説明

レーザ発振器、光増幅器、及びレーザ発振器の製造方法

【課題】製造工数の削減を図り、より生産性に優れたレーザ発振器を提供する。
【解決手段】このレーザ発振器は、ダブルクラッドファイバからなる増幅用光ファイバ12を備え、マスターオシレータ1から出射されるシード光をシングルモードファイバSMF1及び光結合部11を介して増幅用光ファイバ12の一端部に入射させることにより同シード光を増幅させる。そして、増幅されたレーザ光を増幅用光ファイバ12の他端部からタップ14のシングルモードファイバ14a,14bを介して第2の光増幅器PA2に入射させ、その出射端2からレーザ光を発振する。ここでは、光結合部11のシングルモードファイバ11a及び増幅用光ファイバ12に、シングルモードファイバからなる第1及び第2の接続用光ファイバF1,F2をそれぞれ接続する。そして、第1及び第2の接続用光ファイバF1,F2、光結合部11、及び増幅用光ファイバ12をモジュール化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターオシレータから出射されるシード光を増幅してレーザ光を発振するレーザ発振器、同レーザ発振器に用いられる光増幅器、及びレーザ発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーザ発振器としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載されているレーザ発振器では、マスターオシレータから出射されるシード光を第1及び第2の光増幅器を通じて増幅し、レーザ光を発振するようにしている。このうち、第1の光増幅器は、マスターオシレータから出射されるシード光、及び励起用レーザ光源から出射される励起光の双方が、光増幅器を介して、希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバに入射される構造となっている。そして、第1の光増幅器では、励起光がダブルクラッドファイバに入射されることにより、ダブルクラッドファイバに添加されている希土類元素が励起される。これにより、シード光が、ダブルクラッドファイバを通過する際に、励起された希土類元素を通じて誘導放出作用により増幅される。そして、この増幅されたレーザ光が、第1の光増幅器の後段に設けられた第2の光増幅器を通じてさらに増幅され、第2の光増幅器の出射端から出射される。
【0003】
ところで、このようなレーザ発振器では、第1の光増幅器に設けられたダブルクラッドファイバがシングルモードファイバを介して第2の光増幅器に接続されることが多い。このため、レーザ発振器の製造時にダブルクラッドファイバ及びシングルモードファイバといった異種の光ファイバ同士を接続する必要がある。しかしながら、これらを融着などにより接続しようとすると、各光ファイバのモードフィールド径の差異に起因して、大きな接続損失が生じるおそれがある。
【0004】
そこで従来は、例えば特許文献2に見られるように、これら異種の光ファイバ同士を融着させた後、その融着部分を加熱してファイバのコアがテーパ状となるように加工することで、互いのモードフィールド径を近づけるといった方法が提案されている。このような方法によれば、接続損失を低減しつつ、異種の光ファイバ同士を接続することができるため、高出力のレーザ発振器を実現することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−108772号公報
【特許文献2】特開平5−40209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載されている方法を用いて異種の光ファイバ同士を接続させる場合、例えば各光ファイバの位置合わせや加熱量を厳密に管理する必要があるため、製造環境によっては接続ミスが発生する可能性が高く、再現性が低い。そして、接続ミスが発生すると、各光ファイバの端面を整える、いわゆるクリープ加工を行わなければならない。そしてこのことが、レーザ発振器を製造する上での工数の増加を招き、ひいては生産コストの増加を招く要因となっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造工数の削減を図り、より生産性に優れたレーザ発振器、同レーザ発振器に用いられる光増幅器、及びレーザ発振器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、マスターオシレータから出射されるシード光を入力側光ファイバを介して増幅用光ファイバの一端部に入射させることにより同シード光を増幅させ、前記増幅用光ファイバの他端部から出力側光ファイバを介してレーザ光を発振するにあたり、前記増幅用光ファイバが前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバの双方と異種の光ファイバからなるレーザ発振器において、前記増幅用光ファイバと、前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなり同増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続される第1の接続用光ファイバと、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなり前記増幅用光ファイバの他端部に直接的にあるいは間接的に接続される第2の接続用光ファイバとが一体にモジュール化された光増幅モジュールを備え、同光増幅モジュールの前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバに前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバがそれぞれ接続されてなることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、レーザ発振器の製造前に光増幅モジュールを予め製造しておくことで、増幅用光ファイバに第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバを接続する作業、すなわち異種の光ファイバ同士を接続する作業を事前に済ませておくことができる。これにより、レーザ発振器の製造時には、光増幅モジュールの第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバに入力側光ファイバ及び出力側光ファイバをそれぞれ接続するだけ、すなわち同種の光ファイバ同士を接続するだけでよいため、接続作業が容易となる。よって、レーザ発振器の製造時の工数が削減され、ひいては生産性が向上するようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ発振器において、前記増幅用光ファイバは、励起用レーザ光源から出射されるレーザ光により励起されるものであり、前記入力側光ファイバと前記増幅用光ファイバとの間には、前記励起用レーザ光源から出射されるレーザ光、及び前記入力側光ファイバを伝播する前記シード光を前記増幅用光ファイバに伝達する光結合部が設けられ、前記光増幅モジュールには、前記光結合部が更にモジュール化されてなることを要旨とする。
【0011】
このようなレーザ発振器では、励起用レーザ光源から出射されるレーザ光によって励起される増幅用光ファイバが発熱する。また、入力側光ファイバと増幅用光ファイバとの間に光結合部を設け、励起用レーザ光源から出射されるレーザ光、及び入力側光ファイバを伝播するシード光を光結合部を介して増幅用光ファイバに導入しているような場合、同光結合部も発熱し易い。そして、これら増幅用光ファイバ及び光結合部の発熱は、例えばレーザ発振器を構成する各種光ファイバに断線などの異常を生じさせる要因となるため、これを抑制することが求められている。この点、上記構成によるように、光増幅モジュールに光結合部を更にモジュール化させることとすれば、光増幅モジュールに適宜の冷却構造を設けるだけで、増幅用光ファイバ及び光結合部の双方を冷却することができる。よって、それらの発熱を的確に抑制することができるため、上述した光ファイバの断線などの異常を未然に防止することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ発振器において、前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバの少なくとも一方が、シングルモードファイバからなることを要旨とする。
【0013】
シングルモードファイバは、例えばダブルクラッドファイバよりも小さい曲げ径に曲げたとしても、ベンドロスが発生し難いといった特性を有している。よって、上記構成によるように、第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバの少なくとも一方をシングルモードファイバにより構成することとすれば、レーザ発振器の製造に際しての光ファイバの取り回しの自由度が向上し、ひいてはレーザ発振器の設計の自由度が大幅に向上するようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、入力側光ファイバを介して入射されるレーザ光を増幅用光ファイバで増幅するとともに、この増幅されたレーザ光を出力側光ファイバに伝達するにあたり、前記増幅用光ファイバが、前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバと異種の光ファイバからなる光増幅器において、前記増幅用光ファイバと、前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなり同増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続される第1の接続用光ファイバと、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなり前記増幅用光ファイバの他端部に直接的にあるいは間接的に接続される第2の接続用光ファイバとが一体にモジュール化されてなることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、レーザ発振器の製造時には、モジュール化された光増幅器の第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバに入力側光ファイバ及び出力側光ファイバをそれぞれ接続するだけでよい、すなわち同種の光ファイバ同士を接続するだけでよいため、接続作業を容易に行うことができる。このため、レーザ発振器の製造に際しての工数の低減を図ることができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、マスターオシレータから出射されるシード光を入力側光ファイバを介して増幅用光ファイバの一端部に入射させることにより前記シード光を増幅させ、前記増幅用光ファイバの他端部から出力側光ファイバを介してレーザ光を発振するにあたり、前記増幅用光ファイバが前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバの双方と異種の光ファイバからなるレーザ発振器の製造方法であって、前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなる第1の接続用光ファイバを前記増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続するとともに、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなる第2の接続用光ファイバを前記増幅用光ファイバの他端部に直接的あるいは間接的に接続する工程と、前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバに前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバをそれぞれ接続する工程とを備えることを要旨とする。
【0017】
同製造方法によるように、レーザ発振器の製造前に、増幅用光ファイバの一端部及び他端部に第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバをそれぞれ接続する工程を行うことで、異種の光ファイバ同士を接続する作業を事前に完了させておくことができる。このため、実際のレーザ発振器の製造時には、光増幅モジュールの第1の接続用光ファイバ及び第2の接続用光ファイバに入力側光ファイバ及び出力側光ファイバをそれぞれ接続するだけでよい、すなわち同種の光ファイバ同士を接続するだけでよいため、接続作業が容易となる。このため、レーザ発振器の製造に際しての工数の低減を図ることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるレーザ発振器、同レーザ発振器に用いられる光増幅器、及びレーザ発振器の製造方法によれば、製造工数が削減され、ひいては生産性の向上が図られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるレーザ発振器の一実施形態についてその概略構成を模式的に示す図。
【図2】(a),(b)は、同実施形態のレーザ発振器についてその製造プロセスを模式的に示す図。
【図3】本発明にかかるレーザ発振器の他の例についてその概略構成を模式的に示す図。
【図4】本発明にかかるレーザ発振器の他の例についてその概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかるレーザ発振器の一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、このレーザ発振器は、マスターオシレータ1から出射されるシード光を第1の光増幅器PA1及び第2の光増幅器PA2を通じて増幅し、第2の光増幅器PA2の出射端2からレーザ光を発振する、いわゆるMOPA(Master Oscillator and Power Amprifier)構成からなるものである。
【0021】
ここで、第1の光増幅器PA1は、大きくは、励起用レーザ光源10、光結合部11、及び増幅用光ファイバ12を有して構成されている。
このうち、光結合部11は、マスターオシレータ1にシングルモードファイバSMF1及び第1の接続用光ファイバF1を介して接続されるシングルモードファイバ(SMF)11a、及び励起用レーザ光源10に接続されるマルチモードファイバ(MMF)11bを備えている。また、光結合部11は、増幅用光ファイバ12の一端部(左端部)に接続されるダブルクラッドファイバ(DCF)11cを備えている。なお、ダブルクラッドファイバは、コアの周囲を囲むクラッドが第1クラッドとその周囲を覆う第2クラッドとの2層構造からなるものであって、第1クラッドがコアに対するクラッドとして機能するとともに、第1クラッド自身も第2クラッドに対してコアとして機能するものである。また、第1の接続用光ファイバF1は、シングルモードファイバSMF1と同一のものである。これに対し、光結合部11のシングルモードファイバ11aは、シングルモードファイバSMF1と異なるシングルモードファイバからなるものである。ちなみに、図1では、シングルモードファイバ及びマルチモードファイバを実線で示すとともに、ダブルクラッドファイバを太線で示している。さらに、各光ファイバの接続部分に「×」の印を付している。光結合部11は、マスターオシレータ1から出射されるシード光がシングルモードファイバSMF1及び第1の接続用光ファイバF1を介してシングルモードファイバ11aに入射されると、同シード光をダブルクラッドファイバ11cのコアに入射させる。また、励起用レーザ光源10から出射される励起光がマルチモードファイバ11bに入射されると、同励起光をダブルクラッドファイバ11cの第1クラッドに入射させる。そして、ダブルクラッドファイバ11cに入射されたシード光及び励起光は、増幅用光ファイバ12の左端部に出射される。なお、シングルモードファイバSMF1の途中には、マスターオシレータ1から光結合部11へ向かう方向のレーザ光のみを透過させ、その逆方向のレーザ光を遮断するアイソレータ13が設けられている。これにより、増幅用光ファイバ12からの戻り光がマスターオシレータ1に逆流してこれが損傷することが防止されている。
【0022】
また、増幅用光ファイバ12は、例えばYb(イットリビウム)などの希土類元素がコアに添加されたダブルクラッドファイバからなるものである。そして、光結合部11のダブルクラッドファイバ11cから出射されるシード光及び励起光は、増幅用光ファイバ12のコア及び第1クラッドにそれぞれ入射される。これにより、増幅用光ファイバ12の第1クラッドに入射された励起光が同増幅用光ファイバ12のコアに添加された希土類イオンに吸収されて、誘導放出が生じることで、コア内を伝播するシード光が増幅される。そして、増幅用光ファイバ12で増幅されたレーザ光(増幅光)は、増幅用光ファイバ12の他端部(右端部)から第2の接続用光ファイバF2を介してタップ14に出射される。なお、第2の接続用光ファイバF2は、シングルモードファイバからなるものである。
【0023】
タップ14は、第2の接続用光ファイバF2に接続されるシングルモードファイバ14a、第2の光増幅器PA2の入力側シングルモードファイバSMF2に接続されるシングルモードファイバ14b、及び外部出力用のシングルモードファイバ14cを備えている。なお、シングルモードファイバ14aは、第2の接続用光ファイバF2と同一のものである。また、シングルモードファイバ14bは、第2の光増幅器PA2の入力側シングルモードファイバSMF2と同一のものである。タップ14は、増幅用光ファイバ12から出射された増幅光が第2の接続用光ファイバF2を介してシングルモードファイバ14aに入射されると、その大部分をシングルモードファイバ14bに出射するとともに、そのごく一部をシングルモードファイバ14cに出射する。これにより、増幅光がシングルモードファイバ14bを介して第2の光増幅器PA2の入力側シングルモードファイバSMF2に入射される。一方、シングルモードファイバ14cから出射されるレーザ光は、例えば図示しない光検出器などに取り込まれて、増幅光の強度測定などに利用される。
【0024】
また、この第1の光増幅器PA1では、図中に破線で示すように、光結合部11、増幅用光ファイバ12、第1の接続用光ファイバF1の一部、及び第2の接続用光ファイバF2の一部が例えばシリコン樹脂などの樹脂部材により一体にモールド封止されてモジュール化され、光増幅モジュールMDが構成されている。この光増幅モジュールMDは、第1の接続用光ファイバF1の左端部、第2の接続用光ファイバF2の右端部、及び光結合部11のマルチモードファイバ11bの左端部が外部に露出した構造を有している。そして、光増幅モジュールMDから露出した各光ファイバF1,F2,11bに、シングルモードファイバSMF1、タップ14のシングルモードファイバ14a、励起用レーザ光源10がそれぞれ接続されている。このように、光増幅モジュールMDでは、シングルモードファイバSMF1が入力側光ファイバとなるとともに、タップ14のシングルモードファイバ14aが出力側光ファイバとなっている。
【0025】
一方、第2の光増幅器PA2の基本的な構成は、第1の光増幅器PA1と同様である。すなわち、第2の光増幅器PA2も、励起用レーザ光源、光結合部、及び増幅用光ファイバを備えている。そして、第1の光増幅器PA1から入力側シングルモードファイバSMF2に入射されるレーザ光、及び励起用レーザ光源から出射される励起光を増幅用光ファイバに入射させることで、レーザ光を増幅させ、出射端2からレーザ光を発振する。なおここでは、第2の光増幅器PA2の詳細な説明については、便宜上、割愛する。
【0026】
次に、図2を参照して、レーザ発振器の製造方法について説明する。なお、図2でも、シングルモードファイバ及びマルチモードファイバを実線で示すとともに、ダブルクラッドファイバを太線で示している。また、各光ファイバの接続部分に「×」の印を付している。
【0027】
図2(a)に示すように、本実施形態では、まず、レーザ発振器の製造前に光増幅モジュールMDを製造する。すなわち、光結合部11のシングルモードファイバ11aの左端部に第1の接続用光ファイバF1の右端部を接続するとともに、光結合部11のダブルクラッドファイバ11cの右端部に増幅用光ファイバ12の左端部を接続する。また、増幅用光ファイバ12の右端部に第2の接続用光ファイバF2の左端部を接続する。その後、第1の接続用光ファイバF1、光結合部11、増幅用光ファイバ12、及び第2の接続用光ファイバF2を樹脂部材により一体にモールド封止することで光増幅モジュールMDを成形する。なおこの際、第1の接続用光ファイバF1の左端部、第2の接続用光ファイバF2の右端部、及び光結合部11のマルチモードファイバ11bの左端部を光増幅モジュールMDから外部に露出させる。
【0028】
そして、レーザ発振器の製造時には、図2(b)に示すように、光増幅モジュールMDから露出した第1の接続用光ファイバF1の左端部にシングルモードファイバSMF1を接続する。また、光増幅モジュールMDから露出した第2の接続用光ファイバF2の右端部にタップ14のシングルモードファイバ14aを接続する。さらに、光増幅モジュールMDから露出したマルチモードファイバ11bの左端部に励起用レーザ光源10を接続し、第1の光増幅器PA1を組み立てる。その後、第1の光増幅器PA1、第2の光増幅器PA2、及びマスターオシレータ1をそれぞれ連結し、レーザ発振器の製造を完了する。
【0029】
次に、本実施形態にかかるレーザ発振器の作用について説明する。
第1の光増幅器PA1が先の図1に示すような構造からなる場合、異なる光ファイバ同士が接続されている部分は以下の(a1)〜(a3)に示す部分となる。
【0030】
(a1)第1の接続用光ファイバF1と光結合部11のシングルモードファイバ11aとが接続されている部分P1。
(a2)光結合部11のダブルクラッドファイバ11cと増幅用光ファイバ12とが接続されている部分P2。
【0031】
(a3)増幅用光ファイバ12と第2の接続用光ファイバF2とが接続されている部分P3。
ここで、(a1)及び(a2)の接続部分P1,P2は、同種の光ファイバ同士が接続されている部分ではあるものの、異なる光ファイバ同士が接続される部分であるため、それらの接続には多少の工数が必要となる。また、(a3)の接続部分P3は、異種の光ファイバ同士が接続される部分となるため、それらの接続には多くの工数が必要となる。
【0032】
したがって、先の図2(a)に例示したようにレーザ発振器の製造前に光増幅モジュールMDを予め製造しておくこととすれば、光ファイバ同士の接続の際に工数を要する作業を予め済ませておくことができる。そして、レーザ発振器の製造時には、先の図2(b)に例示したように、光増幅モジュールMDの第1の接続用光ファイバF1の左端部にシングルモードファイバSMF1を接続するとともに、第2の接続用光ファイバF2の右端部にタップ14のシングルモードファイバ14aを接続するだけでよい。すなわち、同種の光ファイバ同士を接続するだけでよい。よって、接続作業が容易となるため、レーザ発振器の製造時の工数が削減され、ひいては生産性を向上させることができる。
【0033】
一方、増幅用光ファイバ12を構成するダブルクラッドファイバは、モードフィールド径が大きく且つ、NA(Numerical Aperture)が低い部材であるため、ベンドロスを抑制するためには、その曲げ径を所定の値(50mm程度)以上に設定する必要がある。よって、レーザ発振器の製造に際しては、増幅用光ファイバ12の取り回しにより設計の自由度が大きく制限されてしまうといった実情がある。
【0034】
この点、シングルモードファイバは、例えばダブルクラッドファイバよりも小さい曲げ径(20mm程度)に曲げたとしても、ベンドロスが発生し難いといった特性を有している。よって、本実施形態のようにレーザ発振器の製造時にシングルモードファイバ同士を接続する作業のみを行うだけでよい場合、レーザ発振器の製造に際しての光ファイバの取り回しの自由度が向上するため、ひいてはレーザ発振器の設計の自由度が大幅に向上するようになる。また、レーザ発振器の製造の際に第1の光増幅器PA1に作用する曲げや外圧の耐性が向上するため、生産時の組み込み作業が容易となる。
【0035】
ところで、このようなレーザ発振器では、マスターオシレータ1や第1の光増幅器PA1のそれぞれの個体差などにより、発振されるレーザ光の強度にばらつきが生じるおそれがある。
【0036】
この点、本実施形態のレーザ発振器では、例えば光増幅モジュールMD毎の増幅率を予め測定するようにすれば、マスターオシレータ1や第2の光増幅器PA2の個体差を相殺することのできる光増幅モジュールMDを選定することが可能となる。このため、レーザ光の強度のばらつきを的確に抑制することも可能である。
【0037】
一方、このようなレーザ発振器では、励起用レーザ光源10から出射される励起光によって励起される増幅用光ファイバ12が発熱する。また、マスターオシレータ1から出射されるシード光、並びに励起用レーザ光源10から出射される励起光が入射される光結合部11も発熱し易い。そして、これら増幅用光ファイバ12及び光結合部11の発熱は、例えばレーザ発振器を構成する各種光ファイバの断線などの異常を生じさせる要因となるため、これを抑制することが求められている。
【0038】
この点、本実施形態のレーザ発振器によれば、光増幅モジュールMDに例えばヒートシンクなどの適宜の冷却構造を設けることで、増幅用光ファイバ12及び光結合部11の双方を冷却することができる。よって、それらの発熱を的確に抑制することができるため、上述した光ファイバの断線などの異常を未然に防止することができるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態にかかるレーザ発振器、第1の光増幅器PA1、及びレーザ発振器の製造方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)増幅用光ファイバ12、光結合部11、増幅用光ファイバ12の一端部に光結合部11を介して間接的に接続される第1の接続用光ファイバF1、及び増幅用光ファイバ12の他端部に直接的に接続される第2の接続用光ファイバF2を一体にモジュール化し、光増幅モジュールMDを構成することとした。そして、レーザ発振器の製造前に光増幅モジュールMDを予め製造しておくこととした。これにより、レーザ発振器の製造時には、光増幅モジュールMDの第1の接続用光ファイバF1にシングルモードファイバSMF1を接続するとともに、光増幅モジュールMDの第2の接続用光ファイバF2にタップ14のシングルモードファイバ14aを接続するだけ、すなわち同種の光ファイバを接続するだけでよい。よって、接続作業が容易となるため、レーザ発振器の製造時の工数が削減され、ひいては生産性が向上するようになる。また、光増幅モジュールMDに適宜の冷却構造を設けるだけで、増幅用光ファイバ12及び光結合部11の双方を冷却することができるため、それらの発熱を的確に抑制することができ、ひいては光ファイバの断線異常などを未然に防止することができるようになる。
【0040】
(2)光増幅モジュールMDから外部に露出する第1の接続用光ファイバF1及び第2の接続用光ファイバF2をシングルモードファイバにより構成することとした。これにより、レーザ発振器の製造時に光ファイバの取り回しの自由度が向上するため、ひいてはレーザ発振器の設計の自由度が大幅に向上するようになる。
【0041】
(3)光増幅モジュールMDを成形するにあたり、増幅用光ファイバ12などの部品を樹脂部材でモールド封止することとした。これにより、各種部品のモジュール化を、より安定して行うことができるようになる。
【0042】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、増幅用光ファイバ12及び光結合部11をモジュール化することとしたが、これらに更にアイソレータ13及びタップ14を加えてモジュール化してもよい。具体的には、図3に示すように、光結合部11のシングルモードファイバ11aの左端部に第1の接続用光ファイバF1の右端部を接続するとともに、光結合部11のダブルクラッドファイバ11cの右端部に増幅用光ファイバ12の左端部を接続する。また、第1の接続用光ファイバF1の途中にアイソレータ13を設ける。さらに、増幅用光ファイバ12の右端部にタップ14のシングルモードファイバ14aの左端部を接続する。その後、第1の接続用光ファイバF1、アイソレータ13、光結合部11、増幅用光ファイバ12、及びタップ14を樹脂部材により一体にモールド封止することで光増幅モジュールMDを成形する。なおこの際、第1の接続用光ファイバF1の左端部、光結合部11のマルチモードファイバ11bの左端部、及びタップ14のシングルモードファイバ14b,14cのそれぞれの右端部を光増幅モジュールMDから外部に露出させる。そして、レーザ発振器の製造時には、光増幅モジュールMDから露出した第1の接続用光ファイバF1にシングルモードファイバSMF1を接続するとともに、タップ14のシングルモードファイバ14bに第2の光増幅器PA2の入力側シングルモードファイバSMF2を接続する。このような構成であれば、レーザ発振器の製造時に同種の光ファイバ同士を接続するだけでよいため、上記実施形態と同様、レーザ発振器の製造時の工数を削減することが可能である。なお、図3に例示した光増幅モジュールMDでは、シングルモードファイバSMF1が入力側光ファイバとなるとともに、第2の光増幅器PA2の入力側シングルモードファイバSMF2が出力側光ファイバとなっている。
【0043】
・また、図4に示すように、増幅用光ファイバ12のみをモジュール化してもよい。具体的には、図中に示すように、増幅用光ファイバ12の左端部に第1の接続用光ファイバF1の右端部を接続するとともに、増幅用光ファイバ12の右端部に第2の接続用光ファイバF2の左端部を接続する。なお、第1の接続用光ファイバF1は光結合部11のダブルクラッドファイバ11cと同一のダブルクラッドファイバからなるものである。そして、第1の接続用光ファイバF1、増幅用光ファイバ12、及び第2の接続用光ファイバF2を樹脂部材により一体にモールド封止することで光増幅モジュールMDを形成する。なおこの際、第1の接続用光ファイバF1の左端部、及び第2の接続用光ファイバF2の右端部を光増幅モジュールMDから外部に露出させる。そして、レーザ発振器の製造時には、光増幅モジュールMDから露出した第1の接続用光ファイバF1に光結合部11のダブルクラッドファイバ11cを接続するとともに、第2の接続用光ファイバF2にタップ14のシングルモードファイバ14aを接続する。このような構成であれば、レーザ発振器の製造時に、光結合部11のシングルモードファイバ11aとシングルモードファイバSMF1との接続については多少の工数が必要となるものの、基本的には同種の光ファイバ同士を接続するだけでよいため、レーザ発振器の製造時の工数を削減することが可能である。なお、図4に例示した光増幅モジュールMDでは、光結合部11のダブルクラッドファイバ11cが入力側光ファイバとなるとともに、タップ14のシングルモードファイバ14aが出力側光ファイバとなっている。
【0044】
・上記実施形態及びその変形例では、光増幅モジュールMDを成形するにあたり、増幅用光ファイバ12などの部品を樹脂部材でモールド封止することとしたが、これに代えて、例えばこれらの部品をケースの内部に収容してパッケージ化してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、増幅用光ファイバ12がダブルクラッドファイバからなるものであったが、同増幅用光ファイバ12がダブルクラッドファイバ以外の光ファイバからなるものであってもよい。
【0046】
・上記実施形態では、本発明にかかるレーザ発振器を、2つの光増幅器を備えるレーザ発振器に適用することとしたが、1つの光増幅器のみを備えるレーザ発振器、あるいは3つ以上の光増幅器を備えるレーザ発振器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
F1…第1の接続用光ファイバ、F2…第2の接続用光ファイバ、MD…光増幅モジュール、PA1…第1の光増幅器、PA2…第2の光増幅器、SMF1…シングルモードファイバ、SMF2…入力側シングルモードファイバ、1…マスターオシレータ、2…出射端、10…励起用レーザ光源、11…光結合部、11a…シングルモードファイバ、11b…マルチモードファイバ、11c…ダブルクラッドファイバ、12…増幅用光ファイバ、13…アイソレータ、14…タップ、14a〜14c…シングルモードファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターオシレータから出射されるシード光を入力側光ファイバを介して増幅用光ファイバの一端部に入射させることにより同シード光を増幅させ、前記増幅用光ファイバの他端部から出力側光ファイバを介してレーザ光を発振するにあたり、前記増幅用光ファイバが前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバの双方と異種の光ファイバからなるレーザ発振器において、
前記増幅用光ファイバと、前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなり同増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続される第1の接続用光ファイバと、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなり前記増幅用光ファイバの他端部に直接的にあるいは間接的に接続される第2の接続用光ファイバとが一体にモジュール化された光増幅モジュールを備え、同光増幅モジュールの前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバに前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバがそれぞれ接続されてなる
ことを特徴とするレーザ発振器。
【請求項2】
前記増幅用光ファイバは、励起用レーザ光源から出射されるレーザ光により励起されるものであり、前記入力側光ファイバと前記増幅用光ファイバとの間には、前記励起用レーザ光源から出射されるレーザ光、及び前記入力側光ファイバを伝播する前記シード光を前記増幅用光ファイバに伝達する光結合部が設けられ、前記光増幅モジュールには、前記光結合部が更にモジュール化されてなる
請求項1に記載のレーザ発振器。
【請求項3】
前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバの少なくとも一方が、シングルモードファイバからなる
請求項1又は2に記載のレーザ発振器。
【請求項4】
入力側光ファイバを介して入射されるレーザ光を増幅用光ファイバで増幅するとともに、この増幅されたレーザ光を出力側光ファイバに伝達するにあたり、前記増幅用光ファイバが、前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバと異種の光ファイバからなる光増幅器において、
前記増幅用光ファイバと、前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなり同増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続される第1の接続用光ファイバと、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなり前記増幅用光ファイバの他端部に直接的にあるいは間接的に接続される第2の接続用光ファイバとが一体にモジュール化されてなる
ことを特徴とする光増幅器。
【請求項5】
マスターオシレータから出射されるシード光を入力側光ファイバを介して増幅用光ファイバの一端部に入射させることにより前記シード光を増幅させ、前記増幅用光ファイバの他端部から出力側光ファイバを介してレーザ光を発振するにあたり、前記増幅用光ファイバが前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバの双方と異種の光ファイバからなるレーザ発振器の製造方法であって、
前記入力側光ファイバと同種の光ファイバからなる第1の接続用光ファイバを前記増幅用光ファイバの一端部に直接的あるいは間接的に接続するとともに、前記出力側光ファイバと同種の光ファイバからなる第2の接続用光ファイバを前記増幅用光ファイバの他端部に直接的あるいは間接的に接続する工程と、
前記第1の接続用光ファイバ及び前記第2の接続用光ファイバに前記入力側光ファイバ及び前記出力側光ファイバをそれぞれ接続する工程と
を備えることを特徴とするレーザ発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−77719(P2013−77719A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217088(P2011−217088)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】