説明

レーザ加工装置、及びレーザ発振装置

【課題】戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できるレーザ加工装置、及びレーザ発振装置を提供すること。
【解決手段】信号用レーザ光を増幅する主増幅部と、増幅したレーザ光Lを出射するレーザ出射部の間に設けられ、主増幅部から第1の光路L1を通って入射されるレーザ光Lをレーザ出射部側の第2の光路L2へ出射する一方で、第2の光路L2を通って入射される戻り光を第1の光路L1とは異なる第3の光路L3へ出射する偏波無依存型の光アイソレータ50と、光アイソレータ50から第3の光路L3へ出射された戻り光を検出し、検出した戻り光の光量に応じた検出信号を出力する受光素子57と、受光素子57が出力する検出信号に基づいて戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定する制御部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種光源から出射されたレーザ光を、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において励起光源からの励起光により増幅して出射するレーザ加工装置、及びレーザ発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において、信号用レーザ光を励起用レーザ光により増幅して出射するレーザ加工装置やレーザ発振装置(所謂ファイバレーザ装置)が知られている。このようなファイバレーザ装置では、希土類添加光ファイバから出射されたレーザ光の一部が希土類添加光ファイバ内に戻り光として入射されるとともに増幅され、レーザ光を出射する半導体素子などのレーザ光源に悪影響を与える虞がある。このため、従来のファイバレーザ装置では、一般に希土類添加光ファイバの後段に光アイソレータを配設し、戻り光が希土類添加光ファイバ内に入射されることを抑制している。
【0003】
そして、従来のファイバレーザ装置の中には、光アイソレータを通過して希土類添加光ファイバ内に入射された戻り光の光量を測定するとともに、戻り光の光量値が所定値を超えた場合に励起用レーザ光の出力を減じる制御を実行するものもある(例えば、特許文献1)。このような構成を備えた特許文献1のファイバレーザ装置では、戻り光が増幅されてレーザ光源などに悪影響を及ぼすことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−42981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のファイバレーザ装置では、希土類添加光ファイバに接続されたモニタポートに伝播する戻り光の光量を測定する構成からも明らかなように、希土類添加光ファイバにおける励起状態に応じて増幅された戻り光の光量を測定するものである。このため、特許文献1では、戻り光の光量が希土類添加光ファイバの励起状態に応じて変化するため、必ずしも正確な戻り光の光量を測定できず、それに伴って戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できるレーザ加工装置、及びレーザ発振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、種光源から出射されたレーザ光を、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において励起光源からの励起光により増幅し、該増幅されたレーザ光を収束手段により収束させるとともに、光走査機構により方向を変更して照射位置を走査させつつレーザ出射部から加工対象物に照射するレーザ加工装置であって、前記希土類添加光ファイバと前記レーザ出射部の間に設けられ、前記希土類添加光ファイバから第1の光路を通って入射されるレーザ光を前記レーザ出射部側の第2の光路へ出射する一方で、前記第2の光路を通って入射される戻り光を前記第1の光路とは異なる第3の光路へ出射する偏波無依存型光アイソレータと、前記偏波無依存型光アイソレータから前記第3の光路へ出射された戻り光を検出し、検出した戻り光の光量に応じた検出信号を出力する検出手段と、前記検出手段が出力する検出信号に基づいて戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、レーザ出射部側の第2の光路から偏波無依存型光アイソレータ内に入射された戻り光は、レーザ光を増幅する希土類添加光ファイバからレーザ光が入射される第1の光路とは異なる第3の光路へ出射されるため、希土類添加光ファイバに戻り光が入射されて光源に悪影響を及ぼすことが抑制される。そして、第3の光路へ出射された戻り光を検出手段により検出するとともに、この検出手段により出力された検出信号に基づき戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定するようにしている。このため、希土類添加光ファイバにより増幅される前の戻り光の光量を直接的に検出することで、希土類添加光ファイバの励起状態にかかわらず、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記判定手段の判定結果が肯定である場合に、前記戻り光の光量が所定の光量を超えていることを報知する報知手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0010】
これによれば、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かが報知される。このため、作業員などに対し、戻り光により光源に悪影響を与える可能性があることを正確に報知することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ出射部から出射するレーザ光の出力を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が肯定である場合に、前記レーザ光の出力を低下させることを要旨とする。
【0012】
これによれば、戻り光の光量が所定の光量を超えていると判定された場合に、レーザ出射部から出射するレーザ光の出力が低下される。このため、加工対象物からの戻り光を減少させ、光源に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記偏波無依存型光アイソレータと前記検出手段の間には、前記偏波無依存型光アイソレータから出射される戻り光を減衰させる減衰手段がさらに設けられていることを要旨とする。
【0014】
これによれば、戻り光を減衰手段により減衰させた後に検出手段で検出できる。したがって、強い戻り光によって検出手段に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
請求項5に記載の発明は、種光源から出射されたレーザ光を、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において励起光源からの励起光により増幅し、該増幅されたレーザ光をレーザ出射部から外部に出射するレーザ発振装置であって、前記希土類添加光ファイバと前記レーザ出射部の間に設けられ、前記希土類添加光ファイバから第1の光路を通って入射されるレーザ光を前記レーザ出射部側の第2の光路へ出射する一方で、前記第2の光路を通って入射される戻り光を前記第1の光路とは異なる第3の光路へ出射する偏波無依存型光アイソレータと、前記偏波無依存型光アイソレータから前記第3の光路へ出射された戻り光を検出し、検出した戻り光の光量に応じた検出信号を出力する検出手段と、前記検出手段が出力する検出信号に基づいて戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
これによれば、希土類添加光ファイバにより増幅される前の戻り光の光量を直接的に検出することで、希土類添加光ファイバの励起状態にかかわらず、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レーザ加工装置の概略構成を示す模式図。
【図2】(a)及び(b)は、光アイソレータを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1及び図2にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置10は、本体ユニット11と、本体ユニット11にファイバケーブル12及び電気ケーブル(図示略)を介して接続されたヘッドユニット13とを備えている。
【0019】
本体ユニット11は、所定の波長帯域の信号用レーザ光を出力する種光源21と、信号用レーザ光を増幅する予備増幅部22と、制御部23とを備えている。
種光源21は、制御部23の制御によりドライバ24を介して駆動され、その駆動にて出力された信号用レーザ光は、種光源21の後段に配置された予備増幅部22で加工対象物としてのワークWへの加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅される。
【0020】
予備増幅部22は、信号用レーザ光が入射されるドープファイバ25と、励起光としての励起用レーザ光を出力する励起光源26(レーザダイオード)とを備えている。ドープファイバ25は、希土類元素である例えばイッテルビウム(Yb)を添加した可撓性を有する希土類添加光ファイバであり、図示しないボビンに巻回されることで所要の長さの光路が確保されている。ドープファイバ25には、ファイバカプラ等よりなる光結合部27が設けられており、励起光源26から出力された励起用レーザ光は、光結合部27を介してドープファイバ25に入射されるようになっている。制御部23は、ドライバ28を介して励起光源26の出力制御を行う。尚、ドープファイバ25の後段には、光アイソレータ29が設けられている。光アイソレータ29は、ドープファイバ25にて伝送される正方向(図1において右方向)の光を通過させる一方、逆方向の光(戻り光)を遮るようになっている。
【0021】
本実施形態のレーザ加工装置10は、光増幅手段を2つ備えており、その1つは上述した予備増幅部22であり、もう1つは主増幅部30である。
主増幅部30は、本体ユニット11に設けられた一対の励起光源31(レーザダイオード)と、その一対の励起光源31が出力する励起用レーザ光をヘッドユニット13側にそれぞれ伝送する一対の伝送用ファイバ32と、ヘッドユニット13に設けられたドープファイバ33とを備えている。ドープファイバ33は、予備増幅部22のドープファイバ25と同様に、希土類元素である例えばイッテルビウム(Yb)を添加した可撓性を有する希土類添加光ファイバであり、図示しないボビンに巻回されることで所要の長さの光路が確保されている。
【0022】
ドープファイバ33の前段側及び後段側にはそれぞれ、ファイバカプラ等よりなる前段側光結合部34及び後段側光結合部35が設けられ、この光結合部34,35は、一対の伝送用ファイバ32の出射側端部とそれぞれ接続されている。励起光源31から出力された励起用レーザ光は、伝送用ファイバ32を通って本体ユニット11側からヘッドユニット13側に伝送され、光結合部34,35を介してドープファイバ33に入射されるようになっている。制御部23は、ドライバ36を介して励起光源31の出力制御を行う。
【0023】
本体ユニット11とヘッドユニット13とを繋ぐファイバケーブル12は、前述の各伝送用ファイバ32と、予備増幅部22にて増幅されたレーザ光(予備増幅光)をヘッドユニット13側に伝送するための伝送用ファイバ37とが外皮部材38にて被覆されて一本のケーブルとして構成されている。このファイバケーブル12は、両端部がそれぞれ本体ユニット11及びヘッドユニット13の各ハウジング(図示略)に対して着脱可能に構成されている。
【0024】
ヘッドユニット13において、伝送用ファイバ37の出射側端部と主増幅部30の前段側光結合部34との間には、バンドパスフィルタ40が設けられている。バンドパスフィルタ40は、所定波長の光を透過させるとともに、それ以外の波長の光を透過させないという特性を有している。伝送用ファイバ37にて伝送されたレーザ光(予備増幅光)は、バンドパスフィルタ40を介して主増幅部30のドープファイバ33に入射されるように構成されている。
【0025】
ヘッドユニット13において、主増幅部30の光結合部35の後段には、主増幅部30から出射されたレーザ光Lの出力を測定するためのレーザ出力測定部41が設けられている。レーザ出力測定部41は、レーザ光Lの光軸上に配置された例えばビームスプリッタ等よりなる光分岐部42と、その光分岐部42の近傍に設けられた受光素子43とを備えている。光分岐部42は、主増幅部30から出射されたレーザ光Lの一部を受光素子43に向かって反射する。受光素子43は、光分岐部42からのレーザ光Lを受光し、その受光結果に基づく検出信号を制御部23に出力する。
【0026】
また、ヘッドユニット13において、光分岐部42の後段には、主増幅部30から出射され光分岐部42を透過したレーザ光Lを平行光あるいは収束光に絞るコリメータレンズ44を備えている。コリメータレンズ44を通じて絞られたレーザ光Lは、ヘッドユニット13に設けられた光走査機構45によって所要の方向に反射される。光走査機構45は、レーザ光Lを反射する2つのガルバノミラーを有して構成されるものであって、各ガルバノミラーの傾斜角度(回動角度)を変化させることにより、コリメータレンズ44を通じて絞られたレーザ光Lを所要の方向に走査させるものであり、制御部23によってドライバ46を介して駆動制御される。光走査機構45にて反射されたレーザ光Lは、集光レンズ47にてスポットレーザ光に絞り込まれる。そして、その絞り込まれたレーザ光Lがヘッドユニット13のレーザ出射部13aから外部に出射されて、ワークWの表面上を走査されることにより所望の加工が行われる。本実施形態では、集光レンズ47がレーザ光Lを収束する収束手段となる。
【0027】
そして、本実施形態のレーザ加工装置10では、ヘッドユニット13内の光軸上において、主増幅部30の後段側光結合部35と、レーザ出力測定部41の光分岐部42の間に、光アイソレータ50が設けられている。光アイソレータ50は、主増幅部30から出射される正方向(図1において右方向)の光を通過させる一方で、逆方向の光(戻り光)を遮るようになっている。以下、光アイソレータ50の構成及び原理について説明する。
【0028】
図2に示すように、光アイソレータ50は、主増幅部30側(図2において左側)からレーザ出射部13a側(図2において右側)へ向かって、複屈折結晶板51、ファラデー旋光子52、1/2波長板53(補償板)、及び複屈折結晶板54を順に配置して構成された偏波無依存型光アイソレータとされている。複屈折結晶板51,54は、例えばルチル結晶や、イットリウム・バナデイト結晶などの複屈折性を有する結晶からなる。
【0029】
図2(a)に示すように、主増幅部30から出射されたレーザ光Lは、第1の光路L1を通って光アイソレータ50に入射されると、まず複屈折結晶板51によって常光線と異常光線に分離されるとともに、分離された各分離光は、その偏光方向がファラデー旋光子52の磁界中で何れも光の進行方向に対して右回りに45°の回転を受ける。さらに各分離光は、その偏光方向が1/2波長板53によって、光の進行方向に対して右回りに45°の回転を受けて複屈折結晶板54に入射される。複屈折結晶板54に入射された各分離光は、その偏光方向が複屈折結晶板51によって分離された時点と入れ替わっているため、複屈折結晶板54によって合成され、レーザ出射部13a側(レーザ出力測定部41側)の第2の光路L2へ出射される。
【0030】
一方、図2(b)に示すように、レーザ出射部13a(レーザ出力測定部41側)側から戻ってきた戻り光は、第2の光路L2を通って光アイソレータ50に入射されると、まず複屈折結晶板54によって常光線と異常光線に分離されるとともに、各分離光は光の進行方向に対して右回りに45°の回転を受けてファラデー旋光子52に入射される。しかしながら、ファラデー旋光子52に入射した戻り光の各分離光は、ファラデー旋光子52の磁界中で光の進行方向に対して左回りに45°の回転を受けて複屈折結晶板51に入射される。このため、複屈折結晶板51に入射された各分離光は、その偏光方向が複屈折結晶板54によって分離された時点と同一であるため、複屈折結晶板51によってさらに分離がすすみ、第1の光路L1とは異なる第3の光路L3に出射される。このように、光アイソレータ50は、主増幅部30からのレーザ光Lをレーザ出射部13a側へ通過させる一方で、レーザ出射部13a側からの戻り光を主増幅部30(ドープファイバ33)へ入射させないようになっている。
【0031】
また、本実施形態のレーザ加工装置10において、ヘッドユニット13には、光アイソレータ50から第3の光路L3に出射された戻り光の光量(強度)を測定するための戻り光測定部56が設けられている。戻り光測定部56は、光アイソレータ50の主増幅部30側において、各第3の光路L3上にそれぞれ設けられた一対の検出手段としての受光素子57と、光アイソレータ50から出射される戻り光を減衰(減光)させる減衰手段としての一対の減光フィルタ58とを備えている。各減光フィルタ58は、第3の光路L3上において、光アイソレータ50と各受光素子57の間にそれぞれ配設されている。
【0032】
また、各受光素子57は、光アイソレータ50から出射された戻り光を受光(検出)し、受光(検出)した戻り光の光量(強度)に応じた検出信号を出力する。本実施形態において、一方の受光素子57は、光アイソレータ50から出射される戻り光のうち、第3の光路L3に直交する第1方向の直線偏光成分(常光線)を受光する一方で、他方の受光素子57は、第3の光路L3及び第1方向と直交する第2方向の直線偏光成分(異常光線)を受光する。そして、各受光素子57から出力された検出信号は、ヘッドユニット13に設けられた図示しない加算器(加算回路)により加算され、総和を示す検出信号として制御部23に出力される。
【0033】
なお図1に示すように、レーザ加工装置10には、例えばコンソール等の操作部60が設けられている。操作部60は、本体ユニット11に接続されており、この操作部60にてレーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力値を含む加工情報の設定を行うことができる。操作部60にて設定された加工情報は、制御部23に入力され、制御部23は、その加工情報に基づいて本体ユニット11及びヘッドユニット13を制御する。また、操作部60には、レーザ加工装置10に異常状態が発生していることを報知する報知手段としての異常ランプ60aが設けられている。
【0034】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
予備増幅部22において、励起光源26から出力された励起用レーザ光が光結合部27を介してドープファイバ25に入射されると、その励起用レーザ光によってドープファイバ25内の希土類元素が励起状態とされる。この状態で、種光源21から出力された信号用レーザ光がドープファイバ25に入射されると、その信号用レーザ光は、ドープファイバ25内においてワークWへの加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅される。そして、その増幅されたレーザ光(予備増幅光)は、ファイバケーブル12の伝送用ファイバ37を通ってヘッドユニット13側に伝送されるとともに、伝送用ファイバ37にてヘッドユニット13側に伝送されたレーザ光は、バンドパスフィルタ40を介して主増幅部30のドープファイバ33に入射される。主増幅部30において、各励起光源31から出力された励起用レーザ光が伝送用ファイバ32及び光結合部34,35を介してドープファイバ33に入射されると、その励起用レーザ光によってドープファイバ33内の希土類元素が励起状態とされる。この状態で、バンドパスフィルタ40を通過した予備増幅光がドープファイバ33に入射されると、その予備増幅光は、ドープファイバ33内においてワークWへの加工が可能なレベルに増幅される。そして、主増幅部30にて増幅されたレーザ光Lは、コリメータレンズ44、光走査機構45及び集光レンズ47を介してレーザ出射部13aから外部に出射され、ワークWへの加工がなされる。
【0035】
また、本実施形態のレーザ加工装置10では、予備増幅光が伝送用ファイバ37にて伝送される際に、ラマン散乱によって予備増幅光の副波長帯成分が増大してしまっても、主増幅部30の前段のバンドパスフィルタ40によって副波長帯成分が除去される。これにより、ヘッドユニット13から外部に出射されるレーザ光Lの副波長帯成分が低減され、その結果、ワークW表面でのレーザ光Lの焦点ぼけが抑えられて加工精度が向上するようになっている。
【0036】
制御部23は、レーザ出力測定部41の受光素子43から出力された検出信号に基づき、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力が所望のパワーとなるように種光源21、励起光源26又は励起光源31のフィードバック制御を行う。
【0037】
また、制御部23は、戻り光測定部56の各受光素子57から出力された検出信号(加算器による加算後の検出信号)に基づき、戻り光の光量値(強度値)が予め定めた閾値を超えるか否かの異常判定を実行する。即ち、異常判定において、制御部23は、戻り光の光量が所定の光量を超えるか否かを判定する。制御部23は、この異常判定の判定結果が肯定の場合、異常判定の判定結果が否定となる迄の間、操作部60に異常信号を出力して異常ランプ60aを点灯させ、戻り光の光量値が閾値を超えていることを報知させる。これにより、本実施形態では、作業員などに対して、戻り光の光量値が閾値を超えていることを認識させ、適切な処置をとらせることができる。また、制御部23は、異常判定の判定結果が肯定の場合、異常判定の判定結果が否定となる迄の間、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を一定時間毎に所定量ずつ低下させるように、種光源21、励起光源26又は励起光源31を制御する。これにより、本実施形態では、ワークWで反射されて主増幅部30(ドープファイバ33)に戻ろうとする戻り光の光量を低減し、レーザ加工装置10に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)レーザ出射部13a側の第2の光路L2から光アイソレータ50内に入射された戻り光は、主増幅部30(ドープファイバ33)からレーザ光Lが入射される第1の光路L1とは異なる第3の光路L3へ出射されるため、ドープファイバ33に戻り光が入射されて各光源21,26,31に悪影響を及ぼすことが抑制される。そして、第3の光路L3へ出射された戻り光を受光素子57により検出するとともに、この受光素子57により出力された検出信号に基づき戻り光の光量値が閾値を超えているか否かを判定するようにしている。このため、主増幅部30(ドープファイバ33)により増幅される前の戻り光の光量を直接的に検出することで、ドープファイバ33の励起状態にかかわらず、戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを正確に判定できる。
【0039】
(2)異常ランプ60aにより、戻り光の光量値が閾値を超えているか否かが報知される。このため、作業員などに対して、戻り光により光源に悪影響を与える可能性があることを正確に報知することができる。
【0040】
(3)制御部23は、戻り光の光量値が閾値を超えていると判定された場合に、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を低下させる。このため、ワークWからの戻り光を減少させ、光源21,26,31に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0041】
(4)各受光素子57と光アイソレータ50の間に減光フィルタ58をそれぞれ設けた。このため、光アイソレータ50から第3の光路L3に出射される戻り光を減衰(減光)させた後に受光素子57で検出できる。したがって、強い戻り光によって受光素子57に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0042】
(5)また、戻り光の光量が受光素子57の検出限界を超えることで正確な戻り光の光量が測定できなくなることを抑制できる。
(6)制御部23は、各受光素子57の検出信号を加算器(加算回路)で加算した検出信号に基づき異常判定を実行する。したがって、戻り光の偏光方向が所定方向に偏っていた場合であっても、正確に戻り光の光量を測定し、判定することができる。
【0043】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・減光フィルタ58を設けない構成としてもよい。
・減光フィルタ58に代えて又は加えて、光アイソレータ50から第3の光路L3に出射される戻り光を発散(拡散)させる拡散レンズを設けてもよい。
【0044】
・減光フィルタ58に代えて又は加えて、光アイソレータ50から第3の光路L3に出射される戻り光の一部を所定方向へ反射する光分岐器を設けてもよい。この場合には、反射された戻り光を受光素子57で受光してもよく、反射されないで光分岐器を透過した戻り光を受光素子57で受光してもよい。なお、受光素子57で受光しない戻り光は、光吸収器により吸収させるとよい。
【0045】
・各受光素子57のうち、一方の受光素子57を省略した構成としてもよい。また、光アイソレータ50から出射される戻り光の全てを受光可能な単一の受光素子57を設けてもよい。この場合には、加算器(加算回路)を省略できる。
【0046】
・各受光素子57の検出信号は、加算器(加算回路)により加算することなく制御部23に出力するようにしてもよい。この場合、戻り光の光量を偏光方向ごとに独立してモニタすることができる。
【0047】
・ヘッドユニット13に判定手段として比較器(比較回路)を設け、受光素子57から出力される信号の電圧が基準電圧を超えた場合に異常信号を出力するようにしてもよい。この場合、制御部23は、異常信号を入力した場合に上述した異常判定を肯定判定するようにすればよい。
【0048】
・制御部23は、異常判定の判定結果が肯定の場合、種光源21、励起光源26又は励起光源31を制御してレーザ出射部13aからのレーザ光Lの出射を停止させてもよい。
・制御部23は、異常判定の判定結果が肯定の場合、閾値を超える戻り光の光量値(差分)に相当する分だけレーザ光Lの出力が低下するように種光源21、励起光源26又は励起光源31を制御してもよい。
【0049】
・音声出力を行うスピーカや、所定のメッセージを表示可能なモニタなどを報知手段として設け、戻り光の光量値が閾値を超えていることを報知してもよい。
・光アイソレータ50は、第2の光路L2を通って入射される戻り光を第1の光路L1とは異なる第3の光路L3に出射させるものであれば、その構成を適宜変更してもよい。例えば複屈折結晶板の個数を変更してもよい。
【0050】
・複数の主増幅部30を直列に配置してもよい。この場合、光アイソレータ50は、最も後段側(レーザ出射部13a側)に配置された主増幅部30の後段側光結合部35と、レーザ出力測定部41の光分岐部42の間に設けるとよい。
【0051】
・本体ユニット11とヘッドユニット13を一体としたレーザ加工装置に具体化してもよい。この場合、予備増幅部22を省略してもよい。
・コリメータレンズ44、光走査機構45、ドライバ46、及び集光レンズ47などを省略したレーザ発振装置(レーザ発振器)として具体化してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…レーザ加工装置、13a…レーザ出射部、21…種光源、23…制御部(判定手段、制御手段)、25…ドープファイバ(希土類添加光ファイバ)、26…励起光源、31…励起光源、33…ドープファイバ(希土類添加光ファイバ)、45…光走査機構、47…集光レンズ(収束手段)、50…光アイソレータ(偏波無依存型光アイソレータ)、57…受光素子(検出手段)、58…減光フィルタ(減衰手段)、60a…異常ランプ(報知手段)、L…レーザ光、L1…第1の光路、L2…第2の光路、L3…第3の光路、W…ワーク(加工対象物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種光源から出射されたレーザ光を、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において励起光源からの励起光により増幅し、該増幅されたレーザ光を収束手段により収束させるとともに、光走査機構により方向を変更して照射位置を走査させつつレーザ出射部から加工対象物に照射するレーザ加工装置であって、
前記希土類添加光ファイバと前記レーザ出射部の間に設けられ、前記希土類添加光ファイバから第1の光路を通って入射されるレーザ光を前記レーザ出射部側の第2の光路へ出射する一方で、前記第2の光路を通って入射される戻り光を前記第1の光路とは異なる第3の光路へ出射する偏波無依存型光アイソレータと、
前記偏波無依存型光アイソレータから前記第3の光路へ出射された戻り光を検出し、検出した戻り光の光量に応じた検出信号を出力する検出手段と、
前記検出手段が出力する検出信号に基づいて戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記判定手段の判定結果が肯定である場合に、前記戻り光の光量が所定の光量を超えていることを報知する報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザ出射部から出射するレーザ光の出力を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が肯定である場合に、前記レーザ光の出力を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記偏波無依存型光アイソレータと前記検出手段の間には、前記偏波無依存型光アイソレータから出射される戻り光を減衰させる減衰手段がさらに設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
種光源から出射されたレーザ光を、希土類元素が添加された希土類添加光ファイバ内において励起光源からの励起光により増幅し、該増幅されたレーザ光をレーザ出射部から外部に出射するレーザ発振装置であって、
前記希土類添加光ファイバと前記レーザ出射部の間に設けられ、前記希土類添加光ファイバから第1の光路を通って入射されるレーザ光を前記レーザ出射部側の第2の光路へ出射する一方で、前記第2の光路を通って入射される戻り光を前記第1の光路とは異なる第3の光路へ出射する偏波無依存型光アイソレータと、
前記偏波無依存型光アイソレータから前記第3の光路へ出射された戻り光を検出し、検出した戻り光の光量に応じた検出信号を出力する検出手段と、
前記検出手段が出力する検出信号に基づいて戻り光の光量が所定の光量を超えているか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするレーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55084(P2013−55084A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190077(P2011−190077)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】