説明

レーザ光源駆動装置、レーザ発振器及びレーザ加工装置

【課題】レーザ光源からの光を短パルス又は長パルスのいずれかに切り換えることができるレーザ光源駆動装置、レーザ発振器及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】第1電源スイッチ20がオン、第2電源スイッチ23がオフの状況下で、スイッチング素子22がオン/オフされると、CR回路27(コンデンサ26)が充放電されることにより、CR回路27を電源としてレーザダイオード7がレーザ光を短パルスで出力する。一方、第1電源スイッチ20がオフ、第2電源スイッチ23がオンの状況下で、スイッチング素子22がオン/オフされると、主電源+Vを電源としてレーザダイオード7がレーザ光を長パルスで出力する。このため、レーザ光のパルス幅を、短パルス又は長パルスのいずれかに切り換えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源を駆動するレーザ光源駆動装置、レーザ発振器及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザマーキング装置の分野においては、必要とするレーザ出力の種類が多岐に亘るため、種光源となるレーザダイオードを高速駆動して、レーザダイオードの出力光(種レーザ光)を、所望の短パルスでも出力したいニーズがある。このため、近年、レーザダイオードを高速駆動するレーザダイオードドライバが種々開発されている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
しかし、特許文献1,2のレーザダイオードドライバは、例えば集積回路(IC:Integrated Circuit)の内部で構成する必要があり、専用ICを自社で設計するか、或いは専用ICを他社から購入する必要が生じ、回路構成が複雑になったり、部品コストが高くなったりする問題に繋がる。また、集積回路を使用しない構成とすると、例えば特殊用途の電子デバイス、例えばシリコンではないGaAsやGaNをといった化合物半導体デバイスを使用する必要が生じ、この場合も回路構成の複雑化、部品コスト増加の問題に懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−111118号公報
【特許文献2】特開2003−17800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば図9に、専用ICを使用しないレーザダイオードドライバ81を示す。この回路構成の場合、汎用IC82を使用するので、部品コストは安価で済む。しかし、この種のレーザダイオードドライバにおいては、種レーザ光のパルス幅を短パルス又は長パルスで切り換えたいニーズがあるが、図9の回路構成の場合は、汎用IC82の能力の限界から、高速にレーザダイオードを駆動できない問題が生じる。例えば、パルス幅を10nsとしたいところ、現実には20〜200ns程度が限界となってしまう。
【0006】
そこで、例えば専用ICを使用せず、レーザダイオードの高速駆動を求めると、図10に示すような、コンデンサ83の充放電を利用したレーザダイオードドライバ84も一対応案としてある。しかし、この回路構成の場合は、光のパルス幅はCRの時定数で決まるので、種レーザ光を短パルス(約10ns)で出力可能となるものの、逆に長いパルスが矩形にならず、所望の波形を得ることができないので、パルス幅を長くすることが困難な現状があった。
【0007】
本発明の目的は、レーザ光源からの光を短パルス又は長パルスのいずれかに切り換えることができるレーザ光源駆動装置、レーザ発振器及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、レーザ光源をパルス発振させて、当該レーザ光源からパルス状の光を出射させるレーザ光源駆動装置において、主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、前記スイッチング素子のオン/オフを切り換えることにより、前記した各モード下で前記光を短パルス又は長パルスで出力させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の構成によれば、充放電素子の充放電を電源としてレーザ光源をパルス発振させれば、レーザ光源から少なくとも短パルスのレーザ光を出力させることが可能となる。そして、このようにレーザ光源が短パルスの光を出力できることを利用して、レーザ光源駆動装置の駆動モードを、光を短パルスで出力可能な第1モードと、光を長パルスで出力可能な第2モードとに切り換え可能とする。よって、使用状況に合わせて、レーザ光のパルス幅を、短パルス又は長パルスのいずれかに、適宜切り換えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記モード設定手段は、前記電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を有効とすることにより、前記レーザ光源の駆動モードを前記第1モードに設定し、前記電源スイッチ手段のスイッチ状態を他に切り換えて前記充放電素子の充放電動作を無効とすることにより、前記駆動モードを前記第2モードに設定し、前記制御手段は、前記第1モード時に前記充放電素子が有効の状態下で、前記スイッチング素子のオン/オフを交互に切り換えることにより、前記充放電素子に充放電を繰り返させて、当該充放電素子を電源に前記光を短パルスで出力させ、前記第2モード時に前記充放電素子が無効の状態下で、前記スイッチング素子のオンオフを交互に切り換えることにより、前記主電源を電源に前記光を長パルスで出力させることを要旨とする。この構成によれば、第1モードは、充放電素子を電源にレーザ光源を駆動させるモードであり、第2モードは、主電源を電源にレーザ光源を駆動させるモードとなっている。このため、第1モード及び第2モードのいずれにおいても、矩形波相当のパルスにてレーザ光源を発振させることが可能となるので、ピークパワーの揃った質の高いレーザを出力させることが可能となる。なお、ピークパワーは加工対象物を破壊する閾値に相当し、これが揃っていると質の高い加工が可能な利点に繋がる。
【0011】
本発明では、前記充放電素子は、コンデンサ及び抵抗を有するCR回路からなり、前記抵抗は、前記主電源のバイアス抵抗であることを要旨とする。この構成によれば、CR回路の抵抗成分と主電源のバイアス抵抗とを、それぞれ別々に設ける必要がなくなるので、回路構成の簡素化や部品コスト低減等に効果が高い。
【0012】
本発明では、パルス幅を入力する入力手段を備え、前記制御手段は、前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに前記第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ前記入力手段で入力されたパルス幅で出力させることを要旨とする。この構成によれば、使用者が入力手段を用いてパルス幅を入力することにより、任意にパルス幅を設定することが可能となる。
【0013】
本発明では、レーザ光源をパルス発振させて該レーザ光源からパルス状の光を出力させ、当該光を増幅器にて増幅して出射するレーザ発振器において、主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、パルス幅を入力する入力手段と、前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ入力手段で入力されたパルス幅で出力させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0014】
本発明では、レーザ光源をパルス発振させて該レーザ光源からパルス状の光を出力させ、当該光を増幅器にて増幅しつつ、当該増幅した光をヘッドにて走査しながらワークに出射するレーザ加工装置において、主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、パルス幅を入力する入力手段と、前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ入力手段で入力されたパルス幅で出力させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザ光源からの光を短パルス又は長パルスのいずれかに切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のレーザマーキング装置のブロック図。
【図2】各種光の出力波形を示すタイミングチャート。
【図3】レーザ光源駆動装置が短パルスモードのときの回路図であり、(a)がコンデンサ充電時の回路図、(b)がコンデンサ放電時の回路図。
【図4】レーザ光源駆動装置が長パルスモードのときの回路図。
【図5】第2実施形態のレーザ光源駆動装置が短パルスモードのときの回路図であり、(a)がコンデンサ充電時の回路図、(b)がコンデンサ放電時の回路図。
【図6】レーザ光源駆動装置が長パルスモードのときの回路図。
【図7】第3実施形態のレーザ光源駆動装置が短パルスモードのときの回路図であり、(a)がコンデンサ充電時の回路図、(b)がコンデンサ放電時の回路図。
【図8】レーザ光源駆動装置が長パルスモードのときの回路図。
【図9】従来のレーザダイオードドライバの回路図。
【図10】他の従来のレーザダイオードドライバの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したレーザ光源駆動装置の第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、レーザマーキング装置1には、ワーク2に照射するレーザ光のソースを生成するレーザ発振器3と、レーザ発振器3から出射されたレーザ光を調光してワーク2に走査しながら照射するヘッド4とが設けられている。また、レーザマーキング装置1には、レーザマーキング装置1の動作を制御するコントローラ5と、操作パネルとなるコンソール6とが設けられている。なお、レーザマーキング装置1がレーザ加工装置に相当し、ヘッド4が光走査部に相当し、コンソール6が入力手段に相当する。
【0019】
レーザ発振器3には、レーザ出力の種光源となるレーザダイオード(LD:Laser Diode)7と、レーザダイオード7から出力された光(以降、種レーザ光Saと言う)を増幅する増幅器8とが設けられている。レーザダイオード7は、レーザ発振器3内のドライバ9を介してコントローラ5に接続されている。コントローラ5は、ドライバ9を駆動制御することにより、レーザダイオード7をパルス発振(間欠駆動)させて、レーザダイオード7から図2に示すパルス状の種レーザ光Saを出力させる。なお、レーザダイオード7がレーザ光源に相当する。
【0020】
図1に示すように、増幅器8には、光を単一方向のみに通す光アイソレータ10と、レーザダイオード7の種レーザ光Saを増幅させる励起半導体レーザ11とが設けられている。励起半導体レーザ11は、増幅器8内のドライバ12を介してコントローラ5に接続されている。コントローラ5は、ドライバ12を駆動制御することにより、励起半導体レーザ11から図2に示す一定強度の光(以降、励起レーザ光Sbと記す)を出力させる。
【0021】
図1に示すように、増幅器8には、種レーザ光Saと励起レーザ光Sbとを結合する多重器13が設けられている。多重器13は、種レーザ光Saを励起レーザ光Sbに合波することにより、種レーザ光Saを励起状態にする。また、多重器13には、多重器13にて合波した光を、誘導放出にて光増幅するファイバ(希土類ドープ光ファイバ)14が接続されている。ファイバ14は、図2に示す増幅した光(以降、増幅光Scと記す)をヘッド4に出力する。そして、ヘッド4は、この増幅光Scを調光し、調光後のレーザ光を走査しながらワーク2に照射して、ワーク2を加工する。
【0022】
図1に示すように、コンソール6には、例えば液晶画面等からなる表示器15が設けられている。表示器15には、例えばレーザマーキング装置1の動作モードを設定する各種設定画面や、レーザマーキング装置1の現在動作状態を表示する動作画面などが表示される。また、コンソール6には、レーザマーキング装置1の各種動作態様を設定する際に操作する操作部16が設けられている。操作部16には、例えば電源ボタン、テンキー、モード入力ボタンなどがある。
【0023】
本例のレーザマーキング装置1には、種レーザ光Saを短パルス(約10ns)で出力可能とするとともに、種レーザ光Saを長パルスで出力するとき、種レーザ光Saを可変で出力可能とするレーザ光源駆動装置(レーザダイオードドライバ)17が設けられている。本例の場合は、レーザダイオード7の駆動モードを、種レーザ光Saの1パルスのパルス幅を短く(約5ns)して出力する短パルスモード(図3の状態)と、種レーザ光Saの1パルスのパルス幅を長く(約20〜200ns)して出力する長パルスモード(図4の状態)とでレーザ出力が可能であり、さらに長パルスモードのとき、種レーザ光Saのパルス幅を可変可能である。また、本例のレーザ光源駆動装置17は、ディスクリート部品の組み合わせにより、安価な素子にて構築されている。
【0024】
本例のレーザマーキング装置1では、コンソール6を操作して直にレーザ出力のパルス幅を入力することにより、レーザ出力のパルス幅を選択設定可能である。本例の場合、短めのパルスが入力されたとき、つまり入力パルス幅が閾値未満のときの動作モードを短パルスモードと記し、長めのパルスが入力されたとき、つまり入力パルス幅が閾値以上のときの動作モードを総じて長パルスモードと記す。
【0025】
図3及び図4に示すように、ドライバ9には、レーザダイオード7に流す電流経路を切り換える電流経路切換回路19が設けられている。電流経路切換回路19を以下に詳述すると、電流経路切換回路19には、第1電源スイッチ20、抵抗21及びスイッチング素子22の直列回路が設けられ、抵抗21及びスイッチング素子22の間の中点P1が、レーザダイオード7のカソード端子に接続されている。なお、第1電源スイッチ20が電源スイッチ手段を構成する。
【0026】
第1電源スイッチ20は、主電源+Vに接続されるとともに、レーザマーキング装置1の動作モードを短パルスモードにするときにオンされるスイッチとして使用されている。抵抗21は、第1電源スイッチ20側の電圧バイアス用である。また、スイッチング素子22は、コントローラ5に接続されるとともに、コントローラ5にてオン/オフ制御される。つまり、コントローラ5がレーザダイオード7をスイッチング制御することにより、レーザダイオード7からパルス状の種レーザ光Saが出力される。
【0027】
電流経路切換回路19には、第2電源スイッチ23及び抵抗24の直列回路が設けられ、抵抗24の開放端がレーザダイオード7のアノード端子に接続されている。第2電源スイッチ23は、主電源+Vに接続されるとともに、レーザマーキング装置1の動作モードを長パルスモードにするときにオンされるスイッチとして使用されている。抵抗24は、第2電源スイッチ23側の電圧バイアス用であり、長パルスモードの制限電流値により値が決まる。また、レーザダイオード7のアノード端子とカソード端子との間には、逆流防止用のダイオード25が接続されている。ダイオード25は、レーザダイオード7に対して、並列かつ逆向きに接続されている。なお、第2電源スイッチ23が電源スイッチ手段を構成し、抵抗24が抵抗成分及びバイアス成分を構成する。
【0028】
第2電源スイッチ23には、主電源+Vの電圧を充放電可能なコンデンサ26が並列接続されている。本例のコンデンサ26は、抵抗24とでCR回路27を構築し、動作モードが短パルスモードのとき、レーザダイオード7の電源となる。つまり、図3に示すように、短パルスモードのとき、スイッチング素子22のオン/オフの切り換えにより、CR回路27を短時間の間に充放電させて、このとき生ずる電荷を電源にレーザダイオード7をパルス発振させる。コンデンサ26は、レーザダイオード7に対し並列及び逆向きに接続されたダイオード25により、短パルスモード時における充放電が可能である。また、コンデンサ26は、抵抗24の値が決まることにより必要となってくる時定数から決まる容量値に設定される。抵抗24は、第2電源スイッチ23のバイアス用とCR回路27用とで共用されている。CR回路27を電源とするとき、レーザダイオード7のパルス幅は、CR回路27の時定数τにて決まる。なお、CR回路27が充放電素子に相当する。
【0029】
図1に示すように、コントローラ5には、レーザマーキング装置1の動作モードを、コンソール6で入力されたパルス幅に応じたモードに設定するモード設定部28が設けられている。モード設定部28は、コンソール6で入力されたパルス幅の入力データを取り込み、このデータを基に動作モードを設定する。本例の場合、便宜上、パルス幅として短パルス(約5ns)が入力された際の動作モードを短パルスモードと記し、パルス幅として長パルス(約20〜200nsの中の1値)が入力された際の動作モードを総じて長パルスモードと記す。なお、モード設定部28がモード設定手段を構成する。
【0030】
モード設定部28は、図3に示すように、第1電源スイッチ20をオンし、第2電源スイッチ23をオフすることにより、動作モードを短パルスモードに設定する。このとき、CR回路27が有効となり、CR回路27がレーザダイオード7の電源として動作可能となる。一方、モード設定部28は、図4に示すように、第1電源スイッチ20をオフし、第2電源スイッチ23をオンすることにより、動作モードを長パルスモードに設定する。このとき、CR回路27が無効となり、CR回路27が電源として働かず、主電源+Vがレーザダイオード7の電源となる。
【0031】
コントローラ5には、スイッチング素子22のオン/オフの切り換えを制御するスイッチング制御部29が設けられている。スイッチング制御部29は、短パルスモードのとき、スイッチング素子22のオン/オフ切り換えにより、CR回路27の時定数τにてコンデンサ26を充放電させて、コンデンサ26の電荷を電源にレーザダイオード7をパルス発振させる。また、スイッチング制御部29は、長パルスモードのとき、スイッチング素子22のオン/オフの切り換えにより、第2電源スイッチ23側の主電源+Vを電源にレーザダイオード7をパルス発振させる。長パルスモードのとき、スイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン/オフの切り換えタイミングを変更することにより、長パルスモードにおいてレーザのパルス幅を切り換え可能である。なお、スイッチング制御部29が制御手段に相当する。
【0032】
次に、本例のレーザ光源駆動装置17の動作を、図3及び図4を用いて説明する。
例えば、コンソール6の操作部16でレーザ光のパルスとして閾値未満の短パルスが入力されたとする。この短パルスモード時、図3に示すように、モード設定部28は、第1電源スイッチ20をオンし、第2電源スイッチ23をオフする。これにより、主電源+VによるCR回路27の充放電動作が有効となる。つまり、コンデンサ26に主電源+Vの電圧を充電可能で、かつこの充電した電荷を放電可能な状態となり、CR回路27がレーザダイオード7の電源として機能する。
【0033】
そして、スイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン/オフを切り換えることにより、コンデンサ26を充放電させる。このとき、図3(a)に示すように、スイッチング素子22がオンされると、CR回路27及びレーザダイオード7に充電電流Ichが流れ、レーザダイオード7が駆動する。また、図3(b)に示すように、スイッチング素子22がオフされると、ダイオード25及びCR回路27に放電電流Idcが流れる。そして、スイッチング素子22のオン/オフ切り換えを繰り返し行うことにより、コンデンサ26の充放電が繰り返され、充放電電流によってレーザダイオード7から短パルス(パルス幅:約5ns)の種レーザ光Saが出射される。
【0034】
この短パルスモード時、スイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン/オフを、任意の値にて切り換える。即ち、短パルスモード時のスイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン時間を任意値(例えば約200ns)とし、次にオンさせるタイミングを繰り返し周期としてオン/オフを繰り返す。これにより、レーザダイオード7から短パルス(パルス幅:約5ns)のレーザ光が出力される。
【0035】
続いて、例えばコンソール6の操作部16でレーザ光のパルスとして閾値以上の長パルスの1値が入力されたとする。この長パルスモード時、図4に示すように、モード設定部28は、第1電源スイッチ20をオフし、第2電源スイッチ23をオンする。これにより、CR回路27の充放電動作が無効となる。つまり、コンデンサ26が機能せず、コンデンサ26に充放電の動作をとらせることができなくなる。
【0036】
この長パルスモード時、スイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン/オフを、入力パルスの値に応じたタイミングで切り換える。即ち、長パルスモード時のスイッチング制御部29は、スイッチング素子22のオン時間をパルス幅とし、次にオンさせる対イングを繰り返し周期としてオン/オフを繰り返す。
【0037】
これにより、主電源+Vを電源にして、レーザダイオード7から長パルス(パルス幅:20〜200ns)の種レーザ光Saが出射される。つまり、スイッチング素子22がオンされたとき、レーザダイオード7に駆動電流Ivcが流れ、レーザダイオード7が駆動するとともに、スイッチング素子22がオフされたとき、レーザダイオード7に駆動電流Ivcが流れず、この動作が繰り返される。これにより、レーザダイオード7から長パルス(パルス幅:20〜200nsの1値)のレーザ光が出力される。
【0038】
以上により、本例においては、レーザダイオード7の電源として機能するCR回路27(コンデンサ26)を回路内に設け、スイッチング素子22をオン/オフすることにより、コンデンサ26の充電/放電を切り換えて充放電電流をレーザダイオード7に流し、レーザダイオード7をパルス発振可能とする。そして、この場合、レーザダイオード7のレーザ光のパルス幅は、CR回路27の時定数τという時間間隔にて決まるため、レーザ光を短パルスにて出力することが可能となる。
【0039】
そして、本例の場合、レーザ光源駆動装置17の駆動モードを、コンデンサ26の電荷を電源にレーザダイオード7をパルス発振させて短パルスのレーザ光を出力させる短パルスモードと、主電源+Vを電源にレーザダイオード7をパルス発振させて長パルスのレーザ光を出力させる長パルスモードとのいずれかに切り換え可能とした。このため、レーザダイオード7の光を、短パルス又は長パルスのいずれかに自由に設定することが可能となる。
【0040】
また、長パルスモードのとき、スイッチング素子22のオン/オフの切り換え時間(切り換えタイミング)を変更することにより、長パルスモードにおいてレーザ光のパルス幅を、20〜200nsの範囲の間で可変可能とした。このため、長パルスモードの中でも、レーザ光のパルス幅を、種々の値に切り換えることが可能となるので、使用状況に合わせて、レーザ光を所望のパルス幅に設定することも可能となる。
【0041】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)レーザ光源駆動装置17の駆動モードを、コンデンサ26を電源にスイッチング素子22のオン/オフによりレーザダイオード7を短パルス幅でパルス発振させる短パルスモードと、主電源+Vを電源にスイッチング素子22のオン/オフによりレーザダイオード7を長パルス幅でパルス発振させる長パルスモードとのいずれかに切り換え可能とした。よって、レーザ光のパルス幅を、短パルス又は長パルスのいずれかに、適宜自由に切り換えることができる。
【0042】
(2)CR回路27のコンデンサ26を電源にレーザダイオード7をパルス発振させるとき、レーザ光のパルスは、CR回路27の時定数τに準じた波形をとるため、立ち上がりが急峻で、出力が徐々に低下していく波形をとる。ところで、レーザ光を加工用途に使用するとき、レーザ光のパルス形状がピークパワーに相当するが、このピークパワーは加工品質に直結するので、一定が望ましい。本例の場合、短パルスモードのとき、CR回路27の時定数τから決まる一点が急峻に高い略三角状のパルスでレーザダイオード7をパルス発振させているが、短パルスモードのときに必要なパルスは10ns程度と非常に短いため、CR回路27に準ずるパルス波形でも、これを矩形に近い波形として扱うことができる。よって、短パルスモードのとき、CR回路27を電源にレーザダイオード7を駆動させても何ら問題はない。一方、長パルスモードのときには、パルス幅が長い矩形波が必要となるが、長パルスモード時は主電源+Vを電源にレーザダイオード7をパルス発振させるので、これに対応することができる。このため、短パルスモード及び長パルスモードのいずれにおいても、矩形波相当のパルスにてレーザダイオード7をパルス発振させることが可能となるので、ピークパワーの揃ったレーザとすることができる。ピークパワーは加工対象物を破壊する閾値に相当するので、このようにピークパワーを揃えることができれば、質の高い加工を行うことができる利点に繋がる。
【0043】
(3)長パルスモードのとき、スイッチング素子22のオン/オフの切り換えタイミングを変更することにより、1つのモード内において更にパルス幅を切り換えることができる。よって、使用状況に応じて、種々のパルス幅のレーザ光を、適宜出力することができる。また、短パルスモードのとき、CR回路27の時定数を変更すれば、短パルスモードにおいてもパルス幅を所望値に適宜変更することができる。
【0044】
(4)CR回路27の抵抗24を、CR回路27の抵抗成分と主電源+Vのバイアス抵抗とで共用した。このため、CR回路27の抵抗成分と主電源+Vのバイアス抵抗とを、それぞれ別々に設ける必要がなくなるので、回路構成の簡素化や部品コスト低減等に効果が高くなる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5及び図6に従って説明する。なお、本例は、電流経路切換回路19の回路構成を他の構成に変更した実施例であって、基本的な部分については第1実施形態と同じである。よって、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図5及び図6に示すように、レーザダイオード7のアノード端子とグランドとの間には、CR回路27及び第3電源スイッチ30が接続されている。レーザダイオード7及びコンデンサ26の中点P2と第2電源スイッチ23との間には、第2電源スイッチ23の電源バイアス専用の抵抗31が接続されている。また、CR回路27の抵抗32は、CR回路27の専用抵抗となっている。なお、第3電源スイッチ30が電源スイッチ手段を構成し、抵抗32がCR回路専用の抵抗成分に相当する。
【0047】
短パルスモードのとき、図5に示すように、第1電源スイッチ20及び第3電源スイッチ30をオンし、第2電源スイッチ23をオフする。そして、この状態で、図5(a)に示すように、スイッチング素子22がオフされると、レーザダイオード7に充電電流Ichが流れ、逆に図5(b)に示すように、スイッチング素子22がオンされると、レーザダイオード7に放電電流Idcが流れる。よって、スイッチング素子22のオン/オフを繰り返すことにより、レーザダイオード7に充放電電流を流し、レーザダイオード7を短パルス(約5ns)にてパルス発振させる。
【0048】
また、長パルスモードのとき、図6に示すように、第1電源スイッチ20及び第3電源スイッチ30をオフし、第2電源スイッチ23をオンする。そして、この状態で、同図に示すように、スイッチング素子22のオン/オフを繰り返し行い、レーザダイオード7に駆動電流Ivcを間欠的に流すことにより、レーザダイオード7を長パルス(20〜200ns内の1値)にてパルス発振させる。
【0049】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(3)に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)CR回路27の抵抗32と、主電源+Vの電源バイアス用の抵抗31とを、それぞれ別々の部品として設けたので、第2電源スイッチ23側の主電源+Vや、抵抗31,32の値を簡単に設定することができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図7及び図8に従って説明する。なお、本例も、第1実施形態の電流経路切換回路19の回路構成を他の構成に変更した実施例であって、異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図7及び図8に示すように、CR回路27は、抵抗21及びスイッチング素子22の中点P1と、レーザダイオード7のカソード端子との間に接続されている。また、第2電源スイッチ23は、CR回路27のコンデンサ26に並列接続されている。
【0052】
短パルスモードのとき、図7に示すように、第1電源スイッチ20をオンし、第2電源スイッチ23をオフする。そして、この状態で、図7(a)に示すように、スイッチング素子22がオフされると、レーザダイオード7に充電電流Ichが流れ、逆に図7(b)に示すように、スイッチング素子22がオンされると、レーザダイオード7に放電電流Idcが流れる。よって、スイッチング素子22のオン/オフを繰り返すことにより、レーザダイオード7に充放電電流を流し、レーザダイオード7を短パルス(約5ns)にてパルス発振させる。
【0053】
また、長パルスモードのとき、図8に示すように、第1電源スイッチ20をオフし、第2電源スイッチ23をオンする。そして、この状態で、同図に示すように、スイッチング素子22のオン/オフを繰り返し行い、レーザダイオード7に駆動電流Ivcを間欠的に流すことにより、レーザダイオード7を長パルス(20〜200ns内の1値)にてパルス発振させる。
【0054】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(4)に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)第1実施形態や第2実施形態以外の回路構成であっても、レーザ光のパルス幅を短パルス又は長パルスのいずれかに切り換えることができる。
【0055】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、充放電素子は、CR回路27に限定されない。例えば、半導体デバイス(トランジスタ等)の寄生素子として存在する容量(コンデンサ)でもよい。
【0056】
・各実施形態において、スイッチング素子22は、種々のトランジスタが使用可能である。また、スイッチング素子22は、トランジスタに限定されず、他の素子を使用してもよい。
【0057】
・各実施形態において、増幅器8は、1段に限定されない。例えば増幅器を前段及び後段に各々設けて、複数段としてもよい。また、励起半導体レーザ11も1つに限定されず、複数設けてもよい。
【0058】
・各実施形態において、第1電源スイッチ20が繋がる電源と、第2電源スイッチ23が繋がる電源とは、同じ値(+V)をとることに限定されず、これらが異なる値をとってもよい。
【0059】
・各実施形態において、コンデンサ26を充放電させる素子は、実施形態に述べたダイオード25に限定されず、例えばスイッチング素子など、電流制限が可能な素子であればよい。
【0060】
・各実施形態において、レーザ光源駆動装置17は、本例で述べたレーザマーキング装置1に搭載されることに限定されず、種々のレーザ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…レーザ加工装置としてのレーザマーキング装置、2…ワーク、3…レーザ発振器、4…光走査部としてのヘッド、6…入力手段としてのコンソール、7…レーザ光源としてのレーザダイオード、8…増幅器、17…レーザ光源駆動装置、20…電源スイッチ手段を構成する第1電源スイッチ、22…スイッチング素子、23…電源スイッチ手段を構成する第2電源スイッチ、24…抵抗成分及びバイアス成分を構成する抵抗24、26…コンデンサ、25…モード設定手段を構成するダイオード、27…充放電素子としてのCR回路、28…モード設定手段を構成するモード設定部、29…制御手段としてのスイッチング制御部、30…電源スイッチ手段を構成する第3電源スイッチ、32…CR回路専用の抵抗成分としての抵抗、+V…主電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源をパルス発振させて、当該レーザ光源からパルス状の光を出射させるレーザ光源駆動装置において、
主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、
前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、
電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、
前記した各モード下で前記スイッチング素子のオン/オフを切り換えることにより、前記光を短パルス又は長パルスで出力させる制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ光源駆動装置。
【請求項2】
前記モード設定手段は、前記電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を有効とすることにより、前記レーザ光源の駆動モードを前記第1モードに設定し、前記電源スイッチ手段のスイッチ状態を他に切り換えて前記充放電素子の充放電動作を無効とすることにより、前記駆動モードを前記第2モードに設定し、
前記制御手段は、前記第1モード時に前記充放電素子が有効の状態下で、前記スイッチング素子のオン/オフを交互に切り換えることにより、前記充放電素子に充放電を繰り返させて、当該充放電素子を電源に前記光を短パルスで出力させ、前記第2モード時に前記充放電素子が無効の状態下で、前記スイッチング素子のオン/オフを交互に切り換えることにより、前記主電源を電源に前記光を長パルスで出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源駆動装置。
【請求項3】
前記充放電素子は、コンデンサ及び抵抗を有するCR回路からなり、
前記抵抗は、前記主電源のバイアス抵抗である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ光源駆動装置。
【請求項4】
パルス幅を入力する入力手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに前記第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ前記入力手段で入力されたパルス幅で出力させる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のレーザ光源駆動装置。
【請求項5】
レーザ光源をパルス発振させて該レーザ光源からパルス状の光を出力させ、当該光を増幅器にて増幅して出射するレーザ発振器において、
主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、
前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、
電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、
パルス幅を入力する入力手段と、
前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ入力手段で入力されたパルス幅で出力させる制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ発振器。
【請求項6】
レーザ光源をパルス発振させて該レーザ光源からパルス状の光を出力させ、当該光を増幅器にて増幅しつつ、当該増幅した光を光走査部にて走査しながらワークに出射するレーザ加工装置において、
主電源の電荷を充放電可能な充放電素子と、
前記レーザ光源をオン/オフさせるスイッチング素子と、
電源スイッチ手段のスイッチ状態を切り換えて前記充放電素子の充放電動作を制御することにより、前記光を短パルスで出力する第1モードと、前記光を長パルスで出力する第2モードとのいずれかに切り換えるモード設定手段と、
パルス幅を入力する入力手段と、
前記入力手段にて入力された前記パルス幅が、ある閾値未満のときに前記第1モードをとり、前記閾値以上のときに第2モードをとるように、前記モード設定手段を制御してモードを切り換え、前記光を、短パルス又は長パルスで、かつ入力手段で入力されたパルス幅で出力させる制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110212(P2013−110212A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252770(P2011−252770)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】