説明

レーザ加工装置

【解決手段】 レーザ加工装置1は、噴射孔14aを有する噴射ノズル14と、液体を加圧して供給する液体供給手段5と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器4と、該レーザ発振器4から発振されたレーザ光Lを集光する集光レンズ7とを備えており、上記液体供給手段5から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱Cを形成するとともに、上記集光レンズによって集光したレーザ光を上記液柱により導光して、被加工物2の加工を行うようになっている。
さらにレーザ加工装置1は、上記噴射ノズル14より噴射される液体を帯電させる帯電電極18と、上記噴射ノズルと被加工物との間に設けられるとともに、上記帯電された液体からなる液柱Cに作用して液柱Cの径を縮小させる吸引電極19とを備えている。
【効果】 被加工物の位置での液柱の径を細くすることができ、またアライメント調整を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に関し、詳しくは液体供給手段から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱を形成するとともに、集光レンズによって集光したレーザ光を上記液柱により導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体供給手段から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱を形成するとともに、集光レンズによって集光したレーザ光を上記液柱により導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置が知られている。
このようなレーザ加工装置では、上記液柱の径が加工幅となるため、より微細な加工を行うためには、この液柱の径を細くすることが求められる。
そこで上記レーザ加工装置として、上記噴射ノズルと被加工物における加工部分とを真空チャンバー内に収容して、液柱の周囲を真空状態とすることにより径の細い液柱であっても安定した状態を長く保つようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−226417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1の構成では、上記真空状態を形成するためのチャンバーが必要となるため、レーザ加工装置の構成が複雑になるという問題があり、また噴射ノズルから径の細い液柱を噴射しようとすると、上記液柱の内部にレーザ光を導光するためのアライメント調整を精密に行わなければならず、仮に光軸がずれた場合にはレーザ光によって噴射ノズルが損傷してしまうという問題が発生する。
このような問題に鑑み、本発明は被加工物の位置での液柱の径を細くするとともにアライメント調整が容易なレーザ加工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明にかかるレーザ加工装置は、噴射孔を有する噴射ノズルと、液体を加圧して供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズとを備え、
上記液体供給手段から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱を形成するとともに、上記集光レンズによって集光したレーザ光を上記液柱により導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置において、
上記噴射ノズルより噴射される液体を帯電させる帯電電極と、上記噴射ノズルと被加工物との間に設けられるとともに、上記帯電された液体からなる液柱に作用して液柱の径を縮小させる吸引電極とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記噴射ノズルより噴射される液体を帯電させると、上記吸引電極との間にクーロン力が発生することから、上記液柱は吸引電極によって吸引されることとなり、液柱が噴射ノズルから被加工物に到達するまでの間にその径が縮小される。
その結果、被加工物には縮径された液柱によりレーザ光が導光されるため、加工幅を狭くすることができ、また液柱は被加工物の位置で細くなることから、この液柱にレーザ光を導光するためのアライメント調整を容易に行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例にかかるレーザ加工装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1はレーザ加工装置1を示し、被加工物2を載置する加工テーブル3と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器4と、液体を加圧して供給する液体供給手段5と、上記液体供給手段から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱Cを形成するとともに、上記レーザ光Lを集光して上記液柱Cにより導光させるようにした加工ヘッド6とを備えている。
本実施例において、上記被加工物2は板厚の薄い半導体ウエハであって、この他にもエポキシ樹脂板や樹脂と金属からなる複合材料なども切断加工することができる。また、切断加工のほかにも、被加工物2の表面に対して溝加工を行うことも可能である。
上記加工テーブル3は従来公知であるので詳細な説明をしないが、上記被加工物2を加工ヘッド6に対して水平方向に移動させるようになっており、また上記加工ヘッド6は図示しない昇降手段によって垂直方向に移動するようにされている。
また上記レーザ発振器4は固体レーザであり、加工に応じてCW発振又はパルス発振が可能であり、またその出力やパルスの発振周期を適宜調整できるようになっている。
上記液体供給手段5は液体としての純水を加圧して上記加工ヘッド6に送液するようになっている。ここで、上記純水は電気伝導度が低く、通常の水よりも帯電しやすいことが知られている。
そして上記加工ヘッド6の上方には、上記レーザ発振器4より照射されたレーザ光Lを導光する図示しない反射ミラーと、該レーザ光Lを加工ヘッド6の内部に集光する集光レンズ7とが設けられている。
【0009】
上記加工ヘッド6は、中空筒状のハウジング11と、該ハウジング11に固定されてレーザ光Lを透過させる石英ガラス12と、該石英ガラス12よりも被加工物2側に設けられたカライドノズル13と、カライドノズル13よりも被加工物2側に設けられて上記液体供給手段5から供給された液体を噴射させて液柱Cを形成する噴射ノズル14と、これらカライドノズル13および噴射ノズル14をハウジング11に固定するノズルホルダ15とを備えている。
また上記加工ヘッド6の内部には、上記液体供給手段5より供給される液体を流通させる液体通路16が形成されており、この液体通路16は上記液体供給手段5に接続されている。
上記ハウジング11の中央には上下に貫通する内部空間11aが穿設され、上記内部空間11aの上部には上記石英ガラス12が液密に嵌合し、下部には上記ノズルホルダ15が液密に嵌合している。
上記ノズルホルダ15はリング状の部材であって、上記ハウジング11の下面に螺合されるリング状の連結手段17によって固定され、その上部には上記カライドノズル13が嵌合し、該カライドノズル13の下部には上記噴射ノズル14が嵌合している。
【0010】
上記カライドノズル13の中央には下方に向けて縮径するテーパ状の反射孔13aが形成されており、この反射孔13aの内面にはレーザ光Lを反射させるためのメッキ加工や鏡面加工が施されている。
上記噴射ノズル14は上記カライドノズル13の下方に若干離隔した位置に設けられており、その中央には被加工物2に向けて拡径するテーパ状の噴射孔14aが形成されている。
そして上記噴射孔14aにおけるカライドノズル13側の径は、上記反射孔13aにおける噴射ノズル14側の径よりも小径となっており、本実施例では反射孔13aにおける噴射ノズル14側の開口部を40μmとし、噴射孔14aにおけるカライドノズル13側の開口部を50μmとしている。
上記液体通路16は、上記ハウジング11の内部空間11aにおける上記石英ガラス12と噴射ノズル14とに挟まれた空間と、該内部空間11aより側方に分岐した分岐通路16aとによって構成され、上記液体供給手段5からの液体は該分岐通路16aを介して内部空間11aへと流入するようになっている。
【0011】
そして本実施例のレーザ加工装置1においては、上記噴射ノズル14より噴射される液体の液柱Cの径を細くするため、上記噴射ノズル14より噴射される液体を帯電させる帯電電極18と、上記噴射ノズル14と被加工物2との間に設けられた吸引電極19と、これら帯電電極18および吸引電極19に電圧を印加する電源20とを備えている。
本実施例において、上記加工ヘッド6を構成する上記ハウジング11、ノズルホルダ15、カライドノズル13、噴射ノズル14は、それぞれ導電性の材料によって製造されており、上記電源20を上記ハウジング11に接続することで、上記ハウジング11、ノズルホルダ15、カライドノズル13、噴射ノズル14を一体的に帯電電極18として利用可能となっている。
上記吸引電極19は導電性を有する金属によって製造されたリング状の部材となっており、吸引電極19はセラミックなどからなるリング状の絶縁部材21によって上記帯電電極18より所定距離下方に固定され、さらに該吸引電極19の中央には上記液柱Cを通過させるための貫通孔19aが設けられている。
上記電源20は上記帯電電極18に正の電圧を印加するように接続され、また上記吸引電極19に負の電圧を印加するように接続されている。つまり、上記帯電電極18は正の電極に、吸引電極19は負の電極にそれぞれ該当するようになっている。
【0012】
上記構成を有するレーザ加工装置1によれば、最初に上記液体供給手段5が上記加工ヘッド6の内部に形成された液体通路16に液体としての純水を供給すると、液体通路16の内部が純水によって充満され、上記噴射ノズル14の噴射孔14aからは液体が噴射されることにより液柱Cが形成される。
この状態で上記電源20が上記帯電電極18としてのハウジング11に正の電圧を印加すると、このハウジング11に接しているノズルホルダ15、カライドノズル13、噴射ノズル14が正の電極となり、これにより上記液体通路16の内部を流通する純水に正の電荷が帯電することとなる。
また、上記純水がカライドノズル13、噴射ノズル14の内部を流通する間に、純水とこれらノズルとの間で流動摩擦が発生するため、この摩擦によっても上記純水に正の電荷が帯電するようになっている。
一方、上記吸引電極19には電源20によって負の電極となっていることから、上記噴射ノズル14より噴射される正の電荷が帯電した純水と上記吸引電極19との間にはクーロン力が作用することとなる。
その結果、噴射ノズル14から噴射された液体による液柱Cの外周部分の速度が増速され、液柱Cは被加工物2側において小径となるようにテーパ状に引き伸ばされることとなる。
例えば、上記噴射ノズル14における噴射孔14aの径を50μmとした場合、上記被加工物2に到達した液柱Cの径を10μmまで縮径することが可能となっている。
また、上記噴射ノズル14の噴射孔14aは被加工物2に向けて拡径しており、またノズルホルダ15における噴射ノズル14の下方側には上記噴射孔14aに連続するテーパ状の貫通孔が形成されている。
このため、上記液柱Cの周囲にはエアポケットが形成され、液柱Cにおける液体の流速と周囲空気の流れとによる相対速度の相違を小さくし、液柱Cの流れを安定させるようにしている。
【0013】
そして、上記液柱Cが噴射された状態で上記レーザ発振器4がレーザ光Lを照射すると、レーザ光Lは図示しない反射ミラーで反射した後上記集光レンズ7によって集光され、上記石英ガラス12を透過して上記カライドノズル13近傍に集光される。
上記カライドノズル13では、その内部に形成された上記反射孔13aにレーザ光Lの一部は反射し、反射した一部のレーザ光Lと反射しないで通過したレーザ光Lとは、該反射孔13aの下部から上記噴射ノズル14における噴射孔14aの上部に入射するようになっている。
なお、上記レーザ光Lを必ずしも反射孔13aで反射させる必要はなく、集光レンズ7が直接上記噴射ノズル14の噴射孔14aの内部にレーザ光Lを集光するようにしてもよい。
このとき、上記反射孔13aにおける噴射ノズル14側の径は、上記噴射孔14aにおけるカライドノズル13側の径よりも小径となっているため、反射孔13aを通過したレーザ光Lは噴射ノズル14の上面に照射されないようになっており、噴射ノズル14がレーザ光Lによって損傷しないようになっている。
そして、集光されて上記液柱Cの内部に入射されたレーザ光Lは、該液柱Cを構成する液体とその外部の空気との境界面で反射を繰り返しながら被加工物2まで導光され、上記加工テーブル3が被加工物2を水平に移動させることで、被加工物2に対して所要の加工が行われる。
このとき、液柱Cは被加工物2側において小径となるように形成されていることから、レーザ光Lもこの液柱Cの径に従って徐々に照射範囲が狭くなった状態で被加工物2に照射される。
【0014】
上記実施例によれば、上記帯電電極18と吸引電極19により上記液体を帯電させることで、噴射ノズル14より噴射された液柱Cを被加工物2側が細くなるように形成することができる。
その結果、上記レーザ光Lによる被加工物2への照射範囲を狭くすることができるため、例えば上記被加工物2を切断する際における加工幅を細くすることができ、より微細な加工が可能となる。またレーザ光Lによる被加工物2への照射範囲が絞られるため、レーザ発振器4の出力を上げずに該照射範囲におけるレーザ光Lの強度を高くし、高速加工を行うことができる。
また上記液柱Cを細くするために、上記特許文献1のような真空状態を形成するための設備が不要となることから、レーザ加工装置1の装置の構成を簡易なものとすることができる。
さらに、上記液柱Cにおける被加工物2側の径を10μmまで縮小して細くすることができる一方、噴射ノズル14側の径は50μmと相対的に大径であるため、上記レーザ光Lを液柱Cに入射させるためのアライメント調整は容易であり、加工ヘッド6における噴射ノズル14とレーザ発振器4との位置あわせの際の余裕度を十分に確保することが可能となっている。
そして上記帯電電極18については、上記加工ヘッド6を構成するハウジング11、ノズルホルダ15、噴射ノズル14を導電性の材料として、これを電極とすればよいため、従来のレーザ加工装置1の構成を流用することが可能である。
【0015】
なお、上記実施例では液体として帯電しやすい純水を使用しているが、例えば導電性が高く帯電しにくい塩水等の電解液の場合であっても、クーロン力による吸引作用は低くなるものの、全く作用しないわけではなく、むしろ電解液の濃度を変えて電気伝導度を変えることにより、クーロン力の作用を可変させて液柱Cの径を所要の径にすることが可能である。
この場合における帯電電極18および吸引電極19の極性は、上記実施例と異なり、帯電電極18を負の電極、吸引電極19を正の電極とすることもできる。
【符号の説明】
【0016】
1 レーザ加工装置 4 レーザ発振器
5 液体供給手段 6 加工ヘッド
14 噴射ノズル 14a 噴射孔
18 帯電電極 19 吸引電極
20 電源 21 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射孔を有する噴射ノズルと、液体を加圧して供給する液体供給手段と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズとを備え、
上記液体供給手段から供給された液体を噴射ノズルから噴射させて液柱を形成するとともに、上記集光レンズによって集光したレーザ光を上記液柱により導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置において、
上記噴射ノズルより噴射される液体を帯電させる帯電電極と、上記噴射ノズルと被加工物との間に設けられるとともに、上記帯電された液体からなる液柱に作用して液柱の径を縮小させる吸引電極とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
上記噴射ノズルを保持する加工ヘッドの内部に、上記液体供給手段から噴射ノズルへと液体を供給する液体通路を形成するとともに、上記加工ヘッドを導電性材料から構成して帯電電極としたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
上記吸引電極は、上記液柱が通過する貫通孔が形成されるとともに、上記加工ヘッドにおける上記噴射ノズルの下方に絶縁部材を介して固定されることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
上記液体を純水とするとともに、上記帯電電極を正の電極とし、上記吸引電極を負の電極とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記液体を電解液とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−115865(P2012−115865A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266881(P2010−266881)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】