レーザ放射によって材料を処理する装置および方法
【課題】レーザ・パルスを導入するときに、定義済シーケンスを遵守する必要なしで、材料内で良好な品質の切除を生成すること。
【解決手段】レーザ放射によって材料を処理する装置は、材料(5)と相互作用するためのパルス・レーザ放射(3)を放出するレーザ放射源(S)と、パルス処理用レーザ放射(3)を材料(5)内の相互作用の中心(7)に収束させる光学部品(6)と、材料(5)内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニット(10)であって、各処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で材料(5)と相互作用し、それにより、材料(5)が、相互作用のゾーン(8)内で分離する、走査ユニット(10)と、相互作用のゾーン(8)の順次配置によって、切除表面(9)が、材料(5)内に生成されるように、走査ユニット(10)およびレーザ放射源(S)を制御する制御ユニット(17)とを備える。
【解決手段】レーザ放射によって材料を処理する装置は、材料(5)と相互作用するためのパルス・レーザ放射(3)を放出するレーザ放射源(S)と、パルス処理用レーザ放射(3)を材料(5)内の相互作用の中心(7)に収束させる光学部品(6)と、材料(5)内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニット(10)であって、各処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で材料(5)と相互作用し、それにより、材料(5)が、相互作用のゾーン(8)内で分離する、走査ユニット(10)と、相互作用のゾーン(8)の順次配置によって、切除表面(9)が、材料(5)内に生成されるように、走査ユニット(10)およびレーザ放射源(S)を制御する制御ユニット(17)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ放射によって材料を処理する装置に関し、前記装置は、材料と相互作用するための、パルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットとを備える。
【0002】
本発明は、さらに、レーザ放射によって材料を処理する方法に関し、方法において、パルス処理レーザ放射が、生成されて、材料内の相互作用の中心に相互作用のために収束され、材料内の相互作用の中心の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離され、切除表面が、相互作用のゾーンの順次配置によって材料内に生成される。
【0003】
本発明は、さらに、レーザ放射によって材料を処理する装置に関し、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に光学軸に沿って収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットとを備える。
【0004】
本発明は、なおさらに、レーザ放射によって材料を処理する方法に関し、方法において、パルス処理レーザ放射が、生成され、光学軸に沿う材料内の相互作用の中心に相互作用のために収束され、材料内の相互作用の中心の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離され、切除表面が、相互作用のゾーンの順次配置によって材料内に生成される。
【背景技術】
【0005】
材料を処理する、これらの装置および対応する方法は、透明材料内に湾曲切除表面を生成するのに特に適する。湾曲切除表面は、たとえば、レーザ手術法において、特に、眼科手術において生成される。湾曲切除表面を生成するときに、処置レーザ放射は、組織内で、すなわち、組織の表面下で、相互作用の中心に収束される。相互作用の周囲ゾーン内の材料層は、それにより分離される。ゾーンは、通常、焦点に相当する。レーザ・パルス・エネルギーは、通常、組織内の光ブレークスルーが、相互作用のゾーン内に形成されるように選択される。
【0006】
組織内で、レーザ放射パルスによって始動された複数の工程が、光ブレークスルー後に、ある時間シーケンスで起こる。最初に、光ブレークスルーは、材料内にプラズマ・バブルを発生する。こうしたプラズマ・バブルは、一旦形成されてしまうと、膨張ガスによって成長する。次に、プラズマ・バブル内で発生したガスは、周囲材料によって吸収され、バブルは、再び消える。しかし、この工程は、バブルの形成自体よりもずっと長くかかる。材料構造内に位置し得る材料界面において、プラズマが発生する場合、材料除去が、前記界面からもたらされる。こうして、これは、光アブレーションと呼ばれる。予め接続されている材料層を分離するプラズマ・バブルに関連して、通常、光切断のことが言及される。説明を簡単にするために、全てのこのような工程は、ここでは、「相互作用(interaction)」という用語で要約される。すなわち、この用語は、光ブレークスルーのみでなく、任意の他の材料分離作用もまた含む。
【0007】
高精度のレーザ手術法の場合、レーザ・ビーム作用の高い局在化を確保し、可能性のある場合、隣接組織に対する副次的な損傷を回避することが不可欠である。したがって、レーザ放射をパルス形態で印加し、その際、光ブレークスルーを始動するのに必要とされるエネルギー密度についての閾値が、個々のパルスにおいてのみ超えるようにすることが、従来技術では一般的である。この観点から、相互作用ゾーンの空間範囲は、2psのパルス継続時間を超える限り、実質的に、パルス継続時間にのみ依存することが、米国特許第5984916号明細書によって明確に示されている。数百fsの値の場合、相互作用ゾーンのサイズは、パルス継続時間にほとんど無関係である。そのため、非常に短い、すなわち、1ps未満のパルスと組み合わせた、レーザ・ビームの高い収束によって、相互作用ゾーンをピンポイントの精度で材料内に導入することが可能になる。
【0008】
こうしたパルス・レーザ放射の使用は、最近、特に、眼科学における視覚障害のレーザ手術補正について、確立されてきた。目の視覚障害は、角膜およびレンズの屈折特性が、網膜上への最適収束をもたらさないことによることが多い。このタイプのパルス駆動もまた、本明細書で説明される本発明の主題である。
【0009】
上述した米国特許第5984916号明細書には、光ブレークスルーを適切に発生させることによって切除を生成し、それにより、最終的に、角膜の回折特性に選択的な影響を及ぼす方法が記載されている。切除表面が、目の角膜内でレンズ形状の部分容積を分離するように、複数の光ブレークスルーが順次に配置される。残りの角膜組織から分離されるレンズ形状の部分容積は、次いで、横方向に開く切除を介して角膜から除去される。部分容積の形状は、形状の除去によって、視覚障害の所望の補正がもたらされ、角膜の屈折特性が変わるように選択される。ここで必要とされる切除表面は、湾曲し、かつ、部分容積を囲み、したがって、焦点の3次元シフトを必要とする。したがって、レーザ放射の2次元偏向は、第3の空間方向への焦点の同時シフトと組み合わされる。これは、ここで、「走査(scanning)」、「シフト(shifting)」、または「偏向(deflecting)」という用語によって要約される。
【0010】
材料内で光ブレークスルーの順次配置によって切除表面を構成するとき、光ブレークスルーは、こうして発生したプラズマが組織によって再び吸収されるまでにかかる時間の何倍も速く発生する。光ブレークスルーが発生した後に、光ブレークスルーが発生した焦点の目の角膜内で、プラズマ・バブルが形成され、そのプラズマ・バブルが、隣接するバブルと一緒に成長して、マクロバブルを形成する可能性があることが、エー.ハイスターカンプ(A.Heisterkamp)等の刊行物(Der Ophthalmologe、2001、98:623〜628)から公知となっている。刊行物では、依然として成長するプラズマ・バブルの結合は、切除の品質を低下させることが説明されている。したがって、前記刊行物は、個々のプラズマ・バブルが、互いに直に隣り合って発生しない方法を提案する。代わりに、順次に発生する光ブレークスルー間で螺旋形状プロファイル内にギャップが残るようにし、そのギャップが、螺旋を通る第2パスにおいて光ブレークスルーおよびその結果生じるプラズマ・バブルで満たされる。これは、隣接するプラズマ・バブルの結合を防止し、切除の品質を改善することを意図している。
【0011】
切除の良好な品質を達成するために、従来技術は、光ブレークスルーが発生する定義済シーケンスを使用する。これは、成長するプラズマ・バブルの結合を防止することを意図される。もちろん、できる限り少数のブリッジがそれぞれ材料または組織を接続するような切除が望まれるため、発生するプラズマ・バブルは、最終的には、いずれにしても一緒に成長して、切除表面を形成しなければならない。そうでなければ、材料の接続が、残り、切除が、不完全であることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、レーザ・パルスを導入するときに、定義済シーケンスを遵守する必要なしで、材料内で良好な品質の切除を生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、最初に述べた一般的なタイプの装置による第1の変形例において達成され、第1の変形例では、隣接する相互作用の中心が、互いから空間距離a≦10μmに位置するように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御する。第1の変形例では、目的は、さらに、最初に述べた一般的なタイプの方法によって達成され、方法では、隣接する相互作用の中心が、空間距離a≦10μmに位置する。
【0014】
本発明の第2の変形例では、目的は、最初に述べた一般的なタイプの装置によって達成され、装置では、それぞれの相互作用の中心について、パルスの照射量Fが、5J/cm2未満である。第2の変形例では、目的はまた、最初に述べた一般的なタイプの方法によって達成され、方法では、相互作用のゾーンは、その照射量Fが、5J/cm2未満であるパルスにさらされる。
【0015】
本発明の第3の変形例では、目的は、2番目に述べた一般的なタイプの装置によって達成され、装置では、切除表面が、光学軸に沿って互いに隣接して位置する2つの部分からなるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御し、かつ、制御ユニットが、時間間隔t≦5s内で印加されるレーザ・パルスを用いて、2つの部分を少なくとも部分的に照射する。同様に、第3の変形例では、目的は、2番目に述べたタイプの方法によって達成され、方法では、切除表面が、光学軸に沿って互いに隣接して位置する2つの部分からなり、2つの部分が、時間間隔t≦5s内で印加されるレーザ・パルスに少なくとも部分的にさらされる。
【0016】
本発明は、材料内の相互作用のゾーンが、互いに影響を及ぼすという発見に基づく。そのため、レーザ・ビーム・パルスの影響は、以前のレーザ暴露が、相互作用の中心の近傍で既に起こった範囲に依存する。このことから、光ブレークスルーを生成するか、または、材料分離を引き起こすのに必要とされるパルス・エネルギーが、最も近い相互作用の中心からの距離に依存すると、本発明者等は結論付けた。本発明による変形例は全て、この発見を利用する。
【0017】
本発明の変形例1による、相互作用の中心間の距離、たとえば、隣接する光ブレークスルーの焦点位置間の距離についての最小化は、処理用パルス・エネルギーが減少することを可能にする。パルス・エネルギーを記述するパラメータは、照射量、すなわち、面積当たりのエネルギー、すなわち、エネルギーの面積密度である。こうして、10μm未満の距離を有する本発明の変形例1は、本発明者等に初めて帰するものと考えられる発見の態様に対処する。
【0018】
別の態様は、処理用レーザ・パルスの照射量が、今や著しく減少することである。このため、変形例2は、変形例1と同じ態様に関連するが、距離についての上限を規定するのではなく、照射量についての上限を規定する。
【0019】
したがって、本発明の全ての変形例は、パルス・レーザ放射を導入することによって切除を生成するための基本条件を提供し、前記基本条件は、すぐ隣の入力パルスの影響を考慮する。パルス長に関して、米国特許第5984916号明細書の教示が、ここで適用される。すなわち、1ps未満の、好ましくは、数百fs、たとえば、300〜500fsのパルスが使用される。本発明が距離の上限を定義する場合、その距離は、最も近い相互作用の中心からの距離を指す。切除表面は、通常、複数の順次に配置された相互作用の中心によって生成されるため、単純にするために、距離は、材料内のレーザ・パルスについてのレーザ焦点間隔の平均値であると理解されてもよい。切除表面に沿って実質的に2次元である相互作用の中心の格子が、非対称である場合、距離は、固有の平均間隔であることもできる。レーザ・パルスが材料内で処理作用を生じないように、パルス状レーザ放射源を使用すること、および、前記放射源によって放出されるレーザ・パルスの一部を変更することが従来技術において知られている。そのため、レーザ放射パルスの一部のみが、処理のために使用されるであろう。本説明が、「レーザ放射パルス(laser radiation pulse)」、「レーザ・パルス(laser pulse)」、または「パルス(pulse)」という用語を使用するときはいつでも、それは、常に、材料との相互作用のために、設けられた、または、形成された、または、それに適した、処理用レーザ・パルス、すなわち、レーザ放射パルスを意味する。
【0020】
パルス・ピーク性能が減少するため、機器の複雑さは、本発明によって減る。相互作用の中心の距離が減少するため、処理用継続時間が一定に維持される場合、パルス繰り返し周波数が増加する。さらに、より小さなプラズマ・バブルが、光ブレークスルーの場合に生成され、したがって、切除がより薄くなる。しかし、従来技術は、常に、相互作用の中心間の比較的長い距離を用いて動作し、また、その距離に適切に適応した、光ブレークスルーおよび大きなプラズマ・バブルを確実に得るために、パルスの照射量が適度に高く選択された。
【0021】
同時に、より低い照射量はまた、材料処理中に作業要員の危険有害性を減少させる。これは、眼科方法において、きわめて重要である。危険有害性クラス1Mのレーザを用いて作業することが現在可能であることが特に有利であることがわかるが、従来技術では、危険有害性クラス3が必要とされた。このクラスは、作業要員、たとえば、医師または看護婦に、当然のことながら患者を不安に感じさせる保護ゴーグルを装着することを要求した。こうした保護対策は、本発明により現在可能であるクラス1Mのレーザの場合、もはや必要ではない。
【0022】
したがって、本発明は、さらなる実施形態または独立した発明として、レーザ放射によって材料を処理する装置を提供し、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射の放出源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットとを備え、また、前記装置は、さらに、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットを備え、3未満の危険有害性クラスのレーザ、好ましくは、危険有害性クラス1Mのレーザが使用される。危険有害性クラスの指示は、2005年10月13日に施行されたバージョンがIEC60825−1の国際規格に関連する。同様に、(独立の発明またはさらなる実施形態として)レーザ放射によって材料を処理する装置が提供され、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス・レーザ放射を光学軸に沿って材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各レーザ・パルスは、前記パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットとを備え、また、前記装置は、さらに、走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットを備え、3未満の危険有害性クラスのレーザ、好ましくは、危険有害性クラス1Mのレーザが使用される。これはまた、さらなる実施形態として、それぞれ、上述した装置のそれぞれについて、または、上述した方法のそれぞれについて有用である。特に明示的に指示しなければ、これは、それぞれの説明された有利な設計、さらなる実施形態または実現態様に当てはまるものとする。
【0023】
本発明者等によって実施された試験が示したところでは、光ブレークスルーは、式M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)による、隣接する相互作用の中心の距離aの関数である定義済閾値Mを超えるときのみに起こる。光ブレークスルーは、閾値Mを超えるパルス照射量のそれぞれの個々のレーザ・パルスについてのみ保証される。前記式におけるパラメータrは、隣接する相互作用のゾーンの影響についての実験的に認識された平均範囲を表す。用途に応じて、変動が存在する可能性があるため、3〜10μmの値の変動が、可能であり、好ましくは、r=5μmである。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の変形例2について述べたパルス照射量の上限は、隣接する相互作用の中心の距離に基づく閾値の上述の依存性に基づくであろう。したがって、照射量が、3J/cm2未満の過剰なエネルギーだけ閾値Mを超える、さらなる実施形態が好ましい。それによって定義される範囲は、特に良好な切除の品質を提供し、一方、光ブレークスルーの始動が、同時に保証される。過剰のエネルギーがさらに増加する場合、不必要に大きなプラズマ・バブルが発生することになり、切除の品質は低下することになる。
【0025】
しかし、切除を生成することは、今や、光ブレークスルーを用いて作業することをもはや厳格には要求しない。相互作用のゾーンがオーバラップする場合、材料を分離することができ、そのため、光ブレークスルーの始動についての閾値未満のパルス・レーザ放射のエネルギーでも、切除表面を形成することが可能であることを本発明者は発見した。したがって、さらなる実施形態が提供され、さらなる実施形態では、2つの順次パルスの相互作用の中心の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、それにより、レーザ放射を用いて順次に照射される材料の容積、すなわち、相互作用のゾーンの相互オーバラップが存在する。この実施形態は、プラズマ・バブルの形成無しで、材料分離を生じ、特に平滑な切除をもたらす。
【0026】
有利には、相互作用のゾーンがオーバラップするために、組織分離作用がやはり達成されるため、次いで、レーザ・パルスの照射量は、既に説明した閾値より減少する可能性がある。そのため、個々のレーザ・パルスは、もはや確実に光ブレークスルーを発生しない。すなわち、組織の分離は、相互作用のゾーンがオーバラップする場合のみに生じる。これは、最新の大きさより小さいパルス・エネルギーを可能にする。同時に、時間的に順次に発生する相互作用のゾーンがオーバラップするために、切除の品質が再び向上する。そのため、相互作用の中心の距離は、ゼロから焦点の直径の範囲にあり、たとえば、1/e2直径(e=オイラー定数)を考慮して1〜5μmである。
【0027】
本発明による切除は、それぞれ、距離の減少またはパルス・エネルギーの減少によって、相応して小さなプラズマ・バブルが作用するか、または、作用することができる、あるいは、さらにプラズマ・バブルが全く作用しないか、または、作用することができないため、非常に微細な切除を生成する。しかし、たとえば、外科医が、切除表面の少なくとも一部を光学的に認識することを所望する場合、微細な切除表面は、欠点となる可能性がある。これは、たとえば、fs LASIK法によるレーザ手術においてそうである。レーザ放射の作用によって分離された部分容積(その容積は、横方向切除によって組織から除去される)は、通常、へらを使用して、最初に、外科医によって周囲材料に対する任意の残留ブリッジから剥がされる。このために、外科医は、横方向に開く切除によって形成されたポケットに、へらを押し込み、へらを用いて部分容積をなぞる。非常に微細な、すなわち、平滑な切除表面の場合、外科医が、外側から材料内の切除表面のプロファイルをもはや視認することができないことが起こる場合がある。したがって、外科医は、部分容積の周縁がどこにあるかを知らず、また、へらを確実に誘導することがでないであろう。これらの問題を解決するために、上述のタイプの方法が提供され、方法では、切除表面は、少なくとも2つの部分表面に分割され、1つの部分表面は、粗い、そのため、粗面の切除表面を生成する動作パラメータを用いて形成される。上述のタイプの装置では、制御ユニットが、レーザ源および走査ユニットの対応する制御を実行する。好ましくは、前記粗い切除表面は、周縁に設置されることになり、周縁は、ユーザのために容易に認識可能であり、また、たとえば、眼科手術において、切除表面の品質にとって重要ではない。そのため、2つの部分表面は、切除表面の細かさに影響を及ぼす少なくとも1つのパラメータに関して互いに異なる。たとえば、可能性のあるパラメータは、使用されるレーザ・パルスの照射量または相互作用の中心間の空間距離である。
【0028】
この手法(たいていは、異なる態様で実施されてもよく、また、本明細書に説明される発明に限定されない)を本発明の上述した変形例のうちの1つの変形例と組み合わせると、切除表面が、少なくとも、第1および第2の部分切除表面からなるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御することが好都合であり、第1の部分切除表面は、上述した本発明の概念の1つに従って、レーザ放射源および走査ユニットを制御することによって生成され、第2の部分切除表面は、3J/cm2より大きい、好ましくは、5J/cm2より大きいパルス照射量を生じるように、レーザ放射源を制御することによって生成される。もちろん、プラズマ・バブルが大きくなるため、a>10μmが設定されてもよい。こうして、後者の部分表面は、自動的に、所望の粗い構造を有し、ユーザまたは外科医による切除表面の認識を容易にする。同様な方法は、相応して、第2の部分表面が、3J/cm2より大きい、好ましくは、5J/cm2より大きいパルス照射量の本発明の方法によって生成されることを可能にする。
【0029】
好都合には、粗い部分表面は、微細な部分表面を囲むように選択されることになり、それにより、外科医は、切除表面の周縁を明確に認識することができ、また、処置される目(眼科手術の場合)の光学イメージングが悪い影響を受けない。
【0030】
相互作用の中心の距離が減少するにつれて、光ブレークスルーを確実に達成するのに必要とされる閾値が減少することを、本発明が基づく発見がさらに示す。
本発明者等によって実施された解析がさらに示すところでは、レーザ・パルスと、それぞれ、材料または組織との相互作用の結果として形成される、発生したプラズマ・バブルの形状は、ハイスターカンプ(Heisterkamp)等による刊行物にも示されるように、一時的な変化にさらされる可能性がある。しかし、この刊行物は、相互作用の中心が、まさに成長しているプラズマ・バブルの近くに位置することを防止することに焦点を合わせているが、ここでは、マクロバブルによって生じた変形が、切除の品質に影響を及ぼさないことが、本発明の変形例3の目的である。さらなる光ブレークスルーが、変形した材料または組織内の定義済位置に設置される場合、前記変形が緩和によって減少するとすぐに、材料または組織内の相互作用の中心の位置は、シフトすることになる。したがって、材料または組織の2つのエリアにおけるレーザ・エネルギーの印加の間の時間を、非常に低い程度に互いに影響を及ぼすように維持し、それにより、時間がマクロバブルの形成のための固有時間より短くなることが第3の変形例によって想定される。前記時間は約5sである。もちろん、この手法は、光学軸に沿って互いに隣接して位置する切除表面の2つの部分が存在する場合にのみ必要とされる。それは、その時のみ、切除表面部分を生成することによって生じる変形が、光学軸に沿って切除表面に隣接して位置する他の切除表面部分の形成に影響を及ぼすからである。
【0031】
この手法は、fs LASIK法の最中に部分容積を生成するときに特に重要である。レンチクルとも呼ぶこの部分容積は、切除表面の後部分および前部分によって生成されるため、切除表面は、全体として、レンチクルを囲む、しかし、マクロバブルを形成する固有時間以内で後部分および前部分を一緒に生成することは、走査ユニットの偏向速度に関して比較的高い要求を生じる場合がある、または、必然的に、特別な走査パスをもたらす。好ましくは、これは、後部分および前部分を部分表面に分割し、これらの部分表面の処理シーケンスを上手く選択することによって回避されることができる。
【0032】
1実施形態では、2つのエリアは、環状部分表面に細分される。レンチクルの場合、中心部分表面が、周縁領域に比べて光学品質に強い影響を及ぼすため、部分表面が、互いの直後に形成されるように、最初に、後部分の中心部分表面に相当する切除部、次いで、前部分の中心部分表面に相当する切除部が生成される。次いで、後部分の環状部分表面が、次に、前部分の環状部分表面が切除される。この原理はまた、望まれる多くの部分表面に関して、実施されることができる。実用上の限界は、前部分と後部分との間の切換えが、常に、光学軸に沿うレーザ焦点のシフト(技術的な理由で、走査中の時間のほとんどを占める)を必要とすることによって与えられる。
【0033】
この手法の場合、環状または円形の各後部分表面の直径が、次に生成されるそれぞれの前部分表面の直径よりある程度大きくあるべきであることに留意することが重要である。これは、次に生成される後部分切除が、散乱中心の役目を果す前方向に位置する破壊バブルをあり得なくすることを確実にする。後部分切除部が、関連する前部分切除部より大きくなければならない最小量は、収束光学部品の開口数で与えられる。
【0034】
時間間隔を固有時間より短く抑えるさらなる態様は、相互作用の中心の螺旋(外側から内側に延びる)を用いて後部分を生成すること、および、内側から外側に延びる螺旋を用いて前部分を生成することにある。これは、光学軸に沿って互いに隣接して位置する部分が、5sの時間間隔以内で、少なくとも中心領域内に形成されることを確実にする。もちろん、この方法は、既に述べた部分表面の分割に適用することができる。
【0035】
したがって、光学軸に隣接する部分の少なくとも一部が、相互作用の中心の順次配置によって、時間的に互いの直後に照明されるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御することが好ましい。
【0036】
同様な考察が、本発明による方法の実施形態にも適用される。
本発明は、例によって、また、図を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】目の処置用のレーザ手術機器を示す図。
【図2】図1の機器についての目の角膜に及ぼすレーザ放射の作用の図。
【図3】図1の機器によって、部分容積が、どのように生成され、分離されるかを示す略図。
【図4】図1の機器の偏向デバイスを示す図。
【図5】図1の機器の構造を示すブロック図。
【図6】図1の機器についての可能性のある動作範囲が示される、図1の機器によって発生する光ブレークスルーの中心の距離とパルス・エネルギーとの関係を示す図。
【図7】図6と同様な図。
【図8】それぞれ、発生するプラズマ・バブルの位置またはそれにより生じる切除表面をはっきりと示すための、目の角膜の略正面図。
【図9】A1−A1線に沿う図8の図の断面図。
【図10】図1による機器を用いて、切除表面を生成するときの、複数の相互作用のゾーンの配置を示す略図。
【図11】修正された動作モードについての図10と同様な図。
【図12】修正された動作モードについての図10と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、患者の目1を処置するためのレーザ手術機器を示し、レーザ手術機器2は、屈折補正を実施するのに役立つ。このために、機器2は、頭部が頭保持器4によって固定されている患者の目1に処置レーザ・ビーム3を放出する。レーザ手術機器2は、米国特許第5984916号明細書に記載される方法を実施できるようにパルス・レーザ・ビーム3を発生することができる。たとえば、処置レーザ・ビーム3は、10〜500kHzのパルス繰り返しレートを有するfs−レーザ・パルスからなる。例示的な実施形態では、機器2の構造コンポーネントは、一体化された制御ユニットによって制御される。
【0039】
図2に概略的に示すように、レーザ手術機器2は、放射源Sを備え、放射源Sの放射は、目1の角膜5に収束される。レーザ手術機器2を使用して、角膜の屈折特性が、所望の程度まで変化するように、角膜5から材料を除去することによって、患者の目1の視覚障害が補正される。その時、前記材料は、上皮およびボーマン氏膜の下に位置すると共に、デスメ氏膜および内皮の上に位置する角膜実質から除去される。
【0040】
材料除去は、高エネルギー・パルス・レーザ・ビーム3を、角膜5内に位置する焦点7に収束させる調整可能な望遠鏡6を使用して、角膜内の材料層を分離することによって実施される。パルス・レーザ放射3の各パルスは、組織内で光ブレークスルーを生じ、こうした光ブレークスルーは、次に、プラズマ・バブル8を始動させる。こうして、組織層分離は、レーザ放射3の焦点7より大きなエリアを覆うが、ブレークスルーを達成する条件は、焦点7内でのみ得られる。次いで、処置中に、レーザ・ビーム3を適切に偏向させることによって、多くのプラズマ・バブル8が発生する。これは、概略的に図3に示される。プラズマ・バブルは、次いで、実質の部分容積T、すなわち、角膜5から除去されるべき材料を囲む切除表面9を形成する。切除表面9は、パルス・レーザ・ビーム3の焦点7の連続シフトの結果としての、プラズマ・バブル8の順次配置によって形成される。
【0041】
レーザ照射3により、レーザ手術機器2は、角膜5の表面を損傷することなく、角膜5内の材料層を直接分離する手術ナイフのように動作する。切除16が、プラズマ・バブル8のさらなる発生によって角膜の表面まで誘導される場合、切除表面9によって分離される角膜5の材料を、矢印の方向17に横方向に引き出して、除去することができる。
【0042】
一方、焦点の変位は、次いで、図4に概略的に示す偏向ユニット10によって、実施形態で実施される。偏向ユニット10は、目1の光学軸H上に入射するレーザ・ビーム3を、2つの互いに直交する軸に関して偏向させる。このために、偏向ユニット10は、ライン・ミラー11およびフレーム・ミラー12を使用し、互いの後ろに位置する2つの空間偏向軸をもたらす。そのため、光学軸Hと偏向軸の交差点は、それぞれの偏向点である。他方、望遠鏡6は、焦点変位のために適切に調整される。これは、図4に概略的に示すx/y/z座標系の3つの直交軸に沿って、焦点7がシフトすることを可能にする。偏向ユニット10は、x/y平面内で焦点をシフトし、この時、ライン・ミラー11は、x方向に焦点をシフトすることを可能にし、フレーム・ミラー12は、y方向のシフトを可能にする。対照的に、望遠鏡6は、焦点7のz座標に作用する。こうして、焦点7の3次元変位が、全体として達成される。
【0043】
角膜湾曲が7〜10mmであるため、部分容積Tもまた、相応して湾曲しなければならない。そのため、角膜湾曲は、湾曲した切除面を必要とする。これは、偏向ユニット10および望遠鏡6の適切な制御によって実施される。
【0044】
図5は、人の目1に関する屈折手術用のレーザ手術機器2の略ブロック図を示す。最も重要な構造コンポーネントのみが示される。最も重要な構造コンポーネントとは、放射源Sの役をするfsレーザであって、fs発振器Vおよび1つまたは複数の増幅段13からなり、それに続いて、ここでは圧縮器または前置圧縮器14も配置される、fsレーザと、レーザSからのレーザ放射が入射するレーザ・パルス変調器15と、ここではスキャナとして実現される偏向ユニット10と、望遠鏡6として実現される、処置される組織内に収束させるための対物レンズと、制御ユニット17とである。
【0045】
レーザSは、fs範囲の継続時間を有するレーザ・パルスを発生する。最初に、レーザ・パルスは、レーザ・パルス変調器15に達し、レーザ・パルス変調器15は、制御ユニット17からの制御信号に従って、(以下に説明するように)レーザ・パルスに影響を及ぼす。次に、少なくとも処置レーザ・パルスが、スキャナ10に達し、対物レンズ6を通過して患者の目1に入る。そこで、レーザ・パルスは、収束され、焦点7において光ブレークスルーを生成する。変調器は、レーザ・パルスのエネルギー、すなわち、個々のレーザ・パルスの照射量を設定する。変調器として、AOMまたは電気光学変調器(EOA)、ポッケルス・セル、液晶素子(LC素子)、光ファイバ・スイッチング素子または可変減衰器、たとえば、ニュートラル・デンシティ・フィルタが使用されてもよい。
【0046】
そして、レーザ手術機器2は、異なる動作モードで動作することができ、動作モードは、別々にまたは組み合わせてそれぞれ実現されてもよく、また、各レーザ・パルスのエネルギーもしくは照射量Fに、または、切除表面9を生成するために、レーザ・パルスが順次に配置される局所距離に関連する。
【0047】
図6は、閾値Mを示し、この時、グラフは、個々のレーザ・パルスの相互作用の中心が、目の角膜5内に順次に位置する間隔と、各レーザ・パルスの照射量Fとの間の関係を示す。光ブレークスルーと生じるプラズマ・バブルは、閾値を超える照射量でのみ発生する。
【0048】
グラフ内に入力された円は、実験的測定から得られ、測定点を表す。測定は、300fsのパルス継続時間および3μmスポット径の焦点7で実施された。
機器2は、種々の境界条件によって定義され得る、図6による動作範囲18で動作してもよい。異なる定義は、本発明の異なる変形例に相当する。全ての変形例は、距離aの関数としての照射量Fについての閾値Mの進行に基づく。この依存性は、式:M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)によって近似される。式中で、rは、影響の平均範囲を示すパラメータであり、3〜10μmに位置し、好ましくは、5μmである。
【0049】
第1の変形例では、機器2は、最大値amax=10μmより小さい、レーザ焦点7の間隔a、すなわち、相互作用の中心の間隔aを用いて動作する。この値の場合、閾値Mについてのグラフは、小さな間隔aに向かってかなり降下し、明らかに減少した照射量Fを用いて動作することが可能になる。
【0050】
第2の変形例では、上限Fmaxが、照射量Fについて使用される。これについての値は5J/cm2である。
第1と第2の変形例を組み合わせると、a≦amaxとF≦Fmaxの両方が適用される。相互作用の中心の間隔およびレーザ・パルスの照射量は、以下に説明される部分エリア18.1および18.2からなる領域内に位置する。レーザ手術機器2は、両方の変形例自体において、および、これらの2つの変形例の組合せにおいて、それぞれ、材料、たとえば、角膜5内で光ブレークスルーを生成するため、照射量Fは、もちろん、閾値Mを常に超えている。その理由は、各レーザ・パルスが、前記閾値を超えた状態でのみ光ブレークスルー8を確実に生成するからである。
【0051】
第3の変形例は、各レーザ・パルスの照射量Fが、最大3〜3.5J/cm2の過剰なエネルギーだけ閾値Mを超えるように、第2の変形例を変更する。照射量Fは、エリア18.1と18.2を互いに分離する図6の破線よりも低く維持される。もちろん、照射量Fと間隔aが、ハッチング・エリア18.2内に位置するように、第3の変形例もまた、第1の変形例と組み合わせることができる。
【0052】
異なる実施形態では、レーザ手術機器2は、そのうちのどのレーザ・パルスでも、光ブレークスルー8を確実に生成するわけではないレーザ・パルスを用いて動作する。しかし、それでも材料分離を達成するために、相互作用の中心は、レーザ焦点の直径dより小さい間隔a、すなわち、相互作用のゾーンのサイズより小さい間隔aで順次に配置される。この動作モードは、図10〜12でより詳細に示される。
【0053】
図10は、(理論的な)焦点の位置に相当する相互作用の中心Zの配置の1次元の例を示す。各相互作用は、レーザ・パルスによって生成され、焦点7には回折限界があり、その焦点7は、図7で考えられるように、たとえば、3μmの直径dを有する。相互作用の中心、すなわち、収束されたレーザ放射の中心は、隣接して覆われる相互作用のゾーン20、21、23、および24が、それらの近隣領域においてそれぞれオーバラップするように変位する。こうして、2つの相互作用のゾーンでそれぞれ覆われるオーバラップ領域25、26、27が存在する。相互作用のゾーン内に導入されるエネルギーは、閾値M未満であり、それにより、相互作用のゾーン20〜24のそれぞれ自体によって光ブレークスルーが確実に生じるわけではない。しかし、オーバラップによって、材料分離作用が達成される。そのため、相互作用の中心の座標間の距離が、相互作用のゾーンの範囲dより小さいことが、この動作モードにとってきわめて重要である。個々の座標X1、X2、X3、およびX4間の距離が、相互作用のゾーン20〜24の直径dのほぼ半分に相当し、それにより、単純なオーバラップが生じることが、図10に明確に示されている。
【0054】
図11は、相互作用のゾーンのより狭いグラデーションを示し、最終的に、相互作用のゾーンの4倍のオーバラップをもたらす。これにより照射量Fのさらなる低減が可能になる。
【0055】
図12は、図10および図11の図が、1次元のみである、すなわち、簡略化のためにx座標のみを考えることを示す。x方向に互いにオーバラップする相互作用のゾーンが、y方向に変位する場合、さらなるオーバラップが達成されることになり、それにより、実際にはたった1回のx方向のオーバラップでも、間隔に応じてy方向に、相互作用のゾーンの3倍または4倍のオーバラップが達成される。この場合、それぞれ、x方向またはy方向における間隔の選択は、オーバラップの所望の倍率(factor)(2,3,4,5,6,7,…)を可能にする。
【0056】
結果として、機器2は、2つの後続の相互作用の中心間の距離が、相互作用のゾーンの範囲または焦点のサイズより小さいことを特徴とし、かつ照射量Fが、光ブレークスルーを生成するのに必要とされる閾値M未満であることを特徴とする動作範囲19内で動作する。
【0057】
実際には、レーザ焦点または相互作用の中心の間隔がそれぞれ約3〜5μmであることが、できる限り小さいパルス・エネルギーを用いて高品質切除部を生成し、かつ、制限された時間を要求するのに好適であることがわかった。
【0058】
非常に微細な切除部を生成するレーザ手術機器2において、たとえば、上述した照射量値がレーザ・パルスに使用される場合、領域18の外側での動作中に比べて、サイズの小さい、また、寿命の短いプラズマ・バブルもしくはガス・バブルが形成されるか、または、(領域19内での動作中に)バブルが全く形成されないため、切除部は、生成された時でさえも視認されない。これは、たとえば、へらによって、独立した切除部を準備することをより難しくする。多くの用途において、また、まだ完全に分離されていない残留ブリッジが、へらまたは他の器具によって穿孔される場合に使用される手作業による手技は、こうした平滑な切除部の場合、非常に難しくなる可能性がある。
【0059】
これを回避するために、レーザ手術機器2の制御装置17は、たとえば、図8および図9に示す切除の分割を実施する。切除表面は、異なる細かさの程度を有する部分切除表面に分割される。これらの部分切除表面は、異なる平滑さを持って切除され、それにより、切除表面には、他の領域と比べて、より良好な光学的可視性を有するような領域が形成される。
【0060】
図8は、患者の目1の角膜5の平面図を示し、図9は、図8の線A1−A1に沿う断面図を示す。見てわかるように、切除表面9は、図3に既に概略的に示すように、部分容積Tを分離するようになっている。そして、切除表面9は、前部分Fと後部分Lからなる。前部分Fは、横方向に開く切除16によって、角膜表面までつながる周縁開口Sまで導かれる。こうして、切除表面9を形成した後、レンズ形状部分容積Tを形成する部分F、L、16、およびSが、周縁開口Sによって形成されるポケット内に位置する。
【0061】
レンズ形状部分容積Tと角膜5の残りの部分との間の可能性のある組織のブリッジを切断するため、外科医が、ヘラまたは他の手術機器を用いてこのポケットに触れるために、前部分Fおよび後部分Lは、それぞれ、2つの部分領域に分割される。実質的に円であるコア領域F1またはL1は、それぞれ、環状周縁領域F2またはL2によって囲まれる。視野の光軸の近くに位置するコア領域において、サイズの小さいプラズマ・バブル、すなわち、微細な切除線が形成される。これは、たとえば、それぞれ、図6および図7の領域18または領域19における動作によって実施されてもよい。対照的に、たとえば、比較的大きなプラズマ・バブルが形成されるように、領域18または19の外側で意図的に動作することによって、(環状)周縁領域L2およびF2では、比較的粗い切除部が生成される。こうして、これらの周縁領域では、切除表面が、非常に粗面となり、外科医が認識するのが容易になる。
【0062】
中心領域F1およびL1の直径は、好ましくは、処置される目の瞳の直径Pより大きい。そのため、粗面の切除部が使用される、周縁領域F2およびL2は、角膜5の領域の外側に位置し、光学認識に使用され、相応して、擾乱作用を持たない。部分LおよびFを分割する目的は、切除の最大精度の態様と、異なる処理の結果としての周縁領域内の切除部の可視性による良好な操作性の態様とを同時に達成することである。
【0063】
プラズマ・バブルが、材料分離に使用される場合、レーザ・パルスのエネルギーは、閾値Mを超える。既に述べたように、レーザ・エネルギーの組織内への吸収から生じるバブルの形状は、経時的に変化を受ける。個々のバブルが形成される第1段階の後に、いくつかの個々のバブルが、結合して、より大きなマクロバブルを形成する凝集段階が続く。最後に、バブルが、再び完全に消えるまで、マクロバブルのガス含有物が、周囲組織によって吸収される最終段階として、消散が認められる。マクロバブルは、周囲組織を変形させる有害な特性を有する。プラズマ・バブルの始点を形成するために、変形した組織内のある位置にさらなる相互作用の中心が設置される場合、バブルが消え、かつ、変形した組織が(少なくとも部分的に)緩和する消散段階が始まるとすぐに、相互作用の中心の位置が変化し、その影響によって組織分離の位置が変化する。マクロバブルは、固有時間後にのみ形成され、レーザ・パルス・エネルギーを導入するときにはまだ存在していないため、レーザ手術機器2の一変形例では、おそらく互いに影響を及ぼす組織の2つの領域へのレーザ・エネルギーの印加の間の時間は、マクロバブルを形成するのに必要とされる固有時間より短くなるように十分短く維持されることが、想定される。
【0064】
レンズ形状の部分容積Tの分離中に、互いに有害な影響がある切除表面9の後部分と前部分の領域は、視野の光軸の領域に位置する。前に処理された後部分Lが既にマクロバブルを含むときのみ、切除表面9の前部分Fに切除部が生成される場合、前部分Fの切除表面は、変形した組織内に位置する。この場合、緩和後の結果は、前部分F内の切除表面9の望ましくない起伏であることになる。したがって、レーザ手術機器2は、マクロバブルが形成されるのにかかる固有時間より短い時間間隔内で、前部分Fと後部分Lにおいて切除表面を生成する。通常、こうした時間は、約5sである。
【0065】
これを達成する一態様は、前部分と後部分を、対応する部分表面に分割し、かつ、少なくとも中心領域において、部分表面(前方のまた後方の)を生成するための固有時間を超えないように、切除表面の生成中に後部分の部分表面と前部分の部分表面とを交互に行うことにある。さらなる可能性は、相互作用の中心の適切な順次配置にある。そのため、たとえば、最初に、後部分Lを外から内へ視野の光軸に向かって導く螺旋で切除することができ、直後に、前部分Fを視野軸から外に延びる螺旋で切除することができる。視野軸の周りのコア領域において少なくとも生成される相互作用は、固有期間によって与えられる時間枠内にあり、それにより、前部分の処理中に、マクロバブルに関する影響はない。
【0066】
制御装置17の制御下でレーザ手術機器2が実施する、部分表面への分割中に、形成される後部分が、散乱中心としての、既に処理された前表面または相互作用のゾーンによって、乱されないことが保証される。
【0067】
上記した切除形状、表面分割などは、制御装置17の制御下でレーザ手術機器によって実施される。制御装置17は、本明細書で説明されたプロセス機能によって、レーザ手術機器2の動作をもたらす。
【0068】
レーザ手術機器の実施形態は、先に説明された限りでは、レーザ手術機器2の特定の実現態様に応じて、単独でおよび組み合わせて実現することができる。レーザ手術で使用される代わりに、機器2は、非手術的材料処理のために、たとえば、導波路の生産または可撓性材料の処理において使用することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ放射によって材料を処理する装置に関し、前記装置は、材料と相互作用するための、パルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットとを備える。
【0002】
本発明は、さらに、レーザ放射によって材料を処理する方法に関し、方法において、パルス処理レーザ放射が、生成されて、材料内の相互作用の中心に相互作用のために収束され、材料内の相互作用の中心の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離され、切除表面が、相互作用のゾーンの順次配置によって材料内に生成される。
【0003】
本発明は、さらに、レーザ放射によって材料を処理する装置に関し、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に光学軸に沿って収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットとを備える。
【0004】
本発明は、なおさらに、レーザ放射によって材料を処理する方法に関し、方法において、パルス処理レーザ放射が、生成され、光学軸に沿う材料内の相互作用の中心に相互作用のために収束され、材料内の相互作用の中心の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離され、切除表面が、相互作用のゾーンの順次配置によって材料内に生成される。
【背景技術】
【0005】
材料を処理する、これらの装置および対応する方法は、透明材料内に湾曲切除表面を生成するのに特に適する。湾曲切除表面は、たとえば、レーザ手術法において、特に、眼科手術において生成される。湾曲切除表面を生成するときに、処置レーザ放射は、組織内で、すなわち、組織の表面下で、相互作用の中心に収束される。相互作用の周囲ゾーン内の材料層は、それにより分離される。ゾーンは、通常、焦点に相当する。レーザ・パルス・エネルギーは、通常、組織内の光ブレークスルーが、相互作用のゾーン内に形成されるように選択される。
【0006】
組織内で、レーザ放射パルスによって始動された複数の工程が、光ブレークスルー後に、ある時間シーケンスで起こる。最初に、光ブレークスルーは、材料内にプラズマ・バブルを発生する。こうしたプラズマ・バブルは、一旦形成されてしまうと、膨張ガスによって成長する。次に、プラズマ・バブル内で発生したガスは、周囲材料によって吸収され、バブルは、再び消える。しかし、この工程は、バブルの形成自体よりもずっと長くかかる。材料構造内に位置し得る材料界面において、プラズマが発生する場合、材料除去が、前記界面からもたらされる。こうして、これは、光アブレーションと呼ばれる。予め接続されている材料層を分離するプラズマ・バブルに関連して、通常、光切断のことが言及される。説明を簡単にするために、全てのこのような工程は、ここでは、「相互作用(interaction)」という用語で要約される。すなわち、この用語は、光ブレークスルーのみでなく、任意の他の材料分離作用もまた含む。
【0007】
高精度のレーザ手術法の場合、レーザ・ビーム作用の高い局在化を確保し、可能性のある場合、隣接組織に対する副次的な損傷を回避することが不可欠である。したがって、レーザ放射をパルス形態で印加し、その際、光ブレークスルーを始動するのに必要とされるエネルギー密度についての閾値が、個々のパルスにおいてのみ超えるようにすることが、従来技術では一般的である。この観点から、相互作用ゾーンの空間範囲は、2psのパルス継続時間を超える限り、実質的に、パルス継続時間にのみ依存することが、米国特許第5984916号明細書によって明確に示されている。数百fsの値の場合、相互作用ゾーンのサイズは、パルス継続時間にほとんど無関係である。そのため、非常に短い、すなわち、1ps未満のパルスと組み合わせた、レーザ・ビームの高い収束によって、相互作用ゾーンをピンポイントの精度で材料内に導入することが可能になる。
【0008】
こうしたパルス・レーザ放射の使用は、最近、特に、眼科学における視覚障害のレーザ手術補正について、確立されてきた。目の視覚障害は、角膜およびレンズの屈折特性が、網膜上への最適収束をもたらさないことによることが多い。このタイプのパルス駆動もまた、本明細書で説明される本発明の主題である。
【0009】
上述した米国特許第5984916号明細書には、光ブレークスルーを適切に発生させることによって切除を生成し、それにより、最終的に、角膜の回折特性に選択的な影響を及ぼす方法が記載されている。切除表面が、目の角膜内でレンズ形状の部分容積を分離するように、複数の光ブレークスルーが順次に配置される。残りの角膜組織から分離されるレンズ形状の部分容積は、次いで、横方向に開く切除を介して角膜から除去される。部分容積の形状は、形状の除去によって、視覚障害の所望の補正がもたらされ、角膜の屈折特性が変わるように選択される。ここで必要とされる切除表面は、湾曲し、かつ、部分容積を囲み、したがって、焦点の3次元シフトを必要とする。したがって、レーザ放射の2次元偏向は、第3の空間方向への焦点の同時シフトと組み合わされる。これは、ここで、「走査(scanning)」、「シフト(shifting)」、または「偏向(deflecting)」という用語によって要約される。
【0010】
材料内で光ブレークスルーの順次配置によって切除表面を構成するとき、光ブレークスルーは、こうして発生したプラズマが組織によって再び吸収されるまでにかかる時間の何倍も速く発生する。光ブレークスルーが発生した後に、光ブレークスルーが発生した焦点の目の角膜内で、プラズマ・バブルが形成され、そのプラズマ・バブルが、隣接するバブルと一緒に成長して、マクロバブルを形成する可能性があることが、エー.ハイスターカンプ(A.Heisterkamp)等の刊行物(Der Ophthalmologe、2001、98:623〜628)から公知となっている。刊行物では、依然として成長するプラズマ・バブルの結合は、切除の品質を低下させることが説明されている。したがって、前記刊行物は、個々のプラズマ・バブルが、互いに直に隣り合って発生しない方法を提案する。代わりに、順次に発生する光ブレークスルー間で螺旋形状プロファイル内にギャップが残るようにし、そのギャップが、螺旋を通る第2パスにおいて光ブレークスルーおよびその結果生じるプラズマ・バブルで満たされる。これは、隣接するプラズマ・バブルの結合を防止し、切除の品質を改善することを意図している。
【0011】
切除の良好な品質を達成するために、従来技術は、光ブレークスルーが発生する定義済シーケンスを使用する。これは、成長するプラズマ・バブルの結合を防止することを意図される。もちろん、できる限り少数のブリッジがそれぞれ材料または組織を接続するような切除が望まれるため、発生するプラズマ・バブルは、最終的には、いずれにしても一緒に成長して、切除表面を形成しなければならない。そうでなければ、材料の接続が、残り、切除が、不完全であることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、レーザ・パルスを導入するときに、定義済シーケンスを遵守する必要なしで、材料内で良好な品質の切除を生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、最初に述べた一般的なタイプの装置による第1の変形例において達成され、第1の変形例では、隣接する相互作用の中心が、互いから空間距離a≦10μmに位置するように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御する。第1の変形例では、目的は、さらに、最初に述べた一般的なタイプの方法によって達成され、方法では、隣接する相互作用の中心が、空間距離a≦10μmに位置する。
【0014】
本発明の第2の変形例では、目的は、最初に述べた一般的なタイプの装置によって達成され、装置では、それぞれの相互作用の中心について、パルスの照射量Fが、5J/cm2未満である。第2の変形例では、目的はまた、最初に述べた一般的なタイプの方法によって達成され、方法では、相互作用のゾーンは、その照射量Fが、5J/cm2未満であるパルスにさらされる。
【0015】
本発明の第3の変形例では、目的は、2番目に述べた一般的なタイプの装置によって達成され、装置では、切除表面が、光学軸に沿って互いに隣接して位置する2つの部分からなるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御し、かつ、制御ユニットが、時間間隔t≦5s内で印加されるレーザ・パルスを用いて、2つの部分を少なくとも部分的に照射する。同様に、第3の変形例では、目的は、2番目に述べたタイプの方法によって達成され、方法では、切除表面が、光学軸に沿って互いに隣接して位置する2つの部分からなり、2つの部分が、時間間隔t≦5s内で印加されるレーザ・パルスに少なくとも部分的にさらされる。
【0016】
本発明は、材料内の相互作用のゾーンが、互いに影響を及ぼすという発見に基づく。そのため、レーザ・ビーム・パルスの影響は、以前のレーザ暴露が、相互作用の中心の近傍で既に起こった範囲に依存する。このことから、光ブレークスルーを生成するか、または、材料分離を引き起こすのに必要とされるパルス・エネルギーが、最も近い相互作用の中心からの距離に依存すると、本発明者等は結論付けた。本発明による変形例は全て、この発見を利用する。
【0017】
本発明の変形例1による、相互作用の中心間の距離、たとえば、隣接する光ブレークスルーの焦点位置間の距離についての最小化は、処理用パルス・エネルギーが減少することを可能にする。パルス・エネルギーを記述するパラメータは、照射量、すなわち、面積当たりのエネルギー、すなわち、エネルギーの面積密度である。こうして、10μm未満の距離を有する本発明の変形例1は、本発明者等に初めて帰するものと考えられる発見の態様に対処する。
【0018】
別の態様は、処理用レーザ・パルスの照射量が、今や著しく減少することである。このため、変形例2は、変形例1と同じ態様に関連するが、距離についての上限を規定するのではなく、照射量についての上限を規定する。
【0019】
したがって、本発明の全ての変形例は、パルス・レーザ放射を導入することによって切除を生成するための基本条件を提供し、前記基本条件は、すぐ隣の入力パルスの影響を考慮する。パルス長に関して、米国特許第5984916号明細書の教示が、ここで適用される。すなわち、1ps未満の、好ましくは、数百fs、たとえば、300〜500fsのパルスが使用される。本発明が距離の上限を定義する場合、その距離は、最も近い相互作用の中心からの距離を指す。切除表面は、通常、複数の順次に配置された相互作用の中心によって生成されるため、単純にするために、距離は、材料内のレーザ・パルスについてのレーザ焦点間隔の平均値であると理解されてもよい。切除表面に沿って実質的に2次元である相互作用の中心の格子が、非対称である場合、距離は、固有の平均間隔であることもできる。レーザ・パルスが材料内で処理作用を生じないように、パルス状レーザ放射源を使用すること、および、前記放射源によって放出されるレーザ・パルスの一部を変更することが従来技術において知られている。そのため、レーザ放射パルスの一部のみが、処理のために使用されるであろう。本説明が、「レーザ放射パルス(laser radiation pulse)」、「レーザ・パルス(laser pulse)」、または「パルス(pulse)」という用語を使用するときはいつでも、それは、常に、材料との相互作用のために、設けられた、または、形成された、または、それに適した、処理用レーザ・パルス、すなわち、レーザ放射パルスを意味する。
【0020】
パルス・ピーク性能が減少するため、機器の複雑さは、本発明によって減る。相互作用の中心の距離が減少するため、処理用継続時間が一定に維持される場合、パルス繰り返し周波数が増加する。さらに、より小さなプラズマ・バブルが、光ブレークスルーの場合に生成され、したがって、切除がより薄くなる。しかし、従来技術は、常に、相互作用の中心間の比較的長い距離を用いて動作し、また、その距離に適切に適応した、光ブレークスルーおよび大きなプラズマ・バブルを確実に得るために、パルスの照射量が適度に高く選択された。
【0021】
同時に、より低い照射量はまた、材料処理中に作業要員の危険有害性を減少させる。これは、眼科方法において、きわめて重要である。危険有害性クラス1Mのレーザを用いて作業することが現在可能であることが特に有利であることがわかるが、従来技術では、危険有害性クラス3が必要とされた。このクラスは、作業要員、たとえば、医師または看護婦に、当然のことながら患者を不安に感じさせる保護ゴーグルを装着することを要求した。こうした保護対策は、本発明により現在可能であるクラス1Mのレーザの場合、もはや必要ではない。
【0022】
したがって、本発明は、さらなる実施形態または独立した発明として、レーザ放射によって材料を処理する装置を提供し、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射の放出源と、パルス処理用レーザ放射を材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各処理用レーザ・パルスが、前記レーザ・パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、それにより、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットとを備え、また、前記装置は、さらに、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットを備え、3未満の危険有害性クラスのレーザ、好ましくは、危険有害性クラス1Mのレーザが使用される。危険有害性クラスの指示は、2005年10月13日に施行されたバージョンがIEC60825−1の国際規格に関連する。同様に、(独立の発明またはさらなる実施形態として)レーザ放射によって材料を処理する装置が提供され、前記装置は、材料と相互作用するためのパルス・レーザ放射を放出するレーザ放射源と、パルス・レーザ放射を光学軸に沿って材料内の相互作用の中心に収束させる光学部品と、材料内の相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニットであって、各レーザ・パルスは、前記パルスに割り当てられた相互作用の中心を囲むゾーン内で材料と相互作用し、材料が、相互作用のゾーン内で分離する、前記走査ユニットとを備え、また、前記装置は、さらに、走査ユニットと、相互作用のゾーンの順次配置によって、切除表面が、材料内に生成されるように、走査ユニットおよびレーザ放射源を制御する制御ユニットを備え、3未満の危険有害性クラスのレーザ、好ましくは、危険有害性クラス1Mのレーザが使用される。これはまた、さらなる実施形態として、それぞれ、上述した装置のそれぞれについて、または、上述した方法のそれぞれについて有用である。特に明示的に指示しなければ、これは、それぞれの説明された有利な設計、さらなる実施形態または実現態様に当てはまるものとする。
【0023】
本発明者等によって実施された試験が示したところでは、光ブレークスルーは、式M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)による、隣接する相互作用の中心の距離aの関数である定義済閾値Mを超えるときのみに起こる。光ブレークスルーは、閾値Mを超えるパルス照射量のそれぞれの個々のレーザ・パルスについてのみ保証される。前記式におけるパラメータrは、隣接する相互作用のゾーンの影響についての実験的に認識された平均範囲を表す。用途に応じて、変動が存在する可能性があるため、3〜10μmの値の変動が、可能であり、好ましくは、r=5μmである。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の変形例2について述べたパルス照射量の上限は、隣接する相互作用の中心の距離に基づく閾値の上述の依存性に基づくであろう。したがって、照射量が、3J/cm2未満の過剰なエネルギーだけ閾値Mを超える、さらなる実施形態が好ましい。それによって定義される範囲は、特に良好な切除の品質を提供し、一方、光ブレークスルーの始動が、同時に保証される。過剰のエネルギーがさらに増加する場合、不必要に大きなプラズマ・バブルが発生することになり、切除の品質は低下することになる。
【0025】
しかし、切除を生成することは、今や、光ブレークスルーを用いて作業することをもはや厳格には要求しない。相互作用のゾーンがオーバラップする場合、材料を分離することができ、そのため、光ブレークスルーの始動についての閾値未満のパルス・レーザ放射のエネルギーでも、切除表面を形成することが可能であることを本発明者は発見した。したがって、さらなる実施形態が提供され、さらなる実施形態では、2つの順次パルスの相互作用の中心の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、それにより、レーザ放射を用いて順次に照射される材料の容積、すなわち、相互作用のゾーンの相互オーバラップが存在する。この実施形態は、プラズマ・バブルの形成無しで、材料分離を生じ、特に平滑な切除をもたらす。
【0026】
有利には、相互作用のゾーンがオーバラップするために、組織分離作用がやはり達成されるため、次いで、レーザ・パルスの照射量は、既に説明した閾値より減少する可能性がある。そのため、個々のレーザ・パルスは、もはや確実に光ブレークスルーを発生しない。すなわち、組織の分離は、相互作用のゾーンがオーバラップする場合のみに生じる。これは、最新の大きさより小さいパルス・エネルギーを可能にする。同時に、時間的に順次に発生する相互作用のゾーンがオーバラップするために、切除の品質が再び向上する。そのため、相互作用の中心の距離は、ゼロから焦点の直径の範囲にあり、たとえば、1/e2直径(e=オイラー定数)を考慮して1〜5μmである。
【0027】
本発明による切除は、それぞれ、距離の減少またはパルス・エネルギーの減少によって、相応して小さなプラズマ・バブルが作用するか、または、作用することができる、あるいは、さらにプラズマ・バブルが全く作用しないか、または、作用することができないため、非常に微細な切除を生成する。しかし、たとえば、外科医が、切除表面の少なくとも一部を光学的に認識することを所望する場合、微細な切除表面は、欠点となる可能性がある。これは、たとえば、fs LASIK法によるレーザ手術においてそうである。レーザ放射の作用によって分離された部分容積(その容積は、横方向切除によって組織から除去される)は、通常、へらを使用して、最初に、外科医によって周囲材料に対する任意の残留ブリッジから剥がされる。このために、外科医は、横方向に開く切除によって形成されたポケットに、へらを押し込み、へらを用いて部分容積をなぞる。非常に微細な、すなわち、平滑な切除表面の場合、外科医が、外側から材料内の切除表面のプロファイルをもはや視認することができないことが起こる場合がある。したがって、外科医は、部分容積の周縁がどこにあるかを知らず、また、へらを確実に誘導することがでないであろう。これらの問題を解決するために、上述のタイプの方法が提供され、方法では、切除表面は、少なくとも2つの部分表面に分割され、1つの部分表面は、粗い、そのため、粗面の切除表面を生成する動作パラメータを用いて形成される。上述のタイプの装置では、制御ユニットが、レーザ源および走査ユニットの対応する制御を実行する。好ましくは、前記粗い切除表面は、周縁に設置されることになり、周縁は、ユーザのために容易に認識可能であり、また、たとえば、眼科手術において、切除表面の品質にとって重要ではない。そのため、2つの部分表面は、切除表面の細かさに影響を及ぼす少なくとも1つのパラメータに関して互いに異なる。たとえば、可能性のあるパラメータは、使用されるレーザ・パルスの照射量または相互作用の中心間の空間距離である。
【0028】
この手法(たいていは、異なる態様で実施されてもよく、また、本明細書に説明される発明に限定されない)を本発明の上述した変形例のうちの1つの変形例と組み合わせると、切除表面が、少なくとも、第1および第2の部分切除表面からなるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御することが好都合であり、第1の部分切除表面は、上述した本発明の概念の1つに従って、レーザ放射源および走査ユニットを制御することによって生成され、第2の部分切除表面は、3J/cm2より大きい、好ましくは、5J/cm2より大きいパルス照射量を生じるように、レーザ放射源を制御することによって生成される。もちろん、プラズマ・バブルが大きくなるため、a>10μmが設定されてもよい。こうして、後者の部分表面は、自動的に、所望の粗い構造を有し、ユーザまたは外科医による切除表面の認識を容易にする。同様な方法は、相応して、第2の部分表面が、3J/cm2より大きい、好ましくは、5J/cm2より大きいパルス照射量の本発明の方法によって生成されることを可能にする。
【0029】
好都合には、粗い部分表面は、微細な部分表面を囲むように選択されることになり、それにより、外科医は、切除表面の周縁を明確に認識することができ、また、処置される目(眼科手術の場合)の光学イメージングが悪い影響を受けない。
【0030】
相互作用の中心の距離が減少するにつれて、光ブレークスルーを確実に達成するのに必要とされる閾値が減少することを、本発明が基づく発見がさらに示す。
本発明者等によって実施された解析がさらに示すところでは、レーザ・パルスと、それぞれ、材料または組織との相互作用の結果として形成される、発生したプラズマ・バブルの形状は、ハイスターカンプ(Heisterkamp)等による刊行物にも示されるように、一時的な変化にさらされる可能性がある。しかし、この刊行物は、相互作用の中心が、まさに成長しているプラズマ・バブルの近くに位置することを防止することに焦点を合わせているが、ここでは、マクロバブルによって生じた変形が、切除の品質に影響を及ぼさないことが、本発明の変形例3の目的である。さらなる光ブレークスルーが、変形した材料または組織内の定義済位置に設置される場合、前記変形が緩和によって減少するとすぐに、材料または組織内の相互作用の中心の位置は、シフトすることになる。したがって、材料または組織の2つのエリアにおけるレーザ・エネルギーの印加の間の時間を、非常に低い程度に互いに影響を及ぼすように維持し、それにより、時間がマクロバブルの形成のための固有時間より短くなることが第3の変形例によって想定される。前記時間は約5sである。もちろん、この手法は、光学軸に沿って互いに隣接して位置する切除表面の2つの部分が存在する場合にのみ必要とされる。それは、その時のみ、切除表面部分を生成することによって生じる変形が、光学軸に沿って切除表面に隣接して位置する他の切除表面部分の形成に影響を及ぼすからである。
【0031】
この手法は、fs LASIK法の最中に部分容積を生成するときに特に重要である。レンチクルとも呼ぶこの部分容積は、切除表面の後部分および前部分によって生成されるため、切除表面は、全体として、レンチクルを囲む、しかし、マクロバブルを形成する固有時間以内で後部分および前部分を一緒に生成することは、走査ユニットの偏向速度に関して比較的高い要求を生じる場合がある、または、必然的に、特別な走査パスをもたらす。好ましくは、これは、後部分および前部分を部分表面に分割し、これらの部分表面の処理シーケンスを上手く選択することによって回避されることができる。
【0032】
1実施形態では、2つのエリアは、環状部分表面に細分される。レンチクルの場合、中心部分表面が、周縁領域に比べて光学品質に強い影響を及ぼすため、部分表面が、互いの直後に形成されるように、最初に、後部分の中心部分表面に相当する切除部、次いで、前部分の中心部分表面に相当する切除部が生成される。次いで、後部分の環状部分表面が、次に、前部分の環状部分表面が切除される。この原理はまた、望まれる多くの部分表面に関して、実施されることができる。実用上の限界は、前部分と後部分との間の切換えが、常に、光学軸に沿うレーザ焦点のシフト(技術的な理由で、走査中の時間のほとんどを占める)を必要とすることによって与えられる。
【0033】
この手法の場合、環状または円形の各後部分表面の直径が、次に生成されるそれぞれの前部分表面の直径よりある程度大きくあるべきであることに留意することが重要である。これは、次に生成される後部分切除が、散乱中心の役目を果す前方向に位置する破壊バブルをあり得なくすることを確実にする。後部分切除部が、関連する前部分切除部より大きくなければならない最小量は、収束光学部品の開口数で与えられる。
【0034】
時間間隔を固有時間より短く抑えるさらなる態様は、相互作用の中心の螺旋(外側から内側に延びる)を用いて後部分を生成すること、および、内側から外側に延びる螺旋を用いて前部分を生成することにある。これは、光学軸に沿って互いに隣接して位置する部分が、5sの時間間隔以内で、少なくとも中心領域内に形成されることを確実にする。もちろん、この方法は、既に述べた部分表面の分割に適用することができる。
【0035】
したがって、光学軸に隣接する部分の少なくとも一部が、相互作用の中心の順次配置によって、時間的に互いの直後に照明されるように、制御ユニットが、レーザ放射源および走査ユニットを制御することが好ましい。
【0036】
同様な考察が、本発明による方法の実施形態にも適用される。
本発明は、例によって、また、図を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】目の処置用のレーザ手術機器を示す図。
【図2】図1の機器についての目の角膜に及ぼすレーザ放射の作用の図。
【図3】図1の機器によって、部分容積が、どのように生成され、分離されるかを示す略図。
【図4】図1の機器の偏向デバイスを示す図。
【図5】図1の機器の構造を示すブロック図。
【図6】図1の機器についての可能性のある動作範囲が示される、図1の機器によって発生する光ブレークスルーの中心の距離とパルス・エネルギーとの関係を示す図。
【図7】図6と同様な図。
【図8】それぞれ、発生するプラズマ・バブルの位置またはそれにより生じる切除表面をはっきりと示すための、目の角膜の略正面図。
【図9】A1−A1線に沿う図8の図の断面図。
【図10】図1による機器を用いて、切除表面を生成するときの、複数の相互作用のゾーンの配置を示す略図。
【図11】修正された動作モードについての図10と同様な図。
【図12】修正された動作モードについての図10と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、患者の目1を処置するためのレーザ手術機器を示し、レーザ手術機器2は、屈折補正を実施するのに役立つ。このために、機器2は、頭部が頭保持器4によって固定されている患者の目1に処置レーザ・ビーム3を放出する。レーザ手術機器2は、米国特許第5984916号明細書に記載される方法を実施できるようにパルス・レーザ・ビーム3を発生することができる。たとえば、処置レーザ・ビーム3は、10〜500kHzのパルス繰り返しレートを有するfs−レーザ・パルスからなる。例示的な実施形態では、機器2の構造コンポーネントは、一体化された制御ユニットによって制御される。
【0039】
図2に概略的に示すように、レーザ手術機器2は、放射源Sを備え、放射源Sの放射は、目1の角膜5に収束される。レーザ手術機器2を使用して、角膜の屈折特性が、所望の程度まで変化するように、角膜5から材料を除去することによって、患者の目1の視覚障害が補正される。その時、前記材料は、上皮およびボーマン氏膜の下に位置すると共に、デスメ氏膜および内皮の上に位置する角膜実質から除去される。
【0040】
材料除去は、高エネルギー・パルス・レーザ・ビーム3を、角膜5内に位置する焦点7に収束させる調整可能な望遠鏡6を使用して、角膜内の材料層を分離することによって実施される。パルス・レーザ放射3の各パルスは、組織内で光ブレークスルーを生じ、こうした光ブレークスルーは、次に、プラズマ・バブル8を始動させる。こうして、組織層分離は、レーザ放射3の焦点7より大きなエリアを覆うが、ブレークスルーを達成する条件は、焦点7内でのみ得られる。次いで、処置中に、レーザ・ビーム3を適切に偏向させることによって、多くのプラズマ・バブル8が発生する。これは、概略的に図3に示される。プラズマ・バブルは、次いで、実質の部分容積T、すなわち、角膜5から除去されるべき材料を囲む切除表面9を形成する。切除表面9は、パルス・レーザ・ビーム3の焦点7の連続シフトの結果としての、プラズマ・バブル8の順次配置によって形成される。
【0041】
レーザ照射3により、レーザ手術機器2は、角膜5の表面を損傷することなく、角膜5内の材料層を直接分離する手術ナイフのように動作する。切除16が、プラズマ・バブル8のさらなる発生によって角膜の表面まで誘導される場合、切除表面9によって分離される角膜5の材料を、矢印の方向17に横方向に引き出して、除去することができる。
【0042】
一方、焦点の変位は、次いで、図4に概略的に示す偏向ユニット10によって、実施形態で実施される。偏向ユニット10は、目1の光学軸H上に入射するレーザ・ビーム3を、2つの互いに直交する軸に関して偏向させる。このために、偏向ユニット10は、ライン・ミラー11およびフレーム・ミラー12を使用し、互いの後ろに位置する2つの空間偏向軸をもたらす。そのため、光学軸Hと偏向軸の交差点は、それぞれの偏向点である。他方、望遠鏡6は、焦点変位のために適切に調整される。これは、図4に概略的に示すx/y/z座標系の3つの直交軸に沿って、焦点7がシフトすることを可能にする。偏向ユニット10は、x/y平面内で焦点をシフトし、この時、ライン・ミラー11は、x方向に焦点をシフトすることを可能にし、フレーム・ミラー12は、y方向のシフトを可能にする。対照的に、望遠鏡6は、焦点7のz座標に作用する。こうして、焦点7の3次元変位が、全体として達成される。
【0043】
角膜湾曲が7〜10mmであるため、部分容積Tもまた、相応して湾曲しなければならない。そのため、角膜湾曲は、湾曲した切除面を必要とする。これは、偏向ユニット10および望遠鏡6の適切な制御によって実施される。
【0044】
図5は、人の目1に関する屈折手術用のレーザ手術機器2の略ブロック図を示す。最も重要な構造コンポーネントのみが示される。最も重要な構造コンポーネントとは、放射源Sの役をするfsレーザであって、fs発振器Vおよび1つまたは複数の増幅段13からなり、それに続いて、ここでは圧縮器または前置圧縮器14も配置される、fsレーザと、レーザSからのレーザ放射が入射するレーザ・パルス変調器15と、ここではスキャナとして実現される偏向ユニット10と、望遠鏡6として実現される、処置される組織内に収束させるための対物レンズと、制御ユニット17とである。
【0045】
レーザSは、fs範囲の継続時間を有するレーザ・パルスを発生する。最初に、レーザ・パルスは、レーザ・パルス変調器15に達し、レーザ・パルス変調器15は、制御ユニット17からの制御信号に従って、(以下に説明するように)レーザ・パルスに影響を及ぼす。次に、少なくとも処置レーザ・パルスが、スキャナ10に達し、対物レンズ6を通過して患者の目1に入る。そこで、レーザ・パルスは、収束され、焦点7において光ブレークスルーを生成する。変調器は、レーザ・パルスのエネルギー、すなわち、個々のレーザ・パルスの照射量を設定する。変調器として、AOMまたは電気光学変調器(EOA)、ポッケルス・セル、液晶素子(LC素子)、光ファイバ・スイッチング素子または可変減衰器、たとえば、ニュートラル・デンシティ・フィルタが使用されてもよい。
【0046】
そして、レーザ手術機器2は、異なる動作モードで動作することができ、動作モードは、別々にまたは組み合わせてそれぞれ実現されてもよく、また、各レーザ・パルスのエネルギーもしくは照射量Fに、または、切除表面9を生成するために、レーザ・パルスが順次に配置される局所距離に関連する。
【0047】
図6は、閾値Mを示し、この時、グラフは、個々のレーザ・パルスの相互作用の中心が、目の角膜5内に順次に位置する間隔と、各レーザ・パルスの照射量Fとの間の関係を示す。光ブレークスルーと生じるプラズマ・バブルは、閾値を超える照射量でのみ発生する。
【0048】
グラフ内に入力された円は、実験的測定から得られ、測定点を表す。測定は、300fsのパルス継続時間および3μmスポット径の焦点7で実施された。
機器2は、種々の境界条件によって定義され得る、図6による動作範囲18で動作してもよい。異なる定義は、本発明の異なる変形例に相当する。全ての変形例は、距離aの関数としての照射量Fについての閾値Mの進行に基づく。この依存性は、式:M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)によって近似される。式中で、rは、影響の平均範囲を示すパラメータであり、3〜10μmに位置し、好ましくは、5μmである。
【0049】
第1の変形例では、機器2は、最大値amax=10μmより小さい、レーザ焦点7の間隔a、すなわち、相互作用の中心の間隔aを用いて動作する。この値の場合、閾値Mについてのグラフは、小さな間隔aに向かってかなり降下し、明らかに減少した照射量Fを用いて動作することが可能になる。
【0050】
第2の変形例では、上限Fmaxが、照射量Fについて使用される。これについての値は5J/cm2である。
第1と第2の変形例を組み合わせると、a≦amaxとF≦Fmaxの両方が適用される。相互作用の中心の間隔およびレーザ・パルスの照射量は、以下に説明される部分エリア18.1および18.2からなる領域内に位置する。レーザ手術機器2は、両方の変形例自体において、および、これらの2つの変形例の組合せにおいて、それぞれ、材料、たとえば、角膜5内で光ブレークスルーを生成するため、照射量Fは、もちろん、閾値Mを常に超えている。その理由は、各レーザ・パルスが、前記閾値を超えた状態でのみ光ブレークスルー8を確実に生成するからである。
【0051】
第3の変形例は、各レーザ・パルスの照射量Fが、最大3〜3.5J/cm2の過剰なエネルギーだけ閾値Mを超えるように、第2の変形例を変更する。照射量Fは、エリア18.1と18.2を互いに分離する図6の破線よりも低く維持される。もちろん、照射量Fと間隔aが、ハッチング・エリア18.2内に位置するように、第3の変形例もまた、第1の変形例と組み合わせることができる。
【0052】
異なる実施形態では、レーザ手術機器2は、そのうちのどのレーザ・パルスでも、光ブレークスルー8を確実に生成するわけではないレーザ・パルスを用いて動作する。しかし、それでも材料分離を達成するために、相互作用の中心は、レーザ焦点の直径dより小さい間隔a、すなわち、相互作用のゾーンのサイズより小さい間隔aで順次に配置される。この動作モードは、図10〜12でより詳細に示される。
【0053】
図10は、(理論的な)焦点の位置に相当する相互作用の中心Zの配置の1次元の例を示す。各相互作用は、レーザ・パルスによって生成され、焦点7には回折限界があり、その焦点7は、図7で考えられるように、たとえば、3μmの直径dを有する。相互作用の中心、すなわち、収束されたレーザ放射の中心は、隣接して覆われる相互作用のゾーン20、21、23、および24が、それらの近隣領域においてそれぞれオーバラップするように変位する。こうして、2つの相互作用のゾーンでそれぞれ覆われるオーバラップ領域25、26、27が存在する。相互作用のゾーン内に導入されるエネルギーは、閾値M未満であり、それにより、相互作用のゾーン20〜24のそれぞれ自体によって光ブレークスルーが確実に生じるわけではない。しかし、オーバラップによって、材料分離作用が達成される。そのため、相互作用の中心の座標間の距離が、相互作用のゾーンの範囲dより小さいことが、この動作モードにとってきわめて重要である。個々の座標X1、X2、X3、およびX4間の距離が、相互作用のゾーン20〜24の直径dのほぼ半分に相当し、それにより、単純なオーバラップが生じることが、図10に明確に示されている。
【0054】
図11は、相互作用のゾーンのより狭いグラデーションを示し、最終的に、相互作用のゾーンの4倍のオーバラップをもたらす。これにより照射量Fのさらなる低減が可能になる。
【0055】
図12は、図10および図11の図が、1次元のみである、すなわち、簡略化のためにx座標のみを考えることを示す。x方向に互いにオーバラップする相互作用のゾーンが、y方向に変位する場合、さらなるオーバラップが達成されることになり、それにより、実際にはたった1回のx方向のオーバラップでも、間隔に応じてy方向に、相互作用のゾーンの3倍または4倍のオーバラップが達成される。この場合、それぞれ、x方向またはy方向における間隔の選択は、オーバラップの所望の倍率(factor)(2,3,4,5,6,7,…)を可能にする。
【0056】
結果として、機器2は、2つの後続の相互作用の中心間の距離が、相互作用のゾーンの範囲または焦点のサイズより小さいことを特徴とし、かつ照射量Fが、光ブレークスルーを生成するのに必要とされる閾値M未満であることを特徴とする動作範囲19内で動作する。
【0057】
実際には、レーザ焦点または相互作用の中心の間隔がそれぞれ約3〜5μmであることが、できる限り小さいパルス・エネルギーを用いて高品質切除部を生成し、かつ、制限された時間を要求するのに好適であることがわかった。
【0058】
非常に微細な切除部を生成するレーザ手術機器2において、たとえば、上述した照射量値がレーザ・パルスに使用される場合、領域18の外側での動作中に比べて、サイズの小さい、また、寿命の短いプラズマ・バブルもしくはガス・バブルが形成されるか、または、(領域19内での動作中に)バブルが全く形成されないため、切除部は、生成された時でさえも視認されない。これは、たとえば、へらによって、独立した切除部を準備することをより難しくする。多くの用途において、また、まだ完全に分離されていない残留ブリッジが、へらまたは他の器具によって穿孔される場合に使用される手作業による手技は、こうした平滑な切除部の場合、非常に難しくなる可能性がある。
【0059】
これを回避するために、レーザ手術機器2の制御装置17は、たとえば、図8および図9に示す切除の分割を実施する。切除表面は、異なる細かさの程度を有する部分切除表面に分割される。これらの部分切除表面は、異なる平滑さを持って切除され、それにより、切除表面には、他の領域と比べて、より良好な光学的可視性を有するような領域が形成される。
【0060】
図8は、患者の目1の角膜5の平面図を示し、図9は、図8の線A1−A1に沿う断面図を示す。見てわかるように、切除表面9は、図3に既に概略的に示すように、部分容積Tを分離するようになっている。そして、切除表面9は、前部分Fと後部分Lからなる。前部分Fは、横方向に開く切除16によって、角膜表面までつながる周縁開口Sまで導かれる。こうして、切除表面9を形成した後、レンズ形状部分容積Tを形成する部分F、L、16、およびSが、周縁開口Sによって形成されるポケット内に位置する。
【0061】
レンズ形状部分容積Tと角膜5の残りの部分との間の可能性のある組織のブリッジを切断するため、外科医が、ヘラまたは他の手術機器を用いてこのポケットに触れるために、前部分Fおよび後部分Lは、それぞれ、2つの部分領域に分割される。実質的に円であるコア領域F1またはL1は、それぞれ、環状周縁領域F2またはL2によって囲まれる。視野の光軸の近くに位置するコア領域において、サイズの小さいプラズマ・バブル、すなわち、微細な切除線が形成される。これは、たとえば、それぞれ、図6および図7の領域18または領域19における動作によって実施されてもよい。対照的に、たとえば、比較的大きなプラズマ・バブルが形成されるように、領域18または19の外側で意図的に動作することによって、(環状)周縁領域L2およびF2では、比較的粗い切除部が生成される。こうして、これらの周縁領域では、切除表面が、非常に粗面となり、外科医が認識するのが容易になる。
【0062】
中心領域F1およびL1の直径は、好ましくは、処置される目の瞳の直径Pより大きい。そのため、粗面の切除部が使用される、周縁領域F2およびL2は、角膜5の領域の外側に位置し、光学認識に使用され、相応して、擾乱作用を持たない。部分LおよびFを分割する目的は、切除の最大精度の態様と、異なる処理の結果としての周縁領域内の切除部の可視性による良好な操作性の態様とを同時に達成することである。
【0063】
プラズマ・バブルが、材料分離に使用される場合、レーザ・パルスのエネルギーは、閾値Mを超える。既に述べたように、レーザ・エネルギーの組織内への吸収から生じるバブルの形状は、経時的に変化を受ける。個々のバブルが形成される第1段階の後に、いくつかの個々のバブルが、結合して、より大きなマクロバブルを形成する凝集段階が続く。最後に、バブルが、再び完全に消えるまで、マクロバブルのガス含有物が、周囲組織によって吸収される最終段階として、消散が認められる。マクロバブルは、周囲組織を変形させる有害な特性を有する。プラズマ・バブルの始点を形成するために、変形した組織内のある位置にさらなる相互作用の中心が設置される場合、バブルが消え、かつ、変形した組織が(少なくとも部分的に)緩和する消散段階が始まるとすぐに、相互作用の中心の位置が変化し、その影響によって組織分離の位置が変化する。マクロバブルは、固有時間後にのみ形成され、レーザ・パルス・エネルギーを導入するときにはまだ存在していないため、レーザ手術機器2の一変形例では、おそらく互いに影響を及ぼす組織の2つの領域へのレーザ・エネルギーの印加の間の時間は、マクロバブルを形成するのに必要とされる固有時間より短くなるように十分短く維持されることが、想定される。
【0064】
レンズ形状の部分容積Tの分離中に、互いに有害な影響がある切除表面9の後部分と前部分の領域は、視野の光軸の領域に位置する。前に処理された後部分Lが既にマクロバブルを含むときのみ、切除表面9の前部分Fに切除部が生成される場合、前部分Fの切除表面は、変形した組織内に位置する。この場合、緩和後の結果は、前部分F内の切除表面9の望ましくない起伏であることになる。したがって、レーザ手術機器2は、マクロバブルが形成されるのにかかる固有時間より短い時間間隔内で、前部分Fと後部分Lにおいて切除表面を生成する。通常、こうした時間は、約5sである。
【0065】
これを達成する一態様は、前部分と後部分を、対応する部分表面に分割し、かつ、少なくとも中心領域において、部分表面(前方のまた後方の)を生成するための固有時間を超えないように、切除表面の生成中に後部分の部分表面と前部分の部分表面とを交互に行うことにある。さらなる可能性は、相互作用の中心の適切な順次配置にある。そのため、たとえば、最初に、後部分Lを外から内へ視野の光軸に向かって導く螺旋で切除することができ、直後に、前部分Fを視野軸から外に延びる螺旋で切除することができる。視野軸の周りのコア領域において少なくとも生成される相互作用は、固有期間によって与えられる時間枠内にあり、それにより、前部分の処理中に、マクロバブルに関する影響はない。
【0066】
制御装置17の制御下でレーザ手術機器2が実施する、部分表面への分割中に、形成される後部分が、散乱中心としての、既に処理された前表面または相互作用のゾーンによって、乱されないことが保証される。
【0067】
上記した切除形状、表面分割などは、制御装置17の制御下でレーザ手術機器によって実施される。制御装置17は、本明細書で説明されたプロセス機能によって、レーザ手術機器2の動作をもたらす。
【0068】
レーザ手術機器の実施形態は、先に説明された限りでは、レーザ手術機器2の特定の実現態様に応じて、単独でおよび組み合わせて実現することができる。レーザ手術で使用される代わりに、機器2は、非手術的材料処理のために、たとえば、導波路の生産または可撓性材料の処理において使用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ放射によって目の組織を処理する装置であって、
該組織(5)と相互作用するためのパルス・レーザ放射(3)を放出するレーザ放射源(S)と、
該パルス処理用レーザ放射(3)を該組織(5)内の相互作用の中心(7)に収束させる光学部品(6)と、
該組織(5)内の該相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニット(10)であって、各処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた該相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で該組織(5)と相互作用し、それにより、該組織(5)が、該相互作用のゾーン(8)内で分離する、前記走査ユニット(10)と、
相互作用のゾーン(8)の順次配置によって、切除表面(9)が、該組織(5)内に生成されるように、該走査ユニット(10)および該レーザ放射源(S)を制御する制御ユニット(17)とを備える装置において、
該制御ユニット(17)が、それぞれの処理用レーザ・パルスの照射量Fが閾値M未満であり、該閾値Mを超えると、光ブレークスルー(8)が前記組織(5)内で形成され、2つの順次処理用レーザ・パルスの前記相互作用の中心(7)の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、順次に生成される相互作用のゾーン(20〜24)が前記組織(5)内でオーバラップするように該レーザ放射源(S)および該走査ユニット(10)を制御することを特徴とする装置。
【請求項2】
隣接する相互作用の中心(7)が互いから空間距離a≦10μmに位置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
それぞれの相互作用の中心(7)について、処置レーザ・パルス照射量Fが、5J/cm2未満であることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項4】
それぞれの処理用レーザ・パルスの前記照射量が、M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)として与えられる閾値M未満であり、式中、aが、前記相互作用の中心(7)の間の空間間隔であり、rが、3μm≦r≦10μmであるパラメータであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
パルス・レーザ放射(3)が生成されて、目の組織(5)内の相互作用の中心(7)に収束され、該組織(5)内の該相互作用の中心(7)の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた該相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で該組織(5)と相互作用し、それにより、該組織(5)が、該相互作用のゾーン(8)内で分離され、かつ、切除表面(9)が、該相互作用のゾーン(8)の順次配置によって該組織(5)内に生成されるようにレーザ機器を動作させる方法において、
それぞれの処理用レーザ・パルスの照射量Fが閾値M未満であり、該閾値Mを超えると、光ブレークスルー(8)が前記組織(5)内で形成され、2つの順次処理用レーザ・パルスの前記相互作用の中心(7)の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、順次に生成される相互作用のゾーン(20〜24)が前記組織(5)内でオーバラップするようにレーザ機器を動作させることを特徴とする方法。
【請求項6】
隣接する相互作用の中心(7)が互いから空間距離a≦10μmに位置することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該相互作用のゾーン(8)が、それぞれが5J/cm2未満の照射量Fを有するパルスを用いて照明されるようにレーザ機器を動作させることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記照射量Fが、M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)として与えられる閾値M未満であり、式中、aが、前記相互作用の中心(7)の間の空間間隔であり、rが、3μm≦r≦10μmであるパラメータであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項1】
レーザ放射によって目の組織を処理する装置であって、
該組織(5)と相互作用するためのパルス・レーザ放射(3)を放出するレーザ放射源(S)と、
該パルス処理用レーザ放射(3)を該組織(5)内の相互作用の中心(7)に収束させる光学部品(6)と、
該組織(5)内の該相互作用の中心の位置をシフトさせる走査ユニット(10)であって、各処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた該相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で該組織(5)と相互作用し、それにより、該組織(5)が、該相互作用のゾーン(8)内で分離する、前記走査ユニット(10)と、
相互作用のゾーン(8)の順次配置によって、切除表面(9)が、該組織(5)内に生成されるように、該走査ユニット(10)および該レーザ放射源(S)を制御する制御ユニット(17)とを備える装置において、
該制御ユニット(17)が、それぞれの処理用レーザ・パルスの照射量Fが閾値M未満であり、該閾値Mを超えると、光ブレークスルー(8)が前記組織(5)内で形成され、2つの順次処理用レーザ・パルスの前記相互作用の中心(7)の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、順次に生成される相互作用のゾーン(20〜24)が前記組織(5)内でオーバラップするように該レーザ放射源(S)および該走査ユニット(10)を制御することを特徴とする装置。
【請求項2】
隣接する相互作用の中心(7)が互いから空間距離a≦10μmに位置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
それぞれの相互作用の中心(7)について、処置レーザ・パルス照射量Fが、5J/cm2未満であることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項4】
それぞれの処理用レーザ・パルスの前記照射量が、M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)として与えられる閾値M未満であり、式中、aが、前記相互作用の中心(7)の間の空間間隔であり、rが、3μm≦r≦10μmであるパラメータであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
パルス・レーザ放射(3)が生成されて、目の組織(5)内の相互作用の中心(7)に収束され、該組織(5)内の該相互作用の中心(7)の位置がシフトされ、それぞれの処理用レーザ・パルスが、該レーザ・パルスに割り当てられた該相互作用の中心(7)を囲むゾーン(8)内で該組織(5)と相互作用し、それにより、該組織(5)が、該相互作用のゾーン(8)内で分離され、かつ、切除表面(9)が、該相互作用のゾーン(8)の順次配置によって該組織(5)内に生成されるようにレーザ機器を動作させる方法において、
それぞれの処理用レーザ・パルスの照射量Fが閾値M未満であり、該閾値Mを超えると、光ブレークスルー(8)が前記組織(5)内で形成され、2つの順次処理用レーザ・パルスの前記相互作用の中心(7)の空間距離aが、焦点のサイズdより小さく、順次に生成される相互作用のゾーン(20〜24)が前記組織(5)内でオーバラップするようにレーザ機器を動作させることを特徴とする方法。
【請求項6】
隣接する相互作用の中心(7)が互いから空間距離a≦10μmに位置することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該相互作用のゾーン(8)が、それぞれが5J/cm2未満の照射量Fを有するパルスを用いて照明されるようにレーザ機器を動作させることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記照射量Fが、M=3.3J/cm2−(2.4J/cm2)/(1+(a/r)2)として与えられる閾値M未満であり、式中、aが、前記相互作用の中心(7)の間の空間間隔であり、rが、3μm≦r≦10μmであるパラメータであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−125624(P2012−125624A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79771(P2012−79771)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−534903(P2008−534903)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−534903(P2008−534903)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】
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