説明

レーザ加工の方法および装置

本発明は、レーザアブレーションマイクロリソグラフィに関する。具体的には、画素毎に複数のミラーを使用して、ミラーに損傷を与えない程度にSLMミラー面上のエネルギー密度を維持しつつ、レーザアブレーションを容易にするエネルギー密度にエネルギーを集中させる、新たなSLM設計およびパターニング方法を開示する。複数のマイクロミラーは、現行のDMD装置をはるかに超える非常に高い周波数で再設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年3月5日に提出された米国仮特許出願第61/311,271号「レーザアブレーションの方法および装置(Methods and Device for Laser Ablation)」の権利を主張する。
【0002】
本願は、2009年11月25日に提出された米国特許出願第12/626,581号「複合二次元インターレース方式を用いる画像の読取りおよび書込み(Image Reading And Writing Using A Complex Two−Dimensional Interlace Scheme)」に関連しており、同出願は、多数の画素を有する大型SLM(spatial light modulator)を用いる方法およびシステムを開示している。
【0003】
本願は、2010年2月16日に提出された米国特許出願第12/706,624号「高パワー配信用に複数のミラーを組み合わせるSLM装置および方法(SLM Device And Method Combininb Multiple Mirrors For High−Power Delivery)」に関連しており、参照により同出願を組み込む。同出願は、高画質、高変調速度、および、高パワー処理を有するSLMを開示している。
【0004】
本願は、2010年3月5日に提出された米国特許出願第12/718,904号「一部干渉性照明用の照明方法および装置(Illumination Methods and Deviced for Partially Coherent Illumination)」にも関連している。本明細書に記載されるパルスは、参照出願に記載されるように、仮想瞳孔を通じて処理される連続レーザまたはモードロック準連続レーザからの疑似パルスであってもよい。参照出願に記載される加工対象物追跡装置も、本文書に記載のアブレーション技術を用いて使用することができる。
【背景技術】
【0005】
本発明はレーザアブレーションマイクロリソグラフィ、概して、パルスレーザ光を用いるレーザパターニングに関する。特に、画素毎に複数のミラーを使用して、ミラーに損傷を与えない程度にSLMミラー面上のエネルギー密度を維持しつつ、レーザアブレーションを容易にするエネルギー密度にエネルギーを集中させる、新たなSLM設計およびパターニング方法を開示する。複数のマイクロミラーは、Texas Instruments社製造販売のDMD装置をはるかに超える非常に高い周波数で再設定することができる。この設計は、米国特許出願第12/626,581号に記載の書込みパターンと有効に組み合わせることができる。
【0006】
たとえば、LCDディスプレイ製造用の現在の大半のリソグラフィはフォトレジストを用いて行われており、後でフォトレジストは、露光して、現像して、パターニング前に領域全体に蒸着される均一な膜にパターンを描くために使用されるエッチマスクとなる。この手順により高品質が保証されるが、多くのステップを必要とし、場合によっては、全面蒸着された高価な材料のほとんどが浪費される。したがって、工程ステップの数を低減させる、および/または材料の量を減らす新たな工程が積極的に探られている。集中パルス光を使用して、材料を加工対象物へ移送する、あるいは表面または表面膜を変更する方法がいくつか既知である。パルス毎の露光量は1〜5J/cmとすることができるが、0.1〜1J/cmのエネルギー密度で十分な場合がある。
【0007】
フォトレジストをパターニングし、マスクを用いて膜を切除する技術が既知である。マスクの代わりにDMD装置を使用することも既知である。DMD直接レーザアブレーションのスループットが低いのは、DMDで達成可能なパワー密度と更新レートが中程度であるためである。設計上、典型的なDMDミラーは個々の変調器としての役割を果たし、11×11または13×13ミクロンの面積を有する。ミラー毎のパルスパワーは、一部はミラーのサイズ、一部は基部のCMOSの機能またはMEMSの機能を損なう、あるいは阻害するリスクによって制限される。DMD装置は通常、20〜30kHz、またはチップ面積のごく一部だけが更新される場合は最大約70kHzのフレームレートを有する。制限されたフレームレートと制限されたパルスエネルギーでは、平均パワーがアブレーションの多くの用途で不十分である。シリコン上液晶(「LCOS」)SLMを使用して、マルチビームアブレーションシステムを制御することが当分野において既知である。LCOS装置は比較的低速で、通常は50〜200Hzで動作し、低キロヘルツの範囲で動作するように最適化することができる。
【0008】
TI社製DMDの初期モデルを使用するアブレーションが特許文献1に記載されている。1,000×1,000画素の変調器のDMDは、200×200ミクロンの面積上に85倍に縮小される。SLMは、システムがレーザパルス間に100ミクロンずつ進む画像を生成する。各変調器は個別に駆動されて、対称的縮小で、DMDから基板上に撮像される。DMDはミラーからミラーへの位相コヒーレンス用に設計されていないため、多数のミラーを加工対象物上の1つの回折限界レーザスポットに寄与させることは困難である。したがって、縮小は、最善でも1つのミラー領域対1つのアブレーションスポットである。開示される技術はこのような制限を克服し、加工対象物に当たるパルスにおいて高または非常に高いエネルギー密度を可能にする。
【0009】
当分野において、表面材料のレーザアブレーションにより表面トポグラフィを作製することが既知である。また、有機、半導体、無機誘電体、または金属膜などの薄膜を全面蒸着し、レーザアブレーションによりパターニングすることも既知である。さらに、膜上のポリマなどのマスク材料を蒸着し、レーザアブレーションによってマスク材料をパターニングし、残りのマスクをエッチマスクとして利用して膜をパターニングすることも既知である。さらに、膜の全面蒸着の前にポリマフィルムなどのマスク材料を蒸着し、リフトオフを行い、膜をパターニングすることも既知である。全面蒸着の代わりに、インク噴射などによって特定領域に選択蒸着してもよく、蒸着された領域は、直接あるいはアブレーションパターンエッチまたはリフトオフマスクの熱でレーザアブレーションによりトリミングすることができる。また、空気、不活性ガス、液体、または真空中でアブレーションを実行することも既知である。アブレーションは、加工対象物の前側からと透明加工対象物の裏側から実行されている。特許文献2は、主に「レーザ治療、レーザ切断、およびレーザ手術」の段落0035で特定されている医療用のいわゆるスペクトルブラシ上で強力な連続波またはパルスレーザを使用するレーザアブレーションについて言及している。空間情報のレーザビームの後方反射への空間符号化は、上記公開の重要な特徴である。段落0016。
【0010】
特許文献3は、10psiもの強力な衝撃波を生成することによって金属表面を変更する金属表面のレーザピーニングについて記載している。カラム4、第45行。レーザビームの高フルエンスがSLMの選択および使用において問題となり得るという注意とともに空間光変調器が言及されている。カラム6、第59行。
【0011】
特許文献4は、ホログラフィックブランク用基板の状況でのレーザアブレーションについて言及している。9ページ。ポリマがアブレーション材料の良好な候補として特定されている。14ページ。マイクロミラーアレイの最新技術が20ページで説明されている。
【0012】
開示されている方法および装置はレーザパルスによるパターニングに適するが、本願はSLM面への高パワー集中によって生じるSLMへの損傷を回避し、スループットの向上を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5208818号明細書
【特許文献2】米国特許公開2010/0141829号明細書
【特許文献3】米国特許第6423925号明細書
【特許文献4】国際出願特許公開第2008/109618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はレーザアブレーションマイクロリソグラフィに関する。特に、画素毎に複数のミラーを使用して、ミラーに損傷を与えない程度にSLMミラー面上のエネルギー密度を維持しつつ、レーザアブレーションを容易にするエネルギー密度にエネルギーを集中させる、新たなSLM設計およびパターニング方法を開示する。複数のマイクロミラーは、現行のDMD装置をはるかに超える非常に高い周波数で再設定することができる。この設計は、米国特許出願第12/626,581号に記載の書込みパターンと有効に組み合わせることができる。本発明の具体的な態様は、請求項、明細書、および図面で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】1列の画素を有する1D SLMの部分を示し、各画素は多数のミラーを含み、1光ビームレット/スポットは3画素毎にある。
【図1B】2列の画素を有するSLMを示し、ビームレットの数は2倍である。
【図1C】駆動の簡易化のために共に接続された複数列のミラーを有するSLMを示す。
【図1D】図1Cと類似するが2列の画素を有するSLMを示す。
【図1F】各画素をミラー内でさらに分割する別の形を示す。
【図1G】各画素をミラー内でさらに分割する別の形を示す。
【図1H】各画素をミラー内でさらに分割する別の形を示す。
【図1I】各画素をミラー内でさらに分割する別の形を示す。
【図2】レーザとSLM上にスポットアレイを生成するビームスプリッタの例を示す。
【図3】レーザアブレーションシステムの高パワー実施形態を示す。
【図4A】いかにして高パルス周波数がパルスエネルギー制限下で高平均速度を付与できるかを示す。
【図4B】較正が材料の均一な除去に及ぼす好影響を示す。
【図4C】較正が材料の均一な除去に及ぼす好影響を示す。
【図5】いかにして材料除去レートがパルスエネルギーの非線形関数であるかを示す。
【図6A】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図6B】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図6C】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図6D】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図6E】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図6F】パルスレートおよび画素パターンのバリエーションを示す。
【図7】領域をカバーできる代替方法を示す。
【図8】材料除去レートが平坦構造での距離zにいかに依存するかを示す。
【図9】焦点を介した材料除去レートの関数を示す。
【図10】基板上の材料の特徴高さの上になったり下になったりする傾斜焦点面を有する、基板に平行な焦点面を備えたシステムの動作を比較する。
【図11】基板上の材料の特徴高さの上になったり下になったりする傾斜焦点面を有する、基板に平行な焦点面を備えたシステムの動作を比較する。
【図12】同一のミラーアレイ上に単独画素を形成するために使用される様々なミラー群を示す。
【図13A】ガウスビーム分布からトップハット、超解像スポット、または類似の分布への任意の変換を示す。
【図13B】ガウスビーム分布からトップハット、超解像スポット、または類似の分布への任意の変換を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して詳細な説明を行う。好適な実施形態は、請求項に定義される本発明の範囲を限定するのではなく、本発明を例示するために記載する。当業者であれば、以下の記載に基づき様々な等価の変形を理解するであろう。
【0017】
提案されるアブレーションシステムは、米国特許出願第12/706,624号「高パワー配信用に複数のミラーを組み合わせるSLM装置および方法(SLM Device And Method Combining Multiple Mirrors For High−Power Delivery)」のマイクロレーザシステムに記載される新型のSLM(spatial light modulator、空間光変調器)に基づくことができる。新型のSLMはCMOSを搭載しない完全に受動型の装置であり、各画素は比較的小さなミラーの集合、典型的には同一の端末によって駆動されるミラー列である。活性化領域のサイズは、たとえば、82mm×2mmすなわち164平方mmとすることができる。個々のミラーが小さいため、更新レートは0.5、1、2、または4MHzを含む範囲に収めることができる。SLMは、50ワット以上の平均光パワーに耐えるように作製される。
【0018】
複数のマイクロミラーは、各ミラーを小さくすることができるため、現行のDMD装置をはるかに超える、非常に高い周波数で再設定することができる。静電始動ミラーの速度は、バネ定数とミラーの質量間の比に左右される。速度が速いほど高い駆動電圧を達成できるが、電子機器の駆動がより困難になるという代償を払う。ミラーはDMD装置とは対照的に、ミラーの通常の移動に伴い、約4分の1の波長、たとえば、1ミクロンの波長で約250nm、および0.5、0.35、および0.250ミクロンで125、83、および63nmで回折を生じる。小さな移動なので、高共振周波数用の硬いバネを使用できる。動作は常に、装置を頑丈で信頼性の高いものにする機械的バネの弾性条件下にある。駆動電圧の作用を拡大し、硬いバネと高共振周波数を許容する高い定バイアス電圧を有する旋回ミラーを使用することが特に有益である。旋回ミラーは始動中に光源に向かって移動するミラー面の部分と、光源から離れるように移動するミラー面の別の部分とでほぼ対称的であり、反射パワーの良好かつ安定したアナログ変調を可能にする。ミラーはデジタルアナログコンバータ(「DAC」)からのアナログ電圧によって駆動され、ミラー(ひいてはSLM画素)の反射は該電圧の連続的な機能である。後述するように、これは正確なエネルギー較正のために使用することができる。
【0019】
DMD装置とは対照的に、記載されるSLMのミラーは単独の光学面としての役割を果たすように設計される、すなわち、1画素として使用されるミラーの全面が、明るい状態で光学的に平坦にすることができる。ミラーとMEMSは密な平坦度、たとえば10nm未満の平坦誤差で作動させられ、結果として優れた位相制御を実現する。これにより、個々の小さなミラーの速度と同じ速度で、ミラーの集合を1つの変調器セルまたは画素として作動させることができる。画素領域のサイズは、実際的な点、主に平坦度と装置全体のサイズによってのみ制限される。1画素、すなわち、変調の1単位を形成するミラーの集合は、DMDよりもずっと大きな面積を有する。また、Silicon Light Machines製の回折格子ライトバルブ(GLV)の1画素よりもずっと大きい。
【0020】
SLMの表面上の複数ミラーは、画素領域が非常に非対称である、あるいは高アスペクト比を有する場合でも、回折限界スポットなどの加工対象物上の1スポットに方向付けることができる。装置の全長に沿って1024、2048、4096、または8192個以上など、できるだけ多くの画素を嵌め込めるように、SLM画素領域はSLMアレイの縦方向に短く、たとえば20、10、8、または6ミクロン以下である。また、できるだけ高いパワーに耐え得るように画素は横方向に比較的大きく、たとえば0.25、0.5、または1mmよりも大きい。画素は形状が極めて非対称であるスポットで照明されて、高非対称スポットからの投射は高アナモルフィック光学系によって縮小される。アナモルフィック特性は2方向、および/または大きく焦点からずれてSLM上で広がる長方向への様々な縮小(拡大)を用いて実現することができる。
【0021】
典型的な実施形態では、このSLMはピコ秒またはフェムト秒の範囲で、SLMの最大動作周波数までの反復周波数でパルスを生成するパルスレーザによって照明される。もしくはSLMの更新周波数よりも高い周波数でパルスを生成するレーザによって、電子的更新毎に複数のパルスをSLMに印加することができる。
【0022】
該レーザは、Lumera Laser社(ドイツ)製の市販のピコ秒レーザとすることができる。高い平均パワーを得るため、適切な特性を有するレーザは、ディスクまたはファイバ増幅器で増幅させることができる。たとえば、Lawrence Shahらによる論文「50W、50μJ、サブピコ秒レーザシステムでのマイクロマシニング」、OPTICS EXPRESS 第14巻、25号(2006)を参照されたい。ビームを分割し、平行増幅器(たとえば、ファイバ)を用いて増幅することによって、ほぼ無制限のパワーを付与することができる。ビームレットは、単独のレーザ、複数のレーザ、または同一の発振器により駆動される複数の増幅器から発射することができる。アブレーションに使用されるレーザは通常、可視の赤か近赤外線を放射するが、手近のアブレーションに適した波長、たとえば、可視の緑、青、または紫外線を与えるように変換された周波数であってもよい。
【0023】
アブレーションに関しては、大量の文献や多数の産業的用途が存在する。波長、パルスエネルギー密度、パルス時間などのパラメータは広範に変動する。本発明はナノ秒、ピコ秒、またはフェムト秒のパルスなどの様々なパルス長を有するレーザを用いて利用することができるが、本開示は短パルスに的を絞っている。高品質、低熱損傷、および高質量除去レートで大半の材料を切除するのにピコ秒レーザを使用できることが既知である。これにより、Lumera社製レーザなどの適切なレーザが商業的に利用可能となっている。通常、アブレーションは1〜5J/平方cm程度のパルスエネルギー密度で行われるが、材料の中にはアブレーションに0.1mJしか必要としないものもある。パルス長が約5ピコ秒未満であるとき、透明材料までもいわゆるクーロン爆発により切除される場合がある。すなわち、高瞬時電力が加工対象物材料の薄層内の価電極をひき剥がし、材料が分解する。フェムト秒範囲のさらに短いパルスは、材料改変、3D加工、または3Dリソグラフィのための材料内の2光子工程などの非線形作用を引き起こすために使用することができる。
【0024】
短パルスアブレーションの例は、Lawrence Shahらの論文「50W、50μJ、サブピコ秒ファイバレーザシステムを用いるマイクロマシニング(Micromachining with a 50 W, 50μJ, subpicosecond fiber laser system)」、OPTICS EXPRESS 第14巻、25号(2006)に記載されている。45MHzパルス反復周波数での1038nmレーザ発振器からのパルスが捕捉され、50マイクロジュールのエネルギーで0.5〜1ps長のパルスを出力する格子パルスコンプレッサを備えるチャープファイバ増幅器によって増幅される。使用されたパルス反復レートは1MHzであるが、著者はこのレートは増幅器へのポンプパワーによってのみ制限されたと述べている。ビームの質は、ポンプおよび出力パワーの範囲全体を通じて良好であった。レーザパルスは、アルミニウム、アルミナ、およびガラスの3つの材料を対象に、40Wの平均パワーで0.17〜0.24mm3/sのアブレーションレートでこれらの材料を切除するのに使用された。
【0025】
Shahは、この材料除去レートで、1時間で1ミクロン厚の膜0.6平方メートルが除去可能であると報告している。単独画素に複数のミラーを有する本発明者らの開示するシステムを用いれば、特徴を有する表面上に1ミクロン未満のサイズでパターンを生成しつつ、1時間当たり数平方メートルから材料を除去できるだけの高データレートとレーザパワーレベルにミラーを変調できると本発明者らは予測する。これは、任意の現在既知なアブレーション技術の能力をはるかに超えている。
(例示の実施形態)
ある設計では、50Wの平均パワーおよび1MHzの反復レートを有するユーザの使用を提案する。レーザから加工対象物への光学効率は50%とすることができる。SLMは8192個の画素を有し、ビームは分割されて3画素毎に照明するように焦点が合わせられる。中間の未使用画素は、ビームレットが互いに干渉するのを防ぐ分離区域としての役割を果たす。8192/3=2730個のビームを有し、各ビームはSLM上に10*1000平方μm、すなわち0.01平方mmの有効フットプリントを有する。ミラー当たりのパルスエネルギーは25w/2730/1MHz=10nJであり、エネルギー密度は100μJ/平方cmである、またはアブレーションにとって10,000倍も低い。したがって、ミラーはパルスエネルギーから安全である。画像を領域で40,000倍に縮小した後、すなわち、各スポットを0.5*0.5平方μmにした後、妥当なアブレーションパワーである4J/平方cmに至る。この時点で、加工対象物を切除する25Wのエネルギーと、1秒当たり2730*1,000、000=27億のデータ画素の画素レート(ビームレットの数×パルス周波数)を有する。このレートでは、計算上、薄膜は1秒当たり675平方mmまたは1時間当たり2.4平方mのスループットで1ミクロン未満の解像度で切除できる。
【0026】
このスキームは、SLM上のより多いまたは少ないスポットとレーザのより高いまたは低い反復レートを用いて変更することができる。図1Aは、1列のSLM画素100と、3つのSLM画素毎に1つの光ビームレット/スポット104、105とを有するID SLMの部分を示す。SLM画素は複数のミラー101から成り、電子接続部102によってアドレス指定される電子的にアドレス指定可能なユニット100である。パターンの設計は画素マップとして付与され得るため、1つのレーザパルスによって書き込まれる1つのスポットに関してデータ画素という用語を使用する必要がある。中間のSLM画素は、加工対象物に放射線を中継しない屈折または回折状態に設定することによって暗状態に設定することができる。スポット104、105間の放射を吸収する代わりに反射することで、SLM表面上のエネルギーの蓄積と、それに伴う加熱およびミラーの損傷を低減する。
【0027】
複数のミラー101は単独画素100として共に動作する。一実施例では、複数のミラー101は単独の導体102によって駆動されるため、複数のミラーが同一の信号に反応する。図1C〜1Dに示される別の実施例では、これをさらに進めて、同一の信号120に反応する複数列のミラー121、122を駆動する。物理的な便宜上、導体102、103はそれぞれミラーアレイの対向側に配置することができる。
【0028】
多数のミラーが、図1A〜図1Bに示されるように単独行に複数ミラー、あるいは図1C〜1Dに示されるように隣接列および行に複数ミラーのいずれかの形で、単一SLM画素としての機能を果たすことができる。図1Bは、2列の画素106、107を有し、ビームレットの数が2倍であるSLMアレイ108を示す。3列以上の列を使用することもできる。さらに多くのスポットに、1画素当たり1ビームレットの最終限界に達するまで、レンズアレイとビーム間の干渉を止める開口を装着することができる。マイクロレンズアレイおよび開口に関しては、Ball Semiconductorsに与えられた米国特許第2006/0147841 A1号を参照し、引用により組み込む。この例における1秒当たりのデータ画素の最終的な数は8192*2MHz=16Gp/sである。パルスエネルギー密度を増大させるには、縮小を増大させる、あるいはパルスレートを一定の平均パワーで低減させることができる。
【0029】
単独画素として組み合わせる別のミラー構造を図1F〜図1Iに示す。図1Fは、単独画素として組み合わされる正方形または略正方形の画素を示す。斜線と網目状の升は2つのミラーを示す。図1G〜図1Hは画素に組み合わされる縦軸と横軸の主軸を有する矩形ミラーを示す。煙突付きの家として大まかに示されるその他のモザイクが図1Iに示される。従来用途では、画素に分類され得る菱形、切頂菱形、六角形、および「H」型などのその他のミラー形状が示されている。
【0030】
開示されるアブレーションシステムは、薄膜をパターニングする、あるいは固体面にパターンを密に作製するために使用することができる。これは、エンボス加工、ナノ刻印などのための母体を作製するのに有効である。さらに、パワーは、表面硬化、熱分解、およびレーザ誘起前方移送などのその他の熱活性化工程にとっても十分なほど高い。
【0031】
図2は、レーザ201、ビームスプリッタ203、およびSLM207上にスポットアレイを形成する光学系205を有するように開示された技術の一具体例を示す。ビームスプリッタは当分野において既知な回折ファンアウト素子であってもよい。SLM207からの光は、レンズ225および235によって、台245により支持され移動させられる加工対象物234上に縮小される。コンピュータ/コントローラ217はデータおよびジョブ制御命令を受信し、データをSLM207に供給し、レーザ201からのパルスに同期して台を制御する。簡易化して描かれているレンズシステム225および235は、SLM上のスポットの加工対象物上のスポットへの2方向で異なる縮小率のアナモルフィックレンズである。
【0032】
図4Aは図2に対して、図2に示唆されるが明瞭化のために省略されている開口466の後に配置されているビームスプリッタまたはビームサンプル採取装置476を追加している。ビームサンプル採取装置476は加工対象物234上のレンズ235とカメラ454上のレンズ456間でレーザエネルギーを分割する際に非対称である。カメラ454はスポットの画像を記録し、SLM207を駆動するデータが修正されて、スポットのエネルギーが均一化され較正されるように、記録した画像をコントローラ217に送信する452。ミラーはDACからのアナログ電圧によって駆動され、画素の反射はアドレス電圧の連続的機能であるため、データの修正を利用して各スポットのエネルギーを制御することができる。システム開口466後の較正測定の機能は、加工対象物に到着する際の真のエネルギーを測定することである。もしくは、またはさらに、台245上の検知器438は、エネルギーの測定および較正のためにコントローラ207に接続することができる。
【0033】
図4B〜4Cは、較正が材料の均一除去に及ぼす好影響を示す。これらの図面は、加工対象物上の5個のレーザスポットのエネルギーを上側に示し、その結果生じる被影響領域を下側に示す。アブレーションやレーザ前方移送などの熱工程はきわめて非線形であるため、エネルギー高さ402、404、406間の比較的小さな差異がかなり異なる材料除去量をもたらす可能性がある。表面401上の403、405、407を比較されたい。スポットエネルギーの較正では、エネルギー高さ412、414、416を均一化させることができ、その結果生じる除去領域413、415、417も均一化される。これは非常に有益になり得る。
【0034】
図5はパルスエネルギー、パルスレート、および平均パワー間の関係を示し、提案されるアーキテクチャが高平均パワーおよび高スループットを可能にする理由を説明するものである。パルスエネルギーはいくつかの要因によって制限され得る。第1に、SLMは処理可能なパルスエネルギーの上限値を有し、光学機器の他の部分も上限値を有する。超短パルスはミラーの超薄層を加熱するため、温度上昇が高く急速である。第2に、多くの魅力的なレーザはその原理によりパルスエネルギーが制限される。たとえば、ファイバレーザは、少量のポンプ材料およびファイバ内の非線形現象のためにパルスエネルギーが制限される。第3に、高解像度パターニングは小さなスポットを意味し、最適処理条件はスポット当たりのエネルギーが小さい場合がある。グラフ内の2本の対角線は、図示されるようにそれぞれ50および10マイクロジュールのパルス当たりのエネルギーを示す。このパルスエネルギー量はパルス期間全体にわたるパワーを統合するので、パルス長またはパルス反復レートを特定せずに述べることができる。縦軸の平均パワーは、横軸の反復レートまたはレーザパルス周波数とパルスエネルギーの積である。平均パワーは反復レートまたはパルス周波数に比例する。50マイクロジュールのパルスエネルギーでは、50ワットの平均パワーは1Mhzの反復レートで達成される。50Wの平均パワーがSLMが耐え得る上限だと仮定すると、より高いパルス周波数に達する可能性はない。低パルス周波数は平均パワーが失われ、スループットが落ちることを意味する。一方、パルスエネルギーがパルス当たり10マイクロジュールしかないとすると、平均パワーは1MHzで50Wの上限に達しない。2MHzのパルスレートでは、10マイクロジュールのパルスが20Wの平均パワーを生成し、最大平均パワーは5MHzまで達しない。傾斜ミラーが5MHzで動作するように最適化できるとは考えられない。高レーザパルス周波数は多くの場合、高スループットをもたらす。その他のSLMは制限を有する。DMDは約60〜70kHzより速く更新できず、GLVは数百キロヘルツだが、パルスエネルギーの限界が小さく、LCOSに基づくSLMは通常50〜200Hzの更新レートを有する。
【0035】
図3の高パワーの実施形態を用いて、薄固体膜のアブレーションに短い強力なパルスを使用することができる。スポットグリッドはスポットサイズとスポット密度間に最適に合うように合わせて調節することができ、所望すれば、たとえば、2、4、8、またはその他の整数などの所定数のフラッシュが各スポットに配信される。さらに、すべてのスポットを「コールド」近傍(すなわち周囲のグリッド点のいずれもが最新の数フラッシュ内で切除されていない)に位置させるように、スポットの書込み命令を選択することができる。同一のオンオフスポットの密なグリッドと、良好なアドレス解像度をさらに与える書込み戦略の場合、グレートーンの画素の比較的粗いグリッドと対照的に、スポットサイズ、エネルギー、およびパルス長を、切除された膜の完全な除去のために最適化することができる。もしくは、アブレーションを利用して、制御された方法で固定面に窪みまたは表面プロファイルを形成することができ、点に配信されるフラッシュの数は表面へのアブレーション深度に変換される。
【0036】
加工対象物上の連続パルスの近接性と特定パルスでの画素の近接性に依存するパターンで除去される。パルスレートと画素パターンのバリエーションのいくつかを図6A〜図6Fに示す。反復レートおよび走査速度に応じて、連続パルスは区別不能に重複する、部分的に重複する、あるいは個別のスポットとして現れる場合がある。たとえば、1マイクロメートル径の丸型除去スポット、1秒当たり1メートルの掃引速度、および1MHzの反復レートの場合、結果的に生じるパターンは、互いに接触するがカットアウト周囲に材料が残るカットアウトスポットとして現れる。より低速な掃引速度では、図6Bでは、連続掃引が結果的に生じる。同一のスポットサイズおよび反復レートの場合、(より高速の)1秒当たり2メートルの掃引では、スポット間の間隔がスポットサイズに類似するスポットが残る、図6D。
【0037】
画素間の間隔が密な場合、SLMから中継される放射が連続線として現れることがある、図6A。この脈動線は緩やかに掃引されて図6Aのように表面を掃引するか、あるいは急速に掃引されて図6Cのように一連の線を生成する。
【0038】
図1Bおよび図1Dに示されるような2次元アレイの画素では、一部の画素は完全に垂直ではない軸を有する回転グリッド内で互いにオフセットさせることができる。1例を図6Eに示す。図6Eのパターン上で2回目を切除すると、組み合わされたパターンが表面を覆うことになる、図6F。
【0039】
スポットよりもSLM画素の多い図1Aの構成により、スポットの位置および間隔を変更することができる。図12は、同一のミラーアレイ上のビームレットを変調するのに使用される様々なミラー群を示す。このようにして、用途の需要に応じて、より多くのパルスエネルギーをもたらすより大きな面積を各スポットに割り当てることができる、あるいは1秒当たりより多くのデータ画素を得るためにより多くのスポットを生成することができる。システム全体における選択肢の1つは、異なる用途に応じて異なるビームスプリッタ203を使用することである。図中で大きなまたは小さな照明領域を生成する交換可能なビームスプリッタを、たとえばホログラムとして製造することができる。2つのケースが異なる楕円率のスポットを有するために、光学系のアナモルフィック特性を同時に調節する必要がある。これは、投射システム225、235の部品の調節または交換のいずれかによって達成できる。図面の右側と左側の両方に見られるマイクロミラーアレイ1201は、画素間が大きく離れた4個の画素1211に対して、または画素間が比較的狭く離れた10個の画素1212に対して使用することができる。適切な制御回路を用いて、単独画素内のミラー列の数および画素を分離するミラー列の数は、スポットへのビームの分割に合致するように選択することができる。
【0040】
ビームは通常、断面状はガウスであるため、縁部で部分的に重複する場合があり、2つのビーム間の干渉がクロストークを引き起こすことがある。過剰なクロストークなしにビームをより密に束ねるため、隣接ビームを非干渉にすることができる。いくつかの方法が存在し、隣接ビームは対向する偏光、たとえば左右の回転偏光を有することができる。隣接ビームは、わずかに異なる周波数で2つのレーザから出射することができる。あるいは、短パルスの場合、一部のスポットを近隣よりも遅延させて、近隣が終了した後に加工対象物に達することができる。
【0041】
図13Aは、ガウスビーム分布からトップハットまたは類似の分布への任意の変換を示す。アブレーションは非常に非線形的な作用であるため、いわゆるトップハットまたはフラットトップ分布または類似の均一分布は、レーザ出力にとって典型的なガウス分布よりも優れて機能する。図13では、最初のレーザ源1321がガウスやそれに類似のビーム分布1311を生成する。レーザビームはビームスプリッタ1324によっていくつかのビームに分割され、該ビームはレンズ1323によって集束されてSLM1331上にスポット1327を形成する。投射光学系1335、1334はSLMからの光を加工対象物1337上に集束させる。フィルタ1325、通常は位相フィルタは、スポットの形状をガウスからフラットトップに変更する。フラットトップ分布は加工対象物のアブレーションをより理想的にするが、クロストークを増大させずにSLM上のスポットサイズを増大させるためにも使用することができる。同様に、SLMをわずかに焦点からずらすことによって1333、各スポットがSLM上で見える面積を増やすことができる。
【0042】
同じ方法が、フラットトップの代わりに、図13Bのように超解像スポット(super−resolving spot)1343を生成することによってシステムの解像度を向上させるために使用することができる。少なくとも一部の用途では、アブレーションおよびその他の熱工程は閾値を有するため、ガウススポットは副ローブを有するより狭い中央ローブに変質させることができる。中央ローブを狭くすることと副ローブを生成することとの間には基本的な関連がある。図13Bでは、図示される断面1341を有するビームを生成するために図13Aとは異なるフィルタが選択され、前記断面が加工対象物上に突出している1343。加工対象物上の閾値は1345によって表示される。アブレーションなどの工程は、エネルギー密度が閾値1345より高い場合のみ、すなわち、フィルタがない場合よりも小さな領域で行われる。副ローブはアブレーションを生じない。
【0043】
同様に、開示される技術による所定エネルギーでのスポットのプリンティングは、熱処理、溶融、融解、相転移、光分解、選択的活性などの非線形工程に適する。これらの用途の中で、レーザ転写は搬送膜上の材料を使用する。材料はレーザの放射を受けると、選択的に加工対象物へ転写される。開示される技術は、レーザ誘起熱撮像LITI、放射線誘起昇華転写RIST、およびレーザ誘起パターン式昇華LIPSなど、本発明者らが「レーザ誘起パターン転写」と呼ぶ一般的な方法に適する。本開示が役立ち得る電子、光学、および印刷業界で使用されるその他の工程は、当業者にとって自明であろう。
【0044】
この技術が適用可能な追加の用途を図7〜図11を参照して説明する。この技術は、本発明者らが有効なアブレーションエネルギーの焦点深度と呼ぶものを利用することを含む。図7では、焦点面またはいわゆるウエスト707へのエネルギー密度701の収束と、その後の発散711を示す。焦点深度の従来の測定値はレイリー長であり、移動軸Zに沿って1つのレイリー長が定義される。レイリー長はモード半径が2の平方根倍増大するビームウエスト707 (円錐点よりもウエストに近い)からの距離である。703、709を参照。半径がその倍数だけ増加するにつれ、エネルギー密度は半減する。顕微鏡を通じて収束されるレーザなどの実際的な設計では、レイリー長は200ナノメートルとすることができ、低NA光学系では、相当のミリメートルとなる場合がある。1レイリー長を超えて、発散は円錐として継続すると考えられる。
【0045】
図7では、ビームウエストより下の表面721は波状に示されている。同図からは、表面の下側の谷は上側の山よりも低いエネルギー密度を受けることが分かる。その結果、山は谷よりも切除される可能性が高い。これは、表面を平面化する傾向にあるという好ましい結果につながる。
【0046】
図8は、相対単位に沿ったエネルギー密度閾値未満の材料除去の非線形性を示す。50%のエネルギー密度で、閾値はまだ満たされておらず、べき関数曲線に沿った除去レートは、100%のエネルギー密度で達成される除去レートのわずか10〜15%である。図7に関連して、ウエスト領域707が100%の除去レートをもたらす場合、斜線付き台形709の底部は15%程度の除去レートしか達成しない。このことは表面を完全には平面化しないが、山721は谷よりも迅速に除去され、表面の不均一を低減する傾向にある。
【0047】
図9は、焦点を介した材料除去レートの関数を示す。上側の曲線901の放物線は、ビームウエストからの様々な距離でのビーム幅を示す。最も遠い距離では、ビームは最も広い。曲線903は、焦点面からの特定のレイリー距離に位置する表面で生成される材料の除去レートを示す。この曲線は、表面全体で一体化される質量または厚さでの除去を示す。顕著な山と谷を有する短破線905は、除去レート曲線903の派生である。それは、除去レート曲線に沿って焦点面から離れる際に、いかにその除去レートが迅速に変更するかを示す。最後に、長破線907は、除去レート曲線903によって正規化(分割)される派生曲線(短破線)を表す。結果として生じる長破線は、平坦化の有効性の代用となる。曲線905を読み取ると、除去レートの最大差は約0.5レイリー長、焦点を外れている。ここで、短破線905は除去レート曲線903の最大および最小傾斜に対応する最大および最小値を有する。一方、平坦化された表面が焦点面の0、5レイリー長内である場合、相当量の材料が全面から除去される可能性が高い。長破線907を見ると、合計で平坦化により除去される材料が少ないため、より低速であれば、1〜2レイリー長の動作範囲の焦点ずれがより好ましい。したがって、平坦化のための動作範囲は、それより低いと平坦化が低い0.25レイリー長の焦点ずれと、それより高いと除去レートが低い2.0レイリー長の間となるべきである。平坦化と材料除去の組み合わせにとっては約0.5〜1.5が好適であろう。不十分な材料除去と良好な平坦化の場合、0.75〜1.5レイリー長または1.0〜2.0レイリー長の焦点ずれが好ましいだろう。
【0048】
図10〜図11は、基板上の材料の特徴高さの上になったり下になったりする傾斜焦点面を有する、基板に平行な焦点面を備えたシステムの動作を比較する。傾斜焦点面を使用することで、比較的深い溝で迅速に材料のアブレーションを行うことができる。基板の移動の矢印1020、1120は、基板面が最も高い、すなわち特徴高さよりも高い焦点面1111の部分に最初に相対することを示す。溝の形成が開始される。基板が移動し、焦点面が特徴高さ1113まで、次に特徴高さの下方へと下降するにつれ、追加のアブレーションパルスは溝をより深く掘っていく。
(具体的な実施形態)
開示される技術は、加工対象物の熱パターニングまたは光化学パターニング用装置を含む。該装置は、複数のマイクロミラーから成る画素を有するSLMを含む。ミラーは回折モードで動作する。それらのミラーは、アナログ電圧によって設定される正電力により駆動することができる。ミラーは傾斜する、あるいはピストン状に移動することができる。各画素は互いに位相コヒーレントである6個以上のマイクロミラーを含む、すなわち、それらは共に光学平坦面を形成する、あるいは平坦な反射波長板を形成することができる。もしくは、各画素は10、25、または50個超のマイクロミラーを含むことができる。上述したように、複数のマイクロミラーを使用することで、システムのパワー能力が増大する。SLMのマイクロミラーは500kHz以上の再装着(リロード)および再配置周波数で動作するように設計される。もしくは、マイクロミラーは、1MHz以上の周波数または2MHz以上の周波数で動作することができる。該装置は、加工対象物を保持し移動させる加工対象物台と、高エネルギーで短パルスを放射するレーザとをさらに含む。パルスは100psよりも短くてもよい。もしくは、10または1psよりも短くてもよい、あるいは1nsより長くてもよい。レーザの平均パワーは1W以上である。もしくは、平均パワーは5、25、または50W以上にすることができる。該装置は、レーザをSLMに結合し、SLM上の画素を照明するビームレットのアレイを生成する照明光学系をさらに含む。任意で、小型レンズまたは開口を使用して、ビームレット間の分離を維持し、ビームレット間の回折作用を回避することができる。もしくは、ビームレットが非干渉であるようにスクランブルさせることができる。たとえば、隣接ビームは対向する偏光状態に置くことができるため、重複する場合でも干渉し得ない。一部のビームを遅延させることができるため、隣接ビームが散乱のため非干渉となる。パルスレーザの場合、これは、隣接ビームのパルス間の時間的重複の欠如と同じであろう。該装置は、SLMを加工対象物に結合する光学系を縮小することと、1J/平方cm以上のパルスエネルギー密度で加工対象物上に変調されたレーザパルスに投射することとをさらに含む。もしくは、縮小する加工対象物のパルスエネルギー密度は4J/平方cm以上であってもよい。ある用途では、たとえば、超薄膜のアブレーションでは、エネルギー密度は0.1J/平方cmより大きくすることができる。該装置は、データをSLMに供給し、レーザからのパルスと同期して加工対象物台を移動させるコントローラをさらに含む。
【0049】
該装置およびその代替またはオプションはSLM画素クロックをさらに含むことができる。この追加の構成要素により、パルス反復レートとSLMの画素クロックとを有効に同期化させることができる。
【0050】
上記装置では、SLMのSLM画素数は2048、4096、または8192のいずれか以上とすることができる。SLMに投射されるビームレットの数は1024、2048、または4096以上とすることができる。SLM上の画素は2つ以上のマイクロミラーで構成され、複数のSLM画素を使用して1つのビームレットを制御することができるため、マイクロミラーと画素の数がビームレットの数を超える場合があることに注意されたい。
【0051】
開示される装置に匹敵するのが、1000個超ものマイクロミラーを有するSLMを用いて加工対象物に熱パターニングまたは光化学パターニングを行う方法である。この方法は、500kHz以上の再装着または再配置周波数で、単独の振幅値まで画素ユニットとして5つ以上の隣接ミラーを駆動することを含む。もしくは、再装着周波数は1MHz以上または2MHz以上とすることができる。該方法は、1W以上の平均パワーで100psより短いパルスを放射するレーザを用いてSLM画素ユニットを照射することをさらに含む。もしくは、パルスは、10または1psより短くてもよい。照射の平均パワーは5、25、または50W以上であってもよい。該方法は、SLMを変調し、加工対象物上にパターンを生成するように計算されたシータでSLMを再装着することをさらに含む。該方法は、正に変調されたレーザパルスが加工対象物に対して1J/平方cm以上のパルスエネルギー密度を有するように、SLMから光学系の縮小を介して加工対象物まで変調されたレーザパルスを中継することをさらに含む。もしくは、エネルギー密度は4J/平方cm以上または0.1J/平方cm以上であってもよい。
【0052】
該方法は、SLM画素クロックを制御することと、レーザのパルス反復とSLMの画素クロックとを同期させることを任意で含むことができる。
この方法を適用すると、SLM内のマイクロミラーの数を2048または4096以上とすることができる。
【0053】
開示される技術の有益な用途の1つは、相互位相コヒーレンスを有する微小機械SLMの多数のミラーを使用して、アブレーションなどの材料処理用の高パワーレーザビームを形成することである。これには、2次元領域からスポットの1次元アレイにエネルギーを集中させるアナモルフィック光学系の使用を伴うことができる。
【0054】
SLMは、1列にスポットを配置し、その列に並べられた方向で加工対象物を走査することによって、所与のパルスエネルギーに関して高更新レートおよび高平均パワーを得ることに適用することができる。
【0055】
個々のビームのパワーをミラーのアナログ機能によって較正すると開示してきた。ここでアナログ機能とは、ミラーの傾斜を駆動するDACからのアナログ電圧を意味する。
該方法およびそれに対応する装置は、ミラーアレイ、光学ビームスプリッタ、およびアナモルフィック光学系を提供し、後者の2つは画素レートとスポット当たりのパワー間の様々なトレードオフに達するように調節可能または変更可能である。様々な数のビームをミラーアレイ上に定めることができる結果、様々な数およびパワーの撮像スポットが達成される
深度制御向上のために高NA(>0.25)スポットのアレイを用いて焦点面の下方の0.25〜2レイリー長間で表面のアブレーションを行うと説明した。
【0056】
ガウス分布からフラットトップまたはトップハット、超解像などの異なる所望の形状へ焦点スポットを変更するアブレーションシステム内のフィルタを用いると例示した。
いくつかの実施例では、隣接スポット上で直交する、あるいは少なくとも異なる偏光を使用することで、クロストークを低減し、より密なビームレットピッチを可能にすることを教示する。
【0057】
開示される技術は、コンピュータ命令を含む非一時記憶媒体で具体化させることができる。この非一時記憶媒体は、ハードウェアと組み合わされた場合、上述の方法のいずれかをハードウェアに実行させるコンピュータ命令を含むことができる。もしくは、非一時記憶媒体は、ハードウェアに搭載される場合、上述の装置のいずれかを構成するコンピュータ命令を含むことができる。
【0058】
開示される技術はコンピュータソフトウェアであってもよい。コンピュータソフトウェアは、適切なハードウェアに搭載される場合、上述の方法のいずれかを実行することができる。もしくは、コンピュータソフトウェアは、ハードウェアに搭載される場合、上述の装置のいずれかを構成することができる。
【0059】
以下のとおり請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の熱的パターニングまたは光化学パターニングのための装置であって、
複数の画素を有する、本質的に1次元のSLMであって、各画素は、マイクロミラーの再装着及び再配置のための動作周波数が500kHz以上である5よりも多い個数の回折マイクロミラーを含む、前記SLMと、
加工対象物を保持し移動させる加工対象物台と、
1ワット以上の平均パワーで100psよりも短いパルスを放射するレーザと、
前記レーザを前記SLMに結合する照明光学系であって、前記SLMの画素を照明するビームレットのアレイを生成する前記照明光学系と、
前記SLMを前記加工対象物に結合し、前記加工対象物上に1J/平方cm以上のパルスエネルギー密度で変調されたレーザパルスを投射する縮小光学系と、
前記SLMにデータを供給し、前記レーザからのパルスに同期して前記加工対象物台を移動させるコントローラと
を備える装置。
【請求項2】
各画素が、10〜24個のマイクロミラーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各画素が、25〜49個のマイクロミラーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
各画素が、50よりも多い個数のマイクロミラーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロミラーが、1MHz以上の周波数で動作する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロミラーが、2MHz以上の周波数で動作する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記レーザが、10psより短いパルスを放射する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記レーザが、1psより短いパルスを放射する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザが、5ワット以上の平均パワーでパルスを放射する、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記レーザが、25ワット以上の平均パワーでパルスを放射する、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記SLMを前記加工対象物に結合する前記縮小光学系が、前記加工対象物上に4J/平方cm以上のパルスエネルギー密度で変調されたレーザパルスを投射する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記SLMは、画素クロックによって制御され、前記SLMの前記画素クロックと有効に同期するパルス反復をさらに含む、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記SLM上のマイクロミラーの数が、2048以上である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記SLM上のマイクロミラーの数が、4096以上である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
ビームレットの数が、1024以上である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
ビームレットの数が、2048以上である、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
1000よりも多い個数のマイクロミラーを有するSLMを用いた加工対象物の熱的パターニングまたは光化学パターニングの方法であって、
500KHz以上の再装着および再配置周波数で単独の振幅値まで画素ユニットとして5個以上の隣接マイクロミラーを駆動すること、
1ワット以上の平均パワーで100psより短いパルスを放射するレーザを用いてSLM画素ユニットを照明すること、
前記SLMを変調し、前記加工対象物上にパターンを生成するように計算されたデータで前記SLMを再装着すること、
正に変調されたレーザパルスが前記加工対象物に対して1J/平方cm以上のパルスエネルギー密度を有するように、前記SLMから縮小光学系を介して前記加工対象物まで前記変調されたレーザパルスを中継すること
を含む方法。
【請求項18】
各画素ユニットが、10よりも多い個数のマイクロミラーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各画素ユニットが、25よりも多い個数のマイクロミラーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
各画素ユニットが、50よりも多い個数のマイクロミラーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
1MHz以上の周波数で前記マイクロミラーを駆動することをさらに含む、請求項17ないし20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
2MHz以上の周波数で前記マイクロミラーを駆動することをさらに含む、請求項17ないし20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記レーザが、10psより短いパルスを放射する、請求項17ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記レーザが、1psより短いパルスを放射する、請求項17ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記レーザが、5ワット以上の平均パワーでパルスを放射する、請求項17ないし24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記レーザが、25ワット以上の平均パワーでパルスを放射する、請求項17ないし24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記縮小が、前記加工対象物に対して4J/平方cm以上のパルスエネルギー密度で変調されたパルスを中継する、請求項17ないし26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記SLMが、画素クロックによって制御され、前記レーザのパルス反復と前記SLMの前記画素クロックとが同期化される、請求項17ないし27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記SLM上のマイクロミラーの数が、2048以上である、請求項17ないし28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記SLM上のマイクロミラーの数が、4096以上である、請求項17ないし28のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図3】
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【図4B】
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【図4C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図2】
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【図4A】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−521131(P2013−521131A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555442(P2012−555442)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053336
【国際公開番号】WO2011/107602
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(591176085)マイクロニック マイデータ アーベー (8)
【氏名又は名称原語表記】MICRONIC MYDATA AB
【Fターム(参考)】