説明

レーザ光照射装置およびレーザ光照射方法

【課題】レーザ光を被照射部(例えば、患部)に照射する際、集光レンズの焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かを検知することができ、集光レンズの焦点の位置合わせをマニュアルにより正確に行うことが可能なレーザ光照射装置およびレーザ光照射方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るレーザ光照射装置200は、レーザ光を発振するレーザ光源201と、レーザ光源201から発振されたレーザ光209を集光する集光レンズ208と、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を取得し、該取得された距離が許容範囲内か否かを判断するように構成された制御装置207と、該判断結果をユーザに通知する可視光LD202〜204と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光照射装置およびレーザ光照射方法に関し、より詳細には、レーザ光を被照射部(例えば、患部)に照射し、該レーザ光の焦点を該被照射部に位置させるレーザ光照射装置およびレーザ光照射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収束レンズにて収束された印字用レーザ光の結像点を含み、その収束レンズの中心軸に対して垂直な垂直平面上の基準点を、ガイド用光源から出射される可視性のガイド光によって示すガイド光投影装置を備え、ガイド光を目印にして適切な位置に印字対象物を配置させる技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、レーザ光源から出射されるレーザ光を収束させて被マーキング対象物上に焦点を形成させる収束レンズ、および調整用光源から出射される可視光を2つの焦点F1、F2に結ばせる2焦点レンズを備えるマーキングヘッドを用いるレーザマーキング装置が開示されている。
【0004】
図1は、特許文献2に開示されたレーザマーキング装置の概略構成図である。
図1において、マーキングヘッド1は、レーザ光を出射するレーザ光源2と、可視光を出射する調整用光源3と、2焦点レンズ4と、ミラー5a〜5cと、収束レンズ6とを備えている。2焦点レンズ4による可視光の2つの焦点F1、F2の間の該可視光の光軸方向における所定の点(例えば、中点)に、収束レンズ6によるレーザ光の焦点Frが位置するように上記レーザ光源2、調整用光源3、2焦点レンズ4、および収束レンズ6は設けられている。このような構成において、調整用光源3を点灯させると、該調整用光源3から出射した可視光は2焦点レンズ4を通過して2の焦点F1、F2を形成している。この状態でマーキングヘッド1を上下方向(被マーキング対象物7に近づく方向および遠ざかる方向)に移動させると、2焦点レンズ4と被マーキング対象物7との間の光軸上の距離が、2焦点レンズ4と焦点F1、F2との間の光軸上の距離とそれぞれ一致する時に焦点スポットがそれぞれ明るく観察される。例えば、上記所定の点が焦点F1、F2の中点である場合、焦点F1と焦点F2との中点にレーザ光の焦点Frが位置するように構成されているので、これら目視により観察された2つの焦点スポットの中点に被マーキング対象物7が位置するようにマーキングヘッド20を位置させることにより、被マーキング対象物7の表面にレーザ光の焦点Frを位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−30109号公報
【特許文献2】特開2002−137081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されて技術では、収束レンズにて収束されたレーザ光の結像点(焦点)を、可視性のガイド光によって示す収束レンズの中心軸に対して垂直な垂直平面上の基準点を目印にして位置させることができる。しかしながら、上記レーザ光の結像点を中心軸方向に位置させることは難しい。
【0007】
また、上述のように、特許文献2に開示された技術は、レーザ光の焦点(結像点)Frを、収束レンズ6の中心軸上に調整して位置させる技術であるが、レーザ光の焦点Frを被マーキング対象物7の表面に正確に位置させることは難しい。何故ならば、レーザ光の焦点Frの位置決めに用いる焦点F1、F2に対応する位置をユーザの目視によって決めるからである。すなわち、図2に示すように、特許文献2に開示された技術では、マーキングヘッド1を移動させることにより観測された焦点スポット21、22はそれぞれ、理想的には焦点F1、F2に対応する位置に存在するものである。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、上述のように、マーキングヘッド1を上下方向に移動させることにより、ユーザの目視により焦点スポットを観察している。従って、目視によって得られた焦点スポットは、ずれた焦点スポット21a、22bのように、理想的な焦点スポット21、22からずれることがある。このように、目視によって得られた焦点スポットが理想の焦点スポット21、22からずれると、ずれた焦点スポット21aと22bとの中点24は、レーザ光の焦点Frに対応する点23からずれることになる。特許文献2に開示された技術では、中点24と被マーキング対象物7の表面とが一致するようにマーキングヘッド1を位置決めするので、この場合被マーキング対象物7の表面にレーザ光の焦点Frがぴったりと位置していない。このように、特許文献2に開示された技術では、目視によって焦点F1、F2に対応する点(焦点スポット)を決めているので、被マーキング対象物7の表面にレーザ光の焦点Frを位置させることが難しい。
【0009】
また、特許文献2では、マーキングヘッド1を上下方向に移動させて2つの焦点スポットを検出し、該2つの焦点スポットの中点に被マーキング対象物7の表面が位置するようにマーキングヘッド1を位置決めし、その位置にてレーザ光が被マーキング対象物7に照射される。従って、ユーザは被マーキング対象物7の表面にレーザ光の焦点Frが位置していると認識しているにも関わらず、実際には中点24が地点23からずれていることもあり、その場合は、実際にはレーザ光の焦点Frが被マーキング対象物7の表面に位置していないことになる。また、特許文献2では、中点24が地点23からずれているか否かを予め知ることもできない。
【0010】
さらに、特許文献2に開示された技術では、ユーザによるマニュアル動作により被マーキング対象物7の表面にレーザ光の焦点Frを位置決めすることが困難である。すなわち、目視により焦点F1、F2の中点に正確に被マーキング対象物7の表面を位置させることは困難であるので、マニュアルによりマーキングヘッド1を移動させて、焦点F1、F2の中点に被マーキング対象物7の表面を位置させることは困難である。
【0011】
特に、医療の分野においては、患部にレーザ光を照射して治療を行う場合、レーザの操作者(例えば、医者)が、レーザ光の焦点を患部に位置させることを、該レーザの操作者が患部を見ながらマニュアルで行うことが求められている。すなわち、レーザ光の焦点の、レーザ光軸方向の位置合わせをマニュアルにより正確に行えることが望まれている。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、レーザ光を被照射部(例えば、患部)に照射する際、集光レンズの焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かを検知することができ、集光レンズの焦点の位置合わせをマニュアルにより正確に行うことが可能なレーザ光照射装置およびレーザ光照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、被照射部に対してレーザ光を照射するレーザ光照射装置であって、前記レーザ光を発振するレーザ光源と、前記レーザ光源から発振された前記レーザ光を集光する集光レンズと、前記集光レンズの焦点と前記被照射部との間の距離を取得する取得手段と、前記取得された距離が許容範囲内か否かを判断する判断手段と、前記判断結果をユーザに通知する通知手段と備えることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、被照射部に対して集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ光照射方法であって、前記集光レンズの焦点と前記被照射部との間の距離を取得する取得工程と、前記取得された距離が許容範囲内か否かを判断する工程と、前記判断の結果、前記取得された距離が許容範囲内である場合には、前記レーザ光を前記被照射部に照射する工程と、前記判断の結果、前記取得された距離が許容範囲外である場合には、ユーザに対して前記取得された距離が許容範囲外である旨を通知する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザ光を被照射部(例えば、患部)に照射する際、集光レンズの焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かを検知することができ、集光レンズの焦点の位置合わせをマニュアルにより正確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の、レーザマーキング装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すレーザマーキング装置によりレーザ光の焦点の位置決めを説明するための模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るロボット型レーザメス装置の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るレーザ光照射装置の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るレーザ光照射装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る集光レンズの焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外にある場合の処理を説明するための図である。
【図7】本発明に一実施形態に係るロボット型レーザメス装置の処理手順を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るレーザ光照射装置が備える制御装置が行う通知処理を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るレーザ光照射装置の構成を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る集光レンズの焦点の許容範囲からのずれの度合いを感覚的にユーザに通知することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0017】
(第1の実施形態)
図3は、本実施形態に係るロボット型レーザメス装置100の概略構成図であり、図4は、該レーザ光照射装置200の構成を説明するための図であり、図5は、該レーザ光照射装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図3において、ロボット型レーザメス装置100は、レーザ光照射装置200と、駆動系と、載置台111とを備える。上記レーザ光照射装置200は、図4にて後述するが、レーザ光発生/検出部101と、光ファイバ102と、ヘッド103とを備えている。本実施形態では、載置台111上に被照射物(例えば、人体の所定の部位)が載置され、レーザ光発生/検出部101から出射されたレーザ光がヘッド103を介して、上記被照射物の被照射部(例えば、患部)に照射される。
【0018】
また、上記駆動系は、駆動操作装置104と、表示部105と、入力操作部106と、伝送路107と、ユーザによりマニュアルで矢印方向Pに移動可能な移動部108と、ロボットアーム110と、シャフト109とを備えている。本実施形態では、レーザ光照射装置200と駆動操作装置104とが伝送路112を介して電気的に接続されており、互いに通信可能であり、ユーザは駆動操作装置104を介してレーザ光照射装置200を制御することができる。なお、レーザ光照射装置に入力操作部および表示部を接続し、この入力操作部を介してユーザがレーザ光照射装置に所定の指示を入力しても良いことは言うまでも無い。
【0019】
駆動操作装置104は、上記ロボットアーム110の駆動を制御する制御手段としての制御部である。なお、移動部108は、ユーザによりマニュアルで変位させることに加えて、駆動操作装置104の制御により変位させても良い。駆動操作装置104は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU(不図示)、このCPUによって実行される制御プログラムなどを格納するROM(不図示)、およびCPUの処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM(不図示)などを有する。この駆動操作装置104には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボード、各種スイッチ、あるいはロボットアーム110を制御するためのジョイスティックなどを含む入力操作部106、ロボット型レーザメス装置100の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部105がそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、上述のように駆動操作装置104とレーザ光発生/検出部101とが伝送路112を介して接続されているので、ユーザが入力操作部106を介してレーザ光照射装置200を制御するための指示を入力すると、駆動操作装置104は、該指示を示す情報をレーザ光発生/検出部101に送信する。この指示を示す情報を受信すると、制御装置207は、該指示を示す情報を受け付けて所定の処理を行う。
【0020】
上記駆動操作装置104は、移動部108と伝送路107を介して接続されている。該移動部108にはロボットアーム110が接続されており、移動部108は、伝送路107を介して駆動操作装置104から送信されたロボットアーム駆動コマンドに従って、ロボットアーム110を動作させる。なお、本実施形態では、駆動操作装置104と移動部108とを伝送路107といった有線により接続しているが、駆動操作装置104と移動部108とを無線により接続しても良い。
【0021】
また、移動部108は、シャフト109によって支持されており、該シャフト109の長軸方向に沿って、ユーザによるマニュアル動作で移動可能に構成されている。すなわち、移動部108にはつまみ108aおよび該つまみ108aの回転によって移動部108をシャフト109に摺動させる機構(不図示)が設けられており、該移動部108は、つまみ108aをユーザがマニュアルにより回転させることによって、移動部108が矢印方向P(ヘッド103から出射するレーザ光の光軸方向(レーザ光の進行方向)に沿った方向)に沿って移動可能に構成されている。従って、ユーザがつまみ108aを回転させることによって、ヘッド103が有する集光レンズ208(後述)と被照射部との間の距離、すなわち、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が調節される。
【0022】
図4において、レーザ光発生/検出部101は、被照射部としての患部を治療するためのレーザ光を発振するレーザ光源201と、それぞれが異なる色(可視光領域における異なる波長)のレーザ光を発振する可視光LD202〜204と、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を測定するために機能する距離測定部205と、ダイクロイックミラー206a〜206dとを備える。ダイクロイックミラー206dは距離測定部205から出射された距離測定用の光を反射するように構成されている。また、ダイクロイックミラー206aは可視光LD202から出射された第1の波長の可視光を反射するように構成され、ダイクロイックミラー206bは可視光LD203から出射された第2の波長の可視光を反射するように構成され、ダイクロイックミラー206cは可視光LD204から出射された第3の波長の可視光を反射するように構成されている。また、ヘッド103は、集光レンズ208を備えており、ロボットアーム110に着脱可能に構成されている。このようなレーザ光発生/検出部101とヘッド103とは光ファイバ102により光学的に接続されており、レーザ光発生/検出部101から出射された所定のレーザ光が光ファイバ102を介してヘッド103に入射し、かつヘッド103から入射された光(後述する反射光)が光ファイバ102を介してレーザ光発生/検出部103へと入射する。
【0023】
本実施形態では、可視光LD202は第1の波長の可視光として青色の光を出射し、可視光LD203は第2の波長の可視光として緑色の光を出射し、可視光LD204は第3の波長の可視光として赤色の光を出射する。図4に示すように、レーザ光源201から出射されたレーザ光209の行程中に、レーザ光209、ダイクロイックミラー206dにて反射された距離測定用の光、ダイクロイックミラー206cにより反射された可視光LD024から出射された赤色の光、ダイクロイックミラー206bにより反射された可視光LD203から出射された緑色の光、およびダイクロイックミラー206aにより反射された可視光LD202から出射された青色の光がそれぞれ、光ファイバ102に結合するように、ダイクロイックミラー206a、206b、206c、206dが設けられている。
【0024】
図5において、制御装置207は、レーザ光照射装置200全体を制御する制御手段としての制御部である。この制御装置207は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU301、およびこのCPU301によって実行される様々な制御プログラム(例えば、図8に示すプログラム)などを格納するROM303を有する。また、制御部207は、CPU301の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM302、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリ304などを有する。上記制御部207には、レーザ光源201、可視光LD202〜204、および距離測定部205が駆動回路等を介して接続されており、制御部207がレーザ光源201、可視光LD202〜204、および距離測定部205の動作を制御する。さらに、制御装置207と駆動操作装置104とが電気的に接続されているので、制御装置207と駆動操作装置104との間で所定の情報のやり取りが可能である。
【0025】
本実施形態において、距離測定部205は、距離測定用の光を出射する距離測定用光源(不図示)と、光を検知するセンサ部(不図示)とを有しており、距離測定用光源から距離測定用の光をダイクロイックミラー206dに向けて出射する。距離測定部205から出射された距離測定用の光は、ダイクロイックミラー206dにより反射され、ダイクロイックミラー206c〜206aを透過し、光ファイバ102に結合し、該光ファイバ102中を伝播して集光レンズ208を介して、載置台111に載置された被照射部(患部)に入射する。該被照射部に入射した距離測定用の光は、被照射部にて反射されて反射光となり、集光レンズ208に入射した反射光は、光ファイバ102に結合し、該光ファイバ102中を伝播して、レーザ光発生/検出部101中に入射する。該入射した反射光は、ダイクロイックミラー206a〜206cを透過し、ダイクロイックミラー206dにて反射されて距離測定部205に入射する。該距離測定部205に入射した反射光はセンサ部にて検知される。距離測定部205は、該距離測定部205から出射してから、被測定部にて反射されて距離測定部205まで戻ってくるまでの時間を計測し、該計測された時間に関する情報を制御装置207に送信する。
【0026】
制御装置207は、距離測定部205から受信した計測された時間に関する情報と距離測定用の光の波長とにより、距離測定部205から出射された距離測定用の光が被照射部(被照射物)まで辿る経路の長さ(距離測定用の光の行路(光が実際に進んだ長さ))と、被照射部(被照射物)から反射された反射光が距離測定部205まで辿る経路の長さ(反射光の行路)との和を算出する。上記距離測定用の光の行路と反射光の行路とは同じ長さであるはずなので、上記算出された和を2で割ったものが、距離測定部205と被照射部との間の、距離測定用の光が進行する経路の長さ(=上記距離測定用の光の行路)(以下、単に“距離測定用の光の行路長”と呼ぶことにする)となる。よって、制御装置207は、上記算出された和を2で割る演算を行い、距離測定用の光の行路長を算出する。
【0027】
本実施形態では、レーザ光発生/検出部101内において、距離測定部205、ダイクロイックミラー206a〜206dを固定し、かつヘッド103内において、集光レンズ208を固定する。従って、距離測定部205からダイクロイックミラー206dまでの距離、ダイクロイックミラー206dからレーザ光発生/検出部101と光ファイバ102との接続部までの距離、光ファイバ102の長さ、光ファイバ102とヘッド103との接続部から集光レンズ208までの距離はそれぞれ一定となる。また、集光レンズ208の焦点距離Dも集光レンズ8に特有の値であり一定である。従って、距離測定部205からダイクロイックミラー206dまでの距離、ダイクロイックミラー206dからレーザ光発生/検出部101と光ファイバ102との接続部までの距離、光ファイバ102の長さ、および光ファイバ102とヘッド103との接続部から集光レンズ208までの距離の和(以下、単に“距離測定部205と集光レンズ208との間の距離”と呼ぶことにする)と焦点距離Dとの和と、距離測定用の光の行路長との差((距離測定部205と集光レンズ208との間の距離+焦点距離D)−(距離測定用の光の行路長))の絶対値が、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離となる。
【0028】
上述のように、レーザ光照射装置200の構成が決まれば、距離測定部205と集光レンズ208との間の距離を求めることができるので、該距離測定部205と集光レンズ208との間の距離を予め求めておき、距離測定部205と集光レンズ208との間の距離と焦点距離Dとの和を距離算出基準値としてROM303に格納しておく。さらに、距離測定用光源から出射される距離測定用の光の波長に関する情報もROM303に格納しておく。このように構成することで、制御装置207は、距離測定部205にて計測された時間とROM303に格納された距離測定用の光の波長とにより距離測定用の光の行路長を算出し、ROM303から距離算出基準値(距離測定部205と集光レンズ208との間の距離と焦点距離Dとの和)を読み出して、該読み出された距離算出基準値と算出された距離測定用の光の行路長との差を算出して、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を取得することができる。
【0029】
本発明では、上記取得された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にある場合と、許容範囲外にある場合とを、感覚的にユーザに認識させることを特徴としている。本実施形態では、上記感覚的にユーザに認識させることを、視覚により行っている。本実施形態では、上記算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内である場合には、青色の可視光を用いてユーザに許容範囲内である旨を通知し、許容範囲外である場合には、青色以外の色の可視光(緑色および赤色)を用いてユーザに許容範囲外である旨を通知する。すなわち、取得された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内である場合、制御装置207は、可視光LD202を駆動して、青色の可視光をヘッド103から出射させる。また、取得された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外である場合であって、集光レンズ208と被照射部との間の距離が焦点距離Dよりも長い場合(集光レンズ208の焦点が集光レンズ208と被照射部との間に位置する場合)、制御装置207は、可視光LD203を駆動して、緑色の可視光をヘッド103から出射させる。さらに、取得された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外である場合であって、集光レンズ208と被照射部との間の距離が焦点距離Dよりも短い場合(集光レンズ208の焦点が被照射物の内部側に位置する場合)、制御装置207は、可視光LD204を駆動して、赤色の可視光をヘッド103から出射させる。
【0030】
従って、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内である場合には、青色の可視光が被照射部に照射され、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外である場合には、緑色または赤色の可視光が被照射部に照射される。よって、ユーザは、被照射部に照射される可視光の色により、集光レンズ208の焦点が想定通りに位置しているか否かを感覚的に知ることができる。
【0031】
また、本実施形態では、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外である際に、集光レンズ208の焦点の位置が被照射部に対して集光レンズ208側である場合と被照射物の内部側である場合とで異なる色を用いている。すなわち、集光レンズ208の焦点の位置が被照射部に対して集光レンズ208側である場合には緑色の可視光を用い、集光レンズ208の焦点の位置が被照射部に対して被照射物の内部側である場合には赤色の可視光を用いている。従って、ユーザは、現在の、集光レンズ208の焦点の位置が、許容範囲領域からどの方向にずれているのかを知ることができ、集光レンズ208の焦点を許容範囲領域内に位置させるためには集光レンズ208をどちらの方向に動かせば良いかを認識することができる。本実施形態では、集光レンズ208の位置、すなわちヘッド103の位置決めを行う移動部108をマニュアルにより矢印方向P(集光レンズ208から出射される光の光軸方向)に沿って変位させることができる。従って、ユーザが、緑色または赤色の可視光によって認識したずれを補償するように移動部108をマニュアルにより移動させることにより、集光レンズ208の焦点をマニュアルにより許容範囲領域内に位置させることができる。よって、ユーザが集光レンズ208の焦点の位置合わせをマニュアルにより正確に行うことができる。
【0032】
このように、ユーザは、被照射部に照射される可視光の色を頼りに、マニュアルにより、矢印方向Pに沿って該集光レンズ208の焦点の位置を調整することができる。そして、この焦点位置の調整の際に、集光レンズ208の焦点の、許容範囲領域からのずれの方向をユーザに対して異なる色により通知しているので、ユーザはマニュアルにより集光レンズ208の焦点の位置を許容範囲内に正確に位置させることができる。
【0033】
次に、集光レンズ208の焦点の許容範囲領域からのずれの方向の判別の一例を説明する。
上述のように、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を算出する際に、本実施形態では、制御装置207は、下記式1に従って演算を行う。
(集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離)=(読み出された距離算出基準値)−(算出された距離測定用の光の行路長) (式1)
【0034】
図6(a)に示すように、「距離算出基準値」よりも「算出された距離測定用の光の行路長」の方が長い場合は、集光レンズ208と被照射物401に含まれる被照射部402との間に集光レンズ208の焦点が位置する。すなわち、集光レンズ208の焦点は被照射部402に対して集光レンズ208側に位置する。この場合は、式1の演算結果は「負の値」となる。よって、式1の演算結果が負の値であれば、集光レンズ208と被照射部との間の距離が焦点距離Dよりも長い場合であるので、上記演算結果である“集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離”が許容範囲外であれば、緑色の可視光を点灯させれば良い。
【0035】
一方、図6(b)に示すように、「距離算出基準値」よりも「算出された距離測定用の光の行路長」の方が短い場合は、被照射物401の内部側に集光レンズ208の焦点が位置する。すなわち、集光レンズ208の焦点は被照射部402に対して被照射物401の内部側に位置する。この場合は、式1の演算結果は「正の値」となる。よって、式1の演算結果が正の値であれば、集光レンズ208と被照射部との間の距離が焦点距離Dよりも短い場合であるので、上記演算結果である“集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離”が許容範囲外であれば、赤色の可視光を点灯させれば良い。
【0036】
よって、制御装置207は、式1の演算結果が負の値であり、かつ許容範囲外である場合は可視光LD203を駆動して緑色の可視光をヘッド103から出射させ、式1の演算結果が正の値であり、かつ許容範囲外である場合は可視光LD204を駆動して赤色の可視光をヘッド103から出射させる。
【0037】
次に、本実施形態に係るロボット型レーザメス装置100を動作させる処理の一例を説明する。図7は、本実施形態に係るロボット型レーザメス装置100の処理手順を示す図である。また、図8は、本実施形態に係るレーザ光照射装置200が備える制御装置207が行う通知処理の手順を示す図である。
まずは、載置台111上に、被照射部としての患部を有する身体の部位(被照射物)を載置する。この状態で、ユーザが入力操作部106を操作して、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを通知する処理を開始するための指示を入力すると、駆動操作装置104はその旨を示す通知処理開始コマンドを伝送路112を介してレーザ光発生/検出部101に送信する。
【0038】
レーザ光発生/検出部101が上記通知処理開始コマンドを受信すると、制御装置207は、図8に示す処理手順に従って通知処理を行う(ステップS11)。すなわち、制御装置207は、距離測定部205が有する距離測定用光源を駆動して、該距離測定部205から距離測定用の光を出射させ、該距離測定用の光の被照射部からの反射光を検知させ、距離測定用の光の出射から反射光の検知までの時間を計測させる(ステップS21)。ステップS22では、制御装置207は、ステップS21にて出射された距離測定用の光が載置台111上の被照射部にて反射された反射光が距離測定部205のセンサ部にて検知されるまでの時間により、距離測定用の光の行路長を算出する。すなわち、距離測定部205はステップS11にて距離測定用の光を出射してから、上記反射光を検知するまでの時間を計測し、該計測された時間に関する情報を制御装置207に送信する。該制御装置207は、受信した計測された時間に関する情報とステップS21にて出射された距離測定用の光の波長とに基づいて、距離測定用の光の行路長を算出する。
【0039】
次いで、ステップS23では、制御装置207は、ROM33から距離算出基準値を読み出し、ステップS22にて算出された距離測定用の光の行路長と該読み出された距離算出基準値により上記式1を用いて、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を算出する。次いで、ステップS24にて、制御装置207は、ステップS23にて算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離の絶対値と許容範囲として設定された値とを比較し、この距離が許容範囲内であるか否かを判断する。上記許容範囲の値については、予めユーザにより設定されており、ROM33に予め格納されている。算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離の絶対値が許容範囲の値以下であり、該距離が許容範囲内であると判断される場合は、制御装置207はステップS25に進む。一方、算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離の絶対値が許容範囲の値よりも大きく、該距離が許容範囲外であると判断される場合は、制御装置207はステップS26に進む。
【0040】
ステップS25では、制御装置207は、可視光LD202を駆動して、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内であることを示す青色の可視光を発光させる。これにより、ヘッド103からは青色の可視光が出射され、該青色の可視光が被照射部に照射される。よって、ユーザは、被照射部を見るだけで、集光レンズ208の焦点がユーザが許容する精度(すなわち、高精度)で被照射部に位置していることを感覚的に認識することができる。
【0041】
ステップS26では、ステップS23にて算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が正の値なのか負の値なのかを判断する。正の値の場合は制御装置207はステップS27に進み、負の値の場合は制御装置207はステップS28に進む。
【0042】
ステップS27では、制御装置207は、可視光LD204を駆動して、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外であり、かつ集光レンズ208の焦点が被照射物の内部側に位置することを示す赤色の可視光を発光させる。また、ステップS28では、制御装置207は、可視光LD203を駆動して、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外であり、かつ集光レンズ208の焦点が集光レンズ208側に位置することを示す緑色の可視光を発光させる。よって、ユーザは、被照射部を見るだけで、集光レンズ208の焦点がユーザが許容する精度(すなわち、高精度)で被照射部に位置していないことを感覚的に認識することができる。さらに、焦点レンズ208から出射する光の光軸方向における、焦点レンズ208の焦点のずれがどの方向かについても、ユーザは被照射部を見るだけで感覚的に認識することができる。
【0043】
ステップS12において、被照射部に照射された光が青色の可視光である場合は、ユーザは、入力操作部106を介して、治療用のレーザ光を発振させるための指示を入力すると、駆動操作装置104はその旨を示す治療用レーザ発振コマンドを伝送路112を介してレーザ光発生/検出部101に送信する。レーザ光発生/検出部101が該治療用レーザ発振コマンドを受信すると、制御装置207は、レーザ光源201を駆動して、治療用レーザ光であるレーザ光209を発振させ、該レーザ光209をヘッド103から被照射部へと照射させる。このとき、ユーザは、入力操作部106を介してロボットアーム110を操作しても良い。
【0044】
一方、ステップS12において、被照射部に照射された光が緑色または赤色の可視光である場合は、集光レンズ208の矢印方句Pにおいて調節が必要であると判断され、ステップS14に進む。ステップS14においては、ユーザにつまみ108aを用いて移動部108を移動させて、集光レンズ208の焦点の位置をマニュアルにより調節させる。例えば、被照射部に照射された可視光が赤色である場合は、集光レンズ208の焦点は被照射部の内部側に位置しているので、ユーザは、集光レンズ208が被照射部から遠ざかる方向に移動するようにつまみ108aを回転させれば良い。また、被照射部に照射された可視光が緑色である場合は、集光レンズ208の焦点は被照射部に対して集光レンズ208側に位置しているので、ユーザは、集光レンズ208が被照射部に近づく方向に移動するようにつまみ108aを回転させれば良い。
【0045】
ステップS14にてユーザが集光レンズ208の位置調整を終了すると、再度ユーザは入力操作部106を介して集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを通知する処理を開始するための指示を入力し、ステップS11を行い、ステップS12にて被照射部に照射される可視光の色が青色と判断されるまで、ステップS11、S12、およびS14を繰り返す。
【0046】
なお、本実施形態では、集光レンズ208の焦点の位置合わせのために、移動部108をマニュアルにより変位させているが、これに限定されず、載置台111をマニュアルにより変位させても良い。本発明で重要なことは、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を許容範囲になるように、この距離をマニュアルにより調節できることである。よって、集光レンズ208から照射される光の光軸方向に沿って、集光レンズ208の位置および載置台111の位置の少なくとも一方を変位させて、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離を変化させることができればいずれの手段を用いても良い。
【0047】
また、距離測定部205から距離測定用の光を所定の間隔で間欠的に出射するようにしても良い。すなわち、制御装置207は、間欠的に距離測定用の光を出射するように距離測定部205を制御しても良い。このように構成することで、ステップS11が自動で間欠的に実行されることになり、被照射部にも所定の間隔で間欠的に所定の色の可視光が照射される。よって、被照射部に照射される可視光が緑色または赤色であり、移動部108を変位させて集光レンズ208の焦点位置の調整を行う際に、ユーザはマニュアルにより該焦点位置の調整を行いながら、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを判断することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、レーザ光源、可視光LD202〜204を別個に設けているが、一体的に構成しても良い。また、該一体的に構成した光源に、距離測定部205を組み込んでも良い。
【0049】
さらに、本実施形態では、レーザ光源201から発振されたレーザ光209と、距離測定部205から出射した距離測定用の光とが途中から同軸になるように光学系を構成しているが、上記レーザ光209と距離測定用の光とは同軸ではなくても良い。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを視覚によりユーザに通知しているが、上記距離が許容範囲内か否かを感覚的にユーザに通知することができれば、いずれの方法であっても良い。
【0051】
図9は、本実施形態に係る、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを聴覚によりユーザに通知するように構成されたレーザ光照射装置の構成を説明するための図である。
図9において、レーザ光照射装置500は、レーザ光発生/検出部501と、光ファイバ102と、ヘッド103とを備えている。レーザ光発生/検出部501は、レーザ光源201と、距離測定部205と、ダイクロイックミラー206dと、制御装置502と、音声発生装置503とを有している。上記制御装置502は、上述の制御装置207と同様の構成を有しており、レーザ光源201、距離測定部205、および音声発生装置503はそれぞれ、制御装置502により制御される。
【0052】
上記音声発生装置503は、3種類の音を発生できるように構成されている。よって、本実施形態では、算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かに応じて、3種類の音を使い分けている。すなわち、制御装置502は、算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内である場合には、第1の音を出力するように音声発生装置503を制御する。また、制御装置502は、算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外であり、かつ集光レンズ208の焦点が集光レンズ208と被照射部との間にある場合には、第2の音を出力するように音声発生装置503を制御する。さらに、制御装置502は、算出された集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲外であり、かつ集光レンズ208の焦点が被照射物の内部側にある場合には、第3の音を出力するように音声発生装置503を制御する。
【0053】
このように、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かを、音によりユーザに通知しているので、集光レンズ208の焦点の位置が許容範囲領域内にあるか否かを感覚的にユーザは知ることができる。従って、ユーザは、音声発生装置503から出力される音の種類を頼りに、マニュアルにより、集光レンズ208から出射される光の光軸方向に沿って該集光レンズ208の焦点の位置を調整することができる。そして、この焦点位置の調整の際に、集光レンズ208の焦点の位置が許容範囲内にある場合と無い場合とで異なる音によりユーザに通知しているので、ユーザはマニュアルにより集光レンズ208の焦点の位置を許容範囲内に正確に位置させることができる。
【0054】
なお、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内か否かを、触感によってユーザに通知しても良い。この触感によるユーザへの通知の方法としては、振動や電気的刺激等が挙げられる。
【0055】
(第3の実施形態)
本実施形態では、集光レンズ208の焦点が被照射部に位置する時を基準とする時に、集光レンズ208の焦点の被照射部からのずれの度合い(集光レンズ208の焦点が被照射部からどれだけずれているのか)を感覚的にユーザに通知する。すなわち、上記ずれの度合いに応じて、ユーザへの感覚的な通知の仕方を変化させている。
以下で、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かを可視光により通知する構成において、上記ずれの度合いを視覚により感覚的にユーザに通知する形態について説明する。
【0056】
図10は、本実施形態に係る集光レンズ208の焦点の許容範囲からのずれの度合いを感覚的にユーザに通知することを説明するための図である。
図10において、X軸は、集光レンズ208から出射する光の光軸方向と一致する軸であって、被照射部から集光レンズ208に向かう方向に一致する軸である。点Oは、載置台111上に設けられた被照射物の被照射部の表面(該被照射部と空気との界面)である。点a1と点b1との間の領域が、集光レンズ208の焦点の位置として許容される許容範囲領域である。本実施形態では、点a1と点b1との間の領域に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、緑色の可視光を被照射部に照射する。また、点a1と点a2との間の領域に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、黄色の可視光を被照射部に照射し、点a2と点a3との間の領域に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、オレンジ色の可視光を被照射部に照射し、点a3よりも集光レンズ208側に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、赤色の可視光を被照射部に照射する。さらに、点b1と点b2との間の領域に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、青色の可視光を被照射部に照射し、点b2と点b3との間の領域に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、藍色の可視光を被照射部に照射し、点b3よりも被照射物の内側に集光レンズ208の焦点が位置する場合は、紫色の可視光を被照射部に照射する。
【0057】
このように、本実施形態では、集光レンズ208の焦点の位置として許容される許容範囲領域(点a1と点b1との間の領域)から集光レンズ208側のずれ量(度合い)が大きくなるに従って、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあるか否かの通知に用いられる可視光の色が黄色→オレンジ色→赤色に変化する。同様に、上記許容範囲領域から被照射物の内側のずれ量(度合い)が大きくなるに従って、上記通知に用いられる可視光の色が青色→藍色→紫色に変化する。よって、ユーザは、被照射部に照射される上記通知に用いられる可視光の色を見るだけで、集光レンズ208の焦点の位置が許容範囲領域からどれだけずれているのかを感覚的に知ることができる。従って、ユーザがマニュアルにより集光レンズ208の焦点の、該集光レンズ208から出射される光の光軸方向の調整を行う際に、集光レンズ208と載置台111とを相対的にどれだけ移動させれば良いのかをユーザが感覚的に知ることができる。例えば、被照射部に照射される可視光の色が赤色の場合は、集光レンズ208の焦点は許容範囲からかなりずれているので、集光レンズ208を現在の位置から被照射部側にかなりの量だけ変位させるように移動部108を移動させる必要があることをユーザは知ることができる。
【0058】
本実施形態では、図4に示すように、上記通知用の光源として、青色の可視光を出射する可視光LD202、緑色の可視光を出射する可視光LD203、および赤色の可視光を出射する可視光LD204を備えているので、オレンジ色、黄色、藍色、紫色の可視光については、各可視光LD202〜204の輝度を適切に設定して、色に応じて可視光LD202〜204を適宜組み合わせて用いれば良い。従って、各色について、赤、緑、青の輝度をテーブルとしてROM33に保持させておき、制御装置207は、該テーブルを参照して用いる色を構成するのに必要な赤、緑、青各々の輝度を取得し、該取得された輝度で出射するように、可視光LD202〜204を制御する。
【0059】
また、本実施形態では、式1に従って、「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」を算出するので、算出結果は、正、負の値となり、正の値である場合は、集光レンズ208の焦点は被照射部に対して集光レンズ208側に位置し、負の値である場合は、集光レンズ208の焦点は被照射物の内側に位置することになる。ここで、点Oと点a1、b1との間の距離をd1とし、点Oと点a2、b2との間の距離をd2とし、点Oと点a3、b3との間の距離をd3とする。算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」の絶対値が0以上d1以下である場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内にあることを示す緑色の可視光を照射させる。
【0060】
算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が正の値であり、かつその絶対値が距離d1よりも大きく距離d2以下である場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から集光レンズ208側に少しずれていることを示す黄色の可視光を照射させる。また、算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が正の値であり、かつその絶対値が距離d2よりも大きく距離d3以下である場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から集光レンズ208側に中程度にずれていることを示すオレンジ色の可視光を照射させる。さらに、算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が正の値であり、かつその絶対値が距離d3よりも大きい場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から集光レンズ208側にかなりずれていることを示す赤色の可視光を照射させる。
【0061】
一方、算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が負の値であり、かつその絶対値が距離d1よりも大きく距離d2以下である場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から被照射物の内部側に少しずれていることを示す青色の可視光を照射させる。また、算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が負の値であり、かつその絶対値が距離d2よりも大きく距離d3以下である場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から被照射物の内部側に中程度にずれていることを示す藍色の可視光を照射させる。さらに、算出された「集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離」が負の値であり、かつその絶対値が距離d3よりも大きい場合は、制御装置207は、集光レンズ208の焦点が許容範囲領域から被照射物の内部側にかなりずれていることを示す紫色の可視光を照射させる。
【0062】
本実施形態では、集光レンズ208の焦点の許容範囲領域からのずれの度合いをユーザに感覚的に認識させることができることが重要であるので、集光レンズ208の焦点と被照射部との間の距離が許容範囲内に位置するか否かを通知する通知手段を、上記ずれの度合いに応じて上記通知の仕方を変化させるように構成することを本質としている。従って、通知の仕方として可視光の色を変化させる形態においては、可視光の色の数は7色に限定されるものではない。すなわち、複数の可視光を用いて、集光レンズ208の焦点位置が現在どれだけずれているのかを感覚的に通知できれば良いのである。
【0063】
また、上記通知の仕方も、可視光の色を用いる方式など視覚に訴えるものに限らず、第2の実施形態にて説明したように、音や触感を用いる方式であっても良い。例えば、音を用いる場合は、集光レンズ208の焦点の許容範囲領域からのずれの度合いに応じて、音の周波数(高低)を変化させたり、所定の間隔で音を発振するように構成し、該音の間隔を変えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
101、501 レーザ光発生/検出部
102 光ファイバ
103 ヘッド
200、500 レーザ光照射装置
201 レーザ光源
202〜204 可視光LD
205 距離測定部
206a〜206d ダイクロイックミラー
207、502 制御装置
208 集光レンズ
503 音声発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射部に対してレーザ光を照射するレーザ光照射装置であって、
前記レーザ光を発振するレーザ光源と、
前記レーザ光源から発振された前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズの焦点と前記被照射部との間の距離を取得する取得手段と、
前記取得された距離が許容範囲内か否かを判断する判断手段と、
前記判断結果をユーザに通知する通知手段と
を備えることを特徴とするレーザ光照射装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記集光レンズの焦点の前記被照射部からのずれの度合いを判断するように構成されており、
前記通知手段は、前記ずれの度合いに応じて、前記通知の仕方を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項3】
前記通知手段は、互いに異なる色の複数の可視光により前記通知を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項4】
前記互いに異なる色の複数の可視光はそれぞれ、前記集光レンズを介して出射されることを特徴とする請求項3に記載のレーザ光照射装置。
【請求項5】
前記通知手段は、互いに異なる周波数の音により前記通知を行うか、または互いに異なる触感により前記通知を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光照射装置。
【請求項6】
被照射部に対して集光レンズを介してレーザ光を照射するレーザ光照射方法であって、
前記集光レンズの焦点と前記被照射部との間の距離を取得する取得工程と、
前記取得された距離が許容範囲内か否かを判断する工程と、
前記判断の結果、前記取得された距離が許容範囲内である場合には、前記レーザ光を前記被照射部に照射する工程と、
前記判断の結果、前記取得された距離が許容範囲外である場合には、ユーザに対して前記取得された距離が許容範囲外である旨を通知する工程と
を有することを特徴とするレーザ光照射方法。
【請求項7】
前記判断する工程は、前記集光レンズの焦点の前記被照射部からのずれの度合いを判断し、
前記通知する工程は、前記ずれの度合いに応じて、前記通知の仕方を変化させることを特徴とする請求項6に記載のレーザ光照射方法。
【請求項8】
前記通知する工程は、互いに異なる色の複数の可視光により前記通知を行うことを特徴とする請求項6に記載のレーザ光照射方法。
【請求項9】
前記互いに異なる色の複数の可視光はそれぞれ、前記集光レンズを介して出射されることを特徴とする請求項8に記載のレーザ光照射方法。
【請求項10】
前記通知する工程は、互いに異なる周波数の音により前記通知を行うか、または互いに異なる触感により前記通知を行うことを特徴とする請求項6に記載のレーザ光照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94348(P2013−94348A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238692(P2011−238692)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】