説明

レーザ加工装置

【課題】暖機運転に必要な時間を短縮すると共に、煩雑な作業を伴わずに加工精度を安定させる。
【解決手段】レーザ発振器から出射されたレーザビームを、加工光学系を介してワークに入射し、ワークをレーザ加工するレーザ加工装置であって、加工光学系が、レーザビームをワークに対して垂直に入射・集光させるためのスキャンレンズ9と、スキャンレンズ9を予め設定された温度に加熱するヒータ11と、を備え、ヒータ11はスキャンレンズ9の外周部に対して近接離間可能に設けられている。ヒータ11に対しては、ヒータ11が離間した場合には断熱部材13をヒータ11とスキャンレンズ9との間に位置させ、近接した場合には断熱部材13をヒータ11とスキャンレンズ9との間から後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板加工用のレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置でレーザ加工を行うときはスキャンレンズに、レーザビームのエネルギーの1%以下の熱が吸収される。そのため、加工動作でレーザ照射を続けるうちに、スキャンレンズに吸収された熱が蓄積し、スキャンレンズの温度が上昇する。スキャンレンズの温度が上昇すると、屈折率が変化し、加工穴位置精度が低下する。この穴位置のズレは、スキャンレンズの材質や構造によって異なるが、例えば1℃につき10数μm程度認められる。そこで、蓄熱に起因する加工精度の劣化を抑制し、加工精度を安定させるために、実際にワークへのレーザ加工前にレーザビームをスキャンレンズに照射しながら、レーザ加工装置の暖機運転を行い、レーザ加工位置精度の安定を図っている。
【0003】
しかし、単に断機運転を行っただけでは、十分な加工位置精度を得ることはできない。そこで、例えば、特許文献1には、レーザ発振器から出射されるレーザビームの光軸上に設けられた一群のコリメートレンズと、コリメータレンズ間隔を調整する駆動装置と、fθレンズと加工テーブル上に載置されている被加工物とのワークディスタンスを調整するZ軸スライダと、光学系の代表温度を測定する温度センサを備え、前記温度センサによる測定値に対応してコリメータレンズ間隔とワークディスタンスを調整する技術が開示されている。具体的には、加工に先立ち、fθレンズの温度を測定し、NC制御装置では、fθレンズの温度からワークディスタンスの補正量と、加工焦点距離の補正量を計算する。その際、ワークディスタンスは、fθレンズの光学特性の変化による加工位置のズレをキャンセルするように調整し、加工焦点がプリント基板表面に合うようにコリメータレンズの間隔を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の技術では、レーザ発振条件による集光レンズの温度変化により集光レンズが変形し、ビームを照射する位置がずれ、加工位置精度が不安定になるという問題に対し、光学系の代表温度を測定する温度センサを備え、前記温度センサによる測定値に対応して、コリメータレンズ間隔とワークディスタンスを調整することにより対応していた。しかし、測定温度に応じてコリメータレンズ間隔、スキャンレンズとワークとの間隔を調整する必要があり、補正に伴う作業が非常に煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、暖機運転に必要な時間を短縮すると共に、煩雑な作業を伴わずに加工精度を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため第1の手段は、レーザ発振器から出射されたレーザビームを、加工光学系を介してワークに入射し、当該ワークをレーザ加工するレーザ加工装置であって、前記加工光学系が、レーザビームをワークに対して垂直に入射・集光させるためのスキャンレンズと、前記スキャンレンズを予め設定された温度に加熱する加熱手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
第2の手段は、第1の手段において、前記加熱手段が、前記スキャンレンズの外周部に対して近接離間可能に設けられていることを特徴とする。
【0009】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、前記スキャンレンズと前記加熱手段との間に、前記加熱手段から前記スキャンレンズへの熱伝達を遮断するための断熱手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
第4の手段は、第3の手段において、前記加熱手段が前記スキャンレンズから離間したときに前記断熱手段を前記加熱手段と前記スキャンレンズとの間に進出させる駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
第5の手段は、第2ないし第4のいずれかの手段において、前記加熱手段が離間位置に位置したとき、当該加熱手段と接触して当該加熱手段を冷却させる冷却手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記スキャンレンズの温度を測定する温度測定手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
第7の手段は、第6の手段において、前記レーザ加工装置の暖機運転時の前記スキャンレンズの熱平衡温度を目標温度とし、前記温度測定手段によって測定された前記スキャンレンズの測定温度と前記目標温度が同じ温度になるように前記加熱手段の温度を調節する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
第8の手段は、第7の手段において、前記制御手段は、前記目標温度に対して測定温度が低い場合は前記加熱手段を加熱状態にして前記スキャンレンズに近接させ、前記目標温度に対して測定温度が高い場合は前記加熱手段を非加熱状態にして前記スキャンレンズから離間させることを特徴とする。
【0015】
第9の手段は、第8の手段において、前記目標温度を加工条件毎に記憶する記憶手段を備え、前記制御手段は加工条件に応じて前記目標温度を前記記憶手段から読み出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、暖機運転に必要な時間を短縮すると共に、煩雑な作業を伴わずに加工精度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置のスキャンレンズ及びその取り付け部の構造を示す横断面図である。
【図3】図2におけるA−A線端断面で、ヒータの移動機構とその動作を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る制御を実行する制御システムを示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、スキャンレンズを加熱する加熱手段を設け、当該加熱手段の位置及び/又は温度を制御することにより、暖気運転の時間の短縮化を図るようにしたものである。以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成の概略を示す図である。
同図において、レーザ加工装置本体のXYテーブル2はベッド1上を水平な直交2軸方向のX、Y方向に移動可能になるように設けられている。XYテーブル2上には表面に内部の中空部に接続する複数の孔が形成され、中空部を真空源に接続することにより真空吸着機能を持たせたサブテーブル3が固定されている。サブテーブル3上にはワーク4が吸着保持されている。
【0020】
門型のコラム5はベッド1上に固定されている。このコラム5上部にはレーザ発振器6が設置され、レーザ発振器6から出力されたレーザビーム6aは、ミラー7によって光路を偏向され、ガルバノスキャナ8により位置決めされる。一方、Z軸駆動ユニット10によってZ軸方向に移動可能なZ軸サドル19が設けられ、このZ軸サドル19上にはfθレンズ等のスキャンレンズ9及び前述のガルバノスキャナ8等が搭載されている。Z軸駆動サドル19は、スキャンレンズ9の焦点位置に対して上下方向に移動し、レーザ光を焦点位置に照射させ、ワーク4を加工する。
【0021】
図2はスキャンレンズ及びその取り付け部の横断面図である。同図において、スキャンレンズ9の外周部には、4分割されたヒータ11が配置されている。ヒータ11はガイド付きスプリング14により最外部の冷却ユニット12に対して進出後退可能に設けられている。このようにヒータ11を設けると、図2(a)に示すようにヒータ11をスキャンレンズ9に近づけ、ヒータ11から放熱される熱をスキャンレンズ9側に伝熱させることができる。この伝熱により、スキャンレンズ9の蓄熱量が上昇し、スキャンレンズ9の温度が上昇する。
【0022】
このようにヒータ11を4分割し、それぞれがスキャンレンズ9に対してガイド付きスプリング14により進出後退可能に設けると、温度を上げたいときにはヒータ11をスキャンレンズ9に近づけ、温度を維持したい場合には、図2(b)に示すようにヒータ11をスキャンレンズ9から遠ざける。この構成により、ある加工条件における暖機運転中のスキャンレンズ9の熱平衡状態と同じ温度にすることができる。
【0023】
また、ヒータ11の周囲には冷却ユニット12が設けられ、ヒータ11の熱を吸収するようになっている。この冷却ユニット12はヒータ11により過熱状態となったレンズを冷却するものであり、図2(b)に示すようにヒータ11がガイド付きスプリング14によりスキャンレンズ9から遠ざかる方向に最大限移動したときに、ヒータ11と冷却ユニット14とが接触し、ヒータ11を冷却する。ヒータ11が冷却されると、ヒータ11の過熱状態による雰囲気温度の上昇に伴うスキャンレンズ9の温度の上昇を防ぐことができる。
【0024】
図3はヒータの移動機構とその動作を示す図であり、図2におけるA−A線端断面である。図3(a)はスキャンレンズ9にヒータ11が近接した状態を示し、図2(a)のA−A線端断面図に相当し、図3(b)は図2(b)のA−A線端断面図に相当する。本実施形態では、ヒータ11はガイド付きスプリング14により常時スキャンレンズ9側に弾性力を付与されており、ヒータ11を断熱部材13の移動によりスキャンレンズ9に対して近接、離間させるようになっている。
【0025】
すなわち、ヒータ11は冷却ユニット12に取り付けられたガイド付きスプリング14のガイドによって水平方向に、ガイドに沿って可動に支持されている。冷却ユニット12はスキャンレンズ9に対して外側に設けられた取り付け板15に取り付けられ、その取り付け板15の外側にはさらにシリンダ16が取り付けられている。シリンダ16は図において下側に伸縮するロッド17を備え、ロッド17の先端(下端)には、断熱部材13の支持板18が取り付けられている。断熱部材13は支持板18の上面で支持されており、ロッド17の伸縮動作に応じて断熱部材13は下降、上昇動作を行う。
【0026】
ヒータ11の下面11aはスキャンレンズ9から遠い側がより下側で、近い側が上側になるような傾斜面(断面楔形)に形成されている。他方、図3から分かるように断熱部材13の上面13aは、スキャンレンズ9から遠い側がより下側で、近い側が上側になるような傾斜面(断面楔形)に形成され、前記下面11aと上面13aは互いに平行となる傾斜角となっている。そして、ヒータ11がスキャンレンズ9に最も近接した位置にあるときに、断熱材13はヒータ11の真下に位置し、前記下面11aと上面13aは所定量離れている。断熱部材13は平面視でスキャンレンズ9の周囲を囲むように配置されている。本実施形態では、スキャンレンズ9の外形に合わせて平面視ドーナツ状の形状となっている。
【0027】
このように構成すると、スキャンレンズ9を加熱する場合には、図3(a)に示すようにシリンダ16によってロッド17を伸長させて断熱材13をヒータ11から離れた状態にする。そして、スキャンレンズ9の過熱状態を解消する場合には、ロッド17を収縮させる。言い換えればロッド17を引き上げる。これにより、断熱部材13が上方に移動し、断熱部材13の傾斜した上面13aがヒータの同じ傾斜角で傾斜した下面11aに突き当たり、ヒータ11を押し上げる。この押し上げ動作により、ヒータ11は斜面11aに生じる水平分力によって冷却ユニット12側に水平に移動する。そして、水平移動が完了したところで、断熱部材13はヒータ11の側面に沿って上昇し、ヒータ11とスキャンレンズ9との間に位置する。
【0028】
この位置に断熱部材13が位置すると、ヒータ11からの放射熱は断熱部材13によって遮蔽され、スキャンレンズ9側には伝達されない。この状態は、図2(b)に示す状態であり、ヒータ11の外側の平面状の側面11bは冷却ユニット12の平面状の内面に接触し、ヒータ11の熱を吸熱してヒータ11を冷却する。断熱部材13と冷却ユニット12はこのような機能を有することから、断熱部材13としては、例えばセラミックスあるいは樹脂系の断熱材が好適である。また、断熱部材13を断熱位置(図2(b)及び図3(b)に示す位置)に位置させたとき、ヒータ11がさめるまでに断熱部材13自身がヒータ11によって暖められてしまうと、所望の断熱効果を得ることができない場合があるので、断熱部材13の熱容量は大きいものが望ましい。
【0029】
さらに、冷却ユニット12は、ヒータ11をスキャンレンズ9から離した位置に移動させ、あるいは断熱部材13を間に挿入して直接ヒータ11の熱がスキャンレンズ9に伝達されないようにしたとしても、ヒータ11の放熱が完了するまでに、スキャンレンズ9に熱的な影響を与える可能性がある。そこで、冷却ユニット12は、ヒータ11の余熱を速やかに移行させるため、例えばアルミニウム材を使用したヒートシンク、あるいはアルミニウム材に冷却水を通したヒートシンクなどが使用される。
【0030】
このように本実施形態では、図3(b)に示すようにシリンダ16により断熱部材13が上方に移動すると、ヒータ11及び断熱部材13の互いの傾斜面11a,13aにより、ヒータ11はガイド付きスプリング14の弾発力に抗してスキャンレンズ9から遠ざかる方向へ後退する。この状態になると、スキャンレンズ9とヒータ11との間に断熱部材13が介在する構成となるので、ヒータ11が過熱状態にあっても、その熱はスキャンレズ9に直接伝わることはない。そのため、スキャンレンズ9の不要な温度上昇を防止することができる。また、ワーク4に対するレーザ加工終了時に断熱部材13を下げて、ヒータ11をスキャンレンズ9に接するようにすると、加工待機中においても、スキャンレンズ9の温度を一定に保つことができる。なお、スキャンレンズ9の温度を一定に保持する場合、必要に応じて断熱部材13の昇降動作を繰り返し、スキャンレンズ9側に供給される熱量を制御すればよい。
【0031】
なお、本実施形態では、断熱部材13の昇降動作をシリンダ16によって作動するロッド17の伸縮動作に連動させ、さらに断熱部材13の昇降動作をヒータ11の近接離間動作に連動させているが、断熱部材13とヒータ11の移動をそれぞれ別のアクチュエータを使用して独立して駆動し、ヒータ11のスキャンレンズ9に対する近接離間動作と、断熱部材13の下降上昇動作を連動させることも可能である。この場合には、断熱部材13によってヒータ11を駆動する必要がないので、ヒータ11及び断熱部材13に必ずしも斜面11a,13aを設ける必要なない。
【0032】
また、ヒータ1のスキャンレンズ9に対する近接離間動作に用いるアクチュエータはモータ、シリンダ(油圧、空気圧)等通常の設計的な範囲で考えられるようなものであればどのようなものでも適用可能である。また、断熱部材13の上昇下降動作に関しても同様のものが適用可能である。
【0033】
さらに、本実施形態では、断熱部材13及び断熱部材13を駆動するシリンダ16を設け、あるいは、ヒータ11の駆動にガイド付きスプリング14を使用しているが、これらを省略し、ヒータ11とヒータ11のスキャンレンズ9に対する近接離間動作のみ実行可能な駆動機構を設けることもできる。この場合、ヒータ11の近接離間動作、あるいはヒータ11のオンオフ動作とヒータ11の近接離間動作を組み合わせてスキャンレンズ9の温度制御を行うことが可能である。
【0034】
加えて、断熱部材13、シリンダ6などのヒータ11及び断熱部材13を駆動する機構を全て省略し、位置が固定されたヒータ11のみでスキャンレンズ9の加熱制御を行うことも可能である。その場合、ヒータ11のオンオフのみでスキャンレンズ9の温度を制御し、加工精度を確保することもできる。詳細は後述のヒータ11のフィードバック温度制御を参照のこと。
【0035】
なお、本実施形態では、ヒータ11はスキャンレンズ9の側面に対向して配置されているが、スキャンレンズ9は一般に複数枚のレンズを組み合わせて構成され、ホルダに支持されているので、ヒータ11は直接的にはスキャンレンズ9のホルダを加熱し、スキャンレンズ9はホルダを介して間接的に加熱されることになる。これにより、温度分布にムラが少なくなり、スキャンレンズ9の加熱状態としてはより好ましい状態となる。また、ヒータ11の構成として、銅ブロックの背面側(冷却ユニット12側)にヒータを形成するようにすれば、よりスキャンレンズ9の加熱が均一にでき、冷却速度も早くなり、この実施形態においてもスキャンレンズ9の加熱状態としてはより好ましい状態となる。
【0036】
さらに、前述のようにヒータ11のオンオフ動作を行う場合、ヒータ11のオンオフのタイミングを設定する必要があるが、その場合に、スキャンレンズ9の温度を検出し、その検出結果をオンオフの動作にフィードバックして行うことが好ましい。そこで、温度検出をスキャンレンズ9のホルダの内部あるいは外周部に設けた温度センサ110(図4参照)によって行うようにするとよい。本実施形態では、ホルダもスキャンレンズ9の外周形状と相似であることから1個所の温度検出点で平均的な温度計測が可能である。しかし、スキャンレンズ9の形状によっては温度検出点を複数設け、複数個所で検出した温度の平均値をとるようにすることもできる。
【0037】
ヒータ11のフィードバック制御は、例えば、レーザ加工装置の暖機運転時のスキャンレンズ9の熱平衡温度とスキャンレンズ9の測定温度とが同じ温度になるように行われ、そのために図4に示す制御装置100が設けられている。図4は本実施形態に係る制御を実行する制御システムを示す機能ブロック図である。この制御装置100はヒータ温度だけではなく、前述のシリンダ9のロッド7の駆動も制御し、ひいては断熱部材13による伝熱状態も制御する。すなわち、制御装置100は、目標温度に対して温度センサ110測定温度が低い場合はヒータ電源をオンにしてヒータ11をスキャンレンズ9に近づけ、目標温度に対して測定温度が高い場合はヒータ11の電源をオフしてヒータ11をスキャンレンズから遠ざける。そのため、制御装置100は、目標温度を加工条件毎にテーブル化して記憶するメモリ101を備え、ヒータ11の加熱制御の場合には、目標温度をメモリ101から読み出し、前記温度センサ110によって計測された温度と比較し、その比較結果に基づいてヒータ11の温度制御、あるいはこれに加えてシリンダ6の駆動制御を実行する。
【0038】
なお、シリンダ6の駆動は当該シリンダ(アクチュエータ)6を駆動するドライバ120に制御装置100から制御信号を送信することにより行われ、ヒータ11のON/OFF制御もヒータドライバ130に送られる制御装置100からの制御信号に基づいて実行される。
【0039】
加工条件とは、主にレーザ加工条件のことで、レーザの周波数、パルス幅、ショット数などである。このように様々なレーザ加工条件における暖気運転時のスキャンレンズ9の温度上昇特性(経時変化特性)をメモリ101にテーブル化して記憶しておき、テーブルを参照してフィードバック制御を行うことにより、様々な加工条件下での加工精度の安定性を確保することができる。また、暖気運転時のスキャンレンズ9の温度上昇の履歴をメモリ101に記憶しておき、暖気運転なしでスキャンレンズ9が熱平衡温度に達して安定するまで、そのときの温度、レーザ照射の繰り返し回数に応じて、スキャンレンズ9の温度計測の都度、そのときの温度に応じて発生しているレーザ光の光軸のズレを補正するように制御することも可能である。このように制御することによっても、加工精度の安定化に寄与することができる。
【0040】
なお、制御装置100は、図示しないCPU、ROM、RAMを備え、CPUはROMに格納されているプログラムコードを読み出し、RAMに展開し、当該RAMをワークエリア及びデータバッファとして使用しながらプログラムコードで定義されたプログラムに基づく制御を実行する。なお、目標温度を加工条件毎に記憶するメモリ101として前記RAMを使用することもできるし、別途、設けた記憶装置を使用することもできる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、ヒータ11と冷却ユニット12によりスキャンレンズ9の加熱とヒータ11の冷却が迅速に行われ、暖機運転の時間を短縮し、あるいは無くすことができる。また、温度センサによって測定した温度に基づいてヒータ11の加熱制御を行うことができるので、スキャンレンズ9の温度を所定の温度に保持することが可能となる。その結果、スキャンレンズ9の温度変化による屈折率の変化を生じさせることなく、安定した加工精度を確保することができる。
【0042】
なお、特許請求の範囲におけるレーザ発振器は本実施形態では符号6に、レーザビームは符号6aに、加工光学系はミラー7、ガルバノスキャナ8及びスキャンレンズ9に、ワークは符号4に、加熱手段はヒータ11に、断熱手段は断熱部材13に、駆動手段はシリンダ16、ロッド17及び支持板18に、冷却手段は冷却ユニット12に、温度測定手段は温度センサ110に、制御手段は制御装置100に、記憶手段はメモリ101に、それぞれ対応する。
【0043】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
4 ワーク
6 レーザ発振器
6a レーザビーム
7 ミラー
8 ガルバノスキャナ
9 スキャンレンズ
11 ヒータ
12 冷却ユニット
13 断熱部材
16 シリンダ
17 ロッド
18 支持板
100 制御装置
101 メモリ
110 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から出射されたレーザビームを、加工光学系を介してワークに入射し、ワークをレーザ加工するレーザ加工装置であって、
前記加工光学系が、
レーザビームをワークに対して垂直に入射・集光させるためのスキャンレンズと、
前記スキャンレンズを予め設定された温度に加熱する加熱手段と、
を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ加工装置であって、
前記加熱手段が、前記スキャンレンズの外周部に対して近接離間可能に設けられていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のレーザ加工装置であって、
前記スキャンレンズと前記加熱手段との間に、前記加熱手段から前記スキャンレンズへの熱伝達を遮断するための断熱手段を備えていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3記載のレーザ加工装置であって、
前記加熱手段が前記スキャンレンズから離間したときに前記断熱手段を前記加熱手段と前記スキャンレンズとの間に進出させる駆動手段を備えていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置であって、
前記加熱手段が離間位置に位置したとき、当該加熱手段と接触して当該加熱手段を冷却させる冷却手段を備えていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置であって、
前記スキャンレンズの温度を測定する温度測定手段を備えていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項6記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ加工装置の暖機運転時の前記スキャンレンズの熱平衡温度を目標温度とし、前記温度測定手段によって測定された前記スキャンレンズの測定温度と前記目標温度が同じ温度になるように前記加熱手段の温度を調節する制御手段を備えていること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項7記載のレーザ加工装置であって、
前記制御手段は、
前記目標温度に対して測定温度が低い場合は前記加熱手段を加熱状態にして前記スキャンレンズに近接させ、
前記目標温度に対して測定温度が高い場合は前記加熱手段を非加熱状態にして前記スキャンレンズから離間させること
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項8記載のレーザ加工装置であって、
前記目標温度を加工条件毎に記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は加工条件に応じて前記目標温度を前記記憶手段から読み出すこと
を特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71129(P2013−71129A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210159(P2011−210159)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】