説明

レーザ治療装置

【課題】 疼痛緩解効果が発揮されやすいレーザ治療装置を提供すること。
【解決手段】 パルス状のレーザ光を発振する治療光発振器5と、音を出力するスピーカ7と、治療光発振器5およびスピーカ7を制御する出力制御部10とを備え、出力制御部10は、術者によって任意に設定される設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して音が出力されるように、治療光発振器5およびスピーカ7を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を患部に照射することにより、当該患部の疼痛を緩解させ、創傷の治癒を促進させるレーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疼痛の緩解または創傷の治癒等を目的とする治療の一つとして、レーザ光を患部に照射する治療が行われている。これは、レーザ光の温熱効果および血管拡張効果を期待したものである。さらに、レーザ光は、自律神経および末梢神経に作用するため、痛み物質発生防止の効果も得ることができる。
【0003】
一方、レーザ光は、患部以外の箇所へ照射されることによって、人体へ悪影響を与える場合があることも知られている。そのため、従来のレーザ治療装置は、術者および患者の安全のため、装置稼動中もしくはレーザ光が発射される可能性があるときは、警告灯または警告音、もしくはその両方による警告を発する構成となっている(非特許文献1の「4.6 レーザ放射の放出警告」)。警告音には、術者および患者への警告を目的とするため、ブザー音等が用いられる。さらに、患部以外の箇所への誤照射等を防ぐ目的で、可視光を用いて患部を照らす、ガイド光付きのレーザ治療装置も提案されている。
【0004】
以下に、図面を用いて従来のレーザ治療装置について説明する。図7は、従来のレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【0005】
従来のレーザ治療装置は、本体装置101と、プローブ103によって構成されている。本体装置101は、光ファイバ102、制御部104、治療光発振器105、ガイド光発振器106、スピーカ107、操作インターフェース108、および治療光制御部109を備えている。
【0006】
プローブ103は、光ファイバ102を介して、本体装置101と接続される。本体装置101の内部では、制御部104が、治療光制御部109、ガイド光発振器106、スピーカ107、操作インターフェース108へ接続される。
【0007】
治療光制御部109は、光ファイバ102に接続された治療光発振器105を制御する。スピーカ107は照射警告音を発する。操作インターフェース108は、電源スイッチ、治療光照射時間等を入力するための入力部(図示せず)、装置の各種設定、入力された治療光照射時間等の表示をするための表示部(図示せず)を含む。
【0008】
まず、術者は、レーザ治療を行う時間を前記入力部によって入力すると、操作インターフェース108には、入力された時間が表示される。次に、治療光制御部109が治療光発振器105を制御することにより、治療光を発振させる。さらに、制御部104がガイド光発振器106を制御することにより、ガイド光を発振させる。治療光発振器105およびガイド光発振器106によって発振された治療光およびガイド光は、光ファイバ102を介して、プローブ103へ導かれる。さらに、治療光の照射と同時に、スピーカ107が照射警告音を発する。
【0009】
これにより、術者がプローブ103を患部へ接触あるいは近接させると、入力された時間に応じて、連続的に治療光およびガイド光が照射され、照射警告音が発せられる。
【非特許文献1】日本工業規格 レーザ製品の安全基準(C6802)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のレーザ治療装置では、照射警告音は、単に術者および患者の安全のために出力され、疼痛緩解効果の助長を目的としたものではなかった。
【0011】
本発明は、治療光と照射警告音とを効果的に発することにより、治療光照射による効果を十分に発揮することができるレーザ治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明にかかるレーザ治療装置は、パルス状のレーザ光を発振するレーザ光発振部と、音を出力する音出力部と、前記レーザ光発振部および前記音出力部を制御する出力制御部とを備え、前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記音が出力されるように、前記レーザ光発振部および前記音出力部を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明にかかるレーザ治療装置では、レーザ光発振部がパルス状のレーザ光を発振し、音出力部が音を出力し、出力制御部がレーザ光発振部および音出力部を制御する。出力制御部は、設定照射時間内において発振される複数回のパルス発光の少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して音を出力する。従って、術者が患者に対してレーザ光による治療を行う際、レーザ光の発振と音の出力とが、略同期して行われる。そのため、患者がレーザ光による光刺激が与えられるタイミングを、聴覚からも意識的に自覚することによって患者の光感受性が向上し、疼痛緩解効果を増大させることができる。なお、略同期とは、完全に一致することを求めるものではない。すなわち、パルス発光の発光時間と音の出力時間とは、当該発光期間の前後の短時間において、音が出力されていてもよく、さらには、音出力の幅が光出力の一周期以下であればよい。また、設定照射時間とは、術者によって入力される任意のレーザ光照射時間である。
【0014】
本発明にかかるレーザ治療装置において、前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記音が出力される断続出力期間と、前記音が出力されない出力停止期間とが間欠的に繰り返されるように、前記音出力部を制御することが好ましい。これにより、出力制御部が、音の出力をパルス発光と略同期して行うだけでなく、断続出力期間と完全停止期間とを組み合わせることによって、患者の神経系の緊張を和らげ、疼痛緩解効果をさらに増大させることができる。
【0015】
本発明にかかるレーザ治療装置において、可視光であるガイド光を発振するガイド光発振部をさらに備え、前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記ガイド光が発振されるように、さらに、前記ガイド光発振部を制御することが好ましい。従って、術者が患者に対してレーザ光による治療を行う際、レーザ光およびガイド光の発振と、音の出力とが、略同期して行われる。また、ガイド光発振部によって発振されるガイド光が可視光であるため、患者は、レーザ光による光刺激が与えられるタイミングを、聴覚および視覚からも意識的に自覚することによって、患者の光感受性がさらに向上し、疼痛緩解効果をさらに増大させることができる。
【0016】
本発明にかかるレーザ治療装置において、前記ガイド光発振部によって発振されるガイド光が緑色レーザまたは青色レーザであることが好ましい。これにより、ガイド光が患部表面に照射されるため、患部の周辺にある血管を拡張し、血流を促すことができるため、疼痛緩解効果をより向上させることができる。なお、緑色レーザの波長領域は、500〜550nmであり、青色レーザの波長領域は、325〜375nmである。
【0017】
本発明にかかるレーザ治療装置において、前記レーザ光発振部によって発振されるレーザ光が近赤外レーザであることが好ましい。これにより、患部へ照射するレーザ光が近赤外の波長領域であるため、レーザ光がより深部まで到達することができることから、より深部における治療が可能となる。なお、近赤外の波長領域は、800〜850nmである。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるレーザ治療装置によれば、複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して音が出力されることにより、患部への光刺激に加え、聴覚的にも患者に刺激を与えることによって、疼痛緩解効果が発揮されやすいレーザ治療装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明にかかるレーザ治療装置について、図面を用いて詳しく説明する。
(実施の形態1)
以下に、第1の実施の形態にかかるレーザ治療装置について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、本体装置1およびプローブ3によって構成される。本体装置1は、光ファイバ2、制御部4、治療光発振器5(レーザ光発振部)、ガイド光発振器6(ガイド光発振部)、スピーカ7(音出力部)、操作インターフェース8、および出力制御部9を備えている。
【0022】
出力制御部9は、治療光発振器5を制御することにより、治療光(レーザ光)の発振開始および発振停止を指示する。さらに、出力制御部9は、スピーカ7を制御することにより、音の出力開始および出力停止を指示する。
【0023】
治療光発振器5は、患部を治療するための治療光を発振する半導体レーザ、発光ダイオード等の光源である。治療光発振器5から発振される治療光は、光ファイバ2を通って、プローブ3へ導かれる。治療光は、パルス状のレーザ光である。
【0024】
スピーカ7は、プローブ3から治療光が照射されることを術者および患者に知らせるために、任意の音を出力する音源である。スピーカ7は、音を術者および患者に知らせることができればよいため、本体装置1に内蔵されなくてもよい。例えば、スピーカ7は、ケーブル等を用いて本体装置と接続されてもよく、さらに、スピーカ7の代わりにイヤホンまたはヘッドホン等を用いてもよい。
【0025】
制御部4は、出力制御部9、ガイド光発振器6、および操作インターフェース8を制御する。制御部4は、タイマ(図示せず)と接続され、当該タイマによってプローブ3から治療光照射開始からの時間が測定される。
【0026】
操作インターフェース8は、入力部(図示せず)および表示部(図示せず)を含んでいる。当該入力部は、術者が治療光を患者に対して照射する時間等を入力する操作パネル等であり、当該表示部は、照射時間等の設定状況を表示する表示パネル等である。ガイド光発振器6は、ガイド光を発振する半導体レーザ、発光ダイオード等の光源である。ガイド光は、治療光が患部へ適切に照射されているか否かが術者にとって把握し易い可視光であり、プローブ3から照射される治療光と平行して患部へ照射される。制御部4は、治療光照射開始からの時間が、術者によって入力された治療光照射時間に達するまでの間、出力制御部9へ治療光照射状態を指示し、ガイド光発振器6へガイド光の発振開始および発振停止を制御する。
【0027】
プローブ3は、治療光発振器5およびガイド光発振器6から発振される治療光およびガイド光を、患部へ照射する探触子である。プローブ3は、患部に対して接触または近接させて用いられる。プローブ3は、本体装置1と光ファイバ2を介して接続されている。光ファイバ2は、治療光およびガイド光をプローブ3へ導くケーブルである。
【0028】
次に、本実施の形態にかかるレーザ治療装置の動作について説明する。
【0029】
術者が、操作インターフェース8へ治療光の照射時間等の設定を行う。操作インターフェース8へ入力された治療光の照射時間は、制御部4へ出力される。制御部4は、出力制御部9へ治療光照射状態(オン状態)を指示し、ガイド光発振器6へガイド光の出力を開始するための出力制御信号を送信する。制御部4から出力制御信号を受信したガイド光発振器6はガイド光の発振を開始する。
【0030】
制御部4の指示に従って、出力制御部9は、治療光発振器5へ治療光の発振開始を表す出力制御信号を送信し、スピーカ7へ音の出力開始を表す出力制御信号を送信する。
【0031】
ここで、制御される治療光発振器5およびスピーカ7が、出力制御部9より送信される出力制御信号によって、治療光を発振し、音を出力するタイミングについて、図面を用いて説明する。図2は、治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。図2中の(a)は、治療光発振器5から発振される治療光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図2中の(b)は、スピーカ7から出力される音の出力タイミングの一例を示す説明図である。図2中の(c)は、ガイド光発振器6から発振されるガイド光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図2中の(a)〜(c)において、縦軸は治療光、音、およびガイド光の有無を示し、横軸は時間の経過を示している。
【0032】
図2に示すように、治療光の発振開始のタイミングと音の出力開始のタイミングとは、略同一である。さらに、治療光の発振停止のタイミングと音の出力停止のタイミングとは、略同一である。治療光がパルス状に発振され、一例として、当該治療光のパルス幅が20ms、間隔が180ms(1周期200ms)である場合の出力制御部9の動作について、以下に説明する。
【0033】
まず、出力制御部9は、治療光の発振開始を表す出力制御信号を治療光発振器5へ送信し、音の出力開始を表す出力制御信号をスピーカ7へ送信する。治療光発振器5は治療光の発振を開始し、スピーカ7は音の出力を開始する。
【0034】
出力制御部9は、治療光のパルス幅ごとに、治療光および音を制御する。治療光の発振開始から20ms後、出力制御部9は、治療光の発振停止を表す出力制御信号を治療光発振器5へ送信し、音の出力停止を表す出力制御信号をスピーカ7へ送信する。治療光発振器5は治療光の発振を停止し、スピーカ7は音の出力を停止する。
【0035】
このように、出力制御部9は治療光のパルス幅ごとに、出力制御信号を治療光発振器5およびスピーカ7へ送信することにより、治療光の発振開始および発振停止、音の出力開始および出力停止を略同期して行う。なお、治療光の発振開始および発振停止と、音の出力開始および出力停止とは、完全に同期することが好ましい。
【0036】
前記タイマによって計測される治療光発振開始からの時間が、術者によって操作インターフェース8へ入力された治療光照射時間に達した際、制御部4は、出力制御部9へ治療光照射状態(オフ状態)を指示し、ガイド光発振器6へガイド光の発振を停止するための出力制御信号を送信する。制御部4から出力制御信号を受信したガイド光発振器6はガイド光の発振を停止する。
【0037】
制御部4の指示に従って、出力制御部9は、治療光発振停止を表す出力制御信号を治療光発振器5へ送信し、音出力停止を表す出力制御信号をスピーカ7へ送信する。治療光発振器5は治療光の発振を停止し、スピーカ7は音の出力を停止する。
【0038】
以上のように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置によれば、出力制御部9が治療光発振器5およびスピーカ7を制御し、治療光の発振および音の出力が略同期して行われる。そのため、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、治療光による患部への光刺激に加え、聴覚的にも患者へ刺激を与えることができる。これにより、患部へ与えられる光刺激のタイミングを患者に意識的に自覚させ、音が単調または光刺激と無関係に出力される場合と比べ、患者の光感受性をより向上させることができ、十分な疼痛緩解効果が発揮される。
【0039】
また、本実施の形態にかかるレーザ治療装置では、治療光発振器5が高い出力をパルス状のレーザ光を用いてプローブ3から照射するため、患者は治療光と音との出力タイミングが略同時であることを実感しやすいという効果もある。
(実施の形態2)
以下に、第2の実施の形態にかかるレーザ治療装置について図面を用いて説明する。
【0040】
図3は、本実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態にかかるレーザ治療装置と同様の機能を実現するものについては、図3において同様の番号を付番し、その説明を省略する。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、本体装置1およびプローブ3によって構成される。本体装置1は、光ファイバ2、制御部10、治療光発振器5、ガイド光発振器6、スピーカ7、操作インターフェース8、および出力制御部11を備えている。すなわち、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、制御部4の代わりに制御部10を備え、出力制御部9の代わりに出力制御部11を備えている点において、第1の実施の形態と異なる。
【0042】
制御部10は、出力制御部11および操作インターフェース8を制御する。出力制御部11は、治療光発振器5、ガイド光発振器6、およびスピーカ7へ接続され、治療光、ガイド光、および照射警告音の出力を制御する。すなわち、本実施の形態の制御部10は、ガイド光発振器6へ接続されず、制御を行わない点で、第1の実施の形態の制御部4と異なり、一方、本実施の形態の出力制御部11は、治療光発振器5およびスピーカ7の制御に加え、さらに、ガイド光発振器6の制御を行う点で、第1の実施の形態の出力制御部9と異なる。
【0043】
本実施の形態にかかるレーザ治療装置の動作は、制御部10および出力制御部11による制御動作だけが、第1の実施の形態と異なるため、これ以外の本実施の形態にかかるレーザ治療装置の動作の説明を省略する。
【0044】
制御部10は、治療光照射開始からの時間が、術者によって入力された治療光照射時間に達するまでの間、出力制御部11へ治療光照射状態を指示する。制御部10の指示に従って、出力制御部11は、治療光およびガイド光の発振開始を表す出力制御信号を治療光発振器5およびガイド光発振器6へ、音の出力開始を表す出力制御信号をスピーカ7へ送信する。
【0045】
ここで、制御される治療光発振器5、ガイド光発振器6およびスピーカ7が、出力制御部11より送信される出力制御信号によって、治療光およびガイド光を発振し、音を出力するタイミングについて、図面を用いて説明する。図4は、治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。図4中の(a)は、治療光発振器5から発振される治療光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図4中の(b)は、スピーカ7から出力される音の出力タイミングの一例を示す説明図である。図4中の(c)は、ガイド光発振器6から発振されるガイド光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図4中の(a)〜(c)において、縦軸は治療光、音、およびガイド光の有無を示し、横軸は時間の経過を示している。
【0046】
図4に示すように、治療光およびガイド光の発振開始のタイミングと、音の出力開始のタイミングとは略同一である。さらに、治療光およびガイド光の発振停止のタイミングと、音の出力停止のタイミングとは略同一である。
【0047】
以上のように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置によれば、出力制御部11が治療光発振器5、ガイド光発振器6、およびスピーカ7を制御し、治療光発振器5およびガイド光発振器6が治療光およびガイド光発振し、スピーカ7が音を出力するタイミングは、ほぼ同時である。そのため、レーザ治療装置は、治療光による患部への光刺激に加え、視覚的にも聴覚的にも患者へ刺激を与えることができる。これにより、患部へ与えられる光刺激のタイミングを患者に意識的に自覚させ、ガイド光および音が単調または光刺激と無関係に出力される場合と比べ、患者の光感受性をより向上させることができ、十分な疼痛緩解効果が発揮される。
(実施の形態3)
以下に、第3の実施の形態にかかるレーザ治療装置について図面を用いて説明する。
【0048】
図5は、本実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態において、第2の実施の形態にかかるレーザ治療装置と同様の機能を実現するものについては、図5において同様の番号を付番し、その説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、本体装置1およびプローブ3によって構成される。本体装置1は、光ファイバ2、制御部10、治療光発振器5、ガイド光発振器6、スピーカ7、操作インターフェース8、および出力制御部12を備えている。すなわち、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、出力制御部11の代わりに、出力制御部12を有している点において、第2の実施の形態と異なる。
【0050】
出力制御部12は、治療光発振器5、ガイド光発振器6、およびスピーカ7へ接続され、治療光、ガイド光、および音の出力を制御する。
【0051】
本実施の形態にかかるレーザ治療装置の動作は、出力制御部12によって送信される出力制御信号を除き、第2の実施の形態にかかるレーザ治療装置の動作と同様であるため、その説明を省略し、出力制御部12から治療光発振器5、ガイド光発振器6、およびスピーカ7へ送信される出力制御信号に関して、以下に図面を用いて説明する。
【0052】
ここで、制御される治療光発振器5、ガイド光発振器6およびスピーカ7が、出力制御部12より送信される出力制御信号によって、治療光およびガイド光を発振し、音を出力するタイミングについて、図面を用いて説明する。図6は、治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。図6中の(a)は、治療光発振器5から発振される治療光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図6中の(b)は、スピーカ7から出力される音の出力タイミングの一例を示す説明図である。図6中の(c)は、ガイド光発振器6から発振されるガイド光の発振タイミングの一例を示す説明図である。図6中の(a)〜(c)において、縦軸は治療光、音、およびガイド光の有無を示し、横軸は第1の実施の形態の説明で用いた図2中の(a)〜(c)と比べ、より長い時間経過を示している。
【0053】
図6に示すように、治療光およびガイド光は、発振を断続的に繰り返している。また、音は、任意の期間(以下、断続出力期間T1)において、治療光およびガイド光と略同一のタイミングで出力を断続的に繰り返し、任意の期間(以下、完全停止期間T2)において、出力が停止される。
【0054】
例えば、断続出力期間T1および完全停止期間T2は1秒間である場合について、以下に説明する。ここで、治療光およびガイド光のパルス周波数は、5Hzであるものとする。
【0055】
出力制御部12は、音の断続出力期間T1と完全停止期間T2とが1秒間ずつ繰り返されるように、スピーカ7へ出力制御信号を送信する。この場合、T1においては、治療光およびガイド光と同期して音を出力するよう、制御部4と出力制御部12とが、治療光発振器5、ガイド光発振器6、およびスピーカ7を制御する。T2においては、治療光およびガイド光は5Hzで出力されているが、音は出力されない。すなわち、音は、1秒間、治療光およびガイド光と略同期して出力され、次の1秒間は出力されないという周期を繰り返す。
【0056】
なお、図6において、音の断続出力期間T1および完全停止期間T2の長さが共に1秒間の例を図示したが、断続出力期間T1および完全停止期間T2の長さはこの一例に限らない。
【0057】
以上のように、本実施の形態にかかるレーザ治療装置は、出力制御部12によって、治療光およびガイド光と略同時のタイミングで音が出力される断続出力期間T1と、音が出力されない完全停止期間T2とが、間欠的に繰り返される。また、単に治療光の発振タイミングと合わせて音を出力するだけでなく、リラクゼーション効果を生み出すメロディ等を出力すれば、患者の神経系の緊張を和らげ、さらなる疼痛緩解効果を発揮することができる。
【0058】
なお、治療光のパルス周波数が5Hz近傍であり、なおかつ、治療光のパルス発光間隔が、パルス幅の約9倍以上である場合、治療光のパルス発光間隔において、音を出力してもよい。この際、音の周波数を、精神的に安定した状態を示す脳波であるアルファ波(周波数8〜13Hz)と同様の周波数とすることが好ましい。これにより、リラクゼーション効果を高めることができるため、神経系の緊張を和らげ、さらなる疼痛緩解効果を発揮することができる。
【0059】
さらに、上記各実施の形態にかかるレーザ治療装置において、音の出力開始のタイミングおよび出力停止のタイミングは、治療光の発振開始のタイミングおよび発振停止のタイミングと略同一であると記載したが、治療光が発振される時間の前後の短期間において、音が出力されていてもよい。
【0060】
また、上記各実施の形態において、治療光発振器が発振する治療光の波長が、近赤外の波長領域であることが好ましい。治療光発振器5として、患部を治療するための治療光を発振する半導体レーザ、発光ダイオード等の光源を用い、近赤外(波長領域800nm〜850nm近傍)の波長領域のレーザ光を発振することが好ましい。
【0061】
これにより、治療光が生体に対する透過性が高いため、術者は、患部のより深部における治療が可能となる。
【0062】
さらに、上記各実施の形態において、ガイド光発振器が出力するガイド光の波長が、緑色または青色の波長領域であることが好ましい。ガイド光発振器6として、ガイド光を発振する半導体レーザ、発光ダイオード等の光源を用い、波長が500〜550nm近傍の緑色レーザまたは波長が325〜375nm近傍の青色レーザを発振することが好ましい。
【0063】
これにより、ガイド光が生体表面に対して血管拡張作用による血流促進効果があるため、術者は、より効果的な治療が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明にかかるレーザ治療装置は、パルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して音が出力されることにより、患部への光刺激に加え、聴覚的にも患者に刺激を与えることによって、当該患部の疼痛を緩解させ、創傷の治癒を促進させるレーザ治療装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態にかかるレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態における治療光発振器5からの治療光の発振開始および発振停止、スピーカ7からの音の出力開始および出力停止、ガイド光発振器6からのガイド光の発振開始および発振停止のタイミングの一例を表す説明図である。
【図7】従来のレーザ治療装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
1 本体装置
2 光ファイバ
3 プローブ
4、10 制御部
5 治療光発振器
6 ガイド光発振器
7 スピーカ
8 操作インターフェース
9、11、12 出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状のレーザ光を発振するレーザ光発振部と、
音を出力する音出力部と、
前記レーザ光発振部および前記音出力部を制御する出力制御部とを備え、
前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記音が出力されるように、前記レーザ光発振部および前記音出力部を制御することを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記音が出力される断続出力期間と、前記音が出力されない出力停止期間とが間欠的に繰り返されるように、前記音出力部を制御する、請求項1に記載のレーザ治療装置。
【請求項3】
可視光であるガイド光を発振するガイド光発振部をさらに備え、
前記出力制御部は、設定照射時間内の複数回のパルス発光における少なくとも1回以上のパルス発光と略同期して前記ガイド光が発振されるように、さらに、前記ガイド光発振部を制御する、請求項1または2に記載のレーザ治療装置。
【請求項4】
前記ガイド光発振部によって発振されるガイド光が緑色レーザまたは青色レーザである、請求項3に記載のレーザ治療装置。
【請求項5】
前記レーザ光発振部によって発振されるレーザ光が近赤外レーザである、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ治療装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−95077(P2006−95077A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284870(P2004−284870)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】