説明

レーザ加工装置

【課題】レーザ発振器の劣化度合いの確認を容易に行うことが可能なレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】制御回路は、レーザ出力確認信号の入力に基づき、レーザ出力測定部にてレーザ光の出力を測定させ、その測定結果に基づくレーザ出力情報(レーザ出力値P及び割合R)を現在の時刻に関する日付データtdと対応付けて複合出力データとして取得する。そして、制御回路は、測定時期の異なる2つの複合出力データをコンソール4の同一画面上に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置は、例えば特許文献1に示すように、レーザ光を出射するレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されるレーザ光の方向を変更するための少なくとも1つの走査手段と、走査手段からのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズとを備える。そして、予め設定されるレーザ加工情報に基づいて、走査手段によりレーザ光の方向を変更し、被加工対象物上に照射されたレーザスポットを走査することで、被加工対象物に対する加工を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−239758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなレーザ加工装置は、レーザ発振器の経年劣化によってレーザ出力の低下が起こり、修理や交換等の処置が必要となってくるが、レーザ発振器の劣化度合いの確認することが困難であり、その点においてなお、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、レーザ発振器の劣化度合いの確認を容易に行うことが可能なレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射されるレーザ光の方向を変更するための走査手段と、前記走査手段からのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズとを備え、予め設定されるレーザ加工情報に基づいて、前記走査手段によりレーザ光の方向を変更し、前記被加工対象物上に照射されたレーザスポットを走査することで、前記被加工対象物に対する加工を行うレーザ加工装置であって、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の出力を測定するレーザ測定手段と、レーザ出力確認信号の入力に基づき、前記レーザ測定手段にてレーザ光の出力を測定させ、その測定結果に基づくレーザ出力情報を現在の時刻に関する時刻データと対応付けて複合出力データとして取得する制御手段と、前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データと予め設定されたレーザ出力の最低閾値とを同一画面上に表示する表示手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、表示手段の同一画面上に表示された測定時期の異なる少なくとも2つの複合出力データ(時刻データとレーザ出力情報とが対応付けられたデータ)と予め設定されたレーザ出力の最低閾値とから、レーザ発振器の劣化度合いの確認を容易に行うことが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ出力情報は、予め設定されたレーザ出力の最低閾値に対する前記レーザ光の出力値の割合を含むことを特徴とする。
【0009】
この発明では、レーザ発振器の劣化度合いの確認をより容易に行うことが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データから得られる関数に基づき、前記レーザ光の出力値が予め設定されたレーザ出力の最低閾値に達する予測時期を算出する算出手段を備え、前記表示手段は、前記予測時期に基づく寿命情報を表示することを特徴とする。
【0010】
この発明では、表示手段にて表示されるレーザ出力に関する情報がより詳細なものとなるため、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のレーザ加工装置において、前記寿命情報は、現在の時刻から前記予測時期に達するまでの残り時間を含むことを特徴とする。
この発明では、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、ユーザの操作に基づき前記最低閾値を変更する閾値設定手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、ユーザが最低閾値を変更できるため、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のレーザ加工装置において、前記閾値設定手段は、ユーザによる入力値が予め設定された所定範囲から外れた値の場合に、その入力値への変更を受け付けないように動作することを特徴とする。
【0014】
この発明では、最低閾値が異常な値に設定されることを防ぐことができるため、レーザ発振器の劣化度合いの表示が分かりにくくなることを防止することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記表示手段は、前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データをグラフ表示することを特徴とする。
【0015】
この発明では、複合出力データが直感的に分かりやすいかたちで表示されるため、レーザ発振器の劣化度合いの確認をより容易に行うことが可能となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させ、前記記憶手段には、出荷段階で測定された前記複合出力データが予め記憶されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、出荷段階で測定された複合出力データを表示手段に表示させることが可能となるため、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させ、前記記憶手段に記憶された前記複合出力データの個数が2つを超える場合には、測定時期が最新の前記複合出力データを、前記記憶手段に記憶されている前記複合出力データの1つに上書き処理することを特徴とする。
【0018】
この発明では、記憶手段に記憶される複合出力データの上限数を必要最低限の数として記憶手段の記憶容量を少なく抑えることができるため、記憶手段の小容量化、ひいては低コスト化に寄与できる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のレーザ加工装置において、前記記憶手段には、出荷段階で測定された前記複合出力データが予め記憶されており、前記制御手段にて上書き処理される前記複合出力データは、出荷段階での前記複合出力データ以外のデータであり、前記表示手段は、前記記憶手段に記憶された測定時期が最新の前記複合出力データと、出荷段階での前記複合出力データとを表示することを特徴とする。
【0020】
この発明では、出荷段階での複合出力データと最新の複合出力データとから、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、ユーザの操作に基づいて前記レーザ出力確認信号を前記制御手段に出力する操作手段を備えていることを特徴とする。
【0021】
この発明では、ユーザが任意でレーザ発振器の劣化度合いの確認を行うことができる。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させるものであり、電源投入時に現在の時刻データを取得し、その現在の時刻データと前記記憶手段に記憶された最新の前記複合出力データとに基づき、その最新の複合出力データが所定期間以上前のデータである場合に前記レーザ出力確認信号を前記制御手段に出力する確認信号出力手段を備えていることを特徴とする。
【0022】
この発明では、記憶手段に記憶された最新の複合出力データが所定期間以上前のデータである場合に自動で複合出力データが取得されるため、レーザ発振器の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させるものであり、前記記憶手段に記憶された最新の前記複合出力データとその複合出力データよりも古い1つの前記複合出力データとから得られる1次関数の傾きが所定量以上の場合に異常判定を行う異常判定手段を備え、前記制御手段は、前記異常判定手段による異常判定に基づき、前記最新の前記複合出力データを前記記憶手段から削除するとともに、前記複合出力データを再取得することを特徴とする。
【0024】
この発明では、取得した複合出力データが異常値である場合に複合出力データを再取得するため、ユーザがレーザ発振器の劣化度合いを誤って判断してしまうことを抑制することができる。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のレーザ加工装置において、前記異常判定手段による異常判定に基づいてレーザ出力異常を報知するレーザ異常報知手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
この発明では、ユーザがレーザ発振器の出力に異常が生じたことを容易に認識することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
従って、上記記載の発明によれば、レーザ発振器の劣化度合いの確認を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】レーザ加工装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態におけるパワー確認モードでのコンソールの表示態様を示す説明図。
【図3】第2実施形態におけるパワー確認モードでのコンソールの表示態様を示す説明図。
【図4】別例におけるパワー確認モードでのコンソールの表示態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1は、レーザ光Lを出射可能な加工装置本体2と、レーザ加工装置1を統括的に制御するコントローラ3と、コントローラ3を通じたレーザ加工装置1の操作及び種々の表示を行うコンソール4とを備えている。尚、コントローラ3は、加工装置本体2とコンソール4とにそれぞれ図示しないケーブルにて電気的に接続されている。このレーザ加工装置1は、順次搬送されるワークWに対して加工装置本体2からレーザ光Lを出射して加工を行うものである。
【0030】
加工装置本体2は、ハウジング10内にレーザ発振器11を備えている。レーザ発振器11は、コントローラ3の制御回路20にてその発振が制御され、レーザ加工用のレーザ光Lを出射する。
【0031】
レーザ発振器11の後段には、そのレーザ発振器11から出射されたレーザ光Lの出力を測定するためのレーザ出力測定部12が設けられている。レーザ出力測定部12は、レーザ光Lの光軸上に配置された光分岐手段としてのビームスプリッタ12aと、ハウジング10内のビームスプリッタ12aの近傍に設けられた受光素子12bとを備えている。ビームスプリッタ12aは、レーザ発振器11から出射されたレーザ光Lの一部を受光素子12bに向かって反射する。受光素子12bは、ビームスプリッタ12aからのレーザ光Lを受光し、その受光結果に基づく検出信号を制御回路20に出力する。
【0032】
ビームスプリッタ12aの後段には、制御回路20に制御に基づき作動するシャッター13が配置されている。シャッター13は、レーザ光Lの光軸から外れた退避位置と、レーザ光Lの光軸上の遮光位置(図1において2点鎖線で図示)との間を動作する。ワークWに対してレーザ加工を行うモード時においては、シャッター13は退避位置とされる。
【0033】
シャッター13の後段には、ビームエキスパンダ14及びガルバノスキャナ15が順に配置されている。ビームエキスパンダ14は、ビームスプリッタ12aを通過したレーザ光Lのビーム径を一定の倍率で一旦拡大する。ガルバノスキャナ15は、レーザ光Lの光軸上に配置されたガルバノミラー15aと、そのガルバノミラー15aを駆動するためのガルバノモータ15bとを有している。ガルバノミラー15aは、ビームエキスパンダ14にて径が拡大されたレーザ光Lを反射してその照射方向を変更するものであり、例えば対をなすX軸ミラーとY軸ミラーとで構成されている。ガルバノミラー15aは、制御回路20の制御に基づくガルバノモータ15bの駆動により角度制御され、予め設定された所望の加工データ(レーザ加工情報)に基づいて2次元的にレーザ光Lを走査する。
【0034】
ガルバノミラー15aの後段に配置された収束レンズ(fθレンズ)16は、レーザ光LをワークWの表面において所定のスポット径となるまで収束させ、加工に適したエネルギー密度まで高める。これにより、ワークWに加工が施されるようになっている。
【0035】
コントローラ3は、前記制御回路20と、その制御回路20に電気的に接続されたメモリ21及びシステム時計22とを備える。制御回路20には、コンソール4にて設定された加工データが入力され、その加工データに基づいて上記加工装置本体2を駆動させる。また、制御回路20は、時刻を計っているシステム時計22から現在日時のうちの日付を日時データtd(時刻データ)として取得可能となっている。
【0036】
コンソール4は、タッチパネル機能を有する表示画面4aを備えており、ユーザは所望の加工データをコンソール4にて設定することが可能である。コンソール4は、設定された加工データをコントローラ3の制御回路20に出力する。そして、制御回路20は、コンソール4からの加工データをメモリ21に記憶させる。また、制御回路20は、コンソール4での操作に基づきレーザ発振器11の出力を変更させることが可能となっている。これにより、ユーザは、レーザ発振器11の出力をワークWの材質等に応じた適切な出力値(入力値Pi)に設定することが可能となっている。
【0037】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
上記のレーザ加工装置1には、レーザ発振器11の性能確認(劣化度合い確認)を行うためのパワー確認モードが搭載されている。コンソール4には、表示画面4aに表示されたパワー確認ボタンBが表示されており、そのパワー確認ボタンBのタッチ操作に基づき、コンソール4はレーザ出力確認信号Sを制御回路20に出力する。
【0038】
制御回路20は、レーザ出力確認信号Sに基づき、システム時計22から現在(その時点)の日付データtdを取得する。また、制御回路20は、レーザ出力確認信号Sに基づき、シャッター13を遮光位置とした後、レーザ発振器11からレーザ光Lを出射させる。そのレーザ光Lは、ビームスプリッタ12aで分光され、受光素子12bで受光される。制御回路20は、そのレーザ光Lを受光した受光素子12bからの検出信号に基づきレーザ発振器11のレーザ出力値Pを取得する。尚、受光素子12bで受光されるレーザ光Lは、レーザ発振器11のレーザ出力の数パーセントであるが、制御回路20にて取得されるレーザ出力値Pはビームスプリッタ12aでの分光率に基づき補正された値となっている。そして、制御回路20は、取得した日付データtd及びレーザ出力値Pを対応付けて複合出力データとしてメモリ21に記憶させる。
【0039】
メモリ21に記憶させる複合出力データの上限数は、本実施形態では2つに設定されている。制御回路20は、メモリ21に記憶された複合出力データの数が上限数に達している状態で新たに複合出力データを取得した場合には、その最新の複合出力データを最も古い複合出力データに上書き処理する。即ち、メモリ21に記憶される2つの複合出力データは、最新の2つのものとなっている。尚、メモリ21には、出荷段階での前記複合出力データが予め記憶されている。
【0040】
次に、制御回路20は、予め設定されたレーザ出力の最低閾値Ps(仕様範囲やユーザの使用環境(設定で使うレーザ出力の範囲等)を満たすために最低限必要な下限値)に対するレーザ出力値Pの割合Rを、メモリ21に記憶された2つの複合出力データ毎にそれぞれ算出する。尚、本実施形態では、最低閾値Psは変更不能な固定値となっている。
【0041】
その後、制御回路20は、メモリ21に記憶された測定時期の異なる2つの複合出力データと、予め設定された最低閾値Ps(仕様範囲を満たすために最低限必要な下限値)とをコンソール4の表示画面4aの同一画面上に数値表示させる。
【0042】
図2に数値表示の一例を示す。この表示例では、複合出力データとして日付データtd、レーザ出力値P及び割合Rの3つのデータを測定時期の異なる複合出力データ毎に横に並べて数値表示させている。尚、割合Rの表示は、「対閾値出力%」の表示と合わせて「497%」等としているが、この割合Rとともに表示する言葉は、これ以外に例えば「割合」や「余裕度」として「4.97」等と表示させてもよい。
【0043】
上記したレーザ加工装置1では、ユーザが任意で図2に示すようなパワー確認モードを表示させることで、測定時期の異なる2つの複合出力データ(日付データtd、レーザ出力値P及び割合R)から、どれくらいの勢いで出力が低下しているか等のレーザ発振器11の劣化度合いを把握することが可能となっている。また、複合出力データと最低閾値Psの表示から、あとどれくらいレーザ発振器11がもつか等の推測が可能となっている。また、最低閾値Psに対するレーザ出力値Pの割合Rも表示されるため、レーザ発振器11の劣化度合いの確認がより行いやすくなっている。
【0044】
また、本実施形態では、制御回路20は、レーザ加工装置1の電源投入時に現在の日付データtdを取得し、メモリ21に記憶された最新の複合出力データが所定期間以上前のデータである場合、パワー確認モードを起動させる。これにより、パワー確認モードを暫く起動させていなくても自動で複合出力データが取得されるようになっている。
【0045】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)制御回路20は、レーザ出力確認信号Sの入力に基づき、レーザ出力測定部12にてレーザ光Lの出力を測定させ、その測定結果に基づくレーザ出力情報(レーザ出力値P及び割合R)を現在の時刻に関する日付データtdと対応付けて複合出力データとして取得する。そして、制御回路20は、測定時期の異なる2つの複合出力データをコンソール4の同一画面上に表示させる。このため、コンソール4に表示された測定時期の異なる2つの複合出力データから、レーザ発振器11の劣化度合いの確認を容易に行うことが可能となる。
【0046】
(2)コンソール4には、複合出力データと、予め設定されたレーザ出力の最低閾値Psとが同一画面上に表示されるため、レーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0047】
(3)複合出力データに含まれるレーザ出力情報には、最低閾値Psに対するレーザ出力値Pの出力値の割合Rが含まれるため、レーザ発振器11の劣化度合いの確認をより容易に行うことが可能となる。
【0048】
(4)制御回路20は、レーザ出力確認信号Sの入力に基づき取得した現在の日付データtd及びレーザ出力値P(複合出力データ)をメモリ21に記憶させ、該複合出力データの個数が予め設定された上限数を超える場合には、測定時期が最新の複合出力データを最も古い複合出力データに上書き処理する。このため、メモリ21の記憶容量を少なく抑えることができるため、メモリ21の小容量化、ひいては低コスト化に寄与できる。また、コンソール4にて表示される複合出力データが最新のものとなるため、レーザ発振器11の劣化度合いの判断を好適に行うことが可能となる。
【0049】
(5)制御回路20は、レーザ加工装置1の電源投入時に現在の日付データtdを取得し、メモリ21に記憶された最新の複合出力データが所定期間以上前のデータである場合、パワー確認モードを起動させる。これにより、パワー確認モードを暫く起動させていなくても自動で複合出力データが取得され、その結果、レーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0050】
(6)ユーザの操作に基づいてレーザ出力確認信号Sを制御回路20に出力するコンソール4を備えるため、ユーザが任意でレーザ発振器11の劣化度合いの確認を行うことができる。
【0051】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態は、複合出力データをグラフ表示する点で上記第1実施形態とは異なる。従って、以下には、上記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。尚、本実施形態では、メモリ21に記憶させる複合出力データの上限数は7つ以上の値に設定されている。
【0052】
制御回路20は、メモリ21に記憶された測定時期の異なる複数の複合出力データをコンソール4の表示画面4aにグラフ表示させる。
図3にグラフ表示の一例を示す。この表示例では、横軸を日付、縦軸をレーザ出力値として、メモリ21に記憶された測定時期の異なる複数の複合出力データ(日付データt1〜t7及びレーザ出力値P)全てをそれぞれグラフに点で示し、折れ線グラフとして表示している。また、予め設定された最低閾値Psをボーダーラインとしてグラフとともに表示している。
【0053】
本実施形態のレーザ加工装置1では、ユーザが任意で図3に示すようなパワー確認モードを表示させることで、測定時期の異なる複数の複合出力データのグラフから、どれくらいの勢いで出力が低下しているか等のレーザ発振器11の劣化度合いを直感的に把握することが可能となっている。また、最低閾値Psがボーダーラインとしてグラフとともに表示されることで、あとどれくらいレーザ発振器11がもつか等の推測が直感的に可能となっている。
【0054】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(7)コンソール4には、測定時期の異なる複数の複合出力データがグラフ表示される。これにより、複合出力データが直感的に分かりやすいかたちで表示されるため、レーザ発振器11の劣化度合いの確認をより容易に行うことが可能となる。
【0055】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態において、最初に取得した複合出力データを上書き更新されない固定データとしてメモリ21に記憶させてもよい。また、ユーザの操作に基づき、任意の複合出力データを上書き更新されない固定データに設定可能に構成してもよい。
【0056】
・上記第1実施形態において、出荷段階で測定された複合出力データ(日付データtd及びレーザ出力値P)をメモリ21に予め記憶させておいてもよい。その場合、メモリ21に記憶された複合出力データの数が上限数に達している状態で、制御回路20が新たに複合出力データを取得したとき、その最新の複合出力データを出荷段階での複合出力データ以外のデータに上書き処理するようにしてもよい。即ち、出荷段階での複合出力データを上書き更新しない固定データとする。この処理によれば、パワー確認モードにおいて、コンソール4には、最新の複合出力データと、出荷段階での複合出力データとが表示されるため、それらのデータからレーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。尚、出荷段階での複合出力データを上書き更新されない固定データとせずに、出荷段階での複合出力データも他の複合出力データと同様に上書き処理されるように扱ってもよい。
【0057】
・上記第1実施形態において、コンソール4に表示されるレーザ出力情報として、予め設定されたレーザ出力の最高出力値(初期値)に対するレーザ出力値Pの割合を含めてもよい。その最高出力値は、レーザ発振器11の設計上の最高出力値としてもよく、また、出荷段階で測定されたレーザ光Lの初期出力値としてもよい。これによれば、レーザ発振器11の劣化度合いの確認をより容易に、且つより的確に行うことが可能となる。また、最高出力値に対するレーザ出力値Pの割合を求める際には、最高出力値に対するユーザにて設定された出力値(入力値Pi)の割合をまず算出し、その割合で補正した値をレーザ出力値Pとしてもよい。
【0058】
尚、レーザ出力の最高出力値に対するレーザ出力値Pの割合の算出としては、例えば最高出力値が100と設定され、最低閾値Psが20と設定された場合に、最低閾値Ps〜最高出力値までを0−100のスケールとして補正計算して、割合を算出してもよい。より具体的には、レーザ出力値Pが図2に示す例のように99.4の場合、(99.4−20)÷(100−20)×100=99.25%となり、コンソール4には、例えば「現在のレーザ出力状態」として「99.25%」と表示してもよい。これによれば、レーザ出力値Pが最低閾値Psと等しくなったときに、レーザ出力状態として0%と表示させることができるため、レーザ発振器11の劣化度合いをより直感的に分かりやすくできる。
【0059】
・上記第2実施形態では、メモリ21に記憶された測定時期の異なる複数の複合出力データ全てを点で示したが、メモリ21に記憶された複数の複合出力データのうちの幾つかを点で示すようにしてもよい。
【0060】
・上記実施第2実施形態において、メモリ21に記憶された複数の複合出力データから近似直線や近似曲線等の近似線を算出し、その近似線を複合出力データのグラフとともに表示させてもよい。この場合、近似線が最低閾値Psのボーダーラインとクロスするように表示すれば、レーザ発振器11の劣化度合いをより直感的に分かりやすくできる。
【0061】
・上記実施第2実施形態において、各複合出力データにおけるレーザ出力値Pを数値表示してもよい。尚、このレーザ出力値Pの数値表示は、グラフ縦軸の横でもよく、また、グラフとは別にリスト表示するようにしてもよい。
【0062】
・上記各実施形態において、メモリ21に記憶させる複合出力データの上限数は、適宜変更してもよい。
・上記各実施形態において、制御回路20は、測定時期の異なる少なくとも2つの複合出力データ(日付データtd及びレーザ出力値P)から得られる関数に基づき、レーザ出力値Pが最低閾値Psに達する予測時期を算出し、その予測時期に基づく寿命情報をコンソール4にて表示してもよい。例えば、パワー確認モードにおいて複合出力データのグラフとともに寿命情報を表示する一例を図4に示す。図4に示す例では、制御回路20は、複合出力データ(日付データt1及びt2及びレーザ出力値P)とから得られる1次関数に基づき、レーザ出力値Pが最低閾値Psに達する予測時期Xを算出し、その予測時期X(交換時期)を寿命情報としてグラフに点で示している。これによれば、パワー確認モードにおいてコンソール4に表示されるレーザ出力に関する情報がより詳細なものとなるため、レーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0063】
尚、図4に示す例では、表示する寿命情報をレーザ出力値Pが最低閾値Psに達する予測時期Xとしたが、特にこれに限定されるものではなく、現在の時刻から予測時期に達するまでの残り時間(残り日数)としてもよい。これによっても、レーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。
【0064】
・上記各実施形態において、制御回路20は、メモリ21に記憶された最新の複合出力データとその複合出力データよりも古い1つの複合出力データとから得られる1次関数の傾きが所定量以上の場合に異常判定を行い、その異常判定に基づき最新の複合出力データをメモリ21から削除するとともに、複合出力データを再取得するようにしてもよい。これによれば、ユーザがレーザ発振器11の劣化度合いを誤って判断してしまうことを抑制することができる。
【0065】
また、制御回路20は、メモリ21に記憶された最新の複合出力データのレーザ出力値Pとその複合出力データよりも古い1つの複合出力データのレーザ出力値Pの差が所定量以上の場合に異常判定を行い、その異常判定に基づき最新の複合出力データをメモリ21から削除するとともに、複合出力データを再取得するようにしてもよい。これによっても、ユーザがレーザ発振器11の劣化度合いを誤って判断してしまうことを抑制することができる。
【0066】
また、このような構成において、制御回路20は、異常判定に基づきレーザ出力異常を示す旨の表示をコンソール4に表示させてもよい。これによれば、ユーザがレーザ発振器11の出力に異常が生じたことを容易に認識することが可能となる。
【0067】
・上記各実施形態では、最低閾値Psを固定値としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、コンソール4の表示画面4aでの操作に基づき最低閾値Psを変更可能に構成してもよい。この場合、制御回路20は、コンソール4にて入力された入力値に基づき最低閾値Psを上書き更新する。この構成によれば、ユーザが最低閾値Psを変更できるため、レーザ発振器11の劣化度合いの判断をユーザにてより的確に行うことが可能となる。また、上記した最高出力値についてもコンソール4の表示画面4aでの操作に基づき変更可能としてもよい。これによっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
また、このように最低閾値Psや最高出力値が変更可能な構成において、ユーザによる入力値(設定値)が予め設定された所定範囲(仕様範囲に基づく範囲)から外れた値の場合に、制御回路20がその入力値への変更を受け付けないようにしてもよい。また、このとき、コンソール4にて警告表示して入力値の変更を促すようにしてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、表示手段及び操作手段をコンソール4で構成したが、これ以外に例えば、表示手段としてのディスプレイと、操作手段としてのキーボードで構成してもよい。
【0070】
・上記各実施形態では、システム時計22がレーザ加工装置1に内蔵された構成としたが、これに限らず、例えば生産ラインのコントロール装置やホストコンピュータ等の外部機器のシステム時計から時刻データ(日付データtd)を取得する構成であってもよい。
【0071】
・上記各実施形態では、制御回路20はシステム時計22から時刻データとして日付データtdを取得して表示させる構成としたが、これに限らず、日付よりも細かい時刻を取得して表示させてもよい。
【0072】
・上記各実施形態のレーザ加工装置1は、ワークWに対して切断等の加工を行うものであってもよいし、また、文字・記号・図形等のパターンをそれぞれマーキングするものであってもよい。
【0073】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 請求項1〜13のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ出力情報は、予め設定されたレーザ出力の最高出力値に対する前記レーザ光の出力値の割合を含むことを特徴とするレーザ加工装置。
【0074】
これにより、レーザ発振器の劣化度合いの確認をより容易に行うことが可能となる。
(ロ) 請求項1〜8、10〜13及び上記の付記(ロ)のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させ、
前記記憶手段に記憶された前記複合出力データの個数が予め設定された上限数を超える場合には、測定時期が最新の前記複合出力データを、最も古い前記複合出力データに上書き処理することを特徴とするレーザ加工装置。
【0075】
これにより、記憶手段の記憶容量を少なく抑えつつも、表示手段にて表示される複合出力データが最新のものとなるため、レーザ発振器の劣化度合いの判断を好適に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1…レーザ加工装置、4…コンソール(表示手段、操作手段、閾値設定手段、レーザ異常報知手段)、11…レーザ発振器、12…レーザ測定手段を構成するレーザ出力測定部、15…ガルバノスキャナ(走査手段)、16…収束レンズ、20…制御回路(レーザ測定手段、制御手段、算出手段、確認信号出力手段、閾値設定手段、異常判定手段)、21…メモリ(記憶手段)、L…レーザ光、Ps…最低閾値、R…最低閾値に対するレーザ出力値の割合、S…レーザ出力確認信号、td,t1〜t7…日付データ(時刻データ)、W…ワーク(被加工対象物)、X…予測時期。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射されるレーザ光の方向を変更するための走査手段と、
前記走査手段からのレーザ光を収束して被加工対象物上に照射するための収束レンズと
を備え、予め設定されるレーザ加工情報に基づいて、前記走査手段によりレーザ光の方向を変更し、前記被加工対象物上に照射されたレーザスポットを走査することで、前記被加工対象物に対する加工を行うレーザ加工装置であって、
前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の出力を測定するレーザ測定手段と、
レーザ出力確認信号の入力に基づき、前記レーザ測定手段にてレーザ光の出力を測定させ、その測定結果に基づくレーザ出力情報を現在の時刻に関する時刻データと対応付けて複合出力データとして取得する制御手段と、
前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データと予め設定されたレーザ出力の最低閾値とを同一画面上に表示する表示手段と
を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ出力情報は、予め設定されたレーザ出力の最低閾値に対する前記レーザ光の出力値の割合を含むことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データから得られる関数に基づき、前記レーザ光の出力値が予め設定されたレーザ出力の最低閾値に達する予測時期を算出する算出手段を備え、
前記表示手段は、前記予測時期に基づく寿命情報を表示することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工装置において、
前記寿命情報は、現在の時刻から前記予測時期に達するまでの残り時間を含むことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
ユーザの操作に基づき前記最低閾値を変更する閾値設定手段を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記閾値設定手段は、ユーザによる入力値が予め設定された所定範囲から外れた値の場合に、その入力値への変更を受け付けないように動作することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記表示手段は、前記制御手段にて取得された測定時期の異なる少なくとも2つの前記複合出力データをグラフ表示することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させ、
前記記憶手段には、出荷段階で測定された前記複合出力データが予め記憶されていることを特徴とすることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させ、
前記記憶手段に記憶された前記複合出力データの個数が2つを超える場合には、測定時期が最新の前記複合出力データを、前記記憶手段に記憶されている前記複合出力データの1つに上書き処理することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ加工装置において、
前記記憶手段には、出荷段階で測定された前記複合出力データが予め記憶されており、
前記制御手段にて上書き処理される前記複合出力データは、出荷段階での前記複合出力データ以外のデータであり、
前記表示手段は、前記記憶手段に記憶された測定時期が最新の前記複合出力データと、出荷段階での前記複合出力データとを表示することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
ユーザの操作に基づいて前記レーザ出力確認信号を前記制御手段に出力する操作手段を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させるものであり、
電源投入時に現在の時刻データを取得し、その現在の時刻データと前記記憶手段に記憶された最新の前記複合出力データとに基づき、その最新の複合出力データが所定期間以上前のデータである場合に前記レーザ出力確認信号を前記制御手段に出力する確認信号出力手段を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ出力確認信号の入力に基づき取得した前記複合出力データを記憶手段に記憶させるものであり、
前記記憶手段に記憶された最新の前記複合出力データとその複合出力データよりも古い1つの前記複合出力データとから得られる1次関数の傾きが所定量以上の場合に異常判定を行う異常判定手段を備え、
前記制御手段は、前記異常判定手段による異常判定に基づき、前記最新の前記複合出力データを前記記憶手段から削除するとともに、前記複合出力データを再取得することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザ加工装置において、
前記異常判定手段による異常判定に基づいてレーザ出力異常を報知するレーザ異常報知手段を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206161(P2012−206161A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75918(P2011−75918)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】