説明

レーザー誘導ブレークダウン分光分析法を利用した元素の定量方法及び定量装置

【課題】LIBS法を用いて、固体試料に含まれる元素を高い精度で定量する方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)〜(3)をこの順で含む、固体試料に含まれる元素の定量方法:
(1)所定の条件が満たされるまで、以下の工程a、bを繰り返す工程、
工程a.固体試料にレーザーパルス光を照射する工程、
工程b.前記レーザーパルス光の照射により固体試料から発生したプラズマ発光を分光し、定量元素固有の波長の光の強度を測定する工程、
(2)工程(1)の工程bにおいて測定した定量元素固有の波長の光の強度を積算する工程、(3)工程(2)で求められた定量元素固有の波長の光の強度の積算値に基づいて、前記固体試料に含まれる定量元素の量を決定する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体試料に含まれる元素の量を、レーザー誘導ブレークダウン分光分析法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)法を用いて定量する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体試料中に含まれる元素の量は、通常、予め固体試料を溶解した測定用溶液を準備し、この溶液の元素濃度を発光分光分析法などにより測定されている。しかし、予め固体試料を溶解した溶液の元素濃度を発光分光分析法等により測定する方法では、固体試料を溶解した測定用溶液の調製という前処理が必要となり、固体試料を直接測定することはできない。
【0003】
そこで、近年、固体試料に含まれる元素を直接定量する方法として、レーザー誘導ブレークダウン分光分析法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS法)の利用が検討されている。
LIBS法は、エネルギーの高いパルスレーザーを測定試料に集光・照射することによって、その焦点領域にある測定試料を高密度化してプラズマを形成させ(ブレークダウン現象)、その後、高準位に反転した原子、イオンが元の準位に戻る時に放射される元素固有の波長の光を解析する分析方法であり、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−326205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、LIBS法は、定性的な評価には適しているが、定量分析への適用においては精度の点で問題がある。
【0006】
そこで、本願発明においては、LIBS法を用いて、固体試料に含まれる元素を高い精度で定量する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者が上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねたところ、LIBS法においてブレークダウン現象により放射される元素固有の波長の光の強度は、固体試料中の元素濃度だけではなく、ブレークダウンした固体試料の体積にも依存し、このことが原因でLIBS法による定量分析の精度が低くなっていることが判明した。
【0008】
すなわち、従来のLIBS法による定量分析においては、定量元素の濃度が既知である固体試料を標準試料として用い、予め、固体試料の元素濃度とブレークダウン現象により放射される元素固有の波長の光の強度との関係を示す検量線を作成し、これを利用して元素濃度が未知の固体試料の元素濃度を測定している。
しかし、前述のように、ブレークダウン現象により放射される元素固有の波長の光の強度は、ブレークダウンした固体試料の元素濃度だけではなく、ブレークダウンした固体試料の体積にも依存するから、1ショットのレーザーパルス光により放射される元素固有の波長の光の強度は、元素濃度が同じであっても、充填密度の大きい固体試料の場合と、充填密度の小さい固体試料の場合とでは異なる。
そのため、測定試料の充填密度が標準試料の充填密度と異なっている場合には、測定試料の正確な元素濃度を測定できていないことが分かった。
【0009】
そこで、本願発明においては、測定試料の定量元素濃度に代えて、測定試料中の定量元素の絶対量を測定することにより、測定試料の充填密度に起因する測定誤差の影響を排除し、定量精度を高めることを達成した。
具体的には、測定試料が完全にブレークダウンするまで繰り返しレーザーパルス光を照射し、測定試料から放射された定量元素固有の波長の光の強度の積算値を求め、この積算値に基づいて測定試料中の定量元素の絶対量を定量することを試みた。
その結果、測定試料が完全にブレークダウンするまでに放射された定量元素固有の波長の光の強度の積算値と、測定試料中の定量元素の量との間には相関関係があることが確認でき、測定試料が完全にブレークダウンするまでに放射された定量元素固有の波長の光の強度の積算値を利用すれば、試料中の元素の定量が可能であることが分かった。
【0010】
すなわち、本願発明の定量方法は以下のとおりである。
以下の工程(1)〜(3)をこの順で含む、固体試料に含まれる元素の定量方法:
(1)所定の条件が満たされるまで、以下の工程a、bを繰り返す工程、
工程a.固体試料にレーザーパルス光を照射する工程、
工程b.レーザーパルス光の照射により固体試料から発生したプラズマ発光を分光し、定量元素固有の波長の光の強度を測定する工程、
(2)工程(1)の工程bにおいて測定した定量元素固有の波長の光の強度の積算値を求める工程、
(3)工程(2)で求められた定量元素固有の波長の光の強度の積算値に基づいて、固体試料に含まれる定量元素の量を決定する工程。
【0011】
また、本願発明の定量装置は、以下のとおりである。
以下の(A)〜(F)の手段を有する、固体試料に含まれる元素の定量装置:
固体試料にレーザーパルス光を照射する照射手段(A)、
照射手段(A)からのレーザーパルス光の照射により固体試料から発生したプラズマ発光を分光する分光手段(B)、
分光手段(B)により分光された定量元素固有の波長の光の強度を測定する測定手段(C)、
所定の条件が満たされているかどうかを判断する判断手段(D)、
判断手段(D)の判断結果に基づいて、測定手段(C)により測定された固体試料から放射された定量元素固有の波長の光の強度の積算値を求める積算手段(E)、
積算手段(E)により求められた定量元素固有の波長の光の強度の積算値に基づいて、固体試料に含まれる定量元素の量を決定する元素量決定手段(F)。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、固体試料に含まれる定量元素の量を、前処理等を行うことなく、高い精度で定量できる。
さらに、本願発明によれば、固体試料に含まれる元素の量を、濃度としてではなく、絶対量で測定できるので、従来の元素濃度を測定する定量方法では測定することができなかった定量元素が偏在する試料に含まれる元素の量を定量することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本願発明の最良の形態について説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
まず、本願発明において、分析対象となる固体試料について説明する。
本願発明において、定量分析することのできる固体試料に限定はなく、レーザーパルス光によりブレークダウンしてプラズマ化するものであれば、いかなる固体試料であっても分析対象とすることができる。
また、定量できる元素についても同様であり、レーザーパルス光によるブレークダウン現象によりプラズマ化し、他の元素によるプラズマ発光と区別可能なプラズマ発光波長の光を放射するものであれば、いかなる元素であっても定量できる。さらに、複数種類の元素を同時に定量することもできる。
もっとも、本願発明の定量方法においては、測定試料がすべてブレークダウンするまで測定試料にレーザーパルス光を照射し続けることによって、測定試料中の元素の絶対量を測定する。そのため、分析対象となる固体試料は、レーザーパルス光の焦点領域の範囲内に収まるサイズにすることができるものであることが好ましい。
このようなことから、本願発明の定量方法は、粉体、粒子等の微細な固体試料中の元素の定量に適している。
【0015】
さらに、本願発明の定量方法は、固体試料中に偏在する元素の定量を可能とするので、とりわけ、核と該核を被覆するコーティング層とからなる顆粒剤のコーティング層に偏在する元素の定量に適している。
このような顆粒剤としては、例えば、徐放性顆粒や腸溶性顆粒等が挙げられる。
この場合、コーティング液の組成などからコーティング層中の定量元素の濃度が既知の場合には、定量した元素の量に基づいてコーティング層の平均厚さを算出することもできる。
【0016】
また、本願発明の定量方法によれば、同時に複数種類の元素の定量をすることもできるので、複数種類のコーティング層で被覆された顆粒剤について、各コーティング層に含まれる互いに異なる元素の量を定量することにより、各コーティング層の平均厚さを一括して測定することも可能である。
【0017】
次に、測定試料の調製について説明する。
測定試料は、レーザーパルス光の照射の衝撃により飛ばされないよう固定して、測定装置の試料台に載置する。特に、測定試料が粒子である場合には、レーザーパルス光が効率よく試料に照射されるよう、粒子どうしが重ならないように配置することが好ましい。
なお、試料の固定には、接着テープ等、バックグラウンドの影響が小さく、高エネルギー線照射下でも測定試料と反応しないことを予め確認したものを利用することができる。
【0018】
次に、工程(1)について説明する。
工程aにおいて用いるレーザーパルス光は、試料をブレークダウンさせて、これに含まれる定量元素をプラズマ化できるものであれば限定はないが、その波長としては、例えば、532〜1064nmであるものが好ましい
また、パルス時間、パルス間隔に限定はないが、パルス時間としては、通常、1〜5μ秒程度であり、パルス間隔としては、通常、0.5〜1秒程度である。
レーザー光源に限定はなく、Nd−YAGレーザー等、従来公知のものを使用できる。
【0019】
工程bにおいては、工程aにおけるレーザーパルス光の照射により測定試料の一部分がブレークダウンしたことによって発生したプラズマ発光を分光器によって分光し、定量元素固有の波長の光の強度を測定する。
ここで、「定量元素固有の波長」とは、ブレークダウンした定量元素の原子から放射されるプラズマ発光の波長をいう。通常、元素固有の波長は一種類だけではなく、複数存在するので、これらの中から、他の元素のプラズマ発光の波長と重なりのないものを選択する。
また、測定試料に由来しない、定量元素固有の波長の光と重複する波長の光が観測される場合、すなわち、いわゆるバックグラウンドが観測される場合には、「定量元素固有の波長の光の強度」として、実測値からバックグラウンド値を差し引いた、バックグラウンド補正値を用いることが好ましい。
【0020】
工程(1)においては、所定の条件が満たされるまで、工程a、bを繰り返す。
ここで、「所定の条件」とは、該条件が満されることが、測定試料又は測定試料中の定量元素の偏在領域がすべてブレークダウンしたことを意味する条件をいう。
【0021】
このような「所定の条件」に限定はなく、例えば、測定試料又は測定試料中の定量元素の偏在領域がすべてブレークダウンするのに必要なレーザーパルス光のパルス回数が予測できる場合には、必要なパルス回数の照射が終了したこととすることができる。
また、「所定の条件」として、レーザーパルス光の照射により固体試料から発生した定量元素固有の波長の光の強度を利用することもできる。
【0022】
より厳密な定量を行うために、「所定の条件」を、工程bにおいて測定する定量元素固有の波長の光の強度が予め設定した値以下となることとすることが好ましい。
ここで、「予め設定した値」は、例えば、0又はこれに測定誤差を加えた値とすることができる。
【0023】
次に、工程(2)について説明する。
工程(2)においては、「所定の条件」が満たされ、工程(1)が終了した後に、工程(1)の工程bにおいて測定した定量元素固有の波長の光の強度を積算する。
工程(1)においては、測定試料が完全にブレークダウンするまでレーザーパルス光を複数ショット照射し、その都度、測定試料から放射される定量元素固有の波長の光の強度を測定している。工程(2)においては、工程(1)で測定した全ての定量元素固有の波長の光の強度の総和を積算する。
この測定元素固有の波長の光の強度の総和は、測定試料中に含まれる定量元素の全原子から放射された元素固有の波長の光の強度を意味する。
【0024】
次に、工程(3)について説明する。
工程(3)においては、工程(2)において求められた定量元素の波長の光の強度の積算値に基づいて、測定試料中に含まれる定量元素の量を決定する。
測定試料中に含まれる定量元素の量の決定は、例えば、予め定量元素の含有量が既知の試料に対して工程(1)、(2)を行って作成した検量線を利用して行うことができる。
また、元素固有の波長の光の強度と元素量との間の相関関係が既知である場合には、その相関関係を利用して定量を行ってもよい。
【0025】
次に、工程(4)について説明する。
本発明においては、固体試料が、核と該核を被覆するコーティング層とからなる顆粒剤であって、コーティング層中の定量元素の濃度(g/cm3)が既知の場合には、さらに工程(4)を設け、工程(3)で定量した定量元素の量と核の平均粒径に基づいて、コーティング層の平均厚さ(μm)を算出することもできる。
【0026】
次に、本願発明の定量分析装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本願発明の定量分析装置10の一例の概略図である。
図1において、照射手段(A)に該当するレーザー光源1から照射されたレーザーパルス光は、レンズ2によって固体試料3上に集光される。固体試料3は、集光されたレーザーパルス光によってブレークダウンし、プラズマ状態に励起されてプラズマ発光する。この固体試料3から放射されたプラズマ発光は、分光手段(B)に該当する分光器4によって分光され、光検出器5によって電気信号に変換される。この電気信号は信号処理装置6で処理され、信号処理装置6内の測定手段(C)(図示せず)により、定量元素固有の波長の光の強度が測定される。
信号処理装置6内の判断手段(D)(図示せず)により、電気信号がさらに解析され、「所定の条件」が満たされていない、すなわち、例えば、固体試料3から放射された定量元素固有の波長の光の強度が0ではなく、固体試料3が完全にブレークダウンされていないと判断された場合には、再び、レーザー光源1はレーザーパルス光を照射し、前述の工程(1)を繰り返して固体試料3をブレークダウンさせ、測定手段(C)により固体試料3から放射された定量元素固有の波長の光の強度が測定される。
信号処理装置6内の判断手段(D)(図示せず)により、「所定の条件」が満たされていると判断された場合には、信号処理装置6内の積算手段(E)(図示せず)により、それまでに測定した定量元素固有の波長の光の強度が積算される。
このようにして得られた波長の光の強度の積算値に基づいて、信号処理装置6内の元素量決定手段(F)(図示せず)により、固体試料3の中に存在していた定量元素の量が決定される。
【0027】
図2は、前述の電気信号を受けた信号処理装置6の機能ブロック図を示す。なお、図2では、信号処理装置6に関連する部分のみを概念的に示し、これらの機能はコンピュータにより実行される。
本発明の信号処理装置6の測定手段(C)は、光検出器5によって変換された電気信号を受信し、定量元素固有の波長の光の強度を測定する。次に、測定手段(C)と接続された判断手段(D)において光強度を解析し、「所定の条件」が満たされていない、すなわち、固体試料3が完全にブレークダウンされていないと判断された場合には、再び、レーザー光源1からレーザーパルス光を固体試料3に照射し、前述の工程(1)を繰り返して、固体試料3をブレークダウンさせ、測定手段(C)により固体試料3から放射された定量元素固有の波長の光の強度が測定される。
一方、信号処理装置6内の判断手段(D)により、「所定の条件」が満たされていると判断された場合には、信号処理装置6内の積算手段(E)により、それまで測定された定量元素固有の波長の光の強度が積算される。
このようにして得られた波長の光の強度の積算値に基づいて、信号処理装置6の元素量決定手段(F)により、固体試料3の中に存在していた定量元素の量が決定される。なお、定量決定手段(F)には、予め測定した定量元素の含有量が既知の試料を利用して作成した検量線の情報を保存する記憶手段(G)を接続していることが好ましい。こうすることで、検量線を基準として、実測された定量元素固有の波長の光の強度の積算値から、定量元素の量を容易に算出することが可能となる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を用いて本発明を説明する。
1.標準試料の作成
ワースタータイプの流動層装置(パウレック社製、GPCG−60)を用いて、球形マンニトールに主薬と結合剤の溶液を噴霧して、核(素顆粒)を調製した。このようにして調製した核(素顆粒)に、アンダーコート溶液をコーティングし、アンダーコート顆粒を得た。さらにそのアンダーコート顆粒に、腸溶コーティング液(Ti濃度0.04g/g)をコーティングし、アンダーコート顆粒の表面を腸溶コーティング層で被覆した。コーティング時間を調整することにより、腸溶コーティング層の量が異なる複数の標準試料用顆粒剤1〜5を得た。
標準試料用顆粒剤1〜5の平均Ti濃度は、それぞれ、0.62mg/g、1.25mg/g、1.87mg/g、2.49mg/g、3.11mg/gとなった。
2.サンプルの調製
1.で用意したTi濃度既知の標準試料用顆粒剤1〜5を、200mgづつ計量した。これらを、それぞれ、接着テーフ゜上の測定用パルス光の照射領域内に顆粒が重ならないように並べて固定し、測定用サンプルとした。
【0029】
3.バックグラウンド値の測定
サンプルの調製の際に用いた接着テープのみをLIBS装置(PharmaLaser200、Pharma Laser社製)の試料台に載置し、レーザー強度:50mJ、露光時間:0.5μ秒でレーザーパルス光を1回照射した。サンプルから発生したプラズマ発光を分光器で分光し、Ti固有の波長(512.13nm)の光の強度を測定した。
ここで測定したTi固有の波長の光の強度を、バックグラウンド値Ibとした。
【0030】
4.標準試料中のTiの定量
2.で調製した標準試料用顆粒剤のサンプルに、3.と同様にしてレーザーパルス光を複数ショット照射し、各ショットにより放射されたTi固有の波長の光の強度を測定した。
分光前のプラズマ発光のスペクトルを図3に、各ショットにより放射されたTi固有の波長(512.13nm)の光の強度を図4に示す。
図4において、横軸はレーザーパルス光のショット数n(ショット目)、縦軸は各ショットにより放射されたTi固有の波長の光の強度(In−Ib)である。また、◆、■、●、▲、×は、それぞれ、標準試料用顆粒剤1〜5についての測定値を示す。図4に示すように、Ti固有の波長の光の強度(In−Ib)は、レーザーパルス光のショット毎に変動するが、最終的には0となった。
そこで、In−Ib=0となるまでに測定されたTi波長の光の強度(In−Ib)を積算し、これを各標準試料用顆粒剤1〜5のTi固有の波長の光の強度の積算値とした。
【0031】
5.検量線の作成
横軸をTi量(mg)、縦軸をTi固有の波長の光の強度の積算値として、4で得られた値をプロットし、検量線を作成した。検量線を図5に示す。
【0032】
標準試料におけるTi固有の波長の光の強度の積算値とTi量との間の相関係数は0.9484であり、良好な相関関係が見られることが確認できた。これにより、本願発明によれば、LIBS法を利用して、固体試料中の定量元素の量を定量できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明の定量方法は、各種固体試料に含まれる元素の定量に用いることができる。
また、本願発明の定量方法によれば、コーティング層により被覆された顆粒剤の製造途中で、コーティング量をリアルタイムに測定することが可能であるので、このような顆粒剤の製造条件の制御にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明の定量装置の具体例の概略図である。
【図2】本願発明の定量装置の具体例の機能ブロック図である。
【図3】実施例で測定した標準試料のプラズマ発光スペクトルである。
【図4】実施例における、パルス光のショット数n(ショット目)と、各ショットにより標準試料から放射されたTi固有の波長の光の強度の関係を示す図である。
【図5】実施例で作成した検量線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜(3)をこの順で含む、固体試料に含まれる元素の定量方法:
(1)所定の条件が満たされるまで、以下の工程a、bを繰り返す工程、
工程a.固体試料にレーザーパルス光を照射する工程、
工程b.レーザーパルス光の照射により固体試料から発生したプラズマ発光を分光し、定量元素固有の波長の光の強度を測定する工程、
(2)工程(1)の工程bにおいて測定した定量元素固有の波長の光の強度の積算値を求める工程、
(3)工程(2)で求められた定量元素固有の波長の光の強度の積算値に基づいて、固体試料に含まれる定量元素の量を決定する工程。
【請求項2】
工程(1)における所定の条件が、工程bにおいて測定した定量元素固有の波長の光の強度が予め設定した値以下又は未満であることである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(3)における定量元素の量の決定が、定量元素の含有量が既知の試料を用いて作成した検量線を利用して行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体試料が、粒子である請求項1から3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子が、核と、該核の表面を覆うコーティング層とからなる顆粒剤である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記定量元素が、前記コーティング層に含まれる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに以下の工程(4)を含む請求項6に記載の方法:
(4)工程(3)において定量された定量元素の量に基づいて、前記コーティング層の平均厚さを算出する工程。
【請求項8】
以下の(A)〜(F)の手段を有する、固体試料に含まれる元素の定量装置:
固体試料にレーザーパルス光を照射する照射手段(A)、
照射手段(A)からのレーザーパルス光の照射により固体試料から発生したプラズマ発光を分光する分光手段(B)、
分光手段(B)により分光された定量元素固有の波長の光の強度を測定する測定手段(C)、
所定の条件が満たされているかどうかを判断する判断手段(D)、
判断手段(D)の判断結果に基づいて、測定手段(C)により測定された固体試料から放射された定量元素固有の波長の光の強度の積算値を求める積算手段(E)、
積算手段(E)により求められた定量元素固有の波長の光の強度の積算値に基づいて、固体試料に含まれる定量元素の量を決定する元素量決定手段(F)。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−145243(P2009−145243A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323898(P2007−323898)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】