説明

レーザ刻印の品質表示ラベル

【課題】
各種の衣類の裏面に縫着または接着する品質表示ラベルについて、レーザ刻印によって印字模様を形成する。
【解決手段】
布帛の上に、暗色層、透明層および明色層を順次積層したテープ素材を用い、該テープ素材において、個別データに基づいて明色層上にオンデマンドでレーザ刻印する際に、融食凹部が明色層を通過して透明層に達することで印字模様を表示させ、単枚化の後に品質表示ラベルとして衣類の所定個所に縫着または熱接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ刻印によって印字模様を形成した品質表示ラベルに関し、該品質表示ラベルは各種の衣類の裏面などに縫着または接着できる。
【背景技術】
【0002】
電子部品、飲料容器、化粧品容器などの分野では、特開2009−92720号、特開2007−313875号などで開示するように、非接触で高速のマーキング速度で印字が可能なレーザ刻印法が普及し、レーザ刻印法によって容器表面に製造年月日、賞味期限、流通番号を印字した硬質ラベルが多数存在する。また、特開平9−277705号に開示のレーザ書込みラベルでは、アルミ蒸着した紙基材の上に、反射層、光増感層、着色インキ層、透明保護層を順次積層する。マーキングに際して、所定のマークの線画形状に合わせてレーザを走査し、着色インキ層と透明保護を所定の線画形状に除去して着色模様のマークを形成する。この種のラベルは、一般に洗浄することが少ない硬質の製品に使用されるだけであり、これを軟質の衣類に接着しても柔軟性や伸縮性の点でも実用にならず、耐用性と耐洗濯性なども欠くので商品化が不可能である。
【0003】
一方、衣類の分野では、各種のラベルの中で品質表示ラベルの生産量が比較的安定している。品質表示ラベルは、衣類に関して、その洗濯に適した使用洗剤、洗濯方法、乾燥方法を表記した取り扱い絵表示および製造メーカなどを細布にプリントしたものである。このプリントラベルは、健康と美容のためのスポーツが盛んになるとともに、水着、トレーニングウェア、レオタードなどのスポーツ用衣類に縫着されることが増加している。しかしながら、通常のプリントラベルを品質表示ラベルとしてスポーツ衣類の裏側に縫着すると、伸縮性が低くて引きつれを起こして被着体を損傷したり、着用時に、ラベル縁と肌が直接接触して使用者に不快感を与えやすい。
【0004】
布ラベルによる不快感除去の一対策として、品質表示マークを衣類の裏側に直接プリントすることにより、着用者に対する不快感を軽減できる。この直接プリント法では、布ラベルのような縫い付け工程が不要であるので作業工程が簡略化できる。この直接プリント法によって品質表示マークを衣類の裏側にプリントするには、衣類の被着個所を加熱プレス機まで引き出し、そこで皺が生じないように被印刷個所を広げて平らにすることを要する。プリントマークは、顔料粉末を分散させた通常の熱可塑性樹脂からなり、肌着の使用時の伸縮によってプリントマークがひび割れや剥離を起こしやすく、明確な品質表示を長時間維持することができない。
【0005】
また、公知の熱転写ラベルを品質表示に適用することもでき、該ラベルを衣類裏側に転写すると着用者に不快感を与えることが少なく、作業工程も簡略化する。特開平11−42895号は、ベースシート上に図柄層、中間層および接着層とを順次形成した伸縮性の転写ラベルに関する。マーク剥離の問題は、特開平11−42895号で開示の転写ラベルでほぼ解消する。この転写ラベルを品質表示のために衣類に熱転写すると、該ラベルは衣類の伸びに追従してほぼ同程度まで伸び、衣類が頻繁に伸縮しても転写後にひび割れや剥離を起こしにくく、品質表示を長期間明確に表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−92720号公報
【特許文献2】特開2007−313875号公報
【特許文献3】特開平9−277705号公報
【特許文献4】特開平11−42895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平11−42895号で開示の熱転写ラベルは、1層または2層以上の図柄層で明確な品質表示を形成できても、個々の層をスクリーン印刷で設けるために生産性が高くなく、製造コストが相当に高いので安価な品質表示ラベルとして使用しにくい。また、図柄層をスクリーン印刷で形成し、用いるスクリーンは写真製版してそのつど版枠に取り付けるために、少なくても数百枚単位の印刷量を必要とし、品質表示の印字データがしばしば変更されても、直ちにその変更に適応させることができない。
【0008】
本発明は、従来のレーザ刻印ラベルおよび熱転写ラベルに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、衣類用ラベルとして耐用性、耐洗濯性、耐剥離性、伸縮性に優れ、肌と直接接触しても衣類の着用者に不快感を与えない比較的安価な品質表示ラベルを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、個別データをオンデマンドでレーザ刻印するので、個別データの変更に対して1枚単位で対応できる品質表示ラベルを提供することである。本発明の他の目的は、暗色層、透明層および明色層をあらかじめ形成してからレーザ刻印するので、生産性が高く且つ保管しやすい品質表示ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る品質表示ラベルは、布帛の上に、暗色層、透明層および明色層を順次積層したテープ素材からなる。このテープ素材について、個別データに基づいて明色層上にオンデマンドでレーザ刻印する際に、融食凹部が明色層を通過して透明層に達することで印字模様を表示させ、単枚化の後に衣類の所定個所に縫着する。
【0010】
本発明に係る別の品質表示ラベルは、接着層の上に、暗色層、透明層および明色層を順次積層したテープ素材からなっていてもよい。このテープ素材について、個別データに基づいて明色層上にオンデマンドでレーザ刻印する際に、融食凹部が明色層を通過して透明層に達することで印字模様を表示させ、単枚化の後に衣類の所定個所と接触させて接着する。接着層は、ベースフィルム上に形成すればよい。
【0011】
本発明の品質表示ラベルにおいて、通常、暗色層が黒色および明色層が白色である。暗色層、透明層および明色層は、いずれもポリウレタン樹脂からなると好ましく、特にポリエステル系ポリウレタン樹脂からなると好ましい。また、個別データから具現化する印字模様には、文字、商標、取り扱い絵表示およびバーコード表示の少なくともいずれかを含むと好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る品質表示ラベルは、暗色層、透明層および明色層を積層したテープ素材からなり、長寸のテープ素材に連続的にレーザ刻印できるように設定する。この品質表示ラベルでは、明色層と暗色層との間に透明層が存在することにより、レーザによる融食凹部が明色層を通過して透明層に達して印字模様が明示されても、暗色層まで達しないようにレーザ出力を調節する。この結果、暗色層はレーザ融食されないので、該暗色層に含まれる暗色顔料がラベル外部へ飛散して品質表示ラベルや衣類を汚すことがない。
【0013】
本発明に係る品質表示ラベルは、個別データをそのつどレーザ刻印することにより、品質表示ラベルの内容変更に速やかに対応でき、通常は数十枚単位であっても、該ラベルを1枚ごとに個別作製することも可能である。この品質表示ラベルでは、個別データから印字模様を作製するので表示変更が容易であって製造コストも比較的安価になる。この品質表示ラベルについて、ラベルユーザにレーザ加工機を提供しておけば、無地のテープ素材を適宜搬入するだけで、ラベルユーザにおいて所望のレーザ印字の品質表示ラベルを直ちに得ることができる。
【0014】
本発明に係る品質表示ラベルは、トレーニングウェア、ニットウェア、水着のような衣類の裏側に縫着または熱接着され、貼着後には伸縮性が高いので衣類の伸縮性を損なうことが少なく、着用者の肌と直接接触しても不快感を与えることがない。この品質表示ラベルは、レーザ刻印後に明色層上に貼着したリタックフィルムにより、保管および熱接着作業が容易である。この品質表示ラベルは、その構成層がいずれも伸縮性および耐洗濯性を有することにより、衣類への貼着後に洗濯を繰り返しても剥離したり破損することが少なく、衣類の所定個所と接触させて縫着または熱接着する際に変形しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】品質表示ラベルに適用するテープ素材を示す拡大横断面図である。
【図2】図1に示すテープ素材から得た熱接着前の品質表示ラベルを示す拡大横断面図である。
【図3】図2の品質表示ラベルを例示する概略平面図である。
【図4】別のテープ素材を示す拡大横断面図である。
【図5】図4に示すテープ素材から得た熱接着前の別の品質表示ラベルを示す拡大横断面図である。
【図6】本発明で用いるレーザ加工機の要部の一例を示す概略側面図である。
【図7】図5に示す別の品質表示ラベルを貼着した水着を一部切り欠いて示す正面図である。
【図8】図5に示す別の品質表示ラベルで用いる広幅のベースフィルムを示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る品質表示ラベル1(図2)は、図1に示すように、布帛2上に暗色層3、透明層5および明色層7を積層したテープ素材8からなり、該テープ素材の明色層7上にレーザ刻印することによって製造する。暗色層3、透明層5および明色層7は、布帛2の上に順次塗布して乾燥しても、暗色層3だけを布帛2上に積層し、この後に透明層5を介して明色層7を貼り合わせてもよい。各層の積層には、ナイフコータ、ナイフオーバーロールコータ、リバースロールコータ、オフセットコータ、ロッドコータ、ダイコータなどによって樹脂液を広幅の布帛2に均一に塗布して乾燥する。
【0017】
使用可能な布帛2は、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維または綿、絹、毛などの天然繊維からなり、これら繊維を2種以上加えたものでよい。布帛2の形態は、織物、編物、不織布などのいずれでよく、平滑性、寸法安定性や風合いの点からポリエステル繊維織物が好ましく、特にポリエステルサテンが好ましい。また、樹脂溶液の含浸防止と表面平滑性の向上のために、布帛に撥水剤による前処理やカレンダーによる目潰しを行ってもよい。
【0018】
テープ素材8では、布帛2の表面にポリウレタン樹脂を含む樹脂溶液をコーティングし、湿式凝固することによって暗色層3、透明層5および明色層7を形成すると好ましい。湿式凝固による積層法は、層3,5,7が多孔に形成されるために、比較的少ない樹脂固形分であっても布帛2の凹凸の影響を受けにくく、各層の表面平滑性が高くなるので明確な印字模様を得ることができる。広幅の布帛2は、層3,5,7を積層した後に所定の幅に細断すればよい。
【0019】
所望に応じて、布帛2の裏面に樹脂コーティングを施してもよい。裏面への樹脂コーティングにより、布帛2のほつれ防止、カール防止や表面平滑性を得ることができる。このコーティング用の樹脂は、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、シリコーン、フッ素系化合物、ポリウレタン共重合体、アクリル系樹脂、合成ゴムなどの各種の樹脂である。また、成膜方法として、乾式法や湿式法などを適用できる。
【0020】
図4には、別の品質表示ラベル10を示し、該ラベルではベースフィルム12上に接着層14を形成し、さらに暗色層3、透明層5および明色層7を積層する。接着層14、暗色層3、透明層5および明色層7は、通常、ベースフィルム12の上に順次塗布して乾燥しても、接着層14および暗色層3をベースフィルム12上に積層し、この後に透明層5を介して明色層7を貼り合わせてもよい。
【0021】
ベースフィルム12は、厚さ50〜150μmであって剥離性を有していれば市販品でよく、ポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミドなどのプラスチックフィルム、パーチメント紙、合成紙、セロファンなどの平坦な材料であり、所望に応じて剥離性を付与するためにセルロース系樹脂,ナイロン系樹脂、ロジン、シリコン樹脂、アクリル樹脂などを塗布すればよい。例えば、ベースフィルム12は、剥離性を有する透明ポリエステルフィルムまたはナイロン系ワックスを塗布したパーチメント紙である。
【0022】
図4の品質表示ラベル10において、接着層14は、厚さ50〜100μmであり、衣類の伸縮に高い伸縮性を有することを要し、伸縮性が低いと貼着した衣類との間で違和感が生じやすい。接着層14は、常温で弾性体の性質を示し且つ熱接着時の高温で可塑化する樹脂液から形成し、典型的には主成分として熱可塑性ポリウレタン系樹脂、布地を把持するために熱可塑性ポリアミド系樹脂などを添加する。ポリウレタン系樹脂として商品名:ニッポラン5120(日本ポリウレタン工業製)、ポリアミド樹脂として商品名:プラタミドH005(日本リルサン製)などが例示できる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、短鎖ポリオールとジイソシアネート類のポリマー鎖がハードセグメントで、長鎖ポリオールとジイソシアネート類のポリマー鎖がソフトセグメントであり、両セグメントの比率によって硬さや弾性率などの機械物性が変わる。接着層14用の樹脂液には、増粘剤、増粘助剤、消泡剤などを添加してもよい。
【0023】
接着層14として使用可能な水性ポリウレタンラテックスとして、商品名:ハイドランAP70、ボンテック1050(大日本インキ化学工業製)などが例示でき、これらはポリアミドや粒状ポリウレタン系樹脂などと混合して使用してもよい。水性ラテックスには、合成済みのポリウレタンを乳化分散させた乳化分散系と、ポリオールとジイソシアネート類から合成される重合系とがあり、通常、分散質としての安定化保護層に覆われたポリウレタン粒子が希薄水溶液に分散している。この水溶液には、乳化重合に使用された重合開始剤切片、界面活性剤、水溶性ポリマー、緩衝剤、重合仮定で形成される水溶性オリゴマーなどを含む場合がある。
【0024】
テープ素材8,10において、暗色層3、透明層5および明色層7は、通常、ほぼ同等の組成であり、好ましくはポリウレタン系樹脂またはこれと同様の軟質ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などの樹脂液を塗布して形成する。この樹脂液は、熱架橋性や経時架橋性のような反応性樹脂液であっても、水性ポリウレタンラテックスなどでもよい。暗色層3および明色層7は、厚みが20〜100μm程度であり、暗色層3で厚みが20〜30μm、明色層7で厚みが30μm以上であると好ましい。
【0025】
暗色層3および明色層7には、1種または2種以上の顔料を添加して着色し、両層のコントラストが明確であることが望ましい。例えば、暗色層3は、黒色、濃赤色、濃紺色、濃緑色、濃灰色、赤色、茶色などに着色し、添加顔料はカーボンブラック、セラミックブラック、カドミウムレッド、ウルトラマリンブルー、クロムグリーンなどである。一方、明色層7は、白色、銀色、金色、クリーム色、淡黄色,ピンク色などに着色し、添加顔料は二酸化チタン、亜鉛華、アルミニウム末、ブロンズ末、リン酸鉛,亜鉛黄、クロムイエローなどである。
【0026】
透明層5は、暗色層3や明色層7よりも薄くて厚みが10〜20μm程度であり、顔料や充填剤などの固体添加物などを含んでいない。また、透明層5は、明色層7と暗色層3との間に配置されるので、明色層7の一部がレーザで印字模様15(図3)として融食されると、該印字模様の凹部16の先端が暗色層3まで達していなくても、これを明色層7の表面に露出させて印字模様15を明示させる。
【0027】
透明層5の存在により、融食凹部16の先端が明色層7と暗色層3との間に確実に位置できる。一般に、明色層7の高さ位置は、布帛2の厚さ変化などによって数μmのオーダーで変動するので、透明層5が存在しないと、融食凹部16の先端が明色層7内に止まったり、暗色層3の中まで侵入することが生じやすい。仮に、融食凹部16の先端が明色層7内に止まると印字模様15が不鮮明になり、暗色層3の中まで侵入すると、該暗色層に含まれる暗色顔料がラベル外部へ飛散してラベルや衣類を汚すことになる。透明層5は、暗色層3や明色層7とほぼ同様の組成であっても、有色顔料を含む暗色層3や明色層7と比べてより伸縮性に富み、両層を効果的に接着する機能も有する。
【0028】
暗色層3、透明層5および明色層7用の樹脂液について、好適なポリウレタン樹脂は、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系であり、またはこれらの混合液であればよい。この際に、発泡性やコスト面から、ポリエステル系およびポリエステル−エーテル系ポリウレタン樹脂であると好ましい。この樹脂溶液の調製に使用される溶剤は、湿式凝固法に使用できる溶剤であれば特に限定されないが、例えばジメチルホルムアミド(DMF)であると好適である。
【0029】
好適なポリウレタン樹脂は、2種以上のポリウレタン樹脂の混合物であり、そのうちの少なくとも1種が100%モジュラスが300kg以上である高モジュラスのポリウレタン樹脂であり、これが20〜50質量%となるように配合すると好ましい。高モジュラスのポリウレタン樹脂は、湿式凝固時の凝固速度が非常に速く、凝固直前のポリウレタン樹脂溶液の表面平滑性を凝固後もそのまま維持して、所望の表面平滑性を付与する。この高モジュラスのポリウレタン樹脂の量は、20質量%未満では十分な表面凝固性が得られず、優れた表面平滑性が達成できない。一方、50質量%を超えると、樹脂全体のモジュラスが高くなりすぎ、成形収縮による表面平滑性の低下が起こり、風合いも硬くなってしまう。高モジュラスのポリウレタン樹脂と混合する他のポリウレタン樹脂の少なくとも1種は、100%モジュラスが100kg以下であると好ましい。
【0030】
好適なポリウレタン樹脂の溶液には、必要に応じて顔料や架橋剤などの添加剤を加え、さらに耐洗濯性を向上させるために微粉末を加えてもよい。この微粉末として、平均粒子径が300μm以下である多孔質微粉末すなわち多孔質シリカ、活性炭、ゼオライトなどが例示され、好ましくは多孔質シリカである。この微粉末は、2種以上のものを併用してもよいが、加工安定性や作業の煩雑性を避けるために、DMFに対する分散性の良いものを1種に限定して用いることが望ましい。樹脂溶液の塗布量は、湿潤状態で50〜300g/m2であり、特に厚い層では複数回に分けて塗布してもよい。
【0031】
テープ素材8(図1)は、例えば、レーザ刻印後に横スリッタ19(図6)で寸断して単枚化したり、さらにロール状に巻き取って別の工程で単枚化してもよい。得た品質表示ラベル1は、寸断されてもラベル縁がほつれることがなく、そのまま衣類の所定個所に縫着できる。
【0032】
一方、別のテープ素材10(図4)は、所望に応じて、レーザ刻印後に図4の態様からベースフィルム12を剥離し、リタックフィルム17(図5)を明色層7上に貼着してもよい。リタックフィルム17は、実質的にベースフィルム12と同様に、ポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミドなどの透明プラスチックフィルムである。リタックフィルム17は、ベースフィルム12の厚みと同等またはそれ以下の厚みでよく、通常20〜100μm程度である。
【0033】
別の品質表示ラベル18(図5)は、横スリッタ19(図6)による寸断で単純な矩形平面を有し、所望に応じて図7に示すようにその四隅を面取りしてもよい。この面取りは、横スリッタのカッタ形状を変形して寸断と同時に行っても、その寸断工程後に追加の工程において面取りしてもよい。ラベル四隅を面取りすると、水着20(図7)などの衣類の裏側に貼着した後に、衣類使用時に四隅から剥がれることが少なくなる。
【0034】
リタックフィルム17の裏面には、粘着剤、感熱または水溶性接着剤などが塗布されており、粘着剤塗布では離型紙を剥離した後に圧着し、感熱または水溶性接着剤では加熱または水付与の後に圧着すればよい。リタックフィルム17を明色層7上に直接形成する場合には、反応または経時硬化性の樹脂からなり、ロールコーティングなどで明色層7上に積層し、加温などによって迅速に硬化させればよい。一方、ベースフィルム12を剥離する際には、所望に応じて加温または溶剤などを付与してもよい。
【0035】
テープ素材1または8は、例えば、図6に示ようなレーザヘッド22を有するレーザ加工機によってオンデマンドで印字される。オンデマンド印字とは、「要求があり次第に直ちに印字する」という意味であり、必要な時にラベル1枚を含む少枚数でも印字できることを意味する。したがって、ラベルユーザにレーザ加工機を提供しておけば、無地のテープ素材8,10を適宜搬入するだけで、ラベルユーザにおいて所望のレーザ印字の品質表示ラベルを直ちに得ることができるため、ラベルユーザは少数枚のラベルでも何の制約も受けずに自由に製造し、且つラベル納期の問題も解消する。
【0036】
本発明で用いるレーザ加工機には、テープ素材8にレーザ光を照射して融食凹部16を形成する炭酸ガスレーザまたはYAGレーザなどを取り付ける。例えば、レーザ加工機が炭酸ガスレーザであれば、COレーザ発振機としてシンラッド社(米国)製の発振機を例示でき、該発振機はRF励起:COレーザ 、レーザ波長:10.5〜10.7μm不可視光、レーザ出力:50W、レーザ光伝送方式:ミラー反射式、レーザ光集光方式:レンズ式である。ノズル24を有するレーザヘッド22は、例えば、1台のレーザ発生機(図示しない)に対して複数個取り付け、各ヘッドをサーボモータ(図示しない)などによって縦および横方向に駆動し、各ヘッド自体もそれぞれ横方向に独自に微動でき、該ヘッドの位置をコンピュータによって正確に制御する。
【0037】
図示しないけれども、レーザ加工機は制御コンピュータに接続され、該制御コンピュータにおいて顧客別の個別データを保存し、この個別データは、文字、商標、取り扱い絵表示およびバーコード表示などからなる。この個別データが変更されると、直ちに変更データをレーザ加工機へ送信して印字模様15(図3参照)を変更する。この制御コンピュータが、インターネット回線などを介して顧客側のコンピュータと接続されると、顧客側において印字データを任意に変更することが可能である。
【0038】
このレーザ加工機は、フレーム内に金属ネットコンベア26を走行可能に配置する。ネットコンベア26は、ハニカム状の透孔30がほぼ全面に設けられたベルト32からなり、該ベルト表面にテープ素材8を載置して搬送する。このレーザ加工機では、前記のフレームの一方の短辺側にテープ素材8のロール34を回転自在に配置し、他方の短辺側にストック50または巻き取りロールなどを配置する。前記のフレーム内において、ベルト32の裏側に減圧装置の吸引ボックス(図示しない)を配置し、該吸引ボックスは吸引管を経てブロアに連結する。このブロアを稼動して吸引ボックス内を減圧化すると、テープ素材8はベルト32の透孔30を介してベルト表面に吸着される。この減圧装置は、テープ素材8のレーザ裁断によって生じた糸くずなどを集塵する機能を有する。
【0039】
レーザヘッド22のノズル24は、テープ素材8に近接するけれども、該テープ素材に接触することはない。例えば、レーザヘッド22用のレーザビームは、テーブルの後方側部に設置したレーザ発生機から放射され、可動アームの一端部に設けたミラーで反射されて各レーザヘッド22に入射する。各レーザヘッド22では、反射ビーム38をミラー40によって分岐し、各分岐ビーム42をそれぞれノズルの集光レンズ44に導入する。集光レンズ44で集束された集光ビーム46は、テープ素材8で焦点を結ぶ。
【0040】
テープ素材8について、前記のレーザ加工機によってコンベア26上で印字模様15を刻印加工する。このレーザ加工機は、テープ表面に25〜120W程度のレーザを照射して明色層7の一部をレーザ融食し、印字模様15となる単数または複数の融食凹部16を形成する(図2参照)。このレーザ加工機では、融食凹部16が明色層7の厚みより深くなっても暗色層3まで達しないように、あらかじめ明色層7と透明層5の厚み、樹脂の材質などによってレーザ出力が設定されている。
【0041】
図2に示すように、印字模様15では、その融食凹部16は明色層7を通過するけれども、該凹みの先端が透明層5に位置して暗色層3まで達しない。暗色層3は、凹部16の部分だけ明色層7の表面に露出して印字模様15を表示させる。この結果、暗色層3がレーザ融食されないので、該暗色層に含まれる暗色顔料がラベル外部へ飛散してラベル1を汚すことがない。印字模様15を刻印したテープ素材8’は、レーザ刻印の後に、コンベア26によってレーザ加工機の外部へ搬出される。
【0042】
刻印済みのテープ素材8’は、図2に示すような層断面構成になる。このテープ素材8’は、ロール状に巻き取っても、横スリッタ19(図6)で1枚ずつに寸断され、単枚化した品質表示ラベル1をストック50に積み込んでいく。所望に応じて、その四隅を面取りする工程を追加すれば、図7に示すような品質表示ラベル18を得ることができる。
【実施例1】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図2に示す品質表示ラベル1を製造するために、布帛2としてポリエステルサテンを用い、これに撥水剤による前処理を行っておく。
【0044】
ポリエステルサテンの上には、カーボンブラック顔料を含むポリエステル系ポリウレタンによって暗色層3を塗布して乾燥する。暗色層3の厚さは25μmである。一方、二酸化チタン顔料を含むポリエステル系ポリウレタンによって明色層7を形成し、該明色層の厚さは40μmである。暗色層3の上にポリエステル系ポリウレタン樹脂を塗布してから、明色層7を重合して乾燥する。この結果、厚さ15μmの透明層5を暗色層3と明色層7との間に形成する。
【0045】
ポリエステルサテン上に3層積層したテープ素材8(図1)は、縦スリッタによって幅20mmに精密裁断する。テープ素材8のロール34は、図6に示すようにレーザ加工機に取り付け、個別データである印字模様15を明色層7にレーザ刻印する。このレーザ加工機では、レーザ融食によって印字模様15の凹部16が透明層5まで達し、該凹部の先端は明色層7の厚みより深いけれども、暗色層3まで達していない。
【0046】
印字模様15が形成されたラベル素材8’は、横スリッタ19で1枚ずつに寸断され、単枚化した品質表示ラベル1をストック50に積み込んでいく。得た品質表示ラベル1は、繰り返し洗濯試験10回、乾燥摩擦試験100回、湿潤試験100回、アクセレロータ試験2000rpm×10分において、いずれも外観変化が殆ど生じなかった。また、伸張率75%、1万回の引っ張り試験について破断しない。塩素水処理堅牢度およびNOx堅牢度は4〜5級であり、ATTS法による汗ジャングル試験でも異常はなかった。品質表示ラベル1は、適宜の衣類の裏側に縫着すればよく、縫着後に洗濯を繰り返しても印字模様15が消滅したり、ラベルが破損することが少ない。
【実施例2】
【0047】
図4に示すテープ素材10を製造するために、広幅のベースフィルム12として、厚さ50μm、幅970mm、長さ100mのロール状ポリエステルフィルム(東レ製)を用い、該フィルムの表面にロールコータで公知の離型剤を厚み約0.5μmで0.6g/m塗布して乾燥する。
【0048】
ベースフィルム12の上には、接着層14,暗色層3、透明層5および明色層7を順次積層し、この積層では1層をロールコータで均一に塗布して乾燥すると次の層を塗布し、最後の明色層7を塗布して乾燥すれば積層が完了する。接着層14は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂を含み、これをロールコータでシート全面に塗布・乾燥すると、接着層14の厚さは150μmである。
【0049】
暗色層3、透明層5および明色層7は、いずれもポリエステル系ポリウレタン樹脂を含み、暗色層3にカーボンブラック顔料を添加し、明色層7に二酸化チタン顔料を添加しておく。接着層14は厚み100μm、暗色層3は厚み30μm、透明層5は厚み15μm、明色層7は厚み30μmである。
【0050】
4層積層したベースフィルム12は、縦スリッタ(図示しない)を用いて、図8において点線52で示すように、幅200mmに粗断ちする。幅200mmのシートロールは、ついで図8において点線54で示すように、幅20mmに精密裁断する。幅20mmのテープ素材10のロールは、図6と同様のレーザ加工機に取り付け、個別データである印字模様15を明色層7にレーザ刻印する。このレーザ加工機では、レーザ融食によって印字模様15の凹部16が透明層5まで達し、該凹部の先端は明色層7の厚みより深いけれども、暗色層3まで達していない。
【0051】
レーザ刻印したテープ素材10は、レーザ加工機後方の供給機構(図示しない)においてリタックフィルム17を貼着する。この際に、リタックフィルム17は裏面が粘着剤付きであり、この供給機構でベースフィルム12を剥がしながらリタックフィルム17を供給し、該フィルムをローラ対でレーザ刻印済みのテープ素材に圧着する。ついで、レーザ刻印済みのテープは、適宜のローラでベースフィルム12を剥離する。この結果、レーザ刻印済みのテープ素材は図5に示す層構成になる。このテープ素材を1枚ずつに寸断し、単枚化した品質表示ラベル18(図5)をストックに積み込む。所望に応じて、その四隅を面取りする工程を追加し、表面が図3と類似の品質表示ラベル18を得る。
【0052】
得た品質表示ラベル18は、明色層7上に貼着したリタックフィルム17を上側にして衣類などの被着材の上に載置すると、暗色層3が被着材の表面と直接接触するので熱接着作業が容易である。また、リタックフィルム17によって適度の硬さを有するので、多数枚を積み重ねて保管することができ、積み重ねたものから1枚ずつ取り出しやすい。
【0053】
熱接着時には、品質表示ラベル18を裏返し、図7に例示するように水着20の裏側に置いて加熱・加圧する。この熱接着条件は、熱転写機(商品名:T−80型トランステイタ)において、温度を150℃、熱接着圧力を1kg/cm、熱接着時間を10秒に設定する。この加熱接着の結果、品質表示ラベル18を水着20の裏側に貼着できる。水着20裏側に貼着した品質表示ラベル18は、全体的に伸縮性が高いので水着20の伸縮性を損なうことがなく、使用時に着用者の肌と直接接触しても不快感を与えることがない。
【0054】
貼着した品質表示ラベル18は、繰り返し洗濯試験10回、乾燥摩擦試験100回、湿潤試験100回、アクセレロータ試験2000rpm×10分において、いずれも外観変化が殆ど生じなかった。また、伸張率75%、1万回の引っ張り試験について破断せず、その伸張率は110%である。塩素水処理堅牢度およびNOx堅牢度は4〜5級であり、ATTS法による汗ジャングル試験で異常はなかった。このように、品質表示ラベル18は、水着20への貼着後に洗濯を繰り返しても剥離したり破損することが殆ど生じない。
【符号の説明】
【0055】
1 品質表示ラベル
2 布帛
3 暗色層
5 透明層
7 明色層
8,10 テープ素材
12 ベースフィルム
14 接着層
15 印字模様
16 融食凹部
17 リタックフィルム
18 品質表示ラベル
20 水着
22 レーザ加工機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の上に、暗色層、透明層および明色層を順次積層したテープ素材からなり、個別データに基づいて明色層上にオンデマンドでレーザ刻印する際に、融食凹部が明色層を通過して透明層に達することで印字模様を表示させ、単枚化の後に衣類の所定個所に縫着するレーザ刻印の品質表示ラベル。
【請求項2】
接着層の上に、暗色層、透明層および明色層を順次積層したテープ素材からなり、個別データに基づいて明色層上にオンデマンドでレーザ刻印する際に、融食凹部が明色層を通過して透明層に達することで印字模様を表示させ、単枚化の後に衣類の所定個所と接触させて熱接着するレーザ刻印の品質表示ラベル。
【請求項3】
暗色層が黒色および明色層が白色である請求項1または2記載の品質表示ラベル。
【請求項4】
暗色層、透明層および明色層がいずれもポリウレタン樹脂からなる請求項1または2記載の品質表示ラベル。
【請求項5】
個別データから具現化する印字模様には、文字、商標、取り扱い絵表示およびバーコード表示の少なくともいずれかを含む請求項1記載の品質表示ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168417(P2012−168417A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30425(P2011−30425)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(391015627)日本ダム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】