説明

レーザ装置、レーザ装置を備えた露光装置及び検査装置

【課題】出力光の吸収による位相不整合を低減して波長変換効率を向上可能なレーザ装置を提供する。
【解決手段】本発明を例示する態様のレーザ装置は、第1のレーザ光L10を出力する第1レーザ光出力部10と、第1のレーザ光を波長変換して変換光L30を出力する波長変換光学素子30と、第1のレーザ光と異なる波長の第2のレーザ光L20を出力する第2レーザ光出力部20と、第2のレーザ光L20を第1のレーザ光L10と重ね合わせて波長変換光学素子30に入射させる合成光学素子31とを備える。第2のレーザ光L20は、波長変換光学素子30における第2のレーザ光L20の吸収によって発生する熱量が、波長変換光学素子における変換光L30の吸収によって発生する熱量と略等しくなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出力されたレーザ光を波長変換して変換光を出力する波長変換光学素子とを備えたレーザ装置に関する。また、このようなレーザ装置を備えた露光装置及び検査装置等のレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光出力部と波長変換光学素子とを備えたレーザ装置は、顕微鏡や形状測定装置、露光装置、検査装置などのレーザシステムの光源として用いられている。このようなレーザシステムでは、赤外〜可視領域のレーザ光を出力するレーザ光出力部と、赤外〜可視領域のレーザ光を紫外領域のレーザ光に変換する波長変換光学素子とを備えたレーザ装置が好適に用いられる。レーザ装置の出力波長は、そのレーザ装置が組み込まれるシステムの用途及び機能に応じて設定され、レーザ装置の出力波長に応じたレーザ光出力部及び波長変換光学素子が用いられる(例えば特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
例えば、レーザ光出力部から波長532[nm]の可視光が出力され、波長変換光学素子において第2高調波発生により波長266[nm]の紫外光に波長変換して出力される。あるいは、レーザ光出力部から波長1064[nm]の赤外光と波長532[nm]の可視光が出力され、波長変換光学素子において和周波発生により波長355[nm]の紫外光に変換して出力されるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−350914号公報
【特許文献2】特開2004−86193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波長変換光学素子で紫外光を発生させる場合に、発生した紫外光の吸収による発熱が起こる。発熱による温度上昇は波長変換光学素子の屈折率を変化させる。屈折率が変化すると波長変換の際に位相不整合が生じ(位相不整合量Δkが増大し)、波長変換効率が低下する。波長変換により紫外光を発生する波長変換素子において、ビームの伝播方向をz軸にとり、波長変換素子への入射面をz=0、波長変換素子からの出射面をz=Lとする場合を考える。このときz=0(入射面)では紫外光は存在しないため、紫外光が波長変換素子に吸収されることによる発熱はないが、z方向へのビームの伝播とともに紫外光強度が増加する。それに伴って紫外光の吸収が増加するために発熱量も増加し、z=L(出射面)近傍で紫外光強度は最大になり、同時に発熱量も最大となる。この結果、z軸方向に温度分布が発生して位相不整合が生じ、波長変換効率が低くなるという課題があった。波長変換効率の低下は、波長変換により発生する紫外光のパワーが高いほど顕著に表れ、高出力化の妨げになっているという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、波長変換効率の向上可能なレーザ装置を提供することを目的とする。また、エネルギー効率を高めた露光装置や検査装置等のレーザシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示する第1の態様はレーザ装置である。レーザ装置は、第1のレーザ光を出力する第1レーザ光出力部と、第1レーザ光出力部から出力された第1のレーザ光を波長変換して変換光を出力する波長変換光学素子と、第1のレーザ光と波長が異なる第2のレーザ光を出力する第2レーザ光出力部と、第2レーザ光出力部から出力された第2のレーザ光を波長変換光学素子に入射させる合成光学素子とを備える。第2のレーザ光の光路は、波長変換光学素子の入射面及び出射面において第1のレーザ光の光路の近傍に位置するか、または、波長変換光学素子の入出射面間において第1のレーザ光の光路と重ね合わされており、第2のレーザ光の波長及びパワーは、波長変換光学素子における第2のレーザ光の吸収によって発生する熱量と、波長変換光学素子における変換光の吸収によって発生する熱量とが略等しくなるように設定される。なお、「近傍」とは、第1のレーザ光の光路と第2のレーザ光の光路とが接近して、熱的に相互作用を及ぼし合うような位置関係をいう。上記波長変換光学素子の入射側、あるいは出射側にさらに波長変換光学素子を設けてレーザ装置を構成しても良い。
【0008】
なお、前記変換光の波長は紫外領域であり、前記第2のレーザ光の波長は赤外領域であるように構成することができる。
【0009】
また、波長変換光学素子における第2のレーザ光の吸収係数をα2[cm-1]、波長変換光学素子において第2のレーザ光が伝播する方向の長さをL[cm]としたときに、α2×Lの値はほぼ1であるように構成することができる。
【0010】
また、波長変換光学素子における変換光の吸収係数をα1、第2のレーザ光の吸収係数をα2とし、波長変換光学素子から出力される変換光のパワーをP1、波長変換光学素子に入射する第2のレーザ光のパワーをP2としたときに、α1×P1≒α2×P2を満足するように第2のレーザ光のパワーP2を設定することができる。
【0011】
なお、前記第1のレーザ光は、第1波長のレーザ光(例えば、実施形態における波長1064[nm]の基本波)と第2波長のレーザ光(例えば、実施形態における波長532[nm]の第2高調波)とが同軸に重複されて形成されており、波長変換光学素子は、第1波長のレーザ光と第2波長のレーザ光との和周波発生により変換光を発生するように構成することができる。あるいは、前記第1のレーザ光は、第3波長のレーザ光(例えば、実施形態における波長が532[nm]である第2高調波L15)であり、波長変換光学素子は、第3波長のレーザ光の第2高調波発生により変換光を発生するように構成しても良い。
【0012】
本発明を例示する第2の態様は露光装置である。この露光装置は、上記のようなレーザ装置と、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、露光対象物を保持する露光対象物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光をマスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【0013】
本発明を例示する第3の態様は検査装置である。この検査装置は、上記のようなレーザ装置と、被検物を保持する被検物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光を被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、被検物からの光を検出器に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様のレーザ装置では、波長変換の対象である第1のレーザ光と第2のレーザ光とを重ね合わせて、または、入射面及び出射面で第1のレーザ光の近傍を通るように、第2のレーザ光を波長変換光学素子に入射させる。第2のレーザ光の波長及びパワーは、波長変換光学素子における第2のレーザ光の吸収によって発生する熱量と、波長変換光学素子における変換光の吸収によって発生する熱量とが、略等しくなるように設定されている。前述したように、変換光(紫外光)の吸収による発熱は、入射面において最小、出射面において最大になる。一方、第2のレーザ光の吸収による発熱は、入射面において最大、出射面において最小になる。その結果、波長変換光学素子の出射面側では変換光の吸収によって波長変換光学素子の温度が上昇し、入射面側では第2のレーザ光の吸収によって波長変換光学素子の温度が上昇する。本構成形態においては、両者の吸収により発生する熱量が略等しくなるように設定されている。このため、入射面側の温度上昇と出射面側の温度上昇が同程度となり、第2のレーザ光が存在しない場合(従来)と比べて波長変換光学素子の内部における温度偏差が大幅に縮小される。温度偏差の縮小は位相不整合量Δkの縮小を意味する。これにより波長変換効率を向上させることができる。
【0015】
第2の態様の露光装置は、波長変換効率を向上したレーザ装置を備えている。そのため、同じ供給電力で高い変換光出力(あるいは低い供給電力で同じ変換光出力)を得ることができ、エネルギー効率を高めた露光装置を提供することができる。
【0016】
第3の態様の検査装置は、波長変換効率を向上したレーザ装置を備えている。そのため、同じ供給電力で高い変換光出力(あるいは低い供給電力で同じ変換光出力)を得ることができ、エネルギー効率を高めた検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の適用例として示す第1構成形態のレーザ装置の概要構成図である。
【図2】LBO結晶の光の透過特性を示すグラフである。
【図3】LBO結晶内のz軸に沿った発熱分布のシミュレーション結果である。
【図4】図3の算出に用いた条件値である。
【図5】本発明の適用例として示す第2構成形態のレーザ装置の概要構成図である。
【図6】BBO結晶の光の透過特性を示すグラフである。
【図7】BBO結晶内のz軸に沿った発熱分布のシミュレーション結果である。
【図8】図7の算出に用いた条件値である。
【図9】本発明の適用例として示す露光装置の概要構成図である。
【図10】本発明の適用例として示す検査装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本発明を適用したレーザ装置の一例として、第1構成形態のレーザ装置LS1の概要構成図を図1に示す。レーザ装置LS1は、第1のレーザ光L10を出力する第1レーザ光出力部10と、第1レーザ光出力部10から出力された第1のレーザ光L10を波長変換して変換光L30を出力する波長変換光学素子30と、第1のレーザ光L10と波長が異なる第2のレーザ光L20を出力する第2レーザ光出力部20と、第2レーザ光出力部20から出力された第2のレーザ光L20を第1レーザ光出力部10から出力された第1のレーザ光L10と同軸に重ね合わせて波長変換光学素子30に入射させる合成光学素子31などを備えて構成される。なお、図1及び後述する図5においては、コリメートレンズや集光レンズ、アイソレータ等の光学部品の記載を省略している。
【0019】
第1レーザ光出力部10及び波長変換光学素子30は、レーザ装置LS1から出力する変換光L30の波長に応じて適宜に設定することができる。本構成形態においては、第1レーザ光出力部10から出力する第1のレーザ光L10は、波長が1064[nm]のレーザ光である基本波L11と、波長が532[nm]のレーザ光である前記基本波の第2高調波L12とが重ね合わされたものである。波長変換光学素子30は、基本波L11と前記基本波の第2高調波L12の和周波である波長355[nm]の変換光L30を発生させる。
【0020】
第1レーザ光出力部10は、シード光を発生するレーザ光発生部11と、レーザ光発生部11により発生されたシード光を増幅して増幅されたシード光すなわち基本波L11を出力する増幅部12と、増幅部12から出力された基本波L11の波長を変換する波長変換光学素子13とを有して構成される。
【0021】
レーザ光発生部11は、波長1064[nm]のシード光を発生するレーザ光源を備える。レーザ光源としては、例えば、DFB(Distributed Feedback)半導体レーザを好適に用いることができる。DFB半導体レーザは、励起電流を制御することにより連続発振またはパルス発振させることができる。また、DFB半導体レーザは、温度制御することにより所定の波長範囲の狭帯域化された単一波長のレーザ光を出射させることができる。なお、レーザ光源の出力側に電気光学変調器(EOM)を設け、レーザ光源により発生されたレーザ光の一部を電気光学変調器により切り出してシード光を出力するように構成しても良い。レーザ光発生部11から出力されたシード光は増幅部12に入射する。
【0022】
増幅部12は、ファイバ光増幅器を備えて構成される。波長1064[nm]のシード光を増幅するファイバ光増幅器として、1000〜1100[nm]の波長帯域に利得を有するイッテルビウム(Yb)・ドープ・ファイバ光増幅器(YDFA)が好適に用いられる。ファイバ光増幅器により所定パワーに増幅されたシード光、すなわち基本波L11は増幅部12から出力される。本構成例の場合、増幅部から出力される基本波L11のパワーは、例えば数十〜数百Wである。なお、増幅部12は、増幅すべきパワーに応じて複数のファイバ光増幅器を直列及び/または並列に接続して構成することができる。増幅部12から出力された基本波L11は、図示省略するレンズを介して波長変換光学素子13に集光されて入射する。
【0023】
波長変換光学素子13では、基本波の第2高調波が発生する。すなわち波長532[nm]の第2高調波が発生する。本構成形態では、波長変換光学素子13として、LBO(LiB35)結晶を用いた場合を例示する。なお、BBO(β-BaB24)結晶やPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶等を用いることもできる。波長変換光学素子13からは、波長変換光学素子13を波長変換されずに透過した基本波L11と、波長変換光学素子13で発生した第2高調波L12とが重ね合わされた状態で出射される。重ね合わされた状態で出射された基本波L11と第2高調波L12とはレンズを介して合成光学素子31に入射する。すなわち、第1レーザ光出力部10からは、波長1064[nm]の基本波L11と波長532[nm]の第2高調波L12からなる第1のレーザ光L10が出射され、第1のレーザ光L10は合成光学素子31に入射する。
【0024】
第2レーザ光出力部20は、上記第1レーザ光出力部10から出力される第1のレーザ光L10とは異なる波長の第2のレーザ光L20を出力するレーザ光出力部である。第2のレーザ光L20については後に詳述するが、波長変換光学素子30における第2のレーザ光L20の吸収によって発生する熱量と、波長変換光学素子30により発生する変換光L30を波長変換光学素子30が吸収することによって発生する熱量とが、ほぼ等しくなるように種々の条件が設定される。本構成形態において、第2のレーザ光L20の波長は2.5[μm]であり、第2レーザ光出力部20は波長2.5[μm]のレーザ光を発生するレーザ光源を主体として構成される。このようなレーザ光源としては、例えば、半導体レーザを用いることができる。第2レーザ光出力部20から出力された波長2.5[μm]の第2のレーザ光L20は、レンズを介して合成光学素子31に入射する。すなわち、第2レーザ光出力部20からは、波長2.5[μm]の第2のレーザ光L20が出射され、第2のレーザ光L20は合成光学素子31に入射する。
【0025】
合成光学素子31は、第1レーザ光出力部10から出力された第1のレーザ光L10(基本波L11及び第2高調波L12)と第2レーザ光出力部20から出力された第2のレーザ光L20とを同軸に重ね合わせる光学素子である。具体的には、波長1064[nm]の基本波L11及び波長532[nm]の第2高調波L12を透過し、波長2.5[μm]の第2のレーザ光L20を反射するダイクロイックミラーが好適に用いられる。合成光学素子31によって同軸に重ね合わされた第1のレーザ光L10(基本波L11及び第2高調波L12)と第2のレーザ光L20は、波長変換光学素子30に入射する。
【0026】
波長変換光学素子30では、基本波L11と第2高調波L12との和周波発生により、波長が355[nm]の第3高調波である変換光L30が発生する。発生した変換光L30はレーザ装置LS1から出力される。本構成例では、波長変換光学素子30としてLBO結晶を用いた場合を例示する。なお、波長変換光学素子30としてBBO結晶を用いてもよい。
【0027】
波長変換光学素子30における和周波発生に関与するのは第1レーザ光出力部10から出力された第1のレーザ光L10(基本波L11及び第2高調波L12)であり、第2レーザ光出力部20から出力された第2のレーザ光L20は上記和周波の発生には関与しない。しかしながら、第2のレーザ光L20は、波長変換光学素子30における和周波発生の発生効率、すなわち変換効率を向上させるという重要な効果を奏する。以降では、この第2のレーザ光L20の効果について詳細に説明する。
【0028】
波長変換光学素子30に、波長1064[nm]の基本波L11(以下、1064nm光とも表記する)と波長532[nm]の第2高調波L12(以下、532nm光とも表記する)が入射されと、これらの光が波長変換光学素子30の内部を進行するのに伴って、和周波が発生する。すなわち、波長355[nm]の変換光L30(以下、355nm光とも表記する)が発生する。発生する355nm光の量は、波長変換光学素子30の入射面ではゼロであり、出射面で最大になる。波長変換光学素子30における光の吸収は、1064nm光及び532nm光と比較して、355nm光は顕著に大きい。そのため、波長変換光学素子30が355nm光を吸収することによる発熱は、波長変換光学素子30の入射面で最小、出射面で最大になり、波長変換光学素子30の内部には温度偏差が発生する。例えば、波長変換光学素子30において入射面と出射面の間に温度勾配が発生する。波長変換光学素子30の内部に温度偏差が発生すると、1064nm光と532nm光の間に位相不整合が生じて、和周波発生による波長変換効率は低下する。
【0029】
本技術は、波長変換光学素子30における温度偏差を縮小することで、位相不整合を低減するものである。その具体的手段として、波長変換光学素子30として用いるLBO結晶が大きな吸収をもつ波長域の光である波長2.5μmの第2のレーザ光L20(以下、2.5μm光とも表記する)の光路を、第1のレーザ光L10(1064nm光L11及び532nm光L12を重複させた光)の光路と同軸に重ね合わせるか、または、第1のレーザ光L10の近傍に光路が平行となるように、第1のレーザ光L10の入射面側から入射させる。これにより、第2のレーザ光L20の吸収による発熱は、波長変換光学素子30の入射面側ほど大きい。その際、第2のレーザ光の吸収による発熱量が、変換光L30(355nm光)の吸収による発熱量と略等しくなるように設定される。
【0030】
LBO結晶における光の透過特性を図2に示す。図2における横軸は波長、縦軸は透過率である。図2から定量的な把握は難しいが、LBO結晶は波長355[nm]の光に対して1%未満の僅かな吸収を示す。長波長側では概ね2[μm]あたりから透過率が低下し始め、2.3[μm]以上の領域では相当透過率が低い(吸収率が高い)。本構成形態では、第2のレーザ光L20の吸収係数をα2[cm-1]、LBO結晶のz軸方向の長さをL[cm]としたときに、α2×Lが1近傍の値となるように、第2のレーザ光L20の波長を2.5[μm]に設定している。換言すれば、第2のレーザ光L20の波長は、LBO結晶に入射した第2のレーザ光が出射面に至る過程でほぼ吸収されるように設定される。
【0031】
以下、LBO結晶(波長変換光学素子30)における波長変換過程で生じる355nm光による発熱と、2.5μm光による発熱の状況について、具体例を交えて定量的に説明する。LBO結晶で発生する355nm光のビーム強度をP1[W]、吸収係数をα1[cm-1]とすると、355nm光の吸収による単位長さ当たりの発熱ε1は、ε1=α11[W/cm]で与えられる。同様に、LBO結晶に入射する2.5μm光のビーム強度をP2[W]、吸収係数をα2[cm-1]とすると、2.5μm光の吸収による単位長さ当たりの発熱ε2は、ε2=α22[W/cm]で与えられる。
【0032】
355nm光はLBO結晶内での波長変換過程により生成され、入射面からの距離の増加とともに増大する。すなわち、355nm光のビーム強度P1はビームの伝播方向をz軸にとったときにzの関数でありP1(z)で表される。355nm光のビーム強度P1(z)は、入射面をz=0とすると、概ねP1(z)∝tanh2(βz)のように成長する。比例係数やβは波長変換過程に応じて定まる。
【0033】
一方、LBO結晶に入射した2.5μm光のビーム強度P2は、結晶内での吸収に伴って入射面からの距離の増加とともに減衰する。すなわち、2.5μm光のビーム強度P2もzの関数であり、P2(z)で表される。LBO結晶に入射した2.5μm光のビーム強度P2(z)は、P2(z)=P2(0)*exp(−α2z)のように変化する。P2(0)は入射面での強度、すなわち入射強度である。
【0034】
これらの式に具体的な値を代入し、LBO結晶について結晶内のz軸に沿った発熱分布を算出した結果を図3に示す。図3における横軸はz軸に沿った結晶の位置、縦軸は単位長さ当たりの発熱量である。本構成例においてLBO結晶のz軸に沿った長さはL=2[cm]である。図3中の細かい点線は355nm光の吸収による発熱ε1、粗い点線は2.5μm光の吸収による発熱ε2、実線は両者の発熱の和ε3=ε1+ε2を示す。図3の計算に用いた355nm光及び2.5μm光の吸収係数α1,α2、ビーム強度P1(L),P2(0)の具体的な値を図4に示す。2.5μm光の入力パワーP2(0)は、概ねα1×P1(L)≒α2×P2(0)を満たすように設定される。
【0035】
2.5μm光(第2のレーザ光L20)が入射されない状態では、LBO結晶内の発熱は355nm光の吸収による発熱ε1のみであり、結晶内の発熱のばらつきは符号Aで示す幅を有する。一方、2.5μm光が入射された状態では、LBO結晶内の発熱は、355nm光の吸収による発熱ε1と2.5μm光の吸収による発熱ε2との和ε3になり、結晶内の発熱のばらつきは符号Bで示す幅となる。
【0036】
両者を対比して明らかなように、第1のレーザ光L10(1064nm光L11及び532nm光L12)に、第2のレーザ光L20(2.5μm光)を同時入射した場合に、LBO結晶内の発熱のばらつきが大幅に抑制され、本構成例においては約1/3に低減されることが分かる。その結果、LBO結晶内における温度のばらつきΔtも同程度抑制されて位相不整合量Δkが低減され、これにより波長変換効率の向上が実現される。
【0037】
次に、第2構成形態のレーザ装置LS2について、その概要構成を示す図5を参照して説明する。なお、レーザ装置LS1と同様部分に同一番号を付して重複説明を省略する。ーザ装置LS2は、第1のレーザ光L15を出力する第1レーザ光出力部15と、第1レーザ光出力部15から出力された第1のレーザ光L15を波長変換して変換光L35を出力する波長変換光学素子35と、第1のレーザ光L15と波長が異なる第2のレーザ光L25を出力する第2レーザ光出力部25と、第2レーザ光出力部25から出力された第2のレーザ光L25を第1レーザ光出力部15から出力された第1のレーザ光L15と同軸に重ね合わせて波長変換光学素子35に入射させる合成光学素子36などを備えて構成される。
【0038】
第1レーザ光出力部15は、シード光を発生するレーザ光発生部11と、レーザ光発生部11により発生されたシード光を増幅して増幅されたシード光すなわち基本波L11を出力する増幅部12と、増幅部12から出力された基本波L11の波長を変換する波長変換光学素子16とを有して構成される。レーザ光発生部11、増幅部12の構成は前述したレーザ装置LS1と同様であり、増幅部12から出力された波長1064[nm]の基本波L11が図示省略するレンズを介して波長変換光学素子16に集光入射する。
【0039】
波長変換光学素子16では、基本波の第2高調波発生により波長532[nm]の第2高調波が発生する。本構成形態では、波長変換光学素子16としてLBO結晶を用いた場合を例示する。なお、入射する基本波L11のパワーに応じて、PPLN結晶やBBO結晶等を用いることもできる。発生した第2高調波は第1のレーザ光L15として波長変換光学素子16から出射され、第1レーザ光出力部15から出力される。第1レーザ光出力部15から出力された波長532[nm]の第1のレーザ光L15は、レンズを介して合成光学素子36に入射する。
【0040】
第2レーザ光出力部25は、上記第1レーザ光出力部15から出力される第1のレーザ光L15とは異なる波長の第2のレーザ光L25を出力するレーザ光出力部である。第2のレーザ光L25は、波長変換光学素子35における第2のレーザ光L25の吸収によって発生する熱量と、波長変換光学素子35により発生する変換光L35を波長変換光学素子35が吸収することによって発生する熱量とが、ほぼ等しくなるように種々の条件が設定される。本構成形態において、第2のレーザ光L25の波長は2.6[μm]であり、第2レーザ光出力部25は波長2.6[μm]のレーザ光を発生するレーザ光源(例えば半導体レーザ)を主体として構成される。第2レーザ光出力部25から出力された波長2.6[μm]の第2のレーザ光L25は、レンズを介して合成光学素子36に入射する。すなわち、第2レーザ光出力部25からは、波長2.6[μm]の第2のレーザ光L25が出射され、第2のレーザ光L25は合成光学素子36に入射する。
【0041】
合成光学素子36は、第1レーザ光出力部15から出力された第1のレーザ光L15と第2レーザ光出力部25から出力された第2のレーザ光L25とを同軸に重ね合わせる光学素子である。具体的には、波長532[nm]の第1のレーザ光L15を透過し、波長2.6[μm]の第2のレーザ光L25を反射するダイクロイックミラーが好適に用いられる。合成光学素子36によって同軸に重ね合わされた第1のレーザ光L15及び第2のレーザ光L25は、波長変換光学素子35に入射する。
【0042】
波長変換光学素子35では、第1のレーザ光L15の第2高調波発生が行われ、波長が266[nm]の変換光L35が発生する。そして、発生した波長266[nm]の変換光L35がレーザ装置LS2から出力される。本構成例では、波長変換光学素子35としてBBO結晶を用いた場合を例示する。なお、CLBO結晶を用いてもよい
【0043】
波長変換光学素子35で発生する変換光(266nm光)L35の量は、波長変換光学素子35の入射面ではゼロであり、出射面で最大になる。そのため、波長変換光学素子35が266nm光を吸収することによる発熱は、波長変換光学素子35の入射面で最小、出射面で最大になり、波長変換光学素子35の内部には温度偏差が発生する。波長変換光学素子35の内部に温度偏差が発生すると位相不整合が生じ、第2高調波発生の波長変換効率は低下する。本技術は、波長変換光学素子35における温度偏差を縮小することで位相不整合を低減する。その具体的手段として、波長変換光学素子35として用いるBBO結晶が大きな吸収をもつ波長域の光である波長2.6μmの第2のレーザ光L25(2.6μm光)の光路を、第1のレーザ光L15の光路と同軸に重ね合わせるか、または第1のレーザ光L15の近傍に平行となるように、第1のレーザ光L15の入射面側から入射させる。第2のレーザ光L25の吸収による発熱は、波長変換光学素子35の入射面側ほど大きい。第2のレーザ光のパワーは、第2のレーザ光の吸収による発熱量が、変換光L35(266nm光)の吸収による発熱量と略等しくなるように設定される。
【0044】
BBO結晶における光の透過特性を図6に示す。図6における横軸は波長、縦軸は透過率である。図6からは定量的な把握はやや難しいものの、BBO結晶は波長266[nm]の光に対して1%未満の僅かな吸収を示す。長波長側では概ね2[μm]あたりから透過率が低下し始め、2.5[μm]以上の領域では相当透過率が低い(吸収率が高い)状態になる。本構成形態では、第2のレーザ光L25の吸収係数をα2[cm-1]、BBO結晶のz軸方向の長さをL[cm]としたときに、α2×Lが1近傍の値となるように、第2のレーザ光L25の波長を2.6[μm]に設定している。
【0045】
BBO結晶で発生する266nm光のビーム強度をP1[W]、吸収係数をα1[cm-1]とすると、266nm光の吸収による単位長さ当たりの発熱ε1は、ε1=α11[W/cm]で与えられる。同様に、BBO結晶に入射する2.6μm光のビーム強度をP2[W]、吸収係数をα2[cm-1]とすると、2.6μm光の吸収による単位長さ当たりの発熱ε2は、ε2=α22[W/cm]で与えられる。
【0046】
BBO結晶内において生成される266nm光のビーム強度P1は、ビームの伝播方向をz軸にとったときにzの関数であり、P1(z)で表される。入射面をz=0とすると、266nm光のビーム強度P1(z)は、概ねP1(z)∝tanh2(βz)のように成長する。BBO結晶に入射した2.6μm光のビーム強度P2もzの関数でありP2(z)で表される。BBO結晶に入射した2.6μm光のビーム強度P2(z)は、P2(z)=P2(0)*exp(−α2z)のように変化する。
【0047】
これらの式に具体的な値を代入し、BBO結晶について結晶内のz軸に沿った各部の発熱量を算出した結果を図7に示す。図7における縦軸、横軸は図3と同様であり、BBO結晶のz軸に沿った長さはL=2[cm]である。図7中の細かい点線は266nm光の吸収による発熱ε1、粗い点線は2.6μm光の吸収による発熱ε2、実線は両者の発熱の和ε3=ε1+ε2を示す。図7の計算に用いた266nm光及び2.6μm光の吸収係数α1,α2、ビーム強度P1(L),P2(0)の具体的な値を図8に示す。2.6μm光の入力パワーP2(0)は、概ねα1×P1(L)≒α2×P2(0)を満たすように設定される。
【0048】
2.6μm光(第2のレーザ光L25)が入射されない状態では、BBO結晶内の発熱は266nm光の吸収による発熱ε1のみであり、結晶内の発熱のばらつきは符号Cで示す幅を有する。一方、2.6μm光が入射された状態では、BBO結晶内の発熱は、266nm光の吸収による発熱ε1と2.6μm光の吸収による発熱ε2との和ε3になり、結晶内の発熱のばらつきは符号Dで示す幅となる。
【0049】
両者を対比して明らかなように、第1のレーザ光(1064nm光)L15に、第2のレーザ光(2.6μm光)L25を同時入射した場合に、BBO結晶内の発熱のばらつきが大幅に抑制され、本構成例においても約1/3に低減されることが分かる。その結果、BBO結晶内における温度のばらつきΔtも同程度抑制されて位相不整合量Δkが低減され、これにより波長変換効率の向上が実現される。
【0050】
従って、以上説明したようなレーザ装置LS(LS1,LS2)によれば、第2のレーザ光が存在しない場合と比べて波長変換光学素子内の温度偏差を大幅に縮小することができ、これにより波長変換効率を向上させることができる。また、レーザ装置LSにおいては、第2のレーザ光が第1のレーザ光と同軸に重ね合わされて入射するので、第1のレーザ光の光路近傍を直接加熱することができる。このため、結晶の外部から温度分布を制御する構成と比較して、より的確に第1のレーザ光の光路に沿って温度偏差を抑制することができる。
【0051】
なお、以上では、波長変換光学素子35の例として、LBO結晶、BBO結晶を示し、出力される変換光として355nm光、266nm光を例示したが、本技術は他の非線形光学結晶や出力波長(例えばCLBO結晶、193nm等)に適用することができる。また、変換光を波長変換光学素子35の短波長側の光とし、第2のレーザ光を長波長側の光としたが(図2、図6を参照)、これらを逆にした構成にしても良い。すなわち、波長変換光学素子において差周波発生等により赤外領域の変換光を出力する場合に、紫外領域の第2のレーザ光を同軸入射することで結晶内温度の均質化を図ることができる。
【0052】
以上説明したようなレーザ装置LS(LS1,LS2)は、小型軽量であるとともに取り扱いが容易であり、露光装置や光造形装置等の光加工装置、フォトマスクやウェハ等の検査装置、顕微鏡や望遠鏡等の観察装置、測長器や形状測定器等の測定装置、光治療装置などのシステムに好適に適用することができる。
【0053】
次に、レーザ装置LSを備えたシステムの第1の適用例として、半導体製造や液晶パネル製造のフォトリソグラフィエ程で用いられる露光装置について、その概要構成を示す図9を参照して説明する。露光装置100は、原理的には写真製版と同じであり、石英ガラス製のフォトマスク113に精密に描かれたデバイスパターンを、フォトレジストを塗布した半導体ウェハやガラス基板などの露光対象物115に光学的に投影して転写する。
【0054】
露光装置100は、上述したレーザ装置LSと、照明光学系102と、フォトマスク113を保持するマスク支持台103と、投影光学系104と、露光対象物115を保持する露光対象物支持テーブル105と、露光対象物支持テーブル105を水平面内で移動させる駆動機構106とを備えて構成される。照明光学系102は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、マスク支持部103に保持されたフォトマスク113に照射する。投影光学系104も複数のレンズ群により構成され、フォトマスク113を透過した光を露光対象物支持テーブル上の露光対象物115に投影する。
【0055】
このような構成の露光装置100においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系102に入力され、所定光束に調整されたレーザ光がマスク支持台103に保持されたフォトマスク113に照射される。フォトマスク113を通過した光はフォトマスク113に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系104を介して露光対象物支持テーブル105に保持された露光対象物115の所定位置に照射される。これにより、フォトマスク113のデバイスパターンの像が、半導体ウェハや液晶パネル等の露光対象物115の上に所定倍率で結像露光される。
【0056】
このような露光装置100は、波長変換効率を向上したレーザ装置LSを備えている。そのため、そのため、同じ供給電力で高い変換光出力(あるいは低い供給電力で同じ変換光出力)を得ることができ、エネルギー効率を高めた露光装置を提供することができる。
【0057】
次に、レーザ装置LSを備えたシステムの第2の適用例として、フォトマスクや液晶パネル、ウェハ等(被検物)の検査工程で使用される検査装置について、その概要構成を示す図10を参照して説明する。図10に例示する検査装置200は、フォトマスク等の光透過性を有する被検物213に描かれた微細なデバイスパターンの検査に好適に使用される。
【0058】
検査装置200は、前述したレーザ装置LSと、照明光学系202と、被検物213を保持する被検物支持台203と、投影光学系204と、被検物213からの光を検出するTDI(Time Delay Integration)センサ215と、被検物支持台203を水平面内で移動させる駆動機構206とを備えて構成される。照明光学系202は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、所定光束に調整して被検物支持部203に保持された被検物213に照射する。投影光学系204も複数のレンズ群により構成され、被検物213を透過した光をTDIセンサ215に投影する。
【0059】
このような構成の検査装置200においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系202に入力され、所定光束に調整されたレーザ光が被検物支持台203に保持されたフォトマスク等の被検物213に照射される。被検物213からの光(本構成例においては透過光)は、被検物213に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系204を介してTDIセンサ215に投影され結像する。このとき、駆動機構206による被検物支持台203の水平移動速度と、TDIセンサ215の転送クロックとは同期して制御される。
【0060】
そのため、被検物213のデバイスパターンの像がTDIセンサ215により検出され、このようにして検出された被検物213の検出画像と、予め設定された所定の参照画像とを比較することにより、被検物に描かれた微細パターンの欠陥が抽出される。
【0061】
このような検査装置200は、波長変換効率を向上したレーザ装置LSを備えている。そのため、同じ供給電力で高い変換光出力(あるいは低い供給電力で同じ変換光出力)を得ることができ、エネルギー効率を高めた検査装置を提供することができる。なお、被検物213がウェハ等のように光透過性を有さない場合には、被検物からの反射光を投影光学系204に入射してTDIセンサ215に導くことにより、同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0062】
LS1 第1構成形態のレーザ装置
10 第1レーザ光出力部
20 第2レーザ光出力部
30 波長変換光学素子
31 合成光学素子
10 第1のレーザ光(L11 基本波、L12 第2高調波)
20 第2のレーザ光
30 変換光
ε1 355nm光の吸収による発熱
ε2 2.5μm光の吸収による発熱
ε3 発熱の和(ε3=ε1+ε2
A 2.5μm光が入射されない状態での結晶内の発熱のばらつき
B 2.5μm光が入射された状態での結晶内の発熱のばらつき
LS2 第2構成形態のレーザ装置
15 第1レーザ光出力部
25 第2レーザ光出力部
35 波長変換光学素子
36 合成光学素子
15 第1のレーザ光
25 第2のレーザ光
35 変換光
ε1 266nm光の吸収による発熱
ε2 2.6μm光の吸収による発熱
ε3 発熱の和(ε3=ε1+ε2
C 2.6μm光が入射されない状態での結晶内の発熱のばらつき
D 2.6μm光が入射された状態での結晶内の発熱のばらつき
100 露光装置
102 照明光学系 103 マスク支持台
104 投影光学系 105 露光対象物支持テーブル
113 フォトマスク 115 露光対象物
200 検査装置
202 照明光学系 203 被検物支持台
204 投影光学系 213 被検物
215 TDIセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザ光を出力する第1レーザ光出力部と、
前記第1レーザ光出力部から出力された前記第1のレーザ光を波長変換して変換光を出力する波長変換光学素子と、
前記第1のレーザ光と波長が異なる第2のレーザ光を出力する第2レーザ光出力部と、
前記第2レーザ光出力部から出力された前記第2のレーザ光を前記波長変換光学素子に入射させる合成光学素子とを備え、
前記第2のレーザ光の光路は、前記波長変換光学素子の入射面及び出射面において前記第1のレーザ光の光路の近傍に位置するか、または、前記波長変換光学素子の入出射面間において前記第1のレーザ光の光路と重ね合わされており、
前記第2のレーザ光の波長及びパワーは、前記波長変換光学素子における前記第2のレーザ光の吸収によって発生する熱量と、前記波長変換光学素子における前記変換光の吸収によって発生する熱量とが、略等しくなるように設定されることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記変換光の波長は紫外領域であり、前記第2のレーザ光の波長は赤外領域であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記波長変換光学素子における前記第2のレーザ光の吸収係数をα2[cm-1]、前記波長変換光学素子において、前記第2のレーザ光が伝播する方向の長さをL[cm]としたときに、α2×Lの値はほぼ1であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記波長変換光学素子における前記変換光の吸収係数をα1、前記第2のレーザ光の吸収係数をα2とし、前記波長変換光学素子から出力される前記変換光のパワーをP1、前記波長変換光学素子に入射する前記第2のレーザ光のパワーをP2としたときに、
α1×P1≒α2×P2を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記第1のレーザ光は、第1波長のレーザ光と第2波長のレーザ光とが同軸に重複されて形成されており、
前記波長変換光学素子は、前記第1波長のレーザ光と前記第2波長のレーザ光との和周波発生により前記変換光を発生することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記第1のレーザ光は、第3波長のレーザ光であり、
前記波長変換光学素子は、前記第3波長のレーザ光の第2高調波発生により前記変換光を発生することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、
露光対象物を保持する露光対象物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記マスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、
前記フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系とを備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
被検物を保持する被検物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、
前記被検物からの光を検出器に投影する投影光学系とを備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25114(P2013−25114A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160273(P2011−160273)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】