説明

レーザ加工装置

【課題】出射するレーザ光の副波長帯成分を低減することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置10は、信号用レーザ光を出射する種光源21と信号用レーザ光を増幅する予備増幅部22とを備えた本体ユニット11と、本体ユニット11に接続され、予備増幅部22にて増幅された予備増幅光を伝送するファイバケーブル12(伝送用ファイバ37)と、ファイバケーブル12に接続され、該ファイバケーブル12にて伝送されたレーザ光Lを外部に出射するレーザ出射部13aを有するヘッドユニット13とを備える。そして、ヘッドユニット13には、レーザ光Lの光軸上のファイバケーブル12の出射側端部とレーザ出射部13aとの間にバンドパスフィルタ48が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂、ヘッド分離型のレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、信号用レーザ光を出射する種光源を備えた本体ユニットとから、レーザ光を外部に出射するレーザ出射部を有するヘッドユニットをファイバケーブルを介して分離させた所謂、ヘッド分離型のレーザ加工装置がある(例えば特許文献1参照)。このようなレーザ加工装置では、本体ユニットから分離させたヘッドユニットを小型とし、例えば製造ラインからある程度離れた場所に本体ユニットを設置するとともに、ヘッドユニットを製造ラインの近傍に設置して、ヘッドユニットから出射されるレーザ光にて製造ラインを流れるワークに加工を行うといった使用が可能となっている。このような構成によれば、製造ライン近傍に配置するヘッドユニットが小型のため、その設置がしやすく、また、ヘッドユニットが製造ラインの近傍にあっても邪魔になりにくい。また、本体ユニットに比べてヘッドユニットのメンテナンスの頻度を少なくすることができ、その結果、例えば、ヘッドユニットを危険エリアに設置したときに、作業者が危険エリアに近づく頻度を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−347338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなレーザ加工装置では、レーザ光の高出力化や、ヘッドユニットの配置自由度の向上のためにファイバケーブルの長距離化が求められている。しかしながら、ファイバケーブル長を長くしたり、ファイバケーブルで伝送するレーザ光の出力を大きくすると、ファイバケーブルでレーザ光を伝送する際に生じるラマン散乱の影響が顕著に表れ、それによって、出力したい所望の波長以外の副波長帯成分が増大してしまう。レーザ光の副波長帯成分が増大すると、ワークでのレーザ光の焦点ぼけが生じ、その結果、加工精度が低下するという問題が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、出射するレーザ光の副波長帯成分を低減することができるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定の波長帯域の信号用レーザ光を出射する種光源と、前記信号用レーザ光を増幅する本体側光増幅手段とを備えた本体ユニットと、前記本体ユニットに接続され、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を伝送するファイバケーブルと、前記ファイバケーブルに接続され、該ファイバケーブルにて伝送されたレーザ光を外部に出射するレーザ出射部を有するヘッドユニットとを備えたレーザ加工装置であって、前記ヘッドユニットには、前記レーザ光の光軸上の前記ファイバケーブルの出射側端部と前記レーザ出射部との間に、前記ファイバケーブルにて伝送された前記レーザ光の中の所定の波長帯域以外の光を除去するバンドパスフィルタが設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、本体側光増幅手段で増幅されてファイバケーブルにてヘッドユニットに伝送されたレーザ光は、バンドパスフィルタを通過し、これにより、副波長帯成分が除去されて、最終的にヘッドユニットのレーザ出射部から出射される。このため、ヘッドユニットから外部に出射されるレーザ光の副波長帯成分を低減することができ、その結果、加工対象でのレーザ光の焦点ぼけを抑えて加工精度を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記ヘッドユニットには、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を更に増幅するヘッド側光増幅手段が設けられ、前記バンドパスフィルタは、前記ヘッド側光増幅手段の前段に設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ヘッド側光増幅手段にて2度目の増幅がなされたレーザ光は高出力となるため、バンドパスフィルタをヘッド側光増幅手段の前段に設けることで、ヘッド側光増幅手段の後段に設ける構成に比べてバンドパスフィルタによるレーザ光の副波長帯成分の除去を容易とすることができる。また、本体ユニットとヘッドユニットにそれぞれ光増幅手段が設けられるため、各ユニットの構成を簡素化しつつも十分な光増幅が可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のレーザ加工装置において、前記本体側光増幅手段は、前記信号用レーザ光を加工対象への加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅し、前記ヘッド側光増幅手段は、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を前記加工対象への加工が可能なレベルまで増幅することを特徴とする。
【0011】
この発明では、信号用レーザ光は、本体側光増幅手段で加工対象への加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅され、その低強度の増幅光は、ファイバケーブルにてヘッドユニット側に伝送されるとともに、ヘッド側光増幅手段にて加工対象への加工が可能なレベルまで増幅される。これにより、本体ユニットに光増幅手段を備えつつも、本体ユニット側からファイバケーブルにてヘッドユニット側に伝送するレーザ光のパワーを抑えることができるため、ファイバケーブルでレーザ光を伝送する際にラマン散乱により生じる副波長帯成分の増大を抑えることが可能となり、その結果、バンドパスフィルタで除去する分のレーザ光(副波長帯成分の光(つまり、所定の波長帯域以外の光)のパワーを抑えることが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力を測定するための測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づき、前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、制御手段によってレーザ光の出力を所望のパワーに保つことができるため、バンドパスフィルタの副波長帯成分の除去で生じるパワーロスによってレーザ出力が低下してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力値を設定するための設定手段を備え、前記制御手段は、前記設定手段にて設定された前記出力値で前記レーザ光を前記レーザ出射部から出射させるべく該レーザ光の出力を前記測定手段の測定結果に基づき制御することを特徴とする。
【0015】
この発明では、レーザ出射部から出射するレーザ光の出力をユーザが設定手段によって設定することが可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記ファイバケーブルは、前記本体ユニット及び前記ヘッドユニットの少なくとも一方に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、ファイバケーブルが本体ユニット及びヘッドユニットの少なくとも一方に対して着脱可能に構成されるため、ファイバケーブルを長尺のものに交換することが可能となり、ファイバケーブルを長距離化した場合には、ラマン散乱によって生じるレーザ光の副波長帯成分の増大が顕著となるため、バンドパスフィルタによる副波長帯成分の除去がより効果的となる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、前記ファイバケーブルは、内部に希土類元素を含む希土類ドープファイバよりなることを特徴とする。
【0018】
この発明では、ファイバケーブル内の希土類元素を励起状態とすることでファイバケーブルにてレーザ光を伝送する際に、そのレーザ光を増幅することができ、その結果、例えば本体側光増幅手段の構成を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
従って、上記記載の発明によれば、出射するレーザ光の副波長帯成分を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のレーザ加工装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置10は、本体ユニット11と、本体ユニット11にファイバケーブル12及び電気ケーブル(図示略)を介して接続されたヘッドユニット13とを備えている。
【0022】
本体ユニット11は、所定の波長帯域の信号用レーザ光を出力する種光源21と、信号用レーザ光を増幅する予備増幅部22と、制御部23とを備えている。
種光源21は、制御部23の制御によりドライバ24を介して駆動され、その駆動にて出力された信号用レーザ光は、種光源21の後段に配置された予備増幅部22でワークWへの加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅される。
【0023】
予備増幅部22は、信号用レーザ光が入射されるドープファイバ25と、励起光を出力する励起光源26(レーザダイオード)とを備えている。ドープファイバ25は、希土類元素である例えばイッテルビウム(Yb)を含む可撓性を有するファイバであり、図示しないボビンに巻回されることで所要の長さの光路が確保されている。ドープファイバ25には、ファイバカプラ等よりなる光結合部27が設けられており、励起光源26から出力された励起光は、光結合部27を介してドープファイバ25に入射されるようになっている。制御部23は、ドライバ28を介して励起光源26の出力制御を行う。尚、ドープファイバ25の後段には、アイソレータ29が設けられている。アイソレータ29は、ドープファイバ25にて伝送される正方向(図1において右方向)の光は通過させる一方、逆方向の光(戻り光)を遮るようになっている。
【0024】
本実施形態のレーザ加工装置10は、光増幅手段を2つ備えており、その1つは前記した予備増幅部22であり、もう1つは主増幅部30である。
主増幅部30は、本体ユニット11に設けられた一対の励起光源31と、その一対の励起光源31が出力する励起光をヘッドユニット13側にそれぞれ伝送する一対の伝送用ファイバ32と、ヘッドユニット13に設けられたドープファイバ33とを備えている。ドープファイバ33は、予備増幅部22のドープファイバ25と同様に、希土類元素である例えばイッテルビウム(Yb)を含む可撓性を有するファイバであり、図示しないボビンに巻回されることで所要の長さの光路が確保されている。
【0025】
ドープファイバ33の前段側及び後段側にはそれぞれ、ファイバカプラ等よりなる前段側光結合部34及び後段側光結合部35が設けられ、この光結合部34,35は、一対の伝送用ファイバ32の出射側端部とそれぞれ接続されている。励起光源31から出力された励起光は、伝送用ファイバ32を通って本体ユニット11側からヘッドユニット13側に伝送され、光結合部34,35を介してドープファイバ33に入射されるようになっている。制御部23は、ドライバ36を介して励起光源31の出力制御を行う。
【0026】
本体ユニット11とヘッドユニット13とを繋ぐファイバケーブル12は、前述の各伝送用ファイバ32と、予備増幅部22にて増幅されたレーザ光(予備増幅光)をヘッドユニット13側に伝送するための伝送用ファイバ37とが外皮部材38にて被覆されて一本のケーブルとして構成されている。このファイバケーブル12は、両端部がそれぞれ本体ユニット11及びヘッドユニット13の各ハウジング(図示略)に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
ヘッドユニット13において、主増幅部30の光結合部35の後段には、主増幅部30から出射されたレーザ光Lの出力を測定するためのレーザ出力測定部41が設けられている。レーザ出力測定部41は、レーザ光Lの光軸上に配置された例えばビームスプリッタ等よりなる光分岐部42と、その光分岐部42の近傍に設けられた受光素子43とを備えている。光分岐部42は、主増幅部30から出射されたレーザ光Lの一部を受光素子43に向かって反射する。受光素子43は、光分岐部42からのレーザ光Lを受光し、その受光結果に基づく検出信号を制御部23に出力する。
【0028】
また、ヘッドユニット13において、光分岐部42の後段には、主増幅部30から出射され光分岐部42を透過したレーザ光Lを平行光あるいは収束光に絞るコリメータレンズ44を備えている。コリメータレンズ44を通じて絞られたレーザ光Lは、ヘッドユニット13に設けられた光走査機構45によって所要の方向に反射される。光走査機構45は、レーザ光Lを反射する2つのガルバノミラーを有して構成されるものであって、各ガルバノミラーの傾斜角度を変化させることにより、コリメータレンズ44を通じて絞られたレーザ光Lを所要の方向に走査させるものであり、制御部23によってドライバ46を介して駆動制御される。光走査機構45にて反射されたレーザ光Lは、集光レンズ47にてスポットレーザ光に絞り込まれる。そして、その絞り込まれたレーザ光Lがヘッドユニット13のレーザ出射部13aから外部に出射されて、ワークW(加工対象)の表面上を走査されることにより所望の加工が行われる。
【0029】
ここで、本実施形態のレーザ加工装置10では、ヘッドユニット13内の光軸上において、伝送用ファイバ37の出射側端部と主増幅部30の前段側光結合部34との間には、バンドパスフィルタ48が設けられている。バンドパスフィルタ48は、所定波長の光を透過させるとともに、それ以外の波長の光を透過させないという特性を有している。伝送用ファイバ37にて伝送されたレーザ光は、バンドパスフィルタ48を介して主増幅部30のドープファイバ33に入射されるように構成されている。
【0030】
尚、レーザ加工装置10には、例えばコンソール等の操作部51が設けられている。操作部51は、本体ユニット11に接続されており、この操作部51にてレーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力値を含む加工情報の設定を行うことができる。操作部51にて設定された加工情報は、制御部23に入力され、制御部23は、その加工情報に基づいて本体ユニット11及びヘッドユニット13を制御する。
【0031】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
予備増幅部22において、励起光源26から出力された励起光が光結合部27を介してドープファイバ25に入射されると、その励起光によってドープファイバ25内の希土類元素が励起状態とされる。この状態で、種光源21から出力された信号用レーザ光がドープファイバ25に入射されると、その信号用レーザ光は、ドープファイバ25内においてワークWへの加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅される。そして、その増幅されたレーザ光(予備増幅光)は、ファイバケーブル12の伝送用ファイバ37を通ってヘッドユニット13側に伝送され、
伝送用ファイバ37にてヘッドユニット13側に伝送されたレーザ光は、バンドパスフィルタ48を介して主増幅部30のドープファイバ33に入射される。主増幅部30において、各励起光源31から出力された励起光が伝送用ファイバ32及び光結合部34,35を介してドープファイバ33に入射されると、その励起光によってドープファイバ33内の希土類元素が励起状態とされる。この状態で、バンドパスフィルタ48を通過した予備増幅光がドープファイバ33に入射されると、その予備増幅光は、ドープファイバ33内においてワークWへの加工が可能なレベルに増幅される。そして、主増幅部30にて増幅されたレーザ光Lは、コリメータレンズ44、光走査機構45及び集光レンズ47を介してレーザ出射部13aから外部に出射され、ワークWへの加工がなされる。
【0032】
ここで、本実施形態のレーザ加工装置10では、ヘッドユニット13内の伝送用ファイバ37の後段にバンドパスフィルタ48が設けられ、これにより、本体ユニット11の予備増幅部22で増幅されて伝送用ファイバ37によってヘッドユニット13側に伝送された予備増幅光がバンドパスフィルタ48を通過するように構成されている。このため、予備増幅光が伝送用ファイバ37にて伝送される際に、ラマン散乱によって予備増幅光の副波長帯成分が増大してしまっても、主増幅部30の前段のバンドパスフィルタ48によって副波長帯成分が除去される。これにより、ヘッドユニット13から外部に出射されるレーザ光Lの副波長帯成分が低減され、その結果、ワークW表面でのレーザ光Lの焦点ぼけが抑えられて加工精度が向上するようになっている。
【0033】
また、本実施形態では、ファイバケーブル12が本体ユニット11及びヘッドユニット13に対して着脱可能に構成されているため、ファイバケーブル12を例えば長さが異なるものに交換すること可能となっている。そして、ファイバケーブル12を長尺のものとした場合、ファイバケーブル12の伝送用ファイバ37も長尺となる。このため、伝送用ファイバ37にて予備増幅光を伝送する際にラマン散乱によって生じる副波長帯成分の増大が顕著となるが、本実施形態ではバンドパスフィルタ48によって副波長帯成分が除去されるため、ファイバケーブル12の長距離化が可能となっている。
【0034】
また、本実施形態では、制御部23は、レーザ出力測定部41の受光素子43から出力された検出信号に基づき、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力が所望のパワーとなるように種光源21、励起光源26又は励起光源31のフィードバック制御を行う。本実施形態のようにバンドパスフィルタ48を備えた構成では、バンドパスフィルタ48による副波長帯成分の除去によって幾らかのパワーロスが生じるが、上記した制御部23のフィードバック制御によって、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を所望のパワーとすることが可能となっている。
【0035】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ヘッドユニット13には、レーザ光Lの光軸上のファイバケーブル12(伝送用ファイバ37)の出射側端部とレーザ出射部13aとの間に、伝送用ファイバ37にて伝送されたレーザ光(予備増幅光)の中の所定の波長帯域以外の光(副波長帯成分)を除去するバンドパスフィルタ48が設けられる。これにより、本体ユニット11の予備増幅部22で増幅されて伝送用ファイバ37にてヘッドユニット13に伝送されたレーザ光は、バンドパスフィルタ48を通過し、これにより、副波長帯成分が除去されて、最終的にヘッドユニット13のレーザ出射部13aから出射される。このため、ヘッドユニット13から外部に出射されるレーザ光Lの副波長帯成分を低減することができ、その結果、ワークWでのレーザ光の焦点ぼけを抑えて加工精度を向上させることができる。
【0036】
(2)ヘッドユニット13には、予備増幅部22にて増幅されたレーザ光を更に増幅する主増幅部30が設けられ、バンドパスフィルタ48は、主増幅部30(詳しくは、ドープファイバ33)の前段に設けられる。主増幅部30にて2度目の増幅がなされたレーザ光Lは加工が可能な高出力なパワーとなるため、バンドパスフィルタ48を主増幅部30の前段に設けることで、主増幅部30の後段に設ける構成に比べてバンドパスフィルタ48によるレーザ光の副波長帯成分の除去を容易とすることができる。また、本体ユニット11とヘッドユニット13にそれぞれ光増幅手段(予備増幅部22及び主増幅部30)が設けられるため、各ユニット11,13の構成を簡素化しつつも十分な光増幅が可能となる。
【0037】
(3)信号用レーザ光は、予備増幅部22でワークWへの加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅され、その低強度の予備増幅光は、伝送用ファイバ37にてヘッドユニット側に伝送されるとともに、主増幅部30にてワークWへの加工が可能なレベルまで増幅される。このため、本体ユニット側から伝送用ファイバ37にてヘッドユニット側に伝送するレーザ光のパワーを抑えることができるため、伝送用ファイバ37でレーザ光を伝送する際にラマン散乱により生じる副波長帯成分の増大を抑えることが可能となり、これにより、本体ユニット11に光増幅手段(予備増幅部22)を備えつつも、本体ユニット11側から伝送用ファイバ37にてヘッドユニット13側に伝送するレーザ光のパワーを抑えることができるため、伝送用ファイバ37でレーザ光を伝送する際にラマン散乱により生じる副波長帯成分の増大を抑えることが可能となり、その結果、バンドパスフィルタ48で除去する分のレーザ光(副波長帯成分の光(つまり、所定の波長帯域以外の光)のパワーを抑えることが可能となる。
【0038】
(4)レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を測定するためのレーザ出力測定部41と、該レーザ出力測定部41の測定結果に基づき、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を制御する制御部23とを備える。これにより、制御部23によってレーザ光Lの出力を所望のパワーに保つことができるため、バンドパスフィルタ48の副波長帯成分の除去で生じるパワーロスによってレーザ出力が低下してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0039】
(5)レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力値を設定するための操作部51を備え、制御部23は、操作部51にて設定された出力値でレーザ光Lをレーザ出射部13aから出射させるべく該レーザ光Lの出力を制御する。このため、レーザ出射部13aから出射するレーザ光Lの出力を操作部51によってユーザが設定することが可能となる。
【0040】
(6)ファイバケーブル12が本体ユニット11及びヘッドユニット13に対して着脱可能に構成されるため、ファイバケーブル12を例えば長さが異なるものに交換すること可能となる。例えば、ファイバケーブル12を長尺のものに交換した場合には、ラマン散乱によって生じるレーザ光の副波長帯成分の増大が顕著となるため、バンドパスフィルタ48による副波長帯成分の除去がより効果的となる。
【0041】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ファイバケーブル12を本体ユニット11及びヘッドユニット13の両方に対して着脱可能に構成したが、これに特に限定されるものではなく、本体ユニット11側のみで着脱可能とし、ヘッドユニット13とは固定されている構成や、反対にヘッドユニット13側のみで着脱可能とし、本体ユニット11とは固定されている構成としてもよい。また、ファイバケーブル12を本体ユニット11及びヘッドユニット13に対して着脱不能としてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、バンドパスフィルタ48を主増幅部30(ドープファイバ33)の前段に設けたが、これに特に限定されるものではなく、例えば主増幅部30の後段に設けてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、主増幅部30のドープファイバ33をヘッドユニット13に設けたが、これに特に限定されるものではなく、ドープファイバ33を本体ユニット11に設けてもよい。尚、ドープファイバ33を本体ユニット11に設ける構成では、伝送用ファイバ32をヘッドユニット13まで引き延ばす必要がなくなる。
【0044】
・上記実施形態におけるバンドパスフィルタ48の設置態様は適宜変更してもよい。例えば、伝送用ファイバ37の出射側端面、又はドープファイバ33の入射側端面にバンドパスフィルタ48を蒸着によって設ける構成としてもよい。
【0045】
・上記実施形態では、2つの光増幅手段(予備増幅部22と主増幅部30)を備える構成としたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態において主増幅部30を省略して予備増幅部22のみの構成として、その予備増幅部22に主増幅部30の機能を持たせ、その増幅部によって信号用レーザ光をワークWへの加工が可能なレベルまで増幅するように構成してもよい。つまり、光増幅手段を本体ユニット11に設けた1つとし、その光増幅手段にて信号用レーザ光をワークWへの加工が可能なレベルまで増幅するように構成してもよい。また、光増幅手段を3つ以上で構成してもよい。
【0046】
・上記実施形態において、伝送用ファイバ37に、内部に希土類元素を含む希土類ドープファイバを用いてもよい。この構成によれば、伝送用ファイバ37内の希土類元素を励起状態とすることで伝送用ファイバ37にてレーザ光(予備増幅光)を伝送する際に、そのレーザ光を増幅することができ、その結果、例えば予備増幅部22の構成を簡素化することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
10…レーザ加工装置、11…本体ユニット、12…ファイバケーブル、13…ヘッドユニット、13a…レーザ出射部、22…予備増幅部(本体側光増幅手段)、23…制御部(制御手段)、30…主増幅部(ヘッド側光増幅手段)、41…レーザ出力測定部(測定手段)、48…バンドパスフィルタ、51…操作部(設定手段)、L…レーザ光、W…ワーク(加工対象)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長帯域の信号用レーザ光を出射する種光源と、前記信号用レーザ光を増幅する本体側光増幅手段とを備えた本体ユニットと、
前記本体ユニットに接続され、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を伝送するファイバケーブルと、
前記ファイバケーブルに接続され、該ファイバケーブルにて伝送されたレーザ光を外部に出射するレーザ出射部を有するヘッドユニットと
を備えたレーザ加工装置であって、
前記ヘッドユニットには、前記レーザ光の光軸上の前記ファイバケーブルの出射側端部と前記レーザ出射部との間に、前記ファイバケーブルにて伝送された前記レーザ光の中の所定の波長帯域以外の光を除去するバンドパスフィルタが設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記ヘッドユニットには、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を更に増幅するヘッド側光増幅手段が設けられ、
前記バンドパスフィルタは、前記ヘッド側光増幅手段の前段に設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記本体側光増幅手段は、前記信号用レーザ光を加工対象への加工が可能なレベルより低い光強度まで増幅し、
前記ヘッド側光増幅手段は、前記本体側光増幅手段にて増幅されたレーザ光を前記加工対象への加工が可能なレベルまで増幅することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力を測定するための測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づき、前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ出射部から出射する前記レーザ光の出力値を設定するための設定手段を備え、
前記制御手段は、前記設定手段にて設定された前記出力値で前記レーザ光を前記レーザ出射部から出射させるべく該レーザ光の出力を前記測定手段の測定結果に基づき制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記ファイバケーブルは、前記本体ユニット及び前記ヘッドユニットの少なくとも一方に対して着脱可能に構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記ファイバケーブルは、内部に希土類元素を含む希土類ドープファイバよりなることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−30509(P2013−30509A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163582(P2011−163582)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】