説明

レーザ加工装置

【課題】レーザ光の出力を正確にモニタすることができるレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ光の一部を分岐して取り出すための分岐用ミラーと、分岐手段により取り出されたレーザ光を検出するフォトディテクタと、フォトディテクタによるレーザ光の出力に応じたレベルの電気信号を増幅して出力するオペアンプと、オペアンプの出力信号をA/D変換して出力するA/D変換器と、レーザ光が出力されていない状態におけるA/D変換器の出力値を初期値W1として記憶(ステップS2)し、その時々のA/D変換器の出力値W2と初期値W1の差分をモニタ値Wmとして算出する(ステップS5)制御装置と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、レーザ媒質を励起させてレーザ光を出力(出射)するレーザ発振器を備えるとともに、レーザ発振器から出力されたレーザ光を加工対象物に照射することで、加工対象物に文字等をマーキングするレーザ加工装置がある。このようなレーザ加工装置の中には、レーザ発振器を制御する制御装置から与えられる情報を表示する表示器を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−22250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ加工装置に備えられた表示器では、例えば、レーザ発振器から出射されるレーザ光の出力のモニタ結果(測定結果)を表示することが行われている。レーザ光の出力をモニタする構成としては、レーザ発振器から出射されたレーザ光の一部を分岐させて取り出す分岐ミラー、分岐させたレーザ光を受光して電気信号を出力する光電変換器、光電変換器の電気信号を増幅するオペアンプ、及び増幅された電気信号をA/D変換するA/D変換器を備えたものが知られている。この場合、制御装置は、A/D変換器の出力値をモニタ値(測定値)とし、そのモニタ値(レーザ光の出力)を表示器に表示させる。また、取得したモニタ値は、レーザ光の出力が決められた出力(設定出力)となるようにレーザ発振器をフィードバック制御するためにも用いられる。
【0005】
しかしながら、例えば、光電変換器としてフォトダイオードなどを用いた場合には、レーザ光を受光していない場合であっても、暗電流が流れることが知られている。また、オペアンプには、オフセット電圧があることが知られている。すなわち、制御装置がA/D変換器から取得する出力値には、光電変換器でレーザ光を受光したことに基づき出力される出力値とは別の要因により発生する出力値が上乗せされる。このため、例えば、レーザ発振器から出射されるレーザ光のモニタ値が閾値未満となったか否かに基づきレーザ発振器の出力異常を検知する場合には、実際にはレーザ光の出力が低下しているにも係わらず出力異常を検知できず、エラー報知が遅れてしまう問題がある。
【0006】
このため、一般には、分圧抵抗を設けるなどして、レーザ加工装置の製造時といった一定条件のもと、レーザ光を出射していない状態におけるオペアンプの出力電圧をゼロにすることが行われている。しかしながら、一定条件のもとでオペアンプの出力電圧をゼロにする構成では、フォトダイオードの暗電流やオペアンプのオフセット電圧が温度によって変動することに代表されるように、環境変化に起因する出力値の発生を回避できない。このため、従来のレーザ加工装置では、外的要因の影響を受けてレーザ光の出力のモニタが不正確になる虞があった。
【0007】
本発明の目的は、レーザ光の出力を正確にモニタすることができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、加工対象物に照射するためのレーザ光を出力するレーザ発振器と、前記レーザ光の光路に設けられ、前記レーザ光の一部を分岐して取り出すための分岐手段と、前記分岐手段により取り出されたレーザ光を検出する光電変換手段と、前記光電変換手段によるレーザ光の出力に応じたレベルの電気信号を増幅して出力するオペアンプと、前記オペアンプの出力信号をA/D変換して出力するA/D変換手段と、前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を初期値として記憶し、その時々の前記A/D変換手段の出力値と前記初期値の差分を前記レーザ光の出力のモニタ値として算出するモニタ値算出手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
これによれば、レーザ光が出力されていない状態におけるA/D変換手段の出力値を初期値として記憶するとともに、その時々のA/D変換手段の出力値と記憶している初期値との差分をレーザ光の出力のモニタ値とする。したがって、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、レーザ光が出力されていない状態における初期値をもとにモニタ値が算出されるため、レーザ光の出力を正確にモニタすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーザ加工装置において、ヘッド部に前記分岐手段、前記光電変換手段、前記オペアンプ、及び前記A/D変換手段が配設されるとともに、本体部に前記レーザ発振器、及び前記ヘッド部に配設された制御対象機器を制御する機器制御手段が配設され、前記レーザ発振器から出力されたレーザ光は、前記ヘッド部と前記本体部とを接続する光ファイバにより前記ヘッド部に伝送されることを要旨とする。
【0011】
これによれば、レーザ発振器を本体部に配設するとともにレーザ光を光ファイバでヘッド部へ伝送するため、ヘッド部を小型化できる。そして、ヘッド部へ伝送されるレーザ光の出力が、光ファイバの設置状態(取り回し)の影響を受けて低下している場合であっても、レーザ光の出力を正確にモニタすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のレーザ加工装置において、前記ヘッド部は、前記本体部に対して着脱可能に構成され、前記ヘッド部には、前記A/D変換手段の出力値を記憶する記憶手段をさらに設けたことを要旨とする。
【0013】
これによれば、ヘッド部においてA/D変換手段の出力値を記憶しておくことができる。このため、例えば、ヘッド部を異なる本体部に接続した場合であっても、ヘッド部の記憶手段から記憶内容を読み出すことで、過去のA/D変換手段の出力値を参照することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力を表示する表示手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0015】
これによれば、算出したモニタ値に基づいてレーザ光の出力が表示手段にて表示される。このため、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、正確なレーザ光の出力を表示手段に表示することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記モニタ値に基づいて、決められた前記レーザ光の出力となるように前記レーザ発振器を制御する発振制御手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0017】
これによれば、算出したモニタ値に基づいて、決められたレーザ光の出力となるようにレーザ発振器が制御される。このため、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、決められた出力のレーザ光をレーザ発振器から出力させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力の低下を検知する検知手段と、前記検知手段が前記レーザ光の出力の低下を検知した場合にその旨を報知する報知手段と、をさらに備えたことを要旨とする。
【0019】
これによれば、算出したモニタ値に基づいてレーザ光の出力の低下が検知されるとともに、その旨が報知される。このため、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、レーザ光の出力の低下を正確に検知するとともに報知することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力の低下を検知する検知手段が前記レーザ光の出力の低下を検知した場合に、前記レーザ発振器から前記レーザ光を出力することを規制する規制手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0021】
これによれば、算出したモニタ値に基づいてレーザ光の出力の低下が検知されるとともに、レーザ光の出力が規制される。このため、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、レーザ光の出力の低下を正確に検知してレーザ光の出力を規制することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、請求項6又は請求項7に記載のレーザ加工装置において、前記検知手段は、前記レーザ発振器からレーザ光の出力を開始した際の前記A/D変換手段の出力値、及び前記モニタ値の何れか一方を基準値として記憶するとともに、前記基準値に対応するその時々の値と前記基準値との差分が予め定めた閾値に達した場合に前記レーザ光の出力が低下したと判定することを要旨とする。
【0023】
これによれば、レーザ発振器からレーザ光の出力を開始した際のA/D変換手段の出力値、又はモニタ値を基準値として記憶するとともに、記憶した基準値に対応するその時々の値と基準値との差分が予め定めた閾値に達した場合にレーザ光の出力が低下したと判定する。このため、レーザ光の出力が環境変化といった外的要因とは別の原因で低下したことを正確に検出することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ光の出力のモニタを開始させるモニタ開始指令を出すモニタ開始指令手段をさらに備え、前記モニタ値算出手段は、前記モニタ開始指令に基づいて、前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を前記初期値として記憶することを要旨とする。
【0025】
これによれば、モニタ開始指令に基づいて、モニタ値を算出するための初期値が更新して記憶される。このため、モニタ開始指令がなされた時点における環境に応じた初期値によってモニタ値を算出することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ光の照射による加工を開始させる加工開始指令を出す加工開始指令手段をさらに備え、前記モニタ値算出手段は、前記加工開始指令に基づいて、前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を前記初期値として記憶することを要旨とする。
【0027】
これによれば、加工開始指令に基づいて、モニタ値を算出するための初期値が更新して記憶される。このため、加工開始指令がなされた時点における環境に応じた初期値によってモニタ値を算出することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、レーザ光の出力を正確にモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態におけるレーザマーキング装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】レーザマーキング装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】レーザマーキング装置の制御内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をレーザマーキング装置に具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置としてのレーザマーキング装置1は、レーザ光Lを出射(出力)するための本体部としてのコントローラ2を備えている。コントローラ2には、光ファイバからなるファイバケーブル3を介してヘッド部としてのヘッド4が接続されている。また、コントローラ2には、電気ケーブル5を介してヘッド4が接続されているとともに、コントローラ2には、電気ケーブル6を介してコンソール7が接続されている。そして、レーザマーキング装置1は、載置台8に載置された加工対象物Wのマーキング面Wa上に所望の文字、図形、記号(以下、文字等という)をマーキング(レーザ加工)するようになっている。
【0031】
ヘッド4の下面には、レーザ光Lが出射される窓部9が形成されている。そして、ヘッド4は、窓部9が加工対象物Wのマーキング面Waと対向するように配置される。
図2に示すように、コントローラ2は、レーザ発振器20(例えば、ファイバレーザ発振器)を備え、レーザ発振器20からレーザ光Lが出射される。レーザ発振器20から出射されたレーザ光Lは、ファイバケーブル3に送られ、ファイバケーブル3を通してヘッド4に送られる(伝送される)。図1に示すように、ヘッド4においてファイバケーブル3の一端(ヘッド側端)は、ビームエキスパンダ収納部10に接続されている。ヘッド4とコントローラ2とは、ファイバケーブル3、及び電気ケーブル5の一端(ヘッド側端)をヘッド4から取り外すことで接続状態を容易に解除できる。すなわち、ヘッド4は、コントローラ2に対して着脱可能に構成されている。ビームエキスパンダ収納部10には、ビームエキスパンダ30(図2参照)が収納されており、ファイバケーブル3からのレーザ光Lがビームエキスパンダ30に送られる。
【0032】
図2に示すように、ヘッド4において、レーザ光Lの光路途中には、レーザ発振器20側から順に、第1ガルバノミラー40X、第2ガルバノミラー40Y、及び集光レンズ50が配設されている。そして、ビームエキスパンダ30からのレーザ光Lは、第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yに入射される。
【0033】
第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yは、それぞれ対応する第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yに対し、第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yの駆動により回動可能に連結されている。第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yは、第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yを互いに略直交する軸を中心としてそれぞれ回動させるようになっている。そして、第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yは、ビームエキスパンダ30からのレーザ光Lを反射し、その出射方向を変更させるようになっている。具体的には、第1ガルバノミラー40Xは、回動して加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面Waの一方向(X方向、図1参照)に走査させるようになっている。また、第2ガルバノミラー40Yは、回動して加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lを、そのマーキング面WaのX方向に対して直交する方向(Y方向、図1参照)に走査させるようになっている。したがって、加工対象物Wに向けて照射するレーザ光Lは、第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yにより、加工対象物Wのマーキング面Waに対して、X方向及びY方向に走査されるようになっている。
【0034】
また、レーザ光Lの光路上におけるビームエキスパンダ30と第1及び第2ガルバノミラー40X,40Yとの間には、レーザ光Lの一部(例えば1〜2%)を分岐して取り出すための分岐用ミラー70が設けられている。本実施形態では、分岐用ミラー70が分岐手段となる。分岐用ミラー70により取り出されたレーザ光Lsは、光電変換手段(光電変換器)としてのフォトディテクタ71に送られる。フォトディテクタ71は、受光したレーザ光Lsの出力(強度)のレベル(高さ)に応じた電気信号を出力し、光電変換を行う。
【0035】
フォトディテクタ71には、第1オペアンプ72aが接続されているとともに、第1オペアンプ72aには、第2オペアンプ72bが接続されている。第1オペアンプ72aは、フォトディテクタ71から入力した光電変換後の電気信号を増幅して出力する。第2オペアンプ72bは、第1オペアンプ72aが出力した電気信号を増幅して出力する。
【0036】
第2オペアンプ72bには、A/D変換手段としてのA/D変換器(信号変換器)73が接続されている。A/D変換器73は、第2オペアンプ72bが出力する増幅後の電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。以下の説明では、アナログ信号からデジタル信号への変換を単に「A/D変換」とも示す。A/D変換器73は、電気ケーブル5を介してコントローラ2に接続されている。
【0037】
コントローラ2には、前述のレーザ発振器20に加えて、レーザマーキング装置1の動作を統括的に制御するための制御装置80が設けられている。この制御装置80は、A/D変換器73と電気ケーブル5を介して接続されており、A/D変換器73が出力するデジタル信号を入力する。したがって、制御装置80は、分岐用ミラー70により分岐して取り出されたレーザ光Lsのレベル(強さ)に応じた出力値を取り込むことができる。
【0038】
制御装置80は、メモリ80aを備えているとともに、このメモリ80aには、印字される文字等のマーキング情報が記憶されている。マーキング情報は、文字等を構成する各線分の始点及び終点の座標値、及びレーザ光Lの照射により形成される線分の太さ等の情報を含む。また、制御装置80は、レーザ発振器20、第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yにそれぞれ接続されている。制御装置80は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lを出射させるとともに、マーキング情報などに基づき第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yを駆動制御することでレーザ光Lを2次元的に走査し、加工対象物Wのマーキング面Waに文字等をマーキングする。本実施形態では、第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yが制御対象機器となり、制御装置80が機器制御手段として機能する。
【0039】
また、制御装置80は、電気ケーブル6を介してコンソール7に接続されている。コンソール7は、設定機能と表示機能を有している。コンソール7には、レーザ発振器20から出射されているレーザ光Lの出力(ワット値)や、レーザマーキング装置1の設定情報を表示する表示手段としての表示部7aが設けられている。
【0040】
また、コンソール7には、オペレータがレーザマーキング装置1の各種設定を行うためのボタンを備えた操作部7bが設けられている。本実施形態のレーザマーキング装置1では、操作部7bを操作することにより、文字等のマーキング(レーザ加工)を行う際の設定情報(例えば、X軸及びY軸での原点位置や、マーキングする文字等の種類、及びレーザ加工に用いるレーザ光Lの出力(ワット値))を入力できる。また、操作部7bには、入力した設定情報(設定内容)でマーキング(レーザ加工)動作を開始させるための印字スタートボタンSBが設けられている。
【0041】
コンソール7は、操作部7bの操作により入力された設定情報を示す設定信号を制御装置80に出力するとともに、その設定情報を表示部7aに表示させる。また、コンソール7は、印字スタートボタンSBの押下操作に基づき、加工開始指令としての加工トリガ信号を制御装置80に出力する。なお、制御装置80は、コンソール7から設定信号を入力すると、入力した設定信号に示される設定情報をメモリ80aに記憶させる。本実施形態では、印字スタートボタンSBを備えたコンソール7が加工開始指令手段として機能する。
【0042】
次に、制御装置80がレーザ光Lの出力をモニタするための制御内容について説明する。
図3に示すように、制御装置80は、コンソール7から加工トリガ信号としての印字スタートボタンSBの操作信号を入力したか否かを判定する(ステップS1)。コンソール7の印字スタートボタンSBが押下されると、制御装置80は、ステップS2に移行して、その時点でヘッド4(A/D変換器73)から入力しているA/D変換器73の出力値(A/D変換値)を初期値W1とし、その初期値W1をメモリ80aに記憶させる。すなわち、制御装置80は、加工トリガ信号に基づいて、レーザ光Lが出射されていない状態におけるA/D変換器73の出力値を初期値W1として記憶させる。このように、制御装置80は、加工トリガ信号を入力する毎に初期値W1を記憶させる。
【0043】
次に、制御装置80は、ステップS3でレーザ発振器20を制御してレーザ光Lを出射させるとともに、メモリ80aに記憶した設定情報に基づき第1及び第2ガルバノモータ41X,41Yを駆動制御し、加工対象物Wのマーキング面Waに文字等をマーキングする。
【0044】
また、初期値W1を記憶させた制御装置80は、レーザ光Lの出力のモニタ(監視)を開始する。具体的には、まず、制御装置80は、ステップS4で、ヘッド4(A/D変換器73)から入力しているA/D変換器73の出力値(A/D変換値)を出力値W2として取得する。このとき、制御装置80は、レーザ光Lの出射を開始させてから、フォトディテクタ71がレーザ光Lsを受光して出力する電気信号のレベルが安定する(略一定になる)のに要する時間の経過後におけるA/D変換器73の出力値W2を取得する。次に、制御装置80は、ステップS5で、取得した出力値W2からメモリ80aに記憶させた初期値W1を減算して差分を算出するとともに、その差分をモニタ値Wmとする。したがって、本実施形態では、制御装置80がモニタ値算出手段として機能する。
【0045】
次に、制御装置80は、ステップS6において、ステップS5の処理で算出したモニタ値Wmに基づいてレーザ光Lの出力(ワット値)を取得するとともに、その取得した出力の表示を指示する信号をコンソール7に出力し、レーザ光Lの出力(ワット値)を表示部7aに表示させる。なお、モニタ値Wmに基づきレーザ光Lの出力(ワット値)を取得するには、例えば、モニタ値Wmとレーザ光Lの出力(ワット値)を対応付けたマップデータにより取得したり、計算式により算出したりすればよい。
【0046】
続けて、制御装置80は、ステップS7で、レーザ加工(マーキング)が終了したか否かを判定し、レーザ加工の終了でないとステップS3に戻る。その一方で、制御装置80は、ステップS7においてレーザ加工が終了であると、レーザ光Lの出力のモニタを終了する。したがって、制御装置80は、加工トリガ信号を入力してからレーザ加工(マーキング)が終了する迄の間(以下、レーザ加工期間という)、ステップS3〜S7の処理を繰り返し実行する。したがって、レーザ加工期間は、制御装置80がレーザ光Lの出力をモニタする出力モニタ期間ともいえる。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)制御装置80は、レーザ光Lが出射(出力)されていない状態におけるA/D変換器73の出力値を初期値W1として記憶するとともに、その時々のA/D変換器73の出力値W2と記憶している初期値W1との差分をレーザ光Lの出力のモニタ値Wmとする。したがって、環境変化(温度変化や、湿度変化など)といった外的要因が発生した場合であっても、レーザ光Lが出力されていない状態における初期値W1をもとにモニタ値Wmが算出されるため、レーザ光Lの出力を正確にモニタすることができる。
【0048】
(2)コンソール7の表示部7aでは、算出したモニタ値Wmをもとにレーザ光Lの出力(ワット値)が表示される。このため、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、正確なレーザ光Lの出力を表示部7aに表示することができる。
【0049】
(3)制御装置80は、加工トリガ信号に基づいて、レーザ光Lが出射されていない状態におけるA/D変換器73の出力値(A/D変換値)を初期値W1として記憶させる。このため、印字スタートボタンSBの操作がなされた時点における環境に応じた初期値W1によってモニタ値Wmを算出することができる。
【0050】
(4)制御装置80は、加工トリガ信号を入力する毎に初期値W1を記憶させる。すなわち、マーキング(レーザ加工)を開始する毎にモニタ値Wmを算出するための初期値W1を更新して記憶させ、レーザ光Lの出力をより正確にモニタできる。
【0051】
なお、上記実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・上記実施形態において、ヘッド4にA/D変換器73の出力値(ログ)を記憶する記憶手段としての記憶装置(メモリ)を設けてもよい。この場合、A/D変換器73は、制御装置80、及びヘッド4の記憶装置にデジタル信号を出力してもよく、ヘッド4の記憶装置を介して制御装置80にデジタル信号を出力してもよい。このように構成すれば、ヘッド4において、A/D変換器73の出力値を記憶しておくことができる。このため、例えば、ヘッド4を異なるコントローラ2に接続した場合であっても、ヘッド4の記憶装置から記憶内容(ログ)を読み出すことで、過去のA/D変換器73の出力値を参照できる。
【0052】
・上記実施形態において、制御装置80は、レーザ加工期間において、ステップS5で算出したモニタ値Wmから取得されるレーザ光Lの出力(ワット値)が、コンソール7から入力した設定信号(設定情報)に示されるレーザ光Lの出力(ワット値)と一致するようにレーザ発振器20を制御するフィードバック制御を行ってもよい。このように構成すれば、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、決められた出力のレーザ光Lをレーザ発振器20から出力させることができる。この場合、制御装置80が発振制御手段として機能する。
【0053】
・上記実施形態において、制御装置80は、レーザ加工期間において、ステップS5で算出したモニタ値Wmから取得されるレーザ光Lの出力が、予め定めた閾値L1に達しているか否かのエラー判定を行ってもよい。このエラー判定の判定結果が否定の場合、制御装置80は、レーザ発振器20の劣化に伴うレーザ光の出力の低下を検知し、レーザ発振器20のエラー表示を指示する信号をコンソール7に出力する。この場合、コンソール7の表示部7aでは、レーザ発振器20のエラー報知がなされる(以下、別例(a)と示す)。このように構成すれば、環境変化といった外的要因が発生した場合であっても、レーザ光Lの出力の低下を正確に検知して報知することができる。本別例では、制御装置80が検知手段として機能するとともに、表示部7aが報知手段として機能する。なお、レーザ発振器20のエラー報知は、スピーカによる音声出力などにより行ってもよい。
【0054】
・上記実施形態、又は別例(a)において、制御装置80は、前記エラー判定の判定結果が否定の場合、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lの出力を停止させてもよい(以下、別例(b)と示す)。また、この場合には、エラー報知をするためのエラー判定に用いる閾値L1とは別に、レーザ光Lの出力を規制するためのエラー判定に用いる閾値L2を設定するとともに、閾値L2として閾値L1より低い閾値を設定してもよい。このように構成すれば、レーザ光Lの出力の低下が軽度である場合にエラー報知を行う一方で、レーザ光Lの出力の低下がより大きい場合にレーザ光Lの出力を規制できる。本別例では、制御装置80がレーザ発振器20からレーザ光Lを出力することを規制する規制手段として機能する。
【0055】
・上記別例(a)又は(b)において、制御装置80は、レーザ発振器20からレーザ光Lの出射(出力)を開始した際の出力値W2、又はモニタ値Wmを基準値Wsとして記憶するとともに、基準値Wsに対応するその時々の値と基準値Wsとの差分が予め定めた閾値に達した場合にレーザ光Lの出力が低下したと判定するようにしてもよい(以下、別例(c)と示す)。この場合、制御装置80は、加工トリガ信号を入力してから1回目(初回)のステップS4の処理(図3に示す)において、A/D変換器73の出力値W2を基準値Wsとして記憶するか、又は1回目のステップS5の処理において、算出したモニタ値Wmを基準値Wsとして記憶すればよい。そして、出力値W2を基準値Wsとして記憶した場合には、その時々の出力値W2と基準値Wsとの差分に基づきエラー判定を行う一方で、モニタ値Wmを基準値Wsとして記憶した場合には、その時々のモニタ値Wmと基準値Wsとの差分に基づきエラー判定を行う。この場合にも、エラー報知をするためのエラー判定に用いる閾値L1とは別に、レーザ光Lの出力を規制するためのエラー判定に用いる閾値L2を設定してもよく、また閾値L2として閾値L1より高い閾値を設定してもよい。なお、本別例における閾値L1,L2は、基準値Wsを基準とした場合の変化量(減少量)を示す。したがって、本別例では、基準値Wsから閾値L1,L2に定めた変化量だけ対応する値が低下した場合に、レーザ光Lの出力が低下したと判定される。このように構成すれば、レーザ光Lの出力が環境変化といった外的要因とは別の原因で低下したことを正確に検出することができる。
【0056】
・上記実施形態、又は上記別例(a)〜(c)において、制御装置80は、加工トリガ信号の入力に代えて、又は加えて異なる制御信号の入力に基づきレーザ光Lの出力のモニタ(監視)を開始してもよい。具体的に言えば、制御装置80は、コンソール7に設けられたモニタ開始ボタンの操作信号(モニタ開始信号)を入力した場合、図2において二点鎖線で示すシャッタSTを遮蔽状態(位置)へ動作させ、レーザ光Lが加工対象物Wに向けて照射されないように遮断(遮蔽)する。次に、制御装置80は、モニタ開始信号に基づいて、レーザ光Lが出射されていない状態におけるA/D変換器73の出力値を初期値W1として記憶させる。次に、制御装置80は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lを出射させるとともに、ヘッド4(A/D変換器73)から入力しているA/D変換器73の出力値(A/D変換値)を出力値W2として取得する。次に、制御装置80は、取得した出力値W2からメモリ80aに記憶させた初期値W1を減算して差分を算出するとともに、その差分をモニタ値Wmとする。また、制御装置80は、モニタ値Wmに基づきコンソール7の表示部7aにレーザ光Lの出力を表示させる。そして、制御装置80は、モニタ開始ボタンの操作信号、又は加工トリガ信号を入力する迄の間、出力値W2の取得、モニタ値Wmの算出、及びレーザ光Lの出力の表示を繰り返し行う。また、制御装置80は、モニタ開始ボタンの操作信号を入力した場合、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lの出力を停止させる。また、制御装置80は、加工トリガ信号を入力した場合、シャッタSTを非遮蔽状態(位置)へ動作させてレーザ光Lを加工対象物Wに照射させる。なお、この場合、レーザ加工期間中にレーザ光Lの出力のモニタを行わない構成としてもよい。本別例では、モニタ開始信号がモニタ開始指令となり、コンソール7がモニタ開始指令手段となる(以下、別例(d)と示す)。
【0057】
・上記別例(a)〜(d)において、レーザ光Lの出力の表示を行わなくてもよい。ただし、レーザ光Lの出力をオペレータに把握させる観点から、上記別例(a)〜(d)のように構成することが好ましい。
【0058】
・上記実施形態において、加工開始毎に初期値W1を記憶させたが、そのタイミングを変更してもよい。例えば、制御装置80は、初期値W1を記憶してから一定期間(例えば5分間)が経過する迄の間、加工トリガ信号を入力しても初期値W1の書き換えを行わないようにしてもよい。この場合、制御装置80は、前記一定期間の経過後、最初に入力した加工トリガ信号に基づいて初期値W1を記憶する。また、例えば、もっと長い周期となるレーザマーキング装置1の電源投入時毎に初期値W1を記憶させてもよい。他にも、コンソール7に初期設定ボタンを設け、その初期設定ボタンが操作されたことを契機に初期値W1を記憶させてもよい。さらに、制御装置80は、レーザ加工期間において、レーザ発振器20からレーザ光Lを出力していない期間におけるヘッド4(A/D変換器73)の出力値を初期値W1として記憶してもよい。
【0059】
・上記実施形態において、フォトディテクタ71に代えて、光電変換手段としてフォトダイオードを設けてもよい。
・上記実施形態において、表示部7aは、レーザ光Lの出力を数値で表示するもの以外にも、例えば、色などで表現してもよい。
【0060】
・上記実施形態において、コントローラ2、ヘッド4、及びコンソール7のうち少なくとも2つを一体に形成したレーザ加工装置としてもよい。例えば、コントローラ2とヘッド4を一体に形成してもよく、全てを一体に形成してもよい。
【0061】
・上記実施形態において、第1オペアンプ72a、及び第2オペアンプ72bの何れかを省略してもよい。
・上記実施形態において、異なるレーザ加工装置に具体化してもよい。例えば、レーザ溶接機、レーザ穴あけ機、及びレーザ切断機などに具体化してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…レーザマーキング装置(レーザ加工装置)、7…コンソール(加工開始指令手段、モニタ開始指令手段)、7a…表示部(表示手段、報知手段)、20…レーザ発振器、41X…第1ガルバノモータ41X(制御対象機器)、41Y…第2ガルバノモータ(制御対象機器)、70…分岐用ミラー(分岐手段)、71…フォトディテクタ(光電変換手段)、72a…第1オペアンプ、72b…第2オペアンプ、73…A/D変換器(A/D変換手段)、80…制御装置(モニタ値算出手段、機器制御手段、発振制御手段、検知手段、規制手段)、L1,L2…閾値、L,Ls…レーザ光、W…加工対象物、W1…初期値、W2…出力値、Wm…モニタ値、Ws…基準値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に照射するためのレーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ光の光路に設けられ、前記レーザ光の一部を分岐して取り出すための分岐手段と、
前記分岐手段により取り出されたレーザ光を検出する光電変換手段と、
前記光電変換手段によるレーザ光の出力に応じたレベルの電気信号を増幅して出力するオペアンプと、
前記オペアンプの出力信号をA/D変換して出力するA/D変換手段と、
前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を初期値として記憶し、その時々の前記A/D変換手段の出力値と前記初期値の差分を前記レーザ光の出力のモニタ値として算出するモニタ値算出手段と、を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
ヘッド部に前記分岐手段、前記光電変換手段、前記オペアンプ、及び前記A/D変換手段が配設されるとともに、
本体部に前記レーザ発振器、及び前記ヘッド部に配設された制御対象機器を制御する機器制御手段が配設され、
前記レーザ発振器から出力されたレーザ光は、前記ヘッド部と前記本体部とを接続する光ファイバにより前記ヘッド部に伝送されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記ヘッド部は、前記本体部に対して着脱可能に構成され、
前記ヘッド部には、前記A/D変換手段の出力値を記憶する記憶手段をさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力を表示する表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記モニタ値に基づいて、決められた前記レーザ光の出力となるように前記レーザ発振器を制御する発振制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力の低下を検知する検知手段と、前記検知手段が前記レーザ光の出力の低下を検知した場合にその旨を報知する報知手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記モニタ値に基づいて前記レーザ光の出力の低下を検知する検知手段が前記レーザ光の出力の低下を検知した場合に、前記レーザ発振器から前記レーザ光を出力することを規制する規制手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記検知手段は、前記レーザ発振器からレーザ光の出力を開始した際の前記A/D変換手段の出力値、及び前記モニタ値の何れか一方を基準値として記憶するとともに、前記基準値に対応するその時々の値と前記基準値との差分が予め定めた閾値に達した場合に前記レーザ光の出力が低下したと判定することを特徴とする請求項6、又は請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記レーザ光の出力のモニタを開始させるモニタ開始指令を出すモニタ開始指令手段をさらに備え、
前記モニタ値算出手段は、前記モニタ開始指令に基づいて、前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を前記初期値として記憶することを特徴とする請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザ光の照射による加工を開始させる加工開始指令を出す加工開始指令手段をさらに備え、
前記モニタ値算出手段は、前記加工開始指令に基づいて、前記レーザ光が出力されていない状態における前記A/D変換手段の出力値を前記初期値として記憶することを特徴とする請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76104(P2012−76104A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223311(P2010−223311)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】