説明

レーザ墨出し装置

【課題】レーザ墨出し装置において、複数本から成る脚部が閉じられている閉状態を、より強固に維持する。
【解決手段】レーザ墨出し装置1は、ライン状光線を照射する光学本体2と、光学本体2をジンバル機構31によって揺動自在に懸架し光学本体2を覆う外郭3と、外郭3の底部に取り付けられ外郭3を支持し、かつ、回動することで開閉する複数本の脚部4と、脚部4の閉状態において光学本体2の揺動を固定するロック部5とを備える。複数本の脚部4は、その底面側に、突出部を有する脚部4と、当該突出部に嵌合する窪み部を有する脚部4とを備え、突出部にはその内側面に凹部又は凸部が形成され、窪み部には当該凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部が形成される。この構成により、複数本から成る脚部4が閉じられている閉状態を、より強固に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面や天井面に線状、もしくは点状のレーザ光を照射して墨出し作業に用いられるレーザ墨出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ墨出し装置は、例えば、建築業者が施工現場で、水平レベルや鉛直点などの基準出しのための作業道具として一般的に用いられている。レーザ墨出し装置は、ライン状のレーザ光線を天井などの壁面上に照射して、その指示したポイントやライン上を基準に建具(壁、棚、照明)等が設置される。このため、レーザ墨出し装置は、高い位置精度が必要とされ、内部の光学系部品の組立にも高精密が要求される。
【0003】
レーザ墨出し装置は精密機械であるため、ユーザは取り扱い時や持ち運び時に落下や転倒等によりレーザ墨出し装置に衝撃を与えないよう注意する必要がある。しかし、レーザ墨出し装置が使用される作業現場は、建設現場などの苛酷な環境であるため、レーザ墨出し装置が落下や転倒などの衝撃を受ける可能性が高く、内部の光学系部品の破損や精度悪化につながりやすい。そのため、作業者はレーザ墨出し装置の取り扱い時や、持ち運び時も衝撃(落下、転倒)を与えないように注意が要求される。また、レーザ墨出し装置の未使用時も光学部品が安全に固定されて、不要な衝撃から守られて光学部品の精度を維持する必要がある。
【0004】
そのため、例えば、図8に示すように、従来のレーザ墨出し装置80は、ジンバル機構部81aに懸架され、ライン状光線を照射する光源81bを内蔵した光学本体81と、光学本体81を支持するロック部82とを備える。また、これらを覆う外郭部83と、外郭部83の底部に付設されて外郭部83を支持し、かつ回動することで開閉される複数本の脚部84とを備える。
【0005】
ロック部82は、脚部84が開かれると回動されて、ロック部82と光学本体81の底側面に形成された溝部との係合が外れてロックが解除され、光学本体81は揺動自在となる。一方、図8(c)に示すように、脚部84が閉じられると、ロック部82が回動されて光学本体81に形成された溝部81aと係合して、光学本体81の揺動がロックされて衝撃から光学本体81を守る。このように、脚部84の開閉に伴って、光学本体81がロック部82によりロックもしくはそのロックが解除されることで光学本体81の精度を適切に維持できる。
【0006】
そして、光学精度を保つため、例えば、脚部の閉動作によって光学本体の揺動をロックし、かつ、防塵性を高くしたレーザ墨出し装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、支持脚を装置本体に対して折り畳んで収納することにより、装置本体のコンパクト化を図ったレーザ墨出し装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−38822号公報
【特許文献2】特開2008−267825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のレーザ墨出し装置80では、転倒時や持ち運び時に、図8(c)の矢印に示すように、光学本体81の自重によってロック部82が押圧され、脚部84が開いてしまう場合がある。この場合、ロック部82による光学本体81のロックが解除され、ロック部82が光学本体81の揺動を防止するという固定効果が十分に得られないという問題がある。
【0009】
また、転倒時や持ち運び時に脚部84が勝手に開いてしまうと、光学本体81が衝撃の影響を直接受け、内部の光学本体81が破損してしまうという欠点がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数本から成る脚部が閉じられている閉状態を、より強固に維持できるレーザ墨出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、ライン状光線を照射する光学本体と、前記光学本体をジンバル機構によって揺動自在に懸架し該光学本体を覆う外郭と、前記外郭の底部に取り付けられ該外郭を支持し、かつ、回動することで開閉する複数本の脚部と、前記脚部の閉状態において前記光学本体の揺動を固定するロック手段と、を備えるレーザ墨出し装置において、前記複数本の脚部は、その底面側に、突出部を有する脚部と、当該突出部に嵌合する窪み部を有する脚部とを備え、前記突出部にはその内側面に凹部又は凸部が形成され、前記窪み部には当該凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部が形成され、前記脚部が閉じられたとき、隣り合う前記脚部に形成された前記凹部と前記凸部とが嵌合されて前記脚部の閉状態が維持される一方、前記脚部が開かれたとき、前記凹部と前記凸部との嵌合が外されて前記閉状態が解除されることを特徴とするものである。
【0012】
このレーザ墨出し装置において、前記複数本の脚部は、前記突出部の内側面に凹部を有する脚部が2本、及び前記窪み部に当該凹部と嵌合する凸部を有する脚部が1本で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーザ墨出し装置によれば、脚部の底面側の突出部に形成された凹部又は凸部と、隣り合う脚部の底面側の窪み部に形成された凸部又は凹部とが互いに嵌合するため、脚部の閉状態が、より強固に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ墨出し装置の斜視図である。
【図2】(a)同レーザ墨出し装置の閉脚時の部分断面図、(b)同レーザ墨出し装置の開脚時の部分断面図である。
【図3】(a)同レーザ墨出し装置の開脚時の脚部の斜視図、(b)同レーザ墨出し装置の閉脚時の脚部の斜視図である。
【図4】同レーザ墨出し装置に備わる脚部の部分断面図である。
【図5】(a)同レーザ墨出し装置に備わる脚部の底部の斜視図、(b)同レーザ墨出し装置に備わる脚部の底部の断面図である。
【図6】(a)同レーザ墨出し装置の閉脚時の脚部の部分断面図、(b)同レーザ墨出し装置の開脚時の脚部の部分断面図である。
【図7】同上実施の形態の変形例に係るレーザ墨出し装置の脚部の部分断面図である。
【図8】(a)従来のレーザ墨出し装置の斜視図、(b)同レーザ墨出し装置における閉脚時のロック部の斜視図、(c)同レーザ墨出し装置の閉脚時の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るレーザ墨出し装置について図面を参照して説明する。レーザ墨出し装置1は、ポイント状ビーム光を照射する円柱形状の光学本体2と、光学本体2をジンバル機構31によって揺動自在に懸架し光学本体2を覆う外郭3と、外郭3の底部の周囲に回動自在に取り付けられ外郭3を設置面に支持する脚部4とを備えている。また、レーザ墨出し装置1は、光学本体2の揺動を固定するロック部(ロック手段)5を備えている。
【0016】
光学本体2は、ビーム光Lを出射する光源21と、出射されたビーム光Lを点形状に収束するレンズ22とを有する出力部23を底部に備えている。ここに示す出力部23は下ポイント用のビーム光Lを照射するものであるが、下ポイント用のビーム光Lの他に、垂直や水平なライン状ビーム光や上ポイント用のビーム光を照射する出力部をも備えている(図示せず)。光学本体2はジンバル機構31によって外郭3に懸架されているので、外郭3が設置された面の傾きが所定の範囲内であれば、光学本体2の位置を基準とした上下ポイント状ビーム光や垂直、水平ライン状ビーム光を照射することができる。
【0017】
外郭3は、光学本体2を内部に収容する円筒形状で形成され、レーザ光を通過させるための開口窓を有し、3本の脚部4によって支持されている。脚部4は、3本の脚部41〜43で構成され、各脚部41〜43の上部にはロック部5と当接する突起部40が設けられている。
【0018】
ロック部5は、図2に示すように、回動自在なレバー51と、レバー51を回動させる回転軸52とを有する。レバー51は、外郭3の外部に臨む一端に突起部40と当接する窪み部53を有し、外郭3の内部に臨む他端に光学本体2側に曲げられた押圧部54を有している。脚部4が開閉すると、突起部40が回動し、突起部40に当接した窪み部53も回動する。窪み部53の回動によって押圧部54も回動し、光学本体2の側面下部には、この押圧部54と係合する溝部24が設けられている。
【0019】
すなわち、ロック部5は、図2(b)に示すように、脚部4が開かれるとこの動作に伴い回転軸52を中心に回動されて、ロック部5の押圧部54と光学本体2の溝部24との係合が外れて光学本体2のロックが解除される。これにより、光学本体2は揺動自在となる。一方、脚部4が閉じられると、図2(a)に示すように、ロック部5が回動されて、ロック部5の押圧部54と光学本体2の溝部24とが係合して、光学本体2の揺動がロックされる。なお、ロック部5の形状は一例であって、その他、歯車形状など脚部4の回動に伴って光学本体2をロック又はロック解除する機構を有していればよい。
【0020】
次に、脚部4の底面側の構成に関して図4及び図5を参照して説明する。脚部4は、3本の脚部41〜43によって構成され、ネジなどの回転軸4aによって回動自在に外郭3の底部に取り付けられる。レーザ墨出し装置1が使用されるときには、図3(a)に示すように、3本の脚部41〜43が開かれて設置面上に設置され、使用されないときには、図3(b)に示すように、脚部41〜43が閉じられて外郭3に連続する棒状をなして一体固定される。
【0021】
本実施の形態では、脚部41の底面側の突出部41cの内側面には凹部41a、脚部42の底面側に突出部の内側面には凹部42aが形成される。また、脚部41,42と隣接する脚部43の底面側には突出部41cと嵌合する窪み部43cにおいて、凹部41aと嵌合する凸部43a、及び凹部42aと嵌合する凸部43bが2箇所で形成される。
【0022】
脚部43の窪み部43cに形成される凸部43a,43bは、図4に示すように、設置面側に突出し、その先端部が半円弧形状となっている。一方、図5に示すように、脚部41は、垂直断面がL字形状となるような基部41b及び突出部41cを備え、この突出部41cの内側面には隣り合う脚部43の凸部43aと嵌合する凹部41aが形成されている。脚部42も脚部41と同様の形状を有する。
【0023】
なお、脚部43に形成される凸部43a,43bは、その先端部を半円弧形状として説明したが、この半円弧形状に限定されるものではなく、円錐台や角錐、先鋭形状などの他の形状であっても同様の効果が得られる。また、凸部43a,43bの材質は、剛体材料としても構わないし、ゴムのような弾性材料としても構わない。
【0024】
次に、レーザ墨出し装置1の動作について図6を参照して説明する。ここでは、理解を容易にするため脚部41及び脚部43を用いて説明する。図6(a)に示すように、脚部4が閉じられているときは、脚部41の凹部41a及び脚部41に隣り合う脚部43の凸部43aが嵌合されて脚部4の閉状態が維持される。一方、図6(b)に示すように、脚部4が開かれるときには、脚部43の底面側は、点線Mで示すように、凹部41aが凸部43aの先端部を乗り越えるような軌道で回動して、脚部4の閉状態が解除される。
【0025】
以上のように、本実施の形態に係るレーザ墨出し装置1においては、脚部4が閉じられることにより脚部4の底面側に設けられた凹部41a及び凸部43a、並びに凹部42a及び凸部43bが互いに嵌合して脚部4の閉状態が、より強固に維持される。このため、転倒時や持ち運び時などに光学本体2の自重によってロック部5が押圧されて脚部4が開くことを確実に防止して、ロック部5が解除された光学本体2が揺動して光学精度が低下したり故障したりすることを確実に防止できる。
【0026】
また、脚部4は、突出部41cの内側面に凹部41aを有する脚部41、突出部の内側面に凹部42aを有する脚部42、及び窪み部43cに当該凹部41a,42aと嵌合する凸部43a,43bを有する脚部43が1本で構成される。この構成により、脚部4の閉状態を、より強固に保持できる。
【0027】
(変形例)
本実施の形態の変形例について図7を参照して説明する。本変形例では、図7に示すように、脚部43が開かれるときには、点線Nで示すように、凸部43aの先端部が脚部4の回動軸(回転中心)から離れるような軌跡で回動する構造となっている。従って、本変形例では、上記実施の形態の効果に加えて、凸部43aの先端が、より一層深く、凹部41aに嵌り込むことになり、脚部43が単独で開くことが確実に防止できる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、レーザ墨出し装置1において3本の脚部41〜43のうち、1本の脚部の底面側に凹部、残り2本の脚部の底面側に凸部を設けても同様の効果が得られる。また、脚部4の閉状態を維持するために、脚部4に磁石などの引き合う部材を設けることも考え得る。
【符号の説明】
【0029】
1 レーザ墨出し装置
2 光学本体
3 外郭
31 ジンバル機構
4 脚部
41,42,43 脚部
41a,42a 凹部
43a,43b 凸部
41c 突出部
43c 窪み部
5 ロック部(ロック手段)
51 レバー
52 回転軸
53 窪み部
54 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状光線を照射する光学本体と、前記光学本体をジンバル機構によって揺動自在に懸架し該光学本体を覆う外郭と、前記外郭の底部に取り付けられ該外郭を支持し、かつ、回動することで開閉する複数本の脚部と、前記脚部の閉状態において前記光学本体の揺動を固定するロック手段と、を備えるレーザ墨出し装置において、
前記複数本の脚部は、その底面側に、突出部を有する脚部と、当該突出部に嵌合する窪み部を有する脚部とを備え、前記突出部にはその内側面に凹部又は凸部が形成され、前記窪み部には当該凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部が形成され、
前記脚部が閉じられたとき、隣り合う前記脚部に形成された前記凹部と前記凸部とが嵌合されて前記脚部の閉状態が維持される一方、前記脚部が開かれたとき、前記凹部と前記凸部との嵌合が外されて前記閉状態が解除される、ことを特徴とするレーザ墨出し装置。
【請求項2】
前記複数本の脚部は、前記突出部の内側面に凹部を有する脚部が2本、及び前記窪み部に当該凹部と嵌合する凸部を有する脚部が1本で構成される、ことを特徴とする請求項1記載のレーザ墨出し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−108867(P2013−108867A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254730(P2011−254730)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)