説明

レーザ原子プロービング方法

レーザ原子プローブ(100)には、試料台および検出器(106)間に対極が配置され、対極(108)の開口(110)を通して試料(104)に照射を行うようビーム(122)が位置合わせされたレーザ(116)が設けられる。そして検出器および試料台(102)は、試料のイオン化のためにパルス駆動される。イオン出発時間および到着時間を定めるのにレーザパルスのタイミングを用いることで、イオンの質量/電荷比の決定が可能となり、従ってその同定が可能となる。レーザが自動的に対象エリアに向けられるようにした自動化位置合わせ方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書は、概して原子プローブ(原子プローブ顕微鏡としても知られている)に係る発明に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
原子プローブ(原子プローブ顕微鏡としても参照される)は、試料を原子レベルで分析できるようにする装置である。従来の原子プローブの基本形は次の形態を取りうるものであった。すなわち、試料台は、概してマイクロチャンネルプレートおよび遅延ラインアノードである検出器から離れている。試料台に試料を置き、試料ホルダの電荷(電圧)を検出器の電荷に対して合わせ、試料表面の原子がイオン化して試料表面から「蒸発」し、検出器に移動するようにする。一般に、試料にパルス状電圧を印加することで、パルスのタイミングでパルスをトリガとする蒸発が生じ、これにより蒸発時間を粗く決定することができるようになる。試料の原子のイオン化傾向は検出器からの距離に従うので(すなわち、検出器に近い原子ほど最初にイオン化しやすい)、試料はまずその先端または頂点(検出器にもっとも近いエリア)から原子を失い、蒸発が続くにつれて先端はゆっくりと浸食されてゆく。試料から検出器までのイオン化原子の飛行時間を測定することで、イオンの質量/電荷比(を決定よってさらに蒸発原子を同定)できる。イオンが突き当たる検出器上の位置を測定することで、イオン化原子が試料に存在していたときの相対位置を決定できる。従って、時間の経過とともに、試料を構成する原子の同定および位置を示す3次元マップを作ることができる。
【0003】
試料に潜在的に含まれる原子の数および、これらの原子を集めるのに要する時間に鑑みて、試料はしばしば、より大きな物体の標本の形態とされる。かかる試料はしばしば、物体からコアを細長く除去することで形成され(「微小先端」として参照することもある)、これは標本物体の深さ方向の少なくとも一部の全体にわたる構造を表す。そして、かかる微小先端試料は通常、その軸が検出器に向かって延びるように試料ホルダ内に位置づけられ、これによって収集された原子が標本物体の深さ方向の構造を明らかにするものとなる。微小先端のロッド状構造は、その頂点(検出器にもっとも近いエリア)のまわりに電界を集中させるのにも有用であり、これによって頂点からの蒸発が増進することになる。
【0004】
イオン化(蒸発)エネルギは単に電界を用いて供給されるものである必要はない。例えば、電気的な場合と同様、試料をパルス状に加熱することで蒸発を助けるように開発された原子プローブもある。いくつかの従来構成では、レーザパルスが試料に向かうよう試料マウントに隣接してレーザを位置づけることで、短期間に試料を加熱して蒸発を促すようにされている(例えば非特許文献4参照)。しかしながら、かかる構成は普及していない。レーザビームを微小先端試料(特にその頂点)に集中させるのが困難で、時間がかかるからである。さらに、その困難さのゆえに比較的大径のレーザビームが必要となるが、これはレーザの出力密度が減少するので好ましくない(レーザ出力の消費を増せば別であるが、これも好ましくない)。加えて、大径のビームは微小先端試料の被加熱面積を増すが、かかる熱は質量決定を不確実にするものとなる。試料に残る熱がイオン蒸発時間の大きな変動をもたらすからである。他のアプローチが特許文献1において提案されている。これは、レーザの代わりに電子ビームを利用して加熱の問題を低減しようとするものであるが、しかしビームの焦点合わせおよび試料の加熱は依然として問題を引き起こし得る。
【0005】
この結果、多くの原子プローブは他の特徴を用いて蒸発を増進させている。用い得る特徴の1つは対極であり、電極は中央開口をもち、試料および検出器間で試料から僅かに距離をおいて配置される(例えば非特許文献10参照)。対極は通常、試料に対して近づく方向に変位し、これによって試料からの蒸発が増進されて、原子のイオン化と、対極の開口を通り検出器に向かう飛行とを生じさせるものとなっている。対極は概して、次の目的の1つもしくは複数のために用いられる。
【0006】
第1に、先端部の頂点のまわりに対極の開口を位置づけて、頂点のまわりの蒸発用電界を強くすることによって、振幅の小さい蒸発用電圧パルスを使用できるようにすることである。装置の制限により、小振幅の電圧パルスは通常、より速いパルシングを可能とし、従って試料からの蒸発レートを高くする(そしてデータを迅速に取得する)ことができるようになる。いくつかの場合には、複数の微小先端をもつ試料上で選択された微小先端のまわりに蒸発用電界を集中させるのに対極が用いられ、単一の微小先端からのみイオン蒸発を生じさせるようになっている。この状況では、局所的な蒸発を許容するようにされていることから、対極はしばしば「局所電極」として参照される(例えば特許文献2参照)。より集中した蒸発を実現するべく、局所電極は概して、例えば、数mmのオーダではなく5〜50μmのオーダという、従来の対極よりかなり小さい開口を有している。
【0007】
第2は、原子プローブの質量分解能を改善する(すなわち試料および検出器間のイオンの飛行時間の測定値をより良く較正する)ために、対極を用いることができることである。原子プローブの電圧がパルス状である場合、原子はパルスのピークの付近で蒸発する傾向にあり、出発時間の小さな広がりに結びつく。さらに、遅く出発するイオンは電圧パルスが減衰するときも試料内に存在し得るので、試料が発する電界の時間依存の影響を受け易く、その真の出発時間が(そしてこれにより、イオンの飛行時間およびイオンの質量の決定が)より不確実なものとなってしまう。しかしながら、対極が試料に十分近く位置づけられ、出発するイオンが、試料の電圧パルスが大きく減衰する前に、対極の電界の影響下に置かれれば、イオンの飛行は時間依存する電界から切り離されることで、その影響を低減できる。
【0008】
第3に、対極は時々、試料頂点近傍の電界に影響を及ぼし得る飛行経路中の構成要素から試料を遮蔽するのに用いられる。一例として、原子プローブ顕微鏡が移動可能な検出器を有している場合、検出器が近くにあるほど、試料上の電界が大きくなり、これによって望ましくない時間および複雑な動作でイオンが蒸発する可能性が高まる。しかしながら、試料および検出器間にある対極が検出器から試料を部分的に絶縁可能であれば、検出器電界の影響が低減される。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,061,850号明細書(Kellyらによる“High mass resolution local-electrode atom probe”)
【特許文献2】米国特許第5,440,124号明細書(Kellyらによる“High-repetition rate position sensitive atom probe”)
【特許文献3】米国特許第6,576,900号明細書(Kellyらによる“Methods of sampling specimens for microanalysis”)
【特許文献4】米国特許第6,580,069号明細書(Cerezoによる“Atom probe”)
【特許文献5】米国特許第6,700,121号明細書(Kellyらによる“Methods of sampling specimens for microanalysis”)
【特許文献6】米国特許第6,762,415号明細書(Straitによる“Vacuum chamber with recessed viewing tube and imaging device situated therein”)
【特許文献7】国際公開99/14793号公報
【特許文献8】国際公開87/00682号公報
【特許文献9】米国特許第5,572,355号明細書(Cottonらによる)
【特許文献10】米国特許第5,604,607号明細書(Mirzaoffによる)
【特許文献11】米国特許第5,952,645号明細書(Wangらによる)
【特許文献12】米国特許第5,978,407号明細書(Changらによる)
【特許文献13】米国特許第6,704,341号明細書(Changによる)
【非特許文献1】Cerezo, A. et al., J. Phys. (Orsay) C9 (1984) p. 315.
【非特許文献2】Cerezo, A., C.R.M. Grovenor and G. D. W. Smith. “Pulsed laser atom probe analysis of semiconductor materials.” Journal of Microscopy v 141, pt.2 (Feb. 1986): 155-170
【非特許文献3】Drachsel, W. , Nishigaki, S. , and Block, J.H. , “Photon-Induced Field Ionization Mass Spectroscopy.” Int. J. Mass Spectrom. and Ion Phys. Vol. 32 (1980): 333-343
【非特許文献4】Kellogg, G. L. , and T.T. Tsong. “Pulsed-laser atom-probe field-ion microscopy. ” Journal of Applied Physics 51 (2) (1980): 1184-1193
【非特許文献5】Kelly, T.F. , Zreiba, N. A. , Howell, B.D. , and Bradley, FJ. , “Energy Deposition and Heat Transfer in a Pulse-Heated Field Emission Tip at High Repetition Rates.” Surface Science, vol. 246 (1991): 377-385
【非特許文献6】Kelly, T.F. , Camus, P.P., Larson, DJ., Holman, L.M., and Bajikar, S. S., Ultramicroscopy 62:29-42 (1996)
【非特許文献7】Kelly, T.F. and Larson, D. J., “Local Electrode Atom Probes.” Materials Characterization 44, 59-85 (2000)
【非特許文献8】Liu, J. , and T. T. Tsong. “Kinetic Energy and Mass Analysis of Carbon Cluster Ions in Pulsed-Laser-Stimulated Field Evaporation. ” Physical Review (B) 38 (12) (1988): 8490-8493
【非特許文献9】Liu, J., C. Wu, and T. T. Tsong. “Measurement of the atomic site specific binding energy of surface atoms of metals and alloys. ” Surface Science 246 (1991) 157-162
【非特許文献10】Miller, M.K., A. Cerezo, M.G. Hetherington, and G.D.W. Smith. “Atom Probe Field Ion Microscopy. ” Oxford Science Publications, 1996
【非特許文献11】Tsong, T. T., Photon stimulated field ionization, J. Chem. Phys. 65, 2469 (1976)
【非特許文献12】Tsong, T. T., S. B. McLane, and T. J. Kinkus. “Pulsed-laser time-of-flight atom-probe field ion microscope. ” Review of Scientific Instruments 53(9), Sept. 1982
【非特許文献13】Tsong, T. T. “Pulsed-Laser-Stimulated Field Ion Emission from Metal and Semiconductor Surfaces: A Time-of-Flight Study of the Formation of Atomic, Molecular, and Cluster Ions.” Physical Review (B) 30 (9) (1984): 4946-4961
【非特許文献14】R. N. Wilson, Reflecting Telescope Optics: Basic Design Theory and Its Historical Development, Springer-Verlag (1996)
【非特許文献15】T. Wilhein, D. Hambach, B. Niemann, M. Berglund, L. Rymell, and H.M. Hertz, Off-axis reflecting soneplate for quantitative soft x-ray source characterization, Appl. Phys. Lett. 71, 190 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
添付の請求の範囲に記載された本発明は、原子プローブおよびこれを作動させる方法に係り、これによって従来の原子プローブを超える効果が得られるようにするものである。本明細書の別の部分で詳述されるものとともに次の概要を検討すれば、本発明の好適な特徴のいくつかを基本的に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
原子プローブは分析される試料を載置可能な試料台を含み、試料台は配置される試料にイオン化電圧を印加するために帯電させることが可能である。試料台から離隔して検出器が設けられ、試料から蒸発するイオンを検出する。電極開口を有する対極が試料台と検出器との間に配置され、開口は開口平面に沿って向きが定められた開口入口を有している。開口平面は、好ましくは、試料頂点の部位またはその直近に配置される(すなわち、試料頂点は開口入口内またはその直近に好ましく位置する)。従来の原子プローブのように、試料頂点で原子をイオン化するにほぼ十分な電圧に試料台および検出器を帯電させることができ、所望であれば、「過電圧」パルスを対極に供給して時限的イオン化(少なくともいくらかのパルスが供給されているときにイオンが蒸発する)が生じるようにすることができる。しかしながら、イオン化は主にレーザ(または、電子ビーム発生器などその他のエネルギビーム源)により誘発されることが好ましい。レーザは、対極および試料台から離隔し、開口平面の試料台から離れた反対側に存在する。レーザは、対極の前記開口を通って前記試料台に向かい、試料に突き当たるようビームを放射するべく位置づけられている。レーザは、非常に高い周波数で、ピコ秒レベルの幅をもつパルスを発生できることから好ましいエネルギビーム源であり、これによって、従来の原子プローブよりも、格段に高い質量分解能をもって試料にイオン化を生じさせることが可能となる(レーザパルスの非常に狭い時間幅でイオンの出発が生じ、非常に高い精度でイオン出発時間を特定することができるようになるからである)。
【0012】
レーザを用いる場合、レーザは従来のレーザ原子プローブで用いられていたものよりも実質的に寸法の小さいビームを用いるものであることが好ましく、試料に達するときに実質的に1mm未満のレーザ径を持つものとされる。最も好ましくは、試料上で0.5mm以下のビーム径を有する。ビーム寸法を小とすること(ひいては、試料上の対象エリア(area of interest)でのスポットサイズを小とすること)は、試料の加熱を少なくし、イオン化をより対象領域に限局できることから有用である。局所的な加熱によって、試料のより迅速な熱放散も促進され、残熱によって遅れて生じるイオン化や、イオン出発時間の誤計算が助長されることがなくなる。
【0013】
しかしながら、ビームが開口を通るよう位置合わせしてレーザを配置し、従来の原子プローブより小さいビームサイズを用いることは、大きな困難さを伴う。開口を通るようビームを位置合わせすることは、従来の構成(レーザおよび試料が対極およびその開口平面と同じ側に配置される)が用いられる場合より、レーザを試料から離して配置することがほぼ不可避となり、試料の対象領域にビームを位置合わせすることが困難となるからである。スポットサイズが小さくなるほど、この困難さは増すことになる。特に、ビームが小さくなるほど「ドリフト」(すなわち、振動、レーザの不完全さ、レーザおよび試料台間で生じる構成要素の熱膨張/収縮などに起因して、時間とともに徐々に生じる位置ずれ)の影響を受けることになるからである。従って、データ取得セッションの開始時には試料頂点またはその他の対象領域にビームが集束していたとしても、レーザの使用時にビームにドリフトが生じると、データは時間とともに質が低下することになってしまう。
【0014】
上記問題は2つの方法で解消される。第1に、寸法の小さい(好ましくは約1mm未満、最も好ましくは約0.05mm未満)の対極を使用し、試料上で(または、少なくともその近くで)ビームの粗い位置合わせを行う。かかる寸法は、およそ原子プローブの試料の最も微小な先端のオーダであり、試料からのデータ取得時には、試料は開口に粗く中心合わせされていることから、ビームを開口に位置合わせすることで試料に対するビームの粗い位置合わせが可能となる。かかる位置合わせは、試料台近傍で得られるビデオまたはマイクロカメラ画像をモニタリングすることによって、および/または、試料台のまわりに配置された光検出器の出力をモニタリングすることによって、目視により検出可能である。
【0015】
そして、ビームの精密な位置合わせを、自動化されたビーム位置合わせ法を用いて実施することができる。これは試料頂点(またはその他の対象エリア)の迅速な位置づけを行うものであって、原子プローブを操作する作業者を「ハンティング」する必要がない。この方法では、レーザ(またはその他のエネルギビーム)が試料に向って導かれ、予め定められた試料上(またはその近傍)の走査(sweep)エリアが1以上の次元で走査される。これは例えば、走査エリアのいくらかをカバーするために蛇行形状またはジグザグパターンに走査されるものでもよいし、ラインに沿って単に1次元に走査されるものでもよい。走査の過程で、エネルギビームと試料との間の相互作用を示す1以上のパラメータがモニタされる。この性質を示すパラメータには、例えば、検出器が検出するイオンの収集レート(collection rate)(通常、収集レートが高くなるほど、原子がよりイオン化しやすい試料頂点付近びビームが衝突していることをよりよく示す傾向にある);検出器が検出するイオンの質量分解能(mass resolution)(すなわち、特定の原子種に明白に関連した質量/電荷比(mass/charge ratio)を検出されたイオンが有し得る度合い。関連が良好であれば、イオン出発時間(レーザパルスによって設定される)が正確に決定されていることが示される);試料への印加電圧(試料頂点に集束するビームは、試料頂点にビームが集束していなかった場合よりも、試料電圧が低くても検出可能なイオンを生成する);レーザビームの反射部分(反射ビームの画像をモニタリングすることで、試料頂点への照射が行われているかが示され得る);およびレーザビームの散乱部分(ビームの回折像もまた、試料頂点への照射が行われているかを示し得る)がある。以上のパラメータは予め定められた位置合わせ規準と比較される。例えば、走査された位置についてのパラメータが受容可能な値を有しているか、および/または、走査に沿った位置が、先の位置より試料頂点により近いことをパラメータが示しているか、などについてである。
【0016】
位置合わせ規準に合う走査値のサブセットが見つかった場合、例えば、ある走査位置が、イオン化レート(検出器収集レート),イオン質量分解能等のより良好な走査エリアのあるサブセットを示していた場合には、新たな走査エリアを定義することができる。新たな走査エリアは、少なくともこのサブセットを含むサイズにまで低減される。より好ましくは、パラメータをモニタして、最適のパラメータ(試料頂点付近のポイントとの対応が最も近いもの)をもつ走査上の単一位置が同定されるようにする。この位置は「ホーム位置」として定義され、それについて、より小さい新たな走査エリアが定義される。そして、この新たな小走査エリアについてビームを走査することによるプロセスを繰り返し、所定の位置合わせ規準により適合する当該走査エリアの新たなサブセット(例えばホーム位置)を位置づけ、このサブセットについて新たに縮小された走査エリアが定義されるようにする(以下同様)。プロセスは、ホーム位置について、または最適位置の収集について走査エリアを絞り、移動させつつ、試料頂点のホームに至るまで反復される。位置合わせ規準がある所定レベルの精度で満たされると(例えば同定されたホーム位置が次の走査との間で有意に変化しないものとなると)、走査を停止し、試料頂点が位置づけられたと仮定することができる。
【0017】
一方、走査領域の走査を通じてモニタされるパラメータが位置合わせ規準に合わなかった場合、例えば頂点の位置に関して曖昧であった場合、走査エリアを縮小するのではなく拡大してプロセスを繰り返し、試料上のエリア(とりわけその頂点近傍)が走査される可能性を高くする。例えば、走査エリアにおいてある位置から他の位置までモニタされるパラメータの変化が少ない、もしくは変化がなかった場合は、試料の走査エリアが試料頂点の近くには全くないと(ビームが甚だしくドリフトしていた場合には対極上にあるとも)考えられる。そこで、位置合わせ規準に合うホーム位置(あるいは走査エリアのサブエリア/サブセット)の位置づけを期して走査エリアを拡大してから、その位置についてプロセスを反復して走査エリアが絞られて行くようにすることができる。あるいは、拡大した走査エリアにも位置合わせ規準に合うホーム位置あるいは他のサブエリアが位置していなければ、見込みのあるサブエリア(このサブエリアについて走査エリアを反復的に絞ることができるポイント)が位置するようになるまで、再び走査エリアを拡大することができる。
【0018】
上述の手順を用いることによって試料頂点(または試料上の他の所望位置)が位置づけられると、原子プローブ分析を開始できる。すなわち、試料、対極および検出器をそれぞれ帯電させて試料のイオン化を招来するレベルとし、レーザ(または他のエネルギ源)をパルス駆動してイオン化が生じるに十分なエネルギを試料に加える(所望であれば、同様に対極にも同時にパルスが加えられるようにする)。時間とともにビームのドリフトが生じるので、データ取得時には上述した精密なビーム位置合わせプロセスを定期的に繰り返すことができる。これは、ある回数のデータ取得サイクルが行われた後、および/または、試料の所望エリアにビームがもはや位置していないことをあるパラメータ(蒸発レート,質量分解能など)が示していると考えられたときに行われる。
【0019】
原子プローブの有用性は、レーザ(または他のエネルギ)が、試料に達するときに異なる少なくとも2波長のレーザ光(または他のエネルギ)を含んでいることで増進される。材料が異なれば、異なる波長のエネルギでのイオン化に大きい感受性を呈し得るので、異なる波長を混合することで原子プローブの汎用性を高めることができ、これによって広範な材料の分析をより効果的に行うことができるようになる。複数のレーザを用い、それらのビームを2色性ミラーまたは他の要素によって組み合わせることで波長を混合させることができるが、特に好ましい構成は、単一のレーザ(単一波長のレーザ光を放射する)を用い、非線形クリスタル(nonlinear crystal)またはその他の高調波発生光学素子を使用して同じビーム内に高調波の波長を生成するものである。単一のレーザを用いることによって、異なるレーザ間での同期パルスタイミングが不要となり、また複数のレーザを用いることによるコストおよびスペースの問題を排除できる。
【0020】
試料台および検出器を収容する真空チャンバの外側にレーザを配置し、そのレーザが、真空チャンバに形成される窓を通して試料にビームを供給するようにすることによっても(所望であれば、レーザに沿って中間ミラー、レンズまたはその他の光学素子が用いられてもよい)、コストおよびスペースの問題が低減される。これは、高真空環境用にレーザを構成する(これは高価格化をもたらし得る)必要を排除し、また真空チャンバ内の限られた利用可能なスペースをレーザに占有させる必要もなくすものである。真空チャンバの外(あるいは試料台から離隔した他の位置)にレーザを配置することは、試料へのビーム位置合わせにとって大きな問題となり得るが、しかしこれは上記位置合わせ方法を用いることにより少なくとも部分的に解消可能である。
【0021】
開口の入口でレーザその他のエネルギビームを受け、これを集中させてから開口出口から出すよう対極を構成し、より高い強度をもってビームが試料上に集束するようにすることによって、上記問題のいくつかは少なくとも部分的に緩和される。これは例えば、放物面、双曲面またはその他の形状をもつ集中反射器として電極開口を構成し、ビームエネルギを内向きに反射させて相対的に大きい開口入口から相対的に小さい開口出口まで移送されるようになし、試料上に放射される際には入射ビームがより大きい強度をもつように集中させることができる。かかる構成は、位置ずれの生じたビームを「捕捉」し、向きを変えて試料上に集束させることにより、ビーム位置ずれを少なくとも部分的に補正可能とする。かかる構成により小さいビーム位置ずれは許容されるので、複数のレーザまたは他のエネルギビームを受容し、位置ずれの生じたビームを試料に向けることに対しても適切なものとなる。
【0022】
本発明のさらなる目的、構成および利点は、添付の図面に関連づけた以下の詳細な説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1aおよび図1bを参照するに、参照番号100で全体を示すレーザ原子プローブの模式的な形態(図1a)および実際のプロトタイプの斜視図(図1b)が示されている。レーザ原子プローブ100は試料104を載置する試料台102と、試料104から蒸発したイオンを受容するために対向する検出器106と、試料台102および検出器106間に配置される対極108とを含んでいる。試料台102は移動可能であり、これによって対極108の開口110内に、もしくはこれに僅かな距離をおいて試料104を位置決めし、開口110の入り口を定めている開口平面112に試料104の頂点またはその他の対象エリアが好ましく配置されるようにすることが可能である。真空チャンバ114は以上の全要素を囲んでいる。本明細書の参考文献から明らかなように、試料台102、検出器106および対極108の上述した配置は原子プローブの分野では一般的なものであるが、種々の構成および作動モードとすることが可能である。例えば、対極108は局所電極の形態を取るものであってもよく(特許文献2参照)、付加的もしくは「中間」電極があってもよく(特許文献4参照)、また他の特徴部が存在していてもよい。作動モードの一従来例では、試料台102および検出器106は試料104のイオン化を生じさせるのにほぼ十分なまでに電圧を「ブースト」するべく帯電される(一般的には、試料102はイオン化エネルギスレッショルドの約75%まで帯電される)。通常は、試料104をプラスに帯電させ、検出器106をマイナスに帯電させる。そして対極108および/または試料台102に「過電圧」パルスを印加し、すなわち試料104のイオン化スレッショルドを超える帯電が行われるようにし、パルス印加時にイオンが蒸発する(および検出器106へのイオンの飛行時間がパルスから測定できる)ようにする。
【0024】
対極108の開口110を通し、試料104の頂点またはその他の対象エリアにビームを放射するよう向きが定められたレーザ116を備えることにより、上述の配置は、レーザ原子プローブ100として使用するための調整に適合し得るものである。図1aおよび図1bに例示したレーザ原子プローブ100では、真空チャンバ114は端部が窓120となった観察チューブ118を含んでおり、レーザ116を窓120の外に配置することで、窓120さらには対極開口110を通してビームを放射することができる。しかしながら、本明細書で後述するように、レーザ116についてその他の配置を行うことも可能である(例えばチャンバ114内に配置するなど)。
【0025】
いくつかの作動モードが可能であるが、特に好ましいものが2つある。その1モードでは、試料台102を帯電させ、イオン化エネルギスレッショルドの大部分となる電圧までブーストし、イオン化エネルギの残部はレーザ116によって提供されるようにすることができる。レーザ116は、従来の過電圧パルスと同等の大きさとなるイオン化エネルギを試料104に供給するべくパルス駆動される。この場合、対極108は単に帯電していないグランド層として働けばよい。
【0026】
第2のモードでは、ここでもブースト電圧が試料台102に印加されるが、イオン化エネルギの残部はレーザ116および対極108が分担して提供するようにすることができる。この場合、対極108は試料104がイオン化する近傍にまで過電圧パルスを印加し、そしてレーザ116はイオン蒸発が生じるに必要なエネルギを提供する。この構成では、ブースト電圧を低くすることができるので、試料104のストレスを低減できる。レーザ116および対極108によって供給されるエネルギを組み合わせることで、イオン化スレッショルドを超えるのに必要な全エネルギの多くを構成することができるからである。
【0027】
図1bに示したプロトタイプのレーザ原子プローブ100を詳述すると、これは、「diode-pumped Ti: Sapphire」オシレータをもつレーザ116(Mira Optima 900-F cavityをもつVerdi- V5 pump laser;ともに米国カリフォルニア州Santa ClaraのCoherent, Inc.)を用いて、Imago Scientific Instruments Corporation(米国ウィスコンシン州Madison)により製造された原子プローブを使用している。これは公称76MHzの繰り返し率で8nJのパルスを発生する。キャビティダンパ(Coherent, Inc.のPulse Switch cavity dumper)を用いて、パルスエネルギを60nJに上昇させるとともに、繰り返し率を100kHzに低減することができる。これらの要素は単なる例示であって、同等もしくは異なる出力を可能とする他の装置も市販されている(Coherent, Inc.その他のレーザ装置供給者。例えば米国カリフォルニア州Mountain ViewのSpectra-Physics, Inc.など)。上述したCoherent, Inc.のPulse Switch cavity dumperは第2および第3の高調波発生器を含んでおり、本明細書において後述する態様に好ましく使用可能である。
【0028】
そして、レーザ116のパルス状ビーム122は、窓120および対極開口110を通り、試料104の頂点その他の対象エリアに向けられる。レーザビーム122は、イオンの移送軸(すなわち、試料104からのイオンの飛行経路によって画成される円錐の中心軸。飛行円錐は図1aにおいて符号124で示され、イオン移動軸は符号126で示されている)に対し、45度よりやや小さい角度傾いている。この角度は、ビーム122が飛行円錐124と交差するのを防ぐ一方、同時にビーム122が対極開口110を通って試料104に突き当たるのを許容する上で適切なものである。しかしながら、原子プローブ100の構成要素が異なれば(例えば対極開口110の寸法および/または飛行経路126の長さが変れば)、ビーム122の角度も変化し得る。
【0029】
プロトタイプの原子プローブ100では、飛行経路126は公称6cmである(しかしこれは、最も簡単には検出器106を移動させることによって調整可能である)。そのような飛行経路126によって、1MHzのオーダのデータ取得サイクルが可能となり、これによって試料分析時間を大きく低減でき(数時間ないしは数日ではなく数分のオーダ)、原子プローブ100の産業上利用性を増進できる。データ取得レートに影響を与えることに対応して飛行経路を長くする(短くする)ことができる。飛行経路が長くなり、および/または、パルス周波数が高くなるほど、1回のデータ収集サイクルの開始部分が先のデータ収集サイクルの終了部分にオーバラップし始めるので、データ解釈および制御の負荷が大きくなる。飛行経路126の調整に対応して、視界および倍率にも影響が及ぶ(倍率は飛行経路長に比例し、視界は逆比例する)。飛行経路が6cmであると、視界は1.5〜2.0ステラジアンとなる。
【0030】
対極108は、平面状であっても、凹面状であっても、他の形状であってもよい。プロトタイプのレーザ原子プローブ100では、好ましくは約0.05mm未満の直径を持つ開口110を有した平面状対極を用いている。開口110をより大径とすることも可能であるが、0.1mm未満の直径とすることが好ましい。本明細書において後述するように、小径の開口を使用することは、試料104に対してレーザ116(これは従来のレーザ原子プローブより遠い位置にある)の焦点合わせを行うという重要なタスクの大きな助けとなるからである。さらに、同等またはより小さいオーダの開口110を持つ円錐状または他の形状の対極108を用いることは、例えば同じ試料104上の隣接する個々の微小先端を分析するために、対極108を局所電極として働かせる場合に有用となり得る。
【0031】
レーザ116は、従来のレーザ原子プローブよりも厳しく集束させたビーム122を用いており、その径は1mm未満とすることが好ましく、0.5mm未満であることがより好ましい(試料104に照射されたとき)。プロトタイプのレーザ原子プローブ100は、試料104上でほぼ0.02mmのスポット寸法(レーザ径)を有する。これは、レーザ加熱を受ける試料104の容積を低減する上で有利であり、この結果熱放散が良好なものとなり、イオン化した原子の出発時間の広がりを低減することが可能となる(すなわち、試料104に保持されるエネルギが少なくなり、これによってパルス供給後に遅れてイオン化が生じるのを抑制できる)。加えて、ビーム122の径を小さくすれば、これが大きい場合よりもパワー密度が大きくなるので、小径のビーム122とすることにより、パワーの低い(および低廉の)レーザ116を用いることができるようになる。例えば、一方が直径0.05mm、他方が直径1mmのパワー密度の等しい2つのビームを比べた場合、0.05mm径のビームは1mm径のビームの1/400のパワーを要するのみである(パワー密度は直径の2乗に従って変化するため)。
【0032】
ビーム122を集束させるために種々のコリメータ、レンズおよび光学素子を使用可能であり、集束用光学素子は原子プローブ100に用いるために選択されるレーザ116に従い得る。図1bに示したプロトタイプの原子プローブ100は、モータ駆動されるアクチュエータ(Model LTA-HS;米国カリフォルニア州IrvineのNewport Corp.による)を嵌合した一般的な位置決めステージ(Model 423; Newport Corp.による)に、コーティングを施した両凸面レンズ(model PLCX-38.1-103.0-UV-355-532;米国ニューメキシコ州AlbuquerqueのCVI Laser LLCによる)を取り付けたものを用いている。これらの構成要素は、図示はしていないが、真空チャンバ114の外側、覗き窓120に隣接して配置される。従って、位置決めステージによって、試料104上で所望のビーム径/スポットサイズを得るための集束レンズの再位置決めが可能となる。
【0033】
図2は1つのデータ取得サイクルにおける制御およびフィードバック信号をプロットしたものである。レーザ原子プローブ100の制御システム(パーソナルコンピュータ)はレーザ116にトリガパルスPTを供給する。トリガパルスPTを受け取った後、レーザ116のキャビティダンパは次に利用可能なレーザパルスPLをリリースする。トリガパルスPTからレーザパルスPLの発生までに不確定な時間T1が過ぎるので、高速のフォトダイオードを用いてピックオフパルスPPを発生し、これを制御システムでは公称パルス出発時間Tpとして(さらには、続いて検出器106で検出されるイオン出発時間として)用いることができる。絶えず(不必要に)検出器106からデータを集めるのではなく、検出器106でのデータ取得はピックオフパルスPPの後に小期間T2が経過してから可能とされ、これによってデータ収集をイオン到着時のものにより良く制限できる。そこで、到着時間からTpを減じることにより、検出されたイオンの質量/電荷比が決定(よってさらにそれらの原子が同定)される。検出器106でのデータ取得は、Tdの後のある固定時間(一般には1マイクロ秒)で、次のデータ取得サイクルの開始前に不能とされる。対極108のパルスのタイミングは示されない。対極108が帯電していないグランド層として単に作用すると仮定しているからである。しかしながら、対極108を帯電させていた場合には、所望の振幅の対極パルスをトリガパルスPTによって開始させ、その持続時間を超えるレーザパルスPLが生じるようにするのに十分なパルス幅をもたせることができる。これにより、対極は試料104をそのイオン化エネルギ近傍のレベルにまで高める過電圧パルスとして働き、そしてレーザパルスPLはイオン化に十分なエネルギを供給するものとなる。
【0034】
効率的なイオン化のためには、レーザビーム122のビーム径およびパワー密度(よってさらに、ビーム122によって供給されるイオン化エネルギ量)を正確に知ることが有効である。これは様々な方法で行うことができる。最も好ましくは、試料104の頂点でのエネルギ入力が推定できるよう、開口平面112で、もしくはその直ぐ後ろで測定値が取られるようにすることである。これを実現するための第1の方法は、図1aにおける試料台102に隣接して(またはその上に、または試料台102が所定の位置に移動する前に試料台102の代わりに)フォトセンサを配置し、ビーム122の出力を直接測定する。この状態の配置例は図1aに示されており、ここではフォトセンサアレイ128が試料台102の縁のまわりに配置されている。開口平面112での測定値は、フォトセンサ128の位置から得られる測定値より演算可能である。他のアプローチは、図1aにおける試料台102の近傍に(または試料台102が所定の位置に移動する前に試料台102の代わりに)ミラーを配置し、このミラーがビーム122を反射して真空チャンバ114内またはその外に(例えば真空チャンバ114の覗き窓を介して)ビーム122を導くようにすることで、開口平面112でのビームパワーが演算できるようにすることである。他のアプローチとしては、対極108内にフォトセンサを構築し、または対極108の上もしくは下に一時的にフォトセンサを移動させ(試料台102上にフォトセンサ128を配置する先のアプローチと同様)、開口平面112でビーム122をより直接的に測定するようにすることが含まれる。その他のアプローチとして、チャンバ114の内側もしくは外側でフォトセンサを用いることも可能である。ここで、レーザ116およびフォトセンサ間でミラーその他の光学要素が使用されるものでもよいし、使用されないものでもよい。
【0035】
前述したように、レーザ116とともに第2および第3の高調波発生器を用いることで、紫外領域から近赤外領域までのビーム122の平均波長をチューニングできるようになり、また、他の材料でなる試料104のイオン化がより良く誘発されるよう波長を調節できるようになる。しかしながら、いくつかの場合には、試料104の材料の違いに起因して、単一波長では効率的なイオン化をもたらさない。単一波長では、試料104に存在する構成要素のすべてとは効果的に結合できないからである。そのためプロトタイプの原子プローブ100では、複数波長を含んだビーム122を好適に用いている。これは、複数のレーザ116を用い、それぞれのビーム122が、場合によってはそれらのビーム122と2色性ミラーまたはその他の要素とを組み合わせてから、試料104に向かうようにすることで実施可能である。しかし複数のレーザ116を使用することはその分空間を要し、高価格化につながるとともに、特に異なるレーザ間でパルスタイミングを同期させる必要性に関して複雑な構成の追加をもたらすものとなる。よって、特に好ましい構成は、単一のレーザ116を用い、ビーム122の経路に非線形クリスタルまたは他の高調波発生光学素子を介挿して、高調波の波長を発生させることである。図1bのプロトタイプの原子プローブ100では、図示はされていないが、レーザ116からのビーム122を非線形クリスタル(リトアニア国VilniusのEKSMA Photonics ComponentsによるBBO crystalなど)に集束させている。クリスタルによって、ビーム122に第2高調波の波長(レーザ116が発する波長の1/2)をほぼ50%の変換効率で生成することができる。所望であれば、第3高調波(レーザ116が発する波長の1/4をもつ)、第4高調波およびその他を生成するべく、さらに非線形クリスタルを配置することもできる。色消しレンズ/コリメータおよび/または他の光学要素を用いて各波長のビームの直径調節および集束を行うことで、これらが対極開口110に入って試料104に突き当たる際、同一のビーム径に集束されるようにすることも可能である。
【0036】
要約すれば、レーザ116を使用することには、従来の原子プローブを大きく超える作動上の利点がある。主要な利点の1つは、従来の原子プローブは概して、少なくとも実質的に導電性の試料104の分析に制限されていたことである。非導電性の試料104は非常に高いブースト電圧および過電圧を要するからである(これら高電圧の電界は機械的破損を起こし得る相当のストレスを試料104に生じさせる)。レーザ116は有意の低電圧での作動を可能とするので、レーザ原子プローブ100は、有機物の試料104など有意の非導電性試料の分析すら可能である。関連する利点としては、ビーム122を発生するレーザ166のレーザ(またはレーザ群)の波長(または波長群)を、異なるタイプの試料104のより効率的なイオン化に適合させ得ることである。異なるタイプの試料104には、異種(nonheterogeneous)要素を有するもの(例えば導電性領域および非導電性領域の双方を含むものや、無機領域および有機領域の双方を含むものなど)が含まれる。
【0037】
他の主要な利点としては、適切なレーザ116はピコ秒あるいはフェムト秒のオーダの幅を有するパルスを発生できることである。試料のイオン化はレーザパルスの非常に狭い時間幅(window)以上で生じるので、非常に高い精度でイオン出発時間を特定でき、これによって質量分解能を従来の原子プローブよりも格段に高く(500質量/電荷単位における1よりもよく)することができる。さらに、1kHz〜1MHzの周波数のパルスを発生できるので、非常に迅速なデータ収集が可能となる。
【0038】
しかしながら、これらの利点にもかかわらず、上述の構成にはいくつかの解決すべき課題がある。特に、試料104上にビーム122を正確に集束させることが難しいということに関してである。レーザ116は試料104から離れて配置され、0.5mm未満のスポットサイズを有することが好ましい(プロトタイプの原子プローブ100は0.02mmのスポットサイズを有している)ので、試料104の頂点(それ自身が数10分の1mm台ないし数100分の1mm台(tenths or hundredths of millimeters)のオーダの直径を有している)にビーム122を集束させることは、特に環境変動に起因してビーム122が時間とともにドリフトしたり、原子プローブ要素の熱膨張および収縮が生じたりするなどにより、簡単なことではない。従来のレーザ原子プローブ(例えば非特許文献12および13に示されたもの)は、レーザ116を開口平面112と同じ側に、試料に隣接してその近くに配置し、より大きいスポット/ビーム径を用いることで、試料の頂点その他の対象エリアにビームを容易に向けることができるようにしてかかる問題を低減している。それでもなお、試料の所望エリアにビームを集束して適切な位置づけを維持することは簡単なことではなかった。集束には、蛍光顕微鏡や電界イオン顕微鏡による目視検査などの方法を必要とし、これは観察の影響を受けるからである。これらのアプローチは、真空チャンバにある少量のガスを導入し、原子プロービングが開始される前にはこれを排気する必要があることから、時間もかかるものであった。そこでビーム径を小さくし、レーザを試料から離隔配置することを考慮すると、これらは双方とも初期の集束をより難しくし、また原子プローブのデータ収集セッションを通じたドリフトの定期的検査を必要とすることになる。これは、原子プローブ100の上述した構成の価値を減殺してしまうことになる(特にドリフト検査は、真空チャンバ114に対するガスの導入および排出に時間がかかることによってデータ取得の中断を要し、これは容認できないものであるからである)。
【0039】
しかしながら、これらの不利な点の多くは次のような位置合わせ手順を使用することで排除することができる。すなわち、まず粗いビーム位置合わせを行い、次に試料の位置合わせを行い、最後に精密なビーム位置合わせを行うことである。粗いビーム位置合わせは、原子プローブ100の最初の設置および使用時に1回だけ、その後はデータ取得セッション間にまれに実施するだけでよい。そして試料位置合わせは各データ取得セッションに先立って実施される。そして精密なビーム位置合わせはデータ取得セッションの前および途中で実施されることが好ましく、これによってビームがドリフトから保護される。
【0040】
粗いビーム位置合わせは、対極108の開口110を通してビーム122を集束させることで実施される。粗い位置合わせの好ましい方法は次のようなものである。
1.レーザ116に電力を投入し、ビーム122が安定するまで待つ(通常、15分程度で十分である)。
2.フォトセンサ(例えば図1aに示されたフォトセンサアレイ128)をアクティブにする。前述したように、フォトセンサは、開口平面112の試料側に概ねイオン移動軸126に沿って(少なくとも一時的には)配置されることが好ましい。その代わりに、対極108上、あるいは、他の位置(真空チャンバ114の外側の位置も含まれる)に配置されたものでもよい。これらは、ビーム122が電極開口110を通過したか否かを決定できる位置である。また、最も好ましい構成は、開口平面112の試料側の対極108直近の隣接位置に移動する可動フォトセンサ128を有し、試料104の頂点が後のデータ取得時に置かれるのとほぼ同じ位置に、フォトセンサ128を配置できるようにすることである。
3.未集束ビーム122を発し、ビーム案内器(すなわちミラー、コリメータおよびその他のもの。これらは図示されていない)を用いてビームを移動させることにより、フォトセンサ128の初期信号を得る。かかるビーム案内器は覗き窓120の外側に配置されることが好ましいが、真空チャンバ114内に配置されるものでもよい。
4.フォトセンサ128の信号が最大となるまでビームを移動させる。信号が最大となることは、対極108の開口110の境界に突き当たることなく未集束ビーム122の全体が通過したことを示している。
5.フォトセンサ128の信号が最大となるようビームを集束させる。
6.フォトセンサ128の最大信号が得られるまで、上記ステップ4および5を反復する。
7.ビーム122のパワーを所望レベルに調節する。
【0041】
粗いビーム位置合わせが完了すると、ビーム案内器、集束用光学素子、レーザパワー制御部などに対する設定を保持することができる。粗いビーム位置合わせ手順は原子プローブ100の起動および設置時に実施可能であるが、例えば新しい対極108が配設された場合や、付加的な対極(中間電極としても参照する)が対極108と検出器106との間に配置された場合など、原子プローブ100の改装が行われた後、あるいはメンテナンス後にも実施することも好ましい。そうでなければ、粗いビーム位置合わせ手順は初期起動後に繰り返す必要性はない。しかしながら、原子プローブ100の好ましい例が0.1mm未満(好ましくは0.05mmのオーダ)の開口110を有していることに留意すれば、数回のデータ取得セッション毎に粗い位置合わせのチェックを行い、不都合なドリフトによって開口110からのビーム122の位置ずれが生じていないことを確認することが有益である。より大径の開口110(例えば2.5mm以上のオーダ。これは、より慣例的なものである)をもつ原子プローブが使用されるのであれば、粗い位置合わせを繰り返し行うことは重要なことではない。
【0042】
他の粗い位置合わせ方法を採ることも可能であり、これはフォトセンサ128の使用が単に好ましいものである。その代わりに例えば長距離顕微鏡(long-range microscope)やビデオカメラを用いて粗い位置合わせを行うことが可能である。粗い位置合わせプロセスにフォトセンサと撮像装置とを組み合わせることもできる。
【0043】
要は、対極開口110がビーム122を試料104の頂点または他の対象エリアに位置合わせするための焦点として働くことに注意すべきである。(可動)ビーム122を(可動)試料104に位置合わせすることには問題があり、時間もかかるものであるが、対極108(これは原子プローブ100の真空チャンバ114内の固定位置にある)をビーム122の焦点として用いることによって(データ取得時に試料104はその開口110の中心に置かれるため)、位置合わせプロセスは非常に簡単なものとなる。さらに注意すべきは、原子プローブが後に、データ取得時に対極108が帯電していないグランド層であるようなモードで作動する際、対極108の主目的に対してビーム122の位置合わせが効果的であるということである。ビーム位置合わせが問題でなければ、対極108は省略することができる。
【0044】
粗いビーム位置合わせが完了すると、対極開口110に対する試料104の位置合わせを種々の方法で実施することができる。試料位置合わせの好適な一方法は、粗い試料位置合わせのために直交する2つの顕微鏡をはじめに用い、必要であればさらに、粗い位置合わせを行うために、精密な試料位置合わせのための電界イオン顕微鏡法を用いることができる。粗い試料位置合わせプロセスは次のようなものである。
1.レーザ116を確実にオフ、またはそのビーム122を遮蔽する。
2.試料104がおおまかに対極開口110に揃うまで、試料台102を移動させる。
3.試料の2軸移送部(イオン移動軸126に直交する平面に沿ったもの)を用い、試料台102を移動させて、試料104がイオン移動軸126に概ね沿うよう配置する。開口平面112の一般的な位置に、イオン移動軸126に対して直交して配置された顕微鏡を用いて両移送軸に沿う位置合わせを確認することができる。(かかる顕微鏡は図示されていないが、真空チャンバ114の外側に有用に設けられ、適切に配置された覗き窓の部位で試料を目視できるようになっている。その覗き窓は図1bにおいて符号130で示されている。)
4.次に試料台102をイオン移動軸126に平行に移動させ、試料104の頂点その他の対象エリアが概ね開口平面112に位置するようにする(すなわち、試料104の頂点が対極開口110の内側またはすぐ外側に位置するようにする)。
【0045】
必要であれば、電界イオン顕微鏡(FIM)を用い、次のような精密な試料位置合わせを行うことができる。
1.造影ガス(例えばネオン)を原子プローブ100の真空チャンバ114内に導入する。造影ガス圧力は通常、ほぼ5×10−6mbarであれば十分である。
2.検出器106のゲインを調節してFIM用に適切なレベルとする。
3.次に試料台102(よって、ひいては試料104)に電圧を印加し、試料104の頂点の画像が検出器106で取得できるようにする。
4.試料104を開口平面112の2軸に沿って移送し、画像が遮られずに検出器106で取得できるようにする。試料104がずれていれば、対極108は画像の一部を塞ぐものとなる。
【0046】
試料位置合わせの後や、データ取得の過程でも、精密なビーム位置合わせを行い、ビーム122が試料104の頂点その他の対象エリアに位置合わせされたままの状態を確保することが好ましい。精密なビーム位置合わせは、非特許文献2および4に記載されたようなFIM法を用いて実施することができる。これらの方法では、FIMはレーザ116と試料104への印加電圧との双方で駆動され、試料位置は一定に調節されるとともに、同時にビームパワーおよび試料電圧を調節して適切な画像が得られるようにされる。しかしながら、レーザ原子プローブ100は1mm未満の径のビーム122を用いることが好ましく、ビーム径は0.5mm未満であることがより好ましいことから(図1bに示すプロトタイプの原子プローブ100ではほぼ0.02mmのビーム径が好ましく用いられている)、先の位置合わせ案はかなり難しく冗漫であることがわかった。それらはビーム位置合わせに対して過敏であり、小径のビームの場合、ビーム位置の僅かな変化に対してもビームパワーおよび/または試料電圧を非常に大きく補正しなければならないからである。FIMの感度がビーム径の逆数にほぼ近似することによる。この結果、小径のビームを試料104に正確に位置合わせするには多大な時間を要することになる。
【0047】
さらに、FIMの感度がビーム径の逆数に応じて変化することを考えると、原子プローブ100がビームのドリフト(小径のビーム122を試料104の頂点から簡単にずらしてしまう)に対して過敏に反応することも明らかである。従って、データ取得は、データ取得セッション時に生じるビームのドリフトによって大きく阻害されることになる。従来のレーザ原子プローブのように1mmを超えるような大径のビームを用いる場合には、ドリフトは大きな問題とはならない。ドリフトが生じても、試料104の頂点には大径のビームが突き当たっている状態となっているからである。しかしながら、ビーム径が振動や熱膨張/収縮などの標準の環境要因から生じるドリフトのレンジに接近し始める0.5mm未満となると、特にビーム径が数100分の1mm以下まで小さくなると、ドリフトは重要な問題となる。データ取得セッションを中断して造影ガスを導入し、FIM法を実施し、真空チャンバ114を抜気してからデータ取得を再開することは明らかに非実用的であるので、改善された精密ビーム位置合わせ方法が用いられれば、原子プローブ100の実用性は大きく増進される。
【0048】
図3は精密なビーム位置合わせのための制御システムの例を示し、ここでは参照番号300をもって制御システムの全体が示されている。データ取得制御システム302は未加工のデータ304を原子プローブ100から受け取り、そのデータ304に従って、試料台102(ひいては試料104)に印加されるDCの試料電圧306を調節する。このデータ取得制御ループは精密なビーム位置合わせプロセスの全体を通じて繰り返され、試料電圧306を継続的に調節して、制御された電界イオン化レート(rate of field ionization)が得られるようにする。データ取得制御システム302はまた、レーザ116にトリガパルス308(図2でもPTとして示されている)を供給し、結果として生じるビームパルスの出発時間を、図2におけるパルスピックオフ信号を介してエンコードする。データ取得制御システム302の制御ループに対して同期または非同期に作動する第2制御ループは、ビーム位置合わせ制御システム310によって実行される。ビーム位置合わせ制御システム310は未加工の、および/または条件付けされた原子プローブデータ312を画像取得ハードウェア(真空チャンバ114内で試料104をモニタするビデオカメラその他の光学撮像デバイス)から受け取り、続いて動作コマンドをビーム位置合わせハードウェア322に提供する(また、そこから位置フィードバック320を受ける)。ビーム位置合わせハードウェア322は、図1aおよび図1bには示されていないが、レーザビーム122の方向を調整するための1以上のアクチュエータによって提供されるものとすることができ、また、レーザビーム122の経路に沿ったレーザ116および/またはミラー、レンズもしくはその他の光学素子の位置を調整するアクチュエータの形態を取り得るものである。
【0049】
ビーム位置合わせ制御システム310の内部で、原子プローブデータ312および画像データ314が条件付けされ、1以上の制御パラメータが生成される。制御パラメータは、レーザビーム122および試料104の相互作用を示すとともに、レーザビーム122の位置合わせ量を精密に(かつ自動的に)調節するべくビーム位置合わせ制御システム310によって用いられるものであって、次のものがある。
【0050】
(1)蒸発レート(検出器106によって検出されるイオンの収集レート):試料の蒸発レートはレーザビーム122が試料104の頂点に近づくほど上昇する。電界の強さはまた、試料104のこのエリアで最も強くなり、従ってレーザビーム122は試料104のどの位置よりも頂点ではより容易にイオン化を生じさせるからである。従って、ビーム位置合わせ制御システム310が試料104上で最大蒸発レートをもつエリアを見つけたとき、このエリアが試料の頂点に対応している可能性が高い。
【0051】
(2)試料104への印加電圧:同様にして、レーザビーム122が試料104の頂点に接近するほど、低い試料電圧で蒸発を生じさせることができる。よって、ビーム位置合わせ制御システム310が、最小電圧を試料104に与えても蒸発を維持できるエリアを試料104上に見つけたとき、このエリアが試料の頂点に対応している可能性が高い。
【0052】
(3)検出イオンの質量分解能:イオンの到着時間は検出器106で決定され、イオン出発時間が既知であれば、イオンの質量/電荷比を既知の値と適切に関連づけることで、イオンの同定(identification)が可能となる。しかしながら、出発時間の不確実性が増すと、関連性も小さくなる。レーザ原子プローブ100においては、レーザビーム122の熱が放散するのに時間がかかると(すなわちレーザパルスの実効幅が広くなるほど)、出発時間の変化も大きくなり始める。熱放散に対する感度は試料の頂点で最大となるので、ビーム位置合わせ制御システム310がレーザビーム122の位置合わせ量を調節し、質量分解能の不確実性が最低となる試料104のエリアを発見した場合、このエリアが試料の頂点に対応している可能性が高い。
【0053】
(4)信号/ノイズ比:質量分解能(上記(3))と同様、原子プローブデータの信号/ノイズ比はビーム位置合わせの質に制限される。レーザビーム122が試料104の頂点から外れると、適時の蒸発が少なくなり、計画通りでない蒸発が増える。従って信号およびノイズフロアは、レーザビーム122が試料104の頂点から外れるにつれて互いに近づき、頂点に近づくにつれて広がってゆく。よって、ビーム位置合わせ制御システム310がレーザビーム122の位置合わせ量を調節し、信号/ノイズ比が最高となる試料104のエリアを発見した場合、このエリアが試料の頂点に対応している可能性が高い。
【0054】
(5)試料からの反射光:画像取得ハードウェア316(すなわち真空チャンバ114内で試料104をモニタするビデオカメラその他の光学撮像デバイス)は試料104をモニタ可能である。レーザビーム122が照射されると、試料104の頂点で反射および/または蛍光発光が強くなる傾向にある。従って、ビーム位置合わせ制御システム310はレーザビーム122の位置合わせ量を調節し、強度(またはその他の反射/発光特性)のピークをもつ試料104のエリアを発見することができ、これによって試料の頂点が照射されている可能性が高いものとなる。
【0055】
(6)試料からの回折光(Diffracted light):回折光は、ビーム122を先に位置合わせすることよりも、ビームの位置合わせ状態が維持されていることをモニタするのに有用である。ここで、試料104が作る遠視野(フラウンホーファー)回折像は画像取得ハードウェア316によってモニタ可能であり、ビーム位置合わせ制御システム310はレーザビーム122の位置合わせ量を調節し、一定の回折像が維持されるようにすることができる。これにより、この位置に集束させるようにすることで、試料104の頂点へのビーム122の位置合わせ状態を確実に維持することの助けとなる。
【0056】
レーザビーム122および試料104の相互作用を示すとともに、ビーム位置合わせ制御システム310に位置合わせの補正を行わせる指示を行うのに用いることのできる制御パラメータは他にもあり得る。また、ビーム位置合わせ制御システム310がこれらの変数の2以上を用いるようにすることも可能であり(かつ望ましいものであり)、選択した変数のそれぞれに適切な重みをつけることで、ビーム位置合わせ制御システム310が試料104の頂点への位置合わせをより迅速に行うことも可能となる。
【0057】
レーザビーム122に対する好適な精密位置合わせプロセスは図4に示すような方法で行われる。まず、ステップ402にて、ユーザは、ビーム位置合わせ制御システム310に対し粗い位置合わせが実行済みであることを確認する。これにより、ビーム122が対極開口110を通り試料104(またはその直近のエリア)に向かうことの合理的保証が提供される。
【0058】
次に、図4のステップ404において、ユーザは走査(sweep)経路を指示する(あるいは、ビーム位置合わせ制御システム310が定義または再呼び出しする)。走査経路はイオン移動軸126に直交する平面内におけるビーム経路であり、それについてビーム122が走査される。同時にビーム位置合わせ制御システム310は、1以上の上記制御パラメータをモニタし(図4のステップ406)、予め定義したいくらかの位置合わせ規準、すなわち試料104の頂点の特性である標準に合うものを探す。ビーム位置合せ制御システム310は例えば、走査位置についての1または複数のパラメータが試料104の頂点にビームが突き当たると期待された範囲内の値を有しているか否か、1または複数のパラメータが走査に沿った位置が先の位置より試料104の頂点近くにあることを示しているか否か、および/または、1または複数のパラメータが試料104の頂点を「最適に」示しているか否か(例えば、走査に沿った位置が、試料104の頂点を示すと考えられる最高の蒸発レートを呈しているか否か)を確認することができる。要は、目標が制御パラメータを最適化する走査上の位置を同定するものであればよく、これによって、試料104の頂点の近くにあると信じられる走査経路に沿ったある1以上のポイントまたはセグメントが位置決めされるものであればよい。
【0059】
走査エリアは多種寸法および形状を取り得るものであり、初期走査エリアは対極開口110の直径のオーダの寸法を有していることが好ましい。例えば、走査エリアを螺旋状、蛇行形状あるいはジグザグ状に走査可能な円形状や矩形状とし、走査エリアの大部分(ひいては試料104のいくらかの部分)が走査されるようにすることができる。あるいは、後述するように、走査エリアを狭いレーンとすることもできるし、直線状の走査エリアに沿って単なる1次元の走査が行われるようにすることもできる。
【0060】
走査エリアの初期走査を実施しながら、ビーム位置合せ制御システム310は、位置合わせ規準に合う制御パラメータを有する走査上のポイントまたは他のサブセット(すなわち試料104の頂点となる、より有力な候補と思われるもの)を同定することになる。初期走査が完了すると、次にビーム位置合せ制御システム310は2経路の1つを取って初期走査エリアを再定義する(図4のステップ408)。
【0061】
(1)位置合わせ規準に最も合う制御パラメータを有する走査上のサブセットをビーム位置合わせ制御システム310が同定したとき、すなわち、ある単一位置(ホーム位置)が走査エリアに沿って走査されたすべての位置の中で最適な制御パラメータを持つ位置であった場合や、収集されたいくつかのポイントが位置合わせ規準に最も近いものであった場合(例えばサンプリングした位置のうち10%が最も有力な制御パラメータを有していた場合)、位置合わせ制御システム310は自動的に新たな走査エリアを再定義する。これは少なくともそのサブセットを包含する範囲まで寸法が縮小されたものである。例えば、単一の最適なホーム位置が同定された場合には、初期走査エリアの50%のサイズとして新たな走査エリアを定義することができ、これは好ましくはホーム位置に中心をもつものである。
【0062】
(2)位置合わせ規準に合う制御パラメータを有する走査上のサブセットをビーム位置合わせ制御システム310が同定しなかったとき(例えば、走査エリアに沿ってサンプリングされたすべての位置が、互いに10%を超えるずれのない制御パラメータを持っていた場合)、走査エリアは縮小ではなく拡大される(例えば、その境界を50%外方に広げる)。そのような結果は試料104の頂点が走査領域内に存在していないことを表している可能性があるからである。
【0063】
他のアプローチも可能である。例えば、ビーム位置合わせ制御システム310が単純に、同じ寸法をもつ他の初期走査エリアを定義することも可能であり、これはイオン移動軸126に垂直な平面において最初の走査エリアからある方向にオフセットしたものとすることができる。この走査エリアにおいても位置合わせ規準に合う制御パラメータをもつ位置を1つも含んでいない場合には、ビーム位置合わせ制御システム310は、ある有力な位置(または位置セット)が見つかるまで、初期走査エリアに関する走査エリアの定義を継続する。
【0064】
ステップ408にて走査エリアが再定義されると、プロセスはステップ410に移行し、ビーム122により新たな走査エリアを走査することができる。ここでは、より精密な走査経路(走査エリアがより小さい場合)、またはより粗い走査経路(走査エリアがより大きい場合)が用いられるが、これは、ビーム122が通る経路同士がより近いものである、またはより離れているという意味である。走査経路は先の走査と同じ形態を取ることが好ましい。すなわち、同じ蛇行形状、ジグザグ状、螺旋状等とすることが好ましく、経路は、新たな走査エリアの面積の大部分をカバーするようスケールを縮めるかまたは広げただけのものである。新たな走査時にも、ビーム位置合わせ制御システム310は位置合わせ規準に対して制御パラメータをモニタし、試料104の頂点の存在を最もよく示す位置(または位置セット)を探す。新たな走査が完了すると、走査エリアがまた再定義(縮小または拡大)され、位置合わせ規準に対して制御パラメータをモニタしながら走査が行われる。このようにしてプロセスが継続して繰り返され、位置合わせ基準が予め定義したあるレベルの精度に合うまで、走査エリアはホーム(最適な)位置(または位置セット)に関して反復しながら絞られてゆくものとなる。これが生じると(例えば同定したホーム位置の制御パラメータが次の走査との間で有意に変化しなかった場合)、走査を停止し、同定したホーム位置が試料104の頂点に対応したものであると仮定することができる。
【0065】
図5a〜図5cは以上のプロセスを模式的に表している。図5aにおいて、エリア502は試料104の頂点(その位置はビーム位置合わせ制御システム310にとって未知である)と同心に置かれている。ビーム位置合わせ制御システム310は走査エリアが定義される任意の位置504を定義し、さらに走査経路506を定義する。この場合走査経路506は、走査エリアを横切って分散する隣接直線/走査路が配列されたものとして定義されている。ビーム122は走査経路506を通り、走査過程で収集された制御データが位置合わせ規準に対して測定される。(走査経路506は連続した線として描かれているが、実際にはそれぞれビーム122からレーザパルスを受ける位置にある一連の離散したサンプリングポイントからなるものでもよいことを理解されたい。)エリア502内の走査経路506に沿った位置が位置合わせ規準に適合すると、最適位置として同定される。従って、新たな走査経路中心(ホーム位置)がエリア502内に定義される(図5b)。そして、新たな走査経路中心508について走査エリアが縮小され、より精密な走査経路510が定義されて、新たなホーム位置(不図示)を同定するべく走査される。そして、走査は次々に、ホーム位置を次々に同定するべく実施されるが、次の走査はその前のホーム位置を中心としたものとなる。これは、ホーム位置が試料104の頂点を特定していることを示すある所望程度の精度に位置合わせ規準が合うまで行われる。
【0066】
図1bに示したプロトタイプの原子プローブ100では、0.02mm径のビーム122が用いられており、試料104の頂点に「たどりつく(home in)」までに多数の反復が行われ得る。ビーム径が小さいほど多数回の反復を要する。反復回数に関わらず、精密なビーム位置合わせプロセスは、ホーム位置の配置のステップおよびホーム位置についての走査エリアの再スケーリングのステップに続いて行われる。
【0067】
上述の精密なビーム位置合わせプロセスには多くの変形が可能である。例えば、ビーム位置合わせ制御システム310は、制御パラメータが位置合わせ規準に集中していた場合には走査経路に沿ったサンプリングレートを増し、拡散が生じた場合にはこれを減じるようにすることができる。拡散がわかった場合には直ちに走査エリアおよび/または走査経路を再定義し、走査エリアが集中が生じているエリアについて直ちに再定義されるようにすることも可能である。加えて、走査エリアおよび走査経路は多種の形態を取り得るものであって、ある走査と次の走査とで同じ形態とする必要はない。例えば、ある走査ではX軸に沿った直線の形態を取り、次の走査では、先の走査におけるホーム位置に関してY軸に沿った直線の形態を取るものであってもよい。また、プロセスが半自動で行われるものであってもよい。例えば、制御パラメータのプロットをユーザに対して表示し、そこでユーザが次の走査に対するホーム位置を手動で定めることができるようにしたものでもよい。
【0068】
精密な位置合わせが実施済みとなると、レーザ原子プローブ100はデータ取得を開始することができる。試料104のイオン化を招くレベルにまで試料104および検出器106をそれぞれ帯電させ、レーザ116をパルス駆動させてイオン化が生じるに十分なエネルギを加えることができる。レーザ116のビーム122は時間とともにドリフトするので、上述した精密なビーム位置合わせプロセスをデータ取得時に定期的に繰り返すことができる。これは、ある回数のデータ取得サイクルが行われた後、および/または、試料104の所望エリアにビーム122がもはや位置していないことをあるパラメータ(蒸発レート,質量分解能など)が示していると考えられたときに行われる。かかる精密位置合わせ時にデータ取得を中止する必要はない。データ取得によって得られたデータを、多くの制御パラメータを発生させるのに用いることができるからである。換言すれば、原子プローブ100からのデータ取得を標準的な方法で行い、取得されたデータを位置合わせ規準に対してモニタすることで、ビーム122がまだ試料104の頂点に向いているかを確認し、位置合わせ規準に合っていなければ、走査エリアを定義し、走査を実施して試料104の頂点のリロケートを行うことができる。
【0069】
レーザ原子プローブ100の好適例を図示し、以上のように説明したが、これはレーザ原子プローブ100に採用し得る特徴と、それらの特徴を組み合わせ得る様々な態様とを単に例示したものである。本発明の範囲内で、レーザ原子プローブ100の種々の変形例を考察することができる。かかる変形例を例示すると次の通りである。
【0070】
第1には、試料の蒸発を生じさせるために原子プローブ100には多種の作動モードが可能であることに注目する。原子プローブ100は1以上の試料台102と、対極108と、一定の、またはパルス状のエネルギを試料104に提供するレーザ106と有している。レーザ116で実現される狭いパルス幅は、より正確なイオン出発時間(ひいてはより良い質量分解能)を特定するのに有用であることから、レーザ116はパルス駆動されることが好ましいが、レーザ116を定常的に作動させ、他の要素でパルスが発生するようにすること(イオン化に必要な過電圧を提供するために)も可能である。対極108および/または試料台102の一方または双方に過電圧パルスが供給されるようにするパルス発生レーザ116を使用することは、ある種の試料104にとって好ましいものとなり得る。パルス間では試料104を低いブースト電圧(よって低い電界および低い機械的ストレス)にしておくことができ、これによってデリケートな試料の残存性(survival)を改善すると同時に、パルス間での誤ったイオン化の発生(これはデータの損失をもたらし易い)を低減することが可能となる。
【0071】
第2には、レーザおよび電子ビーム122ではなく、電磁スペクトルの異なる領域でエネルギを発生する他のビームが用いられてもよい。同様に、マイクロ波など、他の形態のエネルギを用いてブースト(非パルス状の)エネルギが伝えられるようにすることも可能である。
【0072】
第3に、上述した構成および方法のいくつかを導入し、対極108を削除した原子プローブ100(あるいは、対極108は含むがビーム122が対極108を通らないようにした原子プローブ100)とすることも可能である。いずれの場合でも、粗い位置合わせのためにビーム122が対極108を通る上述した方法は適用されない。そこで粗い位置合わせ(精密な位置合わせの前に行われる)のために他の方法を用いることができる。しかし時間と努力は多くかかることになる。
【0073】
第4には、従来の原子プローブにはなかった構成を含め、対極108は多種の寸法および構成を取り得ることが強調される。図6aおよび図6bはその例を示している。図6aにおいては、図1aないし図1bに示した対極108の変形例が示され、この変形例に係る対極600は、基本的な対極109よりも、ある種の付加的で有利な特徴を提供している。ここで、対極600は収束開口を有し、これは、開口壁604に入射する放射エネルギが開口平面606から、すなわち開口602の相対的に大きい入口から、相対的に小さい開口出口608に向かって反射されるよう構成されている。これにより、入射した放射エネルギが集められ、集中することで、開口出口608では強度がより高くなる。集中用開口602の構成は多種の形状とすることができ、レーザビーム122およびイオン移動軸126間の所定の角度(すなわち所定の入射角)に対して最適の集中を提供するべく選択される必要があり得る。集中器(concentrator)設計に関する情報は、例えば、太陽光を集めるのに集中器が通常用いられている太陽エネルギの分野に見出すことができる。従来の他の集中器と、その設計に関係のある議論および考察は、例えば、特許文献9〜特許文献13および、それらで引用された(およびそれらに引用された)文献に見出すことができる。他の有用な参考文献としては、非特許文献14(光集中器について)および非特許文献15(非光学的放射のための集中器について)がある。
【0074】
集中用開口602はいくつかの利点を提供し得る。まず、図6aに示された構成に示唆されるように、対極600は大きい入射角を受容することができることである。ビーム122が直接試料104に突き当たるようにする必要がなく、その代わりに試料104(これは開口出口608の直近に配されて集中ビーム122を受容する)にこれを向かわせる開口壁604に単に突き当たるようにすればよいからである。ビーム122の角度を大きくするほど、レーザをより近く配置でき、また原子プローブ要素をレイアウトするスペースを削減できる。次に、対極600がより大径(および低パワーの)ビームを受容でき、種々の径のビームを自動的に集中させて所望の径にすることができることである。さらには、先の2つの論述から示唆されるように、試料104に正確に位置合わせされていないビーム122を受容することができることである。その程度の位置合わせでも、開口602は、先端またはその他の対象エリア自体が開口出口608に位置合わせされている限りは、概ね受容できるからである。
【0075】
図6bは図6aと同様の構成を示しているが、前述した構成のように、ここではビーム122が開口602を通り、試料104の対象領域に向かうものとなっている。この場合、集中用開口602は補助的なエネルギ(パルス状または定常的な形態のもの)を受けて集めるように設けられており、そのエネルギはイオン化その他の目的のために試料104に向けられるものである。補助的エネルギ源610は他のレーザ、LEDレーザ、LEDまたは一般的なランプとすることができ、スペクトルの可視部であるか非可視部であるかを問わない。また、その光は電極600から離れた位置から発せられたものでもよいし、光ケーブルその他の光導波路によって電極600に導かれるものでもよい。その他の例として、補助的エネルギ源610が無線、マイクロ波またはその他の電磁放射伝送を行うものとすることもできる。補助的エネルギ源610により供給されるエネルギは、イオン化のために追加されるものであってもよいし、あるいは試料104の性質を変更するためなど、イオン化以外の目的のために提供されるものであってもよい。例えば、シリコンベースの試料104は、赤外光を発する補助的エネルギ源610によって照射が行われれば、導電率が変化し得るものである(導電率によっては試料104に供給されるブースト電圧を低くできる)。非レーザおよび/または非イオン化のための補助的エネルギ源のみが開口602を通るエネルギを発し、レーザが含まれないもの(すなわち集中用開口600が、一般的な原子プローブ構成における非レーザの補助的エネルギ源とともに用いられるもの)とすることもできるし、集中用電極600および補助的エネルギ源610が、開口を通らないレーザビームとともに使用されるものとすることもできる。
【0076】
第5には、集中用電極600と同様の効果をもたらすその他の構成も可能である(補助的エネルギ源を持つものでも、持たないものでもよい)。例えば、単一のビームを2以上に分割し、その各々が異なる角度で試料に向かうようにすることもできる。ここで、それらのビームが試料または他の対象領域の照射を行う目的以上のために分けられるもの、および/または、1以上のビームが異なる波長に調節されるもの(上述の非線形クリスタルを使用するもののように)、および/または、1以上のビームは開口を通り、他のビームは開口の外から、試料に向けられるものであってもよい。
【0077】
第6に、先に論じなかったが、技術分野で知られている多くの原子プローブの特徴を原子プローブ100に用いることも可能である。例えば、特許文献6に記載されたような窪んだ覗き窓120(真空チャンバ114内に延在する観察チューブ118の端部に配置される覗き窓120)を用いてレーザ116と試料104の距離を短くすることで、位置合わせの負担を軽減することができる。
【0078】
本発明は、以上述べた好適例に限られることはなく、請求の範囲によってのみ限定される。従って本発明は、請求の範囲の記載と同一または同等であるすべての形態を包含する
ものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1a】レーザ原子プローブ100を単純化して模式的に示す断面図であり、レーザ116が対極108の開口110を通して試料104の頂点にレーザビーム122を向かわせるようにしているものである。
【図1b】図1のレーザ原子プローブ100に対応するプロトタイプのレーザ原子プローブを破断して示す斜視図である。
【図2】レーザ原子プローブ100に対する制御部およびフィードバックタイミングの例を示す線図であり、レーザパルスPLをトリガすることで、レーザパルスPLのタイミングを指示するタイミング(ピックオフ)パルスPPを発生するとともに、イオン蒸発データを捕集できるよう図1aおよび図1bの検出器106をイネーブルにする制御(トリガ)パルスPTのタイミングを示している。
【図3】図1のレーザ116のビーム122を試料104の頂点に対して精密に位置合わせするための制御系の例を示す模式図である。
【図4】図1のレーザ116のビーム122を試料104の頂点に対して精密に自動位置合わせするために用いて好適な処理のステップを示す処理フロー図である。
【図5a】図4の精密なビーム位置合わせ処理の継続的な反復を模式的に示す。
【図5b】図4の精密なビーム位置合わせ処理の継続的な反復を模式的に示す。
【図5c】図4の精密なビーム位置合わせ処理の継続的な反復を模式的に示す。
【図6a】他の例に係る対極600を模式的に示し、これはエネルギ(レーザビーム122または補助的エネルギ源610に由来する)を集中させて試料104に向けるための集中用開口602を有している。
【図6b】他の例に係る対極600を模式的に示し、これはエネルギ(レーザビーム122または補助的エネルギ源610に由来する)を集中させて試料104に向けるための集中用開口602を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器から離隔した試料台を有する原子プローブ内の試料にエネルギビームを位置合わせするために自動化された方法であって、
a.前記試料上またはその近傍にある走査エリア上で、1以上の次元でエネルギビームを走査するステップと、
b.該走査時に、前記エネルギビームと前記試料との間の相互作用を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、
c.当該モニタしたパラメータが予め定められた位置合わせ規準に合っている前記走査のサブセットを定義するステップと、
d.前記走査エリアを縮小した後に前記aのステップから反復を行わせるステップであって、当該縮小した走査エリアが少なくとも前記cのステップのサブセットを包含しているようにする当該反復ステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記走査のサブセットが、前記予め定めた位置合わせ規準に予め定めたレベルの精度で合ったときに前記走査を停止させるステップをさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a.前記サブセットの少なくとも一部分に前記エネルギビームを向けるステップと、
b.前記サブセット上でイオン化が生じるに十分な強度をもつエネルギビームのパルス駆動を行うステップと、
をさらに具えたことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブセットは、前記走査時にモニタされるパラメータが所要の位置合わせ規準に最もよく合っているホーム位置にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
次回以降の走査のいずれもが、先の走査エリアの位置に基く位置にある走査エリアを有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
次回以降の走査のいずれもが、先の走査エリア内に定義されたサブセットに関して中心をおく走査エリアを有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギビームはレーザビームであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギビームは、前記走査時に、前記試料と前記検出器との間に介挿された対極を通って導かれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの収集レートであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器で所要のイオン収集レートを得るのに要する、前記試料台に加えられる電圧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの質量分解能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの反射であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの回折であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
検出器から離隔した試料台を有する原子プローブ内の試料にエネルギビームを位置合わせするために自動化された方法であって、
a.前記試料上またはその近傍にある走査エリア上で、1以上の次元でエネルギビームを走査するステップと、
b.該走査時に、前記エネルギビームと前記試料との間の相互作用を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、
c.当該モニタしたパラメータが予め定められた位置合わせ規準に合っている前記走査上の1以上の位置を同定するステップと、
d.(1)前記cのステップで同定された少なくとも1つの位置を包含するよう前記走査エリアを縮小した後に、または(2)前記cのステップで同定された位置がない場合には前記走査エリアを拡大した後に、前記aのステップから反復を行わせるステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項15】
所定のレベルの精度で、前記予め定めた位置合わせ規準に合っている位置が前記cのステップで同定されたときに前記走査を停止させるステップをさらに具えたことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a.前記予め定めた位置合わせ規準に所定の精度で合っている位置に前記エネルギビームを向けるステップと、
b.前記位置でイオン化が生じるに十分な強度をもつエネルギビームのパルス駆動を行うステップと、
をさらに具えたことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
減少した走査エリアを有する走査のいずれもが、先の走査に沿った少なくとも1つの位置に基く位置で設定された走査エリアを有し、前記少なくとも1つの位置では前記モニタされたパラメータが前記予め定めた位置合わせ規準に合っていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
減少した走査エリアを有する走査のいずれもが、先の走査に沿った少なくとも1つの位置に関して中心をおく走査エリアを有し、前記少なくとも1つの位置では前記モニタされたパラメータが前記予め定めた位置合わせ規準に合っていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記エネルギビームはレーザビームであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記エネルギビームは、前記走査時に、前記試料と前記検出器との間に介挿された対極を通って導かれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの収集レートであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器で所要のイオン収集レートを得るのに要する、前記試料台に加えられる電圧であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの質量分解能であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの反射であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの回折であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項26】
検出器から離隔した試料台を有する原子プローブ内の試料にエネルギビームを位置合わせするために自動化された方法であって、
a.前記試料台にエネルギビームを向けるステップと、
b.予め定めた寸法の走査エリア上で、1以上の次元でエネルギビームを走査するとともに、前記エネルギビームと前記試料との間の相互作用を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、
c.当該モニタしたパラメータが所要の位置合わせ規準に合っている前記走査上のホーム位置を定めるステップと、
d.(1)前記走査エリアをリサイズし、(2)前記ホーム位置またはその周囲で前記前記走査を開始してから、前記bのステップから反復を行わせるステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記ホーム位置が、前記予め定めた位置合わせ規準に所定のレベルの精度で合ったときに前記走査を停止させるステップをさらに具えたことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a.前記ホーム位置に前記エネルギビームを向けるステップと、
b.前記試料上でイオン化が生じるに十分な強度をもつエネルギビームのパルス駆動を行うステップと、
をさらに具えたことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
a.それぞれの前記走査時に、前記モニタされたパラメータの少なくとも1つの変化の度合いをモニタするステップをさらに具え、
b.当該変化の度合いが所定のスレッショルドに至っていない場合には、前記リサイズを行うステップは前記走査エリアを拡大する、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
a.それぞれの前記走査時に、前記モニタされたパラメータの少なくとも1つの変化の度合いをモニタするステップをさらに具え、
b.当該変化の度合いが
(1)所定のスレッショルドに至っている場合には、前記リサイズを行うステップは前記走査エリアを縮小し、
(2)所定のスレッショルドに至っていない場合には、前記リサイズを行うステップは前記走査エリアを拡大する、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
それぞれの走査は、先の走査の方向とは異なる方向で行われることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
次回以降の走査のいずれもが、先の走査エリアのホーム位置に基いて設定された位置にある走査エリアを有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項33】
次回以降の走査のいずれもが、先の走査エリアのホーム位置に関して中心をおく走査エリアを有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記エネルギビームはレーザビームであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記エネルギビームは、前記走査時に、前記試料と前記検出器との間に介挿された対極を通って導かれることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの収集レートであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器で所要のイオン収集レートを得るのに要する、前記試料台に加えられる電圧であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記検出器によって検出されるイオンの質量分解能であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの反射であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記モニタされるパラメータの1つは、前記エネルギビームの回折であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項41】
検出器から離隔した試料台を有する原子プローブ内の試料にエネルギビームを位置合わせするために自動化された方法であって、
a.前記試料上またはその近傍にある走査エリア上で、1以上の次元でレーザビームを走査するステップと、
b.該走査時に、
(1)前記検出器により検出されるイオンの収集レート、
(2)前記検出器により検出されるイオンの質量分解能、
(3)前記試料台に加えられる電圧、
(4)前記レーザビームの反射部分、および
(4)前記レーザビームの散乱部分
の1以上のパラメータをモニタするステップと、
c.当該モニタしたパラメータが予め定められた位置合わせ規準に合っている前記走査上の1以上の位置を同定するステップと、
d.(1)前記cのステップで同定された少なくとも1つの位置を包含するよう前記走査エリアを縮小した後に、または(2)前記cのステップで同定された位置がない場合には前記走査エリアを拡大した後に、前記aのステップから反復を行わせるステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記エネルギビームは、前記走査時に、前記試料と前記検出器との間に介挿された対極を通って導かれることを特徴とする請求項41に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2008−502104(P2008−502104A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515033(P2007−515033)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/026823
【国際公開番号】WO2005/122210
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506323094)イマゴ サイエンティフィック インストルメンツ コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】