レーザ加速された陽子線治療器およびその超電導電磁石システム
【解決手段】 本明細書において、所望のエネルギースペクトルを有するイオンのビームを伝送するための小型の粒子選択および視準用装置が開示されている。これらの装置は、レーザ加速されたイオン治療システムと共に有用であり、該システムにおいて、初期イオンは広いエネルギー分布および角度分布を有する。超電導電磁石システムは、粒子選択のために異なるエネルギーおよび放射角を有するイオンを分布させるための所望の磁場構造を形成する。磁場の存在下におけるイオン輸送に関するシミュレーションは、選択されたイオンが磁場を通過した後、ビーム軸上にうまく再集束されることを示している。さらにまた、放射線治療応用のためのレーザ加速されたイオンビームについてのモンテカルロシミュレーションを利用して、線量分布が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2004年12月22日出願の米国特許仮出願第60/638,870号に対して優先権を主張するものであり、この参照により当該文献の全内容が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本研究は、米国保険社会福祉省、米国国立衛生研究所、ならびに米国国防総省により、それぞれ契約番号第NIH−CA78331号およびDOD−PC030800号に基づき、一部支援されている。従って、米国政府がこれらの発明に関する権利等を有する場合もある。
【0003】
本発明は、荷電粒子を操作するための超電導電磁石システムに関する。また本発明は、放射線療法のための高エネルギー陽イオンの提供に関する。
【背景技術】
【0004】
放射線療法において、陽子ビームの使用は、線量分布におけるブラッグピークに起因する低い入射線量、より明瞭な半影、および治療深部を超えるような迅速な低下のため、治療標的へのよりよい線量原体性および正常組織の節約の可能性を提供する。かなり局在化した放射線抵抗性病変部に対する線量優位性(dosimetric superiority)およびこれを裏付けるいくつかの臨床結果にも関わらず、サイクロトロンやシンクロトロン技術を利用する陽子線治療設備は高価で複雑なため、陽子線治療の利用は、光子および電子を利用した治療に比べ遅れている。その結果、陽子線治療は、放射線療法における治療手段としてあまり広く普及していない。小型で経済的なレーザ−陽子線治療器が入手可能であれば、この状況は改善される可能性がある。放射線療法用のレーザ−陽子システムは、本発明者らによって、米国ペンシルバニア州Philadelphiaのフォックスチェイス癌センター(Fox Chase Cancer Center)において現在開発されている。典型的なレーザ−陽子システム設計は、以下の三種の要素が含む。すなわち、(1)高エネルギー陽子を発生させる小型レーザ−陽子源と、(2)正確なビーム伝送のための小型粒子選択・ビームコリメート装置と、(3)レーザ加速された陽子ビームを使用して、原体照射線量分布(conformal dose distribution)を実現させる治療最適化アルゴリズムを含む。
【0005】
粒子のレーザ加速は、1979年に電子について初めて提案された。1990年代のレーザ−電子加速は、チャープパルス増幅法(chirped pulse amplification,CPA)およびチタンサファイア等の高フルエンス固体レーザ材料の出現以来、急激に進歩している。近年では、幾十かのMeVのエネルギーを有する陽子が観測された多くの実験調査結果が報告されている。ローレンスリバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)で行われた最近の実験によると,最大エネルギーが58MeVの粒子が報告されている。レーザ−陽子加速のメカニズムは,、現在研究中であり、レーザ−物質間の相互作用の結果生じる縦電場に長年関係づけられている。陽子加速に対するレーザ−プラズマ相互作用のコンピュータシミュレーション(具体的にはPIC(Particle in Cell)法によるシミュレーション)の結果に加え、最近の実験的調査によれば、レーザ加速された陽子ビームは広いエネルギー分布と角度分布を有し、治療に直接利用できないことがわかっている。
【0006】
分光器様の粒子選択/ビーム変調システムについては、本発明の発明者らの数人にによって説明されており、陽子をそれらのエネルギーおよび放射角に従って空間内に分布させるのに、階段関数のように分布する磁場が用いられている。粒子選択/ビーム変調システムについては、2004年6月2日出願の「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際特許出願第PCT/US2004/017081号に記載されており、本文献の全内容をここで参照により本明細書中に援用する。その後陽子ビームは得られるエネルギーで回収され、これは拡大ブラッグピーク(spread−out Bragg Peaks,SOBP)を与えるような変調されたエネルギー分布を実現するのに使用できる。従って、初期に提案された粒子選択システムは、理想の階段状磁場の構造に基づく選択装置を構成する。階段状磁場の分布の実現は困難なため、非理想階段状磁場の構造を取り入れた粒子選択システムについて、さらなる改良が現在必要とされている。さらにまた、非階段状磁場の構造は、典型的な電磁石システムを使用することで発生するため、レーザ加速された多重エネルギー陽イオンの効率的で小型な設備による分離にむけ、電磁石システムにおける改良が現在求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、陽子ビーム選択に有用となる階段状磁場分布を形成できる小型の超電導電磁石システムが提供される。超電導電磁石システムの一設計は、矩形コイルの磁場の解析計算により得ることができ、これは三次元の磁場分布を与えるので、コイルの端部でのフリンジングフィールドパターンの影響によるエッジ集束のような境界効果を説明する。陽子軌跡のシミュレーションは、電磁石システムの評価やある基準に対する設計の最適化に用いることができる。
【0008】
ある実施形態においては、本発明の電磁石は高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム選択メカニズムに使用するための階段状磁場を発生できる。
【0009】
本発明はまた、矩形領域に分布された階段状磁場を発生する超電導電磁石システムを提供する。こ磁場の分布は、粒子選択システムにおける陽子輸送に有用である。陽子線量分布を計算し、理想の階段状磁場および設計された超電導電磁石システムにより発生することのできる場に対する結果と比較する。
【0010】
本発明は、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから構成される高エネルギー多重エネルギーイオンビーム用の粒子選択システムを提供する。これらのシステムは、ビームコリメータと、エネルギーレベルに応じて高エネルギー多重エネルギー陽イオンを空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合させることのできる第2の磁場から構成され、該第1および第2の磁場源は、約0.1〜30テスラ(Tesla)の磁場を発生できる超電導電磁石である。
【0011】
本発明によると、高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させる方法が提供され、該方法は、エネルギーレベルの分布を有することで特徴付けられる複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから構成されるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生させる工程と、コリメート装置を用いてレーザ加速されたイオンビームをコリメートする工程と、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第1の超電導電磁石により与えられる第1の磁場によって、高エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離する工程と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーにより変調する工程と、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、少なくとも約0.1〜約30テスラの磁場を有する第2の超電導電磁石により与えられる第2の磁場により、再結合(Recombination)させる工程を含む。
【0012】
さらに本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムも提供される。これらのシステムは、レーザと高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生できるターゲットシステムを有するレーザ−ターゲットシステムと、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から形成でき、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる少なくとも2つの超電導電磁石を有するイオン選択システムと、イオンビーム監視制御システムを有する。これらのシステムにおける高エネルギー多重エネルギーイオンビームは、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むことができる。
【0013】
さらにまた本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法も提供される。これらの治療方法は、患者の標的領域の位置を特定する工程と、標的領域に照射するための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含む、標的領域についての治療計画を決定する工程と、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる1若しくはそれ以上の超電導電磁石を用いて、エネルギーレベルに基づき空間的に分離された複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから、複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する工程と、複数の治療に好適な多重エネルギー陽イオンビームを治療計画に従って標的領域に伝送する工程を含む。
【0014】
さらにまた本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターが提供される。これらのセンターは、患者を固定する場所と、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記場所に固定されている患者に伝送できるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムを含む。このイオン治療システムは、レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生することのできるターゲットアセンブリを有するレーザ−ターゲットシステムと、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる複数の超電導電磁石を用いてエネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを用いて、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させることのできるイオン選択システムと、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム用の監視制御システムを有する。
【0015】
さらに本発明によれば、多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムが提供される。これらのシステムは、流体的に連通した、一連の2若しくはそれ以上の超電導コイルを有する。各超電導コイルは、それぞれ約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができ、少なくとも2つの磁場が互いに反対方向に発生する。
【0016】
本発明の前述およびその他の観点は、以下の図面ならびに詳細な説明から当業者には容易に明らかであろう。要約および以下の詳細な説明は、本発明添付の請求項に定められているような本発明を限定するものとみなすものではなく、本発明の例および説明を与えるに過ぎない。
【0017】
本願発明の上述したような観点は、添付の図面および詳細な説明を参照することにより、当業者にはより明らかになるものである。要約および添付の詳細な説明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明を限定するものではなく、単に本発明の実施例および詳細を提供するものです。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、以下の詳細な説明を本発明の開示内容の一部を構成する添付の図面および例と共に参照することで、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書中に説明または示される特定の装置、方法、条件、或いはパラメータに限定されるものではなく、本明細書中で使用される用語は、例示として特定の実施形態を説明する目的で使用しており、特許権請求の当該発明を限定する意図はないことを理解するべきである。さらにまた、添付の請求項を含む本明細書に使用されるように、単数で記載されている語は、複数のものも含み、特定の値に言及しているものは、文脈上特に明確に指定されていない限り少なくともその特定の値を含むことを意味する。数値に関する範囲が示されている場合、別の実施形態では、その一方の特定値から、および/または他方の特定値までを含む。同様に、数値がおよその値で示されている場合、"約"という先行詞を使用することで、その特定の値が別の実施形態を構成することが理解されるであろう。全ての範囲が包含的であり、かつ組み合わせ可能である。
【0019】
本明細書中で、明確化のため別の実施形態で記載される本発明のいくつかの特徴は、組み合わせにより1つの実施形態として提供できる可能性もあることは理解されるべきである。逆に、簡潔化のため1つの実施形態中に記載される本発明の様々な特徴は、個別に或いは様々に組み合わせて提供できる可能性もある。さらにまた、範囲に記載されている数値への言及は、その範囲内にある各数値および全数値を含む。
【0020】
本明細書で使用されるように、「陽子」とは、+1の電荷を有する水素(H1)の原子核を意味する。
【0021】
本明細書で使用されるように、「陽イオン」とは、正味の正電荷を有する原子および原子核を意味する。
【0022】
本明細書で使用されるように、「多重エネルギー(polyenergetic)」とは、1つ以上のエネルギーレベル有することで特徴付けられる物質の状態を意味する。
【0023】
本明細書で使用されるように、「高エネルギー」とは、1ミリオン電子ボルト(MeV)を超えるエネルギーレベルを有することで特徴付けられる物質の状態を意味する。
【0024】
本明細書で使用されるように、「ビームレット」とは、空間的に分離或いはエネルギー的に分離、或いは空間的かつエネルギー的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの一部分を意味する。
【0025】
「一次コリメータ」、「一次コリメート装置」、「初期コリメータ」、および「初期コリメート装置」の語は、本明細書においては相互可換に使用される。
【0026】
「エネルギー変調システム」および「アパチャー」とは、注目しているアパチャーが空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを変調できることが明らかな場合、相互可換に使用されている。
【0027】
「流体的に連通させた(in fluidic communication)」とは、図2に示されるように、1若しくはそれ以上のイオンビームが各コイル内で発生される磁場を通過できるように、2若しくはそれ以上の電磁コイルが配置されていることを意味する。
【0028】
高エネルギー多重エネルギーイオンビーム用のイオン選択システムは、ビームコリメータと、高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合(recombine)することのできる第2の磁場源を構成成分として有し、前記第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができる超電導電磁石である。レーザ加速された陽子線治療システムは、高密度材料中でプラズマを発生させる高強度レーザパルスを使用し、高運動エネルギーに陽子を加速する。本発明での使用に適応できるレーザ加速された陽子線治療システムの例は、2003年6月2日出願の米国特許出願第60/475,027号に基づいて優先権が主張されている、「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際公開第WO2004109717号、米国特許出願番号第 号中にさらに詳しく記載されており、該文献中のレーザ加速された陽子線治療システムに関する記述部分はこの参照により本明細書に組み込まれるものである。本発明での使用に適応できるレーザ加速された陽子を放射線治療のために変調する方法の例は、2003年6月2日出願の米国特許出願第60/475,027号および2003年12月2日出願の米国特許出願第60/526,436号に基づき優先権が主張されている、「Methods of Modulating Laser−Accelerated Protons for Radiation Therapy」と題する国際公開第WO2005057738号、米国特許出願番号第 号にさらに詳細に記載されており、該文献中の放射線治療のためにレーザ加速された陽子を変調する方法に関する記述部分はこの参照により本明細書に組み込まれるものである。
【0029】
いくつかの実施形態における多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムは、流体的に連通された一連の2若しくはそれ以上の超電導コイルを有する。各超電導コイルは、それぞれ約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができ、少なくとも2つの磁場は互いに反対方向に与えられる。
【0030】
いくつかの実施形態においては、小型の超電導電磁石システムは、各々が同方向に磁場を与えることのできる2つの外部電磁石と、各々が互いに同方向で外部磁石の磁場の方向とは逆方向の磁場を与えることのできる2つの内部電磁石を有する。これらの実施形態において、内部電磁石の磁場は、強度において異なっていても、ほぼ同じ強度を有していてもよい。係る実施形態においては、前記2つの内部電磁石は、互いに近接していてもよいし、或いは間隔をもって離れて位置していてもよい。離れて位置する場合の好適な間隔は、通常約0.2cm〜約5cmの範囲であり、より好ましくは約0.5〜約2cmの範囲である。いくつかの好ましい実施形態においては、前記2つの内部電磁石は、約1cmの間隔で離れて位置している。いくつかの実施形態においては、各々が約0.02cm〜約2cmの大きさのアパチャーサイズを有する、一連のコリメータが使用される。
【0031】
前記超電導電磁石システムを用いることにより、強力な磁場を発生することができる。小型超電導電磁石システムは、磁場分布を調節するために様々な形状に形成された電磁石を有することができる。いくつかの実施形態においては、前記超電導電磁コイルは、好ましくは、一様に分布した磁場を発生するような形状に形成されている。好適な超電導電磁石は、矩形に形成されている。矩形に形成された超電導電磁石は、円形に形成された電磁石から発生する磁場に比べ、より一様に空間に分布する磁場を形成できる。
【0032】
本実施形態および本発明の様々な実施形態の磁場源として、約0.1〜約30テスラの範囲、より好ましくは約0.2〜20テスラの範囲、或いは約0.5〜約10テスラでもよく、より好ましくは約0.5〜約5テスラの範囲の磁場強度を有する超電導電磁石が挙げられる。いくつかの実施形態においては、各電磁石の最大磁場を約5テスラ未満としてもよい。いくつかの実施形態においては、巻き数が約1,000〜約100,000、好ましくは約5,000〜約20,000、さらにより好ましくは、約10,000の超電導電磁石が、本発明において好適である。
【0033】
好適な超電導電磁石は、長いワイヤを複数回巻くことにより形成できる。2若しくはそれ以上のこのような超電導電磁石は、間隔dをもって互いに連結でき、ここで幾分一様な磁場が生じて、陽子が通過する。単一の超電導電磁石の大きさは、レーザ−陽子システム設計および希望するワイヤ材料の選択の両方により決定できる。小型レーザ−陽子システムは、小型の電磁石システムを有することができる。いくつかの実施形態において、超電導電磁石の寸法に関しては、全体の形状として矩形としてよく、その矩形寸法は、約5cm〜約100cm、より好ましくは約10cm〜約75cm、さらにより好ましくは約15cm〜50cmである。本発明の一実施形態において、単一の超電導電磁石の寸法の上限は、約20x40x25cm3(LxxLyxLz)と設定できる。本明細書で使用されるように、本明細書英語原文中において数字の前に使用されている数学的記号のチルダ(〜)は「約」を意味し、本明細書中でそのように翻訳されている。密度約103A/cm2の電流を通電できる従来の銅線を使用する場合、その銅線を巻いて形成した電磁コイルの断面積は、約4.4Tの電磁誘導を実現するために約106Aの全電流を得るには、約103cm2とするべきある(添付資料を参照)。従って、長さ(Lz)約25cmの従来の非超電導電磁石については、厚さ(T)を約40cmとすることで、そのような断面積とすることができ、これにより、xおよびy方向の両方向における幅(LxおよびLy)は約80cmを大きく超えることになる。このような電磁石は本発明で使用できるが、さらに小さな電磁石を使用するのも望ましい場合がある。
【0034】
超電導ワイヤは超高電流密度の電流を通電できるので、銅線の代わりに超電導ワイヤを用いることで、電磁石の大きさをかなり小さくすることができる。超電導ワイヤを用いる別の利点は、電力を節約できることである。超電導電磁石の場合の電力消費は、従来の電磁石の同等物のわずか約1%〜約10%である。超電導ワイヤは市販されており、強力な磁場を発生させるための高エネルギー加速器に広く用いられてきた。好適な超電導ワイヤは、約4.4Tの磁場に対して、4.2Kでの臨界電流密度が約4.25x105A/cm2のNbTiである。他の市販されている超電導ワイヤ、Nb3Snも使用できる。高温超電導体から形成される超電導ワイヤ等、その他の種類の超電導ワイヤが使用できる。好適な高温超電導ワイヤは、約77Kを超える臨界温度を有し、例として、YBCO(例えば、YBa2Cu3O7−x)およびBSCCO(例えば、Bi2Sr2Ca2Cu3O10或いはBi2Sr2Ca1Cu2O8)材料が挙げられる。好適な高温超電導ワイヤは、米国マサチューセッツ州WestboroughのAmerican Superconductor社(http://www.amsuper.com/index.cfm)から市販されている。NbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤは、幅が約10ミクロンのものから〜直径が250ミクロンのものまで、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社(東京)(http://www.jastec.org/eg/index.html)から市販されている。実際の電流は臨界電流未満でよく、さもなければ、超電導状態が壊れ、ワイヤが従来の電導状態で機能するようになる。
【0035】
一実施形態においては、階段状磁場分布を実現するために4つの電磁石が使用できる。これらの電磁石は、第1および第4の電磁石の磁場が−z方向に、第2および第3の磁場がz方向に向くように、x軸(ビーム軸)に沿って平行に配置される。第1の電磁石は、陽子を押し上げるローレンツ力を及ぼす磁場を形成し、そして第2および第3の電磁石は陽子を押し下げる磁場を形成し、最後の電磁石から生じる磁場は陽子をもとの方向に戻す。このような超電導電磁石システムでは、そのビーム軸方向の寸法を約100cmよりも短くしてもよい。
【0036】
本発明で利用される超電導電磁石の好適な極低温技術として、超電導電磁石の市販部品から容易に構築できる当業者に既知の各種極低温システムが挙げられる。好適な低温保持装置は、電磁石システムと共に設計および実施できる。
【0037】
様々な実施形態において、第1コリメータは、第1の磁場に入射する入射ビームの角度広がりを定める。第1コリメータを出射するビームのビーム広がりの角度の正接は、およそ、ビームがコリメータを出射する第1コリメータの出射口の距離の半分の距離の、陽子ビーム源までのコリメータの出射口(すなわち、プラズマターゲット)の距離に対する比とすることができる。この角度は約1ラジアン未満とすることができる。放射角は、ターゲットシステム(すなわち、ターゲットおよび第1コリメート装置)を出射する初期エネルギー分布の角度である。電子を、第1の磁場により陽イオンとは反対方向に偏向し、好適な電子ビームストッパにより吸収してもよい。好適な電子ストッパとして、タングステン、鉛、銅、或いは電子および所望のレベルに生ずる全ての粒子を減衰させるのに十分な厚みを有する全ての材料が挙げられる。アパチャーは、所望のエネルギー成分を選択するのに使用でき、選択された陽子を多重エネルギー陽イオンビームに再結合できる、対応する磁場機構(一実施形態においては、第2の磁場)が選択できる。好適なアパチャーは、タングステン、銅、或いは陽イオンのエネルギーレベルを下げることのできる十分な厚みを有するその他の材料により形成できる。このエネルギーレベル減少は、アパチャーを通過しないようなイオンと区別できる程度まで実施できる。
【0038】
本発明の様々な実施形態において、アパチャーの形態は、空間的に分離された多重エネルギーイオンビーム中に置くと、イオンビームの一部を流体的に連通させることのできる、プレート或いはスラブ上の円形、矩形、或いは不規則な形状の単一或いは複数の開口でもよい。別の実施形態においてアパチャーは、選択したイオンビームを変調するのに望ましい単一或いは複数のエネルギーレベルを空間的に選択するために選択されたイオンビームへの物理的な並進または回転等により調節可能に選択された複数の開口を有するプレートから作成できる。本明細書中に記載されるように、イオンビームの変調は、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させる。好適なアパチャーとして、多葉コリメータが挙げられる。空間的に分離されたイオンビームを流体的に連通する開口の空間的位置を制御可能に選択することに加え、規則的或いは不規則な形状を利用して、アパチャーの複数の開口を制御可能な形状或いは複数の形状を有するようにしてもよい。このため、アパチャーの開口の様々な組み合わせは、空間的に分離されたイオンビームを変調するのに用いられる。空間的に分離された陽イオンは、その後第2の磁場により再結合する。
【0039】
高/低エネルギー陽イオン(例えば、陽子ビーム)ストッパは、不要な低エネルギー粒子や高エネルギー粒子(図示されていない)を除くことができる。加速された陽子の広い角度分布(所定のエネルギー範囲による)のため、第1の磁場を通過後、異なるエネルギーの陽イオンが空間で混ざりあう場合がある。例えば、低エネルギー陽子の一部は、高エネルギー粒子の存在する領域に進む可能性があり、その逆の場合もある可能性がある。このような陽子の空間的混合は、第1コリメート装置のような一次コリメート装置を導入することで減少できる。一次コリメート装置は、陽子を所望の角度分布にコリメートするのに用いることができる。
【0040】
特定の角度分布にコリメートするのに加え、不要な陽子を減少させるために、一次コリメート装置を備えていてもよい。その幾何学的大きさおよび形は、エネルギーおよび角度陽子分布に合わせて調節することができる。例えば、本発明の一実施形態によれば、不要なエネルギー成分を吸収する、長さ5cmのタングステンコリメータが提供できる。密度および選択システムの小型性の要求のため、タングステンが、視準目的に好ましい選択肢である。好適な一次コリメータの開口は、100cmのSSDで定められる磁場のサイズにして、11cm2の磁場サイズを与える。これより大きな角度で移動する陽子は、遮断することができる。磁場は、多重エネルギー陽子を、それらのエネルギーおよび角度分布に従って、空間領域に分布させる。それらの空間分布は、低いエネルギー粒子ほど中心軸からより離れて偏向し、陽子エネルギーが増加するほど、空間的偏向は減少するようにできる。従って、磁場および一次コリメータ(特定のコリメータ開口を有するもの)の両者の寄与は、アパチャーを用いて、エネルギー選択或いは陽子エネルギースペクトル再形成を可能にするような空間的陽子分布作り出す。アパチャーの幾何学的形状は、治療用陽子のエネルギー分布を決定することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、エネルギーレベルおよび放射角に基づいてレーザ加速された陽子を空間的に分布させるのに使用され、異なる形状のアパチャーを、エネルギーおよび角度の治療の治療域内で陽子を選択するのに使用するイオン選択システムが提供される。このような小型装置により、大型のビーム輸送および従来の陽子線治療システムに共通するコリメート設備の必要性はなくなる。本発明のレーザ−陽子源およびイオン選択コリメート装置は、従来の放射線治療室内に設置できる小型の処置部を形成するために、治療ガントリ(例えば、従来の臨床加速器により提供されるもの)上に設置できる。
【0042】
本発明のある実施形態において、二次モニタ室は、各エネルギー成分の強度を測定する。一次モニタ室を備えていてもよい。様々なイオンビーム監視法および制御システムは、2001年1月8日出願の米国特許出願第09/757,150号、2002年7月11日公開の米国特許出願公開番号第2002/0090194A1号、「Laser Driven Ion Accelerator」、本文献のイオンビームの監視および制御システムに関する記載部分はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
好適な小型形態に係る一実施形態によれば、長さ50cm未満および直径40cm未満の寸法のものが提供される。異なるレーザ−陽子は異なる角度分布を有するので、コリメータを磁場の大きさを定めるのに使用できる。第1コリメータが正方形の開口を有し、異なるエネルギーレベルを有する多重エネルギーの視準された陽子が電磁石により発生した磁場を通過した場合、視準された陽子は、各々異なる横方向の位置に到達する。第1コリメータの大きさが有限であるため、第1コリメータの大きさ、磁場強度、およびエネルギー平面から第1コリメータまでの距離に依存する陽子のエネルギーレベルに幾分オーバーラップのある可能性がある。,本実施形態の所望のエネルギーを選択するためには、対応する横方向の位置に配置できる第2のコリメータが使用できる。例えば、正方形のアパチャーは、50、150、或いは250MeV領域の陽子を選択するのに使用できる。所望のスペクトルを与えるような陽子の組み合わせを生じるように、複数のレーザパルスを与えても良い。所望の陽子エネルギースペクトルは、所望の深さ範囲にわたって、一様な線量分布を与える治療用高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させるのに用いることができる。
【0044】
本発明のイオン選択システムの別の実施形態は、エネルギーとそのエネルギー(強度)を有する陽子の合計数の両者を同時に選択するために、エネルギー空間(平面)で可変のアパチャーサイズを利用する。本実施形態では、所望の陽子スペクトルを実現するのに、上述の実施形態に比べ少ないレーザパルスを使用する。この可変のアパチャーサイズに係る実施形態では、好ましくは、異なる横方向(エネルギー)位置での可変の幅を有する、エネルギー空間で細長いアパチャーを使用する。作用に関する特定の理論に結び付けることなく、本設計により、同じレーザパルスからエネルギーと強度選択を同時に行うことを可能にする。このことは、放射線療法のための深度範囲にわたって一様な線量分布を実現するために、多重エネルギーレーザ陽子ビームを用いる大変効率的な方法であると考えられる。可変なエネルギー選択アパチャーの大きさは、異なる陽子異なる陽子エネルギーレベル領域を同様の領域サイズに再結合させるためには、後に続く差動磁気システムを利用することができる。
【0045】
いくつかの実施形態においては、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する陽イオンの最終的な領域サイズおよび形状を定めるために、二次コリメート装置を備える。小さな形状を有するビーム(例えば、正方形、円形、長方形、およびこれらを組み合わせたもの)は、標的体積に対する原体線量分布が実現できるように、個々のビームレットの強度を変調することで形成することができる。
【0046】
本実施形態によると、空間的に分離されたビームを変調することのできる変調可能な二次コリメート装置が提供される。この変調可能な二次コリメート装置は、多葉コリメータ(MLC)等、上述のようにアパチャーを用いて実現できる可変の形状を有してもよい。多数のレーザパルスは、本実施形態を利用して、標的体積を処置するのに提供することができる。所望のエネルギースペクトル選択するのに全標的体積の少なくとも一部の深部範囲をカバーするためエネルギーレベルを変調するアパチャーが横方向に移動できるのに対し、変調可能な二次コリメート装置(例えば、MLC)は、対応する深部で少なくとも標的体積の断面の一部を囲むように再結合されたビーム領域の形状を変化させることができる。
【0047】
本明細書に記載の本発明のイオン選択システムのための方法は、本明細書に記載の装置および手段を用いて好適に実施できる。陽子ビームは断面が微小であってもよいので、小さな空間で高磁場を形成することができる。本発明のある実施形態では、厳密な磁束密度場(B−field)空間分布は要求されていないが、むしろ磁場は低勾配を有するか、それらは空間的にオーバーラップしているか、或いはその両方である可能性がある。本発明の好適な実施形態では、対応する反対の磁束密度場を有する少なくとも2つの磁場源を有する。その形態は、より高い磁場、より微小の光子ビームストッパ、或いはその両方を使用することで、ビーム方向においてさらに小さくしてもよい。
【0048】
本発明の様々な代替実施形態として、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを視準できるコリメート装置と、高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合することのできる第2の磁場源を有するイオン選択システムの実施形態が挙げられ、該第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる超電導電磁石である。
【0049】
上記と同様のイオン選択システムの別の実施形態は、さらに第3の磁場源を有し、この第3の磁場源は、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向けて曲げることができる。好ましくは、第3の磁場源は、超電導電磁石である。さらなる実施形態では、上記と同様のイオン選択システムを有するが、アパチャーは、第3の磁場源の磁場内または第3の磁場源の磁場外に配置され、第3磁場源は二つの部分に分かれている。
【0050】
本発明の別の実施形態では、第3磁場源の磁場は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を第2の磁場源にむけて曲げることができる。いくつかの実施形態においては、第2の磁場源は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行ではない方向に向けて曲げることができる。別の実施形態では、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向けて曲げることのできる第2の磁場源を有する。
【0051】
本発明のある実施形態では、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に連通させることのできる二次コリメート装置を有する。いくつかの実施形態においては、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節できる二次コリメート装置を有する。いくつかの実施形態においては、各開口が高エネルギー多重エネルギー陽イオンを流体的に連通させることができる複数の開口を有するアパチャーを備えた回転可能なホイールが使用できる。別の好適なアパチャーは、低エネルギーイオン、高エネルギーイオンの各々、或いはそれらを組み合わせたものを通過させることのできる開口を有する多葉コリメータである。
【0052】
本発明のある実施形態に従って、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを、コリメート装置を用いて視準し、その陽イオンは、第1の磁場により、それらのエネルギーレベルに従って空間的に分離される。空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、エネルギー選択アパチャーで変調され、その変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、第2の磁場を用いて再結合される。いくつかの実施形態においては、陽イオンの一部、例えば約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものは、該アパチャーを通して伝送され、その他の部分は、エネルギー選択アパチャーによりブロックされる。本実施形態における約0.1〜約30テスラの強度の磁場は、超電導電磁石を用いて発生する。いくつかの実施形態においては、当該磁場は、約0.2〜約20テスラの強度を有する。
【0053】
いくつかの実施形態における陽イオンの軌跡は、第1の磁場を用いて、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れる方向に曲げられる。別の実施形態においては、空間的に分離された陽イオンの軌跡は、第3の磁場を用いて、アパチャーに向かう方向にさらに曲げられる。いくつかの実施形態においては、第3の磁場は、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、第2の磁場に向けて曲げる。本実施形態では、第2の磁場により、イオンの軌跡をレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向けて曲げることをさらに含む。好ましくは、第1、第2、および第3の磁場は、複数の超電導電磁石により供給される。いくつかの実施形態においては、空間的に分離された高エネルギー陽イオンは、アパチャーの位置調節可能な開口を用いてエネルギーレベルにより変調される。いくつかの実施形態においては、高エネルギー多重エネルギー陽イオンの空間的分離は、、第1の磁場に入射すると、レーザ加速されたイオンビームのビーム軸にに対して垂直に測ったこれらの距離で最長約50cmの距離にわたる。
【0054】
さらにまた本発明によると、本明細書に記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを用いて、再結合した空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンと共に放射性同位元素前駆体を照射することで放射性同位元素を発生させる方法が提供される。2−デオキシ−2−18Fフルオロ−D−グルコース([18F]FDG)の生成は、その放射性同位体となる化学的前駆体の陽子衝撃により行う。これらの工程は、従来のサイクロトロンおよびシンクロトロン源を用いて発生させた陽子ビームを使用する。例えば、J.Medemaら[http://www.kvi.nl/〜agorcalc/ecpm31/abstracts/medema2.html]は、18O濃縮水中における18O(p,n)18F核反応を介して[18F]フッ化物をまず調製し、[18F]フッ化物を樹脂法およびクリプテート乾燥プロセスにより回収して[18F]FDGを生成することで[18F]フッ化物および[18F]FDGの[18F]フッ化物を生成する方法を報告している。本発明によると、放射性同位元素を生成する該工程での使用に好適な高エネルギー多重エネルギーイオンビームが提供される。従って、放射性元素を発生させる工程は、本明細書に記載のように高エネルギー多重エネルギー陽子ビームを適切な粒子、ターゲットおよびビーム電流を与えるように形成する工程を含む。ターゲット前駆体をH218Oで満たす。あらかじめ設定された集積ビーム電流或いは時間に到達するまでターゲット前駆体に、高エネルギー多重エネルギー陽子ビームを照射する。ターゲット前駆体は、圧力変換器によりモニタできる。集積ビーム電流或いは時間に到達すると、[18F]フッ化物を[18F]FDGの化学的合成に使用する。最終生成物は、等張、無色、無菌で、発熱物質のないものであり、臨床用途に好適である。
【0055】
上述の様々な実施形態におけるイオン選択システムは、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムの構成要素として使用できる。本発明の一実施形態によれば、小型で融通性があり、コストパフォーマンスの高い陽子線治療システムが提供される。本実施形態は、(1)高エネルギー多重エネルギー陽子のレーザ加速、(2)超電導電磁石を用いたイオン選択およびビーム視準のための小型システム設計、および(3)レーザ加速された陽子ビームを利用するための治療最適化ソフトウェアの3つの技術的に画期的進歩によるものである。レーザ陽子放射治療システムの重要な構成要素は、異なるエネルギーレベルおよび強度の陽子の微小ペンシルビームを伝送するための小型のレーザ−陽子源に連結した小型のイオン選択およびビームコリメート装置である。通常、そのレーザおよびその処置部は、レーザビーム配置を確実にするために同じ懸架台上に置かれる(距離が短かいためエネルギーロスが無視できる)。このことは、システム全体を小型に保つのに役立つ。本実施形態において、ターゲットアセンブリおよびイオン選択装置は回転ガントリ上に設置され、レーザビームは、一連のミラーを通して最終焦点ミラーに輸送される。ミラー間の距離は、陽子ビームをxおよびy軸のそれぞれに沿って走査するために調節され、平行に走査したビームを生じる。代わる方法では、走査パターンを実現するために、ミラーによって定められるレーザビーム軸の周りにターゲットおよびイオン選択装置を揺動させる。これにより広がりのあるスキャンビームが生じる。治療システム内の治療寝台は、同一平面および非同一平面上での、アイソセントリックおよびSSD(線源−表面間距離)治療を行うのに調節できる。
【0056】
イオン治療システムの一実施形態として、レーザ−ターゲットシステムが含まれ、該レーザ−ターゲットシステムは、レーザと、高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生することのできるターゲットシステムとを有し、該高エネルギー多重エネルギーイオンビームは、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む。本実施形態において、高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、エネルギーレベルに基づき空間的に分離され、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から発生できるイオン選択システムが提供される。さらにまた、示差室(differential chamber)および集積室(integration chamber)が提供される。異なるエネルギーを有する陽イオンは、通常、イオンのエネルギー差を測定し、選択されたイオンのエネルギーをモニタする示差室の様々な部分を通過する。通常、示差室は、エネルギー選択アパチャーを制御しない。集積室は、アパチャーおよびアパチャー開口の位置を決定するため、例えば、コンピュータ或いは好適なデータ処理部によって)解析される信号を生じるために備えられている。
【0057】
当該治療システム一実施形態によると、磁場がそれらのエネルギーレベルおよび放射角に基づいてレーザ加速された陽子を空間的に分布させるのに使用されるイオン選択システムが提供され、異なる形のアパチャーがエネルギーおよび角度の治療域内で陽子を選択するのに使用される。イオン選択システムの大きさを小さくするため、磁場が超電導電磁石によって供給される。これらの磁場は、通常約0.1〜約30テスラの範囲である。さらなる実施形態においては、約0.2〜約20テスラ、約0.5〜約10テスラ、および約0.8〜約5テスラの磁場を使用する。超電導電磁石の使用することで、従来の陽子線治療システムに共通する大型のビーム輸送およびコリメート設備の必要性をなくす小型装置が得られる。本実施形態のレーザ−陽子源およびイオン選択/コリメート装置は、従来の放射線治療の治療室内に取り付けることのできる小型の処置部を形成するのに、通常治療ガントリ(従来の臨床用加速器によるもの等)上に設置される。
【0058】
上述の様々な実施形態におけるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムは、患者を治療する方法に使用できる。例えば、本発明の様々な実施形態により提供される陽子選択システムで、逆方向治療計画に使用できる微小の多重エネルギー陽子のビームレットを発生するための方法の可能性がひらける。陽子の線量特性のため、エネルギーおよび強度が変調された陽子による治療は、治療体積への線量の原体性を著しく改善できる。さらにまた本発明を用いると、従来の治療に比べ、正常組織は温存される。全体としての結果は、レーザ加速された陽子の放射治療用のイオン選択システムとの併用は、癌の治療に役立つことを示唆している。
【0059】
放射線治療は、前立腺癌に対する最も有効な治療方法の一つである。外部ビーム放射線治療において、陽子ビームの使用は、ブラッグピーク効果の結果として治療標的に対する優れた線量原体性および正常組織の温存を可能にする。中性子および光子(X線)が高い入射線量および深さによるゆっくりとした減衰を示すのに対し、単一エネルギーの陽子は、組織への伝播がとまる直前でビーム透過機能としてのエネルギー付与の非常に鋭いピークを有する。結果として、照射により誘発される周辺の正常組織の損傷を避けながら、入射陽子エネルギーのほぼ全てを3D腫瘍体積内或いはその極近傍へ付与することが可能である。陽子は、それらの範囲の端近傍でより高い線エネルギー付与成分を有し、従来の医療加速器ビーム或いはコバルト60源に比べて、深部腫瘍の放射線治療により生物学的に有効である。
【0060】
鋭いブラッグピークにより特徴付けられる線量的優位性にも関わらず、陽子線治療の利用は、前立腺治療用の光子の利用よりもかなり遅れている。このことは、陽子加速器の操作領域が、少なくともコストおよび複雑さの規模がより大きいためであり、このため、電子/光子の医療用加速器に比べて幅広く臨床用に使用するには費用がかかりすぎることになる。従来の陽子加速器は、サイクロトロンおよびシンクロトロンであり、これらは、米国のマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital,MGH)および ロマリンダ大学メディカルセンター (Loma Linda University Medical Center,LLUMC)の2つの医療施設にのみ存在する。これら両者は非常に大きなスペース(全床面或いは建物)を占めている。数は増えているが、このように限られた数の医療施設のみが世界にあるのみである。これらの施設から得られた臨床例はその数に幾分限りがあるが、治療記録はかなり局在化した放射線抵抗性病変に特に有望な結果を示した。本ビーム治療法の治療経験が限られているので、あらゆる悪性腫瘍に対する臨床効果の度合いは、定量化されていない。この状況は、本発明により提供されるような、小型で融通性があり、コスト効率の良い陽子線治療システムが入手可能になることで大いに改善される。本発明によって、この優れたビーム治療法が広く使用されることが可能になり、このことによって、脳癌、肺癌、および前立腺癌等の癌の管理に著しい進歩をもたらす。
【0061】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法は、患者の標的領域についての治療方針を決定する工程を含む。該治療方針は、標的領域への照射のための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含む。微小の陽子ビームレットの線量分布は、ビームサイズおよび異質の患者の身体構造に著しく影響を受けるので、レーザ加速された陽子ビーム治療のための治療最適化において、線量計算が行われる。患者に対する線量計算は、GEANT3システムを利用して評価する。そのコードは、一般用のモンテカルロシミュレーションとしてデザインされている。線量計算を加速するため、高速陽子線量計算アルゴリズムが従来の光子および電子のモンテカルロ線量計算アルゴリズムに基づいて開発されている。モンテカルロシミュレーションをスピードアップするため、様々な分散低減法がコード中で実行されてきている。これらの手法として、荷電粒子のシミュレーションに大変効率的な「決定論的サンプリング手法(deterministic sampling)」および「粒子追跡反復計算手法(particle track repeating)」がある。この高速モンテカルロコードの実行は、GEANT3コードを用いて検定される。線源モデルもまた、モンテカルロ計算中にレーザ陽子線治療装置から射出する陽子のペンシルビームについて、位相−空間パラメータ(エネルギー、電荷、方向、および位置)を復元するように実行される。レーザ加速された多重エネルギー陽イオンで患者を治療するための使用に適用可能な好適なソフトウェアは、入手可能である。このようなソフトウェアは、空気、組織、肺、および骨から構成されるシミュレーションファントムに患者のCTデータをまず変換する。標的体積および重要構造の輪郭に基づいて、該ソフトウェアは、異なるスペクトル、入射角(例えば、計画者により特定されるガントリ角)、および入射位置(例えば、治療照射門/照射野内で)を有する全ビームレットについての線量分布を計算する。全ビームレットに対する最終的な線量アレイが、以下に記述するような治療最適化アルゴリズムに対して得られる。
【0062】
いくつかの実施形態によると、EIMPTに対する改良された治療最適化ツールも提供される。治療最適化アルゴリズムは、典型的なレーザ陽子加速器から発生された典型的な多重エネルギー陽子ビームおよび実際の患者の身体構造に基づいて、構築されてきた。一般に使用される「逆方向治療法」として、コンピュータシミュレーションされた徐冷法(computer simulated annealing)、反復解法(iterative methods)、フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)、および直接フーリエ変換(direct Fourier transformation)が挙げられる。計算時間および陽子ビームの考えられる複雑性を考慮して、(勾配法(gradient search)に基づいた)反復最適化のアプローチが好適に適用される。このことは、光子および電子エネルギー−および強度−変調に関する反復最適化アルゴリズムに基づいている。エネルギー−および強度−変調された陽子ビームに関する改良型のアルゴリズムが検証されている。アルゴリズムは、実際的な陽子ビームの特徴を考慮して、さらに改良される。この「最適化ツール」は、以下のタスクを行う:(1)ビームレットの線量分布を線量計算アルゴリズム(上記参照)により得、(2)ターゲット/重要構造の線量処方に基づいた最良の治療計画を作成するためにビームレットの重み付け(強度)を調節し、(3)ビーム伝送シークエンスを検討するための全ビーム門およびガントリ角について強度マップ(ビームレット重み付け因子)を出力する。
【0063】
本発明の実施形態に従って、患者を治療する方法は、患者におけるターゲット領域の位置を特定する工程と、ターゲット領域に照射するための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布の決定(例えば、複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームのエネルギー分布、強度、および方向の決定)等のターゲット領域の治療方針の決定する工程と、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを、超電導電磁石を用いてエネルギーレベルに基づき空間的に分離された、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから形成する工程と、該複数の治療に好適な多重エネルギー陽イオンビームを治療方針に従って標的領域に伝送する工程を含む。
【0064】
イオン治療システムに関する発明において、様々な実施形態における上述のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムは、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターの基礎を構築できる。レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターでは、ミラー等の一連のビーム反射器を用いて、ターゲット/イオン選択システムに反射により輸送されるメインレーザビームラインが提供される。当該ターゲット/イオン選択システムは、高エネルギー多重エネルギーイオンを発生するためのターゲットシステムとイオン分離システムを有する。一実施形態において、当該ターゲット/イオン選択システムを出射する陽子ビームは、上述のように発生した治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む。本実施形態において、該ターゲット/イオン選択システムを出射する陽子ビームは、ターゲット/イオン選択システムに入射するレーザビームの方向に平行な方向に向けて出力される。治療センターのイオンビームは、患者および患者の標的がある寝台に向けて出力される。いくつかの実施形態においては、ミラーとターゲット/イオン選択システムは、ガントリを用いて、例えば、z方向がx−y平面に鉛直としてx−z平面内で、メインレーザビームラインの軸周りに回転できる。いくつかの実施形態においては、レーザビームがターゲットに反射される最後端のミラーは、ターゲット/イオン選択システムに固定される。最後端ミラーとターゲット/イオン選択システム間の距離は、y方向に沿ったイオンビームの走査を可能にするように、y方向に調節可能であることを示す。
【0065】
好適なターゲット/イオン選択システムは、小型のもの(例えば、全重量が約100〜200kg未満、寸法が約1メートル未満であり、複数の超電導電磁石を有するもの)である。ターゲットおよびイオン選択システムが小型であると、最高約10cm/sのイオンビームの迅速な走査を提供するための、ロボット制御によりコントロールされたシステムによる位置制御を可能にする。
【0066】
一実施形態においては、治療センターでは陽子イオンビームが使用できるが、他の陽イオンを用いる治療センターも想定している。例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、または炭素、或いはこれらを組み合わせたいずれのものといった、他の軽イオンを使用する治療センターを対象とした実施形態もまた想定している。高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、通常少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する。これらの高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約0.1〜約30テスラの範囲の磁場を与えることのできる超電導磁石を用いて、エネルギーレベルに基づき空間的に分離される。さらなる実施形態において、前記磁場を、約0.2〜約20テスラ、約0.5〜約10テスラ、或いは約0.8〜約5テスラにすることができる。
【0067】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターの別の実施形態においては、該センターは、上述のイオン治療システムの少なくとも1つと、患者を固定するための少なくとも1つの場所、例えば治療寝台等の場所を含む。例えば、この種の好適な治療センターは、複数のミラーを使用してターゲットアセンブリに反射により輸送されるレーザビームを有する。この治療センターは、レーザビームの光学監視制御システムをさらに有することができる。さらなる実施形態では、2つ以上のターゲットアセンブリの各々に対してレーザビームを複数のレーザビームに分割、或いは該ターゲットアセンブリの1つに対して該レーザービームを反射させるための、少なくとも1つのビームスプリッタ或いはミラーを備える。好適な治療センターは、例えば、2つのターゲットアセンブリと、各々が個々の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームから個別に治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生できる2つのイオン選択システムを有するレーザ−ターゲットシステムを有することができる。別の実施形態においては、さらなるターゲットアセンブリおよびイオン選択システムを有することができる。個別の多重エネルギーイオンビーム監視制御システムは、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々に対しても提供されている。一実施形態では、ビームをイオン治療システムに向けて出力するために、メインレーザビーム内外に位置することのできるミラーを有することができる。或いは、分割ビームが2若しくはそれ以上のイオン治療システムに同時に使用できるような十分強力なレーザビームを発生する場合、ビームスプリッタが使用できる。患者にプライバシーを与えるため、2若しくはそれ以上のイオン治療システムを備える典型的なイオン治療センターは、各イオン治療システムにつき個々の治療室を有する。このような実施形態において、前記レーザビーム源は、好ましくは別室或いは別棟に位置している。光学モニタシステムを含む実施形態においては、操作者は、どのイオン治療システムが作動しているのを知ったり制御したりすることができる。
【0068】
本発明の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム放射治療センターの一実施形態は、好適なレーザおよび治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを監視制御するためのシステムも有する。好適なレーザは、通常、陽イオンビーム治療センターと同じ棟の建物に収容されているか、或いはレーザビーム用の管路で連結された近隣の建物に収容される可能性がある。メインレーザビームラインは、通常、レーザビームをターゲット/イオン選択システムに向けて出力するための一連のミラーを使用して、シールドした真空管内で建物を経て輸送される。該ターゲット/イオン選択システムは、通常、治療室に置かれたガントリ上に設置されている。本発明のさらなる実施形態において、メインレーザビームは、ビームスプリッタにより、単一レーザから発生する複数のレーザビームへと分割される。該ビームスプリッタから出射する各レーザビームは、患者を治療するための個々のターゲット/イオン選択システムに向けられる。このような方法において、高エネルギー多重エネルギー陽イオン放射治療センターは、1つのレーザ源と複数の患者を治療するための複数のイオン治療システムを利用して提供される。本発明の高エネルギー多重エネルギー陽イオン放射治療センターのある実施形態によると、各治療室に個々のターゲット/イオン選択システム、患者用の場所、および陽子ビームの監視制御システムを備えた複数の治療室が提供される。このように装備された複数の治療室は、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを発生させるのに1つの高出力レーザに投資して、さらに膨大な数の患者を治療することを可能にする。
【0069】
実施例および他の説明的な実施形態
レーザ陽子加速器用粒子選択メカニズム
レーザ加速された陽子線治療システムは、高密度材料中にプラズマを発生させ、高運動エネルギーに陽子を加速するため、高強度レーザパルスを使用する。ここで、システム設計の一実施形態を図1に示す。卓上型レーザシステム(図示されていない)により発生させたレーザビームを、真空ビームパイプラインを通して処置部に送信する。ターゲットアセンブリおよび粒子選択装置を回転ガントリー(図示されていない)上に置く。レーザビームを、図示されるように、複数のミラー(a−e)を有するシステムにより導く。ミラー間の距離は、y軸およびz軸に沿って陽子ビームを走査し、平行なスキャンビームを発生するように調節される。或いは、ターゲット/粒子選択装置を、平行なスキャンパターンを実現するようにレーザビーム周辺で動かす。
【0070】
小型の粒子選択/ビームコリメート装置は、図2の一実施形態に概略的に示すように、異なるエネルギーおよび強度を有する微小ビームを伝送するのに使用される。レーザによって発生した粒子は、陽子のみではなく、光子、中性子、および電子といった様々な不要な粒子種を含む可能性がある。ターゲットからの陽子は主に、ビーム軸でもよいが、x軸に沿って前方に加速される。4つの分離領域に分布された階段状磁場(例えば図3参照)は、陽子および電子を偏向するのに使用できる。第1の領域(a)において、磁場は平面或いは-z方向に指向し、陽子は押し上げられる。これらの陽子が第2(b)および第3の領域(c)に入ると、磁場はz−方向に反転し、陽子は押し下げられる。最後の領域(d)の磁場は、陽子を元のビーム軸に戻す。図2に示すように、ビームストッパは、高エネルギー陽子はもとより光子や中性子を遮断するため、ビーム軸上に設置することができる。電子は、磁場により下方に偏向され、装置の下方部に設置された電子ストッパにより吸収される。ストッパに吸収されないその他の不要な粒子は、粒子選択装置の周りのシールディングで吸収できる。
【0071】
陽子の偏向は、陽子エネルギーに依存する。低エネルギーを有する陽子は、高エネルギーのものに比べて、より偏向される。従って、異なるエネルギーを有する粒子がy方向において空間的に分離される。コリメータアパチャーは、y軸上のある位置でシステムのセンター付近に配置され、ここで特定のエネルギーを有する陽子がアパチャーを通過し、その他のエネルギーを有する粒子はコリメータにより停止させる。一実施形態においては、2若しくはそれ以上のコリメータを陽子のビームサイズの調節に使用すし、例えば、一方を磁場の初端に(一次コリメータ)、他方を(二次コリメータ)後端に配置する。非階段状磁場は、本発明の本実施形態の性能をモデル化するに使用できる。
【0072】
矩形ループにより発生する磁場の計算
強力な磁場は、従来の金属ワイヤ、好ましくは超電導ワイヤを円筒上に巻いたものにより発生させることができる。完全な磁場分布の計算は、電磁石に依存し、大変複雑である。解析解を求めるのは、限られたいくつかの特定点を除き大変困難となる可能性がある。超電導電磁石は、電流ループを積み重ねたものとして取り扱うことができる。単一矩形ループに関する磁場分布の解析的計算は、ビオ−サバールの法則を利用することで行うことができる。従って、超電導電磁石に関する完全3次元の磁場分布は、各ループの磁場を足し合わせていくことで得ることができる。
【0073】
電流Iを通電させる単一矩形ループを図4に示し、磁場強度の3成分Bx、By、Bzを解析的に計算した結果を下記の別表に示す。
【0074】
マルチプルループの磁場は、個々のループに対する磁場の重ね合わせである。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、Δzは、2つの隣接するループ間の距離であり、z1は一番目のループ、nは全ループ数を示す。この電磁石コイルは、コイル内の電流密度が一様であると仮定して、マルチプル電流ループとして取り扱うことができる。
【0077】
コンピュータコードは、計算に基づいて矩形ループの磁場をシミュレートするために作成されている。一重ループに関するx軸或いはビーム軸方向での磁場分布を図5に示す。図からわかるように、Bzはx軸において一様に分布していない。2本のピークがループの端に現れている。さらにまた、図5(a)および(b)に示すように、Bzはy或いはz方向で大きく変化している。図5(c)において、磁場のこれら3成分を比較すると、Byが無視できるのに対し、ループの端ではBxがBzよりも優位であり、端の周辺での全磁場を著しく変化させることがわかる。従って、均一な磁場を発生させるのに1つ以上のループが使用できる。
【0078】
同じ大きさおよび電流を有するz軸に平行な別のループを追加することができる。このことは円形ヘルムホルツコイルに似ている。この例における2つのループ間の距離は約4cmである。二重ループに関する磁場分布は、一重ループの分布とあまり変わらない。Bxのピークは幾分減少するが、ピークはそのまま存在する。このことはz−方向にループを追加することで、ピークを減らして磁場分布を平滑にすることができることを示唆している。
【0079】
超電導電磁石の実施形態
上述のように、ピークを減らし磁場分布を平滑化するために、より多くのループをz軸に沿ってに対して垂直に積み重ねていくのに使用できる。複数のループは、電磁石を形成するのに使用できる。すなわち図6に示すように、複数のループを積み重ねるのと同様、長いワイヤを多数積み重ねたループに磁気的に相当するように複数回巻くことで、超電導電磁石を作成できる。このような超電導電磁石を間隔dをもって2つつなぎ合わせると、やや一様な磁場が発生し、陽子がそこを通過する。単一の超電導電磁石の寸法は、レーザ−陽子システム設計および希望するワイヤ材料の選択の両方により決定できる。小型のレーザ−陽子システムは、小型の電磁石システムを有することができる。本発明の一実施形態において、単一の超電導電磁石の寸法の上限は、約20x40x25cm3(LxxLyxLz)に設定される。本明細書英文原文中で数字の前に使用されている数学的記号のチルダ(〜)は「約」を意味し、本明細書中でそのように翻訳されている。密度約103A/cm2の電流を通電できる従来の銅線を使用する場合、約4.4Tの磁場誘導を達成するためには、約106Aの合計電流を得るため該銅線を巻いた電磁石コイルの断面積は約103cm2であるべきである(添付資料参照)。従って、長さ(Lz)約25cmの従来の非超電導電磁石については、厚さ(T)約40cmのものがその断面積を満足し使用できるが、これは、xおよびyの両方向での幅(LxおよびLy)が約80cmを超えることになる。このような電磁石は本発明において使用できるが、さらに小さな電磁石を使用するのが望ましい。
【0080】
超電導ワイヤは超高電流密度を通電させることができるので、銅線の代わりに超電導ワイヤを利用することで、電磁石の大きさはを著しく小さくすることができる。超電導ワイヤを使用することの別の長所は、電力節約である。超電導電磁石の電力消費は、同等の従来の電磁石のわずか約1%〜約10%で済む。超電導ワイヤは市販されており、強力な磁場を発生させるための高エネルギー加速器に広く使用されてきた。好適な超電導ワイヤは、約4.4Tの磁場を発生させるため、4.2Kでの臨界電流密度が約4.25x105A/cm2であるNbTiである。他の市販されている超電導ワイヤでNb3Snも使用できる。高温超電導体から形成されたワイヤ等、その他の種類の超電導ワイヤが使用できる。好適な高温超電導ワイヤは、マサチューセッツ州WestboroughのAmerican Superconductor社(http://www.amsuper.com/index.cfm)から市販されている。NbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤは、幅約10ミクロンのものから直径250ミクロンのものまでジャパンスーパーコンダクタテクノロジ−株式会社(東京)(http://www.jastec.org/eg/index.html)から市販されている。実際の電流は臨界電流未満でよく、さもなければ超電導状態が壊れ、ワイヤは従来の電導状態で機能することになる。一実施形態においては、約4.4Tの磁場を発生するには、約85Aの電流を通電する直径約0.2mmのNbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤを、長さ(Lz)約20cm、厚さ約0.2cmの矩形超電導電磁石を作成するように、10000回巻く。従って、このような超電導電磁石対は、約1cmの間隔(d)を含めて長さが約40cmとなる。超電導電磁石のコイルの断面積は、約20cmx0.2cmであるので、電流密度はわずか約2x105A/cm2で臨界電流密度未満となり、従って超電導を維持するのに使用できる。その結果、電磁石のサイズは、超電導ワイヤを用ることで約200倍に減少できる。好適な超電導ワイヤは、約10ナノメータ(nm)〜約5mmの範囲の厚さを有することができる。一実施形態において、好適な超電導ワイヤは、約0.2cmの厚さを有することができ、x軸における幅が約15cm、y軸における幅が約20cmの寸法を与えるような矩形にコイル状に巻く。このような超電導電磁石は、好適であり、図7に示すような平滑な磁場を発生する。Bzのエッジピークは、実質的に除かれ、BXでは、端で小さなピークのみ見られる。
【0081】
一実施形態においては、4つの電磁石を階段状磁場の分布を実現するのに用いる(図3参照)。これらの電磁石は、第1および第4の電磁石の磁場が−z方向に向き、第2および第3の磁場がz方向に向くように、x軸(ビーム軸)に沿って平行に配置される。第1の電磁石は、陽子を押し上げるローレンツ力を及ぼす磁場を発生し、その後、第2および第3の電磁石は陽子を押しさげる磁場を発生し、最後の電磁石から発生する磁場は、元の方向に陽子を戻す。この超電導電磁石システムは、ビーム軸方向でわずか約80cmのサイズであり、これは光子および電子加速器のサイズに匹敵する。平滑な階段状磁場の分布(図8を参照)は、I=85AでB=Bz=約4.4Tを発生し、BxおよびByは、小さく無視できる。本実施形態において、
【0082】
【数2】
【0083】
以下の説明では、説明的な一実施形態としての陽子の動力学を対象としている。陽子はもとより他の陽イオンを対象としたさらなる実施形態もまた記述されている。リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、またはその他の軽イオン、或いはこれらを組み合わせたものもを対象とした別の実施形態も記述されている。
【0084】
陽子輸送および電磁石システムの最適化
本発明の超電導電磁石システムの一実施形態は、当該システムにより発生された磁場における陽子輸送を検討することで検証できる。磁場は、異なるエネルギーを有する陽子をそれらの軌跡において分離でき、ビーム軸に沿って最初移動していた所望の陽子全てをビーム軸に戻す。この陽子の動力学は、運動方程式により記述できる。
【0085】
【数3】
【0086】
ここで、pは陽子のモーメント、qは陽子の電荷であり、vは陽子の速度を示す。シンプレクティックアルゴリズムに基づき、シミュレーションコードを陽子軌跡に対する数値解法を与えるように作成した。磁場分布に作用し、陽子ビームに影響を及ぼす多くの因子について検討した。これらのパラメータは、電磁石システムを最適化するために微調節される。
【0087】
ビームコリメーション
本実施形態において、PIC法によるシミュレーションは、所定のレーザ−プラズマパラメータに対して、陽子は臨床応用に必要な幅よりも幅の広いエネルギースペクトルを有することができることを示した。不要な陽子を遮断或いは低減し、所望の粒子ビームをコリメートするため、複数のコリメータが導入できる。陽子ビームの視準において、ビームサイズおよびそのエネルギー広がりが考慮できる。ビームサイズは治療計画により選択でき、先頭部は一次コリメータによって、最後部は二次コリメータによって決定できる。例えば、強度変調された陽子線治療に対しては、SSDが100cmで1x1cm2の照射野のペンシルビームが使用できる。一次コリメータ開口は、発生するビームのエネルギー広がりを直接コントロールするので、通常任意の大きさではない。一次コリメータのアパチャーは、約2tan−1(0.025/5.0)の角度をなす粒子を通過させ、これにより約100cmのSSDで約1(1cm2のビームサイズとなるように、本発明の様々な実施形態において選択できる。
【0088】
一実施形態において、臨床的に有用なビームを得るために分布させた陽子のエネルギースペクトルを形成するのに中間コリメータを使用される。図9に示す結果は、0.40cmのアパチャーの開口が、角度分布の原因にはならない30MeV未満のエネルギーの広がりで、250MeVの粒子のほぼ全てを集束させるのに用いることができることを示している。陽子が、固体構造物とのレーザ相互作用に由来する固有の角度の広がりを有することを考慮すると、より発散した陽子ビームおよびより各ビームについて広がったエネルギー広がりが、上記と同様の視準パラメータに対し、生じることができる。従って、アパチャーサイズは、ビームのエネルギー広がりをコントロールするために若干小さくすることができる。約0.3cmのアパチャーが、以下の実施形態では使用された。二次コリメータもまた、好適なビームサイズを実現し、残りの不要な粒子を除去するため、本実施形態において導入されている。
【0089】
場の強度
本実施形態において、陽子ビームの中心軸ymからの最大偏差は、磁場強度Bと共に増加することができる。この偏差により、選択システムの大きさを決定することができる。最大偏差ymの点で隣接する特性エネルギーを有する2つの陽子ビームの空間的分離は、図9に示すように、偏差自身と関係づけることができる。ymが低いと空間的分離が小さくなり、このため陽子ビームにおいて、生じるエネルギーの広がりが大きくなる。適度に小さなエネルギー広がりを維持することは、小さな値のymを利用することで達成できる。磁場の絶対値は、通常小さすぎることはない。図10は、磁場強度の効果を示している。0.8Tの微小磁場について,y軸での電磁石の幅は2.5cm未満に小さくできるが、160MeVを超える特性エネルギーを有する陽子のエネルギー広がりは、図14(b)に示すように、許容できない程度に大きくなる可能性がある。これらの結果は、磁場の強度を約B=4.4T、y方向での電磁石の幅を約Ly=20cmとすることで、最終的な陽子ビームが許容可能なエネルギー広がりを有する好適な小型の選択システムが提供されることを示している。
【0090】
電磁石対間の間隔
いくつかの実施形態においては、磁場を横切る陽子は、二次コリメータが配置されるビーム軸上に再集束できる。しかし、磁場は常に階段状に分布しているわけではないので、二次コリメータでの陽子のy位置ysは、0からずれることがある。いくつかの実施形態においては、ysは、2つの対になった超電導電磁石間の間隔に関連する場の強度および場の形状に影響を受ける可能性がある。通常、ys,は、様々なエネルギーにより異なる。従って、二次コリメータは、異なるエネルギーを有する陽子ビームを集束させるため、y軸に沿って移動することができる。しかし、二次コリメータの位置は、コリメータを動かすことにより生じる不確かさを防ぐために、通常、全エネルギーについて固定される。これを実現するためには、該間隔は、異なるエネルギーを有する必要な陽子を0近傍の同じ点ysに集束させるように、磁場を形成するように調節することができる。図11は、d=0.5、1、2、4cmに対する陽子の軌跡を示す。d=1.0cmに対する異なるエネルギーに対するysの差は、最小値となっていて0に最も近くなっており、このため1.0cmの間隔が本発明のある実施形態においては使用される。
【0091】
中間電磁石の幅
いくつかの実施形態において、複数の陽子の軌跡は、中間電磁石のx方向(すなわち、ビーム方向)における幅Lxに対して、高い感度を有していてもよい。別の変形例においては、全ての4つの電磁石の幅が階段状磁場の分布に一致するように、15cmに設定された。この構成では、図12(a)に示すように、陽子は通常x軸には戻らず、異なるエネルギーに対して、x=80cmで発散する。また別の変形例において17cmに設定した場合においても、陽子はx軸に戻らなくなる。作用に関する具体的な理論に結び付けることなく、図8に示すように、第2および第3の電磁石に対する場の強度が、第1および第4の電磁石のそれらよりも低いので、陽子はx軸に戻らないと考えられている。これらの例は、Lx=16.3cmで本実施形態における最良の結果をもたらすことを示す(図11(b)参照)。
【0092】
これらの結果は、レーザ加速された陽子ビーム治療用の多重エネルギー陽イオンビーム選択装置のための好適な電磁石システムの設計パラメータの重要性を示している。電磁石システムのパラメータは本発明の様々な観点に示されるように、システム設計および陽子輸送のシミュレーションで容易に決定できる。
【0093】
図13は電磁石によって生じた場および理想的な階段状場での陽子軌跡の比較である。前者の場合における軌跡は、y方向に上向きにシフトしている。このことは、全四領域に対する場の強度が後者の場合同じであるのに対し、場の分布の非対称性のバランスをとるために、第1および第4領域の磁場の強度から起こると思われる場の強度が、中間部におけるそれよりも大きくなっていることによると考えられる。
【0094】
エネルギースペクトルおよび線量分布
作用に関するどのような特定の理論に結び付けることなく、陽子ビームのエネルギー広がりは、レーザ加速された陽子の広いエネルギーおよび角度分布によるものであると考えられている。結果として生じる多重エネルギー陽子ビームは、腫瘍に照射するための臨床用途に有用である。理想的な階段状磁場を用いた場合の予備結果は、各々の多重エネルギーレーザ加速された陽子ビームでは、鋭い深度−線量の激減が少ないが、さらにターゲットを十分な原体性でカバーするターゲットの拡大ブラッグピーク(SOBP)を発生させるために結合または変調できることを示した。エネルギースペクトルおよびそれに対応する線量分布は、本発明の超電導電磁石システムにより発生した磁場の存在下で再計算できる。
【0095】
特性エネルギーEを中心としたエネルギー広がりEを計算するために、陽子が粒子選択アパチャーの置かれている位置xmに到達したときに、エネルギーEを有する陽子のy位置ym(E)を決定する。その後、アパチャーの中心を幅3mmでym(E)に移動し、そのアパチャーを通過する陽子の数をカウントする。これにより、Eの周りでピークとなっているエネルギー広がりを有する陽子ビームが得られる。3つのビームに対するエネルギースペクトルを図14に示す。より低いエネルギー陽子ビームほど、それらの分布においてより小さなエネルギー広がりを有するのに対し、高エネルギービームは、より大きなエネルギー広がりを有する。作用に関する特定の理論と結び付けることなく、このことは、高エネルギー陽子ほど磁場による偏向が少なく、このため低エネルギー陽子よりも発散が少ないという事実に明らかに起因する。図14(b)は、エネルギーの広がりが場の強度の減少と共に増加することを示している。B=0.8Tの場合、エネルギーの広がりは、160MeVを超える特性エネルギーに対して100MeVを超えている。このエネルギーの広がりは、本発明のある実施形態にとって最適に望ましいわけではない。
【0096】
多重エネルギー陽子ビームの線量分布は、GEANT3モンテカルロコードを利用して計算できる。エネルギーの広がりはブラッグピークを広げる傾向にあるので、より広いエネルギー分布は、図15に示すように、通常より平坦なブラッグピークを与える。
【0097】
図14および15は、エネルギースペクトルおよび関連した深部線量分布を理想の階段状磁場分布を用いて計算したものと電磁石形成磁場系についてのものとで比較した図である。電磁石により発生した磁場に対する陽子エネルギースペクトルは、より低いエネルギー領域へ幾分シフトしており、このことは図13に示す結果と一致していると考えられる。
【0098】
本発明の一実施形態によると、陽子ビーム選択に有用な階段状磁場分布を生じることのできる小型の超電導電磁石システムが提供される。超電導電磁石システムの1つの設計は、三次元的磁場分布を与えて、コイルの端でのフリンジング磁場パターンの影響による端に集束する等の境界効果を説明するような、矩形コイルの磁場の解析的計算から得ることができる。陽子軌跡のシミュレーションは、電磁石システムの検証および特定の基準に対する設計を最適化するのに用いられる。
【0099】
これらの結果は、臨床上許容可能な質の陽子ビームは、以下のパラメータを用いて好適な磁場選択システムの実施形態により発生できることを示している。すなわち、単一電磁石の寸法は、約Lx=15cm(外側)、16cm(内側)、Ly=30cm、およびLz=20cmとできる。約4〜5Tの平均磁場誘導は、NbTiワイヤ等の巻き数約10000の好適な超電導ワイヤで約I=85Aのループ電流により与えられる。電流は、超電導ワイヤの加工や電力供給の使用により、60A〜600の範囲で異なることができる。対の電磁石間の間隔は、約1cmと設定できる。3つのコリメータのアパチャーの大きさは、一次コリメータについて約0.05cm、選択アパチャーについて0.3cm、二次コリメータについて0.8cmに設定できる。
【0100】
本実施形態の電磁石システムを用いて、異なる選択された特性エネルギーに対して、エネルギースペクトルが得られる。理想の階段状磁場の分布で得られるエネルギースペクトルと比較して、低エネルギー領域への小さなシフトがあるが、両者はほぼ同じ広がりを有する。このことは、これらのエネルギースペクトルで得られる線量分布パターンに一致している。
【0101】
本発明の超電導電磁石システムは、我々の関連発明である、2004年6月2日出願の「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際特許出願第PCT/US2004/017081号の粒子選択メカニズムに有用であり、ここで本文献の全内容を参照により援用する。従って、本明細書中に記載の超電導電磁石システムは、臨床用途に使用できる陽子ビームを発生させるのに使用できる。これらのシステムは実際の患者の形態に基づいた線量分布のモンテカルロ計算を用いてモデル化できる。
添付資料
ビオ−サバールの法則を図4に示す矩形電流ループを適用する。
【0102】
【数4】
【0103】
ここでBは磁気誘導であり、μ0は自由空間での透磁率で4πx10−7NA−2に等しい。Iは、ループにより通電される電流であり、riは、該矩形電流ループのi番目の辺の電流要素と点(x,y,z)間の距離であり、以下のように表される:
【0104】
【数5】
【0105】
ループのまわりに式(I)を積分して磁場の三成分が得られる。
【0106】
【数6】
【0107】
【数7】
【0108】
および
【数8】
【0109】
ループの中心である特定点(0,0,−c/2)に対して、磁場のz−成分は、公知の式に要約される(N.Ida and J.Baotos,Electromagnetics and Calculation of Fields,Spring−Verlag,1992)。
【0110】
【数9】
【0111】
式(V)は、所定の磁場強度に対して必要な電流を概算するのに使用できる。Bz=4.4T、a=0.15m、およびb=0.3mに対して、必要な電流は、以下のようになる。
【0112】
【数10】
【0113】
従って、ループ表面に近い約4.4Tの磁場を発生させるには、電流Iは、約106Aでなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、レーザ−陽子線治療ユニットの概略図である。
【図2】図2は、本発明の陽子選択システムの一実施形態の概略説明図である。陽子は、一次コリメータの直前で発生し、超電導電磁石システムにより生成した磁場内を移動する。所望の陽子は、まずx軸に向けて移動し、磁場内で偏向し、磁場を横断した後x軸に戻る。不要な粒子は、ストッパおよびコリメータで停止させられるか、周囲のシールドにより吸収される。
【図3】図3は、粒子選択に使用される理想的な階段状磁場を示す。
【図4】図4はz=−c/2の位置にある矩形ループを示す。x軸方向の長さをaとし、y軸に方向の長さをbとする。
【図5】図5は、大きさがa=15cm(x軸)とb=30cm(y軸)で定められる、図4の一重ループに対する磁場の分布図である。(a)は、異なるy軸上の位置に対するz=0.1cmでのBz;(b)は、z軸上の異なる位置に対するy=0cmでのBzであり;(c)はy=1cm、z=1cmでのBx、By、Bzの比較図である。
【図6】図6は、マルチコイル型超電導電磁石の概略図である。巻数2x10000のNbTiワイヤは、電流I=85Aを通電し、4.2K、Lx=15cm、Ly=30cm、Lz=20cm、およびT=0.2cmで、B=4.4Tの磁場を発生する。
【図7】図7は、Lx=15cm、Ly=30cm、およびLz=20cmの一対の超電導電磁石に対する場の分布を示す。z軸方向での電磁石間の間隔は1cmである。:(a)z=0.2cmでの異なるyの値に対するBz。(b)y=7.5cmでの異なるzの値に対するBz。(c)は、y=7.5cm、z=0.2cmでのBx、By、Bzの比較図。
【図8】図8は、四つの電磁石を有するシステムから得られる磁場の分布を示す。:(a)y=7.5cmでの異なるz値に対するBz。磁場はz方向においてあまり変化していない。(b)z=0.2cmにおける異なるy値に対するBz。この電磁石領域内でyが15cm未満では、磁場はy方向においてあまり変化していない。(c)y=7.5cm、z=0.2cmでのBx、By、Bzの比較図。
【図9】図9は、異なる運動エネルギーに対する陽子軌跡を示す。粒子選択システムの中央部において、190MeVの陽子と160MeVの陽子間の距離が約0.8cmに対し、250MeVの陽子と220MeVの陽子間の距離は、約0.46cmである。
【図10】図10は、B=0.8Tに対する陽子の軌跡を示す。
【図11】図11は、中間電磁石の幅がLx=16.3cmのときの異なる間隔dに対する陽子の軌跡を示す。:(a)d=0.5cm;(b)d=1.0cm(c)d=2.0cm(d)d=4.0cm。
【図12】図12は、中間電磁石の異なる幅に対する陽子の軌跡を示す。:(a)Lx=15cm(b)Lx=17cm。
【図13】図13は、理想磁場(破線で図示)と電磁石により発生させた磁場(実線で図示)の陽子軌跡の比較図である。図中、低エネルギー陽子軌跡が一番上に(高いy値)、高エネルギー陽子軌跡が一番下(低いy値)にきている。
【図14】図14は、選択したエネルギーに対するエネルギースペクトルを示す。:(a)電磁石による発生磁場および階段状磁場に対するスペクトル。B=4.4T。(b)電磁石による発生磁場のみに対するスペクトル。B=0.8T。 図15は、異なるエネルギーで選択された陽子に対する線量分布を描く。実線は、電磁石による発生磁場を示し、破線は理想の階段状磁場を示す。
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2004年12月22日出願の米国特許仮出願第60/638,870号に対して優先権を主張するものであり、この参照により当該文献の全内容が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本研究は、米国保険社会福祉省、米国国立衛生研究所、ならびに米国国防総省により、それぞれ契約番号第NIH−CA78331号およびDOD−PC030800号に基づき、一部支援されている。従って、米国政府がこれらの発明に関する権利等を有する場合もある。
【0003】
本発明は、荷電粒子を操作するための超電導電磁石システムに関する。また本発明は、放射線療法のための高エネルギー陽イオンの提供に関する。
【背景技術】
【0004】
放射線療法において、陽子ビームの使用は、線量分布におけるブラッグピークに起因する低い入射線量、より明瞭な半影、および治療深部を超えるような迅速な低下のため、治療標的へのよりよい線量原体性および正常組織の節約の可能性を提供する。かなり局在化した放射線抵抗性病変部に対する線量優位性(dosimetric superiority)およびこれを裏付けるいくつかの臨床結果にも関わらず、サイクロトロンやシンクロトロン技術を利用する陽子線治療設備は高価で複雑なため、陽子線治療の利用は、光子および電子を利用した治療に比べ遅れている。その結果、陽子線治療は、放射線療法における治療手段としてあまり広く普及していない。小型で経済的なレーザ−陽子線治療器が入手可能であれば、この状況は改善される可能性がある。放射線療法用のレーザ−陽子システムは、本発明者らによって、米国ペンシルバニア州Philadelphiaのフォックスチェイス癌センター(Fox Chase Cancer Center)において現在開発されている。典型的なレーザ−陽子システム設計は、以下の三種の要素が含む。すなわち、(1)高エネルギー陽子を発生させる小型レーザ−陽子源と、(2)正確なビーム伝送のための小型粒子選択・ビームコリメート装置と、(3)レーザ加速された陽子ビームを使用して、原体照射線量分布(conformal dose distribution)を実現させる治療最適化アルゴリズムを含む。
【0005】
粒子のレーザ加速は、1979年に電子について初めて提案された。1990年代のレーザ−電子加速は、チャープパルス増幅法(chirped pulse amplification,CPA)およびチタンサファイア等の高フルエンス固体レーザ材料の出現以来、急激に進歩している。近年では、幾十かのMeVのエネルギーを有する陽子が観測された多くの実験調査結果が報告されている。ローレンスリバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)で行われた最近の実験によると,最大エネルギーが58MeVの粒子が報告されている。レーザ−陽子加速のメカニズムは,、現在研究中であり、レーザ−物質間の相互作用の結果生じる縦電場に長年関係づけられている。陽子加速に対するレーザ−プラズマ相互作用のコンピュータシミュレーション(具体的にはPIC(Particle in Cell)法によるシミュレーション)の結果に加え、最近の実験的調査によれば、レーザ加速された陽子ビームは広いエネルギー分布と角度分布を有し、治療に直接利用できないことがわかっている。
【0006】
分光器様の粒子選択/ビーム変調システムについては、本発明の発明者らの数人にによって説明されており、陽子をそれらのエネルギーおよび放射角に従って空間内に分布させるのに、階段関数のように分布する磁場が用いられている。粒子選択/ビーム変調システムについては、2004年6月2日出願の「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際特許出願第PCT/US2004/017081号に記載されており、本文献の全内容をここで参照により本明細書中に援用する。その後陽子ビームは得られるエネルギーで回収され、これは拡大ブラッグピーク(spread−out Bragg Peaks,SOBP)を与えるような変調されたエネルギー分布を実現するのに使用できる。従って、初期に提案された粒子選択システムは、理想の階段状磁場の構造に基づく選択装置を構成する。階段状磁場の分布の実現は困難なため、非理想階段状磁場の構造を取り入れた粒子選択システムについて、さらなる改良が現在必要とされている。さらにまた、非階段状磁場の構造は、典型的な電磁石システムを使用することで発生するため、レーザ加速された多重エネルギー陽イオンの効率的で小型な設備による分離にむけ、電磁石システムにおける改良が現在求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、陽子ビーム選択に有用となる階段状磁場分布を形成できる小型の超電導電磁石システムが提供される。超電導電磁石システムの一設計は、矩形コイルの磁場の解析計算により得ることができ、これは三次元の磁場分布を与えるので、コイルの端部でのフリンジングフィールドパターンの影響によるエッジ集束のような境界効果を説明する。陽子軌跡のシミュレーションは、電磁石システムの評価やある基準に対する設計の最適化に用いることができる。
【0008】
ある実施形態においては、本発明の電磁石は高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム選択メカニズムに使用するための階段状磁場を発生できる。
【0009】
本発明はまた、矩形領域に分布された階段状磁場を発生する超電導電磁石システムを提供する。こ磁場の分布は、粒子選択システムにおける陽子輸送に有用である。陽子線量分布を計算し、理想の階段状磁場および設計された超電導電磁石システムにより発生することのできる場に対する結果と比較する。
【0010】
本発明は、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから構成される高エネルギー多重エネルギーイオンビーム用の粒子選択システムを提供する。これらのシステムは、ビームコリメータと、エネルギーレベルに応じて高エネルギー多重エネルギー陽イオンを空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合させることのできる第2の磁場から構成され、該第1および第2の磁場源は、約0.1〜30テスラ(Tesla)の磁場を発生できる超電導電磁石である。
【0011】
本発明によると、高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させる方法が提供され、該方法は、エネルギーレベルの分布を有することで特徴付けられる複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから構成されるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生させる工程と、コリメート装置を用いてレーザ加速されたイオンビームをコリメートする工程と、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第1の超電導電磁石により与えられる第1の磁場によって、高エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離する工程と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーにより変調する工程と、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、少なくとも約0.1〜約30テスラの磁場を有する第2の超電導電磁石により与えられる第2の磁場により、再結合(Recombination)させる工程を含む。
【0012】
さらに本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムも提供される。これらのシステムは、レーザと高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生できるターゲットシステムを有するレーザ−ターゲットシステムと、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から形成でき、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる少なくとも2つの超電導電磁石を有するイオン選択システムと、イオンビーム監視制御システムを有する。これらのシステムにおける高エネルギー多重エネルギーイオンビームは、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むことができる。
【0013】
さらにまた本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法も提供される。これらの治療方法は、患者の標的領域の位置を特定する工程と、標的領域に照射するための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含む、標的領域についての治療計画を決定する工程と、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる1若しくはそれ以上の超電導電磁石を用いて、エネルギーレベルに基づき空間的に分離された複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから、複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する工程と、複数の治療に好適な多重エネルギー陽イオンビームを治療計画に従って標的領域に伝送する工程を含む。
【0014】
さらにまた本発明によると、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターが提供される。これらのセンターは、患者を固定する場所と、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記場所に固定されている患者に伝送できるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムを含む。このイオン治療システムは、レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生することのできるターゲットアセンブリを有するレーザ−ターゲットシステムと、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる複数の超電導電磁石を用いてエネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを用いて、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させることのできるイオン選択システムと、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム用の監視制御システムを有する。
【0015】
さらに本発明によれば、多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムが提供される。これらのシステムは、流体的に連通した、一連の2若しくはそれ以上の超電導コイルを有する。各超電導コイルは、それぞれ約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができ、少なくとも2つの磁場が互いに反対方向に発生する。
【0016】
本発明の前述およびその他の観点は、以下の図面ならびに詳細な説明から当業者には容易に明らかであろう。要約および以下の詳細な説明は、本発明添付の請求項に定められているような本発明を限定するものとみなすものではなく、本発明の例および説明を与えるに過ぎない。
【0017】
本願発明の上述したような観点は、添付の図面および詳細な説明を参照することにより、当業者にはより明らかになるものである。要約および添付の詳細な説明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明を限定するものではなく、単に本発明の実施例および詳細を提供するものです。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、以下の詳細な説明を本発明の開示内容の一部を構成する添付の図面および例と共に参照することで、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書中に説明または示される特定の装置、方法、条件、或いはパラメータに限定されるものではなく、本明細書中で使用される用語は、例示として特定の実施形態を説明する目的で使用しており、特許権請求の当該発明を限定する意図はないことを理解するべきである。さらにまた、添付の請求項を含む本明細書に使用されるように、単数で記載されている語は、複数のものも含み、特定の値に言及しているものは、文脈上特に明確に指定されていない限り少なくともその特定の値を含むことを意味する。数値に関する範囲が示されている場合、別の実施形態では、その一方の特定値から、および/または他方の特定値までを含む。同様に、数値がおよその値で示されている場合、"約"という先行詞を使用することで、その特定の値が別の実施形態を構成することが理解されるであろう。全ての範囲が包含的であり、かつ組み合わせ可能である。
【0019】
本明細書中で、明確化のため別の実施形態で記載される本発明のいくつかの特徴は、組み合わせにより1つの実施形態として提供できる可能性もあることは理解されるべきである。逆に、簡潔化のため1つの実施形態中に記載される本発明の様々な特徴は、個別に或いは様々に組み合わせて提供できる可能性もある。さらにまた、範囲に記載されている数値への言及は、その範囲内にある各数値および全数値を含む。
【0020】
本明細書で使用されるように、「陽子」とは、+1の電荷を有する水素(H1)の原子核を意味する。
【0021】
本明細書で使用されるように、「陽イオン」とは、正味の正電荷を有する原子および原子核を意味する。
【0022】
本明細書で使用されるように、「多重エネルギー(polyenergetic)」とは、1つ以上のエネルギーレベル有することで特徴付けられる物質の状態を意味する。
【0023】
本明細書で使用されるように、「高エネルギー」とは、1ミリオン電子ボルト(MeV)を超えるエネルギーレベルを有することで特徴付けられる物質の状態を意味する。
【0024】
本明細書で使用されるように、「ビームレット」とは、空間的に分離或いはエネルギー的に分離、或いは空間的かつエネルギー的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの一部分を意味する。
【0025】
「一次コリメータ」、「一次コリメート装置」、「初期コリメータ」、および「初期コリメート装置」の語は、本明細書においては相互可換に使用される。
【0026】
「エネルギー変調システム」および「アパチャー」とは、注目しているアパチャーが空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを変調できることが明らかな場合、相互可換に使用されている。
【0027】
「流体的に連通させた(in fluidic communication)」とは、図2に示されるように、1若しくはそれ以上のイオンビームが各コイル内で発生される磁場を通過できるように、2若しくはそれ以上の電磁コイルが配置されていることを意味する。
【0028】
高エネルギー多重エネルギーイオンビーム用のイオン選択システムは、ビームコリメータと、高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合(recombine)することのできる第2の磁場源を構成成分として有し、前記第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができる超電導電磁石である。レーザ加速された陽子線治療システムは、高密度材料中でプラズマを発生させる高強度レーザパルスを使用し、高運動エネルギーに陽子を加速する。本発明での使用に適応できるレーザ加速された陽子線治療システムの例は、2003年6月2日出願の米国特許出願第60/475,027号に基づいて優先権が主張されている、「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際公開第WO2004109717号、米国特許出願番号第 号中にさらに詳しく記載されており、該文献中のレーザ加速された陽子線治療システムに関する記述部分はこの参照により本明細書に組み込まれるものである。本発明での使用に適応できるレーザ加速された陽子を放射線治療のために変調する方法の例は、2003年6月2日出願の米国特許出願第60/475,027号および2003年12月2日出願の米国特許出願第60/526,436号に基づき優先権が主張されている、「Methods of Modulating Laser−Accelerated Protons for Radiation Therapy」と題する国際公開第WO2005057738号、米国特許出願番号第 号にさらに詳細に記載されており、該文献中の放射線治療のためにレーザ加速された陽子を変調する方法に関する記述部分はこの参照により本明細書に組み込まれるものである。
【0029】
いくつかの実施形態における多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムは、流体的に連通された一連の2若しくはそれ以上の超電導コイルを有する。各超電導コイルは、それぞれ約0.1〜約30テスラの磁場を与えることができ、少なくとも2つの磁場は互いに反対方向に与えられる。
【0030】
いくつかの実施形態においては、小型の超電導電磁石システムは、各々が同方向に磁場を与えることのできる2つの外部電磁石と、各々が互いに同方向で外部磁石の磁場の方向とは逆方向の磁場を与えることのできる2つの内部電磁石を有する。これらの実施形態において、内部電磁石の磁場は、強度において異なっていても、ほぼ同じ強度を有していてもよい。係る実施形態においては、前記2つの内部電磁石は、互いに近接していてもよいし、或いは間隔をもって離れて位置していてもよい。離れて位置する場合の好適な間隔は、通常約0.2cm〜約5cmの範囲であり、より好ましくは約0.5〜約2cmの範囲である。いくつかの好ましい実施形態においては、前記2つの内部電磁石は、約1cmの間隔で離れて位置している。いくつかの実施形態においては、各々が約0.02cm〜約2cmの大きさのアパチャーサイズを有する、一連のコリメータが使用される。
【0031】
前記超電導電磁石システムを用いることにより、強力な磁場を発生することができる。小型超電導電磁石システムは、磁場分布を調節するために様々な形状に形成された電磁石を有することができる。いくつかの実施形態においては、前記超電導電磁コイルは、好ましくは、一様に分布した磁場を発生するような形状に形成されている。好適な超電導電磁石は、矩形に形成されている。矩形に形成された超電導電磁石は、円形に形成された電磁石から発生する磁場に比べ、より一様に空間に分布する磁場を形成できる。
【0032】
本実施形態および本発明の様々な実施形態の磁場源として、約0.1〜約30テスラの範囲、より好ましくは約0.2〜20テスラの範囲、或いは約0.5〜約10テスラでもよく、より好ましくは約0.5〜約5テスラの範囲の磁場強度を有する超電導電磁石が挙げられる。いくつかの実施形態においては、各電磁石の最大磁場を約5テスラ未満としてもよい。いくつかの実施形態においては、巻き数が約1,000〜約100,000、好ましくは約5,000〜約20,000、さらにより好ましくは、約10,000の超電導電磁石が、本発明において好適である。
【0033】
好適な超電導電磁石は、長いワイヤを複数回巻くことにより形成できる。2若しくはそれ以上のこのような超電導電磁石は、間隔dをもって互いに連結でき、ここで幾分一様な磁場が生じて、陽子が通過する。単一の超電導電磁石の大きさは、レーザ−陽子システム設計および希望するワイヤ材料の選択の両方により決定できる。小型レーザ−陽子システムは、小型の電磁石システムを有することができる。いくつかの実施形態において、超電導電磁石の寸法に関しては、全体の形状として矩形としてよく、その矩形寸法は、約5cm〜約100cm、より好ましくは約10cm〜約75cm、さらにより好ましくは約15cm〜50cmである。本発明の一実施形態において、単一の超電導電磁石の寸法の上限は、約20x40x25cm3(LxxLyxLz)と設定できる。本明細書で使用されるように、本明細書英語原文中において数字の前に使用されている数学的記号のチルダ(〜)は「約」を意味し、本明細書中でそのように翻訳されている。密度約103A/cm2の電流を通電できる従来の銅線を使用する場合、その銅線を巻いて形成した電磁コイルの断面積は、約4.4Tの電磁誘導を実現するために約106Aの全電流を得るには、約103cm2とするべきある(添付資料を参照)。従って、長さ(Lz)約25cmの従来の非超電導電磁石については、厚さ(T)を約40cmとすることで、そのような断面積とすることができ、これにより、xおよびy方向の両方向における幅(LxおよびLy)は約80cmを大きく超えることになる。このような電磁石は本発明で使用できるが、さらに小さな電磁石を使用するのも望ましい場合がある。
【0034】
超電導ワイヤは超高電流密度の電流を通電できるので、銅線の代わりに超電導ワイヤを用いることで、電磁石の大きさをかなり小さくすることができる。超電導ワイヤを用いる別の利点は、電力を節約できることである。超電導電磁石の場合の電力消費は、従来の電磁石の同等物のわずか約1%〜約10%である。超電導ワイヤは市販されており、強力な磁場を発生させるための高エネルギー加速器に広く用いられてきた。好適な超電導ワイヤは、約4.4Tの磁場に対して、4.2Kでの臨界電流密度が約4.25x105A/cm2のNbTiである。他の市販されている超電導ワイヤ、Nb3Snも使用できる。高温超電導体から形成される超電導ワイヤ等、その他の種類の超電導ワイヤが使用できる。好適な高温超電導ワイヤは、約77Kを超える臨界温度を有し、例として、YBCO(例えば、YBa2Cu3O7−x)およびBSCCO(例えば、Bi2Sr2Ca2Cu3O10或いはBi2Sr2Ca1Cu2O8)材料が挙げられる。好適な高温超電導ワイヤは、米国マサチューセッツ州WestboroughのAmerican Superconductor社(http://www.amsuper.com/index.cfm)から市販されている。NbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤは、幅が約10ミクロンのものから〜直径が250ミクロンのものまで、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社(東京)(http://www.jastec.org/eg/index.html)から市販されている。実際の電流は臨界電流未満でよく、さもなければ、超電導状態が壊れ、ワイヤが従来の電導状態で機能するようになる。
【0035】
一実施形態においては、階段状磁場分布を実現するために4つの電磁石が使用できる。これらの電磁石は、第1および第4の電磁石の磁場が−z方向に、第2および第3の磁場がz方向に向くように、x軸(ビーム軸)に沿って平行に配置される。第1の電磁石は、陽子を押し上げるローレンツ力を及ぼす磁場を形成し、そして第2および第3の電磁石は陽子を押し下げる磁場を形成し、最後の電磁石から生じる磁場は陽子をもとの方向に戻す。このような超電導電磁石システムでは、そのビーム軸方向の寸法を約100cmよりも短くしてもよい。
【0036】
本発明で利用される超電導電磁石の好適な極低温技術として、超電導電磁石の市販部品から容易に構築できる当業者に既知の各種極低温システムが挙げられる。好適な低温保持装置は、電磁石システムと共に設計および実施できる。
【0037】
様々な実施形態において、第1コリメータは、第1の磁場に入射する入射ビームの角度広がりを定める。第1コリメータを出射するビームのビーム広がりの角度の正接は、およそ、ビームがコリメータを出射する第1コリメータの出射口の距離の半分の距離の、陽子ビーム源までのコリメータの出射口(すなわち、プラズマターゲット)の距離に対する比とすることができる。この角度は約1ラジアン未満とすることができる。放射角は、ターゲットシステム(すなわち、ターゲットおよび第1コリメート装置)を出射する初期エネルギー分布の角度である。電子を、第1の磁場により陽イオンとは反対方向に偏向し、好適な電子ビームストッパにより吸収してもよい。好適な電子ストッパとして、タングステン、鉛、銅、或いは電子および所望のレベルに生ずる全ての粒子を減衰させるのに十分な厚みを有する全ての材料が挙げられる。アパチャーは、所望のエネルギー成分を選択するのに使用でき、選択された陽子を多重エネルギー陽イオンビームに再結合できる、対応する磁場機構(一実施形態においては、第2の磁場)が選択できる。好適なアパチャーは、タングステン、銅、或いは陽イオンのエネルギーレベルを下げることのできる十分な厚みを有するその他の材料により形成できる。このエネルギーレベル減少は、アパチャーを通過しないようなイオンと区別できる程度まで実施できる。
【0038】
本発明の様々な実施形態において、アパチャーの形態は、空間的に分離された多重エネルギーイオンビーム中に置くと、イオンビームの一部を流体的に連通させることのできる、プレート或いはスラブ上の円形、矩形、或いは不規則な形状の単一或いは複数の開口でもよい。別の実施形態においてアパチャーは、選択したイオンビームを変調するのに望ましい単一或いは複数のエネルギーレベルを空間的に選択するために選択されたイオンビームへの物理的な並進または回転等により調節可能に選択された複数の開口を有するプレートから作成できる。本明細書中に記載されるように、イオンビームの変調は、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させる。好適なアパチャーとして、多葉コリメータが挙げられる。空間的に分離されたイオンビームを流体的に連通する開口の空間的位置を制御可能に選択することに加え、規則的或いは不規則な形状を利用して、アパチャーの複数の開口を制御可能な形状或いは複数の形状を有するようにしてもよい。このため、アパチャーの開口の様々な組み合わせは、空間的に分離されたイオンビームを変調するのに用いられる。空間的に分離された陽イオンは、その後第2の磁場により再結合する。
【0039】
高/低エネルギー陽イオン(例えば、陽子ビーム)ストッパは、不要な低エネルギー粒子や高エネルギー粒子(図示されていない)を除くことができる。加速された陽子の広い角度分布(所定のエネルギー範囲による)のため、第1の磁場を通過後、異なるエネルギーの陽イオンが空間で混ざりあう場合がある。例えば、低エネルギー陽子の一部は、高エネルギー粒子の存在する領域に進む可能性があり、その逆の場合もある可能性がある。このような陽子の空間的混合は、第1コリメート装置のような一次コリメート装置を導入することで減少できる。一次コリメート装置は、陽子を所望の角度分布にコリメートするのに用いることができる。
【0040】
特定の角度分布にコリメートするのに加え、不要な陽子を減少させるために、一次コリメート装置を備えていてもよい。その幾何学的大きさおよび形は、エネルギーおよび角度陽子分布に合わせて調節することができる。例えば、本発明の一実施形態によれば、不要なエネルギー成分を吸収する、長さ5cmのタングステンコリメータが提供できる。密度および選択システムの小型性の要求のため、タングステンが、視準目的に好ましい選択肢である。好適な一次コリメータの開口は、100cmのSSDで定められる磁場のサイズにして、11cm2の磁場サイズを与える。これより大きな角度で移動する陽子は、遮断することができる。磁場は、多重エネルギー陽子を、それらのエネルギーおよび角度分布に従って、空間領域に分布させる。それらの空間分布は、低いエネルギー粒子ほど中心軸からより離れて偏向し、陽子エネルギーが増加するほど、空間的偏向は減少するようにできる。従って、磁場および一次コリメータ(特定のコリメータ開口を有するもの)の両者の寄与は、アパチャーを用いて、エネルギー選択或いは陽子エネルギースペクトル再形成を可能にするような空間的陽子分布作り出す。アパチャーの幾何学的形状は、治療用陽子のエネルギー分布を決定することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、エネルギーレベルおよび放射角に基づいてレーザ加速された陽子を空間的に分布させるのに使用され、異なる形状のアパチャーを、エネルギーおよび角度の治療の治療域内で陽子を選択するのに使用するイオン選択システムが提供される。このような小型装置により、大型のビーム輸送および従来の陽子線治療システムに共通するコリメート設備の必要性はなくなる。本発明のレーザ−陽子源およびイオン選択コリメート装置は、従来の放射線治療室内に設置できる小型の処置部を形成するために、治療ガントリ(例えば、従来の臨床加速器により提供されるもの)上に設置できる。
【0042】
本発明のある実施形態において、二次モニタ室は、各エネルギー成分の強度を測定する。一次モニタ室を備えていてもよい。様々なイオンビーム監視法および制御システムは、2001年1月8日出願の米国特許出願第09/757,150号、2002年7月11日公開の米国特許出願公開番号第2002/0090194A1号、「Laser Driven Ion Accelerator」、本文献のイオンビームの監視および制御システムに関する記載部分はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
好適な小型形態に係る一実施形態によれば、長さ50cm未満および直径40cm未満の寸法のものが提供される。異なるレーザ−陽子は異なる角度分布を有するので、コリメータを磁場の大きさを定めるのに使用できる。第1コリメータが正方形の開口を有し、異なるエネルギーレベルを有する多重エネルギーの視準された陽子が電磁石により発生した磁場を通過した場合、視準された陽子は、各々異なる横方向の位置に到達する。第1コリメータの大きさが有限であるため、第1コリメータの大きさ、磁場強度、およびエネルギー平面から第1コリメータまでの距離に依存する陽子のエネルギーレベルに幾分オーバーラップのある可能性がある。,本実施形態の所望のエネルギーを選択するためには、対応する横方向の位置に配置できる第2のコリメータが使用できる。例えば、正方形のアパチャーは、50、150、或いは250MeV領域の陽子を選択するのに使用できる。所望のスペクトルを与えるような陽子の組み合わせを生じるように、複数のレーザパルスを与えても良い。所望の陽子エネルギースペクトルは、所望の深さ範囲にわたって、一様な線量分布を与える治療用高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生させるのに用いることができる。
【0044】
本発明のイオン選択システムの別の実施形態は、エネルギーとそのエネルギー(強度)を有する陽子の合計数の両者を同時に選択するために、エネルギー空間(平面)で可変のアパチャーサイズを利用する。本実施形態では、所望の陽子スペクトルを実現するのに、上述の実施形態に比べ少ないレーザパルスを使用する。この可変のアパチャーサイズに係る実施形態では、好ましくは、異なる横方向(エネルギー)位置での可変の幅を有する、エネルギー空間で細長いアパチャーを使用する。作用に関する特定の理論に結び付けることなく、本設計により、同じレーザパルスからエネルギーと強度選択を同時に行うことを可能にする。このことは、放射線療法のための深度範囲にわたって一様な線量分布を実現するために、多重エネルギーレーザ陽子ビームを用いる大変効率的な方法であると考えられる。可変なエネルギー選択アパチャーの大きさは、異なる陽子異なる陽子エネルギーレベル領域を同様の領域サイズに再結合させるためには、後に続く差動磁気システムを利用することができる。
【0045】
いくつかの実施形態においては、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する陽イオンの最終的な領域サイズおよび形状を定めるために、二次コリメート装置を備える。小さな形状を有するビーム(例えば、正方形、円形、長方形、およびこれらを組み合わせたもの)は、標的体積に対する原体線量分布が実現できるように、個々のビームレットの強度を変調することで形成することができる。
【0046】
本実施形態によると、空間的に分離されたビームを変調することのできる変調可能な二次コリメート装置が提供される。この変調可能な二次コリメート装置は、多葉コリメータ(MLC)等、上述のようにアパチャーを用いて実現できる可変の形状を有してもよい。多数のレーザパルスは、本実施形態を利用して、標的体積を処置するのに提供することができる。所望のエネルギースペクトル選択するのに全標的体積の少なくとも一部の深部範囲をカバーするためエネルギーレベルを変調するアパチャーが横方向に移動できるのに対し、変調可能な二次コリメート装置(例えば、MLC)は、対応する深部で少なくとも標的体積の断面の一部を囲むように再結合されたビーム領域の形状を変化させることができる。
【0047】
本明細書に記載の本発明のイオン選択システムのための方法は、本明細書に記載の装置および手段を用いて好適に実施できる。陽子ビームは断面が微小であってもよいので、小さな空間で高磁場を形成することができる。本発明のある実施形態では、厳密な磁束密度場(B−field)空間分布は要求されていないが、むしろ磁場は低勾配を有するか、それらは空間的にオーバーラップしているか、或いはその両方である可能性がある。本発明の好適な実施形態では、対応する反対の磁束密度場を有する少なくとも2つの磁場源を有する。その形態は、より高い磁場、より微小の光子ビームストッパ、或いはその両方を使用することで、ビーム方向においてさらに小さくしてもよい。
【0048】
本発明の様々な代替実施形態として、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを視準できるコリメート装置と、高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離できる第1の磁場源と、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調できるアパチャーと、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合することのできる第2の磁場源を有するイオン選択システムの実施形態が挙げられ、該第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる超電導電磁石である。
【0049】
上記と同様のイオン選択システムの別の実施形態は、さらに第3の磁場源を有し、この第3の磁場源は、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向けて曲げることができる。好ましくは、第3の磁場源は、超電導電磁石である。さらなる実施形態では、上記と同様のイオン選択システムを有するが、アパチャーは、第3の磁場源の磁場内または第3の磁場源の磁場外に配置され、第3磁場源は二つの部分に分かれている。
【0050】
本発明の別の実施形態では、第3磁場源の磁場は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を第2の磁場源にむけて曲げることができる。いくつかの実施形態においては、第2の磁場源は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行ではない方向に向けて曲げることができる。別の実施形態では、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向けて曲げることのできる第2の磁場源を有する。
【0051】
本発明のある実施形態では、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に連通させることのできる二次コリメート装置を有する。いくつかの実施形態においては、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節できる二次コリメート装置を有する。いくつかの実施形態においては、各開口が高エネルギー多重エネルギー陽イオンを流体的に連通させることができる複数の開口を有するアパチャーを備えた回転可能なホイールが使用できる。別の好適なアパチャーは、低エネルギーイオン、高エネルギーイオンの各々、或いはそれらを組み合わせたものを通過させることのできる開口を有する多葉コリメータである。
【0052】
本発明のある実施形態に従って、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを、コリメート装置を用いて視準し、その陽イオンは、第1の磁場により、それらのエネルギーレベルに従って空間的に分離される。空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、エネルギー選択アパチャーで変調され、その変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、第2の磁場を用いて再結合される。いくつかの実施形態においては、陽イオンの一部、例えば約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものは、該アパチャーを通して伝送され、その他の部分は、エネルギー選択アパチャーによりブロックされる。本実施形態における約0.1〜約30テスラの強度の磁場は、超電導電磁石を用いて発生する。いくつかの実施形態においては、当該磁場は、約0.2〜約20テスラの強度を有する。
【0053】
いくつかの実施形態における陽イオンの軌跡は、第1の磁場を用いて、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れる方向に曲げられる。別の実施形態においては、空間的に分離された陽イオンの軌跡は、第3の磁場を用いて、アパチャーに向かう方向にさらに曲げられる。いくつかの実施形態においては、第3の磁場は、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、第2の磁場に向けて曲げる。本実施形態では、第2の磁場により、イオンの軌跡をレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向けて曲げることをさらに含む。好ましくは、第1、第2、および第3の磁場は、複数の超電導電磁石により供給される。いくつかの実施形態においては、空間的に分離された高エネルギー陽イオンは、アパチャーの位置調節可能な開口を用いてエネルギーレベルにより変調される。いくつかの実施形態においては、高エネルギー多重エネルギー陽イオンの空間的分離は、、第1の磁場に入射すると、レーザ加速されたイオンビームのビーム軸にに対して垂直に測ったこれらの距離で最長約50cmの距離にわたる。
【0054】
さらにまた本発明によると、本明細書に記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを用いて、再結合した空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンと共に放射性同位元素前駆体を照射することで放射性同位元素を発生させる方法が提供される。2−デオキシ−2−18Fフルオロ−D−グルコース([18F]FDG)の生成は、その放射性同位体となる化学的前駆体の陽子衝撃により行う。これらの工程は、従来のサイクロトロンおよびシンクロトロン源を用いて発生させた陽子ビームを使用する。例えば、J.Medemaら[http://www.kvi.nl/〜agorcalc/ecpm31/abstracts/medema2.html]は、18O濃縮水中における18O(p,n)18F核反応を介して[18F]フッ化物をまず調製し、[18F]フッ化物を樹脂法およびクリプテート乾燥プロセスにより回収して[18F]FDGを生成することで[18F]フッ化物および[18F]FDGの[18F]フッ化物を生成する方法を報告している。本発明によると、放射性同位元素を生成する該工程での使用に好適な高エネルギー多重エネルギーイオンビームが提供される。従って、放射性元素を発生させる工程は、本明細書に記載のように高エネルギー多重エネルギー陽子ビームを適切な粒子、ターゲットおよびビーム電流を与えるように形成する工程を含む。ターゲット前駆体をH218Oで満たす。あらかじめ設定された集積ビーム電流或いは時間に到達するまでターゲット前駆体に、高エネルギー多重エネルギー陽子ビームを照射する。ターゲット前駆体は、圧力変換器によりモニタできる。集積ビーム電流或いは時間に到達すると、[18F]フッ化物を[18F]FDGの化学的合成に使用する。最終生成物は、等張、無色、無菌で、発熱物質のないものであり、臨床用途に好適である。
【0055】
上述の様々な実施形態におけるイオン選択システムは、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムの構成要素として使用できる。本発明の一実施形態によれば、小型で融通性があり、コストパフォーマンスの高い陽子線治療システムが提供される。本実施形態は、(1)高エネルギー多重エネルギー陽子のレーザ加速、(2)超電導電磁石を用いたイオン選択およびビーム視準のための小型システム設計、および(3)レーザ加速された陽子ビームを利用するための治療最適化ソフトウェアの3つの技術的に画期的進歩によるものである。レーザ陽子放射治療システムの重要な構成要素は、異なるエネルギーレベルおよび強度の陽子の微小ペンシルビームを伝送するための小型のレーザ−陽子源に連結した小型のイオン選択およびビームコリメート装置である。通常、そのレーザおよびその処置部は、レーザビーム配置を確実にするために同じ懸架台上に置かれる(距離が短かいためエネルギーロスが無視できる)。このことは、システム全体を小型に保つのに役立つ。本実施形態において、ターゲットアセンブリおよびイオン選択装置は回転ガントリ上に設置され、レーザビームは、一連のミラーを通して最終焦点ミラーに輸送される。ミラー間の距離は、陽子ビームをxおよびy軸のそれぞれに沿って走査するために調節され、平行に走査したビームを生じる。代わる方法では、走査パターンを実現するために、ミラーによって定められるレーザビーム軸の周りにターゲットおよびイオン選択装置を揺動させる。これにより広がりのあるスキャンビームが生じる。治療システム内の治療寝台は、同一平面および非同一平面上での、アイソセントリックおよびSSD(線源−表面間距離)治療を行うのに調節できる。
【0056】
イオン治療システムの一実施形態として、レーザ−ターゲットシステムが含まれ、該レーザ−ターゲットシステムは、レーザと、高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生することのできるターゲットシステムとを有し、該高エネルギー多重エネルギーイオンビームは、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む。本実施形態において、高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、エネルギーレベルに基づき空間的に分離され、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から発生できるイオン選択システムが提供される。さらにまた、示差室(differential chamber)および集積室(integration chamber)が提供される。異なるエネルギーを有する陽イオンは、通常、イオンのエネルギー差を測定し、選択されたイオンのエネルギーをモニタする示差室の様々な部分を通過する。通常、示差室は、エネルギー選択アパチャーを制御しない。集積室は、アパチャーおよびアパチャー開口の位置を決定するため、例えば、コンピュータ或いは好適なデータ処理部によって)解析される信号を生じるために備えられている。
【0057】
当該治療システム一実施形態によると、磁場がそれらのエネルギーレベルおよび放射角に基づいてレーザ加速された陽子を空間的に分布させるのに使用されるイオン選択システムが提供され、異なる形のアパチャーがエネルギーおよび角度の治療域内で陽子を選択するのに使用される。イオン選択システムの大きさを小さくするため、磁場が超電導電磁石によって供給される。これらの磁場は、通常約0.1〜約30テスラの範囲である。さらなる実施形態においては、約0.2〜約20テスラ、約0.5〜約10テスラ、および約0.8〜約5テスラの磁場を使用する。超電導電磁石の使用することで、従来の陽子線治療システムに共通する大型のビーム輸送およびコリメート設備の必要性をなくす小型装置が得られる。本実施形態のレーザ−陽子源およびイオン選択/コリメート装置は、従来の放射線治療の治療室内に取り付けることのできる小型の処置部を形成するのに、通常治療ガントリ(従来の臨床用加速器によるもの等)上に設置される。
【0058】
上述の様々な実施形態におけるレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムは、患者を治療する方法に使用できる。例えば、本発明の様々な実施形態により提供される陽子選択システムで、逆方向治療計画に使用できる微小の多重エネルギー陽子のビームレットを発生するための方法の可能性がひらける。陽子の線量特性のため、エネルギーおよび強度が変調された陽子による治療は、治療体積への線量の原体性を著しく改善できる。さらにまた本発明を用いると、従来の治療に比べ、正常組織は温存される。全体としての結果は、レーザ加速された陽子の放射治療用のイオン選択システムとの併用は、癌の治療に役立つことを示唆している。
【0059】
放射線治療は、前立腺癌に対する最も有効な治療方法の一つである。外部ビーム放射線治療において、陽子ビームの使用は、ブラッグピーク効果の結果として治療標的に対する優れた線量原体性および正常組織の温存を可能にする。中性子および光子(X線)が高い入射線量および深さによるゆっくりとした減衰を示すのに対し、単一エネルギーの陽子は、組織への伝播がとまる直前でビーム透過機能としてのエネルギー付与の非常に鋭いピークを有する。結果として、照射により誘発される周辺の正常組織の損傷を避けながら、入射陽子エネルギーのほぼ全てを3D腫瘍体積内或いはその極近傍へ付与することが可能である。陽子は、それらの範囲の端近傍でより高い線エネルギー付与成分を有し、従来の医療加速器ビーム或いはコバルト60源に比べて、深部腫瘍の放射線治療により生物学的に有効である。
【0060】
鋭いブラッグピークにより特徴付けられる線量的優位性にも関わらず、陽子線治療の利用は、前立腺治療用の光子の利用よりもかなり遅れている。このことは、陽子加速器の操作領域が、少なくともコストおよび複雑さの規模がより大きいためであり、このため、電子/光子の医療用加速器に比べて幅広く臨床用に使用するには費用がかかりすぎることになる。従来の陽子加速器は、サイクロトロンおよびシンクロトロンであり、これらは、米国のマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital,MGH)および ロマリンダ大学メディカルセンター (Loma Linda University Medical Center,LLUMC)の2つの医療施設にのみ存在する。これら両者は非常に大きなスペース(全床面或いは建物)を占めている。数は増えているが、このように限られた数の医療施設のみが世界にあるのみである。これらの施設から得られた臨床例はその数に幾分限りがあるが、治療記録はかなり局在化した放射線抵抗性病変に特に有望な結果を示した。本ビーム治療法の治療経験が限られているので、あらゆる悪性腫瘍に対する臨床効果の度合いは、定量化されていない。この状況は、本発明により提供されるような、小型で融通性があり、コスト効率の良い陽子線治療システムが入手可能になることで大いに改善される。本発明によって、この優れたビーム治療法が広く使用されることが可能になり、このことによって、脳癌、肺癌、および前立腺癌等の癌の管理に著しい進歩をもたらす。
【0061】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法は、患者の標的領域についての治療方針を決定する工程を含む。該治療方針は、標的領域への照射のための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含む。微小の陽子ビームレットの線量分布は、ビームサイズおよび異質の患者の身体構造に著しく影響を受けるので、レーザ加速された陽子ビーム治療のための治療最適化において、線量計算が行われる。患者に対する線量計算は、GEANT3システムを利用して評価する。そのコードは、一般用のモンテカルロシミュレーションとしてデザインされている。線量計算を加速するため、高速陽子線量計算アルゴリズムが従来の光子および電子のモンテカルロ線量計算アルゴリズムに基づいて開発されている。モンテカルロシミュレーションをスピードアップするため、様々な分散低減法がコード中で実行されてきている。これらの手法として、荷電粒子のシミュレーションに大変効率的な「決定論的サンプリング手法(deterministic sampling)」および「粒子追跡反復計算手法(particle track repeating)」がある。この高速モンテカルロコードの実行は、GEANT3コードを用いて検定される。線源モデルもまた、モンテカルロ計算中にレーザ陽子線治療装置から射出する陽子のペンシルビームについて、位相−空間パラメータ(エネルギー、電荷、方向、および位置)を復元するように実行される。レーザ加速された多重エネルギー陽イオンで患者を治療するための使用に適用可能な好適なソフトウェアは、入手可能である。このようなソフトウェアは、空気、組織、肺、および骨から構成されるシミュレーションファントムに患者のCTデータをまず変換する。標的体積および重要構造の輪郭に基づいて、該ソフトウェアは、異なるスペクトル、入射角(例えば、計画者により特定されるガントリ角)、および入射位置(例えば、治療照射門/照射野内で)を有する全ビームレットについての線量分布を計算する。全ビームレットに対する最終的な線量アレイが、以下に記述するような治療最適化アルゴリズムに対して得られる。
【0062】
いくつかの実施形態によると、EIMPTに対する改良された治療最適化ツールも提供される。治療最適化アルゴリズムは、典型的なレーザ陽子加速器から発生された典型的な多重エネルギー陽子ビームおよび実際の患者の身体構造に基づいて、構築されてきた。一般に使用される「逆方向治療法」として、コンピュータシミュレーションされた徐冷法(computer simulated annealing)、反復解法(iterative methods)、フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)、および直接フーリエ変換(direct Fourier transformation)が挙げられる。計算時間および陽子ビームの考えられる複雑性を考慮して、(勾配法(gradient search)に基づいた)反復最適化のアプローチが好適に適用される。このことは、光子および電子エネルギー−および強度−変調に関する反復最適化アルゴリズムに基づいている。エネルギー−および強度−変調された陽子ビームに関する改良型のアルゴリズムが検証されている。アルゴリズムは、実際的な陽子ビームの特徴を考慮して、さらに改良される。この「最適化ツール」は、以下のタスクを行う:(1)ビームレットの線量分布を線量計算アルゴリズム(上記参照)により得、(2)ターゲット/重要構造の線量処方に基づいた最良の治療計画を作成するためにビームレットの重み付け(強度)を調節し、(3)ビーム伝送シークエンスを検討するための全ビーム門およびガントリ角について強度マップ(ビームレット重み付け因子)を出力する。
【0063】
本発明の実施形態に従って、患者を治療する方法は、患者におけるターゲット領域の位置を特定する工程と、ターゲット領域に照射するための複数の治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布の決定(例えば、複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームのエネルギー分布、強度、および方向の決定)等のターゲット領域の治療方針の決定する工程と、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを、超電導電磁石を用いてエネルギーレベルに基づき空間的に分離された、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから形成する工程と、該複数の治療に好適な多重エネルギー陽イオンビームを治療方針に従って標的領域に伝送する工程を含む。
【0064】
イオン治療システムに関する発明において、様々な実施形態における上述のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムは、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターの基礎を構築できる。レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターでは、ミラー等の一連のビーム反射器を用いて、ターゲット/イオン選択システムに反射により輸送されるメインレーザビームラインが提供される。当該ターゲット/イオン選択システムは、高エネルギー多重エネルギーイオンを発生するためのターゲットシステムとイオン分離システムを有する。一実施形態において、当該ターゲット/イオン選択システムを出射する陽子ビームは、上述のように発生した治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む。本実施形態において、該ターゲット/イオン選択システムを出射する陽子ビームは、ターゲット/イオン選択システムに入射するレーザビームの方向に平行な方向に向けて出力される。治療センターのイオンビームは、患者および患者の標的がある寝台に向けて出力される。いくつかの実施形態においては、ミラーとターゲット/イオン選択システムは、ガントリを用いて、例えば、z方向がx−y平面に鉛直としてx−z平面内で、メインレーザビームラインの軸周りに回転できる。いくつかの実施形態においては、レーザビームがターゲットに反射される最後端のミラーは、ターゲット/イオン選択システムに固定される。最後端ミラーとターゲット/イオン選択システム間の距離は、y方向に沿ったイオンビームの走査を可能にするように、y方向に調節可能であることを示す。
【0065】
好適なターゲット/イオン選択システムは、小型のもの(例えば、全重量が約100〜200kg未満、寸法が約1メートル未満であり、複数の超電導電磁石を有するもの)である。ターゲットおよびイオン選択システムが小型であると、最高約10cm/sのイオンビームの迅速な走査を提供するための、ロボット制御によりコントロールされたシステムによる位置制御を可能にする。
【0066】
一実施形態においては、治療センターでは陽子イオンビームが使用できるが、他の陽イオンを用いる治療センターも想定している。例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、または炭素、或いはこれらを組み合わせたいずれのものといった、他の軽イオンを使用する治療センターを対象とした実施形態もまた想定している。高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、通常少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する。これらの高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約0.1〜約30テスラの範囲の磁場を与えることのできる超電導磁石を用いて、エネルギーレベルに基づき空間的に分離される。さらなる実施形態において、前記磁場を、約0.2〜約20テスラ、約0.5〜約10テスラ、或いは約0.8〜約5テスラにすることができる。
【0067】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターの別の実施形態においては、該センターは、上述のイオン治療システムの少なくとも1つと、患者を固定するための少なくとも1つの場所、例えば治療寝台等の場所を含む。例えば、この種の好適な治療センターは、複数のミラーを使用してターゲットアセンブリに反射により輸送されるレーザビームを有する。この治療センターは、レーザビームの光学監視制御システムをさらに有することができる。さらなる実施形態では、2つ以上のターゲットアセンブリの各々に対してレーザビームを複数のレーザビームに分割、或いは該ターゲットアセンブリの1つに対して該レーザービームを反射させるための、少なくとも1つのビームスプリッタ或いはミラーを備える。好適な治療センターは、例えば、2つのターゲットアセンブリと、各々が個々の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームから個別に治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生できる2つのイオン選択システムを有するレーザ−ターゲットシステムを有することができる。別の実施形態においては、さらなるターゲットアセンブリおよびイオン選択システムを有することができる。個別の多重エネルギーイオンビーム監視制御システムは、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々に対しても提供されている。一実施形態では、ビームをイオン治療システムに向けて出力するために、メインレーザビーム内外に位置することのできるミラーを有することができる。或いは、分割ビームが2若しくはそれ以上のイオン治療システムに同時に使用できるような十分強力なレーザビームを発生する場合、ビームスプリッタが使用できる。患者にプライバシーを与えるため、2若しくはそれ以上のイオン治療システムを備える典型的なイオン治療センターは、各イオン治療システムにつき個々の治療室を有する。このような実施形態において、前記レーザビーム源は、好ましくは別室或いは別棟に位置している。光学モニタシステムを含む実施形態においては、操作者は、どのイオン治療システムが作動しているのを知ったり制御したりすることができる。
【0068】
本発明の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム放射治療センターの一実施形態は、好適なレーザおよび治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを監視制御するためのシステムも有する。好適なレーザは、通常、陽イオンビーム治療センターと同じ棟の建物に収容されているか、或いはレーザビーム用の管路で連結された近隣の建物に収容される可能性がある。メインレーザビームラインは、通常、レーザビームをターゲット/イオン選択システムに向けて出力するための一連のミラーを使用して、シールドした真空管内で建物を経て輸送される。該ターゲット/イオン選択システムは、通常、治療室に置かれたガントリ上に設置されている。本発明のさらなる実施形態において、メインレーザビームは、ビームスプリッタにより、単一レーザから発生する複数のレーザビームへと分割される。該ビームスプリッタから出射する各レーザビームは、患者を治療するための個々のターゲット/イオン選択システムに向けられる。このような方法において、高エネルギー多重エネルギー陽イオン放射治療センターは、1つのレーザ源と複数の患者を治療するための複数のイオン治療システムを利用して提供される。本発明の高エネルギー多重エネルギー陽イオン放射治療センターのある実施形態によると、各治療室に個々のターゲット/イオン選択システム、患者用の場所、および陽子ビームの監視制御システムを備えた複数の治療室が提供される。このように装備された複数の治療室は、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンを発生させるのに1つの高出力レーザに投資して、さらに膨大な数の患者を治療することを可能にする。
【0069】
実施例および他の説明的な実施形態
レーザ陽子加速器用粒子選択メカニズム
レーザ加速された陽子線治療システムは、高密度材料中にプラズマを発生させ、高運動エネルギーに陽子を加速するため、高強度レーザパルスを使用する。ここで、システム設計の一実施形態を図1に示す。卓上型レーザシステム(図示されていない)により発生させたレーザビームを、真空ビームパイプラインを通して処置部に送信する。ターゲットアセンブリおよび粒子選択装置を回転ガントリー(図示されていない)上に置く。レーザビームを、図示されるように、複数のミラー(a−e)を有するシステムにより導く。ミラー間の距離は、y軸およびz軸に沿って陽子ビームを走査し、平行なスキャンビームを発生するように調節される。或いは、ターゲット/粒子選択装置を、平行なスキャンパターンを実現するようにレーザビーム周辺で動かす。
【0070】
小型の粒子選択/ビームコリメート装置は、図2の一実施形態に概略的に示すように、異なるエネルギーおよび強度を有する微小ビームを伝送するのに使用される。レーザによって発生した粒子は、陽子のみではなく、光子、中性子、および電子といった様々な不要な粒子種を含む可能性がある。ターゲットからの陽子は主に、ビーム軸でもよいが、x軸に沿って前方に加速される。4つの分離領域に分布された階段状磁場(例えば図3参照)は、陽子および電子を偏向するのに使用できる。第1の領域(a)において、磁場は平面或いは-z方向に指向し、陽子は押し上げられる。これらの陽子が第2(b)および第3の領域(c)に入ると、磁場はz−方向に反転し、陽子は押し下げられる。最後の領域(d)の磁場は、陽子を元のビーム軸に戻す。図2に示すように、ビームストッパは、高エネルギー陽子はもとより光子や中性子を遮断するため、ビーム軸上に設置することができる。電子は、磁場により下方に偏向され、装置の下方部に設置された電子ストッパにより吸収される。ストッパに吸収されないその他の不要な粒子は、粒子選択装置の周りのシールディングで吸収できる。
【0071】
陽子の偏向は、陽子エネルギーに依存する。低エネルギーを有する陽子は、高エネルギーのものに比べて、より偏向される。従って、異なるエネルギーを有する粒子がy方向において空間的に分離される。コリメータアパチャーは、y軸上のある位置でシステムのセンター付近に配置され、ここで特定のエネルギーを有する陽子がアパチャーを通過し、その他のエネルギーを有する粒子はコリメータにより停止させる。一実施形態においては、2若しくはそれ以上のコリメータを陽子のビームサイズの調節に使用すし、例えば、一方を磁場の初端に(一次コリメータ)、他方を(二次コリメータ)後端に配置する。非階段状磁場は、本発明の本実施形態の性能をモデル化するに使用できる。
【0072】
矩形ループにより発生する磁場の計算
強力な磁場は、従来の金属ワイヤ、好ましくは超電導ワイヤを円筒上に巻いたものにより発生させることができる。完全な磁場分布の計算は、電磁石に依存し、大変複雑である。解析解を求めるのは、限られたいくつかの特定点を除き大変困難となる可能性がある。超電導電磁石は、電流ループを積み重ねたものとして取り扱うことができる。単一矩形ループに関する磁場分布の解析的計算は、ビオ−サバールの法則を利用することで行うことができる。従って、超電導電磁石に関する完全3次元の磁場分布は、各ループの磁場を足し合わせていくことで得ることができる。
【0073】
電流Iを通電させる単一矩形ループを図4に示し、磁場強度の3成分Bx、By、Bzを解析的に計算した結果を下記の別表に示す。
【0074】
マルチプルループの磁場は、個々のループに対する磁場の重ね合わせである。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、Δzは、2つの隣接するループ間の距離であり、z1は一番目のループ、nは全ループ数を示す。この電磁石コイルは、コイル内の電流密度が一様であると仮定して、マルチプル電流ループとして取り扱うことができる。
【0077】
コンピュータコードは、計算に基づいて矩形ループの磁場をシミュレートするために作成されている。一重ループに関するx軸或いはビーム軸方向での磁場分布を図5に示す。図からわかるように、Bzはx軸において一様に分布していない。2本のピークがループの端に現れている。さらにまた、図5(a)および(b)に示すように、Bzはy或いはz方向で大きく変化している。図5(c)において、磁場のこれら3成分を比較すると、Byが無視できるのに対し、ループの端ではBxがBzよりも優位であり、端の周辺での全磁場を著しく変化させることがわかる。従って、均一な磁場を発生させるのに1つ以上のループが使用できる。
【0078】
同じ大きさおよび電流を有するz軸に平行な別のループを追加することができる。このことは円形ヘルムホルツコイルに似ている。この例における2つのループ間の距離は約4cmである。二重ループに関する磁場分布は、一重ループの分布とあまり変わらない。Bxのピークは幾分減少するが、ピークはそのまま存在する。このことはz−方向にループを追加することで、ピークを減らして磁場分布を平滑にすることができることを示唆している。
【0079】
超電導電磁石の実施形態
上述のように、ピークを減らし磁場分布を平滑化するために、より多くのループをz軸に沿ってに対して垂直に積み重ねていくのに使用できる。複数のループは、電磁石を形成するのに使用できる。すなわち図6に示すように、複数のループを積み重ねるのと同様、長いワイヤを多数積み重ねたループに磁気的に相当するように複数回巻くことで、超電導電磁石を作成できる。このような超電導電磁石を間隔dをもって2つつなぎ合わせると、やや一様な磁場が発生し、陽子がそこを通過する。単一の超電導電磁石の寸法は、レーザ−陽子システム設計および希望するワイヤ材料の選択の両方により決定できる。小型のレーザ−陽子システムは、小型の電磁石システムを有することができる。本発明の一実施形態において、単一の超電導電磁石の寸法の上限は、約20x40x25cm3(LxxLyxLz)に設定される。本明細書英文原文中で数字の前に使用されている数学的記号のチルダ(〜)は「約」を意味し、本明細書中でそのように翻訳されている。密度約103A/cm2の電流を通電できる従来の銅線を使用する場合、約4.4Tの磁場誘導を達成するためには、約106Aの合計電流を得るため該銅線を巻いた電磁石コイルの断面積は約103cm2であるべきである(添付資料参照)。従って、長さ(Lz)約25cmの従来の非超電導電磁石については、厚さ(T)約40cmのものがその断面積を満足し使用できるが、これは、xおよびyの両方向での幅(LxおよびLy)が約80cmを超えることになる。このような電磁石は本発明において使用できるが、さらに小さな電磁石を使用するのが望ましい。
【0080】
超電導ワイヤは超高電流密度を通電させることができるので、銅線の代わりに超電導ワイヤを利用することで、電磁石の大きさはを著しく小さくすることができる。超電導ワイヤを使用することの別の長所は、電力節約である。超電導電磁石の電力消費は、同等の従来の電磁石のわずか約1%〜約10%で済む。超電導ワイヤは市販されており、強力な磁場を発生させるための高エネルギー加速器に広く使用されてきた。好適な超電導ワイヤは、約4.4Tの磁場を発生させるため、4.2Kでの臨界電流密度が約4.25x105A/cm2であるNbTiである。他の市販されている超電導ワイヤでNb3Snも使用できる。高温超電導体から形成されたワイヤ等、その他の種類の超電導ワイヤが使用できる。好適な高温超電導ワイヤは、マサチューセッツ州WestboroughのAmerican Superconductor社(http://www.amsuper.com/index.cfm)から市販されている。NbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤは、幅約10ミクロンのものから直径250ミクロンのものまでジャパンスーパーコンダクタテクノロジ−株式会社(東京)(http://www.jastec.org/eg/index.html)から市販されている。実際の電流は臨界電流未満でよく、さもなければ超電導状態が壊れ、ワイヤは従来の電導状態で機能することになる。一実施形態においては、約4.4Tの磁場を発生するには、約85Aの電流を通電する直径約0.2mmのNbTiワイヤ等の好適な超電導ワイヤを、長さ(Lz)約20cm、厚さ約0.2cmの矩形超電導電磁石を作成するように、10000回巻く。従って、このような超電導電磁石対は、約1cmの間隔(d)を含めて長さが約40cmとなる。超電導電磁石のコイルの断面積は、約20cmx0.2cmであるので、電流密度はわずか約2x105A/cm2で臨界電流密度未満となり、従って超電導を維持するのに使用できる。その結果、電磁石のサイズは、超電導ワイヤを用ることで約200倍に減少できる。好適な超電導ワイヤは、約10ナノメータ(nm)〜約5mmの範囲の厚さを有することができる。一実施形態において、好適な超電導ワイヤは、約0.2cmの厚さを有することができ、x軸における幅が約15cm、y軸における幅が約20cmの寸法を与えるような矩形にコイル状に巻く。このような超電導電磁石は、好適であり、図7に示すような平滑な磁場を発生する。Bzのエッジピークは、実質的に除かれ、BXでは、端で小さなピークのみ見られる。
【0081】
一実施形態においては、4つの電磁石を階段状磁場の分布を実現するのに用いる(図3参照)。これらの電磁石は、第1および第4の電磁石の磁場が−z方向に向き、第2および第3の磁場がz方向に向くように、x軸(ビーム軸)に沿って平行に配置される。第1の電磁石は、陽子を押し上げるローレンツ力を及ぼす磁場を発生し、その後、第2および第3の電磁石は陽子を押しさげる磁場を発生し、最後の電磁石から発生する磁場は、元の方向に陽子を戻す。この超電導電磁石システムは、ビーム軸方向でわずか約80cmのサイズであり、これは光子および電子加速器のサイズに匹敵する。平滑な階段状磁場の分布(図8を参照)は、I=85AでB=Bz=約4.4Tを発生し、BxおよびByは、小さく無視できる。本実施形態において、
【0082】
【数2】
【0083】
以下の説明では、説明的な一実施形態としての陽子の動力学を対象としている。陽子はもとより他の陽イオンを対象としたさらなる実施形態もまた記述されている。リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、またはその他の軽イオン、或いはこれらを組み合わせたものもを対象とした別の実施形態も記述されている。
【0084】
陽子輸送および電磁石システムの最適化
本発明の超電導電磁石システムの一実施形態は、当該システムにより発生された磁場における陽子輸送を検討することで検証できる。磁場は、異なるエネルギーを有する陽子をそれらの軌跡において分離でき、ビーム軸に沿って最初移動していた所望の陽子全てをビーム軸に戻す。この陽子の動力学は、運動方程式により記述できる。
【0085】
【数3】
【0086】
ここで、pは陽子のモーメント、qは陽子の電荷であり、vは陽子の速度を示す。シンプレクティックアルゴリズムに基づき、シミュレーションコードを陽子軌跡に対する数値解法を与えるように作成した。磁場分布に作用し、陽子ビームに影響を及ぼす多くの因子について検討した。これらのパラメータは、電磁石システムを最適化するために微調節される。
【0087】
ビームコリメーション
本実施形態において、PIC法によるシミュレーションは、所定のレーザ−プラズマパラメータに対して、陽子は臨床応用に必要な幅よりも幅の広いエネルギースペクトルを有することができることを示した。不要な陽子を遮断或いは低減し、所望の粒子ビームをコリメートするため、複数のコリメータが導入できる。陽子ビームの視準において、ビームサイズおよびそのエネルギー広がりが考慮できる。ビームサイズは治療計画により選択でき、先頭部は一次コリメータによって、最後部は二次コリメータによって決定できる。例えば、強度変調された陽子線治療に対しては、SSDが100cmで1x1cm2の照射野のペンシルビームが使用できる。一次コリメータ開口は、発生するビームのエネルギー広がりを直接コントロールするので、通常任意の大きさではない。一次コリメータのアパチャーは、約2tan−1(0.025/5.0)の角度をなす粒子を通過させ、これにより約100cmのSSDで約1(1cm2のビームサイズとなるように、本発明の様々な実施形態において選択できる。
【0088】
一実施形態において、臨床的に有用なビームを得るために分布させた陽子のエネルギースペクトルを形成するのに中間コリメータを使用される。図9に示す結果は、0.40cmのアパチャーの開口が、角度分布の原因にはならない30MeV未満のエネルギーの広がりで、250MeVの粒子のほぼ全てを集束させるのに用いることができることを示している。陽子が、固体構造物とのレーザ相互作用に由来する固有の角度の広がりを有することを考慮すると、より発散した陽子ビームおよびより各ビームについて広がったエネルギー広がりが、上記と同様の視準パラメータに対し、生じることができる。従って、アパチャーサイズは、ビームのエネルギー広がりをコントロールするために若干小さくすることができる。約0.3cmのアパチャーが、以下の実施形態では使用された。二次コリメータもまた、好適なビームサイズを実現し、残りの不要な粒子を除去するため、本実施形態において導入されている。
【0089】
場の強度
本実施形態において、陽子ビームの中心軸ymからの最大偏差は、磁場強度Bと共に増加することができる。この偏差により、選択システムの大きさを決定することができる。最大偏差ymの点で隣接する特性エネルギーを有する2つの陽子ビームの空間的分離は、図9に示すように、偏差自身と関係づけることができる。ymが低いと空間的分離が小さくなり、このため陽子ビームにおいて、生じるエネルギーの広がりが大きくなる。適度に小さなエネルギー広がりを維持することは、小さな値のymを利用することで達成できる。磁場の絶対値は、通常小さすぎることはない。図10は、磁場強度の効果を示している。0.8Tの微小磁場について,y軸での電磁石の幅は2.5cm未満に小さくできるが、160MeVを超える特性エネルギーを有する陽子のエネルギー広がりは、図14(b)に示すように、許容できない程度に大きくなる可能性がある。これらの結果は、磁場の強度を約B=4.4T、y方向での電磁石の幅を約Ly=20cmとすることで、最終的な陽子ビームが許容可能なエネルギー広がりを有する好適な小型の選択システムが提供されることを示している。
【0090】
電磁石対間の間隔
いくつかの実施形態においては、磁場を横切る陽子は、二次コリメータが配置されるビーム軸上に再集束できる。しかし、磁場は常に階段状に分布しているわけではないので、二次コリメータでの陽子のy位置ysは、0からずれることがある。いくつかの実施形態においては、ysは、2つの対になった超電導電磁石間の間隔に関連する場の強度および場の形状に影響を受ける可能性がある。通常、ys,は、様々なエネルギーにより異なる。従って、二次コリメータは、異なるエネルギーを有する陽子ビームを集束させるため、y軸に沿って移動することができる。しかし、二次コリメータの位置は、コリメータを動かすことにより生じる不確かさを防ぐために、通常、全エネルギーについて固定される。これを実現するためには、該間隔は、異なるエネルギーを有する必要な陽子を0近傍の同じ点ysに集束させるように、磁場を形成するように調節することができる。図11は、d=0.5、1、2、4cmに対する陽子の軌跡を示す。d=1.0cmに対する異なるエネルギーに対するysの差は、最小値となっていて0に最も近くなっており、このため1.0cmの間隔が本発明のある実施形態においては使用される。
【0091】
中間電磁石の幅
いくつかの実施形態において、複数の陽子の軌跡は、中間電磁石のx方向(すなわち、ビーム方向)における幅Lxに対して、高い感度を有していてもよい。別の変形例においては、全ての4つの電磁石の幅が階段状磁場の分布に一致するように、15cmに設定された。この構成では、図12(a)に示すように、陽子は通常x軸には戻らず、異なるエネルギーに対して、x=80cmで発散する。また別の変形例において17cmに設定した場合においても、陽子はx軸に戻らなくなる。作用に関する具体的な理論に結び付けることなく、図8に示すように、第2および第3の電磁石に対する場の強度が、第1および第4の電磁石のそれらよりも低いので、陽子はx軸に戻らないと考えられている。これらの例は、Lx=16.3cmで本実施形態における最良の結果をもたらすことを示す(図11(b)参照)。
【0092】
これらの結果は、レーザ加速された陽子ビーム治療用の多重エネルギー陽イオンビーム選択装置のための好適な電磁石システムの設計パラメータの重要性を示している。電磁石システムのパラメータは本発明の様々な観点に示されるように、システム設計および陽子輸送のシミュレーションで容易に決定できる。
【0093】
図13は電磁石によって生じた場および理想的な階段状場での陽子軌跡の比較である。前者の場合における軌跡は、y方向に上向きにシフトしている。このことは、全四領域に対する場の強度が後者の場合同じであるのに対し、場の分布の非対称性のバランスをとるために、第1および第4領域の磁場の強度から起こると思われる場の強度が、中間部におけるそれよりも大きくなっていることによると考えられる。
【0094】
エネルギースペクトルおよび線量分布
作用に関するどのような特定の理論に結び付けることなく、陽子ビームのエネルギー広がりは、レーザ加速された陽子の広いエネルギーおよび角度分布によるものであると考えられている。結果として生じる多重エネルギー陽子ビームは、腫瘍に照射するための臨床用途に有用である。理想的な階段状磁場を用いた場合の予備結果は、各々の多重エネルギーレーザ加速された陽子ビームでは、鋭い深度−線量の激減が少ないが、さらにターゲットを十分な原体性でカバーするターゲットの拡大ブラッグピーク(SOBP)を発生させるために結合または変調できることを示した。エネルギースペクトルおよびそれに対応する線量分布は、本発明の超電導電磁石システムにより発生した磁場の存在下で再計算できる。
【0095】
特性エネルギーEを中心としたエネルギー広がりEを計算するために、陽子が粒子選択アパチャーの置かれている位置xmに到達したときに、エネルギーEを有する陽子のy位置ym(E)を決定する。その後、アパチャーの中心を幅3mmでym(E)に移動し、そのアパチャーを通過する陽子の数をカウントする。これにより、Eの周りでピークとなっているエネルギー広がりを有する陽子ビームが得られる。3つのビームに対するエネルギースペクトルを図14に示す。より低いエネルギー陽子ビームほど、それらの分布においてより小さなエネルギー広がりを有するのに対し、高エネルギービームは、より大きなエネルギー広がりを有する。作用に関する特定の理論と結び付けることなく、このことは、高エネルギー陽子ほど磁場による偏向が少なく、このため低エネルギー陽子よりも発散が少ないという事実に明らかに起因する。図14(b)は、エネルギーの広がりが場の強度の減少と共に増加することを示している。B=0.8Tの場合、エネルギーの広がりは、160MeVを超える特性エネルギーに対して100MeVを超えている。このエネルギーの広がりは、本発明のある実施形態にとって最適に望ましいわけではない。
【0096】
多重エネルギー陽子ビームの線量分布は、GEANT3モンテカルロコードを利用して計算できる。エネルギーの広がりはブラッグピークを広げる傾向にあるので、より広いエネルギー分布は、図15に示すように、通常より平坦なブラッグピークを与える。
【0097】
図14および15は、エネルギースペクトルおよび関連した深部線量分布を理想の階段状磁場分布を用いて計算したものと電磁石形成磁場系についてのものとで比較した図である。電磁石により発生した磁場に対する陽子エネルギースペクトルは、より低いエネルギー領域へ幾分シフトしており、このことは図13に示す結果と一致していると考えられる。
【0098】
本発明の一実施形態によると、陽子ビーム選択に有用な階段状磁場分布を生じることのできる小型の超電導電磁石システムが提供される。超電導電磁石システムの1つの設計は、三次元的磁場分布を与えて、コイルの端でのフリンジング磁場パターンの影響による端に集束する等の境界効果を説明するような、矩形コイルの磁場の解析的計算から得ることができる。陽子軌跡のシミュレーションは、電磁石システムの検証および特定の基準に対する設計を最適化するのに用いられる。
【0099】
これらの結果は、臨床上許容可能な質の陽子ビームは、以下のパラメータを用いて好適な磁場選択システムの実施形態により発生できることを示している。すなわち、単一電磁石の寸法は、約Lx=15cm(外側)、16cm(内側)、Ly=30cm、およびLz=20cmとできる。約4〜5Tの平均磁場誘導は、NbTiワイヤ等の巻き数約10000の好適な超電導ワイヤで約I=85Aのループ電流により与えられる。電流は、超電導ワイヤの加工や電力供給の使用により、60A〜600の範囲で異なることができる。対の電磁石間の間隔は、約1cmと設定できる。3つのコリメータのアパチャーの大きさは、一次コリメータについて約0.05cm、選択アパチャーについて0.3cm、二次コリメータについて0.8cmに設定できる。
【0100】
本実施形態の電磁石システムを用いて、異なる選択された特性エネルギーに対して、エネルギースペクトルが得られる。理想の階段状磁場の分布で得られるエネルギースペクトルと比較して、低エネルギー領域への小さなシフトがあるが、両者はほぼ同じ広がりを有する。このことは、これらのエネルギースペクトルで得られる線量分布パターンに一致している。
【0101】
本発明の超電導電磁石システムは、我々の関連発明である、2004年6月2日出願の「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」と題する国際特許出願第PCT/US2004/017081号の粒子選択メカニズムに有用であり、ここで本文献の全内容を参照により援用する。従って、本明細書中に記載の超電導電磁石システムは、臨床用途に使用できる陽子ビームを発生させるのに使用できる。これらのシステムは実際の患者の形態に基づいた線量分布のモンテカルロ計算を用いてモデル化できる。
添付資料
ビオ−サバールの法則を図4に示す矩形電流ループを適用する。
【0102】
【数4】
【0103】
ここでBは磁気誘導であり、μ0は自由空間での透磁率で4πx10−7NA−2に等しい。Iは、ループにより通電される電流であり、riは、該矩形電流ループのi番目の辺の電流要素と点(x,y,z)間の距離であり、以下のように表される:
【0104】
【数5】
【0105】
ループのまわりに式(I)を積分して磁場の三成分が得られる。
【0106】
【数6】
【0107】
【数7】
【0108】
および
【数8】
【0109】
ループの中心である特定点(0,0,−c/2)に対して、磁場のz−成分は、公知の式に要約される(N.Ida and J.Baotos,Electromagnetics and Calculation of Fields,Spring−Verlag,1992)。
【0110】
【数9】
【0111】
式(V)は、所定の磁場強度に対して必要な電流を概算するのに使用できる。Bz=4.4T、a=0.15m、およびb=0.3mに対して、必要な電流は、以下のようになる。
【0112】
【数10】
【0113】
従って、ループ表面に近い約4.4Tの磁場を発生させるには、電流Iは、約106Aでなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、レーザ−陽子線治療ユニットの概略図である。
【図2】図2は、本発明の陽子選択システムの一実施形態の概略説明図である。陽子は、一次コリメータの直前で発生し、超電導電磁石システムにより生成した磁場内を移動する。所望の陽子は、まずx軸に向けて移動し、磁場内で偏向し、磁場を横断した後x軸に戻る。不要な粒子は、ストッパおよびコリメータで停止させられるか、周囲のシールドにより吸収される。
【図3】図3は、粒子選択に使用される理想的な階段状磁場を示す。
【図4】図4はz=−c/2の位置にある矩形ループを示す。x軸方向の長さをaとし、y軸に方向の長さをbとする。
【図5】図5は、大きさがa=15cm(x軸)とb=30cm(y軸)で定められる、図4の一重ループに対する磁場の分布図である。(a)は、異なるy軸上の位置に対するz=0.1cmでのBz;(b)は、z軸上の異なる位置に対するy=0cmでのBzであり;(c)はy=1cm、z=1cmでのBx、By、Bzの比較図である。
【図6】図6は、マルチコイル型超電導電磁石の概略図である。巻数2x10000のNbTiワイヤは、電流I=85Aを通電し、4.2K、Lx=15cm、Ly=30cm、Lz=20cm、およびT=0.2cmで、B=4.4Tの磁場を発生する。
【図7】図7は、Lx=15cm、Ly=30cm、およびLz=20cmの一対の超電導電磁石に対する場の分布を示す。z軸方向での電磁石間の間隔は1cmである。:(a)z=0.2cmでの異なるyの値に対するBz。(b)y=7.5cmでの異なるzの値に対するBz。(c)は、y=7.5cm、z=0.2cmでのBx、By、Bzの比較図。
【図8】図8は、四つの電磁石を有するシステムから得られる磁場の分布を示す。:(a)y=7.5cmでの異なるz値に対するBz。磁場はz方向においてあまり変化していない。(b)z=0.2cmにおける異なるy値に対するBz。この電磁石領域内でyが15cm未満では、磁場はy方向においてあまり変化していない。(c)y=7.5cm、z=0.2cmでのBx、By、Bzの比較図。
【図9】図9は、異なる運動エネルギーに対する陽子軌跡を示す。粒子選択システムの中央部において、190MeVの陽子と160MeVの陽子間の距離が約0.8cmに対し、250MeVの陽子と220MeVの陽子間の距離は、約0.46cmである。
【図10】図10は、B=0.8Tに対する陽子の軌跡を示す。
【図11】図11は、中間電磁石の幅がLx=16.3cmのときの異なる間隔dに対する陽子の軌跡を示す。:(a)d=0.5cm;(b)d=1.0cm(c)d=2.0cm(d)d=4.0cm。
【図12】図12は、中間電磁石の異なる幅に対する陽子の軌跡を示す。:(a)Lx=15cm(b)Lx=17cm。
【図13】図13は、理想磁場(破線で図示)と電磁石により発生させた磁場(実線で図示)の陽子軌跡の比較図である。図中、低エネルギー陽子軌跡が一番上に(高いy値)、高エネルギー陽子軌跡が一番下(低いy値)にきている。
【図14】図14は、選択したエネルギーに対するエネルギースペクトルを示す。:(a)電磁石による発生磁場および階段状磁場に対するスペクトル。B=4.4T。(b)電磁石による発生磁場のみに対するスペクトル。B=0.8T。 図15は、異なるエネルギーで選択された陽子に対する線量分布を描く。実線は、電磁石による発生磁場を示し、破線は理想の階段状磁場を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン選択システムであって、
複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオン(high energy polyenergetic positive ions)を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、それらのエネルギーレベルに従って空間的に分離する第1の磁場源と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合(recombine)する第2の磁場源と
を有し、
前記第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラ(Tesla)の磁場を提供する超電導電磁石である
イオン選択システム。
【請求項2】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項3】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項4】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項5】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項6】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはいずれかの組み合わせを含む軽イオンを包含するものである。
【請求項7】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記第1の磁場源は、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記レーザ加速された多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げることができるものである。
【請求項8】
請求項7記載のイオン選択システムにおいて、このイオン選択システムは、さらに、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向かって曲げることができる第3の磁場源を有するものである。
【請求項9】
請求項8記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは前記第3の磁場源の外に配置されるものである。
【請求項10】
請求項8記載のイオン選択システムにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記第2の磁場源に向かって曲げることができるものである。
【請求項11】
請求項10記載のイオン選択システムにおいて、前記第2の磁場源は、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向かって前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を曲げることができるものである。
【請求項12】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、このイオン選択システムは、さらに、
前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に通過(fluidically communicate)させることのできる二次コリメート装置をさらに有するものである。
【請求項13】
請求項12記載のイオン選択システムにおいて、前記二次コリメート装置は、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節(modulate)できるものである。
【請求項14】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは、各々が前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを流体的に通過させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項15】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは多葉コリメータである。
【請求項16】
高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法であって、
エネルギーレベルの分布を有することで特徴付けられる複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを形成する工程と、
コリメート装置を用いて、前記レーザ加速されたイオンビームをコリメートする工程と、
前記高エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第1の超電導電磁石により与えられる第1の磁場により、空間的に分離する工程と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーを用いて変調する工程と、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第2の超電導電磁石により与えられる第2の磁場により再結合(recombine)する工程と
を有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法。
【請求項17】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその双方は約0.2〜約20テスラである。
【請求項18】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその両者は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項19】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその両者は、約0.8〜約5テスラである。
【請求項20】
請求項16記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調する工程は、前記陽イオンの一部をアパチャーを通して送り、前記陽イオンの一部は約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項21】
請求項16記載の方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第1の磁場を用いて、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げられるものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第3の磁場を用いてアパチャーに向かってさらに曲げられるものである。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー陽イオンは、前記アパチャー内の複数の制御可能な開口を用いて、エネルギーレベルにより変調されるものである。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、前記第3の磁場は、前記第2の磁場に向かって前記軌跡をさらに曲げるものである。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記第2の磁場は、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行方向に前記軌跡を曲げるものである。
【請求項26】
請求項16記載の方法において、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部は、二次コリメート装置を通して流体的に連通するものである。
【請求項27】
請求項16記載の方法において、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームレットは、前記アパチャー内の複数の制御可能な開口を通して流体的に連通して、前記空間的に分離された高エネルギー陽イオンを変調するものである。
【請求項28】
請求項16記載の方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンのエネルギー分布に従って、前記第1の磁場に入射する前記レーザ加速されたイオンビームのビーム軸にに対して垂直に測った距離で最長約50cmにわたって空間的に分離されるものである。
【請求項29】
請求項16記載の方法において、この方法は、さらに、
再結合され空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンで放射性同位元素前駆体(radioisotope precursor)を照射する工程を含むものである。
【請求項30】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムであって、
レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有し、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生するターゲットシステムとを有するレーザ−ターゲットシステムと、
治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から形成するイオン選択システムであって、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる2つ以上の超電導電磁石を有するものである、前記イオン選択システムと、
イオンビームの監視および制御システムと
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システム。
【請求項31】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項32】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項33】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は、約0.8〜約5テスラである。
【請求項34】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはこれらの任意の組み合わせを含む軽イオンを包含するものである。
【請求項35】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記イオン選択システムは、
前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンをエネルギーレベルに従って空間的に分離することができ、前記超電導電磁石の1つを含む第1の磁場源と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合する第2の磁場源であって、前記第1の磁場源を使用したものとは異なる前記超電導磁石のうちの1つを含むものである、前記第2の磁場源と
を有するものである。
【請求項36】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項37】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第1の磁場源は、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの磁場から離れる方向に曲げることのできる第1の磁場を提供するものである。
【請求項38】
請求項37記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記イオン選択システムは、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向かって曲げることのできる第3の磁場源をさらに有するものである。
【請求項39】
請求項38記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記アパチャーは前記第3の磁場源の磁場の外に配置されるものである。
【請求項40】
請求項38記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部の軌跡を第2の磁場源に向かって曲げることができるものである。
【請求項41】
請求項40のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第2の磁場源は、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部の軌跡を前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸に平行な方向に向かって曲げることができるものである。
【請求項42】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、このシステムは、さらに、
前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部が流体的に連通できる二次コリメート装置を有するものである。
【請求項43】
請求項42記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記二次コリメート装置は、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節できるものである。
【請求項44】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記アパチャーは、各々がイオンビームレットを通過させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項45】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法であって、
患者における標的領域の位置を特定する工程と、
標的とする領域の治療計画を決定する工程であって、標的とする領域に照射するための複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含むものである、前記標的とする領域の治療計画を決定する工程と、
各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる1若しくはそれ以上の超電導電磁石を用いて、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから前記複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する工程と、
治療計画に従って、標的とする領域に複数の治療上好適な多重エネルギー陽イオンビームを伝送する工程と
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法。
【請求項46】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項47】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項48】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項49】
請求項45記載の患者を治療する方法において、前記線量分布を決定する工程は、複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームのエネルギー分布、強度、および方向を決定することを含むものである。
【請求項50】
請求項45記載の患者を治療する方法において、前記治療上好適な多重エネルギー陽イオンビームは、
高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを形成する工程と、
少なくとも1つのコリメート装置を用いてレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートする工程と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、それらのエネルギーレベルに従って前記超電導電磁石のうちの1つにより与えられる第1の磁場により空間的に分離する工程と、
空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーを用いて変調する工程と、
変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、前記第1の磁場を与えるのに使用したものとは異なる超電導電磁石により与えられる第2の磁場を用いて再結合する工程と
により作成されるものである。
【請求項51】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項52】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはそれらの任意の組み合わせの軽イオンを包含するものである。
【請求項53】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第1の磁場を用いて、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げられるものである。
【請求項54】
請求項53記載の患者を治療する方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、第3の磁場を用いて前記アパチャーに向かって曲げられる。
【請求項55】
請求項54記載の患者を治療する方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、前記アパチャーの複数の制御可能な開口を用いてエネルギーレベルにより変調されるものである。
【請求項56】
請求項55の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第3の磁場を用いて第2の磁場に向かってさらに曲げられるものである。
【請求項57】
請求項56記載の患者を治療する方法において前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第2の磁場を用いて、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸の方向に平行な方向に向かって曲げられるものである。
【請求項58】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記再結合された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部は、二次コリメート装置を流体的に通過するものである。
【請求項59】
請求項58記載の患者を治療する方法において、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状は、二次コリメート装置により調節されるものである。
【請求項60】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターであって、
患者を固定する場所と、
治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記場所に固定された患者に伝送する、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムであって、
レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生できるターゲットアセンブリとを有するレーザ−ターゲットシステムと、
各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる複数の超電導電磁石を用いた、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを用いて、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生できるイオン選択システムと、
治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの監視および制御システムと
を有するものである、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムと
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センター。
【請求項61】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項62】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項63】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項64】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、
前記高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離することができ、前記超電導電磁石の1つにより与えられる第1の磁場源と、
空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームに再結合することができ、前記第1の磁場源を与える超電導電磁石とは異なる超電導磁石により与えられる第2の磁場源を有するものである。
【請求項65】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項66】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはこれらの任意の組み合わせの軽イオンを包含するものである。
【請求項67】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第1の磁場源は、第1の磁場に入射する前記レーザ加速された多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を曲げることができるものである。
【請求項68】
請求項67記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向けて曲げることができる第3の磁場源をさらに有するものである。
【請求項69】
請求項68記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記アパチャーは、第3の磁場源の磁場の外に設置されるものである。
【請求項70】
請求項68記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記第2の磁場源に向けて曲げることができるものである。
【請求項71】
請求項70記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第2の磁場源は、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸に平行な方向に向けて曲げることができるものである。
【請求項72】
請求項67記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターは、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に連通させることのできる二次コリメート装置をさらに有するものである。
【請求項73】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記アパチャーは、イオンビームレットを流体的に連通させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項74】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記ターゲットアセンブリおよび前記イオン選択システムは、回転ガントリ上に設置されるものである。
【請求項75】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記レーザのレーザビームは、複数のミラーを用いて反射により輸送されるものである。
【請求項76】
請求項75記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、前記治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの走査を可能にするようにロボット制御により搭載されるものである。
【請求項77】
請求項75記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、この治療センターは、さらに、
少なくとも2つのターゲットアセンブリの各々に対して、レーザビームを分割するための少なくとも1つのビームスプリッタをさらに有するものである。
【請求項78】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、
前記レーザ−ターゲットシステムは、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを各々が発生できる複数のターゲットアセンブリと、
前記個々の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々から治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを個々に発生する複数のイオン選択システムと、
前記治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々に対する別個の多重エネルギーイオンビーム監視制御システムを有するものである。
【請求項79】
多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムであって、
流体的に連通した(in fluidic communication)2若しくはそれ以上の一連の超電導コイルであって、この超電導コイルの各々は、約0.1〜約30テスラの磁場を別個に与えることができ、少なくとも2つの前記磁場は互いに反対方向にあるものである、前記前記流体的に連通した2若しくはそれ以上の一連の超電導コイルを
有する多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システム。
【請求項80】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項81】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項82】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項83】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、約5cm〜約100cmの範囲の寸法を有するものである。
【請求項84】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記電磁石の各々の最大磁場は、約5テスラ未満である。
【請求項85】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、巻き数が約1,000〜約100,000の1若しくはそれ以上の超電導ワイヤを含むものである。
【請求項86】
請求項85記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、巻き数が約5,000〜約20,000の超電導ワイヤを含むものである。
【請求項87】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上のNbTi超電導ワイヤを含むものである。
【請求項88】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上のNb3Sn超電導ワイヤを含むものである。
【請求項89】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上の高温超電導ワイヤを含むものである。
【請求項90】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、約60A〜約600Aの範囲の電流を通電できるものである。
【請求項91】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、
各々が同方向に磁場を与えることのできる2つの外部電磁石と、
各々が同方向で、外部電磁石の磁場の方向には逆方向の磁場を与える2つの内部磁石と
を有する小型の超電導電磁石システム。
【請求項92】
請求項91記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記2つの内部電磁石の磁場は、ほぼ同じ強度を有するものである。
【請求項93】
請求項92記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記2つの内部電磁石は、約0.2cm〜約5cmの範囲で離間しているものである。
【請求項94】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムは、この小型の超伝導電磁石は、さらに、
約0.02cm〜約2cmの範囲のアパチャーサイズを各々が有する一連のコリメータを有するものである。
【請求項95】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、矩形を有するものである。
【請求項1】
イオン選択システムであって、
複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオン(high energy polyenergetic positive ions)を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、それらのエネルギーレベルに従って空間的に分離する第1の磁場源と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合(recombine)する第2の磁場源と
を有し、
前記第1および第2の磁場源は、約0.1〜約30テスラ(Tesla)の磁場を提供する超電導電磁石である
イオン選択システム。
【請求項2】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項3】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項4】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項5】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項6】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはいずれかの組み合わせを含む軽イオンを包含するものである。
【請求項7】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記第1の磁場源は、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記レーザ加速された多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げることができるものである。
【請求項8】
請求項7記載のイオン選択システムにおいて、このイオン選択システムは、さらに、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向かって曲げることができる第3の磁場源を有するものである。
【請求項9】
請求項8記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは前記第3の磁場源の外に配置されるものである。
【請求項10】
請求項8記載のイオン選択システムにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記第2の磁場源に向かって曲げることができるものである。
【請求項11】
請求項10記載のイオン選択システムにおいて、前記第2の磁場源は、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行な方向に向かって前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を曲げることができるものである。
【請求項12】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、このイオン選択システムは、さらに、
前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に通過(fluidically communicate)させることのできる二次コリメート装置をさらに有するものである。
【請求項13】
請求項12記載のイオン選択システムにおいて、前記二次コリメート装置は、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節(modulate)できるものである。
【請求項14】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは、各々が前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを流体的に通過させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項15】
請求項1記載のイオン選択システムにおいて、前記アパチャーは多葉コリメータである。
【請求項16】
高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法であって、
エネルギーレベルの分布を有することで特徴付けられる複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンを有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを形成する工程と、
コリメート装置を用いて、前記レーザ加速されたイオンビームをコリメートする工程と、
前記高エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第1の超電導電磁石により与えられる第1の磁場により、空間的に分離する工程と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーを用いて変調する工程と、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、約0.1〜約30テスラの磁場を有する第2の超電導電磁石により与えられる第2の磁場により再結合(recombine)する工程と
を有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法。
【請求項17】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその双方は約0.2〜約20テスラである。
【請求項18】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその両者は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項19】
請求項16記載の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する方法において、前記第1の磁場または前記第2の磁場、或いはその両者は、約0.8〜約5テスラである。
【請求項20】
請求項16記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調する工程は、前記陽イオンの一部をアパチャーを通して送り、前記陽イオンの一部は約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項21】
請求項16記載の方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第1の磁場を用いて、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げられるものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第3の磁場を用いてアパチャーに向かってさらに曲げられるものである。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記空間的に分離された高エネルギー陽イオンは、前記アパチャー内の複数の制御可能な開口を用いて、エネルギーレベルにより変調されるものである。
【請求項24】
請求項22記載の方法において、前記第3の磁場は、前記第2の磁場に向かって前記軌跡をさらに曲げるものである。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記第2の磁場は、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの方向に平行方向に前記軌跡を曲げるものである。
【請求項26】
請求項16記載の方法において、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部は、二次コリメート装置を通して流体的に連通するものである。
【請求項27】
請求項16記載の方法において、複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームレットは、前記アパチャー内の複数の制御可能な開口を通して流体的に連通して、前記空間的に分離された高エネルギー陽イオンを変調するものである。
【請求項28】
請求項16記載の方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンのエネルギー分布に従って、前記第1の磁場に入射する前記レーザ加速されたイオンビームのビーム軸にに対して垂直に測った距離で最長約50cmにわたって空間的に分離されるものである。
【請求項29】
請求項16記載の方法において、この方法は、さらに、
再結合され空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンで放射性同位元素前駆体(radioisotope precursor)を照射する工程を含むものである。
【請求項30】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムであって、
レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有し、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生するターゲットシステムとを有するレーザ−ターゲットシステムと、
治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部から形成するイオン選択システムであって、各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる2つ以上の超電導電磁石を有するものである、前記イオン選択システムと、
イオンビームの監視および制御システムと
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システム。
【請求項31】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項32】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は、約0.5〜約10テスラである。
【請求項33】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記磁場は、約0.8〜約5テスラである。
【請求項34】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはこれらの任意の組み合わせを含む軽イオンを包含するものである。
【請求項35】
請求項30記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記イオン選択システムは、
前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンをエネルギーレベルに従って空間的に分離することができ、前記超電導電磁石の1つを含む第1の磁場源と、
前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを再結合する第2の磁場源であって、前記第1の磁場源を使用したものとは異なる前記超電導磁石のうちの1つを含むものである、前記第2の磁場源と
を有するものである。
【請求項36】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項37】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第1の磁場源は、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームの磁場から離れる方向に曲げることのできる第1の磁場を提供するものである。
【請求項38】
請求項37記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記イオン選択システムは、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向かって曲げることのできる第3の磁場源をさらに有するものである。
【請求項39】
請求項38記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記アパチャーは前記第3の磁場源の磁場の外に配置されるものである。
【請求項40】
請求項38記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部の軌跡を第2の磁場源に向かって曲げることができるものである。
【請求項41】
請求項40のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記第2の磁場源は、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部の軌跡を前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸に平行な方向に向かって曲げることができるものである。
【請求項42】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、このシステムは、さらに、
前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部が流体的に連通できる二次コリメート装置を有するものである。
【請求項43】
請求項42記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記二次コリメート装置は、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状を調節できるものである。
【請求項44】
請求項35記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムにおいて、前記アパチャーは、各々がイオンビームレットを通過させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項45】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法であって、
患者における標的領域の位置を特定する工程と、
標的とする領域の治療計画を決定する工程であって、標的とする領域に照射するための複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの線量分布を決定することを含むものである、前記標的とする領域の治療計画を決定する工程と、
各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる1若しくはそれ以上の超電導電磁石を用いて、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された複数の高エネルギー多重エネルギー陽イオンから前記複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを形成する工程と、
治療計画に従って、標的とする領域に複数の治療上好適な多重エネルギー陽イオンビームを伝送する工程と
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法。
【請求項46】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項47】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項48】
請求項45記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムで患者を治療する方法において、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項49】
請求項45記載の患者を治療する方法において、前記線量分布を決定する工程は、複数の治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームのエネルギー分布、強度、および方向を決定することを含むものである。
【請求項50】
請求項45記載の患者を治療する方法において、前記治療上好適な多重エネルギー陽イオンビームは、
高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含むレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームを形成する工程と、
少なくとも1つのコリメート装置を用いてレーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートする工程と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、それらのエネルギーレベルに従って前記超電導電磁石のうちの1つにより与えられる第1の磁場により空間的に分離する工程と、
空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンをアパチャーを用いて変調する工程と、
変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを、前記第1の磁場を与えるのに使用したものとは異なる超電導電磁石により与えられる第2の磁場を用いて再結合する工程と
により作成されるものである。
【請求項51】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項52】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはそれらの任意の組み合わせの軽イオンを包含するものである。
【請求項53】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第1の磁場を用いて、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように曲げられるものである。
【請求項54】
請求項53記載の患者を治療する方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、第3の磁場を用いて前記アパチャーに向かって曲げられる。
【請求項55】
請求項54記載の患者を治療する方法において、前記空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、前記アパチャーの複数の制御可能な開口を用いてエネルギーレベルにより変調されるものである。
【請求項56】
請求項55の患者を治療する方法において、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第3の磁場を用いて第2の磁場に向かってさらに曲げられるものである。
【請求項57】
請求項56記載の患者を治療する方法において前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡は、前記第2の磁場を用いて、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸の方向に平行な方向に向かって曲げられるものである。
【請求項58】
請求項50記載の患者を治療する方法において、前記再結合された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部は、二次コリメート装置を流体的に通過するものである。
【請求項59】
請求項58記載の患者を治療する方法において、前記再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンのビーム形状は、二次コリメート装置により調節されるものである。
【請求項60】
レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターであって、
患者を固定する場所と、
治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを前記場所に固定された患者に伝送する、レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムであって、
レーザと、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギーイオンビームを発生できるターゲットアセンブリとを有するレーザ−ターゲットシステムと、
各々が約0.1〜約30テスラの磁場を与えることのできる複数の超電導電磁石を用いた、エネルギーレベルに基づいて空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを用いて、治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを発生できるイオン選択システムと、
治療に好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの監視および制御システムと
を有するものである、前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオン治療システムと
を有するレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センター。
【請求項61】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項62】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項63】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項64】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、
前記高エネルギー多重エネルギーイオンビームをコリメートするコリメート装置と、
前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンをそれらのエネルギーレベルに従って空間的に分離することができ、前記超電導電磁石の1つにより与えられる第1の磁場源と、
空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを変調するアパチャーと、
変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンを治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームに再結合することができ、前記第1の磁場源を与える超電導電磁石とは異なる超電導磁石により与えられる第2の磁場源を有するものである。
【請求項65】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーレベルを有するものである。
【請求項66】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記高エネルギー多重エネルギー陽イオンは、陽子、リチウム、ホウ素、ベリリウム、または炭素、或いはこれらの任意の組み合わせの軽イオンを包含するものである。
【請求項67】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第1の磁場源は、第1の磁場に入射する前記レーザ加速された多重エネルギーイオンビームのビーム軸から離れるように高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を曲げることができるものである。
【請求項68】
請求項67記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、空間的に分離された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡をアパチャーに向けて曲げることができる第3の磁場源をさらに有するものである。
【請求項69】
請求項68記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記アパチャーは、第3の磁場源の磁場の外に設置されるものである。
【請求項70】
請求項68記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第3の磁場源の磁場は、変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記第2の磁場源に向けて曲げることができるものである。
【請求項71】
請求項70記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記第2の磁場源は、前記変調された高エネルギー多重エネルギー陽イオンの軌跡を前記レーザ加速された高エネルギー多重エネルギーイオンビームのビーム軸に平行な方向に向けて曲げることができるものである。
【請求項72】
請求項67記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターは、再結合した高エネルギー多重エネルギー陽イオンの一部を流体的に連通させることのできる二次コリメート装置をさらに有するものである。
【請求項73】
請求項64記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記アパチャーは、イオンビームレットを流体的に連通させることのできる複数の開口を有するものである。
【請求項74】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記ターゲットアセンブリおよび前記イオン選択システムは、回転ガントリ上に設置されるものである。
【請求項75】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記レーザのレーザビームは、複数のミラーを用いて反射により輸送されるものである。
【請求項76】
請求項75記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、前記イオン選択システムは、前記治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの走査を可能にするようにロボット制御により搭載されるものである。
【請求項77】
請求項75記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、この治療センターは、さらに、
少なくとも2つのターゲットアセンブリの各々に対して、レーザビームを分割するための少なくとも1つのビームスプリッタをさらに有するものである。
【請求項78】
請求項60記載のレーザ加速された高エネルギー多重エネルギー陽イオンビーム治療センターにおいて、
前記レーザ−ターゲットシステムは、少なくとも約50MeVのエネルギーレベルを有する高エネルギー多重エネルギー陽イオンを含む高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを各々が発生できる複数のターゲットアセンブリと、
前記個々の高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々から治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームを個々に発生する複数のイオン選択システムと、
前記治療上好適な高エネルギー多重エネルギー陽イオンビームの各々に対する別個の多重エネルギーイオンビーム監視制御システムを有するものである。
【請求項79】
多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムであって、
流体的に連通した(in fluidic communication)2若しくはそれ以上の一連の超電導コイルであって、この超電導コイルの各々は、約0.1〜約30テスラの磁場を別個に与えることができ、少なくとも2つの前記磁場は互いに反対方向にあるものである、前記前記流体的に連通した2若しくはそれ以上の一連の超電導コイルを
有する多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システム。
【請求項80】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.2〜約20テスラである。
【請求項81】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.5〜約10テスラである。
【請求項82】
請求項79記載の多重エネルギー陽イオンビームを磁気的に分離するための小型の超電導電磁石システムにおいて、前記磁場は約0.8〜約5テスラである。
【請求項83】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、約5cm〜約100cmの範囲の寸法を有するものである。
【請求項84】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記電磁石の各々の最大磁場は、約5テスラ未満である。
【請求項85】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、巻き数が約1,000〜約100,000の1若しくはそれ以上の超電導ワイヤを含むものである。
【請求項86】
請求項85記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、巻き数が約5,000〜約20,000の超電導ワイヤを含むものである。
【請求項87】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上のNbTi超電導ワイヤを含むものである。
【請求項88】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上のNb3Sn超電導ワイヤを含むものである。
【請求項89】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、1若しくはそれ以上の高温超電導ワイヤを含むものである。
【請求項90】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルの各々は、約60A〜約600Aの範囲の電流を通電できるものである。
【請求項91】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、
各々が同方向に磁場を与えることのできる2つの外部電磁石と、
各々が同方向で、外部電磁石の磁場の方向には逆方向の磁場を与える2つの内部磁石と
を有する小型の超電導電磁石システム。
【請求項92】
請求項91記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記2つの内部電磁石の磁場は、ほぼ同じ強度を有するものである。
【請求項93】
請求項92記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記2つの内部電磁石は、約0.2cm〜約5cmの範囲で離間しているものである。
【請求項94】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムは、この小型の超伝導電磁石は、さらに、
約0.02cm〜約2cmの範囲のアパチャーサイズを各々が有する一連のコリメータを有するものである。
【請求項95】
請求項79記載の小型の超電導電磁石システムにおいて、前記超電導コイルは、矩形を有するものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−525968(P2008−525968A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548540(P2007−548540)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046834
【国際公開番号】WO2007/061426
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500565663)
【氏名又は名称原語表記】FOX CHASE CANCER CENTER
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046834
【国際公開番号】WO2007/061426
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500565663)
【氏名又は名称原語表記】FOX CHASE CANCER CENTER
【Fターム(参考)】
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