説明

レーザ加工方法

【課題】多層基板の中間層として積層された樹脂層の加工精度を向上することができるレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】一対の導電層11の間に樹脂層12が中間層として積層された多層プリント基板10において、一方の導電層11に樹脂層12が露出する穴11aを形成した後に、露出した樹脂層12の露出部12aにレーザ光を照射するとともに、このレーザ光の照射領域に助燃ガスGを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射して多層基板の中間層である樹脂層を加工するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の導電層(銅板等)の間に樹脂層が中間層として積層された多層プリント基板において、この多層プリント基板の樹脂層に例えば穴開け加工を行う方法として、一方の導電層にエッチングにより当該導電層を貫通する穴を形成して樹脂層を露出させた後、この露出した樹脂層にレーザ光を照射し、このレーザ光の熱によって樹脂層を加熱溶融する加工方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−181915号公報(図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の加工方法では、樹脂層の加熱溶融が十分に促進されないと、レーザ光の照射終了後に樹脂層の残渣が残ることがあり、樹脂層の加工精度が低下するという問題があった。
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、多層基板の中間層として積層された樹脂層の加工精度を向上することができるレーザ加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレーザ加工方法は、一対の導電層の間に樹脂層が中間層として積層された多層基板において、一方の導電層に樹脂層が露出する穴を形成した後に、この露出した樹脂層をレーザ光により加工するレーザ加工方法であって、前記露出した樹脂層にレーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の照射領域に助燃ガスを供給することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、多層基板の一方の導電層に予め形成された穴から露出する樹脂層に、レーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の照射領域に助燃ガスを供給するようにしたので、この助燃ガスにより樹脂層の加熱溶融を促進することができ、加工終了後に樹脂層の残渣が残るのを防止することができる。したがって、多層基板の中間層として積層された樹脂層の加工精度を向上することができる。
【0007】
また、前記助燃ガスは、前記レーザ光を照射する前に供給されることが好ましい。この場合、レーザ光の照射領域を燃焼ガス雰囲気とした状態でレーザ光が照射されるため、樹脂層の加熱溶融をさらに促進することができる。
【0008】
また、前記助燃ガスは、酸素ガスであることが好ましい。この場合は、酸素ガスを供給することにより樹脂層が酸化反応を起こすため、当該樹脂層の加熱溶融をさらに促進することができる。また、ハロゲン系ガスのように有害なガスが排出されるのを防止することができる。
【0009】
また、前記助燃ガスは、ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスを含むことが好ましい。この場合は、ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスを含む助燃ガスを供給することにより、樹脂層を効率良く酸化反応させることができるため、当該樹脂層の加熱溶融を効率良く促進することができる。
【0010】
また、前記樹脂層は、ポリイミド樹脂により形成されていることが好ましい。この場合は、ポリイミド樹脂により形成された樹脂層の加熱溶融を促進することができる。
また、レーザ光は、CO2レーザ光、ファイバレーザ光、YAGレーザ光、及びYVO4レーザ光のうちのいずれかのレーザ光であることが好ましい。この場合は、UV−YAGレーザ光に比べて、コスト安価に加工することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工終了後に樹脂層の残渣が残るのを防止することができるため、多層基板の中間層として積層された樹脂層の加工精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工方法が用いられるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図2】(a)は加工前の多層基板を示す断面図、(b)は多層基板の一方の導電層に穴を加工した状態を示す断面図、(c)は加工終了後の多層基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工方法が用いられるレーザ加工装置を示す概略図である。このレーザ加工装置1は、レーザ光を発生させるレーザ発振器2と、レーザ光を偏向させるガルバノミラー3と、ガルバノミラー3を揺動駆動するガルバノスキャナ4と、ガルバノミラー3により偏向されたレーザ光を集光するfθレンズ5と、助燃ガスGを供給する助燃ガス供給装置6とを備えている。
【0014】
レーザ加工装置1の加工対象物は、銅板からなる一対の導電層11の間にポリイミド樹脂からなる樹脂層12を中間層として積層した多層プリント基板(多層基板)10である。この多層プリント基板10は、レーザ加工装置1によりブラインドビアホール(blind via hole)を形成するための穴開け加工が行われる。
【0015】
レーザ発振器2で発生させるレーザ光は、例えばCO2(炭酸ガス)レーザ光である。ガルバノミラー3は、レーザ発振器2より出力されたレーザ光を、所定の偏向角度で偏向させて多層プリント基板10上におけるX軸方向及びY軸方向に振らせるものである。ガルバノスキャナ4は、ガルバノミラー3を揺動させることにより、fθレンズ5へのレーザ光入射位置を変化させることができる。
【0016】
fθレンズ5は、像側テレセントリック光学系とされている。このfθレンズ5を用いることにより、ガルバノミラー3で様々な方向に偏向されたレーザ光が、多層プリント基板10の表面にほぼ垂直に入射し、その表面上で焦点を結ぶことで、多層プリント基板10に穴を開けることができる。
【0017】
助燃ガス供給装置6は、助燃ガスGを生成する一対のガス供給源6aと、助燃ガスGを噴射する一対の噴射ノズル6bと、各ガス供給源6aと各噴射ノズル6bとをそれぞれ接続するガス配管6cとを備えている。ガス供給源6aは、例えば酸素ガスからなる助燃ガスGを生成するものである。助燃ガスGには、ハロゲン化合物ガスが数%含まれている。
【0018】
一対の噴射ノズル6bは、噴出口6b1同士が対向するように配置されている。各噴出口6b1は、レーザ照射される多層プリント基板10の照射領域の斜め上方から当該照射領域に助燃ガスGを噴射するように配置されている。
【0019】
次に、上記レーザ加工装置1を用いて、多層プリント基板10に穴開け加工を行う方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。まず、図2(a)に示す多層プリント基板10の上側の導電層11に、エッチングにより樹脂層12上面の一部が露出する穴11aを形成する(図2(b)参照)。
【0020】
その後、図1に示すように、プリント基板10をレーザ加工装置1のfθレンズ5の下方に配置した後、助燃ガス供給装置6の噴出ノズル6bから樹脂層12の上記露出した露出部12aに向けて助燃ガスGを噴射し、上記照射領域を燃焼ガス雰囲気とする。
【0021】
ついで、レーザ発振器2からレーザ光を発生させる。レーザ発振器2より出力されたレーザ光は、ガルバノミラー3で偏向されてfθレンズ5へ導かれる。ガルバノミラー3を出射したレーザ光は、fθレンズ5で集光され、穴11aを通過して樹脂層12の露出部12aに照射される。
【0022】
このレーザ光の照射により、樹脂層12の露出部12aは加熱溶融され、図2(c)に示すように、導電層11の穴11aの下方に、下側の導電層11の上面が一部露出する穴12bが形成される。その際、噴射ノズル6bから噴射された助燃ガスGにより、露出部12aは酸化反応を起こし、上記加熱溶融が促進される。これにより、多層プリント基板10には、上記各穴11a,12bにより下側の導電層11の上面を底面とするブラインドビアホール13が形成される。
【0023】
以上、本発明の実施形態に係るレーザ加工方法によれば、多層プリント基板10の一方の導電層11に予め形成された穴11aから露出する樹脂層12の露出部12aにレーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の照射領域に助燃ガスGを供給するようにしたので、この助燃ガスGにより樹脂層12の穴開け加工を促進することができ、加工終了後に樹脂層12の残渣が残るのを防止することができる。したがって、多層プリント基板10の中間層として積層された樹脂層12の加工精度を向上することができる。
【0024】
また、助燃ガスGはレーザ光を照射する前に供給されるため、レーザ光の照射領域を燃焼ガス雰囲気とした状態でレーザ光を照射することができる。したがって、樹脂層の加熱溶融をさらに促進することができる。
また、助燃ガスGは酸素ガスであるため、この酸素ガスによって樹脂層12が酸化反応を起こすことにより、樹脂層12の加熱溶融をさらに促進することができる。また、ハロゲン系ガスのように有害なガスが排出されるのを防止することができる。
【0025】
また、助燃ガスGはハロゲン化合物ガスを含むため、この助燃ガスGによって樹脂層12を効率良く酸化反応させることができる。したがって、樹脂層12の加熱溶融を効率良く促進することができる。なお、ハロゲン化合物ガスは、助燃ガスGにおける含有比率が数%と少量であるため、樹脂層12とハロゲン化合物ガスとの酸化反応によって発生するハロゲン化合物により、導電層11の表面が腐食するのを抑制することができる。
また、レーザ光をCO2レーザ光としたので、UV−YAGレーザ光に比べて、コスト安価に加工することができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明のレーザ加工方法を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
銅板、ポリイミド樹脂及び銅板の順に積層されたフレキシブルプリント基板を用意し、フォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成した片側の銅板に、銅エッチングによって銅穴を加工する。
【0027】
その後、銅穴から露出するポリイミド樹脂には、酸素ガス及びハロゲン化合物ガスであるSF6(六フッ化硫黄)ガスを含む助燃ガスを噴射し、燃焼ガス雰囲気にしておく。助燃ガスは、SF6ガスの含有比率を、約10%とし、酸素ガス及びSF6ガスのガス流量比を9:1とする。
【0028】
この状態で、CO2レーザ光をガルバノミラーにより偏向させてfθレンズにより集光し、このfθレンズから出射したCO2レーザ光を銅穴から露出するポリイミド樹脂に照射する。このレーザ照射により、ポリイミド樹脂に穴開け加工を行い、ブラインドビアホールを形成する。
【0029】
CO2レーザ光は、その波長が9.3μm、パルス幅が50μ秒であり、平均出力パワーを75Wとする。また、ポリイミド樹脂には、穴径が100μm、厚さが10〜30μmの穴を加工する。以上の条件下において、ポリイミド樹脂の穴開け加工を行った結果、CO2レーザ光の照射後にポリイミド樹脂の残渣が残ることなく、穴開け加工を行うことができた。
【0030】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上記実施形態では、レーザ光をCO2レーザ光としているが、このCO2レーザ光に替えて、ファイバレーザ光、YAGレーザ光又はYVO4レーザ光としてもよい。また、助燃ガスGには、ハロゲン化合物ガスに替えて、ハロゲンガスを含むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 多層プリント基板(多層基板)
11 導電層
11a 穴
12 樹脂層
G 助燃ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導電層の間に樹脂層が中間層として積層された多層基板において、一方の導電層に樹脂層が露出する穴を形成した後に、この露出した樹脂層をレーザ光により加工するレーザ加工方法であって、
前記露出した樹脂層にレーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の照射領域に助燃ガスを供給することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記助燃ガスは、前記レーザ光を照射する前に供給される請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記助燃ガスが、酸素ガスである請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記助燃ガスが、ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記樹脂層が、ポリイミド樹脂により形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記レーザ光が、CO2レーザ光、ファイバレーザ光、YAGレーザ光、及びYVO4レーザ光のうちのいずれかのレーザ光である請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−151211(P2011−151211A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11310(P2010−11310)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】