすることにより、イオン交換樹脂8への流量はカットされ、その分、レーザー発振器4側へ冷却用水が多く流れる。つまり、本実施例では、ポンプ2の能力一杯の流量で純水をレーザー発振器4へ流すことが可能である。電磁弁7の閉によって、少なくともそれ以前より、励起ランプ21の周囲に通す単位時間当たりの流量を多くすることができる。従って、本実施例では、励起ランプ21の発熱量が大きくなってレーザー出力が低下する前に、冷却効率をあげ、励起ランプの点灯性を良好に維持できる。そして、本実施例では、安定したレーザー出力を得ることができる。
【0034】ところで、前記励起ランプ21は一度点灯すると、純水の電気抵抗値が下がっても消えにくい。従って、温度上昇時に、イオン交換樹脂8への純水の流入を停止(流量、零に)させても問題はない。
【0035】前述したように本実施例では、励起ランプの点灯性を良好に保ちつつ、安定したレーザー出力を得ることができる。
【0036】
【発明の効果】本発明のレーザー装置の冷却装置によれば、レーザー発振手段の発光源に対する十分な冷却能力を確保することができ、安定したレーザー出力を得させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るレーザー装置の冷却装置の構成図。
【図2】図2(a),(b)は従来から用いられているレーザープローブの斜視図。
【図3】図3(a),はレーザープローブの斜視図。図3(b)は図(a)のA−A線断面図。
【符号の説明】
20…冷却装置
1…タンク
2…ポンプ
3…フィルタ
4…レーザー発振器
5…熱交換器
6…バルブ
7…電磁弁
8…イオン交換器
9…制御装置
21…励起ランプ
22…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】 タンクに貯留された冷却用水が循環駆動手段により循環させられる流量のうち、その一部をイオン交換手段を通して前記冷却用水中のイオンを除去し、再度前記タンクに送り返す一方、残りの流量をレーザー発振手段の発熱源に送った後、前記発熱源により加温された前記冷却用水を熱交換手段を介して冷却して前記タンクに再度送り返すレーザー装置の冷却装置において、前記冷却用水の温度またはレーザー発振手段の発熱源の温度の少なくとも一方を検知する温度検知手段と、前記イオン交換手段を流れる前記冷却用水の流量を調整する流量調整手段と、前記温度検知手段の検知した温度に基づいて、前記流量調整手段による流量調整を制御する制御手段とを設けていることを特徴とするレーザー装置の冷却装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平6−125916
【公開日】平成6年(1994)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−278956
【出願日】平成4年(1992)10月16日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)