説明

レーザ照明装置

【課題】レーザの進行方向に垂直な面内での強度分布のばらつきを抑え、対象面を一様にかつ十分明るく照明することのできるレーザ照明装置を実現する。
【解決手段】レーザ光源からのレーザ6の光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段3と、少なくとも1つの光拡大抑制手段100とを有し、光拡散手段3は、光をランダムに拡散ないしは散乱する手段であり、光拡大抑制手段100は、拡散ないしは散乱されたことによりその光束径が拡大し位相が乱され全体の直進性が失われたレーザ光を、位相は乱れたままで直進性のみを回復させる手段であり、レーザ光源からのレーザ光6を光拡散手段3を通過させ、光拡大抑制手段から拡散されかつ拡大しない光6−2として、出射させて、対象を照射する光を生成するレーザ照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象上に、一様に(均等に)かつ明るく、レーザ光を照射するレーザ照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光は、進行方向に垂直な面に対し、強度の空間分布を有しているため、レーザ光を照明として用いる場合、空間分布の比較的一様な中心部分を選択的に用いるか、何らかの方法で空間分布をより一様に変換する必要がある。
【0003】
多モードで発振するレーザ光の場合、非常に複雑な強度空間分布を有するため、比較的大きなものを一様に照明することはできるが、顕微鏡で観察する必要性のある比較的小さなものの照明としては、強度の空間分布が顕在化してしまうので、そのままでは一様な照明光として用いることはできない。
【0004】
また、もっとも基本的なモードであるTEM00モードで発振するレーザ光であっても、強度の空間分布がガウス分布であるため、比較的一様な中心部分を選択的に用いても、完全には一様にすることはできないばかりか、そのパワーのほとんどを無駄にすることになる。
【0005】
なお、強度の空間分布がある場合、焦点をずらして照明すれば、それなりに一様な照明ができるが、干渉による強度変動は、どうしても解消できない。
【0006】
一方、従来から、回折格子(非特許文献1参照)や、メッシュスクリーン(非特許文献2参照)や光拡散板(非特許文献3参照)などの分散素子にレーザ光を当て、分散素子面からの擬似光源として、それを照明に用いる方法がある。しかしながら、レーザ光は高いコヒーレンスを持つため、スペックル雑音と呼ばれる干渉雑音を生じさせてしまう。
すなわち、レーザ光の位相は拡散により完全にランダムに乱されるわけではなく、偶然位相の揃ったところでは光強度が非常に強くなり、逆に位相が180度ずれたところでは光強度がゼロになる場合もあるために、それによりまだら模様の斑点ノイズが生じることがあり、これをスペックル雑音という。
【0007】
このようなスペックル雑音を減じさせるため、分散素子に対してレーザ光を円形に回転させたり(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)、回折格子やスクリーンメッシュや光拡散板をピエゾ素子によって動かす(非特許文献4参照)ことで、干渉パターンを変化させより一様に照明することも行われているが、一様性が不十分で光の散逸も大きい。
【0008】
一方、スペックル雑音を低減するための方法として、長さの異なる光ファイバを複数本用いた構造が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、複数本の光ファイバを用いたバンドル構造であるため、特に、入射時の損失が大きく、全体の光透過率は、高々50%程度である。また、光学系の分解能レベルでの観察に用いる場合には、非常に多数の光ファイバが必要であり、実質的に雑音を取り切ることはできない。
【0009】
これに対し、位相をランダムに乱す板状のものと前記バンドル光ファイバを組合せた方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、位相をよりランダムに乱す効果は期待できるが、複雑化してしまうだけでなく、光量の損失は一層大きくなる。
【0010】
一方、一本の光ファイバを途中で複数に分岐させ同様な効果を実現しようとする提案もなされている(特許文献3)。しかしながら、この場合は、分岐部分での、光の反射ロスが大きく、一様性は確保できても、損失は少なくない。
【0011】
また、レーザビームの発散角の変化を検出するセンサを設け、該センサの出力に応じてレーザ光源内の光学素子のうち、ビームのコヒーレンスを変化させる素子の位置を調整する機構が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、これは複雑な光学系を必要とするばかりか、参照光を必要とするため、全体の光の損失は非常に大きい。
【0012】
変形可能な鏡をアクチュエータで変形させることで、照明光の空間分布強度の一様性を改善する方法も提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、この装置は巨大であり、非常に高価なだけでなく、微妙で複雑な光軸調整が必要である。
【0013】
また、光ファイバからの漏れ光を用いて一様な照明をする方法が提案されている(特許文献6参照)。光ファイバからの漏れ光は微量であり、十分明るい照明をするためには、高出力なレ−ザ光が必要である。
【0014】
プリズムを用いた方法も提案されている(特許文献7参照)。これは、プリズムへの正確な斜め入射が必要であるが、高精度な光軸調整機構が必要なだけでなく、斜め入射による反射損失が大きい。また、プリズム内での光の損失を低減するためには、光ファイバ並みの高純度の材料を用いた大きなプリズムが必要であり、非常に高価である。
【0015】
一方、光源の干渉パターンを変化させながら、多数枚の画像を一度に、または、時系列的に取り込み、画像処理により、それらを平均化することでノイズによる荒れを低減する方法があるが、画像処理に時間が掛かるという問題があり、実時間観測には不向きである。
【0016】
その他、レーザ光源からの光を点光源として集光し、それを走査することによって全体を照明する方法がある。これは、集光したレーザビームを正確に走査するための極めて複雑な光学系を使用する必要があるため非常に高価であり、複雑な光学系であるが故、光量の損失も大きい。また、全面走査に時間を要するため、実時間観測は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平06−167640号公報
【特許文献2】特開平11−101925号公報
【特許文献3】特開平05−217854号公報
【特許文献4】特開平05−275317号公報
【特許文献5】特開平09−006011号公報
【特許文献6】特開2000−221332号公報
【特許文献7】特開平09−159964号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】H. J. Gerritsen, W. J. Hanman and E. G. Ramberg: Appl. Opt., Vol. 7, p. 2301-2311, 1968.
【非特許文献2】G. B. Brandt: Appl. Opt., Vol. 12, p. 368-371, 1971.
【非特許文献3】S. Lowenthal and D. Joyeux: J. Opt. Soc. Am., Vol. 61, p. 847-851, 1971.
【非特許文献4】C. S. Ih and L. A. Baxter: Appl. Opt., Vol. 17, p. 1447-1454, 1978.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決することを目的とするものであり、できるだけ単純な光学系で光源からの光量の損失を抑え、明るくかつ空間的に一様にレーザ光を照射する装置を実現することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記課題を解決するために、以下の手段を提供する:
すなわち、本発明によれば、レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該光拡散手段とは、光をランダムに拡散ないしは散乱する手段であり、該光拡大抑制手段とは、拡散ないしは散乱されたことによりその光束径が拡大し位相が乱され全体の直進性が失われたレーザ光を、位相は乱れたままで直進性のみを回復させる手段であり、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成することを特徴とするレーザ照明装置が提供される。
また、レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該レーザ光路は同一の該光拡散手段を2回通過し、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成することを特徴とする装置が提供される。
【0021】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散手段を変動可能な光拡散板で構成することが好ましい。ここで、変動可能な光拡散板とは、拡散状態を変動することが可能な光拡散板を意味する。例えば、光拡散板を運動可能(回転、振動、ないしはその組合せなど)とすることができる。
【0022】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が機械的に変動することが好ましい。
【0023】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が機械的に回転することが好ましい。
【0024】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が機械的に振動することが好ましい。
【0025】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が電磁的手段により機械的に変動することが好ましい。
【0026】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が電磁的手段により機械的に回転することが好ましい。
【0027】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板が電磁的手段により機械的に振動することが好ましい。
【0028】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板がモータにより回転することが好ましい。
【0029】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板がモータにより振動することが好ましい。
【0030】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板がモータにより回転しながら振動することが好ましい。
【0031】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態(表面の凹凸や、内部の屈折率分布)が変動することが好ましい。
【0032】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態が回転することが好ましい。
【0033】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態が振動することが好ましい。
【0034】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態が電磁的手段により変動することが好ましい。
【0035】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態が電磁的手段により回転することが好ましい。
【0036】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板の表面ないしは内部において光拡散状態が電磁的手段により振動することが好ましい。
【0037】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、厚み分布を有することが好ましい。
【0038】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、凹凸分布を有することが好ましい。
【0039】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、屈折率分布を有することが好ましい。
【0040】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、ホログラフィック光拡散板(5ミクロン程度の凹凸が非周期的に配置された光拡散板)であることが好ましい。
【0041】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、液晶ないしは磁性体ないしは誘電体などを用い、凹凸分布ないしは厚み分布ないしは屈折率分布を変動させることが好ましい。
【0042】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、少なくとも1枚以上のレンズで構成することが好ましい。
【0043】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、少なくとも1枚以上のミラーで構成することが好ましい。
【0044】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、少なくとも各1枚以上のレンズとミラーで構成することが好ましい。
【0045】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、集光レンズとコリメートレンズで構成することが好ましい。
【0046】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、集光ミラーとコリメートミラーで構成することが好ましい。
【0047】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、集光レンズとコリメートミラーで構成することが好ましい。
【0048】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡大抑制手段は、集光ミラーとコリメートレンズで構成することが好ましい。
【0049】
前記レーザ照明装置においては、前記集光レンズは、正の焦点距離を有する単一レンズないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるレンズ群で構成されることが好ましい。
【0050】
前記レーザ照明装置においては、前記コリメートレンズは、正の焦点距離を有する単一レンズないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるレンズ群で構成されることが好ましい。
【0051】
前記レーザ照明装置においては、集光ミラーは、正の焦点距離を有する単一ミラーないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるミラー群で構成されることが好ましい。
【0052】
前記レーザ照明装置においては、コリメートミラーは、正の焦点距離を有する単一ミラーないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるミラー群で構成されることが好ましい。
【0053】
前記レーザ照明装置においては、前記レンズないしは集光レンズないしはコリメートレンズは、正の焦点距離を持つ片面が平面のレンズ(平凸レンズ)ないしは両凸レンズないしはメニスカスレンズ(曲率の違う凸面を有するレンズ)ないしは断面形状が三日月型のレンズ(片面凹、別面凸)ないしはフレネルレンズなどの単一の球面レンズないしは非球面レンズないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるアクロマートレンズ、アポクロマートレンズ、ズームレンズ、ビデオレンズ、ビデオズームレンズ、バリフォーカルレンズ等のレンズ群であることが好ましい。
【0054】
前記レーザ照明装置においては、前記レンズないしは集光レンズないしはコリメートレンズは、正の焦点距離を持つ屈折率分布を有する球面レンズ、非球面レンズ、グラデュームレンズ、グリンレンズ、ロッドレンズ、セルフォック(登録商標)レンズ、グレーディッドインデックスレンズなどの単一レンズないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるそれらのレンズ群であることが好ましい。
【0055】
前記レーザ照明装置においては、前記ミラーないしは集光ミラーないしはコリメートミラーは、球面ミラー(凹面ミラー)ないしは非球面ミラーないしは放物面ミラーなどの単一ミラーないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるそれらのミラー群であることが好ましい。なお、単一ミラーは平面ミラーの集合で構成してもよい。
【0056】
前記レーザ照明装置においては、レーザ光を光拡散板に対して垂直に入射させると好ましいが、斜めに入射させてもよい。
【0057】
前記レーザ照明装置においては、レーザ光を2枚以上の光拡散板に通過させることも好ましい。
【0058】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させることも好ましい(図3−1、3−2(a)、3−2(b)参照)。
【0059】
前記レーザ照明装置においては、レーザ光を光拡散板に対して斜めに入射させると、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させるのが容易になるので好ましい(図3−1参照)。
【0060】
前記レーザ照明装置においては、光拡散板を円筒に成型すると、2回以上レーザ光を通過させるのに好ましい(図3−2(a)、3−2(b)参照)。
【0061】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、集光ミラーとコリメートレンズの組合せが好ましい(図3−1、3−3参照)。
【0062】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、集光ミラーとコリメートレンズの間に光拡散板の一部を配置することが好ましい(図3−1、3−3、3−4、3−5参照)。
【0063】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、集光レンズとコリメートレンズの間に光拡散板の一部を配置することが好ましい(図3−2(a)、3−2(b)参照)。
【0064】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、光拡散板とミラーを一体化させ、同時に変動させることが好ましい(図3−4、3−5参照)。
【0065】
前記レーザ照明装置においては、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、ひとつの集光ミラー内でレーザ光を2度反射させて用いることが好ましい。(図3−5参照)。
【0066】
(集光レンズと光拡散板との位置関係)
図2−2に示したように、前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板と前記集光レンズの光拡散板側の外周端との距離が、r・cot(θ)以内である(ここで、θは光拡散板の光拡散角を表わし、rは集光レンズの半径を表わす。)ことが好ましい。
【0067】
(光拡散手段の光拡散角θについて)
前記レーザ照明装置においては、実用的な集光レンズの開口数を鑑みた場合、光拡散板の光拡散角θは、30度以内であることが好ましく、15度以内であることがより好ましく、7.5度以内であることが特に好ましい。
【0068】
(集光レンズの半径について)
前記レーザ照明装置においては、全体を手のひらサイズ以内に作製する場合、前記集光レンズの半径rは、20mm以内であることが好ましく、15mm以内であることがより好ましく、10mm以内であることがさらに好ましく、5mm以内であることが特に好ましい。
【0069】
(距離について)
前記レーザ照明装置においては、全体を手のひらサイズ以内に作製する場合、前記光拡散角θを鑑みて、前記光拡散板と前記集光レンズとの距離が少なくとも152mm以内であることが好ましく、56mm以内であることがさらに好ましく、19mm以内であることが特に好ましい。なお、前記光拡散板と前記集光レンズとの距離が無限近であってもよく、すなわち、前記光拡散板と前記集光レンズとが接していてもよいし、あるいは一体化していても良い。
【0070】
なお、前記レーザ照明装置においては、照射面積を特に大きくしたい場合、装置全体は大きくなってしまうが、前記集光レンズと光拡散板との好ましい位置関係([0064])を満たせば、上記の集光レンズの好ましい半径や距離([0066]、[0067])の値を必ずしも満たさなくてもよい。なお、ステッパーでは、照射面積は小さいが、装置全体は大きくしてよい。
【0071】
前記コリメートレンズの直径は、前記集光レンズの直径以上であることが好ましく、前記集光レンズの直径の1.5倍〜20倍であることがさらに好ましく、前記集光レンズの直径の2倍〜10倍であることがより好ましく、2倍〜5倍であることが特に好ましい。
【0072】
前記レーザ照明装置においては、前記コリメートレンズが、前記集光レンズと同じ焦点距離又は該集光レンズより長い焦点距離を有することが好ましい。
レーザ光の光束径を小さくしないようにする場合、通常レーザビーム径は1〜2mmなので、このように光束径を広げることで使い易くする。
【0073】
前記レーザ照明装置においては、前記光拡散板と前記集光ミラーとの最短距離が、2r・sin(Φ−θ)・cos(θ)/sin(2θ)以内である(ここで、θは光拡散板の光拡散角を表し、rは集光ミラーの半径を表し、Φはレーザ光に対するミラーの傾き角を表す。)ことが好ましい(図2−3参照)。
【0074】
前記レーザ照明装置においては、レーザ光に対するミラーの傾き角Φが、45度にすると、光の光路が90度曲がるので、設計が容易になるので好ましいが、浅い角度でも深い角度でも良い(図1−2(a)、1−2(b)参照)。
【0075】
前記レーザ照明装置は、前記レーザ光路方向に対して上、下、左、右及び平行の方向の少なくともいずれか一つの方向に前記集光レンズ及びコリメートレンズを移動する機構を有することが好ましい。これにより、前記手段の位置を微調整することができる。
【0076】
前記レーザ照明装置は、前記光拡散板、前記集光レンズ及びコリメートレンズの少なくともいずれか一つを移動させる機構を有することが好ましい。これにより、装置全体の位置を適宜移動させることができる。
【0077】
前記レーザ照明装置は、遮光板又は遮光ボックスでカバーされていることが好ましい。これにより、装置に対して、迷光、遮光対策をより有効に施すことができる。
【0078】
前記レーザ照明装置は、顕微鏡装置又は顕微分光装置のレーザ照明装置として利用されることが好ましい。
【0079】
前記レーザ照明装置においては、前記コリメートレンズは、顕微鏡装置又は顕微分光装置の対物レンズの入射口アイリスの大きさにほぼ合わせた大きさの平行光を生じさせるものであることが好ましい。
【0080】
前記レーザ照明装置は、露光装置の光源として利用されることが好ましい。
【0081】
さらに、本発明によれば、レーザ照明装置として前記いずれかのレーザ照明装置を用いてなることを特徴とする顕微鏡装置が提供される。
【0082】
前記顕微鏡装置においては、前記コリメートレンズが、顕微鏡装置の対物レンズの入射口アイリスの大きさにほぼ合わせた大きさの平行光を生じさせるものであることが好ましい。
【0083】
前記顕微鏡装置においては、対物レンズにより、顕微鏡の視野程度の大きさに集光して照射されることが好ましい。
【0084】
さらに、本発明によれば、レーザ照明装置として前記いずれかのレーザ照明装置を用いてなることを特徴とする顕微分光装置が提供される。
【0085】
前記顕微分光装置においては、前記コリメートレンズが、顕微分光装置の対物レンズの入射口アイリスの大きさにほぼ合わせた大きさの平行光を生じさせるものであることが好ましい。
【0086】
さらに、本発明によれば、光源として前記いずれかのレーザ照明装置を用いてなることを特徴とする露光装置が提供される。
【0087】
本発明において、光拡散手段とは、光をランダムに拡散ないしは散乱する手段をいう。この光拡散手段によってレーザ光が拡散された場合には、位相が乱され、全体の直進性が失われる。光拡散手段としては、光拡散板(図2の光拡散板3−1など)などが挙げられる。
ここで、光拡散又は散乱角とは、0度<θ<90度の範囲内である。本発明においては、光拡散又は散乱角(θ)として15度程度以下(広がり(2θ)では30度以下)が好ましい。なお、この角度を大きくして出来るだけ散乱させることが好ましいが、レンズの集光限界以上には設定できない。
また、本発明において、光拡大抑制手段とは、拡散された光(拡散されたことによりその光束径が拡大し位相がずれた光)が過度に拡大しないようにする手段をいう。位相が乱され、全体の直進性が失われたレーザ光を、位相は乱れたままで直進性のみを回復させる手段である。光拡大抑制手段としては、例えば、図2のレンズ1,2の組合せや、図1−1の1−5などのレンズやミラーが挙げられる。
本発明において、拡散されかつ拡大しない光とは、位相は乱れているが全体の直進性を持っている光をいう。
【発明の効果】
【0088】
このように、本発明では、光量の損失がほとんど無いため、レーザ光源のパワーが比較的小さくても、対象面を一様にかつ十分明るく照明することができる。
【0089】
したがって、装置の小型化やコスト削減につながるだけでなく、省エネ効果、ひいては、二酸化炭素の排出削減をもたらす。ハンディーな測定装置に組み込むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。
【図1−1】本発明に係るレーザ照明装置の一例の構成の概要を示す図である。
【図1−2(a)】本発明に係るレーザ照明装置の別の例の構成の概要を示す図である。
【図1−2(b)】図1−2(a)の例において集光ミラーの設置角度を変更した状態を示す図である。
【図2】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図2−1】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図2−2】本発明における光拡散板と集光レンズとの設置間隔を説明する図である。
【図2−3】本発明における光拡散板と集光ミラーとの設置間隔を説明する図である。
【図3】参考例としての2枚の光拡散板を用いた場合のレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。
【図3−1】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図3−2(a)】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す正面図である。
【図3−2(b)】図3−2(a)に示した装置の平面図である。
【図3−3】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図3−4】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図3−5】本発明に係るレーザ照明装置のさらに別の例の構成の概要を示す図である。
【図4】本発明のレーザ照明装置の実施例1を示す図である。
【図5】本発明のレーザ照明装置の実施例2を示す図である。
【図6】本発明のレーザ照明装置の実施例3を示す図である。
【図7】本発明のレーザ照明装置の実施例4を示す図である。
【図8】本発明のレーザ照明装置の利用例である顕微鏡装置の全体構成を示す図である。
【図9】本発明のレーザ照明装置の利用例である顕微分光装置の全体構成を示す図である。
【図10】従来の構成の顕微鏡装置により撮像した画像を示す写真である。
【図11】図10の点線に沿って測定した位置に対する相対反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【図12】本発明のレーザ照明装置を設けた顕微鏡装置により撮像した画像を示す写真である。
【図13】図12の点線に沿って測定した位置に対する相対反射光強度の測定結果を示すグラフである。
【図14】図12に示した本発明のレーザ照明装置を設けた顕微鏡装置により、但し、光拡散板を回転させないで撮影した画像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明に係るレーザ照明装置の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。ここで、各図において同一の部材や手段などについては同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
図1は、本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。このレーザ照明装置においては、光拡散状態が変動する光拡散手段3を、レーザ光6の光路に設け、レーザ光源からの該レーザ光6を拡散させる。
【0093】
光拡散手段3は、光拡散状態を変動させることができるため、拡散されたレーザ光6−4の拡散状態が時間的に変動する。
【0094】
光拡大抑制手段100は、拡散されたレーザ光6−4を拡散されかつ拡大しない光6−2に好ましくは洩れなく変換する。
【0095】
拡散されかつ拡大しない光6−2は、その光路は変化しないが、拡散状態は時間的に変動する。
【0096】
したがって、拡散されかつ拡大しない光6−2を、対象を照明する光として用いれば、レーザ光のパワーが比較的小さくても対象を明るくしかも一様に照明ないしは励起することができる。
【0097】
なお、拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光とすれば、設計が容易になる。
【0098】
図1−1に本発明に係るレーザ照明装置の一実施態様を示す。このレーザ照明装置においては、光拡散状態が変動する光拡散手段3を、レーザ光の光路に設け、レーザ光源からの該レーザ光6を拡散させる。また、該レーザ照明装置においては、該光拡散手段3の背面側のレーザ光路にレンズ1−5を設け、該レンズ1−5により、該光拡散手段3で拡散されたレーザ光6−4を拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する。該レンズ1−5の焦点距離や該光拡散手段3と該レンズ1−5との距離を変化させることにより、拡散されかつ拡大しない光6−2の平行度を調整することができる。
【0099】
なお、前記レーザ照明装置においては、前記レンズ1−5は、正の焦点距離の単一レンズないしはレンズ群を用いることができる。また、レンズ1−5の代わりに、符号1−2として図中の枠内に示したような、正の焦点距離を持つ片面が平面のレンズ(平凸レンズ)(a)ないしは両凸レンズ(メニスカスレンズ)(b)ないしは断面形状が三日月型のレンズ(片面凹、別面凸)(c)の単一の球面レンズないしは非球面レンズないしはアクロマートレンズ(d)のような組合せのレンズ群を用いることができる。また、用途や目的によっては、前記(a)〜(d)のレンズを図示したものとは左右逆向きで用いてもよい。
【0100】
また、前記レンズ1−5は、正の焦点距離を持つ屈折率分布型の単一レンズないしはレンズ群でも良い。なお、屈折率分布を持ったレンズには、球面レンズ、非球面レンズ、グラデュームレンズ、グリンレンズ、ロッドレンズ、セルフォック(登録商標)レンズ、グレーディッドインデックスレンズなどの単一レンズないしは全体として正の焦点距離を有する構成となるそれらのレンズ群などがある。
【0101】
なお、前記レンズの外周形状は必ずしも円である必要はない。
【0102】
図2は、本発明に係るレーザ照明装置の構成の一例について、その概要を示す図である。この図2に示した本発明に係るレーザ照明装置においては、モータ4を用いてそれ自体が回転ないしは振動する光拡散板3−1をレーザ光路に設け、この光拡散板3−1により、レーザ光源から入射したレーザ光6を拡散する。この光拡散板3−1による拡散後、そのレーザ光路に設置した集光レンズ1により、拡散光がほとんど散逸しないように、直ちに集光する。さらに、集光された光はその後広がるが、レーザ光路上に設けたコリメートレンズ2により拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する構成としたものである。拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。
【0103】
このような図2に示した構成のレーザ照明装置とすることにより、集光レンズにより、光拡散板による散乱光をほとんど洩らさずに集光することができて、集光時の光の損失を防ぐことができる。また、集光レンズ1を出て集光された光は、その後広がるが、一旦集光させているため、容易に、コリメートレンズ2により、ほとんど損失無く、拡散されかつ拡大しない光6−2に変換することができる。図1−1に示した本発明のレーザ照明装置と比較して、図2に示した構成においては、光拡散板3−1と集光レンズ1とコリメートレンズ2の相対位置を変化させることにより、該拡散されかつ拡大しない光6−2の平行さの程度と光束径とを、より容易に調整することができる。さらに、本発明によれば、少ない部品点数で、小型の装置によって、一様で明るい照明を行うことが可能となる。
【0104】
また、前記レーザ照明装置においては、前記レーザ光源からのレーザ光6を受ける光拡散板3−1は、モータ4で回転ないしは振動させることができるが、電磁的動力源ないしは圧空ないしは風力ないしはガス圧ないしは水流ないしは音波ないしは超音波ないしは燃料を動力源とするモータで回転ないしは振動させることができる。また、前記レーザ光源からのレーザ光を受ける光拡散板は、回転ないしは振動ないしは回転と振動の組合せでレーザ光に対して相対的に変動ないしは運動していればよい。ピエゾモータなどのピエゾ素子(圧電素子)を用いた構成により、回転ないしは振動ないしは回転と振動の組合せなどの変動ないしは運動をさせても良い。
【0105】
前記レーザ照明装置においては、光拡散板として、表面ないしは内部のパターンが可変な液晶、磁性体、誘電体などの部材や可撓性部材を用い、該パターンを電磁的に変動ないしは変形ないしは運動させて用いてもよい。ピエゾ素子ないしはピエゾ素子などを用いて発生させた音波ないしは超音波などにより、該部材や可撓性部材の表面ないしは内部のパターンを変動ないしは変形ないしは運動させて用いてもよい。
【0106】
前記レーザ照明装置においては、レーザ光を2枚以上の光拡散板を通過させてもよいし、同一の光拡散板を2回以上通過させてもよい(図3、3−1〜3−5参照)。
【0107】
本発明において、拡散されかつ拡大しない光とは、本発明のレーザ照明装置から得られる照明光の拡大の度合いが小さいことを言い、拡散されかつ拡大しない光とは、実質的には、平行光の一種とみなしても良いが、実質的に意味のある距離(実質的な装置サイズから鑑みると、数センチから数メートル程度)以内において、発散し外部に散逸しない光、ないしは、集光しない光、と言うこともできる。本発明において、得られる拡散されかつ拡大しない光とは、照射対象ないしは照射対象までの次段の光学素子までの間で散逸しない光とみなしてもよい。なお、照射対象ないしは照射対象までの次段の光学素子までの間で、一旦集光しても用いることも実質的には可能である。本発明において、手のひらサイズの装置を作製する場合、実質的には、数センチ程度の間に光束の断面積が50%程度以内の変動に収まると言うこともできる。
【0108】
本発明において、集光レンズとは、光を集光する目的に使うレンズのことを言い、正の焦点距離の単レンズないしはレンズ群で構成される。
本発明において、コリメートレンズとは、拡散された光を拡大しない光に変換するレンズのことを言い、実質的には、平行光あるいは平行に近い光束を生成する目的に使うレンズのことを言い、正の焦点距離の単レンズないしはレンズ群で構成される。
【0109】
本発明のレーザ照明装置において、光拡散手段(光拡散板)の回転速度は、用いられる装置の観測時間との関係で適宜定められる。例えば、写真フィルムやCCDカメラ、CMOSカメラなどを用いて画像を撮影する場合は、原理的に、露光時間内に拡散板が1回転以上すれば、均一(その装置で最大限の引き出せる均一化の程度まで)になるので、それ以上の回転はなくてもよい。また、動画撮影などの実時間観測、あるいは目視で均一性が認められる程度が必要な場合は、最低限、人間の目の応答速度20Hz程度に対応する20回転/秒程度以上が好ましいが、ちらつきを減少させるためには、30回転/秒以上がさらに好ましく、60回転/秒以上が特に好ましい。さらに、動画のフレーム速度を速くしたい場合は、そのフレーム周波数以上の回転速度とすることが好ましい。
【0110】
上記と同程度の頻度で、光拡散板を振動させたり、光拡散板の表面ないしは内部のパターンを変化させても良い。
【0111】
本発明においては、集光レンズで拡散後に、一旦、光束径を絞る(集光する)ことが好ましい。その理由としては、以下の事項が挙げられる。
(1)集光することにより、後段の光学調整が容易になる。特に、平行度やビーム径の調整が容易になる。(逆に集光しないと、これらの調整範囲が極端に狭くなる場合がある。)
(2)集光することにより、後段に大きなコリメートレンズや光学素子を設けなくてもよくすることができる。光学素子が小さくても光を全て取り込むことができる。これにより、光を適宜集光し、ある範囲以上に拡がらないようにそのパワーをリレーして行くのでロスが少ない。但し、リレー回数が多くなるとレンズ表面の反射ロスが加算されるので、集光は1回に留め、直ちに平行光ないしは平行に近い光にするのがより好ましい。
(3)一旦集光すると、点光源として扱えるので設計が容易になる。レーザ光は、拡散により、全体の位相や直進性(コヒーレンス)は乱されるが、拡散後も各方向の成分の直進性はある程度残るので、小さく集光できる。特にホログラフィック拡散板を用いると、適度に位相情報や直進性が残り、集光し易くなる。
【0112】
また、本発明においては、集光レンズないしは集光ミラーと組合せて、コリメートレンズを用いることにより、本発明の装置が生成する拡散されかつ拡大しない光を平行光あるいは平行に近い光にすることが好ましい。その理由としては以下の事項が挙げられる。
(1)平行光あるいは平行に近い光なので、空間を散乱することなく伝搬させることができる。
(2)したがって、散乱によるパワーの散逸がほとんどなく、散乱した光による迷光対策も容易になる。(遮光板が少なくて済む。)
(3)それにより、顕微鏡や、分光顕微鏡に用いるなど、後の扱いが容易になる。(遠方への照射、リレーレンズが不要、設計の自由度が増す。)
【0113】
以下、本発明のレーザ照明装置の特徴をまとめると以下の事項が挙げられる。
(1)レーザ光はパワーがあるので、明るい照明に適用したいが、空間分布がある。
(2)電灯などと違いレーザ光はコヒーレンスという特有の性質を有しているので、そのまま用いると、干渉縞が生じる。
(3)一方、空間分布を一様にするため、レーザ光を拡散したいが、拡散すると、スペックルノイズが発生してしまう。
(4)スペックルノイズを減少させるため、光拡散板を変動し平均化させる。
(5)一方、拡散した光を散逸しないように即座に集光レンズで集光する。(なお、この段階で平行光にする場合には、平行度や光束径の調整が独立にはできないか、または、レンズの焦点距離で決まるある値に固定されてしまうが、用途や目的によっては、集光せず、直ちに平行光としてもよい。)
(6)集光後、そのままでは再び発散するので、好ましくは、この段階で平行光に変換する。レンズが増えることで、調整が容易になる。(相対位置を調整すれば平行度や光束径の調整が独立にできる。)
(7)集光すると、点光源として扱えるので、設計も容易になる。
(8)顕微鏡の倍率を上げると、一般に照明不足となり見づらくなるが、本発明のレーザ照明装置を用いると、レーザ光が低パワーでも高倍率で明るい対象物が観測できる。
(9)従来から共焦点レーザ顕微鏡というものがあるが、これは、レーザ光を対象面上に集光させ、さらにスキャンさせるため、ハイパワーのレーザ光が必要であり、価格も非常に高価なものである。これに対して、本発明によれば、小型で安価な装置により、また低パワーのレーザ装置を用いても、明るくかつ極めて一様な照明が可能となる。
【0114】
本発明のレーザ照明装置において使用することができるレーザ光には特に制限はなく、レーザ照明装置の用途に応じて任意のレーザ光を適宜選択して用いることができる。例えば、レーザ光としては、波長630nm程度、光束径1〜2mm程度、強度1〜3mW程度のGaAs/AlGaAs系半導体レーザ光、波長532nm、光束径1〜2mm程度、強度1〜3mW程度の半導体レーザ光励起YVO固体レーザ光の第2高調波を用いたレーザ光、波長400nm程度、光束径1〜2mm程度、強度1〜3mW程度のGaN/InGaN系半導体レーザ光など、パワーの比較的小さなレーザ光を用いることができる。なお、パワーの強い半導体レーザ光やアルゴンレーザ光やエキシマレーザ光などのガスレーザ光、ガラスレーザ光などの固体レーザ光あるいはその高調波を用いてもよい。また、用いることのできるレーザ光は、連続発振レーザ光でもよいが、パルス発振レーザ光でも光拡散板の回転あるいは振動周期より十分速い繰返し速度があれば使用できる。光束径は大きくても良いし、円形でなくても良い。
本発明のレーザ照明装置を用いれば、レーザポインター程度のパワーがあれば、十分、顕微鏡の照明に用いることができる。
【0115】
光拡散板は、微細な凹凸の形成された透明または半透明の板、或いはホログラフィック光拡散板等が利用される。この光拡散板表面の微細な凹凸は、電磁的手段によって変化させてもよい。この光拡散板は、レーザ光路上に1枚設けた構成でもよいし、光路上に所定の間隔をおいて2枚以上設けた構成としてもよい。また、光拡散板は、その厚みは均等であってもよいし、適宜、厚み分布(不均一な厚み)を有するものであってもよい。
【0116】
図2−1は、光拡散板(3−2)が、厚みが徐々に変化する構成とした光拡散板とした一例を示す。光拡散板の厚みが異なる部分があると、光拡散板の運動(例えば回転)により、レーザ照射位置での光拡散板の厚みが変化し、それにより拡散後のレーザ光の位相の乱れが時間的に変化し、スペックルノイズをさらに減少できる利点がある。
【0117】
なお、光拡散板に厚み分布または厚みの変化を有するものとしては、厚みが一定でなければ良いので、様々な態様がある。また、外見上厚み分布が見えなくても、ミクロに見て厚み分布があれば、厳密には厚み分布を有する構成である。
【0118】
図2−2は、光拡散手段と集光レンズとの設置間隔を説明する図である。集光レンズ1は、光拡散手段3にできるだけ接近して設置されることが好ましい。具体的には、図2−2に示すように、次式(1)で与えられる距離L(r,θ)より離して光拡散手段と集光レンズを設置すると光量の損失が発生するため、L(r,θ)で表わされる値よりも小さい距離を離してこれらが設置することが好ましい。
L(r,θ) = r・cot(θ) 式(1)
ここで、θは、光拡散手段3の拡散角を表わし、rは、集光レンズ1の半径を表わす。
図中では、光拡散手段3と集光レンズ1との設置間隔がL(r,θ)以内である状態を示している。
【0119】
より詳細には、光拡散手段3と集光レンズ1との設置間隔は、L(r,θ)を超えると光拡散手段3によって生じる散乱光の集光レンズ1の端からの洩れが生じるから、光拡散手段3と集光レンズ1との設置間隔をL(r,θ)より小さくするのが好ましい。集光レンズ1の入射面における斜め反射、特に、集光レンズ1の端に近い領域における斜め反射による光量の損失を抑えるため、さらに近づけて設置することが好ましい。凹面状の入射面を有するレンズを集光レンズとして用いることにより、斜め反射による光量の損失を防ぐこともできる。
【0120】
レーザ照明装置の実用的な最小サイズを鑑みると、半径5mmの集光レンズおよび光散乱角15度の拡散手段を用いて、これらを18.7mm以下の間隔で設けることにより、光拡散手段と集光レンズとの設置間隔をL(r,θ)以内にすることができる。さらに、集光レンズの設置位置を拡散手段から5mm以内とすることにより、斜め反射による光量の損失を約10%程度減らすことができる。また、集光レンズを、該集光レンズからの拡散された光を拡大しない光(平行光)に変換する半径20mm以内のコリメートレンズと組み合わせて用いることにより、レーザ照明装置、特に、顕微鏡装置又は顕微分光装置における装置全体のサイズを手の平サイズ程度に小型化することに有効である。
なお、半径15mmの集光レンズおよび散乱角15度の拡散手段を用いると、集光レンズの設置位置を光拡散板から56mm以内とすることにより、光拡散手段と集光レンズとの設置間隔をL(r,θ)以内にすることができる。
半径20mmの集光レンズおよび散乱角7.5度の拡散手段を用いる場合は、集光レンズの設置位置を光拡散板から152mm以内とすることにより、光拡散手段と集光レンズとの設置間隔をL(r,θ)以内にすることができる。
【0121】
レーザ照明装置の寸法をこのような数値とすれば、光量の損失を最小限に押さえかつ照明の一様性を保つことができる。ここで、拡散手段としてホログラフィック光拡散板を用いた場合、ホログラフィック光拡散板と2つのレンズを透過するレーザ光の光透過率は80%程度であり、一様性は、5%程度以内である。ここでの一様性は、光の空間的な強度分布(パワー分布)における一様性である。実際には、一様性は、平坦な照射対象物からの反射光の空間分布におけるRMS(root mean square)ノイズとして観測でき、図13の位置0〜100μmまでの範囲に対応する。
【0122】
図2−3は、光拡散手段と集光ミラーとの設置間隔を説明する図である。集光ミラー1−3は、光拡散手段3にできるだけ接近して設置されることが好ましい。具体的には、図2−3に示すように、次式(2)で与えられる距離M(r,θ,Φ)より離して光拡散手段と集光ミラーを設置すると光量の損失が発生するため、M(r,θ,Φ)で表わされる値よりも小さい距離を離してこれらを設置することが好ましい。
M(r,θ,Φ) = 2r・sin(Φ−θ)・cos(θ)/sin(2θ) 式(2)
ここで、θは、光拡散手段3の拡散角を表し、rは、集光ミラー1−3の半径を表し、Φはレーザ光に対するミラーの傾き角を表す。
図2−3では、集光ミラー1−3を光拡散手段3からちょうどM(r,θ,Φ)離した位置に配置した状態を示した。
【0123】
なお、レーザ光に対する集光ミラー1−3の傾き角Φを45度にすると、光の光路が90度曲がるので、設計が容易になる(図1−2(a))が、Φはこれより大きくても小さくてもよい(図1−2(b)は、Φが45度より大きい場合を示す。)。
【0124】
図3は、参考例として、2枚の光拡散板を用いた場合のレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。この図3に示すように、レーザ照明装置は、モータ4を2個用いてそれ自体が回転ないしは振動する2枚の光拡散板3−1をレーザ光路に重ねて設け、この2枚の光拡散板3−1により、レーザ光源から入射したレーザ光6を連続して拡散する。この2枚目(図で右側)の光拡散板3−1による拡散後、そのレーザ光路に設置したコリメートレンズ2(この図では正の焦点距離をもつ三日月型レンズを用いた場合を例として示す)により、拡散光がほとんど散逸しないように、直ちに拡散されかつ拡大しない光6−2変換している。なお、拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。また、光拡散板3−1とコリメートレンズ2の間に集光レンズ(図示せず)を配置すると、平行度や光束径の調整がより容易になる。小型のレーザ装置6−3をモータ4の近傍に配置すると、レーザ装置を含めてレーザ照明装置を小型化することができる。
【0125】
図3−1は、1枚の光拡散板に2回レーザ光を透過させた場合の本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。この図3−1に示すように、本発明に係るレーザ照明装置は、モータ4を用いてそれ自体が回転ないしは振動する光拡散板3−1をレーザ光路に斜めに設け、この光拡散板3−1により、レーザ光源から入射したレーザ光6を拡散する。この光拡散板3−1による拡散後、そのレーザ光路に設置した集光ミラー1−3により、拡散光がほとんど散逸しないように、直ちに集光する。さらに、集光された光はその後広がるが、コリメートレンズ2により拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する。この際、集光ミラー1−3とコリメートレンズ2の間に光拡散板3−1を配置するような構成にすると、1枚の光拡散板3−1に2回レーザ光6を透過させることになり、拡散効果をより高めることができる。拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。レーザ装置を含めて本発明に係るレーザ照明装置を小型化することができる。
【0126】
図3−2(a)、3−2(b)は、光拡散板を筒状に形成し、2回レーザ光を透過させた場合の本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す図であり、図3−2(a)は装置の正面図であり、図3−2(b)は装置の平面図である。この図3−2(a)、3−2(b)に示すように、本発明に係るレーザ照明装置は、モータ4を用いてそれ自体が回転ないしは振動する筒状の光拡散板3−3をレーザ光路に設け、この光拡散板3−3により、レーザ光源から入射したレーザ光6を拡散する。この光拡散板3−3による拡散後、そのレーザ光路に設置した集光レンズ1により、拡散光がほとんど散逸しないように、直ちに集光する。さらに、集光された光はその後広がるが、コリメートレンズ2により拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する。この際、集光レンズ1を筒状の光拡散板3−3の内部に配置し、コリメートレンズ2を筒状の光拡散板3−3の外側であって集光レンズ1に対して光路後方に配置することにより、光拡散板3−3が集光レンズ1の前方と、集光レンズ1とコリメートレンズ2の間にも存在する構成にする。この構成により、1つの筒状の光拡散板に2回レーザ光を透過させることになり、拡散効果をより高めることができる。拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。レーザ装置を含めて本発明に係るレーザ照明装置を小型化することができる。
【0127】
図3−3は、光拡散板を筒状に形成し、2回レーザ光を透過させた場合の本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す別の例である。この図3−3は、図3−2(a)、3−2(b)との場合と類似しているが、本発明に係るレーザ照明装置は、集光ミラー1−3を筒状の光拡散板3−3の内部に配置した例である。レーザ装置を含めて本発明に係るレーザ照明装置を小型化することができる。
【0128】
図3−4は、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、光拡散板とミラーを一体化させ、同時に変動させる場合の本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す図である。この図3−4に示すように、本発明に係るレーザ照明装置は、傘(コーン)状に形成した光拡散板3−4と集光ミラー1−3とを一体化させている。まず、モータ4を用いて、一体化させた傘状に形成した光拡散板3−4と集光ミラー1−3とを回転ないしは振動させる。レーザ光6は、傘状に形成した光拡散板3−4を透過後、光拡散板3−4と集光ミラー1−3の内側に進行し、集光ミラー1−3で集光され、傘状に形成した光拡散板3−4の頂点をまたいだ反対側から出射する。さらに、コリメートレンズ2により拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する構成している。拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。集光ミラー1−3による集光位置が傘状に形成した光拡散板3−4の位置と一致しても良い。レーザ装置を含めて本発明に係るレーザ照明装置を小型化することができる。
【0129】
図3−5は、2回以上レーザ光を光拡散板に通過させる際、光拡散板とミラーを一体化させ、同時に変動させる場合の本発明に係るレーザ照明装置の構成の概要を示す別の例の図である。この図3−5に示すように、本発明に係るレーザ照明装置は、光拡散板3−1と集光ミラー1−4とを一体化させている。まず、モータ4を用いて、一体化させた光拡散板3−1と集光ミラー1−4とを回転ないしは振動させる。レーザ光6は、光拡散板3−1を透過後、光拡散板3−1と集光ミラー1−4の内側に進行し、集光ミラー1−4で集光され、光拡散板3−1から出射する。さらに、コリメートレンズ2により拡散されかつ拡大しない光6−2に変換する構成としている。拡散されかつ拡大しない光6−2を平行光(平行に近い光束も含む)としてもよい。集光ミラー1−4による集光位置が光拡散板3−1の位置と一致しなくても良い。レーザ装置6−3を含めて本発明に係るレーザ照明装置を小型化することができる。
【0130】
本発明は、以下の発明概念(A)または(B)を基本としてなされたものである。
(A)レーザ光源からのレーザ光路に少なくとも1つ以上設置された光をランダムに拡散ないしは散乱する手段である光拡散手段と、拡散ないしは散乱されたことによりその光束径が拡大し位相が乱され全体の直進性が失われたレーザ光を、位相は乱れたままで直進性のみを回復させる光拡大抑制手段である、レーザ光源からのレーザ光の光路に設置した集光レンズと、該集光レンズと同じ焦点距離又は該集光レンズより長い焦点距離を有し、集光レンズからの出射光を平行光に変換するコリメートレンズとを備え、前記レーザ光源からのレーザ光を、対象物又は対象面上に照射することを特徴とするレーザ照明装置。
(B)レーザ光源からのレーザ光路に設置された光拡散手段と、レーザ光源からのレーザ光の光路に設置した集光レンズと、該集光レンズと同じ焦点距離又は該集光レンズより長い焦点距離を有し、集光レンズからの出射光を平行光に変換するコリメートレンズとを備え、前記レーザ光源からのレーザ光を、同一の該光拡散手段を2回通過し、対象物又は対象面上に照射することを特徴とするレーザ照明装置。
【実施例1】
【0131】
本発明のレーザ照明装置の実施例1を、図4に示す。この実施例1のレーザ照明装置は、本発明の特徴とする光拡散手段として光拡散板3−1を、光拡大抑制手段としては集光レンズ1とコリメートレンズ2との組み合わせを、それぞれ図2、図2−1、および図2−2において説明したように、レーザ光6の光路上に配置して成るものである。
【0132】
レーザ光6としては、波長532nm、光束直径1mm程度、強度3mW程度の半導体励起YVOレーザ光の第2高調波を用いた連続発振のグリーンレーザ光を用いた。
【0133】
光拡散板3−1(ホログラフィック光拡散板、エドモンド社製、商品名ホログラフィックディフューザー)は、基準面10上に設置された台7で支持されたモータ4のモータ軸5により、レーザ光6に対して垂直面内で回転又は振動可能に設けられている。
【0134】
集光レンズ1(半径5mm、レンズ厚2.5mm、焦点距離18mmの屈折率分布型単レンズ、ニューポート社製、商品名グラデューム単レンズ)は、基準面10に設置された微動台8に取り付けられた支持枠30に設けられ、微動台8によって、上下方向及び左右水平方向に移動可能な構成として、レーザ光6の光路に対してその位置を調整できるようにする。実際、このような調整によれば、光拡散板3−1により拡散されたレーザ光6の光路と、さらには、コリメータレンズ2から照射される平行光(拡大しない光)の光路とを変化させることもできる。微動台8は、垂直調整機構12及び左右水平調整機構13を有する。
【0135】
垂直調整機構12は、筒台31に螺着されたネジ具32を操作することで、筒台31に枢着された梃子33を回動することによって、取付板34の位置を調整する。このようにして、取付板34に装着された支持枠30の位置を上下調整可能な構成としている。
【0136】
左右水平調整機構13は、上台35に螺着されたネジ具36を操作することで、基準面10に設置された下台37に対し、上台35を移動させる。このようにして、筒台31を支持する上台35を、基準面10に対して左右方向に、レーザ光6の光路に対して垂直方向に、可動とする構成としている。
【0137】
コリメートレンズ2(半径12.5mm、レンズ厚6mm、焦点距離60mmの屈折率分布型単レンズ、ニューポート社製、商品名グラディウム単レンズ)は、基準面10上に設置された垂直移動可能な微動台9により、集光レンズ1と同様に、左右水平調整機構45により、レーザ光6の光路に対して、左右上下方向に移動して調整可能である。さらに、コリメートレンズ2は、前後調整機構11により、レーザ光6の光路方向に移動して調整可能である。
【0138】
ここで、集光レンズ1と光拡散板3−1との設置間隔は3mm、集光レンズ1とコリメートレンズ2との設置間隔は70mmとした。
【0139】
実施例1のレーザ照明装置では、レーザ光6は、光拡散板3−1に図4の左側から入射され、図2ないし図2−2で説明したように、光拡散板3−1、3−2、3で拡散され、集光レンズ1で集光し、さらに、コリメートレンズ2で平行光となる。そして、微動台8、9によって、集光レンズ1及びコリメートレンズ2の位置調整と平行光の平行具合を調整できる。これにより、本発明のレーザ照明装置を使用すれば、レーザ光を対象上にほとんど光量の損失無くより一様に照射できる。
【実施例2】
【0140】
図5は、本発明のレーザ照明装置の実施例2を示す。この実施例2は、前後調整機構11によって、レーザ光6の平行光の平行性を調整可能としている。さらに、実施例2では、集光レンズ1及びコリメートレンズ2を一つの共通支持台38上に設け、垂直調整機構12とあおり調整機構39(傾動調整機構)により微調整可能とした微動台14にある。
【0141】
あおり調整機構39は、基準面10に設置された基台40に対して、筒台31を支持するあおり台41を前後に螺着したネジ具42で、高さ調整とあおり調整(傾き調整)を可能として、これにより、より微細なレーザ光6の光路合わせを可能とする。
【実施例3】
【0142】
図6は、本発明のレーザ照明装置の実施例3を示す。この実施例3は実施例2とほぼ同じであるが、垂直調整機構12で上下調整可能なあおり台41(例えば、円筒の断面から成る形状)に対して、ネジ具42で共通支持台38をあおり調整可能なように構成したものである。
【実施例4】
【0143】
図7は、本発明のレーザ照明装置の実施例4を示す。この実施例4は、レーザ照明装置全体を遮光箱16で覆い、外来光の影響を減じた構成を特徴とする。
【0144】
(利用例)
図8は、本発明のレーザ照明装置の利用例である顕微鏡装置の全体構成を示す図である。この顕微鏡装置では、レーザ光源17からのレーザ光は、ミラー18及びフィルタ類19を通過して、本発明のレーザ照明装置20に入射される。レーザ光としては、波長532nm、光束直径1mm程度、強度3mW程度の半導体励起YVOレーザ光の第2高調波を用いた連続発振のグリーンレーザ光を用いた。このレーザ照明装置20においてレーザ光は、拡散され、かつ拡大しない光(平行光)とされる。なお、レーザ照明装置20としては、前記実施例1記載のものを用いた。
【0145】
レーザ照明装置20から出た平行レーザ光は、ビームスプリッタ21及び対物レンズ22を介して試料(被検体)23に照射され、その反射光が、対物レンズ22およびビームスプリッタ21を通過してCCDカメラ24で撮像される。
【0146】
この利用例では、レーザ光は、拡散され、かつ一様な平行光とされる。その後、該平行な光が試料23の手前の対物レンズ22に入射されるから、対物レンズ22による集光後も、試料23上で空間的に一様な強度分布となり、光の強度分布のばらつきによる計測誤差が防止される。
【0147】
図9は、本発明のレーザ照明装置の別の利用例である顕微分光装置の全体構成を示す図である。この顕微分光装置では、レーザ光源17からのレーザ光は、ミラー18及びフィルタ類19を通過して、本発明のレーザ照明装置20に入射される。このレーザ照明装置20においてレーザ光は、拡散され、かつ平行光とされる。
【0148】
レーザ照明装置20から出たレーザ光は、ビームスプリッタ21及び対物レンズ25を介して試料(被検体)23に照射され、その反射光が、対物レンズ25およびビームスプリッタ21及びレンズ26を通過して分光器27に入光し、分光像を形成し、それが、レンズ28を介してCCDカメラ24で撮像される。
【0149】
この利用例では、レーザ光は、拡散され、かつ一様な平行光とされて、試料23の手前の対物レンズ25に入射され集光されるから、対物レンズ25による集光後は、試料23上で空間的に一様な強度分布となり、光の強度分布のばらつきによる計測誤差が防止される。
【0150】
(実験例)
本発明の効果を確認するために、本発明者は、図8に示す顕微鏡装置においてレーザ照明装置20を用いない従来の構成の顕微鏡装置と、図8に示す本発明の顕微鏡装置によって、それぞれ半導体回路を撮像するという測定実験をおこなったので、以下、この結果を説明する。
【0151】
図10は、前述の従来の顕微鏡装置(図8においてレーザ照明装置20を配置しない場合)により撮像した画像である。この図中、43で示される領域は金属電極を示し、44は半導体回路の平坦面を示している。この画像(顕微鏡写真)によると、平坦面44はレーザ光を用いた照明光の強度分布が一様でないことに起因して干渉が生じ、その干渉模様が現れており、この点で、画像としての明瞭さにかけている。
【0152】
また、図11は、図10の点線に沿って測定した位置に対する相対反射光強度の測定結果を示すグラフである。この図によると、レーザ照明装置20を設けない従来の構成の顕微鏡装置では、位置によって、相対反射光強度にばらつきがあり、一様な強度で試料(被検体)に照明光が照射されなかったことが確認できた。
【0153】
図12は、図8に示した、本発明のレーザ照明装置20を設けた構成で、光拡散板を回転した場合の本発明の顕微鏡装置により撮像した画像である。この画像によると、平坦面44は照明光の強度が非常に一様であったために干渉が生じることなく、きわめて明瞭な画像が得られることが確認できた。
【0154】
また、図13は図12の点線に沿って測定した位置に対する相対反射光強度の測定結果を示すグラフである。この図によると、レーザ照明装置20を設けて、その光拡散板を回転させたことによって、図11で見られたような相対反射光強度のばらつきがなく、非常に一様な強度で試料(被検体)に照明光が照射されていることが確認できた。
【0155】
これに対して、図14は、図8においてレーザ照明装置20を配置したが、光拡散板を回転させなかった場合の撮像画像である。
図14から分かるように、光拡散板を回転させないと、スペックルノイズが発生し、非常に荒れた画像になる。
この状態から光拡散板を回転させると、前述の図12のように劇的に変化した。これは、(1)拡散板は面内が均一ではないので、スペックルノイズがランダムに変化し、位相も乱れるが、(2)該光拡散板を例えば回転などさせることにより、前記(1)の変化が平均化されて、1回転以上あるいは適当な時間で積分してみると一様になる、ことによるものと考えられる。
【0156】
以上、本発明のレーザ照明装置の最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0157】
以上の構成から成る本発明によれば、従来問題であったレーザ光路に垂直な面での光の強度分布のばらつきがほとんどなくなり、光量の損失が極めて小さくて実質的に無視できる量である。このため、対象面を一様にかつ明るく均一に照明することができるので、一様な照明を必要とする用途に適用できる。
【0158】
本発明によれば、例えば、レーザ光を利用した各種の光学的な測定や画像の作成等において、測定誤差を解消し、また不鮮明な画像の画質を改良できる。従って、本発明は、レーザ光を利用した各種の測定機器、画像・映像作成機器、半導体基板上での回路作製に利用される露光・リソグラフ装置などにきわめて有用である。
【0159】
特に、本発明のレーザ照明装置を、顕微鏡又は分光顕微測定装置関連の装置の照明に用いた場合、より明るく一様な照明が可能であり、顕微観察又は分光解析顕微観察のための励起光源として用いた場合、従来の装置による励起光と比較して、より一様で、より強度の強い励起光が可能となる。さらに、本発明のレーザ照明装置を光学露光・リソグラフ装置の光源として用いた場合、より一様で、より強度の強い照射を半導体基板に与えることが可能となる。
【符号の説明】
【0160】
100 光拡大抑制手段
3 光拡散手段
1 集光レンズ
2 コリメートレンズ
1−2 レンズ(1−5の代わりに使っても良い様々なレンズを示す)
1−3 集光ミラー
1−4 集光ミラー
1−5 レンズ
3−1 光拡散板
3−2 厚み分布を有する光拡散板
3−3 筒状光拡散板
3−4 傘状光拡散板
4 モータ
5 モータ軸
6 レーザ光
6−2 拡散されかつ拡大しない光
6−3 レーザ装置
6−4 拡散されたレーザ光
7 台
8、9 微動台
10 基準面
11 前後調整機構
11−2 前後調整機構
12 垂直調整機構
13、45 左右水平調整機構
16 遮光箱
17 レーザ装置
18 ミラー
19 フィルタ類
20 レーザ照明装置
21 ビームスプリッタ
22、25 対物レンズ
23 試料
24 CCDカメラ
26 レンズ
27 分光器
30 支持枠
31 筒台
32、36、42 ネジ具
33 梃子
34 取付板
35 上台
37 下台
38 共通支持台
39 あおり調整機構
40 基台
41 あおり台
43 電極
44 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該光拡散手段とは、光をランダムに拡散ないしは散乱する手段であり、該光拡大抑制手段とは、拡散ないしは散乱されたことによりその光束径が拡大し位相が乱され全体の直進性が失われたレーザ光を、位相は乱れたままで直進性のみを回復させる手段であり、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成することを特徴とするレーザ照明装置。
【請求項2】
レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該レーザ光路は同一の該光拡散手段を2回通過し、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成することを特徴とするレーザ照明装置。
【請求項3】
前記光拡散手段は光拡散板からなり、該光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、厚み分布を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ照明装置。
【請求項4】
前記光拡散手段は光拡散板からなり、該光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、屈折率分布を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項5】
前記光拡散手段は光拡散板からなり、該光拡散板は、少なくとも1枚以上であって、ホログラフィック光拡散板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項6】
前記光拡大抑制手段を少なくとも1枚以上のレンズで構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項7】
前記光拡大抑制手段を少なくとも1枚以上のミラーで構成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項8】
前記光拡大抑制手段を少なくとも各1枚以上のレンズとミラーで構成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項9】
前記光拡大抑制手段を集光レンズとコリメートレンズで構成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項10】
前記光拡大抑制手段を集光ミラーとコリメートミラーで構成することを特徴とする請求項1〜5、7のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項11】
前記光拡大抑制手段を集光ミラーとコリメートレンズ、ないしは、集光レンズとコリメートミラーで構成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項12】
レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成する装置であり、前記光拡大抑制手段は、集光レンズおよびコリメートレンズを備え、前記光拡散手段は、光拡散状態を変動可能とすることのできる光拡散板からなり、前記光拡散板と前記集光レンズの光拡散板側の外周端との距離が、r・cot(θ)以内である(ここで、θは光拡散板の光拡散角であって、θは30度以内、rは集光レンズの半径であって、rは20mm以内である。)ことを特徴とするレーザ照明装置。
【請求項13】
レーザ照明装置であって、レーザ光源からのレーザ光路に設置された、光拡散状態を変動可能な少なくとも1つの光拡散手段と、少なくとも1つの光拡大抑制手段とを有し、該光拡散手段と該光拡大抑制手段が共同して、該レーザ光源からのレーザ光を、拡散されかつ拡大しない光に変換することで、対象を照明ないしは励起し得る光を生成する装置であり、前記光拡大抑制手段は、集光ミラーおよびコリメートレンズを備え、前記光拡散手段は、光拡散状態を変動可能とすることのできる光拡散板からなり、前記光拡散板と前記集光ミラーとの最短距離が、2r・sin(Φ−θ)・cos(θ)/sin(2θ)以内である(ここで、θは光拡散板の光拡散角を表し、rは集光ミラーの半径を表し、Φはレーザ光に対するミラーの傾き角であって、Φは45度より小さくても大きくてもよい。)ことを特徴とするレーザ照明装置。
【請求項14】
前記コリメートレンズの直径が前記集光レンズの直径以上であることを特徴とする請求項9または12に記載のレーザ照明装置。
【請求項15】
前記コリメートレンズが、前記集光レンズと同じ焦点距離又は該集光レンズより長い焦点距離を有することを特徴とする請求項9、12、14のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項16】
前記光拡散手段は光拡散板からなり、該光拡散板と前記集光レンズの光拡散板側の外周端との距離が少なくとも152mm以内であることを特徴とする請求項12、14、15のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項17】
前記レーザ光路の進行方向に対して上、下、左、右及び平行の方向の少なくともいずれか一つの方向に前記光拡散手段及び前記光拡大抑制手段ないしは光拡大抑制手段を構成する各要素手段を移動する手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項18】
前記光拡散手段及び前記光拡大抑制手段の少なくともいずれか一つを移動させる手段を有する請求項1〜17のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項19】
遮光板又は遮光ボックスでカバーされていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項20】
レーザ照明装置として請求項1〜19のいずれか1項に記載のレーザ照明装置を用いて成ることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項21】
レーザ照明装置として請求項1〜19のいずれか1項に記載のレーザ照明装置を用いて成ることを特徴とする顕微分光装置。
【請求項22】
光源として請求項1〜19のいずれか1項に記載のレーザ照明装置を用いて成ることを特徴とする露光装置。

【図1】
image rotate

【図1−1】
image rotate

【図1−2(a)】
image rotate

【図1−2(b)】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2(a)】
image rotate

【図3−2(b)】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−212146(P2012−212146A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121408(P2012−121408)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2007−19556(P2007−19556)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】