説明

レーザ加工装置,レーザ加工方法,レーザ照射装置およびレーザ照射方法

【課題】高スループットで高品質のレーザ加工をすることができて装置の小型化が可能であるレーザ加工装置等を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、レーザ光源10、位相変調型の空間光変調器20、駆動部21、制御部22、結像光学系30を備える。結像光学系30はテレセントリック光学系を含む。駆動部21に含まれる記憶部21Aは、複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する。制御部22は、記憶部21Aにより記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器20に呈示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物に対してレーザ光を照射することにより該加工対象物を加工する装置および方法、ならびに、対象物に対してレーザ光を照射する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば缶などに製造年月日やシリアル番号を刻印する際に例えばインクが用いられてきた。しかしながら、インクを用いた場合、インクの剥がれや環境等の汚染といった問題がある。これらの問題を解決する方法として、レーザ加工によるマーキングが注目されつつある。レーザマーキングでは、レーザ光を集光照射することにより缶などの加工対象物に微細な穴を開け英数字等を刻印する。
【0003】
レーザマーキングの加工方法としては、1つのレーザビームを用いてドットを一つずつ加工していくか、或いは、広げたレーザビームに対して強度マスクを配置して一括加工を行うか、何れかの方法が従来では一般的である。しかしながら、前者では、1点ずつ加工していくので時間がかかることが問題である。また、後者では、強度マスクにより遮断されるレーザ光は加工に寄与しないので、光量ロスが大きいことが課題となっていた。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、位相変調型の空間光変調器(SLM: SpatialLight Modulator)を用いた方法が考え始められている。すなわち、位相変調型の空間光変調器に計算機ホログラム(CGH: Computer Generated Hologram)を呈示して、この空間光変調器に入力されるレーザ光を画素毎に位相変調し、その位相変調後のレーザ光を集光光学系により加工対象物において結像させ、この結像による加工パターンに従って加工対象物を加工する。空間光変調器に呈示されるホログラムは、加工対象物における加工パターンに応じたものとされる。このようにすれば、光のロスが少なく、かつ、加工対象物において多点を一括して加工することができる。
【0005】
このように位相変調型の空間光変調器を用いたレーザ加工方法では、図11にフローチャートが示されるように、先ず加工対象物における所望の加工パターンを決定し、この加工パターンに基づいて計算を行ってホログラムを作成し、この作成したホログラムを空間光変調器の駆動部へ転送し、この駆動部により空間光変調器にホログラムを呈示させ、その後に空間光変調器にレーザ光を入射させる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−113185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えばライン上を順次に流れてくる多数の加工対象物それぞれに対してリアルタイムにマーキングを行う必要がある。1000個の加工対象物それぞれに対して「0001」から「1000」までの各数値をシリアル番号としてマーキングすることを考えた場合、上記のレーザ加工方法を用いると、加工パターン決定,ホログラム作成およびホログラム転送を含む一連の手順を1000回も繰返して行うことになる。
【0008】
しかし、上記のレーザ加工方法は、加工パターン決定,ホログラム作成およびホログラム転送を含む一連の手順に要する時間が長い。特に、ホログラム作成は、FFTなどの計算が必要なGS法などのアルゴリズムが用いられるので、所要時間が長い。したがって、上記のように多数の加工対象物にそれぞれに対して順次にリアルタイムにマーキングを行う場合には、レーザ加工のスループットが低い。
【0009】
全ての加工パターンそれぞれに応じたホログラムを予め作成して記憶部により記憶しておけば、マーキングの度にホログラム作成を行う必要はなく高速化が可能ではある。例えば、図12に示されるような“BABA” なる文字列が2行2列に配置されてなる加工パターンを一括刻印する場合、このような加工パターンに対応するホログラムを予め作成して記憶部により記憶しておく。しかし、その場合には、あらゆる加工パターンに応じたホログラムを予め作成して記憶部により記憶しておく必要があるので、記憶部により予め記憶しておくべきホログラムのデータ量が膨大となる。
【0010】
加工パターンが複数の基本加工パターン(例えば英数字)の配列からなる場合には、基本加工パターンを1つずつレーザ光により刻印していくことも考えられるが、刻印すべき基本加工パターンの個数が多いと、やはりレーザ加工のスループットが低くなる。
【0011】
以上のような問題を解決するために、複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを予め作成して記憶部により記憶しておき、加工対象物に刻印すべき全体加工パターンを構成する基本加工パターンに対応する基本ホログラムを記憶部から読み出し、これら基本ホログラムを並列配置した全体ホログラムを空間光変調器に呈示させてレーザ加工(マーキング)をすることが考えられる。
【0012】
このように複数の基本ホログラムを1つの空間光変調器に並列配置して呈示させた場合には、個々の基本ホログラムのサイズが小さくなる。したがって、個々の基本ホログラムの分解能が低くなり、結果的に再生される基本加工パターンが大きくなるので(図13(a))、加工対象物の被加工面において、これら複数の基本加工パターンが互いに重なってしまうという問題が生じる(図14)。
【0013】
加工対象物の被加工面において複数の基本加工パターンが互いに重ならないようにするために、用意する基本ホログラムのサイズを十分に大きくして分解能を高めることで、再生される基本加工パターンのサイズを小さくすることが考えられる(図13(b))。しかし、複数の基本加工パターンそれぞれに相当する基本ホログラムのサイズが大型化してしまうと、空間光変調器の大型化が必然となって、レーザ加工装置の高価格化および大型化という問題の発生が不可避である。
【0014】
加工対象物の被加工面において複数の基本加工パターンが互いに重ならないようにするために、加工対象物において基本加工パターンを形成する位置を決めるためのブレーズドグレーティングを基本加工パターンに重畳させて、これを空間光変調器に呈示させることも考えられる。しかし、ブレーズドグレーティングの回折効率は、低い場合には40%程度であるので(図15)、そのため再生される基本加工パターンの光均一性がこの回折効率により制限されてしまい、高い均一性を保持することは困難である。
【0015】
また、複数個の空間光変調器を用いて、各々の空間光変調器に基本ホログラムを呈示することにすれば、各々の基本ホログラムのサイズを大きくすることができて、加工対象物の被加工面において複数の基本加工パターンが互いに重ならないようにすることができる。しかし、この場合も、複数個の空間光変調器を用いることから、レーザ加工装置の高価格化および大型化という問題の発生が不可避である。また、レーザ光源および複数個の空間光変調器の間で同期をとるシステムが必要となる。
【0016】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、高スループットで高品質のレーザ加工をすることができて装置の小型化が可能であるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することを目的とする。また、このような加工にも用いることができるレーザ照射装置およびレーザ照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工対象物に対してレーザ光を照射することにより、2以上の基本加工パターンを含む全体加工パターンで一括して加工対象物を加工するレーザ加工装置であって、(1) レーザ光を出力するレーザ光源と、(2) レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいてレーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、(3) 複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、(4) 空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を加工対象物において結像させる結像光学系と、(5) 記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器に呈示させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置では、記憶部は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶し、結像光学系は、結像位置および結像倍率が可変であり、制御部は、基本ホログラムに重畳する集光用ホログラムの焦点距離と結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行うのが好適である。
【0019】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部が空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、レーザ光源から出力されたレーザ光を空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させる入射位置調整手段と、加工対象物における結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する結像位置調整手段とを備えるのが好適である。入射位置調整手段は、レーザ光源から空間光変調器へのレーザ光の光路を調整するものであってもよいし、シャッタを利用するものであってもよい。また、結像位置調整手段は、加工対象物を移動させるものであってもよいし、結像光学系の光路を調整するものであってもよい。
【0020】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、集光用ホログラムを基本ホログラムに内接させるのが好適である。また、制御部は、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、基本ホログラムと集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、基本ホログラムおよび集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とするのも好適である。
【0021】
本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物に対してレーザ光を照射することにより、2以上の基本加工パターンを含む全体加工パターンで一括して加工対象物を加工するレーザ加工方法であって、上記のようなレーザ光源、空間光変調器、記憶部および結像光学系を用いる。そして、本発明に係るレーザ加工方法は、記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器に呈示させて、レーザ光源から出力されるレーザ光を空間光変調器に入射させ、空間光変調器から出力されるレーザ光を結像光学系により加工対象物において結像させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るレーザ加工方法は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶部に記憶させ、結像光学系として結像位置および結像倍率が可変であるものを用いて、基本ホログラムに重畳する集光用ホログラムの焦点距離と結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行うのが好適である。
【0023】
本発明に係るレーザ加工方法は、空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、レーザ光源から出力されたレーザ光を空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させ、加工対象物における結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整するのが好適である。空間光変調器へのレーザ光入射位置の調整に際しては、レーザ光源から空間光変調器へのレーザ光の光路を調整してもよいし、シャッタを利用してもよい。また、結像位置の調整に際しては、加工対象物を移動させてもよいし、結像光学系の光路を調整してもよい。
【0024】
本発明に係るレーザ加工方法では、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、集光用ホログラムを基本ホログラムに内接させるのが好適である。また、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、基本ホログラムと集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、基本ホログラムおよび集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とするのも好適である。
【0025】
本発明に係るレーザ照射装置は、2以上の基本パターンを含む全体パターンのレーザ光を対象物に対して照射するレーザ照射装置であって、(1) レーザ光を出力するレーザ光源と、(2) レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいてレーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、(3) 複数の基本パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、(4) 空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を対象物において結像させる結像光学系と、(5) 記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器に呈示させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るレーザ照射装置では、記憶部は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶し、結像光学系は、結像位置および結像倍率が可変であり、制御部は、基本ホログラムに重畳する集光用ホログラムの焦点距離と結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行うのが好適である。
【0027】
本発明に係るレーザ照射装置では、制御部が空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、レーザ光源から出力されたレーザ光を空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させる入射位置調整手段と、対象物における結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する結像位置調整手段とを備えるのが好適である。
【0028】
本発明に係るレーザ照射装置では、制御部は、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、集光用ホログラムを基本ホログラムに内接させるのが好適である。また、制御部は、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、基本ホログラムと集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、基本ホログラムおよび集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とするのも好適である。
【0029】
本発明に係るレーザ照射方法は、2以上の基本パターンを含む全体パターンのレーザ光を対象物に対して照射するレーザ照射方法であって、上記のようなレーザ光源、空間光変調器、記憶部および結像光学系を用いる。そして、本発明に係るレーザ照射方法は、記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器に呈示させて、レーザ光源から出力されるレーザ光を空間光変調器に入射させ、空間光変調器から出力されるレーザ光を結像光学系により対象物において結像させることを特徴とする。
【0030】
本発明に係るレーザ照射方法は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶部に記憶させ、結像光学系として結像位置および結像倍率が可変であるものを用いて、基本ホログラムに重畳する集光用ホログラムの焦点距離と結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行うのが好適である。
【0031】
本発明に係るレーザ照射方法は、空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、レーザ光源から出力されたレーザ光を空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させ、対象物における結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整するのが好適である。
【0032】
本発明に係るレーザ照射方法では、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、集光用ホログラムを基本ホログラムに内接させるのが好適である。また、基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成する際に、基本ホログラムと集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、基本ホログラムおよび集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とするのも好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高スループットで高品質のレーザ加工をすることができ、装置の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係るレーザ加工装置1の構成を示す図である。
【図2】本実施形態において基本ホログラムおよび集光用ホログラムを準備する過程を説明するフローチャートである。
【図3】本実施形態において基本ホログラムおよび集光用ホログラムを用いてレーザ加工を行う過程を説明するフローチャートである。
【図4】基本ホログラムの一例を示す図である。
【図5】基本ホログラムが2行2列に配置された一例を示す図である。
【図6】集光用ホログラムが2行2列に配置された一例を示す図である。
【図7】全体ホログラムの一例を示す図である。
【図8】加工対処物91におけるレーザ加工(マーキング)の一例を示す図である。
【図9】フレネルレンズの焦点距離と基本加工パターンのサイズとの関係を示すグラフである。
【図10】加工対処物91における全体加工パターンの一例を示す図である。
【図11】位相変調型の空間光変調器を用いたレーザ加工方法を説明するフローチャートである。
【図12】加工パターンの一例を示す図である。
【図13】基本ホログラムのサイズと基本加工パターンのサイズとの関係を説明する図である。
【図14】加工対象物の被加工面において複数の基本加工パターンが互いに重なっている様子を示す図である。
【図15】ブレーズドグレーティングの回折効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置1の構成を示す図である。この図に示されるレーザ加工装置1は、可動ライン90上を移動している複数の加工対象物91に対して順次にレーザ光を集光照射してマーキング等のレーザ加工をするのに好適に用いられる装置であって、レーザ光源10、スペイシャルフィルタ11、コリメートレンズ12、ミラー13、ミラー14、空間光変調器20、駆動部21、制御部22、結像光学系30およびシャッタ40を備える。なお、可動ライン90に替えて、加工対象物91を2次元的に移動させることができるステージが用いられてもよい。
【0037】
レーザ光源10は、加工対象物91に照射されるべきレーザ光を出力するものであり、好適には、フェムト秒レーザ光源、Nd:YAGレーザ光源、Nd:YLFレーザ光源など、紫外領域のパルスレーザ光を出力する光源である。このレーザ光源10から出力されたレーザ光は、スペイシャルフィルタ11を経た後、コリメートレンズ12によりコリメートされ、ミラー13およびミラー14により反射されて、空間光変調器20に入力される。ミラー13またはミラー14は、ガルバノスキャナなどの機構を有すものであってもよい。
【0038】
空間光変調器20は、位相変調型のものであって、レーザ光源10から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいてレーザ光の位相を変調するホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する。この空間光変調器20において呈示される位相ホログラムは、数値計算により求められたホログラム(CGH: Computer Generated Hologram)であるのが好ましい。
【0039】
この空間光変調器20は、反射型のものであってもよいし、透過型のものであってもよい。反射型の空間光変調器20としては、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)型、MEMS(MicroElectro Mechanical Systems)型および光アドレス型の何れであってもよい。また、透過型の空間光変調器20としてはLCD(Liquid Crystal Display)等であってもよい。図1では、空間光変調器20として反射型のものが示されている。
【0040】
駆動部21は、空間光変調器20の2次元配列された複数の画素それぞれにおける位相変調量を設定するものであり、その画素毎の位相変調量設定のための信号を空間光変調器20に与える。駆動部21は、空間光変調器20の2次元配列された複数の画素それぞれにおける位相変調量を設定することで、空間光変調器20にホログラムを呈示させる。
【0041】
結像光学系30は、空間光変調器20の後段に設けられていて、空間光変調器20において画素毎に位相変調されて出力されたレーザ光を入力して、そのレーザ光を加工対象物91において結像させる。特に、この結像光学系30は、テレセントリック光学系をなすレンズ31およびレンズ32を含む。
【0042】
シャッタ40は、加工対象物91へのレーザ光の照射を許可または禁止するものである。シャッタ40は、図1に示される構成では結像光学系30の後段に設けられているが、光路上の任意の位置に配置され得る。シャッタ40は、レーザ光源10および空間光変調器20の双方または何れか一方と同期させることが好ましい。
【0043】
制御部22は、例えばコンピュータで構成され、駆動部21の動作を制御することで、駆動部21から空間光変調器20へホログラムを書き込ませる。このとき、制御部22は、空間光変調器20から出力されたレーザ光を結像光学系30により複数個の結像位置に集光させるホログラムを空間光変調器20に呈示させる。
【0044】
特に、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ光源10から出力されて空間光変調器20により位相変調されたレーザ光を加工対象物91に対して照射することにより、2以上の基本加工パターンを含む全体加工パターンで一括して加工対象物91を加工する。その為に、駆動部21は記憶部21Aを有している。この記憶部21Aは、複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する。
【0045】
また、制御部22は、記憶部21Aにより記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを空間光変調器20に呈示させる。
【0046】
例えば、基本加工パターンは英数字であり、全体加工パターンは複数の基本加工パターン(英数字)が1次元または2次元に配列された文字列である。基本ホログラムは、基本加工パターンに対応して予め生成されて記憶部21Aにより記憶されている。集光用ホログラムも、予め生成されて記憶部21Aにより記憶されている。全体ホログラムは、基本ホログラムおよび集光用ホログラムに基づいて構成される。この全体ホログラムが呈示された空間光変調器20にレーザ光が入射して位相変調され、その位相変調後のレーザ光が結像光学系30を経て加工対象物91に照射されると、幾つかの基本加工パターンから構成される全体加工パターンが加工対象物91において生成される。
【0047】
図2は、本実施形態において基本ホログラムおよび集光用ホログラムを準備する過程を説明するフローチャートである。このフローチャートに示されるように、刻印する可能性がある複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムが作成され、また、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムが作成される。必要に応じて、これら基本ホログラムは、再生テストされて、フィードバックが行われて修正される。そして、これら基本ホログラムおよび集光用ホログラムは記憶部21Aにより記憶される。
【0048】
なお、基本ホログラムを作成するアルゴリズムであるGS法が初期位相としてランダム位相を用いており、このランダム位相によっては、作成された基本ホログラムの性能が著しく低くなる場合がある。また、シミュレーションと実験光学系(例えば空間光変調器20やレーザ光源10)との間には誤差がある場合もある。これらを改善するためにフィードバックなどの補正を行うことによって、より高品位な基本ホログラムを作成することができる。
【0049】
また、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムの焦点距離および配置位置は、再生条件に応じて適切に設定され予め調整される。集光用ホログラムの半径は、基本ホログラムに内接する程度であるのが好適である。また、基本ホログラムおよび集光用ホログラムは何れも、位相情報が失われない程度に任意の形状であってもよく、矩形や円形、その他の形状であってもよい。
【0050】
図3は、本実施形態において基本ホログラムおよび集光用ホログラムを用いてレーザ加工を行う過程を説明するフローチャートである。このフローチャートに示されるように、加工時には、制御部22により、加工対象物91における全体加工パターンに基づいて必要な基本加工パターンおよび配置情報が得られ、これらに基づいて基本加工パターンに対応する基本ホログラムが配置され、さらに集光用ホログラムが合成されて、合成ホログラムが作成される。そして、この合成ホログラムが空間光変調器20に呈示され、レーザ光源10からレーザ光が出力されて、加工対象物91が加工(マーキング)される。
【0051】
このとき作成される全体ホログラムにおいて、基本ホログラムと集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、および、基本ホログラムおよび集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調となっているのが好適である。このようにすることで、これらの領域から出力されるレーザ光は、結像光学系30により集光されないので、加工に寄与しない。
【0052】
次に、基本ホログラムおよび集光用ホログラムに基づく全体ホログラムの作成およびレーザ加工の一例について、図4〜図8を用いて説明する。ここでは、図12に示されるような“BABA” なる文字列が2行2列に配置されてなる加工パターンを一括刻印する場合について説明する。この場合に、予め作成されて記憶部21Aにより記憶される基本ホログラムとしては、少なくとも、基本加工パターン”A”に対応する基本ホログラム(図4(a))、および、基本加工パターン”B” に対応する基本ホログラム(図4(b))が含まれる。
【0053】
基本加工パターン ”A” に対応する基本ホログラム(図4(a))、および、基本加工パターン ”B”に対応する基本ホログラム(図4(b))が、図12に示されるような“BABA”なる文字列が2行2列に配置されてなる加工パターンに対応して、2行2列に配置される(図5)。また、この配置に対応して、4つの集光用ホログラムも2行2列に配置される(図6)。そして、4つの基本ホログラムが2行2列に配置されたもの(図5)と、4つの集光用ホログラムが2行2列に配置されたもの(図6)とが重畳されて、全体ホログラムが作成される(図7)。
【0054】
このようにして作成された全体ホログラム(図7)が空間光変調器20に呈示される。そして、レーザ光源10から出力されたレーザ光は、スペイシャルフィルタ11,コリメートレンズ12,ミラー13およびミラー14を経て空間光変調器20に入力され、この空間光変調器20において空間的に位相変調される。空間光変調器20において位相変調されたレーザ光は、集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置したテレセントリック光学系を含む結像光学系30により加工対象物91に集光される。このようにして、加工対象物91において高品質のレーザ加工(マーキング)が行われる(図8)。
【0055】
本実施形態では、例えば、基本加工パターンが大英字または数字からなる場合には、基本加工パターンは36とおりであるので、36個の基本ホログラムおよび1個の集光用ホログラムを準備するだけで充分である。したがって、従来例と比較して、記憶部21Aが記憶すべきデータの量は少ない。これら36個の基本加工パターンのうちの何れかの加工パターンが配列されてなる全体加工パターンで加工対象物91を加工する場合、36個の基本ホログラムのうちの何れかの基本ホログラムを選択して並列配置すればよい。したがって、本実施形態の加工段階では、従来例では必要であった加工対象物毎の加工パターン作成およびホログラム作成が不要となる。また、全体加工パターンに含まれる基本加工パターンの個数が増減しても、最終的に出力される全体ホログラムのサイズが固定であるので弊害とならない。
【0056】
また、本実施形態では、複数の基本加工パターンに対応する複数の基本ホログラムを空間光変調器20に呈示させるために、基本ホログラムのサイズが小さいものとなっており、基本ホログラムの分解能低下に伴う再生像の拡大を抑制するための手段として、焦点距離の短い集光用ホログラムを重畳している。このとき、空間光変調器20の表面付近に再生像が出現するので結像光学系30を用いて、加工対象物91において複数の基本加工パターンが互いに重ならないようにしている。
【0057】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、1個の空間光変調器20に複数の基本ホログラムを呈示させるので、小型化が可能である。また、基本ホログラムのサイズが小さいので、駆動部21の記憶部21Aに格納することも容易である。このとき制御部22から送信されてくるデータは基本加工パターンの種類および配置位置の情報に限定されるので、これらの情報の転送速度の大幅な向上が期待できる。
【0058】
本実施形態に係るレーザ加工装置1では、記憶部21Aは、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶するのが好適であり、結像光学系30は、結像位置および結像倍率が可変であるのが好適である。さらに、制御部22は、基本ホログラムに重畳する集光用ホログラムの焦点距離と結像光学系の結像位置とを互いに関連付けて制御を行うのが好適である。このように焦点距離が異なる複数の集光用ホログラムを用意して、基本加工パターンに重畳する集光用ホログラムの焦点距離を変更することにより、加工対象物91における基本加工パターンのサイズを調整することができる(図9)。このとき、空間光変調器20の表面上の結像位置も大きく変わる場合があるので、そのときは結像光学系30の結像位置および結像倍率も調整する必要がある。また、結像光学系30の拡大率・縮小率を変更することにより、加工対象物91における全体加工パターンのサイズを変更することができる。
【0059】
このような特性を利用すると、レーザマーキングのような横長の全体加工パターンでは、小型の空間光変調器20でも、複数の基本ホログラムからなる全体ホログラムを上下に多段表示することも可能である。例えば、図10に示されるような全体加工パターンを考えると、この全体加工パターンは、第1行に製造年月日を表す8個の基本加工パターンと、第2行にシリアル番号を表す8個の基本加工パターンとを含んでいる。各々の基本加工パターンに対応する基本ホログラムが64ピクセル×64ピクセルで構成されるとすると、全体加工パターンに対応する全体ホログラムは512ピクセル×128ピクセルで構成される。空間光変調器20が有する画素数を512ピクセル×512ピクセルとした場合に、この空間光変調器20において上下に4段の全体ホログラムを配置することができる。
【0060】
既に説明したとおり、本実施形態では、基本ホログラムのサイズだけでなくフレネルレンズパターンの焦点距離により、加工対象物91における基本加工パターンのサイズが可変となっているので、基本ホログラムのサイズを従来例の1/4程度とすることができる。このように基本ホログラムのサイズを小さくすることができるので、1個の空間光変調器20に呈示することができる基本ホログラムの個数を増やすことができる。
【0061】
したがって、空間光変調器20に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、機械的な手段(例えばガルバノスキャナ機構を有するミラー13またはミラー14)による空間光変調器20へのレーザ入射光位置の調整、もしくは、レーザ光源10と空間光変調器20との間に設けられたシャッタの利用、または、可動ライン90による加工対象物91の位置の調整もしくは結像光学系30の光路の調整により、空間光変調器20に入射するレーザ光と加工対象物91に照射されるレーザ光とを機械的に走査することで、1つの空間光変調器20で擬似的に複数個の空間光変調器を設置したことと同等の効果を期待することができ、段数に応じた個数(上記の例では4個)の空間光変調器の擬似的な応答速度を改善することができる。以上のように、空間光変調器20が持つ潜在的な応答速度に対する加工速度を大幅に向上することが可能である。
【0062】
本実施形態では、結像光学系30を用いているので、フーリエ型で懸念されるフーリエレンズによる0次光の集光がなく、0次光はバックグラウンドに広がる。この場合、信号雑音比は劣化するが、レーザマーキング加工閾値程度にまで雑音は乗らないことから、本実施形態によるレーザ加工は可能である。また、加工対象物91の加工領域の中央部に0次光が存在しないので、0次光遮断用マスクを用いることなく、空間光変調器20の全面を使用することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ブレーズトグレーティングを採用するのではなく、フレネルレンズパターンによる集光作用を用いているので、空間光変調器20に入射されたレーザ光の全光量が加工パターンの形成に寄与することができる。したがって、空間光変調器20全面に渡って一定光量のレーザ光を入射することで、光均一性が高いレーザ加工をすることができる。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、基本ホログラムおよび集光用ホログラムを記憶する記憶部は、上記実施形態のように駆動部21に設けられてもよいし、制御部22に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…レーザ加工装置、10…レーザ光源、11…スペイシャルフィルタ、12…コリメートレンズ、13,14…ミラー、20…空間光変調器、21…駆動部、21A…記憶部、22…制御部、30…結像光学系(テレセントリック光学系)、31,32…レンズ、40…シャッタ、90…可動ライン、91…加工対象物。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に対してレーザ光を照射することにより、2以上の基本加工パターンを含む全体加工パターンで一括して前記加工対象物を加工するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいて前記レーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、
複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、
前記空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を前記加工対象物において結像させる結像光学系と、
前記記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを前記空間光変調器に呈示させる制御部と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記記憶部は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶し、
前記結像光学系は、結像位置および結像倍率が可変であり、
前記制御部は、前記基本ホログラムに重畳する前記集光用ホログラムの焦点距離と前記結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御部が前記空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させる入射位置調整手段と、前記加工対象物における前記結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する結像位置調整手段とを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記集光用ホログラムを前記基本ホログラムに内接させる、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記基本ホログラムと前記集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、前記基本ホログラムおよび前記集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とする、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
加工対象物に対してレーザ光を照射することにより、2以上の基本加工パターンを含む全体加工パターンで一括して前記加工対象物を加工するレーザ加工方法であって、
レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいて前記レーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、
複数の基本加工パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、
前記空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を前記加工対象物において結像させる結像光学系と、
を用い、
前記記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを前記空間光変調器に呈示させて、前記レーザ光源から出力されるレーザ光を前記空間光変調器に入射させ、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を前記結像光学系により前記加工対象物において結像させる、
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項7】
互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを前記記憶部に記憶させ、
前記結像光学系として結像位置および結像倍率が可変であるものを用いて、
前記基本ホログラムに重畳する前記集光用ホログラムの焦点距離と前記結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行う、
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させ、
前記加工対象物における前記結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する、
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記集光用ホログラムを前記基本ホログラムに内接させる、ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記基本ホログラムと前記集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、前記基本ホログラムおよび前記集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とする、ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
2以上の基本パターンを含む全体パターンのレーザ光を対象物に対して照射するレーザ照射装置であって、
レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいて前記レーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、
複数の基本パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、
前記空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を前記対象物において結像させる結像光学系と、
前記記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを前記空間光変調器に呈示させる制御部と、
を備えることを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項12】
前記記憶部は、互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを記憶し、
前記結像光学系は、結像位置および結像倍率が可変であり、
前記制御部は、前記基本ホログラムに重畳する前記集光用ホログラムの焦点距離と前記結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行う、
ことを特徴とする請求項11に記載のレーザ照射装置。
【請求項13】
前記制御部が前記空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させる入射位置調整手段と、前記対象物における前記結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する結像位置調整手段とを備える、
ことを特徴とする請求項11に記載のレーザ照射装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記集光用ホログラムを前記基本ホログラムに内接させる、ことを特徴とする請求項11に記載のレーザ照射装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記基本ホログラムと前記集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、前記基本ホログラムおよび前記集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とする、ことを特徴とする請求項11に記載のレーザ照射装置。
【請求項16】
2以上の基本パターンを含む全体パターンのレーザ光を対象物に対して照射するレーザ照射方法であって、
レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を入力し、2次元配列された複数の画素それぞれにおいて前記レーザ光の位相を変調する全体ホログラムを呈示して、その位相変調後のレーザ光を出力する位相変調型の空間光変調器と、
複数の基本パターンそれぞれに対応する複数の基本ホログラムを記憶するとともに、フレネルレンズパターンに相当する集光用ホログラムを記憶する記憶部と、
前記空間光変調器に呈示される集光用ホログラムの焦点距離に結像関係が成立するように配置されたテレセントリック光学系を含み、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を入力して、そのレーザ光を前記対象物において結像させる結像光学系と、
を用い、
前記記憶部により記憶された複数の基本ホログラムのうちから選択した2以上の基本ホログラムを並列配置し、その並列配置した各基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して全体ホログラムを構成し、その構成した全体ホログラムを前記空間光変調器に呈示させて、前記レーザ光源から出力されるレーザ光を前記空間光変調器に入射させ、前記空間光変調器から出力されるレーザ光を前記結像光学系により前記対象物において結像させる、
ことを特徴とするレーザ照射方法。
【請求項17】
互いに焦点距離が異なる複数のフレネルレンズパターンそれぞれに相当する複数の集光用ホログラムを前記記憶部に記憶させ、
前記結像光学系として結像位置および結像倍率が可変であるものを用いて、
前記基本ホログラムに重畳する前記集光用ホログラムの焦点距離と前記結像光学系の結像位置または結像倍率とを互いに関連付けて制御を行う、
ことを特徴とする請求項16に記載のレーザ照射方法。
【請求項18】
前記空間光変調器に複数の全体ホログラムを並列配置して呈示させ、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記空間光変調器に呈示された複数の全体ホログラムに対して順次に入射させ、
前記対象物における前記結像光学系によるレーザ光の結像の位置を調整する、
ことを特徴とする請求項16に記載のレーザ照射方法。
【請求項19】
前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記集光用ホログラムを前記基本ホログラムに内接させる、ことを特徴とする請求項16に記載のレーザ照射方法。
【請求項20】
前記基本ホログラムに前記集光用ホログラムを重畳して前記全体ホログラムを構成する際に、前記基本ホログラムと前記集光用ホログラムとが互いに重ならない領域、ならびに、前記基本ホログラムおよび前記集光用ホログラムの何れもが存在しない領域では、ランダムな位相変調とする、ことを特徴とする請求項16に記載のレーザ照射方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−63467(P2013−63467A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−239014(P2012−239014)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2008−256629(P2008−256629)の分割
【原出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】