説明

レーザ照明装置

【課題】フライアイレンズの透過光の干渉縞による照明ムラを低減できるレーザ照明装置を提供する。
【解決手段】レーザ照明装置は、光源1から出射されたパルスレーザ光11の光路上にフライアイレンズ2(4)及びコンデンサレンズ32が配置されており、光源1とフライアイレンズ2(4)との間又はフライアイレンズ2(4)とコンデンサレンズ32との間には、パルスレーザ光14を入射光に対してその偏向方向を連続的に変化させて透過させる電気光学結晶素子5が配置されている。この電気光学結晶素子5は、例えば1対の電極とこの電極間に配置された光学結晶材料とにより構成されており、電極間に電圧を印加して電界を発生させることにより、電気結晶素子の屈折率が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザアニーリング等に使用されるレーザ照明装置に関し、特に、フライアイレンズを透過して強度が均一化されたパルスレーザ光の干渉縞による照明ムラを低減できるレーザ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザアニーリング等に使用されるレーザ照明装置には、レーザ光の光軸に垂直な面内における強度を均一化するために、フライアイレンズが使用されている。即ち、フライアイレンズは、複数個の凸レンズが碁盤の目状に配置されて全体として略平板状に形成されたものであり、レーザ光をフライアイレンズに透過させることにより、各凸レンズに透過した光は、夫々、焦点に集光された後、拡散し、複数本に分割されたレーザ光が重畳的に次の光学系部材へと入射される。これにより、フライアイレンズ13への入射光が例えば光軸に垂直な面内にて不均一な強度分布を有する場合においても、この強度分布を均一化することができる。例えば光源から出射されるレーザ光は、その強度が光軸に垂直な面内にてガウス分布を有していたり、例えば全反射ミラー等の光学部材に反射されることにより、照度ムラが発生する場合があるが、フライアイレンズを設置することにより、これらを解消することができる。
【0003】
しかし、レーザ照明装置にフライアイレンズを使用した場合、レーザ光のコヒーレンシー(可干渉性)により、レーザ光の照射領域に干渉縞が生じ、これにより照明ムラが発生するという問題点がある。
【0004】
よって、フライアイレンズを透過することにより発生する干渉縞を低減するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1においては、レーザ光の幅を広げるビームエキスパンダとフライアイレンズとの間に、レーザ光の干渉を低減するための光路差調整部材を設けている。
【0005】
また、本願発明者等は、特許文献2において、光源から出射されたレーザ光の光路上に、複数本の光透過性部材からなる第1の光路差調整部材を配置し、第1の光路差調整部材の透過光をフライアイレンズに透過させてレーザ光の強度を均一化し、コンデンサレンズに透過させて平行光にした後、複数枚の板状の光透過性部材からなる第2の光路差調整部材に透過させ、この透過光を更にフライアイレンズに透過させることにより、干渉縞を低減する技術を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−12757号公報
【特許文献2】特開2010−182731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2のレーザ照明装置によっても、干渉縞を十分に解消できない場合がある。例えば、光路差調整部材は、一定の光路長を有するため、各レーザ光の波長により取り換える必要があり、レーザ光の波長のみを変化させた場合には、干渉縞が発生して、これにより、レーザ光の照射領域に照明ムラが生じるという問題点がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、フライアイレンズの透過光の干渉縞による照明ムラを低減できるレーザ照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレーザ照明装置は、パルスレーザ光を出射する光源と、この光源からのパルスレーザ光の光路上に配置され前記パルスレーザ光の強度を光軸に垂直な面内で均一化する均一化部材と、前記均一化部材を透過したパルスレーザ光の光路上に配置され入射光を平行光にして透過させるコンデンサレンズと、を有するレーザ照明装置において、前記光源と前記均一化部材との間又は前記均一化部材と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光に対してその偏向方向を連続的に変化させて透過させる電気光学結晶素子を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るレーザ照明装置において、前記均一化部材は、例えばフライアイレンズ又はロッドレンズである。また、前記電気光学結晶素子は、前記パルスレーザ光の光軸に平行に配置された1対の電極と、この電極間に配置された光学結晶材料と、を有し、前記電極間に電圧を印加して電界を発生させることにより、前記電気光学結晶素子の屈折率を変化させて前記入射光に対してその偏向方向を変化させる。この場合に、前記電極間に印加する電圧の周期は、前記パルスレーザ光の周期と同期していることが好ましい。
【0011】
本発明に係るレーザ照明装置は、例えば、更に、前記電気光学結晶素子と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子を有するか、又は、更に、前記電気光学結晶素子と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子を有する。又は、レーザ照明装置は、更に、前記電気光学結晶素子を透過したレーザパルス光の光路上に配置され入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子と、この偏向素子の透過光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子と、を有し、前記光拡散素子の透過光が前記コンデンサレンズに入射される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るレーザ照明装置は、光源と均一化部材との間又は均一化部材とコンデンサレンズとの間のパルスレーザ光の光路上に入射光に対してその偏向方向を連続的に変化させて透過させる電気光学結晶素子を有するため、均一化部材を透過して強度が均一化されたパルスレーザ光は、電気光学結晶素子に透過されることにより、その偏向方向が連続的に変化するか、又は、電気光学結晶素子により偏向方向が連続的に変化するように透過されたパルスレーザ光は、均一化部材を透過して強度が均一化される。よって、均一化部材を透過することによる干渉縞の発生位置が連続的に変化し、これにより、レーザ照明装置から出射されたパルスレーザ光は、その輝度がレーザ光の照射領域の全体で均一化され、照明ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。
【図2】(a)乃至(c)は、本発明の実施形態に係る電気光学結晶素子の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電気光学結晶素子への印加電圧波形とパルスレーザ光のレーザ出力波形との関係を示す図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係るレーザ照明装置からの出射光を示す模式図、(b)は同じく出射光により発生する干渉縞の波形を一例として示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る偏向素子の一例を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光拡散素子の一例を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るレーザ照明装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図、図2(a)乃至図2(c)は、本発明の実施形態に係る電気光学結晶素子の構成を示す図である。本発明のレーザ照明装置は、従来のレーザ照明装置と同様に、パルスレーザ光11を出射する光源1、パルスレーザ光の強度を光軸に垂直な面内で均一化する均一化部材としての(第1の)フライアイレンズ2、及びレーザ光の最も下流側に設けられ、入射光を平行光にして透過させる(第2の)コンデンサレンズ32を有する。本実施形態においては、図1に示すように、レーザ照明装置には、フライアイレンズ2を透過したパルスレーザ光12の光路上に第1のコンデンサレンズ31が設けられており、この第1のコンデンサレンズ31に透過されることにより、フライアイレンズ2の透過光12は平行光13となる。また、第1のコンデンサレンズ31の透過光13の光路上には、更に第2のフライアイレンズ4が設けられており、これにより、パルスレーザ光の光軸に垂直な面内における強度が更に均一化されるように構成されている。
【0015】
本実施形態においては、図1に示すように、第2のフライアイレンズ4を透過したパルスレーザ光の光路上に、電気光学結晶素子5が設けられており、電気光学結晶素子5に入射した光は、その偏向方向を連続的に変化させて透過されるように構成されている。そして、電気光学結晶素子5の透過光が、第2のコンデンサレンズ32に透過して、平行光のパルスレーザ光として出射される。なお、本発明においては、例えば図1に示すように、各光学素子間には、全反射ミラー等の光学部材を配置してもよい。
【0016】
光源1は、パルスレーザ光を出射するレーザ光源であり、例えばQスイッチによるレーザ発振により、所定の周期でレーザ光がパルス状に出射される。例えばパルスレーザ光の周波数は50Hz(周期:20ミリ秒)、パルス幅は220n秒である。
【0017】
レーザ強度を均一化する均一化部材としての第1及び第2のフライアイレンズ2,4は、従来と同様に、複数個の凸レンズが碁盤の目状に配置されて全体として略平板状に形成されたものであり、レーザ光をフライアイレンズに透過させることにより、各凸レンズに透過した光は、夫々、焦点に集光された後、拡散し、複数本に分割されたレーザ光が重畳的に次の光学系部材へと入射され、これにより、フライアイレンズ2,4への入射光が例えば光軸に垂直な面内にて不均一な強度分布を有する場合においても、この強度分布を均一化できる。なお、本実施形態においては、均一化部材としてフライアイレンズが設けられている場合を説明するが、均一化部材としては、例えばロッドレンズも使用することができる。即ち、ロッドレンズは、柱状の光透過性材料からなり、その両端面が研磨されたものであり、一方の端面から入射した拡散光が、他方の端面から出射されるまでの間に光透過部内で複数回反射されることにより、レーザ光の強度を均一化することができる。又は、ロッドレンズは円柱状の光透過性の材料からなり、その側面に平行光を入射させると、光透過部を通過する間に光軸に垂直な面内にて集光された後、拡散させて出射され、これにより、レーザ光の強度を均一化することができる。
【0018】
第1及び第2のコンデンサレンズ31,32は、所謂、集束レンズであり、コンデンサレンズに入射した露光光は、平行光として透過される。
【0019】
電気光学結晶素子5は、例えば図2(a)に示すように、パルスレーザ光10の光軸に平行に配置された1対の電極52,53及び電極52,53間に配置された光学結晶材料51により構成されており、電極52,53間には電圧を印加できるように構成されている。光学結晶材料51は、例えばLi及びNbからなる光透過性の結晶材料(LN結晶材料)であり、電極52,53間に電圧を印加して電界Eを発生させることにより、光学結晶材料51の屈折率が変化する。即ち、図2(b)に示すように、電極52,53間に印加する電圧が0の場合には、電界Eは発生せず(E=0)、光学結晶材料51に入射したパルスレーザ光10は、偏向方向を変えずにそのまま透過され(図2(b)における透過光10a)、図2(c)に示すように、電極52,53間に電圧を印加すると、電界Eが発生することにより、光学結晶材料51に入射したパルスレーザ光10は、入射方向に対してその偏向方向を変化させて透過される(図2(c)における透過光10b)。例えば、光学結晶材料51がLN結晶材料の場合、透過する光の波長は、370乃至5000nmであり、使用されるパルスレーザ光の波長を含む。LN結晶材料の屈折率nは、電圧の印加により発生する電界E[V/m]に対して下記数式1及び2により与えられ、電界の強さEに比例する。なお、下記数式1及び2におけるn及びr33は、夫々係数であり、例えばパルスレーザ光の波長が1064nmのとき、n=2.156、r33=3.2×10−11[m/V]である。
【0020】
【数1】

【0021】
【数2】

【0022】
電気光学結晶素子5の電極52,53間に印加される電圧は、例えば図3に示すように、連続的に変化するように印加される。よって、電気光学結晶素子5の透過光の偏向方向も連続的に変化する。なお、図3においては、パルスレーザ光のレーザ出力波形を電気光学結晶素子への印加電圧波形と並べて示してある。
【0023】
図3に示すように、電気光学結晶素子5の電極52,53間に印加される電圧は、その周期がパルスレーザ光の周期と同期していることが好ましい。即ち、光源1からQスイッチによるレーザ発振により、パルスレーザ光が出射されると、パルスレーザ光の出力は、徐々に増大し、最大値付近で増減を繰り返した後、減少し、やがて0となる。このとき、パルスレーザ光が出射されたタイミングで、トリガパルスを出力させ、このトリガパルスに対して、所定の遅延時間t後に、電極52,53間への電圧の印加を開始して電界Eを発生させる。電極52,53間に印加する電圧を、図3に示すように、例えばランプ波形の電圧とし、時間の経過と共に、徐々に両電極間の電圧を増加させ、所定時間後に0に戻す。このように、印加電圧の周期をパルスレーザ光の周期に同期させることにより、電極52,53間に印加する電圧の制御が容易となる。
【0024】
本実施形態においては、電気光学結晶素子5を設け、これにより、入射光の偏向方向を連続的に変化させるため、フライアイレンズ2,4を透過することによる干渉縞は、その位置が連続的に変化する。よって、レーザ照明装置から出射されたパルスレーザ光は、その輝度がレーザ光の照射領域の全体で均一化される。図4(a)は、本発明の実施形態に係るレーザ照明装置からの出射光を示す模式図、図4(b)は同じく出射光により発生する干渉縞の波形を一例として示す図である。電気光学結晶素子5を設けない場合においては、図4(a)に示すように、例えば150μmピッチで、干渉縞が生じる。この干渉縞は、例えば図4(b)に破線で示すように、所定の輝度に対して±12%の幅を有し、これにより、レーザ光の照射領域における照明ムラが大きくなる。これに対して、電気光学結晶素子5を設けた場合においては、干渉縞が発生するピッチは例えば150μmで同程度であるが、各レーザ光は、偏向方向が連続的に変化するため、輝度の誤差範囲は例えば±3%と極めて小さくできる。よって、レーザ光の照射領域における照明ムラを効果的に低減できる。
【0025】
次に、第1実施形態に係るレーザ照明装置の動作について説明する。先ず、光源1から例えばQスイッチによるレーザ発振により、所定のタイミングでレーザ光11が出射される。レーザ光11の出力は、徐々に増大し、最大値付近で増減を繰り返した後、減少し、やがて0となる。そして、所定時間後に、再度レーザ発振により、レーザ光11が出射されることが繰り返される。これにより、光源1から出射されるレーザ光は、パルス状に間欠的に出射されるパルスレーザ光となる。このとき、レーザ光11を出射するタイミングで、トリガパルスを出力させ、このトリガパルスを、電気光学結晶素子5の電極間に電圧を印加するトリガとして使用する。
【0026】
光源1から出射されたパルスレーザ光11は、第1のフライアイレンズ2に入射する。第1のフライアイレンズ2は複数個の凸レンズが碁盤の目状に配列されており、入射光は、各凸レンズへの入射光として分割され、各凸レンズを透過した後、各凸レンズごとに、夫々、焦点に集光され、拡散していく。そして、複数本に分割されたパルスレーザ光12は、重畳的に第1のコンデンサレンズ31に照射される。これにより、第1のフライアイレンズ2を透過し、コンデンサレンズ31に入射するパルスレーザ光12は、光軸に垂直な面内にて強度分布が均一化される。
【0027】
コンデンサレンズ31を透過して平行光となったパルスレーザ光13は、第2のフライアイレンズ4を透過されることにより、強度分布が更に均一化される。そして、電気光学結晶素子5の光学結晶材料51(例えばLN結晶材料)に入射される。この電気光学結晶素子5には光学結晶材料51を挟むように1対の電極が配置されており、前記トリガパルスから所定の遅延時間t後に、電極52,53間への電圧の印加が開始されて電界Eが発生する。電極52,53間に印加される電圧は、例えばランプ波形の電圧であり、時間の経過と共に、徐々に両電極間の電圧が増加し、所定時間後、例えばパルスレーザ光の周期に同期して0に戻る。
【0028】
この電極52,53間の電圧の変化に伴い、光学結晶材料51の屈折率が連続的に変化する。よって、電気光学結晶素子5に入射したパルスレーザ光は、その偏向方向が連続的に変化して透過される。電気光学結晶素子5を透過したパルスレーザ光15は、第2のコンデンサレンズ32に透過されて、レーザ光の照射対象に平行光で出射される。
【0029】
従来のレーザ光照射装置においては、パルスレーザ光の偏向方向は一定であるため、レーザ光の照射領域に干渉縞が生じ、これにより照度ムラが発生するという問題点があるが、本実施形態においては、電気光学結晶素子5により、レーザ光の偏向方向を連続的に変化させているため、干渉縞が発生する位置が連続的に変化し、輝度がレーザ光の照射領域の全体で均一化される。よって、レーザ光の照射領域における照明ムラを効果的に低減できる。
【0030】
また、本実施形態においては、レーザ光の強度の均一化を目的として、フライアイレンズは2枚設けられているが、レーザ光の強度を十分に均一化できる場合には、フライアイレンズは1枚設けられていてもよい。また、レーザ光の光路上における上流側の(第1の)コンデンサレンズ31については、設けられていなくてもよい。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態に係るレーザ照明装置について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。図5に示すように、本実施形態に係るレーザ照明装置には、電気光学結晶素子5と第2のコンデンサレンズ32との間のパルスレーザ光15の光路上に偏向素子6が設けられている。図6に示すように、偏向素子6は、例えば光透過性の材料からなる板状の部材の一方の面が傾斜するように成形されたものであり、例えば傾斜していない側の面からパルスレーザ光10を入射させた場合に、傾斜面において、その偏向方向が変化するように構成された、所謂ウェッジプリズムである。本実施形態においては、図6に示すように、偏向素子6は、例えば傾斜していない側の面がパルスレーザ光の光軸に対して垂直となるように配置され、前記光軸に対して回転可能に構成されており、これにより、パルスレーザ光15の偏向方向が連続的に変化する。この偏向素子6の回転速度は、例えば1箇所のレーザ光照射部位につきNショットのパルスレーザ光の照射を行う場合、レーザ光の周波数をF[Hz]として、F/N×60[rpm]である。
【0032】
このように、本実施形態においては、入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子6を設けたことにより、電気光学結晶素子5による連続的な偏向方向の変化に加えて偏向素子6によってもパルスレーザ光の偏向方向を連続的に変化させることができるため、第1実施形態に比して、干渉縞による照度ムラの発生が更に抑制される。
【0033】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様の種々の変形を行うことができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態に係るレーザ照明装置について説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係るレーザ照明装置の構成を示す模式図である。図7に示すように、本実施形態に係るレーザ照明装置には、電気光学結晶素子5と第2のコンデンサレンズ32との間のパルスレーザ光15の光路上に光拡散素子7が設けられている。図8に示すように、光拡散素子7は、例えば光透過性の板状の部材の一方の面に磨りガラス状の粗面が形成された、所謂、拡散板であり、入射したパルスレーザ光10をその光軸から広がるように拡散させて透過させる(図8における透過光10d)ように構成されている。これにより、光拡散素子7への入射光15は、偏向方向が拡散されて透過される。
【0035】
本実施形態においては、入射光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子7を設けたことにより、電気光学結晶素子5を透過して連続的に偏向方向が変化したパルスレーザ光15は、光拡散素子に透過されることにより、偏向方向が更に拡散されるため、第1実施形態に比して、干渉縞の発生が抑制され、照度ムラの発生を効果的に防止できる。
【0036】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様の種々の変形を行うことができる。
【0037】
次に、本発明の第4実施形態に係るレーザ照明装置について説明する。本実施形態においては、図9に示すように、第1実施形態のレーザ照明装置において、電気光学結晶素子5と第2のコンデンサレンズ32との間のパルスレーザ光15の光路上に第2実施形態の偏向素子6及び第3実施形態の光拡散素子7が設けられている。各構成の詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態においては、入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子6と、入射光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子7を設けたことにより、電気光学結晶素子5による連続的な偏向方向の変化に加えて、偏向素子6によってもパルスレーザ光の偏向方向を連続的に変化させることができ、更に、パルスレーザ光15が光拡散素子に透過されることにより、偏向方向が拡散されるため、第1乃至第3実施形態に比して、干渉縞による照度ムラの発生を最も効果的に防止できる。
【0039】
以上述べてきたように、本発明においては、電気光学結晶素子をパルスレーザ光の光路上に設け、入射光に対してその偏向方向を連続的に変化させて透過させることにより、フライアイレンズを透過することによる干渉縞の発生位置が連続的に変化し、これにより、レーザ照明装置から出射されたパルスレーザ光は、その輝度がレーザ光の照射領域の全体で均一化され、照明ムラを低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:光源、2,4:フライアイレンズ、31,32:コンデンサレンズ、5:電気光学結晶素子(LN結晶素子)、6:偏向素子(ウェッジプリズム)、7:光拡散素子(拡散板)、51:光学結晶材料(LN結晶材料)、52,53:電極、54:電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を出射する光源と、この光源からのパルスレーザ光の光路上に配置され前記パルスレーザ光の強度を光軸に垂直な面内で均一化する均一化部材と、前記均一化部材を透過したパルスレーザ光の光路上に配置され入射光を平行光にして透過させるコンデンサレンズと、を有するレーザ照明装置において、
前記光源と前記均一化部材との間又は前記均一化部材と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光に対してその偏向方向を連続的に変化させて透過させる電気光学結晶素子を有することを特徴とするレーザ照明装置。
【請求項2】
前記均一化部材は、フライアイレンズ又はロッドレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ照明装置。
【請求項3】
前記電気光学結晶素子は、前記パルスレーザ光の光軸に平行に配置された1対の電極と、この電極間に配置された光学結晶材料と、を有し、前記電極間に電圧を印加して電界を発生させることにより、前記電気光学結晶素子の屈折率を変化させて前記入射光に対してその偏向方向を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ照明装置。
【請求項4】
前記電極間に印加される電圧の周期は、前記パルスレーザ光の周期と同期していることを特徴とする請求項3に記載のレーザ照明装置。
【請求項5】
更に、前記電気光学結晶素子と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項6】
更に、前記電気光学結晶素子と前記コンデンサレンズとの間の前記パルスレーザ光の光路上に配置され、入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。
【請求項7】
更に、前記電気光学結晶素子を透過したレーザパルス光の光路上に配置され入射光をその光軸に対して偏向させて透過させる偏向素子と、この偏向素子の透過光をその光軸から広がるように拡散させて透過させる光拡散素子と、を有し、前記光拡散素子の透過光が前記コンデンサレンズに入射されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−220589(P2012−220589A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84019(P2011−84019)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】