レーザ加工方法
【課題】切断端面の形状が良好でコストの増大を抑制可能なレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程(S10)と、加工対象材にレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程(S20)とを備える。上記工程(S20)では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、レーザ光の連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材の表面に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。
【解決手段】この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程(S10)と、加工対象材にレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程(S20)とを備える。上記工程(S20)では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、レーザ光の連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材の表面に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工方法に関し、より特定的には、加工対象物の切断または分割加工に利用されるレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物を切断するためにレーザ光を利用するレーザ加工方法が知られている(たとえば、特開2002−192370号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)、特開2002−205180号公報(以下、特許文献2と呼ぶ)、および特開2008−6492号公報(以下、特許文献3と呼ぶ)参照)。
【0003】
特許文献1では、ウェハ状の加工対象物の内部にレーザ光の集光点(焦点)が配置されるように、パルス幅が1μs以下のレーザ光を照射することで、加工対象物の内部に切断加工の起点となる改質領域を形成することが開示されている。また、特許文献2では、ウェハ状の加工対象物の内部にレーザ光の集光点(焦点)が配置されるように、パルス幅が1μs以下のレーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の入射方向における集光点の位置を変更することで、加工対象物の内部に切断加工の起点となる改質領域を深さ方向において複数形成することが開示されている。また、特許文献3では、サファイア基板のレーザ光を用いた切断において、レーザ光の照射によるダメージを最小限にするため、フェムト秒領域の極めて短いパルス幅のレーザ光を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2002−205180号公報
【特許文献3】特開2008−6492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来のレーザ加工方法においては、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に開示されたレーザ加工方法では、照射されるレーザ光は単一波長であり、加工対象物の内部の1点に集光されるため、加工対象物の厚み方向における改質領域の長さはあまり長くできない。そのため、切断加工を行うときに改質領域から進展する亀裂の方向などが一定にならない場合があり、結果的に切断端面の形状がばらつく場合があった。また、特許文献2に開示されたレーザ加工方法では、加工対象物の深さ方向において複数の改質領域を形成できるが、そのためにレーザ光照射を複数回実施する必要があり、加工プロセスの工程数が増えることで製造コストが上昇するという問題があった。また、特許文献3に開示されたレーザ加工方法では、フェムト秒領域の極めて短いパルス幅のレーザ光を用いるとしているが、このような極短パルス幅のレーザ光を工業的に利用することは装置コストやプロセスの安定性などの面から現実的ではない。
【0006】
このように、従来はレーザ加工により加工対象物を切断する場合、短時間、ひいては低コストでかつ切断端面の形状を良好なものとすることは難しかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、切断端面の形状が良好でコストの増大を抑制可能なレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、レーザ光の連続スペクトルを形成する所定バンド(所定の波長成分)の複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材の表面に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。なお、ここで改質領域とは、加工対象材において周囲の組織と異なる組織を有する領域、あるいは強度が周囲の組織より低下している領域などを意味し、具体的には単結晶の中で非晶質や多結晶に変化した領域を意味する。また、集光線の軸線とは、集光線に沿った軸を意味し、集光線と重なる部分および集光線に沿って集光線の外側に延長した部分の両方を含む。
【0009】
このようにすれば、連続スペクトルの波長成分が集光されることで集光線(集光点の集合)が形成されるので、加工対象材において当該集光線が位置する領域または集光線の軸線上に、レーザ光の照射方向(たとえば深さ方向)に長く伸びる改質領域を形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0010】
この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成される。レーザ光を加工対象材に照射することにより、当該直線上に集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。なお、上記各パルスショットとは、時間軸上の1パルスごとの照射パルス光を意味する。
【0011】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成される。レーザ光を加工対象材に照射し、線状の集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。
【0012】
このようにすれば、所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光することで、パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が集光方向の直線上または集光方向に沿った線状に集光領域として形成されるので、線状に延びる当該集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成することができる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の集光方向に伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切断端面の形状が良好でかつコストの増大を抑制可能なレーザ加工方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明によるレーザ加工方法において用いるMOPA光源を示す模式図である。
【図3】図2に示したMOPA光源から出力されるパルスレーザ光のスペクトルを示すグラフである。
【図4】図2に示したMOPA光源から出力されるパルスレーザ光に含まれる波長成分の強度の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図5】周期的に複数のパルスを発振する(マルチパルス化)場合と、単一のパルスを発振する場合とを模式的に示すグラフである。
【図6】レーザ光を加工対象材へ照射する光学系を示す斜視模式図である。
【図7】本発明によるレーザ光に含まれる各波長成分の焦点位置を説明するための模式図である。
【図8】図7に示した各波長成分についての波長と焦点位置のズレとの関係を示すグラフである。
【図9】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図10】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図11】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図12】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図13】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図14】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図15】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図16】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図17】サンプルに対してレーザ光を入射するときの入射面の状態による影響を説明するための模式図である。
【図18】本発明によるレーザ加工方法のレーザ光走査方向とサンプルの破断強度との関係を説明するための模式図である。
【図19】離散的なスペクトル光源の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図20】図19に示した離散的なスペクトル光源により得られる光のスペクトルの概略を示す模式図である。
【図21】光出力が平均化された光のスペクトルを示す模式図である。
【図22】実験1の結果を示す顕微鏡写真を含む表である。
【図23】条件1の試料における切断端面を示す顕微鏡写真である。
【図24】条件5の試料の断面を示すSEM写真である。
【図25】実験2の結果を示す顕微鏡写真を含む表である。
【図26】条件4の試料の断面を示すSEM写真である。
【図27】図26の領域XXVIIを示す拡大SEM写真である。
【図28】図26の領域XXVIIIを示す拡大SEM写真である。
【図29】本実験例において用いたサンプルの概略断面模式図である。
【図30】サンプルにレーザ光を照射した状態を示す模式図である。
【図31】レーザ照射後のサンプル(サファイア基板)の断面写真である。
【図32】図31に示したA〜Eの場合のサンプルと焦点位置との関係を示す模式図である。
【図33】形成された改質領域を説明するための模式図である。
【図34】図33に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図35】図34に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図36】図34に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図37】図36に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図38】図36に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図39】レーザ光の走査回数の影響を説明するための模式図である。
【図40】本発明によるレーザ加工方法を用いて破断したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図41】図40に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図42】図40に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0016】
図1を参照して、本発明によるレーザ加工方法を説明する。
本発明によるレーザ加工方法では、まず加工対象材準備工程(S10)を実施する。具体的には、レーザ加工を実施する対象である加工対象材としての半導体基板やその他の部材(たとえばサファイア基板)を所定の位置に配置する。たとえば、加工対象材をXY平面方向に移動可能なXYステージ上に固定する。
【0017】
次に、レーザ照射工程(S20)を実施する。この工程(S20)においては、図2に示した本発明によるレーザ光源であるMOPA光源1から得られたレーザ光を所定の焦点距離を有するレンズを用いて集光するとともに、加工対象材に照射する。図2に示したMOPA光源1は、当該種光源10から取得されたレーザ光を光ファイバ増幅部で増幅するMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)構造を採用している。なお、図2に示したMOPA光源1のより詳細な構成については後述する。
【0018】
図2に示したMOPA光源1から得られるレーザ光は、誘導ラマン散乱に起因して所定の範囲の波長成分を含む(連続スペクトルを有する)レーザ光となっている。このような連続スペクトルを有するレーザ光をレンズにより集光すると、レーザ光の波長によって焦点距離が異なることに起因して、レーザ光の焦点位置(集光点)は波長成分毎に異なる。つまり、集光点の集合体である集光線がレンズから離れる方向に(レーザ光の入射方向に沿って)線状に延びるように形成される。このような集光線が加工対象材の内部または加工対象材の表面と交差するようにあるいは加工対象材の外部に形成されるように、レーザ光を当該加工対象材に照射することにより、加工対象物において改質領域を形成することができる。
【0019】
そして、レーザ光に対して加工対象材を相対的に移動させることにより、加工対象材中において、たとえば集光線が移動した領域にある程度の深さと幅とを持った改質領域を帯状に形成することができる。また、上述した改質領域が形成された加工対象材では、レーザ光を照射した表面には、レーザ光の照射に起因する溶融層などの損傷部はほとんど形成されず、比較的良好な表面状態を維持できる。なお、この帯状の改質領域を形成する工程のより具体的な内容については後述する。
【0020】
次に、図1に示す後処理工程(S30)を実施する。具体的には、加工対象材に対して応力を加えることにより、帯状の改質領域が形成された部分を起点として加工対象材を分割することができる。なお、応力を加える方法は従来周知の任意の方法を用いることができる。
【0021】
上述した改質領域が形成された加工対象材では、分割された端面について大きな凹凸などもとくに形成されず、良好な表面性状を維持できる。
【0022】
次に、図1に示したレーザ照射工程(S20)の内容をより具体的に説明する。上記工程(S20)において用いるレーザ光は、図2に示したMOPA光源1から供給される。図2に示した本発明によるMOPA光源1は、種光源10、光アイソレータ21〜24、光カプラ30、WDMフィルタ31、32、光コンバイナ33、34、増幅用光ファイバ41〜44、受動光ファイバ45、バンドパスフィルタ50、51、エンドキャップ60、および、励起光源90、93、94a〜94fを備える。なお、種光源10や励起光源90、93、94a〜94fは図示しない制御部により制御されている。
【0023】
種光源10の出力側には、光ファイバを介して光アイソレータ21が接続されている。光アイソレータ21の出力側には光ファイバを介してWDMフィルタ31が接続されている。当該WDMフィルタ31の入力側には、励起光源90が光カプラ30および光ファイバを介して接続されている。WDMフィルタ31の出力側には増幅用光ファイバ41が接続されている。増幅用光ファイバ41の出力側には光アイソレータ22が接続されている。光アイソレータ22の出力側にはバンドパスフィルタ50が接続されている。
【0024】
バンドパスフィルタ50の出力側にはWDMフィルタ32が接続されている。WDMフィルタ32の入力側には、光ファイバと光カプラ30を介して励起光源90が接続されている。WDMフィルタ32の出力側には増幅用光ファイバ42が接続されている。増幅用光ファイバ42の出力側にはバンドパスフィルタ51が接続されている。バンドパスフィルタ51の出力側には光アイソレータ23が接続されている。光アイソレータ23の出力側には光コンバイナ33が接続されている。光コンバイナ33の入力側には光ファイバを介して励起光源93が接続されている。光コンバイナ33の出力側には増幅用光ファイバ43が接続されている。
【0025】
増幅用光ファイバ43の出力側には光アイソレータ24が接続されている。光アイソレータ24の出力側には光コンバイナ34が接続されている。光コンバイナ34の入力側には、光ファイバを介して励起光源94a〜94fが接続されている。光コンバイナ34の出力側には増幅用光ファイバ44が接続されている。増幅用光ファイバ44の出力側には受動光ファイバ45が接続されている。受動光ファイバ45の出力側にはエンドキャップ60が接続されている。
【0026】
なお、光アイソレータ21から増幅用光ファイバ43までがプリアンプ部3を構成し、光アイソレータ24から増幅用光ファイバ44までがブースタアンプ部4を構成する。
【0027】
種光源10は、基本波のパルス光を発生させる。種光源10は例えば半導体レーザにより構成される。たとえば、本発明において用いるMOPA光源1では、たとえば100kHz以上1MHz以下という高い繰返し周波数と、当該繰返し周波数に依存せずに一定のパルス幅を実現するため、0mA以上200mA以下の範囲で直接パルス変調した1060nm帯のファブリペロー半導体レーザを種光源10として用いることができる。なお、種光源10は、パルス光およびCW光のうち一方を選択的に出力するようにしてもよい。たとえば、図示しない制御部からの制御信号に応じて、種光源10はパルス光およびCW(Continuous Wave)光のうち一方を選択的に出力することができるように構成されていてもよい。
【0028】
光アイソレータ21〜24それぞれは、順方向に光を通過させるが、逆方向に向う光を遮断する。増幅用光ファイバ41〜44それぞれは、希土類元素が添加された光ファイバであって、励起光源90、93、94a〜94fの何れかから出力された励起光が光カプラ30、WDMフィルタ31、32および光コンバイナ33、34の何れかを経て供給され、この励起光により希土類元素が励起されて、基本波の波長の光を光増幅することができる。励起光源90、93、94a〜94fそれぞれは例えば半導体レーザにより構成されてもよい。
【0029】
バンドパスフィルタ50は、増幅用光ファイバ41から出力される光のうち基本波の波長の光を選択的に透過させて出力する。また、バンドパスフィルタ51は、増幅用光ファイバ42から出力される光のうち基本波の波長の光を選択的に透過させて出力する。受動光ファイバ45は、増幅用光ファイバ44から出力される基本波の光を入力して伝搬させ、この基本波の伝搬の際に誘導ラマン散乱を生じさせる。エンドキャップ60は、受動光ファイバ45の先端に設けられていて、受動光ファイバ45から外部へ光を出射する。
【0030】
このMOPA光源1は以下のように動作する。励起光源90から出力された励起光は光カプラ30により2分岐され、2分岐された一方の励起光はWDMフィルタ31を経て増幅用光ファイバ41に供給される。一方、2分岐された他方の励起光はWDMフィルタ32を経て増幅用光ファイバ42に供給される。励起光源93から出力された励起光は光コンバイナ33を経て増幅用光ファイバ43に供給される。また、励起光源94a〜94fそれぞれから出力された励起光は光コンバイナ34を経て増幅用光ファイバ44に供給される。
【0031】
種光源10から出力された基本波の光は、光アイソレータ21およびWDMフィルタ31を経て増幅用光ファイバ41に入力され、この増幅用光ファイバ41において光増幅される。増幅用光ファイバ41において光増幅されて出力された基本波の光は、光アイソレータ22、バンドパスフィルタ50およびWDMフィルタ32を経て増幅用光ファイバ42に入力され、この増幅用光ファイバ42において光増幅される。
【0032】
増幅用光ファイバ42において光増幅されて後、出力された基本波の光は、バンドパスフィルタ51、光アイソレータ23および光コンバイナ33を経て増幅用光ファイバ43に入力され、この増幅用光ファイバ43において光増幅される。増幅用光ファイバ43において光増幅されて出力された基本波の光は、光アイソレータ24および光コンバイナ34を経て増幅用光ファイバ44に入力され、この増幅用光ファイバ44において光増幅される。
【0033】
4本の増幅用光ファイバ41〜44において光増幅された基本波の光は、受動光ファイバ45の一端に入力されて、受動光ファイバ45中を伝搬する。受動光ファイバ45においては、基本波の伝搬の際に誘導ラマン散乱が生じる。受動光ファイバ45の他端からは基本波の光および誘導ラマン散乱成分の光が出力される。
【0034】
ここで受動光ファイバ45は、増幅用光ファイバ44と等しいコア径ならびにコアのNAを有する事が望ましい。これらファイバとしての寸法や特性が異なると、増幅用光ファイバ44と受動光ファイバ45との接続部において融着ロスが発生し、光損傷に繋がる可能性があるためである。
【0035】
このMOPA光源1においては、たとえば種光源10が上述のように波長1060nm帯の光を基本波として出力する。また、増幅用光ファイバ41〜44それぞれは、Yb元素が添加された光ファイバ(YbDF)であることが好ましい。これらの増幅用光ファイバ41〜44は、たとえばそのコア径を10μmとすることができ、このようにすることで融着接続や収納が容易に行なえる。
【0036】
なお、YbDFは励起波長と被増幅光の波長が近く、YbDF内部での熱の発生が小さく抑えられるという利点を有し、産業用レーザ光源には好適である。
【0037】
第1段の増幅用光ファイバ41は、単一クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が125μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が70dB/mであり、975nm帯励起光における非飽和吸収ピークが240dB/mであり、長さが7mである。
【0038】
第2段の増幅用光ファイバ42は、単一クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が125μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が70dB/mであり、975nm帯励起光における非飽和吸収ピークが240dB/mであり、長さが7mである。
【0039】
第3段の増幅用光ファイバ43は、二重クラッドのリン酸塩ガラス系YbDFであり、P濃度が26.4wt%であり、Al濃度が0.8wt%であり、コア径が10μmであり、第一クラッド径が125μm程度である。ただし、第一クラッドの断面形状は8角形である。さらに、915nm帯励起光における非飽和吸収が1.8dB/mであり、長さが3mである。
【0040】
第4段の増幅用光ファイバ44は、二重クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が1.5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が128μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が80dB/mであり、長さが3.5mである。
【0041】
励起光源90、93、94a〜94fそれぞれから出力される励起光の波長は0.975μm帯である。また、励起光源90から増幅用光ファイバ41、42に注入される励起パワーは200mW(単一モード)である。また、励起光源93から増幅用光ファイバ43に注入される励起パワーは2W(マルチモード)である。また、励起光源94a〜94fから増幅用光ファイバ44に注入される合計の励起パワーは25Wである。励起光源90の出力ファイバは、コア径が6μmであり、NAが0.14である。励起光源93、94a〜94fそれぞれの出力ファイバは、コア径が105μmであり、NAが0.22である。
【0042】
ここで、YAGやYVO4などの固体レーザにおいては、数十dBに及ぶ高い利得が得られない。そのため、高い利得を得るためには図2に示したような多段増幅構成を有する光ファイバ増幅が好適である。なお、図2に示したようなファイバレーザは、光ファイバ中の非線形効果(たとえば誘導ラマン散乱:SRSなど)によって、パルスピークパワーに限界があることが指摘されている。
【0043】
図2に示したMOPA光源1により実現された、繰返し周波数が1MHz、パルス幅が130ps、ファイバ出射端でのパルスピークパワーが50kW以上というパルスレーザ光(光パルス出力)のスペクトルを図3に示す。図3においては、横軸がパルスレーザ光の波長であり、縦軸が光パワー(光出力)を示している。なお、横軸の波長の単位はnmであり、縦軸の光パワーの単位はmW/0.5nmである。なお、図3ではSRS成分の割合が異なる3種類のパルスレーザ光のスペクトルを示している。
【0044】
図3からわかるように、図2に示したMOPA光源1から得られるパルスレーザ光では、誘導ラマン散乱(SRS)が顕著となっており、基本波長である波長1050nmから、当該基本波長の光の3次SRS成分の波長であると考えられる、波長が1219nmという波長領域近辺までの広い範囲にレーザ光の波長が分布し、連続スペクトルを示している。なお、図3の波長領域72で示す領域は、光出力の最大値を示す波長を含む領域である最大ピークスペクトル領域であり、波長領域71で示す領域は、ASE(自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission))成分のスペクトルを示している。
【0045】
なお、上述したSRS成分は、図4に示すように波長が1050nmである基本波の成分と殆ど同期して発生するため、パルス幅を広げてしまうという効果は小さい。ここで、図4の横軸は時間を示し、縦軸は光パワーを示している。図4においては、上述したパルスレーザ光において基本波成分とSRS成分との光パワーの出力の時間経過を模式的に示している。
【0046】
上述したパルスレーザ光(光パルス出力)のSRS成分の光パワーは、図2に示したMOPA光源1から得られるパルスレーザ光の平均出力パワー、パルス幅、繰返し周波数などの条件を適宜調整することで制御可能である。また、このようなSRS成分の光パワーは、図5の下段のグラフに示すように種光源10から入射するパルスレーザ光の波形をマルチパルス化するといった、特殊な波形を採用することによっても制御可能である。ここで、図5は、種光源での発生パルスのパターンを説明するための模式図であって、横軸が時間を示し、縦軸がパルスの光パワーを示している。図5においては、上下に2段のグラフが示されており、上段のグラフにおいては、1つのパルスが周期的に発生している状態を示している。一方、下段のグラフにおいては、周期的に2つのパルスが連続して発生している、いわゆるマルチパルス化したパルスレーザの波形を模式的に示している。
【0047】
また、SRS成分のパワーは、図2に示した4段目(最終段)の増幅用光ファイバ44からエンドキャップ60に至るデリバリファイバ(受動光ファイバ45)の長さを変えることによってもある程度調整できる。
【0048】
なお、図3に示したA〜Cのグラフのそれぞれについて、基本波のパワーとSRS成分の総合計のパワーとの比率は以下のとおりである。すなわち、グラフAで示される条件においては、基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比は2:1である。また、グラフBで示される条件における基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比率は1:1である。また、グラフCで示される条件における基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比率は10:1である。
【0049】
なお、上述したグラフAで示された条件は、加工対象材に届くレーザ光の平均パワーを8Wとし、繰返し周波数を1MHz、パルス幅を200psとしたものである。また、図3のグラフBによって示された条件は、上記グラフAの条件からパルス幅のみを130psと狭くした条件に対応する。また、図3のグラフCによって示される条件は、グラフAで示される条件から繰返し周波数を100kHzに下げ、かつパルス幅をグラフBに示された条件と同様に130psとした条件になっている。
【0050】
図1に示したレーザ照射工程(S20)においては、図2のエンドキャップ60から出射されたレーザ光が、所定の光学系を介して図6に示すような加工対象材6に対向配置されたレンズ9を介して集光され、加工対象材6に照射される。ここで、図6に示した実験系においては、たとえば図2に示したMOPA光源1から得られるほぼ回折限界のビーム品質の出力光をコリメートし、ビーム径Dを5mmに拡大した後、図6に示したレンズ9で集光している。レンズ9としては、たとえば焦点距離が20mmのレンズを用いることができる。加工対象材6としては、たとえば厚さが400μmのサファイヤ基板を用いることができる。加工対象材6のレーザ光15が入射する面はたとえば光沢面12(鏡面加工面)としてもよい。なお、レンズ9と加工対象材6の光沢面12との間の距離Lは、適宜調整される。そして、加工対象材6を図6の矢印7に示す方向に移動させる(すなわち図6のX軸方向に移動させる)ことにより、加工対象材6においてレーザ光15が照射された領域8を線状に形成することができる。このときの加工対象材6の移動速度はたとえば10mm/s以上40mm/s以下とすることができる。なお、加工対象材6の裏面は梨地面13(非鏡面加工面、あるいは非光沢面加工面)となっていてもよい。
【0051】
ここで、図7に示すように、波長が1050nmのレーザ光に関して、レンズ9による集光点の位置(焦点位置)はレンズ9からの距離が20mmである位置と予想される。一方、図7に示すように、レーザ光に含まれるSRS成分は、その波長が上述した1050nmよりも大きいため、レンズからの距離が20mmよりも遠い位置に集光点が形成される(焦点を結ぶ)と考えられる。なお、一般に集光する光の波長が長いほど焦点距離は長くなる傾向がある。そのため、SRS成分を含むパルスレーザ光は、レンズ9で集光されても従来のような単一の集光点を形成するのではなく、レンズ9から見た光軸方向に集光点が連続的に分布したいわば集光線を形成する。すなわち、図7に示すように、少なくとも長さLfで示される長さの集光線が形成されることになる。
【0052】
すなわち、図6に示した実験系におけるレンズ9として、焦点距離が20mmのレンズを用い、ビーム径Dが5mmのパルスレーザ光をサファイヤ基板である加工対象材6中に集光した場合については、レーザ光の波長と集光点(焦点)位置との関係は図8に示されるような関係である。なお、図8において横軸はレーザ光の波長を示し、縦軸は、波長が1050nmのレーザ光の焦点位置から、各波長のレーザ光の焦点位置までの距離を焦点位置のずれとして示している。横軸の単位はnmであり、縦軸の単位はmmである。上述のように、波長が長くなるほど、焦点位置がレンズから遠ざかることがわかる。
【0053】
そして、上述のような系における集光線の長さLfは、図7に示すように基本波の波長である1050nmから3次SRS成分のピーク波長である1219nmまでの波長範囲のレーザ光に関して考えれば、約84μmと見積もることができる。さらに、4次のSRS成分のピーク波長は1288nmであり、当該4次SRS成分まで考慮すれば、集光線の長さは約118μmと見積もることができる。
【0054】
なお、SRS成分のパワー配分は、光ファイバ中の偏波の状態や光ファイバの曲げロスなどに起因して穏やかながら常時変動している。そのため、図3に示したスペクトルの分布形状も、ある程度の時間変動を示す可能性は考えられる。
【0055】
このような所定の長さの集光線を形成するレーザ光を加工対象材に照射する場合、集光線の位置と加工対象材との位置との相対的な関係を適宜調整することにより、加工対象材の裏面(レーザ光を照射する側とは反対側の表面)の近傍に破断部やクラックとして認められる改質領域を形成することができる。このような改質領域を起点として、上述のように後処理工程(S30)において加工対象材6を容易に分割することができる。
【0056】
なお、集光されたレーザ光の集光線の位置と加工対象材6との位置関係は、図6に示すように当該レーザ光の基本波(波長が1050nmの波長成分)の集光点の位置が加工対象材6の表面(光沢面12)と一致するようになっていてもよい(つまりレーザ光の集光線が加工対象材6の表面側から内部にまで延在するように配置されてもよい)が、図9〜図11に示すような異なる位置関係となっていてもよい。
【0057】
たとえば、図9に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の厚み方向での内部に配置されていてもよい。異なる観点から言えば、当該レーザ光15の基本波の集光点が、加工対象材6の表面(光沢面12)と裏面(梨地面13)との間に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線は、加工対象材6の裏面(梨地面13)と交差していてもよいし、当該集光線の全体が光沢面12と梨地面13との間に配置されていてもよい。
【0058】
また、異なる形態としては、図10に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の裏面(梨地面13)と重なる位置に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線は、加工対象材6の裏面(梨地面13)から外側に伸びるように配置されることになる。また、さらに異なる形態としては、図11に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の裏面(梨地面13)より外側に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線も、加工対象材6の裏面(梨地面13)よりも外側に配置されることになる。
【0059】
次に、サファイア内部に改質領域が形成されるメカニズムについて検討する。
図12〜図16は、サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【0060】
ここで、GaNのエピタキシャル層とサファイア基板とには、それぞれ異なる損傷閾値(あるパワー密度以上を照射すると損傷する閾値)が存在する。一般的に、エピタキシャル層の損傷閾値は、サファイア基板のそれよりも低い。図12は、エピタキシャル層とサファイア基板の損傷閾値を考慮に入れた集光点付近の概略図である。本発明において用いる光源は、広帯域のスペクトルを有しているために、それぞれの波長に対応する集光点が存在する。波長λ1、λ2、λ3それぞれの集光点を、ω0λ1、ω0λ2、およびω0λ3とする。エピタキシャル層の損傷閾値をEPIth、サファイア基板の損傷閾値をSa.thとした場合、EPIth<Sa.thの関係がある。図12に示したように、EPIthおよびSa.thは、集光点付近を中心にビーム伝搬上の上下対称位置に2つずつ存在する。2つのEPIthの間の領域をエピタキシャル層損傷領域α、また、2つのSa.th間の領域をサファイア損傷領域βとする。領域αは、エピタキシャル層を損傷させるパワー密度領域を指す。また、領域βはサファイア基板が損傷する領域を指す。なお、集光に用いるレンズの形状は、図12に示すように加工対象材側が平坦で、光源側が凸形状となったレンズを用いてもよいが、図7に示したような両側が凸形状となったレンズを用いてもよい。また、図12に示したレンズのように一方表面が平坦で他方表面が凸形状となったレンズを用いる場合、後述するように光源側を平坦な面とし、加工対象材側を凸形状の面となるようにレンズを配置してもよい。
【0061】
図13のA〜Eは、後述する図31および図32のA〜Eに対応している。
A:(サンプル上面より0.1mm上方の空気中の位置に集光点が存在する場合):サンプルのエピタキシャル層は、領域α間に位置するため損傷する。領域βは空気中にある。
B:(エピタキシャル層上に集光点がある場合):エピタキシャル層は、Aの場合と同様に領域α間にあるため損傷する。領域βは、一部分サファイア基板に達しているが、損傷したエピタキシャル層によりレーザ光は散乱し、領域βでの光パワー密度は大幅に低下する。よって、サファイア基板内部に改質領域は形成されない。
C:(エピタキシャル層より0.1mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する場合):エピタキシャル層は、A、Bと同様に領域α間にあるため、損傷する。領域β間は、サファイア基板内部に存在するが、損傷したエピタキシャル層によりレーザ光が散乱するため、Bと同様にサファイア基板内部に改質領域は形成されない。
D:(エピタキシャル層より0.2mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する場合):エピタキシャル層は、領域α外であるため、損傷しない。領域βは、サファイア基板内部に存在する。エピタキシャル層は損傷しないため、レーザ光は散乱することなくサファイア基板内部へ入射され、領域β内に改質領域が形成される。
E:(サファイア基板内を通り抜けた空気中に焦点位置がある場合):エピタキシャル層は、領域α外であるため、Dと同様に損傷しない。領域βの一部はサファイア基板内部に存在する。エピタキシャル層は損傷しないため、Dと同様に入射光は領域β内に高いパワー密度を生成し、その領域β内に改質領域が形成される。
【0062】
図14は、異なる集光レンズを用いた場合のEPIthとSa.thの関係を示す模式図である。
【0063】
図14(a)は、後述する図30〜図32に用いたf=20mmのレンズを用いた場合の概略図である。ここで、γ=(α−β)/2とする。なお、以下では領域αの深さ方向での長さを単にαと、また領域βの深さ方向での長さを単にβと記載することがある。
【0064】
図14(b)は、f<20mmのレンズを用いた場合の概略図である。EPIthとSa.thの値は物性値であるため、図14(a)と同じ値であるが、領域αと領域βのそれぞれの領域間は、ガウシアンビームの伝搬を基準とした相対変化が生じ、図14(a)の領域αと領域βとは異なる領域α1と領域β1が存在する。よって、γ1の値は、(α1−β1)/2となる。一方、図14(c)は、f>20mmのレンズを用いた場合の概略図であり、図14(b)と同様に相対的に変化した領域α2と領域β2が存在し、γ2の値は、(α2−β2)/2となる。
【0065】
図15は、異なる集光レンズを用いた場合のエピタキシャル層から内部改質領域までの距離γと内部改質領域長さ(領域βの長さ)との関係を説明するための模式図である。
【0066】
図15(a)は、図14(b)の集光レンズ(f<20mm)を用いた場合の領域β1とγ1の関係を示す。図15(b)は、図14(c)の集光レンズ(f>20mm)を用いた場合の領域β2とγ2の関係を示す。焦点距離が短い場合は、γ1値を小さくできるため、改質領域の形成深さはエピタキシャル層に近づけることが可能であるが、改質領域長さ(領域β1の長さ)は小さくなる。一方、焦点距離が長い場合は、γ2値が大きくなるためエピタキシャル層から離れた領域に改質領域が形成されるが、領域β2の長さである改質領域長さは長くなる。例えば、基板厚さがLine Aの場合(つまり、サファイア基板の裏面の位置がLine Aで示される位置である場合)、f>20mmの集光レンズでは結晶の外側に領域βがあるために改質領域は形成されない。よって、改質領域の形成には、f<20mmの集光レンズを用いる必要がある。一方、基板厚さがLine Bの場合(つまり、サファイア基板の裏面の位置がLine Bで示される位置である場合)は、f<20mm、f>20mmいずれのレンズにおいても内部改質領域を形成させられるが、一度に長い改質領域を形成させられる方が有利な場合があり、その場合は、f>20mmのレンズを用いる必要がある。
【0067】
以上より、所望の基板厚さに所望の内部改質領域を形成させる指針は、EPIth、Sa.thの値を求め、γとβの関係を明らかにし、図15に示したように適切なf値を有する集光レンズを用いる必要がある。
【0068】
図16は、内部改質領域を形成するための条件を説明するための模式図である。図16に示すように、損傷閾値Bthを有している異なる材料(厚さt)に所望のγCとβBで内部改質領域を形成させるには、デザインした損傷閾値Athを有している層を上記材料上に堆積させ、適切な光レンズ(f=Γmm)を用いることが必要である。
【0069】
図17は、サンプルに対してレーザ光を入射するときの入射面の状態による影響を説明するための模式図である。図17(a)は、サンプルの梨地面からレーザ光を照射した場合を示している。一方、図17(b)は、サンプルにおいてエピタキシャル層が形成された面からレーザ光を照射した場合を示している。図17に示すように、梨地面からレーザ光を入射させた場合、サンプルの表面でレーザ光が散乱するために改質層は形成されない。
【0070】
図18は、本発明によるレーザ加工方法のレーザ走査方向とサンプルの破断強度との関係を説明するための模式図である。図18(a)は、レーザ走査方向と破断強度との関係を示すグラフであり、図18(b)は図18(a)におけるレーザ走査方向とサファイア基板の結晶方位との関係を説明するための模式図である。
【0071】
図18(a)を参照して、垂直方向および平行方向の破断強度は、それぞれ40MPa、および60MPa程度であり、サファイア基板の引張強度2,250MPaに比べそれぞれ1.7%、および2.6%にまで低減している。また、水平方向と垂直方向の破断強度の差異は極めて小さい。このように、サファイア基板の結晶方位に関係なく、レーザ光の走査ラインに沿って分割することが可能である。つまり、内部改質領域を起点として小さい応力で基板を分割することが可能である。
【0072】
次に、図19を参照して、本発明において用いる離散的なスペクトル光源の実施例を説明する。図19に示した光源は、図2の種光源10の一例であって、光出射部101として高いピークパワーを有するTi:Sapphireレーザ、あるいは、Nd:YAGレーザ光源を用いる。光出射部101から出射される光の波長を波長ω0(たとえば1064nm)とする。当該出射された光は、SHG結晶102において2倍波の波長ω1(たとえば532nm)である光に波長変換される。
【0073】
次に、波長ω0の光については高反射特性、波長ω1の光については高透過特性を有するダイクロイックミラー103により波長ω0の成分と波長ω1の成分とを分離する。ダイクロイックミラー103において分離された波長ω0の成分は図19の矢印110に示す方向に反射される。一方、波長ω1の成分は矢印111に示すようにダイクロイックミラー103を透過する。
【0074】
次に、波長ω1の成分(光)は、幾つかのハーフミラーを用いて複数の光路に等分分岐される。当該等分分岐した各々の光は、OPO104(Optical Parametric Oscillator104)によりエネルギー保存則を満たした異なる波長の光に波長変換される。例えば、OPO104の領域105aでは、波長ω1の光は波長ω2の光と波長ω3の光とに変換される。また、OPO104の領域105bでは、波長ω1の光は波長ω4の光と波長ω5の光に、さらに、OPO104の領域105cでは、波長ω1の光は波長ω6の光と波長ω7の光とに、それぞれ波長変換される。OPO104では、上述した波長ω2〜ω7はそれぞれ異なるように設計されている。また、OPO104の各領域105a〜105cはダイクロイックミラー103の出側に設置されたハーフミラー(図示せず)から同一距離になるように配置されている。なお、OPO104の各領域105a〜105cは、それぞれミラー106a〜106cおよびミラー107a〜107cを含む。
【0075】
波長変換後の波長ω2〜ω7の光について、スペクトルの概略を図20に示す。図20を参照して、横軸は光の波長を示し、縦軸は光出力(a.u.)を示す。図20からわかるように、波長変換した各々の光の波長は、波長ω0を中心として分布している。また、図19および図20に示されるように、各領域105a〜105cからそれぞれ2つの異なる波長の光が生成されている。
【0076】
なお、ダイクロイックミラー103の出側においてハーフミラーを増設し、波長ω1の光を等分分岐した光路数を増大させることにより、波長ω1の光を等分分岐して得られる光の離散的な波長の数を増やす事が可能である。また、図20における各々の波長の光の光出力は、それぞれ同程度になるように調整するのが好ましいが、必ずしもこれらの光出力が一致する必要は無い。
【0077】
そして、OPO104から出力された光は光学系を用いてダイクロイックミラー108に入射される。このダイクロイックミラー108は、波長ω1の光については高反射特性、波長ω1以外の光については高透過特性を有する。そのため、ダイクロイックミラー108において波長ω1の光は矢印112に示すように反射され、一方、波長変換後の波長ω2〜ω7の光は矢印113に示すようにダイクロイックミラー108を透過する。このようにして、図19に示した光源から波長ω2〜ω7の光が出力される。
【0078】
次に、広帯域に亘って光出力がフラットな連続スペクトルが得られる光源の実施例について説明する。図19および図20に示した光源(離散スペクトル光源)を、図2に示したMOPA光源の種光源10として用い、プリアンプ部3、ブースタアンプ部4を備えるファイバレーザを用いることにより、利得がある波長範囲内に調整されたそれぞれの離散的な波長の光出力を数十kWピーク値にまで増幅させることができる。さらに、強制的に誘導ラマン散乱を誘起させ、各々の離散的な波長を有する光によって生じた各々の誘導ラマン散乱光を加算し、光出力の平均化を行うことができる。
【0079】
上記ファイバレーザの利得媒体としては、すでに述べたように増幅用光ファイバとしてYbドープファイバが用いられている。このため、利得の波長範囲は、反転分布の状態にも寄与するが、およそ波長1000nmから1180nmの範囲であり、当該利得プロファイルは1030nm近傍にピークを有する。種光源10として用いる図19に示した離散スペクトル光源の各々の波長(波長ω2〜ω7)は、上記利得範囲内に収まるようにOPO104を設計する。また、誘導ラマン散乱の閾値は、上記増幅用光ファイバのコア径に依存するが、数kWから30kW程度である。したがって、この閾値以上のピーク値を有するよう、種光源10からの光をファイバレーザで増幅する。
【0080】
このようにして光出力が平均化された光のスペクトルを、図21に示す。図21の横軸は波長を示し、縦軸は光出力(単位:dB)を示す。離散スペクトル光源の各々の波長(波長ω2〜ω7)は、上述のようにYbドープファイバの利得範囲に含まれることが好ましい。また、誘導ラマン散乱(SRS)により形成される成分(たとえばSRS1次成分〜SRS3次成分)が、広い波長範囲で重なることにより、全体として光出力が平均化される。
【0081】
なお、光出力の平均化(フラット化)の程度をより高めるためには、図19などに示す離散スペクトル光源から得られる複数の波長の光について、各波長の間の間隔を狭くし、さらにより多数の波長(ωn)の光を用いることが有効である。また、用いられる増幅用光ファイバの利得プロファイルを考慮に入れて、増幅された各波長の光の光出力が同程度となるように、離散スペクトル光源から得られる各波長の光の光出力を調整することが望ましい。
【0082】
このような光出力の調整方法としては、たとえば図19に示すOPO104の各領域105a〜105cに含まれるミラー106a〜106c、107a〜107cの各波長に対する反射率と透過率とを調整する方法や、アッテネータやフィルター等を併用する方法が挙げられる。
【0083】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))と、加工対象材6にレーザ光を照射することにより、加工対象材6に改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))とを備える。レーザ照射工程(S20)では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15をレンズ9で集光することにより、レーザ光15の連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材6の表面(光沢面12または梨地面13)に位置するように、レーザ光15を加工対象材6に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。
【0084】
このようにすれば、連続スペクトルの波長成分が集光されることで集光線(集光点(焦点)の集合)が形成されるので、加工対象材6において当該集光線が位置する領域または集光線の軸線上に、レーザ光15の照射方向(たとえば深さ方向)に長く伸びる改質領域を形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光15の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0085】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、集光線全体が加工対象材6の外部に位置するように、レーザ光15を加工対象材6に照射してもよい。この場合、加工対象材6の内部において集光線に隣接する部分に、レーザ光15の照射方向に伸びる改質領域を形成できる。
【0086】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、加工対象材6の第1面(光沢面12)からレーザ光15が入射されるとともに、加工対象材6の厚み方向において第1面と反対側に位置する第2面(梨地面13)側に改質領域が形成されてもよい。
【0087】
このように、レーザ光15を照射する面とは反対側の面(第2面)である梨地面13に近い位置に改質領域を形成できるので、加工対象材6の第1面(レーザ光の照射面である光沢面12)にたとえば半導体層を形成している場合、当該光沢面12側の半導体層が改質領域の形成により損傷を受けるといった問題の発生を抑制できる。
【0088】
上記レーザ加工方法において、加工対象材準備工程(S10)では、加工対象材6において、第1面(光沢面12)が鏡面加工されてもよく、かつ上記第2面(梨地面13)が梨地加工されてもよい。
【0089】
上記レーザ加工方法において、レーザ光の種光であるパルス光に対するラマン散乱効果を利用して連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15を発生させていてもよい。この場合、ラマン散乱効果を利用して、光源(種光源10)から出射される単波長のレーザ光から、本発明において必要な連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15を容易に得ることができる。また、このようにラマン散乱効果を利用するので、得られるレーザ光15のパルス幅が連続スペクトルを有するレーザ光を形成するために広がるといった問題の発生を防止できる。
【0090】
上記レーザ加工方法において、図3のグラフA、Bの場合のように、レーザ光15の連続スペクトルを構成する波長成分のうち最も強度の高い最大ピーク波長の強度に対して、連続スペクトルを構成する波長成分のうち最大ピーク波長以外の波長成分の強度の合計が10%以上であってもよい。この場合、最大ピーク波長以外の波長成分についてもある程度の強度を有するようにすることで、集光線において最大ピーク波長以外の波長成分の集光点に対応する部分によっても改質領域を確実に形成できる。
【0091】
上記レーザ加工方法において、レーザ光15の連続スペクトルを構成する波長成分は、最大ピーク波長以外の波長成分のうち強度が局所的な極大値を示す1つ以上の局所ピーク波長を含んでいてもよく、最大ピーク波長と、1つ以上の局所ピーク波長との差の最大値が100nm以上であってもよい。この場合、連続スペクトルにおける波長の分布幅を十分大きくすることで、得られる集光線の長さをある程度以上の長さとすることができる。この結果、レーザ光15の照射方向における改質領域の長さを十分長くすることが可能になる。
【0092】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))と、加工対象材6にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材6に改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))とを備える。改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段(レンズ9)で集光することにより、各パルスショット毎に、当該パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成され、レーザ光を加工対象材6に照射することにより、当該直線上に集光領域による改質領域を加工対象材6の内部に形成する。なお、上記各パルスショットとは、時間軸上の1パルスごとの照射パルス光を意味する。
【0093】
このようにすれば、当該パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成されるので、加工対象材6の内部において当該集光領域による改質領域を線状に伸びるように形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め線状に伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光して利用することにより、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0094】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成され、レーザ光を加工対象材に照射し、線状の集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。
【0095】
このようにすれば、当該パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成されるので、加工対象材6の内部において当該集光領域による改質領域を線状に伸びるように形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め線状に伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0096】
上記レーザ加工方法において、所定のスペクトルバンドは、50nm以上の連続したスペクトル領域以外の離散的なスペクトル領域を含んでいてもよい。
【0097】
上記レーザ加工方法において、図3や図21に示すように、所定のスペクトルバンドは、連続スペクトル、あるいは複数の離散的なスペクトルを有したスペクトル領域を含んでいてもよい。
【0098】
上記レーザ加工方法において、レーザ光は、CW(Continuous Wave)成分を含んでいてもよい。
【0099】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、スペクトルの異なるパルス光を個別に発生する複数のパルス光源からの複数のパルス光を同期して合波した単一のパルス光を含んでいてもよい。たとえば、図19に示したOPO104の複数の領域105a〜105cが上記複数のパルス光源に該当すると考えることができ、図19のダイクロイックミラー108から出力されるパルス光が図2に示したプリアンプ部3およびブースタアンプ部4により増幅されたパルス光が上記単一のパルス光に該当する。あるいは、図2に示したようなMOPA光源であって互いに特性の異なるものを複数準備し、これらの複数のMOPA光源から出力されるスペクトルの異なるパルス光を従来周知の合波装置などを用いて合波することで単一のパルス光を構成してもよい。このようにすれば、合波するパルス光のスペクトルを調整することで、得られる単一のパルス光のスペクトルを調整することができる。
【0100】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、図21に示すように、受動ファイバ(受動光ファイバ45)に入力される基本パルス光由来の成分と、基本パルス光に対する受動光ファイバ45での誘導ラマン散乱効果を利用して形成された50nm以上のスペクトル幅の連続スペクトル成分とを有していてもよい。
【0101】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、連続スペクトル成分を構成するスペクトル成分のうちの基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分のパワーが、基本パルス光のパワーに対し、10%以上であってもよい。この場合、基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分についてもある程度のパワー(強度)を有するようにすることで、集光領域において基本パルス光以外のスペクトル成分の集光点に対応する部分によっても改質領域を確実に形成できる。
【0102】
なお、ここで基本パルス光のパワーとは、誘導ラマン散乱効果を受ける前のパワー(図2の増幅用光ファイバ44後であり、受動光ファイバ45の前におけるパルス光のパワー)を意味する。また、基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分とは、上記の基本パルス光の中心スペクトルに対して、基本パルス光のパワーが5%となる長波長側のスペクトルの波長から、長波長側の領域のスペクトル成分を指す。ここでは、ラマン成分との仕分けの指標として上記5%という数値を用いている。なお、レーザの増幅過程において発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE:たとえば図3の波長領域71における成分)は連続光であって、上記の議論におけるパルス光ではない。
【0103】
上記レーザ加工方法において、連続スペクトルは、基本パルス光のピークスペクトル領域以外の成分のうち、パワーが局所的な極大値を有する局所ピークスペクトルを一つ以上含んでいてもよく、基本パルス光のピークスペクトル(波長)と、1つ以上の局所ピークスペクトル(波長)との最小離間間隔が100nm以上であってもよい。この場合、連続スペクトルにおける波長の分布幅を十分大きくすることで、得られる集光線の長さをある程度以上の長さとすることができる。この結果、レーザ光15の照射方向における改質領域の長さを十分長くすることが可能になる。
【0104】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、レーザ光の集光領域の一部、あるいは全体が加工対象材の内部に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射してもよい。この場合、加工対象材の内部において確実に改質領域を形成できる。
【0105】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、加工対象材の第1面からレーザ光が入射されるとともに、加工対象材の厚み方向において、第1面と反対側に位置する第2面に集光領域の一部を設定し、改質領域が第2面から加工対象材の内部に亘って形成されてもよい。この場合、レーザ光が入射する第1面と反対側の第2面に改質領域を形成するので、第1面側に別の材料層(たとえば半導体層などの機能層)を形成した場合、当該材料層が改質領域の形成により損傷を受けるといった問題の発生を抑制できる。
【0106】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、第2面の表面粗さRa(JIS規格)が0.1μm以上1.0μm以下となるように、第2面が非鏡面加工されていてもよい。
【0107】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、加工対象材において第1面が鏡面加工されていてもよい。この場合、レーザ光を照射する第1面において当該レーザ光が乱反射するといった問題の発生を抑制できる。
【0108】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、加工対象材6において鏡面加工された第1面上にエピタキシャル層が形成されてもよい。この場合、エピタキシャル層に損傷を与えることなく、第2面側に形成された改質領域を起点として加工対象材6を当該エピタキシャル層とともに分割することができる。
【0109】
(実験1)
本発明によるレーザ加工方法の効果を説明するため、以下のような実験を行なった。なお、以下の実験では、光源として用いるパルス光のパルス幅を180psとした。
【0110】
(試料)
本発明によるレーザ加工方法の加工対象材の試料として、厚さが400μmのサファイヤ基板を準備した。なお、当該サファイヤ基板の平面形状は、四角形状であって、縦×横が10mm×10mmである。試料の表面(光沢面12)は鏡面加工を施し、裏面(梨地面13)については梨地加工を施した。
【0111】
(実験内容)
図2に示したMOPA光源から得られるパルスレーザ光を焦点距離が20mmのレンズを用いて集光し、加工対象材としてのサファイヤ基板に照射した。なお、レンズに入射したレーザ光のビーム径は5mmである。そして、サファイヤ基板に入射するレーザ光の集光線の位置が5つの条件になるように、サファイア基板とレンズとの間の距離を変更しながら、当該サファイア基板にレーザ加工を行なった。
【0112】
具体的には、条件1としては、図6に示すように、基本波(波長が1050nmのパルスレーザ光)の焦点位置がサファイヤ基板の光沢面12(図6参照)と一致するように設定した。但し、プラズマ発生が最も顕著になるように目視で設定を行ったので、±0.1mm程度の誤差は見込まれる可能性がある。そして、条件2としては、試料の光沢面12がレンズ9の方向に向かうように(つまり、当該基本波の焦点位置が加工対象材6であるサファイヤ基板の光沢面12より加工対象材6の内部に移動するように、あるいはz軸方向に)、試料を条件1の位置から0.1mmだけシフトさせる(z=0.1mm)。また、条件3は、試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.2mmだけシフトさせる(z=0.2mm)。
【0113】
また、条件4は、試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.3mmだけシフトさせる(z=0.3mm)。また、条件5としては試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.4mmだけシフトさせる(z=0.4mm)。また、用いたレーザ光の条件としては、繰返し周波数を1MHz、パルス幅を180ps、平均出力を8Wとした。また、サファイヤ基板のレーザ照射時における移動速度は10mm/sとした。
【0114】
そして、加工後の試料について、レーザ光を照射した領域の側面およびレーザ照射面(光沢面)について光学顕微鏡による観察を行なった。また、後述するように条件5については、改質領域が形成された部分の断面についてSEMにより観察を行なった。
【0115】
(結果)
図22〜図24を参照して、実験の結果を説明する。図22は、条件2〜条件5における試料のレーザ加工後の側面および光沢面(レーザ照射面)の状態を示す光学顕微鏡写真を示している。つまり、図22では、4つのカラムの左側から順番に条件2〜条件5の試料のレーザ照射部についての光学顕微鏡写真を示している。各カラムの上段の写真はレーザ照射された部分の側面の光学顕微鏡写真であり、下段はレーザ照射面である光沢面の光学顕微鏡写真である。なお、図22の光学顕微鏡写真は、図6に示したX軸の方向から試料の側面(端面)を観察したものである。図22からもわかるように、条件2〜条件3については、レーザ光照射面である光沢面におけるレーザ照射を受けた部分において、レーザ照射を受けた痕跡が確認できるものの、その側面を確認すると、深さ方向には殆ど改質領域は形成されていなかった。
【0116】
一方、条件5においては、レーザ照射面である光沢面には条件2〜条件4に比べてごく薄いレーザ照射の痕跡が認められる一方で、レーザ照射された側と反対の面である裏面(梨地面)から深さが約90μm程度の改質領域(変質層)が形成されていた。なお、条件1の試料については、レーザ光を照射された面である光沢面12側から深さが100μm以上の改質領域が形成されていた。そして、レーザ照射によって条件1では当該レーザ光が照射された部分において切断された。図23は、条件1のレーザ加工により切断されたサファイヤ基板の切断面を示す光学顕微鏡写真である。なお、図23ではレーザ光のスキャン方向が矢印16で示されている。
【0117】
このように、条件5においてレーザ照射された側と反対側の裏面に一定の深さの改質領域が形成されていた。この条件5の改質領域を確認するため、図24に示すように条件5の試料の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。なお、図24では、試料の梨地面(レーザ照射された面とは反対側の裏面)が上側になっている。
【0118】
図24からわかるように、図24の上面側(梨地面側)から深さ90μmという位置まで、その幅が約5μmという改質領域が形成されていた。なお、この改質領域のアスペクト比(深さ/幅)は18となり、極めて高いアスペクト比を示している。
【0119】
また、図24からもわかるように、図24に示した梨地面(図24の上面)から深さが約90μmの位置に、加工の起点と思われる部分が認められる。これは、図7に示した集光線のうち、レーザ光の波長成分のうち最もパワー配分の高い基本波の成分の集光点(焦点)が加工対象材であるサファイヤ基板の改質の起点を形成したものと考えられる。そして、3次〜4次のSRS成分による焦点によって構成される集光線が裏面側(梨地面側)に届いたことで、従来のようなフェムト秒パルスレーザを用いなくても、上述したようなアスペクト比が極めて大きい(幅が狭くかつ深さ方向の距離が長い)改質領域を形成することができたものと考えられる。
【0120】
また、図24からもわかるように、改質領域の深さ方向の両端に近い部分ほど加工を受けた程度が高くなっているように考えられる。これは、照射したレーザ光のうち基本波の成分による焦点と3次のSRS成分による焦点とが改質領域の深さ方向の両端に位置し、改質の起点の形成に寄与したものと考えられる。そして、3次のSRS成分による焦点の位置を裏面側である梨地面の位置とほぼ一致させたという条件が、他の条件2〜条件4とは異なっている。したがって、この点が条件5における改質領域の形成に寄与しているものと考えられる。
【0121】
なお、上述したレーザ照射の条件は図3に示したグラフBのデータに対応するレーザ照射条件とほぼ同様であった。このように、照射されるレーザ光については、基本波のパワーとSRS成分のパワーの総合計との比率が適切な値になっていることが望ましいと考えられる。
【0122】
(実験2)
レーザ光の照射条件を変えて、本発明によるレーザ加工方法の効果を確認するための実験を行なった。
【0123】
(試料)
上述した実験1において準備した試料と同様の試料(サファイヤ基板)を加工対象材として準備した。
【0124】
(実験内容)
準備したサファイヤ基板に対して、実験1の場合と同様にレーザ加工を行なった。但し、レーザ光の照射条件は基本的には上述した実験1と同様であるが、試料の移動速度が40mm/sとされている点が異なっている。そして、試料とレンズとの間の距離の条件については、上述した実験1における条件1〜条件4と同様の条件について、それぞれレーザ加工の実験を行なった。そして、加工後の試料について、レーザ光を照射した領域の側面およびレーザ照射面(光沢面)について光学顕微鏡による観察を行なった。また、後述するように条件4については改質領域が形成された部分の断面についてSEMにより観察を行なった。
【0125】
(結果)
図25〜図28を参照して、条件1〜条件3については、レーザ照射された側の面である光沢面において、レーザ照射の痕跡は認められるものの、厚み方向に深く伸びるような改質領域は殆ど形成されなかった。一方、条件4においては、実験1における条件5の場合と定性的に類似した形態で、裏面側(梨地面側)に改質領域が形成されていた。また、条件4については光沢面側におけるレーザ照射痕は他の条件よりも比較的軽微であった。
【0126】
そして、条件4の試料について、改質領域が形成された部分の断面をSEMで観察すると、図26〜図28に示すように、裏面側(梨地面側)から深さが約120μm(具体的にはほぼ125μm)の位置にまで延びる改質領域が形成されていた。当該改質領域の深さ方向の両端部には、図27および図28に示すように改質点(核)と思われる領域17、18がそれぞれ形成されていた。具体的には、図27に示すように梨地面から深さが約10μmの位置に改質点となる領域17(核)が認められ、また図26および図28に示すように、梨地面から深さが125μmの位置に改質点となる他の領域18(核)が認められた。
【0127】
これは、試料(サファイア基板)とレンズとの間の距離などを考慮すれば、図28に示した領域18がレーザ光の基本波による焦点の位置に対応し、図27の領域17が、4次のSRS成分による焦点に対応すると考えられる。そして、これらの基本波および4次のSRS成分による焦点が改質領域(加工線)の両端にあって領域17、18の形成に寄与したものと考えられる。
【0128】
なお、照射するレーザ光のエネルギーを増大させることにより、レーザ光が集光した結果として集光線が形成される場合においても、集光線における十分なフルエンスが得られれば、実験1の条件3および条件4の場合、あるいは実験2の条件2および条件3の場合のように、集光線が加工対象材であるサファイヤ基板の梨地面(裏面)と交差しない場合であっても、サファイヤ基板の内部に改質領域を形成することは可能であると思われる。
【0129】
但し、サファイヤ基板の梨地面には特にエピタキシャル層などが形成されることない。また、上記のような改質領域の形成は、サファイヤ基板の光沢面上に形成されるエピタキシャル層などに対して影響を殆ど及ぼさないと考えられる。そのため、比較的低い平均パワーの条件でレーザ光の集光線に沿った改質領域を形成する場合には、集光線の位置を加工対象材の厚み方向の内部に完全に含まれるように配置するのではなく、集光線の一部を加工対象材の表面側あるいは裏面側の一部と交差させる、より好ましくは裏面側(加工対象材6の梨地面13側)と交差させることが好ましい。
【0130】
ここで、従来のように単一波長のレーザ光を集光して点状の集光点(焦点)を形成し、当該集光点を加工対象材の内部に位置させた場合、加工対象材の内部には点状の変質領域(変質点)が形成される。一方、本発明のように、レーザ光において敢えてSRSを発生させることで、レンズによりレーザ光を集光することで形成される集光点(焦点)を線状に配置した集光線とし、当該集光線を加工対象材の表面または裏面と交差するように当該レーザ光を加工対象材に対して照射すれば、加工対象材の深さ方向に広がった改質領域を1度のレーザ照射で形成することができる。
【0131】
さらに、従来のように点状の集光点を加工対象材の内部に配置させてレーザ照射を行なう場合、広い改質領域を形成するためにはレーザ照射を複数回実施する必要がある。しかし、本発明によれば1度のレーザ照射により広い範囲に帯状の改質領域を形成することが可能である。さらに、発生させることが困難であるフェムト秒領域の短パルスレーザを用いることなく、本発明ではアスペクト比の大きな改質領域を形成することができる。
【0132】
なお、レーザ光源としては、上述のようなファイバレーザを用いることが好ましいが、仮に光源として固体レーザを用いた場合でも、実質的に単一モードのデリバリ用光ファイバを用いて敢えてSRSを発生させることで、本発明によるレーザ加工方法の光源として利用することが可能である。
【0133】
以下、他の実験例について説明する。
本実験ではレーザ発振器に微細加工用パルスファイバーレーザ(住友電気工業社製)を使用した。本レーザ発振器は、図2に示したレーザ装置と同様にMOPA方式であり、高速変調可能な半導体レーザを種光源とし、アンプ器によってパワー増幅することから、パルス幅と繰り返し数を独立して設定することが可能である。当該レーザ発振器の発振中心波長は1060nmであり、パルス繰り返し数とパルス幅を広範囲で選択することができる。コリメータレンズにより出力された直径1.6mmのレーザ光はアイソレータを通過後、ビームエキスパンダによって5倍に拡大され、焦点距離20mmのアクロマティックレンズによってサンプルへ集光した。
【0134】
図29は、本実験例において用いたサンプルの概略断面模式図である。当該サンプルはサファイア基板上にエピタキシャル層が形成された積層構造となっている。サファイア基板厚はおよそ400μmであり、当該サファイア基板のミラー研磨面上に窒化ガリウム(GaN)のエピタキシャル層が0.3μm厚で堆積されている。なお、サファイア基板の上記ミラー研磨面と反対側に位置する対向面は、梨地面(表面粗さRa(JIS(日本工業規格)B0601の算術平均粗さRa)が0.51μm)である。
【0135】
図30は、サンプルにレーザ光を照射した状態を示す模式図である。レーザ光源としては上述のように高いピークパワーと広帯域のスペクトルを有するファイバレーザ光源を用いた。当該レーザ光源から出力されたレーザ光は、上述のように集光レンズ(f=20mm)を介してサンプル(エピタキシャル層/サファイア基板)に照射される。サンプルは、図30に示すようにジグ上に配置されている。ジグはxyz可動式ステージ上に搭載されている。レーザ光はサンプルにおいてエピタキシャル層が形成された側から照射した。なお、ジグはAl製であり、レーザ光の反射光を抑制するために、短冊形状を採用した。
【0136】
図31は、レーザ照射後のサンプル(サファイア基板)の断面写真である。図32は、図31に示したA〜Eの場合のサンプルと焦点位置との関係を示す模式図である。
【0137】
図31では、焦点位置を50μmずつ移動させたときのレーザ光走査軸に対して垂直方向より観察した加工痕の断面形状を示しており、レーザ光は図上側から照射している。zはステージの高さを示す。ステージの高さを制御することで集光レンズとサンプルの深さ方向での相対位置を調整することができる(なお、図31に図示した記号A〜Eは、図32のA〜Eに対応している)。観察には光学顕微鏡を用い、観察方向と反対の方向から光を照射している。焦点位置zは焦点位置が試料表面にある場合をz=0とし、それより上側(試料上部)に焦点がある場合を正、下側(試料内部)にある場合を負と定義した。
【0138】
A:z=0.1mmの場合は、サンプル上面より0.1mm上方の空気中の位置に集光点が存在する。B:z=0の場合は、エピタキシャル層上に集光点がある。C:z=−0.1mm、およびD:z=−0.2mmの場合は、エピタキシャル層よりそれぞれ0.1mmおよび0.2mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する。E:z=−0.25mmの場合は、サファイア基板内を通り抜けた空気中に焦点位置がある。なお、図32に記載されているドットはサファイアの屈折率を考慮した焦点位置である。図31から分かるように、z=0.15mm〜−0.15mmの範囲において、エピタキシャル層のみが損傷している。一方、z=−0.2mm〜−0.25mmの範囲においては、エピタキシャル層は損傷せず、サファイア内部のみに改質領域が形成されている。
【0139】
z=−0.20mm、−0.25mmの場合においては梨地面から基板内部にかけて直線状の改質領域が形成されている。z=−0.20mmの場合での改質領域は幅5μm、高さ180μmで、アスペクト比が36と非常に高いアスペクト比が得られている。
【0140】
図33は、形成された改質領域を説明するための模式図である。図33(a)は、本発明において用いるレーザ光の特徴を説明するための模式図である。また、図33(b)は、改質領域を説明するための断面写真である。
【0141】
図33(a)に示すように、本光源は、広範囲のスペクトル幅を有しているため、レーザ光の各波長によって集光点位置が異なる。
【0142】
そして、図33(a)に示すようなレーザ光を用いてレーザ照射を行なった場合、図33(b)に示すように、サンプルであるサファイア基板の内部には改質領域が形成される。図33(b)に示すように、それぞれの集光点を結ぶように改質領域が線状に形成されている。
【0143】
なお、図33に示したサンプルについては、図34〜図38により詳細な断面写真を示している。すなわち、図34の左上の写真は、当該サンプルの光学顕微鏡写真である。また、図34の左下の写真は当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)による写真であって、二次電子像を示す。また、図34の右下の写真は当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)による写真であって、インレンズ像を示す。なお、図34の左下の写真は、図33(b)の左上の写真を上下反転したものに対応する。
【0144】
また、図35の左上の写真は、SEMによる二次電子像であって、当該サンプルの断面における梨地面側の一部を示す。また、図35の右上の写真は、図35の左上の写真のさらに一部分を示す。また、図35の左下の写真は、SEMによる二次電子像であって、当該サンプルの断面における鏡面側の一部を示す。また、図35の右下の写真は、図35の左下の写真のさらに一部分を示す。なお、図35のたとえば左上の写真に認められる縦に伸びるスジはCP(Cross Section Polisher)加工による加工痕である。このような表面加工については、上記CP加工の他にIon Beam Polishing Systemを用いた加工を適用してもよい。
【0145】
また、図36に示した写真は、実質的に図35の左上の写真と同じであるが、図36の右下の写真では、サンプルの断面における改質領域の一部分を特定するための番号(81〜84)が記載されている。
【0146】
また、図37に示した写真は、図36の右下に示された写真における番号(81〜84)で示された改質領域の一部分を示すSEM写真である。なお、図37の左上の写真は、図33(b)の左下の写真を上下反転したものに対応する。また、図38は、図37に示した4枚の写真を縦に並べることで、改質領域の広い領域を示している。なお、図38は図33(b)の右側の写真を上下反転したものに対応する。
【0147】
図39は、レーザ光の走査回数の影響を説明するための模式図である。図39(a)および図39(b)は、エピタキシャル層/サファイア基板という積層構造のサンプルにそれぞれ1回、および2回のレーザ走査を行い(なお、エピタキシャル層側から入射したレーザ光の走査方向は図18(b)に示す垂直方向である)、破断試験後の断面観察結果を示す写真である。また、図39(c)は、レーザ光の走査方向を説明するための模式図である。図39(a)および図39(b)に示すように、2回走査の方が破断面に生じた条痕は短く、改質領域が密に形成されていることが分かる。また、これらのサンプルについて破断強度の測定を行なった結果を、図39(d)のグラフに示す。図39(d)に示したグラフの縦軸は破断強度(単位:MPa)を示し、グラフの左側のデータが走査回数1回のサンプル(図39(a)のサンプル)のデータであり、グラフの右側のデータが走査回数2回のサンプル(図39(b)のサンプル)のデータである。当該グラフからも分かるように、2回走査した方が破断強度は低く、バラつきも小さい。よって、内部改質後のサンプルの破断を行う場合は、多重走査が有効である。
【0148】
図40は、本発明によるレーザ加工方法を用いて破断したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。図40に示したサンプルは、エピタキシャル層/サファイア基板という積層構造のサンプルに2回のレーザ走査を行った後の破断面観察結果を示す。なお、レーザ光の走査方向は図39(c)に示した走査方向である。図40(a)はサンプルの断面を示す写真であり、図40(b)はサンプルのエピタキシャル層/サファイア基板との界面近傍の領域(図40(a)の鎖線で囲まれた上側の領域)の拡大写真であり、図40(c)はサンプルの改質領域の一部(図40(a)の鎖線で囲まれた下側の領域)の拡大写真である。図40(a)および図40(c)に示すように、サファイア基板の梨地面側にはおよそ200μm程度の深さの改質領域が形成されているが、図40(b)に示すように上面のエピタキシャル層には大きな損傷は見受けられない。つまり、エピタキシャル層に対し、改質領域に起因した大きな損傷を及ぼすことなく、改質領域を形成すること、また、その改質領域を利用してサファイア基板を分割することが可能である。
【0149】
なお、図40に示したサンプルについては、図41および図42により詳細な断面写真を示している。すなわち、図41の上側の写真は、図40(a)に対応し、図41の下側の写真は、図40(b)に対応する。また、図42の写真は、図40(c)に対応する。
【0150】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
この発明は、半導体を形成するために用いられる基板の切断に特に有利に適用できる。
【符号の説明】
【0152】
1 MOPA光源、3 プリアンプ部、4 ブースタアンプ部、6 加工対象材、7,16,110〜113 矢印、8,17,18 領域、9 レンズ、10 種光源、12 光沢面、13 梨地面、15 レーザ光、21〜24 光アイソレータ、30 光カプラ、31,32 WDMフィルタ、33,34 光コンバイナ、41〜44 増幅用光ファイバ、45 受動光ファイバ、50,51 バンドパスフィルタ、60 エンドキャップ、71,72,105a〜105c 領域、90,93,94a〜94f 励起光源、101 光出射部、102 SHG結晶、103,108 ダイクロイックミラー、104 OPO、106a〜106c,107a〜107c ミラー。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工方法に関し、より特定的には、加工対象物の切断または分割加工に利用されるレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物を切断するためにレーザ光を利用するレーザ加工方法が知られている(たとえば、特開2002−192370号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)、特開2002−205180号公報(以下、特許文献2と呼ぶ)、および特開2008−6492号公報(以下、特許文献3と呼ぶ)参照)。
【0003】
特許文献1では、ウェハ状の加工対象物の内部にレーザ光の集光点(焦点)が配置されるように、パルス幅が1μs以下のレーザ光を照射することで、加工対象物の内部に切断加工の起点となる改質領域を形成することが開示されている。また、特許文献2では、ウェハ状の加工対象物の内部にレーザ光の集光点(焦点)が配置されるように、パルス幅が1μs以下のレーザ光を照射するとともに、当該レーザ光の入射方向における集光点の位置を変更することで、加工対象物の内部に切断加工の起点となる改質領域を深さ方向において複数形成することが開示されている。また、特許文献3では、サファイア基板のレーザ光を用いた切断において、レーザ光の照射によるダメージを最小限にするため、フェムト秒領域の極めて短いパルス幅のレーザ光を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2002−205180号公報
【特許文献3】特開2008−6492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来のレーザ加工方法においては、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に開示されたレーザ加工方法では、照射されるレーザ光は単一波長であり、加工対象物の内部の1点に集光されるため、加工対象物の厚み方向における改質領域の長さはあまり長くできない。そのため、切断加工を行うときに改質領域から進展する亀裂の方向などが一定にならない場合があり、結果的に切断端面の形状がばらつく場合があった。また、特許文献2に開示されたレーザ加工方法では、加工対象物の深さ方向において複数の改質領域を形成できるが、そのためにレーザ光照射を複数回実施する必要があり、加工プロセスの工程数が増えることで製造コストが上昇するという問題があった。また、特許文献3に開示されたレーザ加工方法では、フェムト秒領域の極めて短いパルス幅のレーザ光を用いるとしているが、このような極短パルス幅のレーザ光を工業的に利用することは装置コストやプロセスの安定性などの面から現実的ではない。
【0006】
このように、従来はレーザ加工により加工対象物を切断する場合、短時間、ひいては低コストでかつ切断端面の形状を良好なものとすることは難しかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、切断端面の形状が良好でコストの増大を抑制可能なレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、レーザ光の連続スペクトルを形成する所定バンド(所定の波長成分)の複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材の表面に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。なお、ここで改質領域とは、加工対象材において周囲の組織と異なる組織を有する領域、あるいは強度が周囲の組織より低下している領域などを意味し、具体的には単結晶の中で非晶質や多結晶に変化した領域を意味する。また、集光線の軸線とは、集光線に沿った軸を意味し、集光線と重なる部分および集光線に沿って集光線の外側に延長した部分の両方を含む。
【0009】
このようにすれば、連続スペクトルの波長成分が集光されることで集光線(集光点の集合)が形成されるので、加工対象材において当該集光線が位置する領域または集光線の軸線上に、レーザ光の照射方向(たとえば深さ方向)に長く伸びる改質領域を形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0010】
この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成される。レーザ光を加工対象材に照射することにより、当該直線上に集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。なお、上記各パルスショットとは、時間軸上の1パルスごとの照射パルス光を意味する。
【0011】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成される。レーザ光を加工対象材に照射し、線状の集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。
【0012】
このようにすれば、所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光することで、パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が集光方向の直線上または集光方向に沿った線状に集光領域として形成されるので、線状に延びる当該集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成することができる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の集光方向に伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切断端面の形状が良好でかつコストの増大を抑制可能なレーザ加工方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明によるレーザ加工方法において用いるMOPA光源を示す模式図である。
【図3】図2に示したMOPA光源から出力されるパルスレーザ光のスペクトルを示すグラフである。
【図4】図2に示したMOPA光源から出力されるパルスレーザ光に含まれる波長成分の強度の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図5】周期的に複数のパルスを発振する(マルチパルス化)場合と、単一のパルスを発振する場合とを模式的に示すグラフである。
【図6】レーザ光を加工対象材へ照射する光学系を示す斜視模式図である。
【図7】本発明によるレーザ光に含まれる各波長成分の焦点位置を説明するための模式図である。
【図8】図7に示した各波長成分についての波長と焦点位置のズレとの関係を示すグラフである。
【図9】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図10】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図11】集光されたレーザ光と加工対象材との位置関係の一例を示す模式図である。
【図12】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図13】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図14】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図15】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図16】サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【図17】サンプルに対してレーザ光を入射するときの入射面の状態による影響を説明するための模式図である。
【図18】本発明によるレーザ加工方法のレーザ光走査方向とサンプルの破断強度との関係を説明するための模式図である。
【図19】離散的なスペクトル光源の実施例の構成を説明するための模式図である。
【図20】図19に示した離散的なスペクトル光源により得られる光のスペクトルの概略を示す模式図である。
【図21】光出力が平均化された光のスペクトルを示す模式図である。
【図22】実験1の結果を示す顕微鏡写真を含む表である。
【図23】条件1の試料における切断端面を示す顕微鏡写真である。
【図24】条件5の試料の断面を示すSEM写真である。
【図25】実験2の結果を示す顕微鏡写真を含む表である。
【図26】条件4の試料の断面を示すSEM写真である。
【図27】図26の領域XXVIIを示す拡大SEM写真である。
【図28】図26の領域XXVIIIを示す拡大SEM写真である。
【図29】本実験例において用いたサンプルの概略断面模式図である。
【図30】サンプルにレーザ光を照射した状態を示す模式図である。
【図31】レーザ照射後のサンプル(サファイア基板)の断面写真である。
【図32】図31に示したA〜Eの場合のサンプルと焦点位置との関係を示す模式図である。
【図33】形成された改質領域を説明するための模式図である。
【図34】図33に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図35】図34に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図36】図34に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図37】図36に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図38】図36に示したサンプルの断面の部分拡大写真である。
【図39】レーザ光の走査回数の影響を説明するための模式図である。
【図40】本発明によるレーザ加工方法を用いて破断したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図41】図40に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【図42】図40に示したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0016】
図1を参照して、本発明によるレーザ加工方法を説明する。
本発明によるレーザ加工方法では、まず加工対象材準備工程(S10)を実施する。具体的には、レーザ加工を実施する対象である加工対象材としての半導体基板やその他の部材(たとえばサファイア基板)を所定の位置に配置する。たとえば、加工対象材をXY平面方向に移動可能なXYステージ上に固定する。
【0017】
次に、レーザ照射工程(S20)を実施する。この工程(S20)においては、図2に示した本発明によるレーザ光源であるMOPA光源1から得られたレーザ光を所定の焦点距離を有するレンズを用いて集光するとともに、加工対象材に照射する。図2に示したMOPA光源1は、当該種光源10から取得されたレーザ光を光ファイバ増幅部で増幅するMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)構造を採用している。なお、図2に示したMOPA光源1のより詳細な構成については後述する。
【0018】
図2に示したMOPA光源1から得られるレーザ光は、誘導ラマン散乱に起因して所定の範囲の波長成分を含む(連続スペクトルを有する)レーザ光となっている。このような連続スペクトルを有するレーザ光をレンズにより集光すると、レーザ光の波長によって焦点距離が異なることに起因して、レーザ光の焦点位置(集光点)は波長成分毎に異なる。つまり、集光点の集合体である集光線がレンズから離れる方向に(レーザ光の入射方向に沿って)線状に延びるように形成される。このような集光線が加工対象材の内部または加工対象材の表面と交差するようにあるいは加工対象材の外部に形成されるように、レーザ光を当該加工対象材に照射することにより、加工対象物において改質領域を形成することができる。
【0019】
そして、レーザ光に対して加工対象材を相対的に移動させることにより、加工対象材中において、たとえば集光線が移動した領域にある程度の深さと幅とを持った改質領域を帯状に形成することができる。また、上述した改質領域が形成された加工対象材では、レーザ光を照射した表面には、レーザ光の照射に起因する溶融層などの損傷部はほとんど形成されず、比較的良好な表面状態を維持できる。なお、この帯状の改質領域を形成する工程のより具体的な内容については後述する。
【0020】
次に、図1に示す後処理工程(S30)を実施する。具体的には、加工対象材に対して応力を加えることにより、帯状の改質領域が形成された部分を起点として加工対象材を分割することができる。なお、応力を加える方法は従来周知の任意の方法を用いることができる。
【0021】
上述した改質領域が形成された加工対象材では、分割された端面について大きな凹凸などもとくに形成されず、良好な表面性状を維持できる。
【0022】
次に、図1に示したレーザ照射工程(S20)の内容をより具体的に説明する。上記工程(S20)において用いるレーザ光は、図2に示したMOPA光源1から供給される。図2に示した本発明によるMOPA光源1は、種光源10、光アイソレータ21〜24、光カプラ30、WDMフィルタ31、32、光コンバイナ33、34、増幅用光ファイバ41〜44、受動光ファイバ45、バンドパスフィルタ50、51、エンドキャップ60、および、励起光源90、93、94a〜94fを備える。なお、種光源10や励起光源90、93、94a〜94fは図示しない制御部により制御されている。
【0023】
種光源10の出力側には、光ファイバを介して光アイソレータ21が接続されている。光アイソレータ21の出力側には光ファイバを介してWDMフィルタ31が接続されている。当該WDMフィルタ31の入力側には、励起光源90が光カプラ30および光ファイバを介して接続されている。WDMフィルタ31の出力側には増幅用光ファイバ41が接続されている。増幅用光ファイバ41の出力側には光アイソレータ22が接続されている。光アイソレータ22の出力側にはバンドパスフィルタ50が接続されている。
【0024】
バンドパスフィルタ50の出力側にはWDMフィルタ32が接続されている。WDMフィルタ32の入力側には、光ファイバと光カプラ30を介して励起光源90が接続されている。WDMフィルタ32の出力側には増幅用光ファイバ42が接続されている。増幅用光ファイバ42の出力側にはバンドパスフィルタ51が接続されている。バンドパスフィルタ51の出力側には光アイソレータ23が接続されている。光アイソレータ23の出力側には光コンバイナ33が接続されている。光コンバイナ33の入力側には光ファイバを介して励起光源93が接続されている。光コンバイナ33の出力側には増幅用光ファイバ43が接続されている。
【0025】
増幅用光ファイバ43の出力側には光アイソレータ24が接続されている。光アイソレータ24の出力側には光コンバイナ34が接続されている。光コンバイナ34の入力側には、光ファイバを介して励起光源94a〜94fが接続されている。光コンバイナ34の出力側には増幅用光ファイバ44が接続されている。増幅用光ファイバ44の出力側には受動光ファイバ45が接続されている。受動光ファイバ45の出力側にはエンドキャップ60が接続されている。
【0026】
なお、光アイソレータ21から増幅用光ファイバ43までがプリアンプ部3を構成し、光アイソレータ24から増幅用光ファイバ44までがブースタアンプ部4を構成する。
【0027】
種光源10は、基本波のパルス光を発生させる。種光源10は例えば半導体レーザにより構成される。たとえば、本発明において用いるMOPA光源1では、たとえば100kHz以上1MHz以下という高い繰返し周波数と、当該繰返し周波数に依存せずに一定のパルス幅を実現するため、0mA以上200mA以下の範囲で直接パルス変調した1060nm帯のファブリペロー半導体レーザを種光源10として用いることができる。なお、種光源10は、パルス光およびCW光のうち一方を選択的に出力するようにしてもよい。たとえば、図示しない制御部からの制御信号に応じて、種光源10はパルス光およびCW(Continuous Wave)光のうち一方を選択的に出力することができるように構成されていてもよい。
【0028】
光アイソレータ21〜24それぞれは、順方向に光を通過させるが、逆方向に向う光を遮断する。増幅用光ファイバ41〜44それぞれは、希土類元素が添加された光ファイバであって、励起光源90、93、94a〜94fの何れかから出力された励起光が光カプラ30、WDMフィルタ31、32および光コンバイナ33、34の何れかを経て供給され、この励起光により希土類元素が励起されて、基本波の波長の光を光増幅することができる。励起光源90、93、94a〜94fそれぞれは例えば半導体レーザにより構成されてもよい。
【0029】
バンドパスフィルタ50は、増幅用光ファイバ41から出力される光のうち基本波の波長の光を選択的に透過させて出力する。また、バンドパスフィルタ51は、増幅用光ファイバ42から出力される光のうち基本波の波長の光を選択的に透過させて出力する。受動光ファイバ45は、増幅用光ファイバ44から出力される基本波の光を入力して伝搬させ、この基本波の伝搬の際に誘導ラマン散乱を生じさせる。エンドキャップ60は、受動光ファイバ45の先端に設けられていて、受動光ファイバ45から外部へ光を出射する。
【0030】
このMOPA光源1は以下のように動作する。励起光源90から出力された励起光は光カプラ30により2分岐され、2分岐された一方の励起光はWDMフィルタ31を経て増幅用光ファイバ41に供給される。一方、2分岐された他方の励起光はWDMフィルタ32を経て増幅用光ファイバ42に供給される。励起光源93から出力された励起光は光コンバイナ33を経て増幅用光ファイバ43に供給される。また、励起光源94a〜94fそれぞれから出力された励起光は光コンバイナ34を経て増幅用光ファイバ44に供給される。
【0031】
種光源10から出力された基本波の光は、光アイソレータ21およびWDMフィルタ31を経て増幅用光ファイバ41に入力され、この増幅用光ファイバ41において光増幅される。増幅用光ファイバ41において光増幅されて出力された基本波の光は、光アイソレータ22、バンドパスフィルタ50およびWDMフィルタ32を経て増幅用光ファイバ42に入力され、この増幅用光ファイバ42において光増幅される。
【0032】
増幅用光ファイバ42において光増幅されて後、出力された基本波の光は、バンドパスフィルタ51、光アイソレータ23および光コンバイナ33を経て増幅用光ファイバ43に入力され、この増幅用光ファイバ43において光増幅される。増幅用光ファイバ43において光増幅されて出力された基本波の光は、光アイソレータ24および光コンバイナ34を経て増幅用光ファイバ44に入力され、この増幅用光ファイバ44において光増幅される。
【0033】
4本の増幅用光ファイバ41〜44において光増幅された基本波の光は、受動光ファイバ45の一端に入力されて、受動光ファイバ45中を伝搬する。受動光ファイバ45においては、基本波の伝搬の際に誘導ラマン散乱が生じる。受動光ファイバ45の他端からは基本波の光および誘導ラマン散乱成分の光が出力される。
【0034】
ここで受動光ファイバ45は、増幅用光ファイバ44と等しいコア径ならびにコアのNAを有する事が望ましい。これらファイバとしての寸法や特性が異なると、増幅用光ファイバ44と受動光ファイバ45との接続部において融着ロスが発生し、光損傷に繋がる可能性があるためである。
【0035】
このMOPA光源1においては、たとえば種光源10が上述のように波長1060nm帯の光を基本波として出力する。また、増幅用光ファイバ41〜44それぞれは、Yb元素が添加された光ファイバ(YbDF)であることが好ましい。これらの増幅用光ファイバ41〜44は、たとえばそのコア径を10μmとすることができ、このようにすることで融着接続や収納が容易に行なえる。
【0036】
なお、YbDFは励起波長と被増幅光の波長が近く、YbDF内部での熱の発生が小さく抑えられるという利点を有し、産業用レーザ光源には好適である。
【0037】
第1段の増幅用光ファイバ41は、単一クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が125μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が70dB/mであり、975nm帯励起光における非飽和吸収ピークが240dB/mであり、長さが7mである。
【0038】
第2段の増幅用光ファイバ42は、単一クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が125μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が70dB/mであり、975nm帯励起光における非飽和吸収ピークが240dB/mであり、長さが7mである。
【0039】
第3段の増幅用光ファイバ43は、二重クラッドのリン酸塩ガラス系YbDFであり、P濃度が26.4wt%であり、Al濃度が0.8wt%であり、コア径が10μmであり、第一クラッド径が125μm程度である。ただし、第一クラッドの断面形状は8角形である。さらに、915nm帯励起光における非飽和吸収が1.8dB/mであり、長さが3mである。
【0040】
第4段の増幅用光ファイバ44は、二重クラッドのAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が1.5wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が128μmである。また、915nm帯励起光における非飽和吸収が80dB/mであり、長さが3.5mである。
【0041】
励起光源90、93、94a〜94fそれぞれから出力される励起光の波長は0.975μm帯である。また、励起光源90から増幅用光ファイバ41、42に注入される励起パワーは200mW(単一モード)である。また、励起光源93から増幅用光ファイバ43に注入される励起パワーは2W(マルチモード)である。また、励起光源94a〜94fから増幅用光ファイバ44に注入される合計の励起パワーは25Wである。励起光源90の出力ファイバは、コア径が6μmであり、NAが0.14である。励起光源93、94a〜94fそれぞれの出力ファイバは、コア径が105μmであり、NAが0.22である。
【0042】
ここで、YAGやYVO4などの固体レーザにおいては、数十dBに及ぶ高い利得が得られない。そのため、高い利得を得るためには図2に示したような多段増幅構成を有する光ファイバ増幅が好適である。なお、図2に示したようなファイバレーザは、光ファイバ中の非線形効果(たとえば誘導ラマン散乱:SRSなど)によって、パルスピークパワーに限界があることが指摘されている。
【0043】
図2に示したMOPA光源1により実現された、繰返し周波数が1MHz、パルス幅が130ps、ファイバ出射端でのパルスピークパワーが50kW以上というパルスレーザ光(光パルス出力)のスペクトルを図3に示す。図3においては、横軸がパルスレーザ光の波長であり、縦軸が光パワー(光出力)を示している。なお、横軸の波長の単位はnmであり、縦軸の光パワーの単位はmW/0.5nmである。なお、図3ではSRS成分の割合が異なる3種類のパルスレーザ光のスペクトルを示している。
【0044】
図3からわかるように、図2に示したMOPA光源1から得られるパルスレーザ光では、誘導ラマン散乱(SRS)が顕著となっており、基本波長である波長1050nmから、当該基本波長の光の3次SRS成分の波長であると考えられる、波長が1219nmという波長領域近辺までの広い範囲にレーザ光の波長が分布し、連続スペクトルを示している。なお、図3の波長領域72で示す領域は、光出力の最大値を示す波長を含む領域である最大ピークスペクトル領域であり、波長領域71で示す領域は、ASE(自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission))成分のスペクトルを示している。
【0045】
なお、上述したSRS成分は、図4に示すように波長が1050nmである基本波の成分と殆ど同期して発生するため、パルス幅を広げてしまうという効果は小さい。ここで、図4の横軸は時間を示し、縦軸は光パワーを示している。図4においては、上述したパルスレーザ光において基本波成分とSRS成分との光パワーの出力の時間経過を模式的に示している。
【0046】
上述したパルスレーザ光(光パルス出力)のSRS成分の光パワーは、図2に示したMOPA光源1から得られるパルスレーザ光の平均出力パワー、パルス幅、繰返し周波数などの条件を適宜調整することで制御可能である。また、このようなSRS成分の光パワーは、図5の下段のグラフに示すように種光源10から入射するパルスレーザ光の波形をマルチパルス化するといった、特殊な波形を採用することによっても制御可能である。ここで、図5は、種光源での発生パルスのパターンを説明するための模式図であって、横軸が時間を示し、縦軸がパルスの光パワーを示している。図5においては、上下に2段のグラフが示されており、上段のグラフにおいては、1つのパルスが周期的に発生している状態を示している。一方、下段のグラフにおいては、周期的に2つのパルスが連続して発生している、いわゆるマルチパルス化したパルスレーザの波形を模式的に示している。
【0047】
また、SRS成分のパワーは、図2に示した4段目(最終段)の増幅用光ファイバ44からエンドキャップ60に至るデリバリファイバ(受動光ファイバ45)の長さを変えることによってもある程度調整できる。
【0048】
なお、図3に示したA〜Cのグラフのそれぞれについて、基本波のパワーとSRS成分の総合計のパワーとの比率は以下のとおりである。すなわち、グラフAで示される条件においては、基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比は2:1である。また、グラフBで示される条件における基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比率は1:1である。また、グラフCで示される条件における基本波のパワーとSRS成分の合計のパワーとの比率は10:1である。
【0049】
なお、上述したグラフAで示された条件は、加工対象材に届くレーザ光の平均パワーを8Wとし、繰返し周波数を1MHz、パルス幅を200psとしたものである。また、図3のグラフBによって示された条件は、上記グラフAの条件からパルス幅のみを130psと狭くした条件に対応する。また、図3のグラフCによって示される条件は、グラフAで示される条件から繰返し周波数を100kHzに下げ、かつパルス幅をグラフBに示された条件と同様に130psとした条件になっている。
【0050】
図1に示したレーザ照射工程(S20)においては、図2のエンドキャップ60から出射されたレーザ光が、所定の光学系を介して図6に示すような加工対象材6に対向配置されたレンズ9を介して集光され、加工対象材6に照射される。ここで、図6に示した実験系においては、たとえば図2に示したMOPA光源1から得られるほぼ回折限界のビーム品質の出力光をコリメートし、ビーム径Dを5mmに拡大した後、図6に示したレンズ9で集光している。レンズ9としては、たとえば焦点距離が20mmのレンズを用いることができる。加工対象材6としては、たとえば厚さが400μmのサファイヤ基板を用いることができる。加工対象材6のレーザ光15が入射する面はたとえば光沢面12(鏡面加工面)としてもよい。なお、レンズ9と加工対象材6の光沢面12との間の距離Lは、適宜調整される。そして、加工対象材6を図6の矢印7に示す方向に移動させる(すなわち図6のX軸方向に移動させる)ことにより、加工対象材6においてレーザ光15が照射された領域8を線状に形成することができる。このときの加工対象材6の移動速度はたとえば10mm/s以上40mm/s以下とすることができる。なお、加工対象材6の裏面は梨地面13(非鏡面加工面、あるいは非光沢面加工面)となっていてもよい。
【0051】
ここで、図7に示すように、波長が1050nmのレーザ光に関して、レンズ9による集光点の位置(焦点位置)はレンズ9からの距離が20mmである位置と予想される。一方、図7に示すように、レーザ光に含まれるSRS成分は、その波長が上述した1050nmよりも大きいため、レンズからの距離が20mmよりも遠い位置に集光点が形成される(焦点を結ぶ)と考えられる。なお、一般に集光する光の波長が長いほど焦点距離は長くなる傾向がある。そのため、SRS成分を含むパルスレーザ光は、レンズ9で集光されても従来のような単一の集光点を形成するのではなく、レンズ9から見た光軸方向に集光点が連続的に分布したいわば集光線を形成する。すなわち、図7に示すように、少なくとも長さLfで示される長さの集光線が形成されることになる。
【0052】
すなわち、図6に示した実験系におけるレンズ9として、焦点距離が20mmのレンズを用い、ビーム径Dが5mmのパルスレーザ光をサファイヤ基板である加工対象材6中に集光した場合については、レーザ光の波長と集光点(焦点)位置との関係は図8に示されるような関係である。なお、図8において横軸はレーザ光の波長を示し、縦軸は、波長が1050nmのレーザ光の焦点位置から、各波長のレーザ光の焦点位置までの距離を焦点位置のずれとして示している。横軸の単位はnmであり、縦軸の単位はmmである。上述のように、波長が長くなるほど、焦点位置がレンズから遠ざかることがわかる。
【0053】
そして、上述のような系における集光線の長さLfは、図7に示すように基本波の波長である1050nmから3次SRS成分のピーク波長である1219nmまでの波長範囲のレーザ光に関して考えれば、約84μmと見積もることができる。さらに、4次のSRS成分のピーク波長は1288nmであり、当該4次SRS成分まで考慮すれば、集光線の長さは約118μmと見積もることができる。
【0054】
なお、SRS成分のパワー配分は、光ファイバ中の偏波の状態や光ファイバの曲げロスなどに起因して穏やかながら常時変動している。そのため、図3に示したスペクトルの分布形状も、ある程度の時間変動を示す可能性は考えられる。
【0055】
このような所定の長さの集光線を形成するレーザ光を加工対象材に照射する場合、集光線の位置と加工対象材との位置との相対的な関係を適宜調整することにより、加工対象材の裏面(レーザ光を照射する側とは反対側の表面)の近傍に破断部やクラックとして認められる改質領域を形成することができる。このような改質領域を起点として、上述のように後処理工程(S30)において加工対象材6を容易に分割することができる。
【0056】
なお、集光されたレーザ光の集光線の位置と加工対象材6との位置関係は、図6に示すように当該レーザ光の基本波(波長が1050nmの波長成分)の集光点の位置が加工対象材6の表面(光沢面12)と一致するようになっていてもよい(つまりレーザ光の集光線が加工対象材6の表面側から内部にまで延在するように配置されてもよい)が、図9〜図11に示すような異なる位置関係となっていてもよい。
【0057】
たとえば、図9に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の厚み方向での内部に配置されていてもよい。異なる観点から言えば、当該レーザ光15の基本波の集光点が、加工対象材6の表面(光沢面12)と裏面(梨地面13)との間に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線は、加工対象材6の裏面(梨地面13)と交差していてもよいし、当該集光線の全体が光沢面12と梨地面13との間に配置されていてもよい。
【0058】
また、異なる形態としては、図10に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の裏面(梨地面13)と重なる位置に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線は、加工対象材6の裏面(梨地面13)から外側に伸びるように配置されることになる。また、さらに異なる形態としては、図11に示すように、レーザ光15の基本波の集光点が加工対象材6の裏面(梨地面13)より外側に配置されていてもよい。なお、この場合レーザ光の集光線も、加工対象材6の裏面(梨地面13)よりも外側に配置されることになる。
【0059】
次に、サファイア内部に改質領域が形成されるメカニズムについて検討する。
図12〜図16は、サファイア内部での改質領域の形成メカニズムを説明するための模式図である。
【0060】
ここで、GaNのエピタキシャル層とサファイア基板とには、それぞれ異なる損傷閾値(あるパワー密度以上を照射すると損傷する閾値)が存在する。一般的に、エピタキシャル層の損傷閾値は、サファイア基板のそれよりも低い。図12は、エピタキシャル層とサファイア基板の損傷閾値を考慮に入れた集光点付近の概略図である。本発明において用いる光源は、広帯域のスペクトルを有しているために、それぞれの波長に対応する集光点が存在する。波長λ1、λ2、λ3それぞれの集光点を、ω0λ1、ω0λ2、およびω0λ3とする。エピタキシャル層の損傷閾値をEPIth、サファイア基板の損傷閾値をSa.thとした場合、EPIth<Sa.thの関係がある。図12に示したように、EPIthおよびSa.thは、集光点付近を中心にビーム伝搬上の上下対称位置に2つずつ存在する。2つのEPIthの間の領域をエピタキシャル層損傷領域α、また、2つのSa.th間の領域をサファイア損傷領域βとする。領域αは、エピタキシャル層を損傷させるパワー密度領域を指す。また、領域βはサファイア基板が損傷する領域を指す。なお、集光に用いるレンズの形状は、図12に示すように加工対象材側が平坦で、光源側が凸形状となったレンズを用いてもよいが、図7に示したような両側が凸形状となったレンズを用いてもよい。また、図12に示したレンズのように一方表面が平坦で他方表面が凸形状となったレンズを用いる場合、後述するように光源側を平坦な面とし、加工対象材側を凸形状の面となるようにレンズを配置してもよい。
【0061】
図13のA〜Eは、後述する図31および図32のA〜Eに対応している。
A:(サンプル上面より0.1mm上方の空気中の位置に集光点が存在する場合):サンプルのエピタキシャル層は、領域α間に位置するため損傷する。領域βは空気中にある。
B:(エピタキシャル層上に集光点がある場合):エピタキシャル層は、Aの場合と同様に領域α間にあるため損傷する。領域βは、一部分サファイア基板に達しているが、損傷したエピタキシャル層によりレーザ光は散乱し、領域βでの光パワー密度は大幅に低下する。よって、サファイア基板内部に改質領域は形成されない。
C:(エピタキシャル層より0.1mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する場合):エピタキシャル層は、A、Bと同様に領域α間にあるため、損傷する。領域β間は、サファイア基板内部に存在するが、損傷したエピタキシャル層によりレーザ光が散乱するため、Bと同様にサファイア基板内部に改質領域は形成されない。
D:(エピタキシャル層より0.2mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する場合):エピタキシャル層は、領域α外であるため、損傷しない。領域βは、サファイア基板内部に存在する。エピタキシャル層は損傷しないため、レーザ光は散乱することなくサファイア基板内部へ入射され、領域β内に改質領域が形成される。
E:(サファイア基板内を通り抜けた空気中に焦点位置がある場合):エピタキシャル層は、領域α外であるため、Dと同様に損傷しない。領域βの一部はサファイア基板内部に存在する。エピタキシャル層は損傷しないため、Dと同様に入射光は領域β内に高いパワー密度を生成し、その領域β内に改質領域が形成される。
【0062】
図14は、異なる集光レンズを用いた場合のEPIthとSa.thの関係を示す模式図である。
【0063】
図14(a)は、後述する図30〜図32に用いたf=20mmのレンズを用いた場合の概略図である。ここで、γ=(α−β)/2とする。なお、以下では領域αの深さ方向での長さを単にαと、また領域βの深さ方向での長さを単にβと記載することがある。
【0064】
図14(b)は、f<20mmのレンズを用いた場合の概略図である。EPIthとSa.thの値は物性値であるため、図14(a)と同じ値であるが、領域αと領域βのそれぞれの領域間は、ガウシアンビームの伝搬を基準とした相対変化が生じ、図14(a)の領域αと領域βとは異なる領域α1と領域β1が存在する。よって、γ1の値は、(α1−β1)/2となる。一方、図14(c)は、f>20mmのレンズを用いた場合の概略図であり、図14(b)と同様に相対的に変化した領域α2と領域β2が存在し、γ2の値は、(α2−β2)/2となる。
【0065】
図15は、異なる集光レンズを用いた場合のエピタキシャル層から内部改質領域までの距離γと内部改質領域長さ(領域βの長さ)との関係を説明するための模式図である。
【0066】
図15(a)は、図14(b)の集光レンズ(f<20mm)を用いた場合の領域β1とγ1の関係を示す。図15(b)は、図14(c)の集光レンズ(f>20mm)を用いた場合の領域β2とγ2の関係を示す。焦点距離が短い場合は、γ1値を小さくできるため、改質領域の形成深さはエピタキシャル層に近づけることが可能であるが、改質領域長さ(領域β1の長さ)は小さくなる。一方、焦点距離が長い場合は、γ2値が大きくなるためエピタキシャル層から離れた領域に改質領域が形成されるが、領域β2の長さである改質領域長さは長くなる。例えば、基板厚さがLine Aの場合(つまり、サファイア基板の裏面の位置がLine Aで示される位置である場合)、f>20mmの集光レンズでは結晶の外側に領域βがあるために改質領域は形成されない。よって、改質領域の形成には、f<20mmの集光レンズを用いる必要がある。一方、基板厚さがLine Bの場合(つまり、サファイア基板の裏面の位置がLine Bで示される位置である場合)は、f<20mm、f>20mmいずれのレンズにおいても内部改質領域を形成させられるが、一度に長い改質領域を形成させられる方が有利な場合があり、その場合は、f>20mmのレンズを用いる必要がある。
【0067】
以上より、所望の基板厚さに所望の内部改質領域を形成させる指針は、EPIth、Sa.thの値を求め、γとβの関係を明らかにし、図15に示したように適切なf値を有する集光レンズを用いる必要がある。
【0068】
図16は、内部改質領域を形成するための条件を説明するための模式図である。図16に示すように、損傷閾値Bthを有している異なる材料(厚さt)に所望のγCとβBで内部改質領域を形成させるには、デザインした損傷閾値Athを有している層を上記材料上に堆積させ、適切な光レンズ(f=Γmm)を用いることが必要である。
【0069】
図17は、サンプルに対してレーザ光を入射するときの入射面の状態による影響を説明するための模式図である。図17(a)は、サンプルの梨地面からレーザ光を照射した場合を示している。一方、図17(b)は、サンプルにおいてエピタキシャル層が形成された面からレーザ光を照射した場合を示している。図17に示すように、梨地面からレーザ光を入射させた場合、サンプルの表面でレーザ光が散乱するために改質層は形成されない。
【0070】
図18は、本発明によるレーザ加工方法のレーザ走査方向とサンプルの破断強度との関係を説明するための模式図である。図18(a)は、レーザ走査方向と破断強度との関係を示すグラフであり、図18(b)は図18(a)におけるレーザ走査方向とサファイア基板の結晶方位との関係を説明するための模式図である。
【0071】
図18(a)を参照して、垂直方向および平行方向の破断強度は、それぞれ40MPa、および60MPa程度であり、サファイア基板の引張強度2,250MPaに比べそれぞれ1.7%、および2.6%にまで低減している。また、水平方向と垂直方向の破断強度の差異は極めて小さい。このように、サファイア基板の結晶方位に関係なく、レーザ光の走査ラインに沿って分割することが可能である。つまり、内部改質領域を起点として小さい応力で基板を分割することが可能である。
【0072】
次に、図19を参照して、本発明において用いる離散的なスペクトル光源の実施例を説明する。図19に示した光源は、図2の種光源10の一例であって、光出射部101として高いピークパワーを有するTi:Sapphireレーザ、あるいは、Nd:YAGレーザ光源を用いる。光出射部101から出射される光の波長を波長ω0(たとえば1064nm)とする。当該出射された光は、SHG結晶102において2倍波の波長ω1(たとえば532nm)である光に波長変換される。
【0073】
次に、波長ω0の光については高反射特性、波長ω1の光については高透過特性を有するダイクロイックミラー103により波長ω0の成分と波長ω1の成分とを分離する。ダイクロイックミラー103において分離された波長ω0の成分は図19の矢印110に示す方向に反射される。一方、波長ω1の成分は矢印111に示すようにダイクロイックミラー103を透過する。
【0074】
次に、波長ω1の成分(光)は、幾つかのハーフミラーを用いて複数の光路に等分分岐される。当該等分分岐した各々の光は、OPO104(Optical Parametric Oscillator104)によりエネルギー保存則を満たした異なる波長の光に波長変換される。例えば、OPO104の領域105aでは、波長ω1の光は波長ω2の光と波長ω3の光とに変換される。また、OPO104の領域105bでは、波長ω1の光は波長ω4の光と波長ω5の光に、さらに、OPO104の領域105cでは、波長ω1の光は波長ω6の光と波長ω7の光とに、それぞれ波長変換される。OPO104では、上述した波長ω2〜ω7はそれぞれ異なるように設計されている。また、OPO104の各領域105a〜105cはダイクロイックミラー103の出側に設置されたハーフミラー(図示せず)から同一距離になるように配置されている。なお、OPO104の各領域105a〜105cは、それぞれミラー106a〜106cおよびミラー107a〜107cを含む。
【0075】
波長変換後の波長ω2〜ω7の光について、スペクトルの概略を図20に示す。図20を参照して、横軸は光の波長を示し、縦軸は光出力(a.u.)を示す。図20からわかるように、波長変換した各々の光の波長は、波長ω0を中心として分布している。また、図19および図20に示されるように、各領域105a〜105cからそれぞれ2つの異なる波長の光が生成されている。
【0076】
なお、ダイクロイックミラー103の出側においてハーフミラーを増設し、波長ω1の光を等分分岐した光路数を増大させることにより、波長ω1の光を等分分岐して得られる光の離散的な波長の数を増やす事が可能である。また、図20における各々の波長の光の光出力は、それぞれ同程度になるように調整するのが好ましいが、必ずしもこれらの光出力が一致する必要は無い。
【0077】
そして、OPO104から出力された光は光学系を用いてダイクロイックミラー108に入射される。このダイクロイックミラー108は、波長ω1の光については高反射特性、波長ω1以外の光については高透過特性を有する。そのため、ダイクロイックミラー108において波長ω1の光は矢印112に示すように反射され、一方、波長変換後の波長ω2〜ω7の光は矢印113に示すようにダイクロイックミラー108を透過する。このようにして、図19に示した光源から波長ω2〜ω7の光が出力される。
【0078】
次に、広帯域に亘って光出力がフラットな連続スペクトルが得られる光源の実施例について説明する。図19および図20に示した光源(離散スペクトル光源)を、図2に示したMOPA光源の種光源10として用い、プリアンプ部3、ブースタアンプ部4を備えるファイバレーザを用いることにより、利得がある波長範囲内に調整されたそれぞれの離散的な波長の光出力を数十kWピーク値にまで増幅させることができる。さらに、強制的に誘導ラマン散乱を誘起させ、各々の離散的な波長を有する光によって生じた各々の誘導ラマン散乱光を加算し、光出力の平均化を行うことができる。
【0079】
上記ファイバレーザの利得媒体としては、すでに述べたように増幅用光ファイバとしてYbドープファイバが用いられている。このため、利得の波長範囲は、反転分布の状態にも寄与するが、およそ波長1000nmから1180nmの範囲であり、当該利得プロファイルは1030nm近傍にピークを有する。種光源10として用いる図19に示した離散スペクトル光源の各々の波長(波長ω2〜ω7)は、上記利得範囲内に収まるようにOPO104を設計する。また、誘導ラマン散乱の閾値は、上記増幅用光ファイバのコア径に依存するが、数kWから30kW程度である。したがって、この閾値以上のピーク値を有するよう、種光源10からの光をファイバレーザで増幅する。
【0080】
このようにして光出力が平均化された光のスペクトルを、図21に示す。図21の横軸は波長を示し、縦軸は光出力(単位:dB)を示す。離散スペクトル光源の各々の波長(波長ω2〜ω7)は、上述のようにYbドープファイバの利得範囲に含まれることが好ましい。また、誘導ラマン散乱(SRS)により形成される成分(たとえばSRS1次成分〜SRS3次成分)が、広い波長範囲で重なることにより、全体として光出力が平均化される。
【0081】
なお、光出力の平均化(フラット化)の程度をより高めるためには、図19などに示す離散スペクトル光源から得られる複数の波長の光について、各波長の間の間隔を狭くし、さらにより多数の波長(ωn)の光を用いることが有効である。また、用いられる増幅用光ファイバの利得プロファイルを考慮に入れて、増幅された各波長の光の光出力が同程度となるように、離散スペクトル光源から得られる各波長の光の光出力を調整することが望ましい。
【0082】
このような光出力の調整方法としては、たとえば図19に示すOPO104の各領域105a〜105cに含まれるミラー106a〜106c、107a〜107cの各波長に対する反射率と透過率とを調整する方法や、アッテネータやフィルター等を併用する方法が挙げられる。
【0083】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))と、加工対象材6にレーザ光を照射することにより、加工対象材6に改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))とを備える。レーザ照射工程(S20)では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15をレンズ9で集光することにより、レーザ光15の連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、当該集光線の少なくとも一部が加工対象材6の表面(光沢面12または梨地面13)に位置するように、レーザ光15を加工対象材6に照射し、集光線の軸線上に改質領域を形成する。
【0084】
このようにすれば、連続スペクトルの波長成分が集光されることで集光線(集光点(焦点)の集合)が形成されるので、加工対象材6において当該集光線が位置する領域または集光線の軸線上に、レーザ光15の照射方向(たとえば深さ方向)に長く伸びる改質領域を形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め一定の方向に長く伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光15の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0085】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、集光線全体が加工対象材6の外部に位置するように、レーザ光15を加工対象材6に照射してもよい。この場合、加工対象材6の内部において集光線に隣接する部分に、レーザ光15の照射方向に伸びる改質領域を形成できる。
【0086】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、加工対象材6の第1面(光沢面12)からレーザ光15が入射されるとともに、加工対象材6の厚み方向において第1面と反対側に位置する第2面(梨地面13)側に改質領域が形成されてもよい。
【0087】
このように、レーザ光15を照射する面とは反対側の面(第2面)である梨地面13に近い位置に改質領域を形成できるので、加工対象材6の第1面(レーザ光の照射面である光沢面12)にたとえば半導体層を形成している場合、当該光沢面12側の半導体層が改質領域の形成により損傷を受けるといった問題の発生を抑制できる。
【0088】
上記レーザ加工方法において、加工対象材準備工程(S10)では、加工対象材6において、第1面(光沢面12)が鏡面加工されてもよく、かつ上記第2面(梨地面13)が梨地加工されてもよい。
【0089】
上記レーザ加工方法において、レーザ光の種光であるパルス光に対するラマン散乱効果を利用して連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15を発生させていてもよい。この場合、ラマン散乱効果を利用して、光源(種光源10)から出射される単波長のレーザ光から、本発明において必要な連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光15を容易に得ることができる。また、このようにラマン散乱効果を利用するので、得られるレーザ光15のパルス幅が連続スペクトルを有するレーザ光を形成するために広がるといった問題の発生を防止できる。
【0090】
上記レーザ加工方法において、図3のグラフA、Bの場合のように、レーザ光15の連続スペクトルを構成する波長成分のうち最も強度の高い最大ピーク波長の強度に対して、連続スペクトルを構成する波長成分のうち最大ピーク波長以外の波長成分の強度の合計が10%以上であってもよい。この場合、最大ピーク波長以外の波長成分についてもある程度の強度を有するようにすることで、集光線において最大ピーク波長以外の波長成分の集光点に対応する部分によっても改質領域を確実に形成できる。
【0091】
上記レーザ加工方法において、レーザ光15の連続スペクトルを構成する波長成分は、最大ピーク波長以外の波長成分のうち強度が局所的な極大値を示す1つ以上の局所ピーク波長を含んでいてもよく、最大ピーク波長と、1つ以上の局所ピーク波長との差の最大値が100nm以上であってもよい。この場合、連続スペクトルにおける波長の分布幅を十分大きくすることで、得られる集光線の長さをある程度以上の長さとすることができる。この結果、レーザ光15の照射方向における改質領域の長さを十分長くすることが可能になる。
【0092】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))と、加工対象材6にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材6に改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))とを備える。改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段(レンズ9)で集光することにより、各パルスショット毎に、当該パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成され、レーザ光を加工対象材6に照射することにより、当該直線上に集光領域による改質領域を加工対象材6の内部に形成する。なお、上記各パルスショットとは、時間軸上の1パルスごとの照射パルス光を意味する。
【0093】
このようにすれば、当該パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成されるので、加工対象材6の内部において当該集光領域による改質領域を線状に伸びるように形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め線状に伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光して利用することにより、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0094】
また、この発明に従ったレーザ加工方法は、加工対象材を準備する工程と、加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、加工対象材に改質領域を形成する工程とを備える。改質領域を形成する工程では、50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成され、レーザ光を加工対象材に照射し、線状の集光領域による改質領域を加工対象材の内部に形成する。
【0095】
このようにすれば、当該パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成されるので、加工対象材6の内部において当該集光領域による改質領域を線状に伸びるように形成できる。そのため、当該改質領域を起点として加工対象材6を切断するときに、予め線状に伸びる改質領域が存在しているために切断端面の形状を安定して平坦化できる。また、レーザ光の照射方向に長く伸びる改質領域を、1回のレーザ照射により形成することができるので、レーザ照射を複数回繰り返すような場合に比べてプロセスのコストを低減できる。
【0096】
上記レーザ加工方法において、所定のスペクトルバンドは、50nm以上の連続したスペクトル領域以外の離散的なスペクトル領域を含んでいてもよい。
【0097】
上記レーザ加工方法において、図3や図21に示すように、所定のスペクトルバンドは、連続スペクトル、あるいは複数の離散的なスペクトルを有したスペクトル領域を含んでいてもよい。
【0098】
上記レーザ加工方法において、レーザ光は、CW(Continuous Wave)成分を含んでいてもよい。
【0099】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、スペクトルの異なるパルス光を個別に発生する複数のパルス光源からの複数のパルス光を同期して合波した単一のパルス光を含んでいてもよい。たとえば、図19に示したOPO104の複数の領域105a〜105cが上記複数のパルス光源に該当すると考えることができ、図19のダイクロイックミラー108から出力されるパルス光が図2に示したプリアンプ部3およびブースタアンプ部4により増幅されたパルス光が上記単一のパルス光に該当する。あるいは、図2に示したようなMOPA光源であって互いに特性の異なるものを複数準備し、これらの複数のMOPA光源から出力されるスペクトルの異なるパルス光を従来周知の合波装置などを用いて合波することで単一のパルス光を構成してもよい。このようにすれば、合波するパルス光のスペクトルを調整することで、得られる単一のパルス光のスペクトルを調整することができる。
【0100】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、図21に示すように、受動ファイバ(受動光ファイバ45)に入力される基本パルス光由来の成分と、基本パルス光に対する受動光ファイバ45での誘導ラマン散乱効果を利用して形成された50nm以上のスペクトル幅の連続スペクトル成分とを有していてもよい。
【0101】
上記レーザ加工方法において、パルス光は、連続スペクトル成分を構成するスペクトル成分のうちの基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分のパワーが、基本パルス光のパワーに対し、10%以上であってもよい。この場合、基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分についてもある程度のパワー(強度)を有するようにすることで、集光領域において基本パルス光以外のスペクトル成分の集光点に対応する部分によっても改質領域を確実に形成できる。
【0102】
なお、ここで基本パルス光のパワーとは、誘導ラマン散乱効果を受ける前のパワー(図2の増幅用光ファイバ44後であり、受動光ファイバ45の前におけるパルス光のパワー)を意味する。また、基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分とは、上記の基本パルス光の中心スペクトルに対して、基本パルス光のパワーが5%となる長波長側のスペクトルの波長から、長波長側の領域のスペクトル成分を指す。ここでは、ラマン成分との仕分けの指標として上記5%という数値を用いている。なお、レーザの増幅過程において発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE:たとえば図3の波長領域71における成分)は連続光であって、上記の議論におけるパルス光ではない。
【0103】
上記レーザ加工方法において、連続スペクトルは、基本パルス光のピークスペクトル領域以外の成分のうち、パワーが局所的な極大値を有する局所ピークスペクトルを一つ以上含んでいてもよく、基本パルス光のピークスペクトル(波長)と、1つ以上の局所ピークスペクトル(波長)との最小離間間隔が100nm以上であってもよい。この場合、連続スペクトルにおける波長の分布幅を十分大きくすることで、得られる集光線の長さをある程度以上の長さとすることができる。この結果、レーザ光15の照射方向における改質領域の長さを十分長くすることが可能になる。
【0104】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、レーザ光の集光領域の一部、あるいは全体が加工対象材の内部に位置するように、レーザ光を加工対象材に照射してもよい。この場合、加工対象材の内部において確実に改質領域を形成できる。
【0105】
上記レーザ加工方法において、改質領域を形成する工程(レーザ照射工程(S20))では、加工対象材の第1面からレーザ光が入射されるとともに、加工対象材の厚み方向において、第1面と反対側に位置する第2面に集光領域の一部を設定し、改質領域が第2面から加工対象材の内部に亘って形成されてもよい。この場合、レーザ光が入射する第1面と反対側の第2面に改質領域を形成するので、第1面側に別の材料層(たとえば半導体層などの機能層)を形成した場合、当該材料層が改質領域の形成により損傷を受けるといった問題の発生を抑制できる。
【0106】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、第2面の表面粗さRa(JIS規格)が0.1μm以上1.0μm以下となるように、第2面が非鏡面加工されていてもよい。
【0107】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、加工対象材において第1面が鏡面加工されていてもよい。この場合、レーザ光を照射する第1面において当該レーザ光が乱反射するといった問題の発生を抑制できる。
【0108】
上記レーザ加工方法において、加工対象材6を準備する工程(加工対象材準備工程(S10))では、加工対象材6において鏡面加工された第1面上にエピタキシャル層が形成されてもよい。この場合、エピタキシャル層に損傷を与えることなく、第2面側に形成された改質領域を起点として加工対象材6を当該エピタキシャル層とともに分割することができる。
【0109】
(実験1)
本発明によるレーザ加工方法の効果を説明するため、以下のような実験を行なった。なお、以下の実験では、光源として用いるパルス光のパルス幅を180psとした。
【0110】
(試料)
本発明によるレーザ加工方法の加工対象材の試料として、厚さが400μmのサファイヤ基板を準備した。なお、当該サファイヤ基板の平面形状は、四角形状であって、縦×横が10mm×10mmである。試料の表面(光沢面12)は鏡面加工を施し、裏面(梨地面13)については梨地加工を施した。
【0111】
(実験内容)
図2に示したMOPA光源から得られるパルスレーザ光を焦点距離が20mmのレンズを用いて集光し、加工対象材としてのサファイヤ基板に照射した。なお、レンズに入射したレーザ光のビーム径は5mmである。そして、サファイヤ基板に入射するレーザ光の集光線の位置が5つの条件になるように、サファイア基板とレンズとの間の距離を変更しながら、当該サファイア基板にレーザ加工を行なった。
【0112】
具体的には、条件1としては、図6に示すように、基本波(波長が1050nmのパルスレーザ光)の焦点位置がサファイヤ基板の光沢面12(図6参照)と一致するように設定した。但し、プラズマ発生が最も顕著になるように目視で設定を行ったので、±0.1mm程度の誤差は見込まれる可能性がある。そして、条件2としては、試料の光沢面12がレンズ9の方向に向かうように(つまり、当該基本波の焦点位置が加工対象材6であるサファイヤ基板の光沢面12より加工対象材6の内部に移動するように、あるいはz軸方向に)、試料を条件1の位置から0.1mmだけシフトさせる(z=0.1mm)。また、条件3は、試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.2mmだけシフトさせる(z=0.2mm)。
【0113】
また、条件4は、試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.3mmだけシフトさせる(z=0.3mm)。また、条件5としては試料の光沢面12の位置をレンズ9側に向けて条件1の位置から0.4mmだけシフトさせる(z=0.4mm)。また、用いたレーザ光の条件としては、繰返し周波数を1MHz、パルス幅を180ps、平均出力を8Wとした。また、サファイヤ基板のレーザ照射時における移動速度は10mm/sとした。
【0114】
そして、加工後の試料について、レーザ光を照射した領域の側面およびレーザ照射面(光沢面)について光学顕微鏡による観察を行なった。また、後述するように条件5については、改質領域が形成された部分の断面についてSEMにより観察を行なった。
【0115】
(結果)
図22〜図24を参照して、実験の結果を説明する。図22は、条件2〜条件5における試料のレーザ加工後の側面および光沢面(レーザ照射面)の状態を示す光学顕微鏡写真を示している。つまり、図22では、4つのカラムの左側から順番に条件2〜条件5の試料のレーザ照射部についての光学顕微鏡写真を示している。各カラムの上段の写真はレーザ照射された部分の側面の光学顕微鏡写真であり、下段はレーザ照射面である光沢面の光学顕微鏡写真である。なお、図22の光学顕微鏡写真は、図6に示したX軸の方向から試料の側面(端面)を観察したものである。図22からもわかるように、条件2〜条件3については、レーザ光照射面である光沢面におけるレーザ照射を受けた部分において、レーザ照射を受けた痕跡が確認できるものの、その側面を確認すると、深さ方向には殆ど改質領域は形成されていなかった。
【0116】
一方、条件5においては、レーザ照射面である光沢面には条件2〜条件4に比べてごく薄いレーザ照射の痕跡が認められる一方で、レーザ照射された側と反対の面である裏面(梨地面)から深さが約90μm程度の改質領域(変質層)が形成されていた。なお、条件1の試料については、レーザ光を照射された面である光沢面12側から深さが100μm以上の改質領域が形成されていた。そして、レーザ照射によって条件1では当該レーザ光が照射された部分において切断された。図23は、条件1のレーザ加工により切断されたサファイヤ基板の切断面を示す光学顕微鏡写真である。なお、図23ではレーザ光のスキャン方向が矢印16で示されている。
【0117】
このように、条件5においてレーザ照射された側と反対側の裏面に一定の深さの改質領域が形成されていた。この条件5の改質領域を確認するため、図24に示すように条件5の試料の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。なお、図24では、試料の梨地面(レーザ照射された面とは反対側の裏面)が上側になっている。
【0118】
図24からわかるように、図24の上面側(梨地面側)から深さ90μmという位置まで、その幅が約5μmという改質領域が形成されていた。なお、この改質領域のアスペクト比(深さ/幅)は18となり、極めて高いアスペクト比を示している。
【0119】
また、図24からもわかるように、図24に示した梨地面(図24の上面)から深さが約90μmの位置に、加工の起点と思われる部分が認められる。これは、図7に示した集光線のうち、レーザ光の波長成分のうち最もパワー配分の高い基本波の成分の集光点(焦点)が加工対象材であるサファイヤ基板の改質の起点を形成したものと考えられる。そして、3次〜4次のSRS成分による焦点によって構成される集光線が裏面側(梨地面側)に届いたことで、従来のようなフェムト秒パルスレーザを用いなくても、上述したようなアスペクト比が極めて大きい(幅が狭くかつ深さ方向の距離が長い)改質領域を形成することができたものと考えられる。
【0120】
また、図24からもわかるように、改質領域の深さ方向の両端に近い部分ほど加工を受けた程度が高くなっているように考えられる。これは、照射したレーザ光のうち基本波の成分による焦点と3次のSRS成分による焦点とが改質領域の深さ方向の両端に位置し、改質の起点の形成に寄与したものと考えられる。そして、3次のSRS成分による焦点の位置を裏面側である梨地面の位置とほぼ一致させたという条件が、他の条件2〜条件4とは異なっている。したがって、この点が条件5における改質領域の形成に寄与しているものと考えられる。
【0121】
なお、上述したレーザ照射の条件は図3に示したグラフBのデータに対応するレーザ照射条件とほぼ同様であった。このように、照射されるレーザ光については、基本波のパワーとSRS成分のパワーの総合計との比率が適切な値になっていることが望ましいと考えられる。
【0122】
(実験2)
レーザ光の照射条件を変えて、本発明によるレーザ加工方法の効果を確認するための実験を行なった。
【0123】
(試料)
上述した実験1において準備した試料と同様の試料(サファイヤ基板)を加工対象材として準備した。
【0124】
(実験内容)
準備したサファイヤ基板に対して、実験1の場合と同様にレーザ加工を行なった。但し、レーザ光の照射条件は基本的には上述した実験1と同様であるが、試料の移動速度が40mm/sとされている点が異なっている。そして、試料とレンズとの間の距離の条件については、上述した実験1における条件1〜条件4と同様の条件について、それぞれレーザ加工の実験を行なった。そして、加工後の試料について、レーザ光を照射した領域の側面およびレーザ照射面(光沢面)について光学顕微鏡による観察を行なった。また、後述するように条件4については改質領域が形成された部分の断面についてSEMにより観察を行なった。
【0125】
(結果)
図25〜図28を参照して、条件1〜条件3については、レーザ照射された側の面である光沢面において、レーザ照射の痕跡は認められるものの、厚み方向に深く伸びるような改質領域は殆ど形成されなかった。一方、条件4においては、実験1における条件5の場合と定性的に類似した形態で、裏面側(梨地面側)に改質領域が形成されていた。また、条件4については光沢面側におけるレーザ照射痕は他の条件よりも比較的軽微であった。
【0126】
そして、条件4の試料について、改質領域が形成された部分の断面をSEMで観察すると、図26〜図28に示すように、裏面側(梨地面側)から深さが約120μm(具体的にはほぼ125μm)の位置にまで延びる改質領域が形成されていた。当該改質領域の深さ方向の両端部には、図27および図28に示すように改質点(核)と思われる領域17、18がそれぞれ形成されていた。具体的には、図27に示すように梨地面から深さが約10μmの位置に改質点となる領域17(核)が認められ、また図26および図28に示すように、梨地面から深さが125μmの位置に改質点となる他の領域18(核)が認められた。
【0127】
これは、試料(サファイア基板)とレンズとの間の距離などを考慮すれば、図28に示した領域18がレーザ光の基本波による焦点の位置に対応し、図27の領域17が、4次のSRS成分による焦点に対応すると考えられる。そして、これらの基本波および4次のSRS成分による焦点が改質領域(加工線)の両端にあって領域17、18の形成に寄与したものと考えられる。
【0128】
なお、照射するレーザ光のエネルギーを増大させることにより、レーザ光が集光した結果として集光線が形成される場合においても、集光線における十分なフルエンスが得られれば、実験1の条件3および条件4の場合、あるいは実験2の条件2および条件3の場合のように、集光線が加工対象材であるサファイヤ基板の梨地面(裏面)と交差しない場合であっても、サファイヤ基板の内部に改質領域を形成することは可能であると思われる。
【0129】
但し、サファイヤ基板の梨地面には特にエピタキシャル層などが形成されることない。また、上記のような改質領域の形成は、サファイヤ基板の光沢面上に形成されるエピタキシャル層などに対して影響を殆ど及ぼさないと考えられる。そのため、比較的低い平均パワーの条件でレーザ光の集光線に沿った改質領域を形成する場合には、集光線の位置を加工対象材の厚み方向の内部に完全に含まれるように配置するのではなく、集光線の一部を加工対象材の表面側あるいは裏面側の一部と交差させる、より好ましくは裏面側(加工対象材6の梨地面13側)と交差させることが好ましい。
【0130】
ここで、従来のように単一波長のレーザ光を集光して点状の集光点(焦点)を形成し、当該集光点を加工対象材の内部に位置させた場合、加工対象材の内部には点状の変質領域(変質点)が形成される。一方、本発明のように、レーザ光において敢えてSRSを発生させることで、レンズによりレーザ光を集光することで形成される集光点(焦点)を線状に配置した集光線とし、当該集光線を加工対象材の表面または裏面と交差するように当該レーザ光を加工対象材に対して照射すれば、加工対象材の深さ方向に広がった改質領域を1度のレーザ照射で形成することができる。
【0131】
さらに、従来のように点状の集光点を加工対象材の内部に配置させてレーザ照射を行なう場合、広い改質領域を形成するためにはレーザ照射を複数回実施する必要がある。しかし、本発明によれば1度のレーザ照射により広い範囲に帯状の改質領域を形成することが可能である。さらに、発生させることが困難であるフェムト秒領域の短パルスレーザを用いることなく、本発明ではアスペクト比の大きな改質領域を形成することができる。
【0132】
なお、レーザ光源としては、上述のようなファイバレーザを用いることが好ましいが、仮に光源として固体レーザを用いた場合でも、実質的に単一モードのデリバリ用光ファイバを用いて敢えてSRSを発生させることで、本発明によるレーザ加工方法の光源として利用することが可能である。
【0133】
以下、他の実験例について説明する。
本実験ではレーザ発振器に微細加工用パルスファイバーレーザ(住友電気工業社製)を使用した。本レーザ発振器は、図2に示したレーザ装置と同様にMOPA方式であり、高速変調可能な半導体レーザを種光源とし、アンプ器によってパワー増幅することから、パルス幅と繰り返し数を独立して設定することが可能である。当該レーザ発振器の発振中心波長は1060nmであり、パルス繰り返し数とパルス幅を広範囲で選択することができる。コリメータレンズにより出力された直径1.6mmのレーザ光はアイソレータを通過後、ビームエキスパンダによって5倍に拡大され、焦点距離20mmのアクロマティックレンズによってサンプルへ集光した。
【0134】
図29は、本実験例において用いたサンプルの概略断面模式図である。当該サンプルはサファイア基板上にエピタキシャル層が形成された積層構造となっている。サファイア基板厚はおよそ400μmであり、当該サファイア基板のミラー研磨面上に窒化ガリウム(GaN)のエピタキシャル層が0.3μm厚で堆積されている。なお、サファイア基板の上記ミラー研磨面と反対側に位置する対向面は、梨地面(表面粗さRa(JIS(日本工業規格)B0601の算術平均粗さRa)が0.51μm)である。
【0135】
図30は、サンプルにレーザ光を照射した状態を示す模式図である。レーザ光源としては上述のように高いピークパワーと広帯域のスペクトルを有するファイバレーザ光源を用いた。当該レーザ光源から出力されたレーザ光は、上述のように集光レンズ(f=20mm)を介してサンプル(エピタキシャル層/サファイア基板)に照射される。サンプルは、図30に示すようにジグ上に配置されている。ジグはxyz可動式ステージ上に搭載されている。レーザ光はサンプルにおいてエピタキシャル層が形成された側から照射した。なお、ジグはAl製であり、レーザ光の反射光を抑制するために、短冊形状を採用した。
【0136】
図31は、レーザ照射後のサンプル(サファイア基板)の断面写真である。図32は、図31に示したA〜Eの場合のサンプルと焦点位置との関係を示す模式図である。
【0137】
図31では、焦点位置を50μmずつ移動させたときのレーザ光走査軸に対して垂直方向より観察した加工痕の断面形状を示しており、レーザ光は図上側から照射している。zはステージの高さを示す。ステージの高さを制御することで集光レンズとサンプルの深さ方向での相対位置を調整することができる(なお、図31に図示した記号A〜Eは、図32のA〜Eに対応している)。観察には光学顕微鏡を用い、観察方向と反対の方向から光を照射している。焦点位置zは焦点位置が試料表面にある場合をz=0とし、それより上側(試料上部)に焦点がある場合を正、下側(試料内部)にある場合を負と定義した。
【0138】
A:z=0.1mmの場合は、サンプル上面より0.1mm上方の空気中の位置に集光点が存在する。B:z=0の場合は、エピタキシャル層上に集光点がある。C:z=−0.1mm、およびD:z=−0.2mmの場合は、エピタキシャル層よりそれぞれ0.1mmおよび0.2mm下方のサファイア基板内に集光点が存在する。E:z=−0.25mmの場合は、サファイア基板内を通り抜けた空気中に焦点位置がある。なお、図32に記載されているドットはサファイアの屈折率を考慮した焦点位置である。図31から分かるように、z=0.15mm〜−0.15mmの範囲において、エピタキシャル層のみが損傷している。一方、z=−0.2mm〜−0.25mmの範囲においては、エピタキシャル層は損傷せず、サファイア内部のみに改質領域が形成されている。
【0139】
z=−0.20mm、−0.25mmの場合においては梨地面から基板内部にかけて直線状の改質領域が形成されている。z=−0.20mmの場合での改質領域は幅5μm、高さ180μmで、アスペクト比が36と非常に高いアスペクト比が得られている。
【0140】
図33は、形成された改質領域を説明するための模式図である。図33(a)は、本発明において用いるレーザ光の特徴を説明するための模式図である。また、図33(b)は、改質領域を説明するための断面写真である。
【0141】
図33(a)に示すように、本光源は、広範囲のスペクトル幅を有しているため、レーザ光の各波長によって集光点位置が異なる。
【0142】
そして、図33(a)に示すようなレーザ光を用いてレーザ照射を行なった場合、図33(b)に示すように、サンプルであるサファイア基板の内部には改質領域が形成される。図33(b)に示すように、それぞれの集光点を結ぶように改質領域が線状に形成されている。
【0143】
なお、図33に示したサンプルについては、図34〜図38により詳細な断面写真を示している。すなわち、図34の左上の写真は、当該サンプルの光学顕微鏡写真である。また、図34の左下の写真は当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)による写真であって、二次電子像を示す。また、図34の右下の写真は当該サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)による写真であって、インレンズ像を示す。なお、図34の左下の写真は、図33(b)の左上の写真を上下反転したものに対応する。
【0144】
また、図35の左上の写真は、SEMによる二次電子像であって、当該サンプルの断面における梨地面側の一部を示す。また、図35の右上の写真は、図35の左上の写真のさらに一部分を示す。また、図35の左下の写真は、SEMによる二次電子像であって、当該サンプルの断面における鏡面側の一部を示す。また、図35の右下の写真は、図35の左下の写真のさらに一部分を示す。なお、図35のたとえば左上の写真に認められる縦に伸びるスジはCP(Cross Section Polisher)加工による加工痕である。このような表面加工については、上記CP加工の他にIon Beam Polishing Systemを用いた加工を適用してもよい。
【0145】
また、図36に示した写真は、実質的に図35の左上の写真と同じであるが、図36の右下の写真では、サンプルの断面における改質領域の一部分を特定するための番号(81〜84)が記載されている。
【0146】
また、図37に示した写真は、図36の右下に示された写真における番号(81〜84)で示された改質領域の一部分を示すSEM写真である。なお、図37の左上の写真は、図33(b)の左下の写真を上下反転したものに対応する。また、図38は、図37に示した4枚の写真を縦に並べることで、改質領域の広い領域を示している。なお、図38は図33(b)の右側の写真を上下反転したものに対応する。
【0147】
図39は、レーザ光の走査回数の影響を説明するための模式図である。図39(a)および図39(b)は、エピタキシャル層/サファイア基板という積層構造のサンプルにそれぞれ1回、および2回のレーザ走査を行い(なお、エピタキシャル層側から入射したレーザ光の走査方向は図18(b)に示す垂直方向である)、破断試験後の断面観察結果を示す写真である。また、図39(c)は、レーザ光の走査方向を説明するための模式図である。図39(a)および図39(b)に示すように、2回走査の方が破断面に生じた条痕は短く、改質領域が密に形成されていることが分かる。また、これらのサンプルについて破断強度の測定を行なった結果を、図39(d)のグラフに示す。図39(d)に示したグラフの縦軸は破断強度(単位:MPa)を示し、グラフの左側のデータが走査回数1回のサンプル(図39(a)のサンプル)のデータであり、グラフの右側のデータが走査回数2回のサンプル(図39(b)のサンプル)のデータである。当該グラフからも分かるように、2回走査した方が破断強度は低く、バラつきも小さい。よって、内部改質後のサンプルの破断を行う場合は、多重走査が有効である。
【0148】
図40は、本発明によるレーザ加工方法を用いて破断したサンプルの断面を観察した結果を示す写真である。図40に示したサンプルは、エピタキシャル層/サファイア基板という積層構造のサンプルに2回のレーザ走査を行った後の破断面観察結果を示す。なお、レーザ光の走査方向は図39(c)に示した走査方向である。図40(a)はサンプルの断面を示す写真であり、図40(b)はサンプルのエピタキシャル層/サファイア基板との界面近傍の領域(図40(a)の鎖線で囲まれた上側の領域)の拡大写真であり、図40(c)はサンプルの改質領域の一部(図40(a)の鎖線で囲まれた下側の領域)の拡大写真である。図40(a)および図40(c)に示すように、サファイア基板の梨地面側にはおよそ200μm程度の深さの改質領域が形成されているが、図40(b)に示すように上面のエピタキシャル層には大きな損傷は見受けられない。つまり、エピタキシャル層に対し、改質領域に起因した大きな損傷を及ぼすことなく、改質領域を形成すること、また、その改質領域を利用してサファイア基板を分割することが可能である。
【0149】
なお、図40に示したサンプルについては、図41および図42により詳細な断面写真を示している。すなわち、図41の上側の写真は、図40(a)に対応し、図41の下側の写真は、図40(b)に対応する。また、図42の写真は、図40(c)に対応する。
【0150】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
この発明は、半導体を形成するために用いられる基板の切断に特に有利に適用できる。
【符号の説明】
【0152】
1 MOPA光源、3 プリアンプ部、4 ブースタアンプ部、6 加工対象材、7,16,110〜113 矢印、8,17,18 領域、9 レンズ、10 種光源、12 光沢面、13 梨地面、15 レーザ光、21〜24 光アイソレータ、30 光カプラ、31,32 WDMフィルタ、33,34 光コンバイナ、41〜44 増幅用光ファイバ、45 受動光ファイバ、50,51 バンドパスフィルタ、60 エンドキャップ、71,72,105a〜105c 領域、90,93,94a〜94f 励起光源、101 光出射部、102 SHG結晶、103,108 ダイクロイックミラー、104 OPO、106a〜106c,107a〜107c ミラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、前記レーザ光の前記連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、前記集光線の少なくとも一部が前記加工対象材の表面に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射し、前記集光線の軸線上に前記改質領域を形成する、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記改質領域を形成する工程では、前記集光線全体が前記加工対象材の外部に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記改質領域を形成する工程では、前記加工対象材の第1面から前記レーザ光が入射されるとともに、前記加工対象材の厚み方向において前記第1面と反対側に位置する第2面側に前記改質領域が形成される、請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、前記第1面が鏡面加工され、かつ前記第2面が梨地加工されている、請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記レーザ光の種光であるパルス光に対するラマン散乱効果を利用して前記連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光を発生させている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記レーザ光の前記連続スペクトルを構成する波長成分のうち最も強度の高い最大ピーク波長の強度に対して、前記連続スペクトルを構成する波長成分のうち前記最大ピーク波長以外の波長成分の強度の合計が10%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記レーザ光の前記連続スペクトルを構成する波長成分は、前記最大ピーク波長以外の波長成分のうち強度が局所的な極大値を示す1つ以上の局所ピーク波長を含み、
前記最大ピーク波長と、前記1つ以上の局所ピーク波長との差の最大値が100nm以上である、請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、
50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、前記パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成され、
前記レーザ光を前記加工対象材に照射することにより、前記直線上に前記集光領域による前記改質領域を前記加工対象材の内部に形成する、レーザ加工方法。
【請求項9】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、
50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、前記パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成され、
前記レーザ光を前記加工対象材に照射し、線状の前記集光領域による前記改質領域を前記加工対象材の内部に形成する、レーザ加工方法。
【請求項10】
前記所定のスペクトルバンドは、50nm以上の連続したスペクトル領域以外の離散的なスペクトル領域を含む、請求項9に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記所定のスペクトルバンドは、連続スペクトル、あるいは複数の離散的なスペクトルを有したスペクトル領域を含む、請求項8または9に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記レーザ光は、CW成分を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項13】
前記パルス光は、スペクトルの異なるパルス光を個別に発生する複数のパルス光源からの複数のパルス光を同期して合波した単一のパルス光を含んでいる、請求項8〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項14】
前記パルス光は、受動ファイバに入力される基本パルス光由来の成分と、前記基本パルス光に対する前記受動ファイバでの誘導ラマン散乱効果を利用して形成された50nm以上のスペクトル幅の連続スペクトル成分とを有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項15】
前記パルス光は、前記連続スペクトル成分を構成するスペクトル成分のうちの前記基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分のパワーが、前記基本パルス光のパワーに対し、10%以上である、請求項14に記載のレーザ加工方法。
【請求項16】
前記連続スペクトルは、前記基本パルス光のピークスペクトル領域以外の成分のうち、パワーが局所的な極大値を有する局所ピークスペクトルを一つ以上含み、
前記基本パルス光のピークスペクトルと、前記1つ以上の局所ピークスペクトルとの最小離間間隔が100nm以上である、請求項14または15に記載のレーザ加工方法。
【請求項17】
前記改質領域を形成する工程では、前記レーザ光の前記集光領域の一部、あるいは全体が前記加工対象材の内部に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射する、請求項8〜16のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項18】
前記改質領域を形成する工程では、前記加工対象材の第1面から前記レーザ光が入射されるとともに、前記加工対象材の厚み方向において、前記第1面と反対側に位置する第2面に前記集光領域の一部を設定し、前記改質領域が前記第2面から前記加工対象材の内部に亘って形成される、請求項8〜17のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項19】
前記加工対象材を準備する工程では、前記第2面の表面粗さRa(JIS規格)が0.1μm以上1.0μm以下となるように、前記第2面が非鏡面加工されている、請求項18に記載のレーザ加工方法。
【請求項20】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、前記第1面が鏡面加工されている、請求項18または19に記載のレーザ加工方法。
【請求項21】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、鏡面加工された前記第1面上にエピタキシャル層が形成される、請求項20に記載のレーザ加工方法。
【請求項1】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光をレンズで集光することにより、前記レーザ光の前記連続スペクトルを形成する所定バンドの複数の焦点により構成される集光線が形成され、前記集光線の少なくとも一部が前記加工対象材の表面に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射し、前記集光線の軸線上に前記改質領域を形成する、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記改質領域を形成する工程では、前記集光線全体が前記加工対象材の外部に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記改質領域を形成する工程では、前記加工対象材の第1面から前記レーザ光が入射されるとともに、前記加工対象材の厚み方向において前記第1面と反対側に位置する第2面側に前記改質領域が形成される、請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、前記第1面が鏡面加工され、かつ前記第2面が梨地加工されている、請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記レーザ光の種光であるパルス光に対するラマン散乱効果を利用して前記連続スペクトルを有するパルス状のレーザ光を発生させている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記レーザ光の前記連続スペクトルを構成する波長成分のうち最も強度の高い最大ピーク波長の強度に対して、前記連続スペクトルを構成する波長成分のうち前記最大ピーク波長以外の波長成分の強度の合計が10%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記レーザ光の前記連続スペクトルを構成する波長成分は、前記最大ピーク波長以外の波長成分のうち強度が局所的な極大値を示す1つ以上の局所ピーク波長を含み、
前記最大ピーク波長と、前記1つ以上の局所ピーク波長との差の最大値が100nm以上である、請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、
50nm以上のスペクトル領域を有する所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、前記パルス光に含まれる各スペクトル成分の集光部位が、集光方向の直線上に所定の集光領域として形成され、
前記レーザ光を前記加工対象材に照射することにより、前記直線上に前記集光領域による前記改質領域を前記加工対象材の内部に形成する、レーザ加工方法。
【請求項9】
加工対象材を準備する工程と、
前記加工対象材にパルス光のレーザ光を照射することにより、前記加工対象材に改質領域を形成する工程とを備え、
前記改質領域を形成する工程では、
50nm以上の連続したスペクトル領域を含む所定のスペクトルバンドのパルス光をレーザ光として集光手段で集光することにより、各パルスショット毎に、前記パルス光に含まれる各スペクトル領域の集光部位が、集光方向に沿って線状に所定の集光領域として形成され、
前記レーザ光を前記加工対象材に照射し、線状の前記集光領域による前記改質領域を前記加工対象材の内部に形成する、レーザ加工方法。
【請求項10】
前記所定のスペクトルバンドは、50nm以上の連続したスペクトル領域以外の離散的なスペクトル領域を含む、請求項9に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記所定のスペクトルバンドは、連続スペクトル、あるいは複数の離散的なスペクトルを有したスペクトル領域を含む、請求項8または9に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記レーザ光は、CW成分を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項13】
前記パルス光は、スペクトルの異なるパルス光を個別に発生する複数のパルス光源からの複数のパルス光を同期して合波した単一のパルス光を含んでいる、請求項8〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項14】
前記パルス光は、受動ファイバに入力される基本パルス光由来の成分と、前記基本パルス光に対する前記受動ファイバでの誘導ラマン散乱効果を利用して形成された50nm以上のスペクトル幅の連続スペクトル成分とを有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項15】
前記パルス光は、前記連続スペクトル成分を構成するスペクトル成分のうちの前記基本パルス光のスペクトル領域以外のスペクトル成分のパワーが、前記基本パルス光のパワーに対し、10%以上である、請求項14に記載のレーザ加工方法。
【請求項16】
前記連続スペクトルは、前記基本パルス光のピークスペクトル領域以外の成分のうち、パワーが局所的な極大値を有する局所ピークスペクトルを一つ以上含み、
前記基本パルス光のピークスペクトルと、前記1つ以上の局所ピークスペクトルとの最小離間間隔が100nm以上である、請求項14または15に記載のレーザ加工方法。
【請求項17】
前記改質領域を形成する工程では、前記レーザ光の前記集光領域の一部、あるいは全体が前記加工対象材の内部に位置するように、前記レーザ光を前記加工対象材に照射する、請求項8〜16のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項18】
前記改質領域を形成する工程では、前記加工対象材の第1面から前記レーザ光が入射されるとともに、前記加工対象材の厚み方向において、前記第1面と反対側に位置する第2面に前記集光領域の一部を設定し、前記改質領域が前記第2面から前記加工対象材の内部に亘って形成される、請求項8〜17のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項19】
前記加工対象材を準備する工程では、前記第2面の表面粗さRa(JIS規格)が0.1μm以上1.0μm以下となるように、前記第2面が非鏡面加工されている、請求項18に記載のレーザ加工方法。
【請求項20】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、前記第1面が鏡面加工されている、請求項18または19に記載のレーザ加工方法。
【請求項21】
前記加工対象材を準備する工程では、前記加工対象材において、鏡面加工された前記第1面上にエピタキシャル層が形成される、請求項20に記載のレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図19】
【図20】
【図21】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図19】
【図20】
【図21】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2012−196711(P2012−196711A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26244(P2012−26244)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年9月5日 公益社団法人精密工学会発行の「▲c▼2011 The Japan Society for Precision Engineering 2011年度精密工学会秋季大会 学術講演会 講演論文集(CD‐ROM)」に発表
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年9月5日 公益社団法人精密工学会発行の「▲c▼2011 The Japan Society for Precision Engineering 2011年度精密工学会秋季大会 学術講演会 講演論文集(CD‐ROM)」に発表
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
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